2003年に埋めた“タイムカプセル”が、22年後の同窓会で地獄のトリガーとなる――。
日本テレビ系ドラマ『良いこと悪いこと』は、「夢」をキーワードに展開する連続殺人ミステリー。掘り起こされた卒業アルバムには、6人の顔が黒く塗りつぶされていた。その夜、最初の犠牲者が現れる。
以降、「将来の夢の絵」と同じ手口で同級生が次々と狙われていく中、主人公・高木将と元クラスメイトの猿橋園子は“被害者”と“容疑者”という立場を超え、真相を追うバディに。
本記事では、全話のあらすじとネタバレを時系列で整理し、謎の構造や犯人像、そして最終回の結末までを論理的に考察していきます。
【全話ネタバレ】良いこと悪いことのあらすじ&ネタバレ

1話:「6人」――“夢”が凶器に変わる夜、バディはこうして生まれる
黒塗りのアルバムが告げた“復讐の開幕”
舞台は学校創立50周年の同窓会。34歳になった高木将(“キング”)が、22年前に埋めたタイムカプセルをクラスメイトと掘り起こす。
中身は当時描いた「みんなの夢」の絵と、誰かが忍ばせた卒業アルバム。6年1組のページを開いた高木は絶句する──高木を含む6人の顔写真が無残に黒塗りされていたのだ。高木には“6人の共通点”に心当たりがあるが、言葉にできないまま夜が更けていく。
ここでドラマは「標的を予告するアルバム」という“仕掛け”を一気に提示し、動機・機会・手口の三点を観客に考えさせるモードへ切り替える。
“夢”が手口に変わる連続事件
その夜、6人のうち最初の犠牲者が出る。以後、「将来の夢の絵」に沿った犯行シグネチャが浮かび上がる。武田敏生は“空を飛ぶ絵”の持ち主で、マンションから転落死。
桜井幹太は“消防士”の夢を描いた人物で、火災に巻き込まれ意識不明に。
この“夢→手口”の対応が二例続けて起きたことで、視聴者の仮説は一気に狭まる。絵にアクセスできる者、6人と園子の過去を知る者──つまり内輪の犯行が濃厚になるわけだ。タイトルの“良いこと/悪いこと”は、“夢(良いこと)”が反転して“悪いこと”に変わる倫理ゲームとして立ち上がる。
バディ誕生――“被害候補”と“容疑候補”の共闘
高木は“殺されたくない”、園子は“疑われたくない”。利害の一致が、二人をバディへと押し出す。公式要約が示すように、高木は真相解明のため、犯人ではないと主張する園子と手を組む。
この構図の妙は、“被害候補”と“容疑候補”を同じ矢印に並べたこと。互いの心に残る“過去の温度差”を抱えたまま共闘するからこそ、会話の一語一句に含みが生まれ、視線の往復に緊張が宿る。バディ化そのものがサスペンスの燃料となり、以後の事件を観測する“視点装置”として機能する点が巧みだ。
“時間割の犯罪”としての構成美
構成面の肝は、“時間割の犯罪”という見せ方にある。1話の終盤までに“夢→手口”が二件確認され、2話の予告では「これまでの被害者は武田と桜井」と整理される。
重要なのは、タイムカプセルの公開タイミングと犯行準備の整合性。あの場で初めて絵を確認した同級生が、その直後に実行できるのか。準備時間の矛盾が“内輪の誰か+事前に絵を知っていた者(=学校関係者や保管者)”という二層の容疑線を生み出す。
推理が“誰が悪いか”にとどまらず、“誰が何を知っていたか”という情報アクセスの物語に拡張していくのが本作の面白さだ。
起動回としての完成度
総じて第1話は、
①黒塗りの6人=標的の提示
②夢→手口の対位法=犯行サインの宣言
③高木×園子のバディ化=視点の固定
という三段構成で物語の“走り方”を決定づけた。以後は、6人の夢の中身と当時の関係性がピースのように少しずつ開示されるだろう。
犯人探しの軸は
(A)夢の絵へ事前にアクセスできた者
(B)6人と園子の因縁を具体的に知る者
(C)短時間で実行可能な者
――この三条件の積。第1話は、その積が誰に向くのかを視聴者に計算させる、極めてロジカルな“起動回”だったと結論づけたい。
【関連】1話については以下記事で解説

2話:「歌」――“夢の絵”テンプレが露わに、ニコちゃん線が動く
“夢の絵”が犯行のテンプレートに
これまでの2件の襲撃は、“22年前の将来の夢の絵”の再現だった。
貧ちゃん=武田敏生(水川かたまり)は“空を飛ぶ絵”を描いた少年で、成長後にマンションから転落して死亡。カンタロー=桜井幹太(工藤阿須加)は“消防士の絵”のとおり火災に巻き込まれ、意識不明の重体となる。犯行は偶然ではなく、夢の絵というテンプレートに沿って再演されている。
高木と園子は、絵とタイムカプセルに触れられる“クラスの内側”に容疑を絞る。「このクラスの誰かが、あなたを恨んでいるんです。私以外の、誰かが」——園子の一言が、核心を黒く縁取った。
“ニコちゃん”への接触と謝罪のすれ違い
残る標的は4人。そのひとり、“ニコちゃん”こと中島笑美(松井玲奈)に、高木と園子は警告のため接触する。笑美の子ども時代の夢は“スポットライトを浴びるアイドル”。
現在は六本木のクラブでホステスとして働き、華やかな日々を送っている。再会の場で笑美は、かつての仕打ちを園子に謝罪するが、長年の歪みは簡単に埋まらない。ふたりの間に横たわる“時間差の倫理”が、保護計画の行方をも左右していく。
報道サイドの“夜の街”ルート
一方、報道サイドでは園子の同僚・東雲晴香(深川麻衣)と後輩・松井(秋谷郁甫)が、違法薬物の元締めを追って夜の街を取材中。
彼女たちの捜査線は笑美の生活圏と重なり、のちに「夢の絵テンプレ」を実行するための情報×環境の両輪として結びつく。刑事ではなく“メディアの足”が別角度から真相を照らす構成が、第2話の見どころとなる。
「夢」を“犯行手順”に変える構造
第2話の焦点は、“善意の象徴=夢”が犯行の作業手順に転化する瞬間にある。
①夢の絵という共通のインデックスを起点に、
②事故に見せかける舞台装置を仕込む。
この2ステップで、犯人は“善(夢)”を“悪(殺意)”の段取りに変換している。
高木はその冷酷な発想に気づき、標的リストの共有と保護を提案するが、警察は個別事故として扱い、連続性を認めない。守るか、泳がせるか——バディの決断ほどには、行政の歯車は鈍く、重い。
クライマックス――“歌”が鳴り、ニコちゃん転倒
夜、街角に“不気味な替え歌”が流れたのち、物語は最悪の瞬間を迎える。
クラブ帰りの笑美は、園子に“彼氏・城之内のドラッグ流通の証拠”を渡し、一人で歩道を歩く。背後から黒い傘の人物が近づき、ふっと肩を押す。
次の瞬間、夢に描いた“スポットライト”はトラックのヘッドライトに変わり、轟音とともに笑美は倒れ込む。
雨に溶けた血の跡だけが残り、夜のざわめきが一拍遅れて戻る。偶然ではあり得ない“手”の介在——笑美は、連続事件の“3人目の犠牲者”となる。
要点整理
- タイムカプセル/卒アルの“黒塗り”と“夢の絵”が犯行テンプレの設計図。
- 先行2件(転落死・火災重体)は絵どおりの再現。
- 標的は残り4人、その一人が笑美。
- 笑美への接触→謝罪のズレ→保護の是非が焦点に。
- 東雲・松井の夜の街ルートが“犯行舞台”の環境線として機能。
- 終盤、替え歌と転倒ショットで“夢の絵テンプレ”の第二形態を提示。
第2話は、犯人の人物像よりも「犯行の作業手順」を可視化する構成だった。
“夢”という善の記号をテンプレートに変換し、“善悪の入れ替わり”というタイトルの本質を具現化。
そして、“ニコちゃん線”を悲劇で締めくくることで、次回「絶交」への不穏なバトンを渡している。

3話:絶交と“宇宙”の罠
替え歌の順番が導く“次の標的”
第3話は、ニコちゃん=中島笑美の死を受け、事件が“替え歌”の順で進んでいると確信した高木が「次の標的はターボー=小山隆弘だ」と推理する場面から始まる。
小山はアメリカでアプリ企業を成功させたIT実業家で、新規事業のPRのために一時帰国していた。だが園子は、「このタイミングでの帰国は偶然とは思えない」と疑念を抱き、過去の“目的のためなら手段を選ばない”という黒い噂を掘り返す。
親友を信じたい高木と、理性的に疑う園子。二人の間に再び緊張が走り、物語は“友情の信頼”と“記者の論理”がぶつかる構図で動き始める。
絶交の痛みと再会のぎこちなさ
高木は、小学6年生の頃に交わした“絶交”の痛みを今も抱えていた。
かつて親友だった小山と喧嘩別れしてから22年、ようやく再会を果たしたものの、互いに素直になれず会話には距離がある。
そして小山は高木に向かって、「復讐しているのは園子だ」と断言する。いじめられていた園子が、加害者だった6人に順番に報復しているのではないか、と。
高木は「園子は変わろうとしてきた」と反論するが、二人の溝は埋まらない。
第3話のタイトル“絶交”は、過去の痛手と現在の疑念が交差する二重の意味を持つモチーフとして機能している。
“森のくまさん”替え歌が犯行の設計図に
事件の設計図として浮上するのが、かつてクラスで作った「森のくまさん」の替え歌。貧ちゃん、カンタロー、ニコちゃん……と順番に死が訪れ、次に狙われるのはターボー。
しかも小山の発表する新規事業は“宇宙を体験する”というテーマで、彼が幼少期に夢見た「宇宙飛行士」と重なる。夢の象徴である“宇宙”が、皮肉にも彼自身を襲うモチーフとして回収されていく構成が見事だ。
東京湾の水死体――新たな“不穏の影”
一方で、物語の裏ではもう一つの不穏が進行している。
高木がテレビニュースを見つめるシーンで、東京湾から身元不明の水死体が発見されたと報道されるのだ。直接的な関係は明かされないが、この出来事が今後の事件とどう絡むのかは不透明。
替え歌の連続殺人とは別軸の“もう一つの死”が示され、物語に“第二の真相”を予感させる。
記者会見の惨劇――ガラスの星屑
クライマックスは、小山の新事業発表会。
“誰でも自宅で宇宙旅行ができる”という壮大なプロジェクトが発表され、会場は大成功の熱気に包まれる。小山は満面の笑みでスピーチを終え、報道陣による囲み取材が始まった。
だがその直後、突如として異変が起こる。取材エリアの天井から、不吉な軋み音が響いたかと思うと、巨大なガラス製の照明パネルが落下。
高木は一瞬の違和感を察知し、咄嗟にステージへ駆け寄って小山を突き飛ばす。次の瞬間、ガラス板が粉々に砕け散り、ステージに無数の破片が降り注いだ。
ライトに照らされたガラス片は、まるで星屑のように輝き、宇宙をテーマにした演出と“死の演出”が皮肉に重なる。
幸いにも小山は軽傷で済み、事件は未遂に終わった。
しかし、替え歌の順番通りに“死を演出”する犯人の目的は依然として不明。これは本当に殺意によるものなのか、それとも次への“警告”なのか――。
成功した発表会の直後に訪れた惨劇が、物語にさらなる不穏な影を落とした。
四重構造で描かれたスリルとテーマ
第3話の構成を整理すると、
- 園子・小山・高木の三角関係による疑心と信頼、
- 替え歌という犯行ロジックの強化、
- “宇宙”モチーフを活かした美しい演出、
- 東京湾の水死体という別線の不穏。
この“四重構造”が重なり、物語にスリルと奥行きを与えている。
犯人探しの枠を超え、“なぜ順番を守るのか”“殺意の根底に何があるのか”という新たな哲学的問いが浮上。単なる復讐劇ではなく、“罪の儀式”として事件が描かれる可能性が見えてきた。
絶交は“終わり”ではなく“再生”の兆し
第3話「絶交」は、友情と復讐が交差する転換点。
ガラスの破片のように散らばった記憶の断片が、星のようにきらめきながら“赦し”と“報い”の境界線をぼかしていく。
友情、信頼、疑念、そして過去の償い。すべてが静かに混ざり合う中で、次なる標的・羽立の運命が迫る。
物語は“絶交”を終わりではなく、“再生の始まり”として描く。
宇宙を夢見た二人のように、壊れた絆が再び光を放つ日は来るのか。次回、替え歌の“最終節”が鳴るとき、真の悪意がついに姿を現す。
3話のネタバレ&考察はこちら↓

4話:「黒」——“守るつもり”が刺さる夜と、輪の外から差し込む第三の視線
第4話はタイトルどおり“黒”。黒塗りの卒アルと、心の中にある黒い空洞を二重写しにして、物語を一段深く沈めた回だ。
高木(間宮祥太朗)と園子(新木優子)は、連続襲撃が替え歌の順番に沿っていると確信する。
これまでの武田→桜井→笑美に続き、高木の親友・小山(森本慎太郎)も襲われ、次の標的は“ちょんまげ”=羽立太輔(森優作)に絞られていく。
羽立の将来の夢が「刀を構えた侍」だったことから刺殺の可能性まで想定し、二人は学級委員長の小林紗季(藤間爽子)を頼って住所を入手する。
「友達なんかじゃない」——羽立が突きつけた“関係のリセット権”
週末、3人(高木・園子・小山)は羽立のアパートを訪ねる。
輪ゴムで髪を束ね、散らかった部屋で引きこもる羽立は、彼らの顔を見ても驚かない。「僕の番か……」。ニュースで連続事件を知り、自分が次だと理解しているのだ。
彼は台所から包丁を持ち出して園子に渡し、「僕なんて、なんの価値もないんだから」と“ひと思いにやってくれ”とまで言う。
高木は「守りに来た」「友達同士で守りあえば——」と説得を試みるが、返ってきた言葉は冷たい。
「友達なんかじゃない」。
被害者の側にある“関係のリセット権”をきっぱり突きつけられる。ここが第4話の核心である。
善意の限界——“守る”は一方的には成立しない
“守る”は、一方的には成立しない。
過去の加害の記憶は被害者の身体に残り続ける
→加害側の善意は、再演に見えることがある
→届かない言葉が二次加害になる
この三段で見ると、羽立の拒絶はきわめて合理的だ。
井戸の底のような自己否定——父を幼くして亡くし、昨年は母も失い、今は独りで生きているという事実が、彼の「仕方ない」を下支えする。
善意で近づくほど、黒は滲む。
輪の外から差し込む“第三の視線”
一方で、画面には“輪の外”から差し込む視線が初めて強度を持つ。
スナック「イマクニ」に出入りしていた常連客・宇都見(木村昴)の正体が、警視庁捜査一課の刑事だと判明する。
第2話での「しがない公務員です」という台詞が、ここで“逆説的な真実”として回収された。
これにより物語には、当事者(6人)・メディア(園子)に加えて“警察の合理”が正式参戦。素人の考察だけではなく、証拠の線が地形を変え始める。
法則の強度と“守る言葉”の更新
公式ストーリーは「最悪の事態が待ち受ける」とだけ煽って幕を閉じる。
事件のルール(替え歌の順番)は依然として強固で、5人目=羽立の危険は高まる一方。だがヒューマンとしての線は同時に前進している。
法則が強いほど、守るべき相手が先に見える
→守り方を誤ると再被害になる
→“守る言葉”そのものを更新しなければならない
第4話は、ミステリーの燃料(法則)と人間ドラマの酸素(関係の更新)を半々で混ぜ、次回以降の爆発に備えた回と言える。
“黒”が映し出した三つの論点
個人的な“論理の見どころ”を三つに絞る
①謝罪の非対称性——加害と被害は同じ時間を生きていない。加害側の「変わったよ」は、被害側にはしばしば「また来た」に見える。
②第三の視点の投入——宇都見=刑事という視線の増殖により、「6人の内側」だけで完結しない地平が開かれる。クラス全体や教員など、輪の外への疑いが広がる設計だ。
③色の演出——“黒”は不吉の色であると同時に輪郭線である。黒を塗ることで、これまで見落としていた形が浮かび上がる。
“良いことのつもりで近づくと、悪いことに転じる”というタイトルのアイロニーが、一段と鮮明になった。
「守る」とは何かを問い直す
結局のところ、第4話は「守る」とは何かを問い直す1本だった。
羽立に必要なのは、「守ってやる」という上位目線ではなく、まず関係の再定義だ。
次回、替え歌の刃に人間が勝つのか。“言葉の設計”が鍵を握る。
ミステリーの快感とヒューマンの痛覚が、同じ熱量で共存した佳回だった。
4話のネタバレ&考察はこちら↓

5話:「みんなの夢」――教室の記録と“忘れられた7人目”
第5話は、事件の鍵を22年前の教室へ引き戻す回。
生き残った“キング”高木将(間宮祥太朗)、“ターボー”小山隆弘(森本慎太郎)、“ちょんまげ”羽立太輔(森優作)の3人はガレージで協議し、
「園子(新木優子)以外にも自分たちを恨む人物がクラスにいたのでは」と仮説を立てる。
写真を洗い直す中で羽立がつぶやく。
「僕らのことを一番覚えている“もう1人”がいる」――それは当時の担任で、今は母校の校長となった大谷典代(赤間麻里子)。
生徒思いだった彼女なら、忘れかけた出来事も覚えているかもしれない。4人(高木・小山・羽立・園子)は確かめに行く。
校舎で蘇る記憶と、“父”としてのざわめき
母校の廊下に足を踏み入れた瞬間、園子の脳裏に過去の断片が蘇る。
備品倉庫に閉じ込められた日、昇降口での公開謝罪、階段でランドセルを奪われた屈辱――。
その光景の断片が現在と地続きの痛みとして蘇り、高木の心を揺らす。彼は校長室へ向かう途中、小4の娘・花音(宮崎莉里沙)が男子と口論する場面を目撃。
かつての加害の影が、父親としての責任を突きつけてくる。
校長室の面談――「いじめはなかった」と笑う先生
校長となった大谷は「6年1組に目立ったトラブルはなかった」「園子がひどい仕打ちに遭っていたことも知らない」と微笑みながら応答。
しかし4人は室内に小さな手がかりを見つける。
その年度の卒業アルバムが棚にない――。
語られた“記憶”と残された“記録”の齟齬が、彼女の口元の笑みより雄弁に物語る。
「みんなの夢」という副題が示すように、当時の“夢”を写した掲示や映像、学校が保持する記録物こそが、真相へ繋がる伏線となる。
警察が動く――宇都見の再捜査
警視庁捜査一課の宇都見啓が、事故死として処理された中島笑美・武田敏生の死因を再捜査。
民間=元同級生の追跡と、公的機関=警察の検証が並走することで、事件は“偶然”の皮を剥がし始める。物語のスケールが“教室の罪”から“社会の責任”へと広がる導入線がここで敷かれた。
委員長の再登場――“見て見ぬふり”をした者の証言
そこへ現れるのが、かつてのクラス委員長・小林紗季(藤間爽子)。
クラスの秩序と空気を最も知る人物だ。焼肉のテーブルで紗季は静かに言う。
「気づいてたのに、何もできなかった。あの時、怖かったの」
続けて「高木のことが好きだったから、言えなかった」とも打ち明ける。
彼女の言葉は“人気者の磁場”に巻き込まれた集団心理を映し出し、いじめの風景に社会性――力の偏り――を与えていく。
園子は赦さない。ただ一言、「謝ってすぐ楽にならないで」とだけ返す。その“距離のある対話”こそが、再生への第一歩となる。
校長・大谷の“涙”と“電話”――そして黒い車
物語のラスト、校長室に残った大谷がひとり、「みんなの夢」の映像を再生する。
画面を見つめながら、彼女は小さくつぶやく。
「ごめんなさい……」
そして震える声で電話をかける。
「あなたに言われた通り、タイムカプセルを掘り起こしました。もうやめませんか」
その後、校門前に停まる黒い車にゆっくりと乗り込む。脅されているのか、共犯なのか――その表情は曖昧で、涙だけが真実を語る。
事なかれに徹してきた教師の“良心の崩壊”が静かに描かれ、次回、物語はいよいよ“犯人の正体”と“忘却の構造”へと踏み込んでいく。
掲示板「鷹里小の森」――“博士”=忘れられた7人目
一方、羽立が学校の交流サイト「鷹里小の森」を発見。
「このHPも、俺のことも誰も覚えていない」「誰一人覚えてない」と綴られた書き込みに、
羽立が「覚えてるよ、博士だよね?」と返信すると、即座に「もしかして、ちょんまげ?」と応答が返ってくる。
「さすが、ちょんまげ」「あの7人組を覚えていたのは君だけ」――。
“忘れられた7人目=博士”という線が、現実味を帯びる。
画面は暗転し、教室の記録(夢・卒アル)と匿名の声(掲示板)が交錯。犯行動機=忘却の暴力という主題が、ついに姿を見せる。
結末の布石――三つの視点が交錯する
第5話では、先生=記録の管理者/委員長=秩序の記憶者/博士=忘却の被害者という三つの線が立ち上がる。
彼らの視点がいつ、どの言葉で交わるのか。
“言葉にできる者の責任”が物語の中心に置かれ、「なかったことにはできない」という園子の台詞が、静かに真相篇への扉を開いた。
良いこと悪いこと5話のネタバレはこちら↓

6話の予想:先生・委員長・“博士”が交差する夜――「誰が、何を、いつ、誰に見せたか」
第5話のラストで、物語の重心は「直接加害の復讐」から“忘却の暴力”へと明確にシフトした。
掲示板に現れた“博士”の怨嗟――「誰も覚えていない」――は、事件の燃料が“記憶の欠落”にあることを示している。
第6話は、この“忘却”を作動させた大人(担任)と秩序(委員長)と、名前を奪われた7人目=博士の三角形が、はじめて正面から交わる回になるはずだ。
以下、5話までに提示された情報と伏線を踏まえ、「誰が/何を/いつ/誰に見せたか」という構造の観点から展開を予想する。
1)大谷校長の“電話の相手”が明らかになる
5話で大谷(赤間麻里子)は「あなたに言われた通りタイムカプセルを掘り起こした。もうやめませんか」と涙ながらに電話をかけ、黒い車に乗り込んだ。
6話では、この“相手”が学校外の権力(PTA・地元有力者・教育委員会筋)のいずれかとして明確になるだろう。
鍵を握るのは、「みんなの夢」動画と卒業アルバムの所在だ。
予想A: 相手=PTA幹部または地元有力者。学校に「悪目立ちする生徒を消せ」という圧力がかかり、大谷は“黒塗り=やり直しの卒アル”を作る橋渡しを担った。
予想B: 相手=教育委員会の関係者。訴えが上がる前に“先回りで処置”を指示し、大谷は実務として“記録物の差し替え”を担った。
いずれの線にしても、大谷が“実行(塗り/掘り/埋め直し)”に関わりつつも、上層からの命令に従わざるを得なかったことが強調される。
彼女の涙は免罪ではなく、構造に呑まれた個人の痛みとして描かれるだろう。
2)委員長・小林紗季が「見て見ぬふり」の告白を“公”にする
焼肉店での私的な謝罪を経て、6話では第三者の前での“公的証言”へと踏み出す可能性が高い。
園子だけに向けていた「見て見ぬふりでした」という言葉を、今度は高木や小山、あるいは宇都見刑事の前で正式に語る。
委員長は“クラスの秩序の記憶”を持つ人物。
誰の合図で、教室はどこを向いていたのかを固有名詞と時間軸で語る役になるだろう。
たとえば――
- 「この写真はやめよう」「問題になる」という“黒塗り”の指示の声。
- タイムカプセルを巡って教員間で交わされた会話や時間のズレ。
委員長が“私的謝罪→公的証言”に変わる契機は、園子の授業と高木の謝罪、つまり“言葉にする作法”に触発されるはずだ。
3)“博士”は羽立に“会いに行きたい”と持ちかける――それは罠か救いか
掲示板で再び繋がった羽立と博士。6話では、この関係がオフライン化(対面)する。
ここには二つの分岐がある。
予想A(邂逅): 博士が“忘れられた7人目”として姿を現し、黒塗りに至るプロセス(誰が×いつ×どこで)を一気に語る。
博士は、「名前を消され、写真を切られた」などの“記録に残らない被害”を具体的に明かすだろう。
予想B(撹乱): 博士は第三者に利用され、羽立をおびき出す“餌”となる。
5話ラストの不穏なカット(羽立がPCを閉じる→画面に残る光)を思えば、対面の場が次の事件の舞台、あるいは既に起きている事件の演出に繋がる可能性もある。
どちらにしても、博士は「忘却の暴力」の中身を言語化する役割を担う。
「誰も覚えていない」という恨みが、どの瞬間の、どんな操作の積み重ねだったのか――6話はそれを“被害の技術”として描くはずだ。
4)高木は“父親としての線”に踏み込む――花音の問題は鏡像
『ごんぎつね』の授業で確立した「言えない狐/言える人」の対比は、6話で高木(間宮祥太朗)と娘・花音(宮崎莉里沙)の関係に転写される。
花音のトラブルは、かつての“キング”が持っていた力の偏りの再演。
高木は父として「言葉にできる者の責任」を娘に教え、謝る・説明する・距離を置くのいずれかの選択を迫る。
このシーンは、加害の連鎖を断ち切る教育の実像であり、「親になった加害者が何を断つか」という社会的テーマへ踏み込むことになる。
5)宇都見の再捜査が“私的探求→公的記録”の橋を架ける
宇都見(満島真之介)は、5話で宣言した通り事故死の再整理を進める。
6話では、死因・時間帯・同窓会以降の行動ログなど、“記録の言語”で再構成される証拠が提示されるだろう。
園子(新木優子)たちの証言が、記事としてではなく供述書として残る展開も予想される。
宇都見は、タイムカプセルや卒アル、「みんなの夢」動画など、学校が保持してきた記録物の所在確認に踏み込み、
「なかったことにしない」という作品の信念を制度的に担保する。
6)6話で回収・更新される伏線
- 卒アルがタイムカプセルに入っていた理由:「掘り直し→入れ替え→埋め直し」の実行者が大谷である線が強化される(背後に指示者あり)。
- 「みんなの夢」動画: 編集痕や欠番の存在が判明し、“記録の操作”が可視化される。
- 黒い車の主: 学校外の力が誰なのかが一歩具体化。
- 委員長の“好きだった”告白: 教室内の力学を再定義し、秩序の正体を言葉で提示。
- 掲示板「鷹里小の森」: 匿名投稿が運営照会・発信地特定で“実名化”される。
7)6話の着地(予想)――“先生と委員長、そして博士”が一本の線に
終盤、先生(情報の入口)・委員長(秩序の記憶)・博士(忘却の被害)の証言が重なり、
「誰が、何を、いつ、誰に見せたか」という情報伝達の履歴が一本の線に結ばれる。
- 大谷=“物を動かした人”(実務)
- 指示者=“学校外の圧力”(権力)
- 委員長=“クラスの合意”(空気)
- 博士=“消された名”(被害の総体)
この分担によって、“忘却の作り方”のメカニズムが明らかになるはずだ。
次回以降は、ここで確定した履歴を警察・報道という制度の回路に流し込み、
「なかったことにしない技術」をどう社会の言葉にするかが焦点となる。
まとめ
第6話は、“忘却”を作り出した伝達の手順を洗い直す回。
担任(大人の記録操作)/委員長(秩序の合意)/博士(消された名)の三者が交差し、「誰が、何を、いつ、誰に見せたか」という情報の履歴が一本に束ねられる。
犯人探しの快楽よりも先に、“なかったことにしない技術”を積み上げる中盤の勝負回。
そして、“語るべき言葉”を持てた人間から、事件はようやく前へ進み出す。
7話以降:※未放送
※物語が出次第、更新予定。
良いこと悪いことのキャスト一覧

日本テレビ系土曜ドラマ『良いこと悪いこと』は、ガクカワサキ脚本によるオリジナル作品で、2025年10月11日から放送予定。
物語は同窓会で再会した小学校の同級生たちが連続殺人事件に巻き込まれる“考察ミステリー”。主演は間宮祥太朗と新木優子によるダブル主演です。以下に主要キャストと役どころを整理します。
主要人物(元6年1組の同級生)
- 高木将(たかき しょう)/キング(間宮祥太朗)
主人公。東京郊外で小さな塗装会社を営む34歳の父親。小学生時代はクラスのリーダー的存在で“キング”と呼ばれていた。 - 猿橋園子(さるはし そのこ)/どの子(新木優子)
テレビや雑誌で活躍する記者。久々の同窓会で高木らと再会する。 - 武田敏生(たけだ としき)/貧ちゃん(水川かたまり)
高木と仲の良かったクラスメイト。幼い頃のあだ名がそのまま残っている。 - 土屋ゆき(つちや ゆき)/ゆっきー(剛力彩芽)
現在は専業主婦。22年ぶりに旧友たちと顔を合わせる。 - 豊川賢吾(とよかわ けんご)/トヨ(稲葉友)
美容師として働く。かつての夢と現実に葛藤している。 - 桜井幹太(さくらい かんた)/カンタロー(工藤阿須加)
居酒屋を経営。ハイテンションで園子に声をかける。 - 小林紗季(こばやし さき)/委員長(藤間爽子)
学級委員長だった真面目な女性。 - 高木加奈(徳永えり)
主人公の妻で2歳年上。娘・花音の母。夫の過去が暴かれる中で揺れる姿が描かれる。 - 大谷典代(赤間麻里子)
鷹里小学校校長。元6年1組の担任で、タイムカプセル掘り起こしを呼びかけた人物。22年前の出来事を何か知っている。
周辺人物と新キャスト
同級生以外にも事件を追う刑事や周囲の人物が登場。高木や園子を取り巻くキャラクターとして次が発表されています。
- 金田大樹(木津つばさ)
捜査一課の刑事。視聴者に「ノンストップ考察ミステリー」を呼びかける存在。 - 吉岡愛(玉田志織)
捜査一課の刑事。結末がわからないまま役を演じる楽しさを語る。 - 松井健(秋谷郁甫)
週刊誌「週刊アポロ」の新入社員。ドジだが純粋で、物語にユーモアを添える。 - 丸藤萌歌(田中美久)
スナック「イマクニ」で働くアルバイト。 - 五十嵐駿(矢柴俊博)
週刊アポロの編集長。台本の持つ“エグみ”と“ヒューマニティー”を絶賛し、考察ミステリーを盛り上げる。
さらに、同級生たちの子供時代を演じるキャストとして野林万稔や鈴木礼彩ら、鷹里小学校6年1組の生徒役に多数の若手が出演予定。物語に厚みを加える布陣となっています。
【5話まで】良いこと悪いことの犯人予想
第5話で“クラスの外側”にいる大人の手が実体を帯び、さらに“忘れられた7人目=博士”が表舞台に浮上。
第4話までの「同級生6人だけでは成立しない」仮説が、担任・大谷典代(現校長)=協力者という新事実で補強された。
犯行はやはり二層構造(内側=同級生の情報/外側=実行・隠蔽の支援)で動いていると見るのが妥当だ。
前提アップデート(5話で確定・強化されたこと)
担任・大谷が“協力者”である蓋然性が急上昇。
大谷は校長室で「もうやめませんか」「言われた通りタイムカプセルを掘り起こした」と誰かに電話で懇願し、黒い車に乗り込む描写もある。卒アルがタイムカプセルに入っていたという矛盾(=一度掘り、入れ直し、埋め直した者がいる)とも整合し、上層の“指示者”の存在を裏づける。
“博士”=忘れられた7人目が掲示板に降臨。
羽立(ちょんまげ)が学校サイト掲示板で「覚えてるよ、博士だよね?」と投稿すると、即座に「もしかして、ちょんまげ?」と応答。
「誰も覚えていない」という怨嗟の言葉から、“忘却の暴力”が動機の核であることが示唆された。
公式のテーマが“教室の記録×忘却”へ移行。
高木・園子・小山・羽立が母校で大谷に当時のことを聴取。大谷は「いじめはなかった」「覚えていない」と繰り返す一方で、「みんなの夢」映像を保持し視聴している矛盾が露呈。
警察の再捜査が始動。
宇都見刑事が上層に直談判し、事故死の再整理に舵を切る。
以降は私的追跡(元同級生)×公的記録(捜査)が並走する段階へ移行。
総じて、「誰が、何を、いつ、誰に見せたか」――情報伝達の履歴を洗うことが、5話以降の本線となる。
焦点①:〈学校/先生〉ライン――大谷典代(現校長)は“実務の協力者”
位置づけ: 主犯=黒幕ではなく、命令系統の下で“物を動かした”実行協力者の可能性が高い。
例:タイムカプセルの掘り起こし、卒アルの入れ替え、学校内記録(「みんなの夢」動画)へのアクセス。
動機の仮説:
- 構造的圧力(PTA/地元有力者/教育委員会筋)への屈服。
- 事なかれ主義による「問題を消して管理する」発想の暴走。
どちらにせよ、「知らなかった」ではなく「知っていて処理した」(=電話の自白)線が濃厚だ。
黒幕(指示者)は学校外の力である可能性が高いが、現時点では未確定。
焦点②:〈忘れられた一人〉ライン――“博士”=7人目
確定要素: 掲示板上で羽立と即時同定。「誰も覚えていない」という怨嗟は、存在の抹消=忘却への怒りを意味する。
立場の分岐:
A:被害者=告発者。黒塗り(写真・名前の抹消)の当事者として、忘却の回路を語るキーパーソン。
B:利用される“餌”。第三者(黒幕・共犯)に操られ、羽立を誘い出す役割を担う可能性もある。
いずれの場合も、“忘却の技術”(誰が何をどう隠したか)を証言で可視化する役を担うと見られる。
焦点③:〈同級生(園子を除く)〉ラインの再評価
小山(ターボー):撹乱/操作役としての疑いは残るが、自ら中盤ターゲットになる構成は非効率。情報操作(資金・人脈)担当の仮説を保留。
羽立(ちょんまげ):博士との対面によって“囮”化するリスクが増大。次の事件の導火線になる恐れ。
土屋(ゆっきー):家庭という密室性を利用し、外側の手と繋がる余地を残す。
小林紗季(委員長):情報ハブとして、私的謝罪(見て見ぬふり)を公的証言へ翻訳できるかが鍵。
高木(キング):探偵=犯人の古典的構造は残るが、視点固定の関係上、単独主犯は非合理。
(※人物評は5話までの行動に基づく暫定評価。)
焦点④:〈外部の目〉警察・メディア・“場”
宇都見刑事: 私的追跡を公的記録に変換する橋渡し役。事故死再捜査を通じ、証拠の言語化を担う。
メディア: 園子に犯人疑惑の記事が出るとの報。情報戦が激化し、“世論操作”が黒幕の手口と親和性を見せる。
スナック「イマクニ」: 情報・人・アリバイが交錯する観測点として機能。店側の関与カードも依然残る。
事件の「設計図」――5話時点で最も整合的な仮説
二層構造:
- 内側(同級生) … 22年前の替え歌と“将来の夢”に接続する動機の核(加害/傍観/忘却)。
- 外側(大人) … 大谷=実務協力者、“上”=学校外の指示者。メディア操作による隠蔽。
- 触媒=博士 … 忘却の被害者であり語り手(または誘引の餌)。
この図式なら、病院からの再拉致、卒アルの埋め直し、掲示板の匿名性、捜査の遅延がすべて“外側の手”で説明できる。5話の大谷の電話は、この多層構造を事実上認めるものであった。
現時点の“容疑ヒートマップ”(5話まで)
- 協力者(ほぼ確):大谷典代(実務の手)。
- 指示者(黒幕候補):学校外の力(PTA/地元有力者/教育委員会筋など)。証拠は未提示。
- 情報ハブ:小林紗季(委員長)。公的証言に進めば一気に線が繋がる。
- 囮/被害拡大型:羽立と博士の対面。
- 撹乱/操作:小山(ターボー)。保留。
- 濃度低下:桜井(退場)/武田・中島(被害者)。
6話までに検証すべきチェックリスト
- タイムカプセル作業のタイムライン: 掘った日時・立会者・入れ替えた品目。
- 「みんなの夢」映像の権限者: 保管先・複製の有無・欠番。
- 掲示板ログ: 博士のIP・発信地・過去ログ(2010年代にも痕跡?)。
- 黒い車の所有者: 学校出入口の防犯カメラ照合。
- 宇都見ライン: 再捜査による刑事記録の更新と、“事故”のラベルを外せるか。
結論(5話まで)
犯人像は単独ではなく、役割分担による多層構造で動いている。
大谷=協力者はほぼ確実で、黒幕は学校外にいる可能性が高い。
博士は“忘却”という動機の中核を語る鍵でありながら、“誘い出し”に利用される危険も孕む。ここから先は、記憶(証言)を記録(証拠)に変換できるか――この一点が、事件を“なかったことにしない”ための決定線になる。
ドラマ「良いこと悪いこと」の予想結末。最終回ではどうなる?

確定情報の整理と“文脈の設計図”
ここまでで確定している事実をまず“土台”として整理する。第1話で、タイムカプセルの中から6人の顔が黒く塗られた卒業アルバムが見つかり、その夜に“6人”のひとりが死亡。
以後、「将来の夢の絵」になぞらえた手口で被害が連鎖し、高木将と猿橋園子は“犯人ではない”という園子の主張を受けてバディを組む。
第2話の公式ストーリーでは、武田=「空を飛ぶ」→転落/桜井=「消防士」→火災という“夢→手口”の対応が明文化され、残る標的の一人が“ニコちゃん”中島笑美であることが示された。
物語の宣言部は「容疑者は同級生。真犯人は誰だ? 予測不能なノンストップ考察ミステリー」。この構造を踏まえ、最終回の着地を論理的に描いてみる。
物語の“論理装置”――推理の軸はどこにあるか
本作は
①標的の予告(黒塗り)
②犯行シグネチャ(夢→手口)
③情報アクセス権(タイムカプセルと絵に触れ得る者)
の三装置を、開始10分で配置している。
推理の核心は「誰がいつから何を知っていたか」と「“夢”を現実に翻訳する舞台装置を用意できるか」の二点に収束する。第2話で提示された文言が「6人と園子の因縁を知り、なおかつタイムカプセルと絵を利用できた人物」。
したがって最終盤の“真相ブレイク”は、黒塗りアルバムの出所・保管経路と、絵の具体内容にアクセスできたタイミングの立証で決まるはずだ。
真犯人の条件と構造――“内輪+鍵”の積
犯人を条件で表すと、
A)6人と園子の歴史の内側にいて動機を持つ
B)絵とアルバムに触れ得る立場(保管・運営・鍵)
C)“夢→手口”を現実に変換できる環境(場所・時間・人脈)
の三要素。AとBは“内輪”に引き寄せ、Cは現代の動線に紐づく“外部の道具”を要する
。最終回で明かされるのは、内輪の動機×外部の道具を橋渡しした人物――情報と舞台を同時に握っていた者だと読む。黒塗りという“公開状”は恫喝ではなく、犯人の“設計図”そのもの。その鍵(アクセス権)こそ真相の導線となる。
「夢→手口」の最終回収――反転をもう一度反転させる
これまでの事件が“夢の反転”として描かれている以上、フィナーレはさらにその反転を逆転させ、「夢」を“守る/回復する”行為で幕を閉じると考える。
たとえば、最後の標的の“夢”を利用した犯行が企図されるが、高木と園子が“夢の現実的な意味”に着眼して未遂に終わらせる。犯人は“象徴(夢の絵)”で脅かし、主人公たちは“具体(今の生活や選択)”で守る。象徴を具体で上書きする――それがこのシリーズの倫理に沿う勝ち筋だ。
バディの最終選択――“今”を守る覚悟
高木はいま家族を持つ“普通のパパ”。無傷で終わる英雄譚ではない。
最終回の命題は「過去の清算」と「現在を守る」のどちらに身を置くか。合理的には両立が理想だが、物語は往々にして一手遅れた後悔か、一手早い断念で終わる。
高木は過去に“言葉で向き合い”、現在を“行動で守る”ことを選ぶ。園子はその選択を可視化する語り手となり、謝罪と赦しの範囲を決定する役回りだ。ラストシーンは「続ける/生きる」側に重心が残るだろう。
「誰が犯人か」より「誰が何を知っていたか」へ
第2話で園子が「私以外の、誰かが」と語った台詞が象徴するように、最終回の焦点は犯人の一点指名ではなく“知識の流通経路”の可視化にある。黒塗りを“作る”人、夢の絵を“知る”人、手口を“実行”する人――役割分担の全貌が暴かれる構図だ。終盤では“共犯関係の切断”、つまり誰がどこでその回線を断ち切ったかがクライマックスとなる。
最終盤の論理骨子
- 黒塗りの出所を特定:鍵と保管経路の矛盾が発覚(アクセス権の立証)
- 夢→手口の舞台を無力化:犯人の仕掛けを先回りで封じ未遂化
- 共犯の分解:実行・情報・演出の役割分担を明示し、知識の流れを可視化
- 言葉の決着:園子が過去の加害者たちへ問いを突きつけ、高木が“今”を守る決意を表明
- エピローグ:タイムカプセル(またはアルバム)を“再封印”せず“開いたまま置く”ことで、「忘れない=良いことと悪いことの間を生きる」覚悟を示す
この構成が、黒塗り=予告、夢→手口=演出、アクセス権=鍵という物語設計を最もロジカルに回収する筋道になる。
結論:現状は誰が犯人かわからない
最終回の魅力は、「誰が悪いか」に留まらず、「誰が何を知っていたか」そして「それを今どう扱うか」にある。
犯人の“演出”に対し、高木と園子は手順と対話で立ち向かう。夢(良いこと)を手口(悪いこと)に変えるゲームを、現実(生き方)で再び反転させる。 その瞬間こそが、タイトル『良いこと悪いこと』の意味が腑に落ちる時だ。最終回は、法的決着と心の決着という二重のカーテンコールで幕を閉じ、視聴者にも「忘れない」という鍵を託す物語になるだろう。

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