8話で「もう一人のドの子」瀬戸紫苑の存在が明かされ、物語は一気に過去と現在を結び始めました。

9話「カノン」では、ついに連続事件の犯人が名乗りを上げ、動機も語られることで、物語は“答え合わせ”の段階に入ります。
しかし同時に、この回は終わりではなく始まりでもありました。犯人が明かされたはずなのに、残る違和感。「真犯人、だーれだ?」という不穏な問いかけ。
紫苑の死、タクト学園、高木の選択、そして花音という存在が重なり合い、最終回へ向けて新たな緊張が生まれていきます。
ここでは、9話を見終えた視点から、事件の核心と、あえて残された余白を丁寧に整理していきます。
良いこと悪いこと9話のあらすじ&ネタバレ

第9話「カノン」は、同級生の連続不審死の“犯人”と“動機”が一気に表に出る回でした。
残る標的がキング=高木将とターボー=小山隆弘の2人だと明言され、さらに「新たな犠牲者」まで示される、ほぼ答え合わせのセミファイナルです。
放送前の予告でも「1つ 犯人が判明します。2つ 誰かが死ぬ。」と強い警告が出ていましたが、まさにその言葉通りの展開になりました。
ここから先は『良いこと悪いこと』第9話の詳しいネタバレを含みます。未視聴の方はご注意ください。
まず前提として、このドラマは「タイムカプセル」から出てきた“顔が塗り潰された卒業アルバム”をきっかけに同級生の不審死が連鎖し、22年前に描いた「将来の夢の絵」になぞらえる形で、かつて“どの子”と呼ばれたいじめの加害側が標的になっていく――というノンストップ考察ミステリーです。
この作品の面白さは、事件を追う“バディ”が「いじめをしていた側」の高木と、「いじめられていた側」の園子という、ねじれた関係で組まれている点にあります。22年前の傷を抱えたまま大人になった2人が、同級生の死を止めるために同じ方向を向かざるを得ない。その構図が、第9話の犯人告白でさらに生々しく突きつけられました。
第9話で特に動いた人物を整理すると、以下のようになります(※呼び名は作中のあだ名)。
- 高木将(キング):かつての加害側。現在は家族を守りながら事件を止めようとする立場
- 猿橋園子:かつての被害側。現在は記者として真相に迫る
- 土屋ゆき(ゆっきー):園子と同級生。第9話では紫苑の実家調査に同行
- 小山隆弘(ターボー):残る標的の一人。宇都見に接触される
- 宇都見啓:刑事であり、スナック「イマクニ」の常連客。第9話で犯人として浮上
- 今國一成:スナック「イマクニ」の店主。紫苑の情報の鍵を握る人物
第9話時点で、貧ちゃん・カンタロー・ニコちゃん・ちょんまげ・大谷先生と犠牲が重なり、残る標的は高木(キング)と小山(ターボー)の2人に絞られていました。
なお、第9話のタイトルは「カノン」。劇中で高木の娘の名前も花音(かのん)であり、事件が“家族”の領域にまで踏み込んできたことを象徴するような、不穏な重なりを感じさせます。
オープニング/「もう一人のドの子」瀬戸紫苑の存在が、現在と直結する
前回8話のラストで、「小学生時代のもう一人の“ドの子”」瀬戸紫苑の存在が明かされました。さらに“博士”森智也の話として、紫苑はいじめを受け、5年生の夏休み明けに転校し、その後に“どの子”猿橋園子が転校してきたという、クラス内の時系列が整理されます。
第9話は、その紫苑の足取りが「今」に接続していくところから始まります。
紫苑の実家の場所が判明し、高木・園子・ゆっきー(土屋ゆき)の3人が現地へ向かうと、そこはすでに無人で、誰も住んでいない様子でした。溜まった郵便物が、時間が止まったままの空間であることを物語っています。
ここで高木が口にするのが「俺さ……ここ来たことあるわ」という一言です。娘の花音がピアノをやりたいと言い、この家を訪れたことがあるものの、「新規の方はお断りしている」と断られた過去があった。高木本人に悪意はない。それでも、紫苑の人生には高木の“影”が確かに入り込んでいた。第9話が強く刺さるのは、このどうしようもないズレが描かれているからでした。
紫苑と宇都見啓が“婚約者”だった…盤面がひっくり返る発見
家の中を詳しく調べることはできないものの、園子は郵便物の中に決定的な手がかりを見つけます。そこにあったハガキには「瀬戸紫苑」と「宇都見啓」の名前。つまり紫苑は、刑事・宇都見啓の婚約者だったという、衝撃の事実が浮上します。
この瞬間、これまで視聴者が“外側”に置いてきた宇都見の立ち位置が一気に変わります。
宇都見はスナック「イマクニ」の常連客として親しみやすく描かれる一方、捜査側の刑事として高木たちを事情聴取する立場でもありました。その「内と外」を行き来する人物が、紫苑の死と結びついたことを、第9話は明確に示します。
3人はさらなる手がかりを求めてスナック「イマクニ」へ向かい、店主の今國から「紫苑は1年ほど前に亡くなっている」と聞かされます。紫苑が“現在の被害者”であることが確定し、事件の重心が「22年前の教室」から「今この街」へと移った感覚が強く残ります。
残る標的ターボー小山に、宇都見が近づく
物語は同時に、“残る標的”の動きも描き出します。第9話の段階で、キング(高木)とターボー(小山)が残る標的だと明言されていました。
そのターボーのもとに現れるのが宇都見です。
宇都見は、紫苑の情報を引き出す見返りとして「事件を解決する」と約束するような形で小山に接触します。小山は、自分だけが狙われながら生き残っている状況に強い不安を抱きつつも、その言葉にわずかな希望を見いだそうとします。
さらに予告段階から、「小山だけ“失敗したまま”」という違和感が強調されていました。視聴者の間にも「何か起きる」という緊張感が漂う中で、本編はその想像を一段階超える展開へと踏み込みます。
VRが凶器に変わる…ターボー小山、死亡
小山の部屋で、宇都見がふとVRゴーグルに手を伸ばします。小山は「体験していきます?」と気軽に勧める。このやり取りまでは、ターボーらしいサービス精神にも見えますが、第9話はその善意を容赦なく裏切ります。
ゴーグルを装着した宇都見は「急に暗くなった」と異変を訴える一方で、小山が代わりにゴーグルをつけると、宇宙の映像が問題なく映っていることが分かる。その直後、小山は宇都見に首を絞められ、殺されてしまいます。
小山にとってVRは“未来”や“夢”を見せる装置でした。それが「最後に見た景色」になってしまう。
そして亡くなった人物は全員、子供の頃の夢の絵になぞって殺される。ターボーの夢は宇宙飛行士…。
この皮肉な構図が、宇宙空間を背景にした絞殺という強烈な描写として刻まれます。
宇都見が告白「全部、俺がやった」──動機は瀬戸紫苑の復讐
小山の死は高木たちにも伝わり、高木は強い衝撃を受けます。
そこへ宇都見が現れ、物語は明確な“答え合わせ”へと入ります。宇都見は、小山だけでなく、これまでの犯行はすべて自分が行ったと告白します。
宇都見が語る被害者には、亡くなった同級生たちに加え、担任だった大谷先生も含まれていました。
つまり宇都見は、単なる「同級生同士の復讐」にとどまらず、当時の環境そのものに矛先を向けていたことになります。
回想/「ドの子」が生まれた日…紫苑が背負った“音”の烙印
宇都見の動機を裏づけるように、紫苑がいじめられていった過去も重ねて描かれます。発端となったのは、音楽の授業で“ド”の音を外してしまった出来事でした。そこから紫苑は「ドの子」と呼ばれるようになり、からかいが積み重なっていじめが日常化していきます。
第9話で印象的なのは、これが“誰か一人の強い悪意”だけで成立していない点です。からかいが笑いに変わり、笑いが合図になって輪が広がっていく。その空気の怖さが、静かに、しかし確実に描かれます。
紫苑は5年生の夏休み明けに転校します。
学校という現場からは姿を消しても、心の傷はそのまま残り続ける。この体験こそが、宇都見の復讐の根にあるトラウマとして提示されます。
園子が辿り着いた「タクト学園」と追悼コンサート
同じ頃、園子は別ルートから紫苑の“その後”に辿り着きます。
松井健から、紫苑が転校後に「タクト学園」という、いじめや不登校を経験した子どもたちが通う施設にいたことを聞き出します。園子はその施設を訪れ、ちょうどその日に紫苑の追悼コンサートが行われることを知ります。
園子がその場所に辿り着いたことで、紫苑の痛みは「証言」ではなく「場所」として可視化されていきます。
一方でその情報は、高木にとって“償い”を行動に変えてしまう危険な導火線にもなります。園子は追悼コンサートの存在を高木に伝え、高木はその場へ向かい、次第に追い詰められていきます。
高木、カッターナイフ…SIT突入で宇都見確保
追悼コンサートが行われる施設に、高木が侵入します。しかも手にはカッターナイフ。ここまで来ると高木は“止める側”ではなく、“手を下す側”になりかけている状態でした。
壇上では宇都見が、紫苑が「一番大切な曲で、私を救ってくれた曲」だと語っていた「カノン」を演奏しています。
演奏が終わり、高木が距離を詰めようとしたその瞬間、SIT隊員が突入し、宇都見は押さえ込まれます。犯人確保。小山の死からここまで、息をつかせない怒涛の回収で第9話は幕を下ろします。
次回への引き/「真犯人、だーれだ?」──宇都見の言葉が残した不穏
ただし、これですべてが終わった空気ではありません。最終回予告では「真犯人、だーれだ?」という言葉が示され、宇都見とは別に“真犯人”がいる可能性が示唆されます。
さらに9話ラスト、宇都見が押さえ込まれる直前、誰かに向かって「あとは頼んだ」と言っているようにも見える描写がありました。事件の全貌は、まだすべてが明かされていない。
その感触を残したまま、物語は最終回へと向かいます。
第9話で判明したこと(事実の整理)
第9話のラストまでに、少なくとも次の点が事実として明らかになりました。
- 瀬戸紫苑は宇都見啓の婚約者であり、約1年前に亡くなっていた
- 新たな犠牲者として、ターボー小山が宇都見に殺害された
- 宇都見がこれまでの犯行はすべて自分だと告白し、動機は紫苑への復讐だと語った
- 園子の調査で、紫苑が転校後にタクト学園に通っていたこと、追悼コンサートが行われたことが判明した
- コンサート会場でSITが突入し、宇都見が確保された
- それでも最終回予告で「真犯人」の存在が示唆され、事件がまだ終わっていない可能性が残された
良いこと悪いこと9話の伏線
第9話「カノン」(2025/12/13放送)は、“犯人の正体”が表に出る回でありながら、同時に最終回へ向けて伏線を一気に増殖させた回でもあります。
明確な答えを提示したように見せつつ、むしろ「まだ終わっていない」という感触を強く残す構成で、物語はここから最終局面へ加速していきます。
ここでは、第9話で回収された伏線とあえて残された伏線を切り分けながら、ロジック重視で整理していきます。
紫苑の実家が“空っぽ”だった意味:家(ピアノ教室)=過去が蘇る装置
第9話の冒頭は、瀬戸紫苑の実家、つまり元・ピアノ教室を訪ねる場面から始まります。そこがすでに無人で、郵便物だけが溜まっている描写は、単なる「寂しさ」を演出するためのものではありません。
これは、「紫苑は、現在進行形ではもう救えない存在である」という残酷な事実を、視覚的に突きつける伏線として機能しています。
さらに強く刺さるのが、高木が「ここ来たことある」と思い出す場面です。娘の花音がピアノをやりたいと言い、この教室を訪ねたものの、「新規の方はお断りしている」と断られていた過去が明かされます。この一見すると何気ない出来事が、のちに紫苑の死へと直結する導線になっていきます。
ここで押さえておきたい伏線のポイントは、はっきり2つあります。
- 高木側から見れば、「子どもの習い事探し」というごく普通で“良いこと”
- 紫苑側から見れば、「いじめの中心にいた人物が再び視界に入る」という“悪いこと”
同じ出来事の中に、善意と悪意が同時に存在してしまう。この構造そのものが、タイトル通り「良いこと/悪いこと」の核心であり、第9話はそれを最終局面で強く突きつけてきた回だったと言えます。
郵便受けのハガキが決定打:紫苑×宇都見啓が“婚約者”だった伏線回収
第9話で最も分かりやすく回収された伏線が、ここです。
溜まった郵便物の中から、園子が紫苑と宇都見啓の名前が並んだハガキを見つけ、紫苑が宇都見の婚約者だったという事実が明かされます。
このハガキは、単なる証拠品ではありません。物語全体で見ると、過去と現在を接続するための「接続端子」の役割を果たしています。
- 22年前の教室で起きたいじめ
- 現代で起きている連続殺人
- その両方をつなぐ「1年前の紫苑の死」
この3点を一本の線にまとめ上げるのが、このハガキの役割です。視聴者の中でバラバラだった情報が、ここで一気に噛み合う。だからこそ、第9話の犯人告白は唐突に見えるようで、実際には伏線回収としてかなり丁寧に積み上げられていました。
宇都見の違和感は“予告”から出ていた:「小山だけ失敗したまま」の言い回し
第9話の伏線で興味深いのは、本編の中だけでなく、放送前の予告段階からすでに仕込まれていた点です。
予告映像で宇都見が小山に向けて投げかけた「なぜあなただけ“失敗”したままなんでしょうか」という言葉は、かなり露骨でした。
通常、刑事の立場であれば「犯人は誰なのか」を探る側に立つはずです。しかし、この言い回しはどちらかと言えば、「計画が想定通りに進んでいないことを気にしている」側の口調に近い。
この時点で、宇都見は単なる捜査側ではなく、事件の設計図に触れている人物ではないかという違和感が生まれていました。
そして第9話本編で、小山が宇都見に殺される。
ここは、予告の時点で漂っていた違和感が、そのまま回収された形になっています。
VRゴーグルの暗転トリック:9話の“殺害方法”自体が伏線になっている
第9話で描かれた小山の殺害シーンは、方法そのものが強烈な印象を残しました。
- 宇都見がVRゴーグルをつけ、「急に暗くなった」と異変を訴える
- 小山がゴーグルをつけると、宇宙映像は問題なく映っている
- その瞬間、宇都見が小山の首を絞めて殺害する
事件としても衝撃的ですが、伏線として見ると、ここには明確なテーマが見えてきます。
それは、「見えているもの=真実とは限らない」というメッセージです。
VRは現実ではない映像を見せる装置ですが、その“映像が見えている間”にも、現実では殺害という決定的な出来事が進行している。つまりこのシーンは、視聴者に対しても「画面上で語られる説明、すなわち宇都見の自白だけを、そのまま真実だと信じるな」と警告しているようにも見えます。
最終回で「真犯人」の存在が示唆されている以上、この“見え方をズラす演出”は、ラストのどんでん返しに向けた重要な仕込みとして機能する可能性が高いと考えられます。
タクト学園が“核心装置”になった:紫苑の空白を埋める鍵
園子は松井健から、紫苑が転校後に「タクト学園」――いじめや不登校を経験した子どもたちが通う施設――にいたことを聞き出し、実際にその場所を訪ねます。
そこで紫苑の追悼コンサートの存在を知り、その情報を高木に伝える。この流れが、第9話終盤の展開へと直結していきました。
タクト学園が伏線として非常に強い理由は、次の2点にあります。
- 紫苑の“その後”を知っている人物が、必ず複数存在する
- その中に、宇都見の復讐を後押し、あるいは止められなかった人物がいても不自然ではない
つまりここは、「真犯人ルート」を最終回に残すための装置として、極めて優秀な場所です。
第9話では、紫苑の周囲に「もう一人、何かを知っている人物がいる」可能性を、あえて確定させずに残しています。宇都見を確保してもなお、物語が終わらない理由は、ここにあります。
「カノン」はタイトル回収で終わらない:花音(かのん)まで巻き込む“言葉の伏線”
第9話のタイトルは「カノン」。そして劇中で宇都見が演奏する曲も、紫苑が「一番大切な曲で、私を救ってくれた曲」と語っていた「カノン」です。
ここで一段踏み込んだ伏線になっているのが、高木の娘の名前が花音(かのん)である点です。
予告段階から視聴者の間でも、「花音が連想される」「カノンちゃんが危ないのでは」といった不安の声が上がっていました。
つまり「カノン」という言葉は
- 紫苑にとっての救いの象徴(過去)
- 高木にとって守るべき存在(現在)
- そして最終回で脅威にさらされる可能性のある対象(未来)
という三層構造の伏線になっています。
タイトルを単なる楽曲名で終わらせず、人間関係とサスペンスの中心に接続してくる点が、第9話の巧みさでした。
宇都見が確保されても終わらない:「真犯人、だーれだ?」と口パクの不穏
第9話のラストでは、追悼コンサート会場にカッターナイフを持って侵入した高木が、宇都見に近づこうとする瞬間にSITが突入し、宇都見は確保されます。
しかし、このドラマはここで「事件解決」にしません。
最終回予告では「真犯人、だーれだ?」という言葉が強調され、宇都見以外の“真犯人”の存在が明確に示唆されます。さらに、宇都見が押さえ込まれる直前、誰かに向かって「あとは頼んだ」と口にしているように見える描写も残されました。
伏線としては、かなり分かりやすい構図です。
- 宇都見は実行犯、つまり手を下した人物
- しかし、事件の設計や焚き付けは別の人物が担っている可能性
最終回で回収されるとすれば、「タクト学園の関係者」や「紫苑のそばにいた人物」が最も筋が通る位置にいます。ここはあくまで考察ですが、第9話はその余地を明確に残しました。
妻・加奈の「全部終わったら…」は、家族ラインの“爆弾”として残った
第9話の予告では、高木が妻・加奈から「約束してほしい、全部終わったら…」と促される場面も描かれていました。この一言は、伏線として見るとかなり危険な“爆弾”です。
物語が最終回に向けて、
- 事件の真相
- 高木自身の贖罪
- 家族、特に花音を守るというテーマ
この3本に収束していくのであれば、「全部終わったら…」という言葉は、高木に重大な選択を迫るセリフになりやすい。
加奈が何かを知っていると断定することはできません。ただし、第9話の時点で「家族ラインにも明確な伏線が置かれた」ことは確かで、最終回では高木の家庭が安全地帯でいられるのかどうかが、重要な焦点になるはずです。
未回収伏線チェックリスト(9話時点)
最後に、第9話までで答えが出ていない伏線を、最終回に向けたメモとして整理しておきます。
- なぜ宇都見は、第9話で高木を殺さなかったのか
- なぜ同窓会まで待ち、タイムカプセルや黒塗りアルバムという手法を選んだのか
- 「森のくまさん」替え歌の順番は、真犯人の設計図なのか、それとも単なる見立てなのか
- 宇都見が口パクしたように見える「あとは頼んだ」の相手は誰なのか
- タクト学園で紫苑の隣にいた“誰か”は、今も事件に関わっているのか
- 「カノン(曲)」と「花音(娘)」が同音である意味は、偶然なのか、それとも次の標的の示唆なのか
第9話は、答えを出しながらも、それ以上の疑問を丁寧に残した回でした。最終回では、これらの伏線がどこまで回収されるのかが、最大の見どころになります。
良いこと悪いこと9話の感想&考察

第9話「カノン」は、犯人の告白という“答え”を提示しながら、最終回に向けて「真犯人」という新たな問いを投げかけてきた回でした。
見終わった直後に残るのは、スッキリとした解決感というより、背中がひんやりするような後味です。なぜなら、このドラマが一貫して描いてきたのは“事件そのもの”ではなく、「一度つけた傷が、時間差で別の誰かを壊していく」という現実の怖さだからです。
以下、ロジック多めに整理していきます。
この回のテーマ・メッセージ考察:「良いこと/悪いこと」は誰の定義なのか
タイトルが「良いこと悪いこと」である以上、この物語は単純な善悪二元論では描かれていません。第9話で宇都見の復讐が明かされたことで、「やられた側の痛み」と「やり返す側の正義」が、同時に画面上に並べられました。
ただ、ここで強烈にゾッとさせられるのは、宇都見の動機そのものよりも、“引き金が高木の善意だった”という点です。
娘が「ピアノをやりたい」と言う。親として教室を探す。たまたまそこが紫苑の教室だった。
流れだけを見れば、ごく当たり前で、むしろ「良いこと」の連鎖に見えます。それでも紫苑にとっては、それが過去の傷をえぐる“悪いことの再来”になってしまった。本人に悪意が一切なくても、相手の傷口に触れれば“加害”になる。このドラマのタイトルが持つ核心が、第9話で一気に具体化した瞬間でした。
そして「カノン」というタイトル。
カノンは、同じ旋律が追いかけっこをするように反復されていく曲です。ドラマの構造もまさにそれで、いじめ、トラウマ、復讐、そして次の暴力へと、形を変えながら同じパターンが繰り返されていく。第9話は、その反復が最も残酷な形で鳴り響いた回だったと思います。
メインキャラの心情と変化:高木が「悪い子」を引き受けた瞬間
高木の最大の変化は、「自分が悪い子だった」という自覚を、家族、とりわけ娘にまで持ち込んだ点にあります。第8話で、花音に対して「自分は悪い子だった」と告白する場面が強く印象に残りましたが、その流れを受けて第9話を見ると、追悼コンサートにカッターナイフを持ち込んだ行動は、単なる衝動ではなく、“責任の取り方を間違えた結果”として見えてきます。
- 宇都見を止めたい
- 紫苑に対して償いたい
- けれど、その手段が「殺す」に近づいてしまった
これは、宇都見がやってきたことと地続きです。暴力の連鎖から抜け出したいのに、気づけば同じ場所に足を取られて戻ってしまう。その危うさが、高木の行動に重なっていました。
一方の園子は、復讐劇の渦中にあっても「調べる」「確かめる」という姿勢を手放しません。紫苑がいたタクト学園へ自分の足で向かう行動は、園子の強さであり、この作品が単なる感情劇ではなく「考察ミステリー」として成立している軸だと感じます。
そして、ターボー小山。
正直に言って、第9話で最もきつい役回りだったのは彼でした。予告の段階から「小山だけ“失敗したまま”」という違和感が示されていた中で、最終的に“夢を見せる装置”で命を奪われる。その皮肉と残酷さは、見ていて胸が悪くなるほどでした。
伏線と回収ポイント:宇都見の「情報の持ち方」が不自然すぎる
第9話で「宇都見が犯人」という線は、かなり強く回収されました。ただ、それで終わりだと決めるには、どうしても引っかかる点が多い。
特に気になるのは、宇都見が「同級生内の暗号」を使いこなせるほどの情報を持っていることです。
卒業アルバムの黒塗り、将来の夢の絵の見立て、タイムカプセルのDVD。これらは、当事者世代が共有している文脈がなければ設計できない仕掛けです。宇都見が単独でそこまで組み上げたとすれば、相当な調査量になりますが、劇中では「誰かから渡された」「誰かに教えられた」とも取れる描写が随所に散らされています。
さらに、最終回予告で「真犯人、だーれだ?」と煽られ、9話ラストでは宇都見が誰かに向かって「あとは頼んだ」と言っているようにも見える。この描写は、“宇都見=実行犯”のさらに奥に、焚き付け役や情報提供者、あるいは紫苑の死の真相に深く関わった別の人物がいる可能性を強く示しているように思えます。
競技としての考察:最終回で回収されるべき“論点”を3つに絞る
ここから先は予想です。断定はしません。
1)紫苑は「なぜ」死を選んだのか(自殺の直接の引き金)
宇都見の語りは筋が通っていますが、紫苑の死が“彼の説明だけ”で完結している点が、逆に不気味です。最終回では、紫苑本人の視点――遺されたものや、タクト学園での様子、周囲の大人の対応――を、もう一段深く描く必要があると感じます。
2)タクト学園は何を隠しているのか
園子が辿り着いたタクト学園は、過去と現在を繋ぐ装置として、あまりにも強い存在です。ここに関わる人物が、事件全体の設計図に触れている可能性は高いでしょう。
3)宇都見は誰に「あとは頼んだ」と言ったのか
“真犯人”がいるとすれば、ここが最も分かりやすい入口です。言葉の宛先が明らかになるだけで、これまで散らばっていた謎が一気に繋がるはずです。
今後の展開予想(※予想):真犯人は「焚き付けた人」か「物語を作った人」
パターンごとに整理します。
【パターンA:タクト学園関係者が“真犯人”】【仮説】
宇都見の復讐が成立した背景に、タクト学園を介した情報ルートが存在するパターンです。紫苑の死の真相や、宇都見の暴走を“止められなかった理由”を抱えた人物が、裏で糸を引いていた可能性があります。
【パターンB:今國・東雲周りが“真犯人”】【仮説】
9.5話「犬」で示された要素から、タクト学園にいた子どもが今國や東雲ではないか、という見方もあります。この線が当たるなら、宇都見が得ていた情報のルートが一気に繋がります。

【パターンC:森先生(博士)周りが“真犯人”】【仮説】
森智也という存在は、事件の“起点”としてずっと引っ張られてきました。宇都見が犯人だと明かされた今、森が単なるミスリードで終わるのか、それとも真犯人に繋がる鍵なのか。最終回での回収を待ちたいところです。

現時点での本命はA、タクト学園ルートです。理由は単純で、紫苑という被害者を中心に据えた物語構造において、学園が「過去と現在を繋ぐ装置」として強すぎるから。最終回での答え合わせを、冷静に見届けたいと思います。
SNSや視聴者の反応:第9話は“エグい”で統一される
視聴者の反応は、かなり分かりやすく「エグい」に集約されていました。いじめ描写の生々しさ、悪気なくエスカレートしていく空気、そしてターボーのVR殺害シーンのショック。その言葉自体が、視聴者が受けたダメージの大きさを物語っています。
そのうえで、ラストの「真犯人、だーれだ?」によって、考察勢のギアは一気に上がりました。犯人が宇都見で終わらない前提で、誰が“もう一段上”にいるのか。ここまで丁寧に積み上げてきた作品だからこそ、最終回での回収に期待したいですし、最後まで一緒に見届けたいところです。
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