ドラマ『良いこと悪いこと』第9話「カノン」では、園子より前に「ドの子」と呼ばれていた瀬戸紫苑の過去が明らかになり、夢の絵を利用した連続殺人の実行犯へたどり着きます。捜査へ協力していた人物と、紫苑を失った人物が重なった時、高木将たちが頼ってきた関係そのものが崩れていきました。
さらに狙われるのは、高木と22年越しに友情をつなぎ直した小山隆弘です。高木を宇宙へ連れていくために追い続けた夢が、最も残酷な形で殺害へ利用されます。
ただし、実行犯が判明しても、事件全体が解決したとは言い切れません。この記事では、ドラマ『良いこと悪いこと』第9話のあらすじ&ネタバレ、伏線、感想と考察について詳しく紹介します。
ドラマ「良いこと悪いこと」第9話のあらすじ&ネタバレ

前話では、高木たちが忘れていた7人目の仲間・森智也が、現在は高木の娘・花音の担任になっていることが明らかになりました。森は子ども時代に旧サイトを作り、その場所がいじめへ利用された責任を抱える一方、高木たちの仲間として過ごした時間まで忘れられた痛みを語ります。
高木は森との再会を通じ、自分の過去を花音へ隠したままではいられないと考えました。そして、自分も小学生時代に同級生をいじめていたと娘へ告白し、格好のよい父親でい続けることより、過去を正直に伝える責任を選びます。
さらに、「みんなの夢」のDVDには、園子とは別の少女・瀬戸紫苑が映っていました。紫苑もまた、高木たちから「ドの子」と呼ばれていた可能性があり、園子へのいじめが最初の加害ではなかったと分かります。
第9話では、紫苑を失った悲しみを復讐へ変えた宇都見が、一連の殺人を実行した人物だったと明らかになります。
園子より前にいた「ドの子」瀬戸紫苑
DVDに映っていた紫苑について、森は自分が覚えている過去を語ります。紫苑がいなくなった後に園子が新たな標的となったことで、高木たちのいじめが一人の少女への偶発的な悪ふざけではなかった可能性が強まりました。
5年生の頃に標的となった瀬戸紫苑
森によると、紫苑は高木たちが5年生だった頃に同じ学校へ通っていました。しかし、紫苑は仲間として受け入れられず、園子より前に高木たちからいじめを受けていたと分かります。
紫苑は「ドの子」と呼ばれていた可能性がありました。園子の「どの子」と同じ呼び名なのか、別の意味を持つのかは第9話時点でも完全には整理されませんが、名前を呼ばず集団の外へ置く行為だった点は共通しています。
園子は、自分が初めての被害者ではなかったことを知ります。自分が転校してくる前にも、同じ教室で別の少女が傷つけられ、助けられないまま学校を去っていたのです。
園子にとっては、高木たちが自分だけを嫌っていたわけではないと分かって救われる話ではありません。むしろ、標的となる人物を入れ替えながら、同じ排除が続いていたことを突きつけられました。
紫苑の転校後に園子が新しい標的となる
紫苑は、いじめを受けた後に鷹里小学校から転校しました。紫苑が教室からいなくなっても、高木たちの集団のあり方は変わりません。
その後に転校してきた園子が、新しい「どの子」として扱われます。標的が変わっただけで、仲間の外へ一人を置き、集団でからかう構造は残っていました。
高木たちが特定の相手へ強い恨みを持っていたのではなく、集団を保つために外側の人物を必要としていた可能性があります。紫苑がいなくなれば園子が選ばれ、園子をからかうことで残りの仲間が同じ側にいることを確認していたのです。
紫苑から園子へ標的が入れ替わった事実は、高木たちのいじめが一度の過ちではなく、集団の習慣になっていた可能性を示します。
森だけが紫苑を強く覚えていた理由
高木や小山たちは、DVDを見るまで紫苑についてほとんど思い出していませんでした。一方、森は紫苑がいじめられ、転校していった経緯を比較的はっきり覚えています。
森は自分も高木たちから忘れられた人物です。集団から存在を消される痛みを知っていたからこそ、同じように教室から消えた紫苑を忘れられなかった可能性があります。
また、森が作った旧サイトはいじめへ利用されていました。紫苑への加害がサイト上でも行われていたなら、森には自分が作った場所によって紫苑を傷つけた罪悪感も残っていたと考えられます。
森は紫苑の被害を知る人物でありながら、完全に助ける側だったとは限りません。紫苑を覚えていることと、紫苑への加害から無関係であることは別の問題です。
紫苑の過去を調べるため旧宅へ向かう
高木、園子、土屋らは、紫苑が転校後にどのような人生を送ったのかを調べようとします。現在の居場所や連絡先が分からないため、かつて紫苑が暮らしていた家を訪ねることになりました。
高木には、紫苑へ直接謝罪し、何があったのかを聞きたい気持ちもあったはずです。しかし、それは高木が自分の罪悪感を軽くするためではなく、紫苑が何を受け、その後どう生きたのかを知るためでなければなりません。
園子もまた、同じいじめ被害者として紫苑の存在へ強く引かれます。園子は自分たちの傷が同じだと決めつけるのではなく、紫苑に何があったのかを一人の人間の人生として確かめようとしました。
紫苑の旧宅へ向かったことで、連続事件の中心にいた意外な人物との接点が浮かび上がります。
紫苑の家で見つかった宇都見との接点
紫苑の旧宅と周辺を調べる中で、高木たちは彼女がピアノと深く関わっていたことを知ります。同時に、高木自身が大人になった後、紫苑と再接触していた可能性も浮上しました。
紫苑が暮らしていた家とピアノの記憶
紫苑の旧宅には、彼女が音楽やピアノとともに生きていたことを示す痕跡が残っていました。紫苑にとってピアノは、子ども時代のいじめとは別の場所で、自分を表現し、生活を支える大切なものだったと考えられます。
学校を転校しても、過去の記憶がすべて消えるわけではありません。それでも紫苑は、新しい環境と音楽の中で、自分の人生を作り直そうとしていたのでしょう。
園子は紫苑の生活を知るほど、自分と似た傷を持ちながら、別の道を歩いた少女として彼女を見ます。紫苑を復讐事件の動機や記号としてではなく、ピアノを大切にしていた一人の人間として捉えようとしました。
しかし、高木にとっては、そのピアノとの関係が、自分の現在の家庭へつながる不穏な記憶を呼び起こします。
花音を通じて紫苑と再接触していた可能性
高木は、娘の花音をピアノ教室へ連れてきた際、紫苑と接触していた可能性を思い出します。高木にとっては、娘の習い事に付き添った日常の一場面にすぎなかったのかもしれません。
高木は紫苑を見ても、子ども時代にいじめた「ドの子」だとは気づかなかった可能性があります。森が花音の担任だったにもかかわらず、7人目の仲間だと思い出せなかったのと同じです。
しかし、紫苑の側が高木を覚えていたなら、何げない再会ではありません。自分を傷つけた集団の中心人物が、何もなかったように父親となり、娘を連れて目の前へ現れたことになります。
加害者にとって偶然の再会でも、被害者にとっては閉じ込めてきた過去が突然現在へ戻る出来事になり得ます。
高木の現在が紫苑へ与えた可能性のある衝撃
現在の高木は家族を大切にする父親であり、花音のためにピアノ教室へ通う普通の保護者です。高木が幸せな家庭を持つこと自体は罪ではありません。
しかし紫苑から見れば、自分の人生を傷つけた人物が過去を忘れ、家庭を持ち、父親として穏やかに暮らしている姿です。高木が変わったことを知らなければ、加害者だけが過去から自由になったように見えます。
高木には、紫苑を再び傷つける意図はありませんでした。それでも、意図がなければ影響もないとは限りません。
紫苑が高木との再会によって何を思い出したのかを、高木は自分の記憶だけで判断できません。
高木は、自分が覚えていない再会が、紫苑の人生へ大きな影響を与えた可能性に恐怖を抱きます。ただし、この再会だけが紫苑のその後を決定したと断定することはできません。
郵便物から浮かぶ宇都見啓の名前
紫苑の旧宅周辺を調べる中、高木たちは宇都見の名前が記された郵便物や連絡物を見つけます。宇都見と紫苑の間に、捜査対象と刑事という以上の個人的な関係があった可能性が浮上しました。
宇都見はこれまで、「イマクニ」の常連として高木たちへ近づき、その後に刑事であることを明かしています。高木たちは警察側の協力者として宇都見へ情報を渡し、羽立の死についても事情を説明していました。
その宇都見が、紫苑と個人的につながっていたのであれば、事件を捜査する立場と、被害者に近い立場を同時に持っていたことになります。
高木たちは、頼れる刑事だと思っていた宇都見へ初めて強い不信を抱きます。宇都見が捜査を助けていたのか、自分の目的のために情報を集めていたのかを見直す必要が生まれました。
紫苑はすでに亡くなっていた
紫苑の現在を追う高木たちは、「イマクニ」の今國一成から、紫苑がすでに亡くなっていると知らされます。その死が約1年前の出来事だったことで、連続殺人が紫苑への復讐である可能性が一気に強まりました。
今國が伝えた紫苑の死
高木と園子たちは、紫苑へ直接会い、過去と現在について話を聞こうとしていました。しかし今國から、紫苑はすでに亡くなっていると知らされます。
紫苑の死は、高木たちが連続事件を追い始めるより前の出来事でした。高木たちは、謝罪することも、紫苑が何を覚え、何を望んでいたのかを本人から聞くこともできません。
高木に残るのは、自分たちのいじめが紫苑の人生へどのような影響を与えたのか分からないまま、本人を失ったという罪悪感です。紫苑が高木との再接触後に苦しんだ可能性を知れば、さらに自分を責めたくなります。
ただし、紫苑の死を高木一人の行動へ直接結びつけることはできません。過去のいじめ、再会、生活上の事情、心身の状態など、複数の要因が重なっていた可能性があります。
連続殺人は紫苑の死への復讐なのか
高木たちがいじめた人物が約1年前に亡くなり、その後、いじめへ関わった人物が夢の絵になぞらえて殺されている。二つをつなげれば、紫苑を大切に思っていた人物による復讐という構図が浮かびます。
宇都見の名前が紫苑の旧宅から見つかったことも、この推理を補強します。宇都見が紫苑と近い関係にあったなら、高木たちを憎む動機を持っていても不思議ではありません。
しかし、動機が見えたことと、すべての犯行を説明できることは別です。宇都見が夢の絵、替え歌、標的の現在の行動をどこから知ったのかという問題が残ります。
紫苑の死は復讐の動機になり得ますが、悲しみがあることは連続殺人の全体像を説明する証拠にはなりません。
紫苑本人は復讐を望んでいたのか
高木たちが知っているのは、紫苑がいじめを受け、転校し、後に亡くなったという事実です。紫苑が高木たちへの復讐を望んでいたという明確な意思は確認されていません。
紫苑が恨みを持っていた可能性はあります。しかし、恨んでいることと、相手の死を望むことは同じではありません。
園子も高木たちを許していませんが、桜井、笑美、羽立を死なせないために動きました。いじめ被害者が必ず復讐を望むと考えること自体が、被害者の感情を一つに決めつける行為です。
誰かが紫苑のためだと語って殺人を行っているなら、その人物は紫苑の意思を確認できないまま、彼女の死を自分の目的へ利用している可能性があります。
紫苑と宇都見を調べる間に動く新たな犯行
高木と園子が紫苑の過去と宇都見との関係を調べる一方、宇都見は小山の会社へ向かいます。小山にとって宇都見は、連続事件を追う刑事であり、自分たちを守る捜査側の人物でした。
高木たちは宇都見への疑いを持ち始めていますが、その情報は小山へ十分に届いていません。宇都見は警察という立場と、これまで築いた信頼を利用し、小山の警戒を解いていきます。
宇都見が狙ったのは、PRイベントで一度襲われながら、高木によって救われた小山でした。犯人が桜井を再び狙ったように、一度生き延びた標的も安全ではありません。
そして小山の夢は、今度こそ逃げられない形で殺害へ利用されることになります。
宇宙の夢の中で殺された小山
宇都見は小山の会社を訪れ、VR技術を体験する流れを作ります。刑事として宇都見を信頼していた小山は、無防備にヘッドセットを装着し、自分の宇宙の夢へ意識を向けた状態で襲われました。
刑事・宇都見を警戒しなかった小山
小山は、第3話で頭上から落下したガラス板のような物体に襲われています。それ以降、連続事件への警戒は続けていたはずです。
しかし、会社へ来たのは犯人候補ではなく、事件を捜査する刑事の宇都見でした。これまで高木たちと情報を共有し、羽立の死について事情を聞いていた人物でもあります。
小山には、宇都見を疑う十分な理由が伝わっていません。むしろ事件の解決が近い、紫苑の過去を知る人物へたどり着いたという安堵があった可能性があります。
宇都見は、その信頼を利用しました。犯人から身を守るために頼るべき捜査側の人物が、実際には自分の命を狙っていたため、小山は警戒する機会を奪われます。
小山が開発したVR技術と宇宙の夢
小山の会社は、VRによって自宅にいながら海外や宇宙を体験できるサービスを開発していました。子ども時代に宇宙へ行く夢を持っていた小山が、その夢を現在の仕事へつなげたものです。
小山が夢を追い続けた背景には、高木を宇宙へ連れていくという約束がありました。小学生時代に絶交した後も、小山はその約束を捨てず、勉強と仕事へ力を注いでいます。
VRの宇宙空間は、小山にとって成功の象徴であり、高木との友情が形になった場所でもありました。本来なら、失われた22年間を埋め、親友と未来を共有するための技術です。
宇都見は小山が人生をかけて実現した宇宙の夢を、親友との再会ではなく死へつながる場所に変えました。
仮想の宇宙へ意識を向けた小山を襲う宇都見
小山はVR機器を装着し、仮想空間の宇宙へ意識を向けます。視界と注意が現実の室内から離れたことで、背後や周囲へ警戒することが難しくなりました。
その状態を利用し、宇都見は小山の首を絞めて命を奪います。小山には、宇都見の行動へすぐ反応する余地がほとんどありませんでした。
小山の夢は、これまで一度、頭上から落ちるガラスの星のような襲撃へ利用されました。しかし高木が救ったことで、小山は生き延びています。
宇都見は今度、VRによって小山を宇宙の中へ置き、その夢を完成させるように殺害しました。犯人が一度失敗した標的を放置しない執着が、桜井に続いて小山にも向けられたのです。
高木との友情を原動力にした夢の残酷な反転
小山が宇宙を目指したのは、自分一人の成功のためだけではありません。高木と交わした約束を守り、いつか親友を連れていくためでもありました。
第3話で高木と小山は22年越しに関係を修復し、互いが思い出のカードを持ち続けていたことを知ります。小山には、今度こそ高木と夢を共有できる時間が戻ったはずでした。
しかし、宇都見はその夢の中で小山を殺します。小山が長く持ち続けた友情、努力、成功の意味が、本人の命を奪うために利用されました。
小山の死が特に残酷なのは、夢そのものだけでなく、高木と生き直そうとした友情の未来まで奪われたからです。
小山を失った高木には、親友を一度救いながら、結局守り切れなかったという深い喪失が残ります。そして小山を殺した宇都見は、高木の前へ現れ、自ら一連の犯行について語り始めました。
連続殺人の実行犯・宇都見の告白
高木と対峙した宇都見は、夢の絵を使って同級生たちを襲った一連の殺人を実行したと告白します。宇都見の動機の中心にあったのは、婚約者だった紫苑を失った悲しみと、高木たちへの復讐でした。
高木へ一連の犯行を明かす宇都見
宇都見は、高木たちの近くへ「イマクニ」の常連として入り込み、その後は刑事として事件の捜査へ加わりました。高木たちは宇都見を協力者だと考え、夢の絵や替え歌、同級生の現在について情報を共有しています。
しかし宇都見は、捜査のためだけに高木たちへ近づいていたのではありませんでした。武田、桜井、笑美、小山らを、子ども時代の夢になぞらえて襲った実行犯として、自分の行動を語ります。
高木にとって、宇都見の告白は、小山を失った直後に突きつけられるものです。頼れる刑事だと思っていた人物が、親友を殺し、ほかの仲間の命も奪っていました。
宇都見は自分が復讐を実行したことへ、一定の確信を持っているように見えます。高木たちが罰を受けるのは当然だという考えによって、殺人を正当化していました。
刑事という立場を犯行へ利用した宇都見
宇都見は警察側にいることで、事件現場、捜査状況、高木たちの証言へ近づくことができます。被害者候補の行動や警戒状況を把握し、自分への疑いを遠ざけるうえでも有利な立場です。
高木たちは、警察が事故として扱ってきた事件を宇都見なら理解してくれると期待しました。しかし、捜査情報を渡すことは、実行犯へ自分たちの推理や次の行動を伝えることにもなっていました。
小山も、宇都見が刑事だからこそVR体験中に警戒を解きました。宇都見は、社会が与えた捜査権限と被害者から向けられた信頼を、殺人を実行するために利用しています。
宇都見の罪は命を奪ったことだけでなく、人を守る立場への信頼を、自分の復讐を成功させる道具へ変えたことにもあります。
夢の絵を復讐の方法に選んだ理由
高木たちがタイムカプセルへ入れた「みんなの夢」は、子どもたちが大人になった自分を思い描いた希望の記録でした。宇都見は、その絵を一人ずつの殺害方法へ変えます。
空を飛ぶ夢を転落へ、消防士の夢を火へ、アイドルのスポットライトを車のライトへ、宇宙の夢をVR空間での死へ反転させました。標的が最も大切にしていた未来を、命を奪う瞬間へ利用しています。
宇都見にとっては、紫苑の夢や人生を壊した高木たちに、自分たちの夢を壊される苦しみを与える意味があったのかもしれません。しかし、それは宇都見自身が解釈した罰です。
紫苑が同じ方法を望んでいたとは確認されておらず、夢を使った殺人は紫苑を救う行為にはなりません。宇都見が自分の怒りを満たすため、紫苑の死へ復讐という意味を与えています。
実行犯は判明しても全体の計画者とは限らない
宇都見は一連の殺人を実行したと告白しました。しかし、事件の全情報を宇都見一人で集め、すべての計画を作ったと断定できるわけではありません。
夢の絵や替え歌、標的の現在の行動、学校から消えたDVD、大谷の秘密の電話など、宇都見の告白だけでは経路が分からない情報があります。
また、園子の情報を小林が流したように、宇都見が意図せず、または意図的に別の人物から情報を受け取っていた可能性もあります。黒ずくめの人物や黒い傘の人物が、すべて宇都見だったかも第9話時点では整理し切れません。
宇都見は殺人を実行した犯人ですが、連続事件の全体像を一人で計画した人物だとはまだ確定していません。
紫苑の死と宇都見の復讐
宇都見は、紫苑が婚約者だったことと、高木たちへの復讐を選んだ理由を語ります。そこには紫苑への愛情だけでなく、彼女を救えなかった自分への罪悪感があり、その痛みが高木たちへの殺意へ転化していました。
宇都見にとって紫苑は婚約者だった
紫苑と宇都見は、単なる知人ではありませんでした。宇都見にとって紫苑は、将来をともに生きようとしていた婚約者です。
紫苑が子ども時代のいじめへ苦しんでいたことも、ピアノを人生の支えにしていたことも、宇都見は近い位置から見ていたと考えられます。紫苑の過去を知るほど、高木たちへ怒りを抱いたのでしょう。
愛する人が傷つけられ、その傷が大人になっても残っている姿を見ることは、宇都見にとっても苦しい経験です。高木たちが何も覚えていないことは、紫苑の人生を軽く扱っているように見えたはずです。
宇都見の悲しみと怒りには、理解できる部分があります。しかし、その感情を理解することと、殺人を受け入れることは別です。
高木との再接触で呼び起こされた紫苑の傷
紫苑は転校後、ピアノとともに生活を立て直していました。しかし、大人になった高木との再接触によって、子ども時代の恐怖や屈辱を呼び起こされた可能性があります。
高木には紫苑を傷つけ直す意図がなく、再会した相手が紫苑だと気づいていなかったとしても、紫苑の側の衝撃は消えません。高木が父親として幸せに暮らしている現在も、加害者だけが過去から自由になった証拠のように見えた可能性があります。
紫苑はその後、ピアノを弾くことが難しくなったと示されます。自分を支えていた音楽に向き合えなくなったことで、生活の基盤まで揺らいでいきました。
ただし、高木との再接触だけが紫苑の死を直接引き起こしたとは断定できません。宇都見がそう考えていることと、客観的な因果関係は分ける必要があります。
紫苑を救えなかった罪悪感を高木たちへ向ける宇都見
宇都見には、紫苑のそばにいながら救えなかったという罪悪感があったと考えられます。婚約者でありながら、紫苑が過去へ追い詰められ、ピアノを失い、やがて亡くなるまでの苦しみを止められませんでした。
自分の無力さへ向き合う代わりに、高木たちを絶対的な加害者として罰すれば、宇都見は紫苑の死へ分かりやすい意味を与えられます。高木たちが死ねば、紫苑のために何かを成し遂げたと感じられるからです。
しかし、復讐しても紫苑は戻りません。宇都見が高木たちを殺すほど、紫苑の記憶はピアノを愛した人ではなく、連続殺人の動機として固定されていきます。
宇都見の復讐は紫苑を取り戻す行為ではなく、紫苑を救えなかった自分の罪悪感へ、殺人という答えを与える行為でした。
愛情と復讐を同じものにした宇都見
宇都見は、紫苑を愛しているから高木たちを殺したと考えているように見えます。しかし、愛情は相手の意思や尊厳を大切にするものであり、自分の望む物語へ相手を利用することではありません。
紫苑が高木たちを許していなかった可能性はあります。それでも、紫苑が宇都見へ殺人を求めたとは確認されていません。
宇都見は、紫苑なら復讐を望むはずだと考え、彼女の代わりに裁きを実行しました。それは被害者本人の意思を確かめず、自分の怒りを紫苑の願いとして扱うことです。
園子は同じいじめ被害者でありながら、自分の傷を理由に高木たちを死なせない選択を続けています。園子の存在が、宇都見の復讐を紫苑への愛情だけでは説明できないものにしていました。
タクト学園の追悼演奏会で逮捕される宇都見
宇都見の告白を受け、園子は紫苑のその後をさらに調べます。紫苑がタクト学園へ通っていたことと、彼女を悼む演奏会が開かれることを知り、高木たちは宇都見を止めるため会場へ向かいました。
園子がたどり着いたタクト学園
園子は記者として、紫苑が転校後にどのような場所で過ごし、誰と関わっていたのかを追います。その調査から、紫苑がタクト学園へ通っていたことが分かりました。
タクト学園は、紫苑の音楽やその後の人生へ関わる場所です。鷹里小学校でいじめられていた少女という過去だけではなく、ピアノを学び、自分の生活を作り直した紫苑の現在へつながっています。
園子は、自分と紫苑を同じ被害者として一括りにはしません。紫苑の傷を理解しようとしながら、彼女がどこで何を大切にして生きたのかを知ろうとします。
そして園子は、紫苑の追悼演奏会が行われることを知り、高木へ情報を伝えました。
紫苑の記憶を殺人から音楽へ戻す追悼演奏会
宇都見は紫苑の死を、高木たちを殺す理由として使いました。宇都見の語る紫苑は、いじめによって人生を壊され、復讐されるべき被害者という姿へ偏っています。
一方、追悼演奏会は、紫苑が愛した音楽によって彼女を記憶する場所です。殺人の動機ではなく、ピアノを弾き、誰かと時間を過ごした人として紫苑を悼みます。
園子は、高木たちを許さない気持ちと、宇都見の殺人を止める意思を同時に持って会場へ向かいます。紫苑を傷つけた過去へ向き合うことと、紫苑の名を使った新しい殺人を止めることは両立するからです。
追悼演奏会は、宇都見が復讐の理由へ変えた紫苑の記憶を、本人が愛した音楽の中へ戻す場所になりました。
追悼演奏会で逮捕される宇都見
高木、園子、警察は追悼演奏会の会場へ向かいます。宇都見は、紫苑のためという自分の復讐を続けようとしていましたが、最終的に会場で逮捕されました。
宇都見が逮捕されたことで、夢の絵を使った連続殺人の実行犯は確保されます。高木たちには、これ以上同じ方法で仲間が殺されることを止められるかもしれないという安堵が生まれました。
しかし、その安堵には小山を失った悲しみが重なります。宇都見を捕まえても、小山、羽立、桜井、笑美、武田は戻りません。
高木は、犯人が捕まったから過去の責任が終わるわけではないことも分かっています。紫苑や園子を傷つけた事実は、宇都見の殺人とは別に残り続けます。
逮捕時の合図が残した共犯者の影
宇都見は逮捕される際、誰かへ合図を送っているように見える意味深な動きを見せます。具体的に誰へ向けたものなのか、その意図は第9話では明らかになりません。
また、宇都見一人で夢の絵、替え歌、全員の現在の行動、学校のDVD、大谷の秘密まで把握できたのかという疑問も残っています。
宇都見が実行犯であることと、事件全体を一人で計画したことは同じではありません。情報を渡した人物、計画を補助した人物、宇都見とは別の目的で動いていた人物がいる可能性があります。
第9話の結末は犯人逮捕による解決ではなく、宇都見の背後に残る別の意思を示して終わりました。
ドラマ「良いこと悪いこと」第9話の伏線
第9話では、宇都見が夢の絵を使った一連の殺人を実行した人物だと判明しました。しかし、宇都見がどこから情報を得たのか、学校のDVDや替え歌をどう把握したのか、逮捕時の合図は誰へ向けられたのかという謎が残っています。
また、紫苑が通っていたタクト学園、「イマクニ」、宇都見の周辺にいる人物の関係も、事件全体を考えるうえで重要です。ここでは、第9話時点で残る伏線を整理します。
宇都見は一人で連続事件を実行できたのか
宇都見は殺人を実行したと告白しましたが、事件には長期間の監視、情報収集、複数の場所での準備が必要です。実行犯が一人でも、計画や情報提供へ別の人物が関わっている可能性があります。
夢の絵と替え歌を知った経路
犯行方法には「みんなの夢」の絵が使われ、標的の順番は子ども時代の替え歌と一致していました。夢の絵はタイムカプセルから出てきましたが、替え歌は仲間内の記憶です。
宇都見が紫苑から当時の話を聞いていた可能性はあります。しかし、紫苑が6人の夢や替え歌をどこまで知っていたのかは確認できません。
学校から消えたDVDや卒業アルバムへ宇都見が直接アクセスしたのか、別の人物から受け取ったのかも明らかになっていません。
標的の現在の行動を把握した人物
犯人は武田が一人になる時間、桜井の店、笑美の帰路、小山のPRイベントなどを正確に狙っています。標的の現在の行動を継続的に監視しなければ難しい犯行です。
宇都見は刑事として情報を得やすい立場ですが、すべての人物の日程を警察情報だけで把握できたとは限りません。「イマクニ」や同級生の会話から情報を得た可能性もあります。
また、高木たちの近くにいる人物が、意図的または無自覚に宇都見へ情報を渡していたことも考えられます。
宇都見の告白に含まれない犯行
宇都見は一連の殺人を実行したと語りますが、すべての事件について方法と準備を細かく説明したわけではありません。
笑美を押した黒い傘の人物、羽立と争った黒ずくめの人物、桜井の殺害映像を送った人物が、すべて宇都見だったのかは第9話だけでは整理し切れません。
宇都見の自白によって実行犯は判明しても、各事件の役割分担まで確定したわけではありません。
逮捕時に宇都見が送った合図
宇都見は追悼演奏会で逮捕される際、誰かへ意思を伝えるような動きを見せました。事件が宇都見の逮捕後も続くことを予告する合図にも見えます。
会場に協力者がいた可能性
宇都見の動きが特定の人物へ向けた合図なら、追悼演奏会の会場に協力者がいた可能性があります。警察、学校関係者、紫苑の知人、演奏会の関係者など、多くの人物が集まる場所です。
ただし、宇都見の動きが本当に合図だったのか、誰かへ向けられたものなのかは確定していません。高木たちの不安や視聴者の疑いを誘うだけの動作である可能性もあります。
今後は、宇都見が逮捕前に誰と連絡を取り、誰へ情報を渡していたのかを調べる必要があります。
宇都見が逮捕を想定していた可能性
宇都見が自分の逮捕を想定し、残りの計画を別の人物へ託していた可能性も考えられます。復讐を一人で完遂するのではなく、逮捕後も誰かが動く仕組みを作っていたのかもしれません。
一方、宇都見自身が誰かに利用され、実行犯として表へ出る役割を引き受けた可能性もあります。紫苑への愛情と罪悪感が強い宇都見なら、事件全体の責任を自分一人で背負おうとすることも考えられます。
宇都見の告白をすべて真実と受け取るのではなく、何を話し、何を話していないのかを見る必要があります。
タクト学園と「イマクニ」の接点
紫苑が通っていたタクト学園と、高木たちが集まる「イマクニ」は、第9話までに別々の場所として描かれています。しかし、紫苑や宇都見を中心に人間関係をたどると、接点がある可能性も残ります。
今國はなぜ紫苑の死を知っていたのか
高木たちへ紫苑の死を伝えたのは今國でした。地域の店主として人の情報を知っていた可能性はありますが、紫苑が転校後に歩んだ人生まで把握していた理由は明確ではありません。
今國が紫苑本人や家族、タクト学園の関係者と面識を持っていた可能性があります。また、宇都見や別の人物から紫苑について聞いていたことも考えられます。
今國が事件へ関与していると断定はできませんが、「イマクニ」に集まる情報量と、店主が知っている人物関係は確認すべき点です。
紫苑の音楽を知る人物たち
タクト学園と追悼演奏会には、紫苑がピアノを愛していた時期を知る人物が集まります。宇都見のように紫苑の死へ強い感情を持つ人物が、ほかにもいる可能性があります。
高木たちへの復讐を望んでいたかどうかとは別に、紫苑が苦しんだ経緯を知り、学校時代の加害者へ怒りを持つ人はいるでしょう。
宇都見へ夢の絵や高木たちの現在の情報を渡した人物が、紫苑を通じてタクト学園とつながっていたことも考えられます。
「カノン」という題名が示す反復
第9話のサブタイトル「カノン」は、音楽形式のカノンと高木花音の名前の両方を連想させます。同じ旋律が少しずつ時間をずらして追いかける構造が、いじめと復讐の反復にも重なります。
紫苑のピアノと追悼演奏会
紫苑にとってピアノは、いじめから離れた後に自分の生活を支える大切な存在でした。第9話では、紫苑の死が宇都見の復讐へ使われる一方、追悼演奏会によって音楽の記憶へ戻されます。
カノンという題名は、紫苑の人生を殺人事件だけで終わらせず、音楽とともに生きた人物として描く意味を持つと考えられます。
標的を替えながら繰り返されるいじめ
紫苑が転校した後、園子が新しい標的になりました。集団いじめの旋律が、相手を替えながら繰り返されたように見えます。
現在では、宇都見が過去のいじめへ復讐し、その復讐が新しい被害者と遺族を作ります。過去の傷へ別の暴力で応じることで、同じ苦しみが時間をずらして次の人へ渡されていきます。
「カノン」は、同じ傷と加害が人物を替えながら反復する作品全体の構造を示す題名だと考えられます。
花音は反復を止められるのか
高木の娘・花音は、父親がいじめの加害者だったことを知りました。花音は父の罪を背負う必要はありませんが、同じ集団の場面で別の選択をするための記憶を受け取っています。
カノンのように同じ加害が世代を越えて繰り返されるのか、それとも花音が違う行動を選び、旋律を変えられるのか。第9話の題名には、次世代の選択へつながる意味もあるように見えます。
ドラマ「良いこと悪いこと」第9話を見終わった後の感想&考察

第9話では宇都見が実行犯だと判明しましたが、最も重かったのは犯人当ての答えより、宇都見が紫苑への愛情と復讐を同じものとして語ったことでした。紫苑を失った悲しみは理解できても、その悲しみは他者を殺してよい理由にはなりません。
また、小山の死は、夢になぞらえた連続事件の中でも特に残酷です。高木との友情を原動力に実現した宇宙が、親友との未来ではなく、命を奪う場所へ変えられました。
宇都見の悲しみは殺人を正当化しない
宇都見が紫苑を愛し、彼女を救えなかったことへ苦しんでいたのは事実です。しかし、深い悲しみを抱えていることと、他者の命を奪うことの間には越えてはならない境界があります。
宇都見の怒りには理解できる部分がある
紫苑は子ども時代にいじめられ、転校後も傷を抱えて生きていました。高木たちは自分たちがしたことを忘れ、父親や経営者、店主として普通の人生を送っています。
紫苑の近くにいた宇都見から見れば、加害者だけが過去から自由になり、被害者だけが苦しみ続けている不公平な状況です。高木たちが紫苑を思い出しもしなかったことへ、強い怒りを抱いたのは理解できます。
また、紫苑を支え切れなかった自分への罪悪感も、宇都見の心を追い詰めたのでしょう。怒りを向ける相手を作らなければ、自分自身を責め続けることになります。
理解と正当化を分けなければならない
宇都見がなぜ復讐へ進んだのかを理解することは、殺人を認めることではありません。悲しみや怒りがどれほど大きくても、武田、笑美、桜井、羽立、小山の命を奪う権利はありません。
高木たちには過去の加害へ責任を負う必要があります。しかし、その責任は法や対話、謝罪、今後の行動によって引き受けるものであり、宇都見が死刑のように命を奪ってよい理由にはなりません。
宇都見の感情を理解できるからこそ、その感情が殺人へ変わった地点を曖昧にしてはいけません。
復讐は紫苑のためではなく宇都見自身のため
宇都見は紫苑のために復讐したと考えています。しかし紫苑が殺人を望んでいたという事実は確認されていません。
高木たちを殺すことで一時的に満足するのは、すでに亡くなった紫苑ではなく宇都見です。宇都見は自分の怒りと罪悪感へ決着をつけるため、紫苑の名前を復讐の正当化へ使っています。
その結果、紫苑はピアノを愛した人としてではなく、連続殺人の原因として記憶されかねません。宇都見の行動は、紫苑の尊厳を守るどころか、彼女の人生を自分の復讐へ閉じ込めています。
小山の宇宙の夢が奪われた残酷さ
小山は、夢をかなえられなかった人物ではありません。子ども時代の宇宙への憧れを仕事へつなげ、高木との約束を現在まで持ち続けていました。
小山にとって宇宙は友情の象徴だった
小山は高木と絶交した後も、いつか高木を宇宙へ連れていくという約束を忘れませんでした。勉強や仕事へ力を注いだ背景には、親友との未来があります。
第3話で二人が友情を修復したことで、その夢は初めて現実の関係へ戻りました。宇宙へ行けるかどうか以上に、夢を語る相手が再びそばにいることが重要でした。
宇都見は、その友情の象徴を小山の殺害へ利用します。小山の人生で最も良かったものが、最期の瞬間に最も悪いものへ反転しました。
一度救われた小山が再び狙われた意味
小山はPRイベントで一度襲われ、高木によって救われています。高木には、親友を守れたという実感がありました。
しかし宇都見は、桜井と同じように、生き延びた標的を再び狙います。一度助ければ終わるのではなく、夢の再現を完遂するまで追い続けました。
高木にとって小山の死は、親友を失った悲しみだけでなく、守れたと思った自信まで崩すものです。自分が一緒にいれば助けられたのではないかという新しい罪悪感も残ります。
ただし、小山を殺した責任は宇都見にあります。高木が自分を責めすぎれば、再び犯人の罪まで背負うことになります。
信頼を利用された小山
小山は、宇都見を刑事として信頼したため、VR機器を装着しました。友人や捜査側を信じることが、小山の弱点として利用されています。
信じた小山が愚かだったのではありません。刑事という立場を使い、安心させた宇都見に責任があります。
小山の死は、夢だけでなく、人を信じて協力しようとした善意まで犯行へ利用された点で残酷でした。
園子と紫苑は同じ被害者でも同じ存在ではない
園子は紫苑と同じように高木たちからいじめられました。しかし、園子が現在選んでいる行動と、宇都見が紫苑の名で選んだ復讐は正反対です。
園子は加害者を許していない
園子は高木たちを簡単には許しません。閉所恐怖症や人を信じにくい傷が現在まで続いている以上、謝罪を受けたから過去にできる問題ではありません。
それでも園子は、桜井、笑美、羽立を死なせないために動きました。自分の潔白を証明するため、高木たちの家族をネット私刑へ差し出すことも拒んでいます。
園子の姿は、加害者を赦さなくても復讐を選ばない道があると示します。
紫苑の意思を宇都見が代弁する危うさ
紫苑本人はすでに亡くなっており、高木たちへ何を求めていたのか直接確認できません。宇都見は、自分が紫苑の痛みを理解していると考え、その代わりに罰を与えました。
しかし、被害者に近い人物であっても、本人の意思を完全に代弁することはできません。宇都見の復讐は、紫苑の願いではなく宇都見自身の選択です。
園子が復讐を止めようとすることは、紫苑の傷を否定することでもありません。紫苑の被害を認めながら、その名前を新しい殺人へ使わせないための行動です。
紫苑の記憶を音楽へ戻す園子
園子がタクト学園と追悼演奏会へたどり着いたことで、紫苑は事件の動機だけではない姿を取り戻します。ピアノを学び、音楽とともに生きた人物です。
園子が守ろうとしたのは宇都見から高木たちだけでなく、殺人の理由へ変えられた紫苑の記憶でもありました。
実行犯の逮捕で事件は終わっていない
宇都見が逮捕されたことで、一連の殺人を実行した人物は明らかになりました。しかし、情報源、計画の準備、逮捕時の合図など、多くの違和感が残っています。
宇都見一人では把握しにくい情報
宇都見は紫苑から子ども時代の話を聞けたとしても、替え歌、各自の夢、標的の現在の行動をすべて一人で知れたのかは疑問です。
高木たちの近くへ刑事として入った後に得た情報もありますが、武田の死など初期の犯行はそれ以前から準備されていた可能性があります。
事件の計画を作った人物、情報を提供した人物、実行へ協力した人物が別にいる可能性を考える必要があります。
「カノン」のように追いかけてくる過去
カノンでは、一つの旋律を別の声部が少し遅れて追いかけます。本作でも、紫苑へのいじめが園子へ繰り返され、過去の加害が現在の復讐として追いかけてきました。
宇都見を逮捕しても、過去そのものが消えるわけではありません。高木たちが紫苑、園子、森へしたことに向き合わなければ、別の形で傷が次の人物へ渡されます。
最終回へ残された計画者の影
宇都見の意味深な動きは、自分の逮捕後にも誰かが計画を続けることを知っているようにも見えます。宇都見が実行役で、別の人物が全体を設計していた可能性もあります。
『良いこと悪いこと』第9話は、犯人を逮捕する回ではなく、実行犯の背後にある復讐の仕組みを追う最終段階へ入った回でした。
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