第4話の最後で浮上してきたのが担任の大谷。

第5話「みんなの夢」は、“言葉にできる者が何を伝えるか”を問う回。
連続殺人の裏で、園子(新木優子)と高木(間宮祥太朗)は母校を訪ね、過去を知る担任・大谷(赤間麻里子)と対峙する。
「いじめはなかった」と笑う先生、見て見ぬふりをした委員長、そして掲示板に残された“博士”という忘れられた声――。
それぞれの“沈黙”が少しずつ崩れ始め、『ごんぎつね』の授業をきっかけに、謝罪と赦しの形が再定義されていく。
ここからドラマ『良いこと悪いこと』第5話のあらすじと感想・考察を紹介します。
良いこと悪いこと5話のあらすじ&ネタバレ

第5話のサブタイトルは「みんなの夢」。
連続殺人の渦中で生き残る“元6年1組”の3人――キングこと高木将(間宮祥太朗)、ターボーこと小山隆弘(森本慎太郎)、ちょんまげこと羽立太輔は、犯人像を「クラス」に引き戻す。
鍵を握るのは、かつての担任・大谷典代と委員長、そしてタイムカプセルに眠る違和感。
さらに掲示板に現れた“博士”という忘れられた声が、事件の地図を描き替えていく。
母校へ――担任・大谷に当たるという“原点回帰”
ガレージでの協議の中で、高木は言う。
「園子(新木優子)以外にも、俺たちを恨んでる奴がいるのかもしれない」。
写真を眺めていた3人の視線が止まる先にいたのは、“忘れない大人”である担任の大谷。
「先生なら何か覚えてるかもしれない」と決意し、園子を伴って母校を訪ねることに。
過去に蓋をするためではなく、“真実を思い出させるため”の訪問だった。
校舎で蘇る“場所の記憶”と、花音の不穏
校内に足を踏み入れた瞬間、園子の脳裏に過去の断片が蘇る。
備品倉庫に閉じ込められた日、昇降口で謝罪を強要された声、階段で浴びた嘲笑。
一方、高木は廊下で娘・花音が男子と口論する場面を目にする。
過去の加害と被害の構図が、世代を超えて繰り返されている――その現実に言葉を失う。
校長室――「いじめはなかった」と笑う先生、そして“手がかり”
校長に昇進していた大谷は、「元6年1組で目立ったトラブルはなかった」と微笑みながら否定。
「園子さんがいじめられていたなんて、知らなかったわ」とも語る。
しかし、室内には不可解な欠落があった。棚にはあるはずの高木達の年の卒業アルバムがない。
のちに繋がる“タイムカプセル”の矛盾と照らし合わせると、「先生は何かを知っている」という疑念が一気に強まる。
「タイムカプセル×卒アル」の矛盾――掘り起こしの痕跡
卒業アルバムは卒業時に生徒へ渡されるはず。
それがタイムカプセルから出てきたということは――誰かが一度掘り起こして入れ直した。
“塗りつぶし”“掘り起こし”“埋め直し”の痕跡。過去を隠したのか、それとも守ろうとしたのか。
真相の矛先は自然と、大谷へと向かっていく。
委員長の来訪と“焼肉のテーブル”――「見て見ぬふり」への謝罪
キング達が作戦会議している時に元クラス委員長・小林紗季(平岩紙)が訪ねてくる。
小林は園子を焼肉に誘い、夜食べに行く。
店のテーブルで、紗季はゆっくりと切り出す。
「ごめんね。いじめに気づいてたのに、何もできなかった」
そして続けて、「高木くんのことが好きだった。だから何も言えなかった」と。
園子はすぐに赦さない。「言葉で済むことじゃない」と静かに返す。しかし、彼女がその場に座り、向き合ったこと自体が“関係の再起動”を意味していた。
特別授業「ごんぎつね」――“言葉にできる者の責任”
大谷の依頼で、園子が4年生のクラスで『ごんぎつね』を題材に授業を行う。
「いたずらを謝れなかった狐と、誤解して撃った人間。
どちらが悪いのかではなく、相手の気持ちを想像できたかどうかが大事です」と語る園子。
ここで手を挙げたのは花音。
「ごんは悪いことをした。かわいそうとは思わない。パパはどう思う?」
教室の後方にいた高木が、静かに答える。
「ごんは“言えなかった”から死んだ。人間は言える。だから伝えるべきなんだ」
“言葉にできる者の責任”というテーマが、父と娘の対話の中で浮かび上がる。
「なかったことにはできない」――高木の謝罪と園子の応答
授業を終えたあと、高木は園子のもとへ歩み寄り、深く頭を下げる。
「事件を解決すれば許してもらえると思ってた。違うよな。最初から、謝るべきだった」
園子は涙をこらえながら答える。
「今は、許せない。でも事件を終わらせよう。全部、終わらせよう」
赦しよりも、まず“構造を終わらせる”という共通の覚悟がここに生まれた。
再訪・校長室――「忘れた」は通用しない
園子と高木は再び校長室へ。
「卒業アルバムはどこにあるんですか」「タイムカプセルの中身、誰が変えたんですか」。
矢継ぎ早の質問に、大谷は「いろいろ忘れてしまって」と笑みを保とうとする。
高木は真っ直ぐに見つめ、「俺は加害者です。逃げません」と言葉を絞り出す。だが、大谷は「お帰りください」と面談を打ち切る。
校庭では、花音がクラスメイトに頭を下げる姿があり、園子は「収穫、ありましたね」と静かに呟く。
大谷の“涙”と“電話”――事なかれの終焉
夜、独りになった大谷は「みんなの夢」の映像を再生しながら涙をこぼす。
「ごめんなさい」と呟き、電話の相手に告げる。
「あなたに言われた通り、タイムカプセルを掘り起こした。もうやめませんか」
黒い車に乗り込む姿は、脅迫か、それとも共犯か。
“事なかれ主義”に生きてきた教師の良心が、ようやく悲鳴を上げた瞬間だった。
裏掲示板「鷹里小の森」――“博士”=忘れられた7人目
羽立は学校の裏掲示板「鷹里小の森」を見つける。
“誰も覚えていない”と嘆く投稿者に、「覚えてるよ、博士だよね?」と返信。
「もしかして、ちょんまげ?」と即座に返答があり、「あの7人組を覚えていたのは君だけ」と続く。
忘れられた“博士”――それが、封じられた7人目の存在を示すサインとなる。
制度の回路が動く――宇都見、再捜査に舵
警視庁の宇都見啓(木村昴)が、笑美と武田の“事故死”を再捜査に着手。
「民間の追跡(園子と高木)」に、「公的な記録(警察)」が接続され、事件は“教室の罪”から“社会の責任”へと拡張していく。
良いこと悪いこと5話の感想&考察

第5話は、「言葉にできる者の責任」を正面から描いた回だ。
『ごんぎつね』という古典を“伝達の寓意”として埋め込み、謝罪を“感情の終止符”ではなく“関係の再起動”として配置した。同時に、先生(大谷)・委員長・博士という“忘却の三角形”を立ち上げ、事件の焦点を加害と被害の二項対立から“記憶と責任の分配”へと拡張した。
それぞれの「言葉」が誰のために、何を動かしたのか。以下、論点別に掘り下げていく。
『ごんぎつね』の置き方――“狐は言えない、人は言える”
園子の授業は、ただの演出ではなく物語を駆動する装置だった。
「狐は言えない、人は言える」――教室の後方からそう答えるのは、高木。
「ごんは“言えなかった”から死んだ。人間は言える。だから伝えるべきだ」
この台詞で、“言葉にできる者は言葉にすべき”という倫理が、物語の中に刻まれる。
そしてそれは、高木自身の“謝罪”の動機となり、園子の「今は許せない」という現実的な返答とぶつかる。
授業→父娘の質疑→謝罪という三段構成が、謝罪の意味を“再起動”のための行為として成立させていた。
先生の「知らなかった」は免罪か――“事なかれ”の個人責任
「いじめはなかった」「覚えていない」と笑う大谷の姿は、学校という制度そのものの“顔”に見える。
だが、終盤の電話で彼女は崩れる。
「あなたに言われた通り、掘り起こした。もうやめませんか」
“知らなかった”という防御線が、“知っていた”あるいは“関与していた”へと軸をずらす。
不作為(見て見ぬふり)と加担(意図的な隠蔽)のあいだに横たわる「個人責任」をどう測るか。
5話はその判断を観客に委ねた。
涙を流す彼女の姿は、事なかれを続けた教師の終焉であり、「沈黙の加害」を描く象徴だった。
委員長の“共犯的謝罪”――赦しを前提にしない誠実さ
焼肉店での会話は、これまでのどの告白よりも静かで痛い。
委員長・紗季(平岩紙)は、箸を握りしめたまま言う。
「許さなくていい。でも、謝りたかった」
そして、「当時、高木が好きだったから、園子をかばえなかった」と続ける。
この“人気者の磁場”がいじめの背景にあったことを、紗季自身が言語化した瞬間だった。
園子はただ一言、「謝ってすぐに楽にならないで」と返す。赦しを急がず、沈黙を共有する。そこにこの作品の誠実さが宿っていた。
「博士」=7人目の輪郭――忘却という二次加害
掲示板の書き込み主“博士”は、「誰も覚えていない」という言葉を何度も繰り返す。
その反復自体が、存在の抹消、すなわち“忘却の暴力”を体現していた。
羽立が「覚えてるよ、博士だよね?」と返した瞬間、「もしかして、ちょんまげ?」という返信が届き、記憶の空白が一気に現実を取り戻す。
博士が“7人目”として浮上したことで、事件は直接的な加害だけでなく、「忘れたことが加害になる」という新しいフェーズに突入した。
“記憶の欠落”こそが、最も静かで深い罪として描かれている。
博士については以下記事で考察しています↓

タイムカプセルのロジック――“誰が、何を、いつ、誰に見せたか”
タイムカプセルの中に卒業アルバムが入っていたという一点は、「一度掘り起こした誰か」の存在を示唆している。
卒業アルバムは、そもそも卒業時に配られるもの。なのにカプセルから出てきた。
この異常な順序の逆転が、5話最大のミステリーポイントだ。
誰が掘り、何を入れ替え、いつ埋め直し、誰に見せたのか。
この“情報伝達の履歴”こそが、今後の事件の糸口になる。
大谷=実行者(塗り/掘り/埋め)という仮説のもと、背後で誰が指示したのか――その“黒幕の声”が、電話の相手ではないかと推測される。
制度の回路と“公的記録”――宇都見の再捜査が意味するもの
警視庁の宇都見啓が再び動き出す。
「事故」とされた死を、もう一度テーブルに載せる。
この行為は、私的探求(園子・高木)と公的記録(警察)を橋渡しする象徴だった。
5話で確立した「なかったことにしない」という規範が、ここで社会的手続きへと変換される。
記憶を証拠に変えること。
“教室の真実”を、制度の言葉に翻訳できるかどうか。次の焦点は、そこにある。
5話の伏線・小道具チェック
- 2003年度の卒業アルバムが校長室にない:タイムカプセルとの関連を示唆。
- 「みんなの夢」動画:大谷が保持している理由が“埋め直し仮説”と接続。
- 黒い車:脅迫・共犯の象徴として再登場。
- 掲示板「鷹里小の森」→博士の発見:7人目の実在を補強。
次回への見どころ
キャストコメントどおり、「先生と委員長、そして博士」が物語の核に接近する。
先生=情報の入口、委員長=クラスの秩序の記憶、博士=忘却の被害者。
この三者がどのように“言葉”を取り戻すかが、次回の見どころとなる。
5話はその直前で、登場人物それぞれに“言葉の責任”を割り当てた回。赦しではなく、記憶をつなぐための倫理が整った――物語はいよいよ核心へと向かう。
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