『良いこと悪いこと』で「博士」と呼ばれていた人物の正体は、森智也です。森は高木の娘・花音の担任として先に登場していた森先生であり、高木たちが子ども時代の記憶から失っていた7人目の同級生でした。
ただし、森は連続殺人の犯人でも黒幕でもありません。羽立に接触し、旧サイトや消えたDVDともつながっていたため強く疑われましたが、最終回までに明らかになった事件の共謀者は宇都見、今國、東雲であり、森が殺人計画に加担した事実は示されていません。
森の本当の役割は、忘れられた元友人として高木たちの記憶を揺さぶり、DVDを通じて瀬戸紫苑というさらに深い過去へ導くことでした。この記事では、博士=森智也の正体、犯人ではない理由、羽立や旧サイトとの関係、伏線とミスリード、そして「忘れられる痛み」が示す作品テーマについて最終回時点で詳しく考察します。
「良いこと悪いこと」の博士は誰?正体は森智也

「博士」の正体は森智也で、高木たちが小学生時代に一緒に過ごしていた元同級生です。現在は教師となり、高木の娘・花音の担任である森先生として、博士の存在が明らかになる前から物語に登場していました。
第8話で博士と森先生が同一人物だと分かったことで、それまで別々に見えていた現在と過去が一本につながります。高木たちは森の顔をすでに見ていたにもかかわらず、目の前の教師がかつての友人だとは気づいていませんでした。
博士は花音の担任として登場していた森先生
森智也は、博士として正体を隠して突然現れた人物ではありません。高木の娘・花音の担任として日常の場面に入り込み、高木と接点を持ちながらも、過去の友人だとは認識されない状態が続いていました。
この配置が不気味なのは、森が高木のすぐ近くにいたからではなく、高木が森を見ても何も思い出さなかったからです。森にとって高木たちは、自分の人生を形作るほど大切な友人でしたが、高木にとって森は、娘の担任として初めて会ったように見える他人になっていました。
森が花音の担任になった経緯に、森自身の意図があったのかは明確に描かれていません。そのため、高木へ近づくために教師になった、復讐のために花音の担任になったとまでは断定できませんが、物語上では「忘れられた人物が、気づかれないままそばにいる」という強烈な皮肉として機能していました。
博士役は古舘佑太郎・小学生時代は及川欽之典
現在の森智也を演じているのは古舘佑太郎です。穏やかな教師としての表情と、博士として高木たちへ向ける冷えた怒りの落差によって、忘れられた者が長い時間をかけて抱えてきた孤独を表現しています。
小学生時代の森智也は及川欽之典が演じています。現在の森だけを見ると、博士は高木たちを恨む謎の人物に見えますが、子ども時代の姿が映ることで、森もかつては6人と笑い合い、仲間であり続けることを願っていた少年だったと分かります。
現在と過去を別々の俳優が演じることで、森が博士になるまでに積み重なった時間の重さも伝わってきます。子どものころの願いは消えたのではなく、忘れられた痛みと罪悪感を抱えたまま、大人の森の中に残り続けていました。
高木たちが忘れていた7人目の仲間
高木たちの小学生時代の仲間は、当初6人だったように語られていました。しかし、作中に登場したゲームの4人、カードの2人、漫画の1人を合わせると7人になり、現在認識されている人数と計算が合いません。
さらに、集合場面ではもう1人分の影が示され、画面の中にはいるのに人物として数えられていない存在がいることがほのめかされていました。その7人目こそ、博士と呼ばれていた森智也です。
森が卒業アルバムに載っていなかったことも、高木たちが存在を思い出せなかった大きな要因でした。しかし、アルバムに姿がないことと、森が彼らと過ごしていなかったことは同じではありません。
森は記録から抜け落ち、高木たちの記憶からも失われましたが、森自身の中には7人で過ごした時間が残っていました。この記憶の非対称さが、森を単なる謎の人物ではなく、忘却によって深く傷つけられた人物にしています。
博士は犯人・黒幕なのか?最終回時点の結論

博士=森智也は、一連の連続殺人の犯人でも黒幕でもありません。森は高木たちに怒りを抱き、羽立を呼び出し、消えたDVDを持っていたため事件の中心人物に見えましたが、最終回までに森が殺人計画へ加担していた事実は示されませんでした。
森が怪しく見えたのは、森自身が過去についてすべてを語らず、高木たちへの怒りも隠していなかったからです。ただし、恨みや怒りを持っていることと、殺人を計画して実行することは分けて考える必要があります。
森智也は連続殺人の犯人ではない
森には、高木たちを恨む理由がありました。大切な友人だと思っていた相手から存在ごと忘れられ、自分たちの過去が6人だけの思い出として語られている状況は、森にとって自分の人生を否定されることに近かったと考えられます。
そのため、博士としての森が高木たちへ冷たい態度を見せたとき、森が復讐のために連続殺人を始めたようにも見えました。しかし、最終回で明らかになった事件の構造に森は含まれておらず、森が犯行を指示した事実も、宇都見たちを操っていた事実もありません。
森が抱えていたのは殺人によって相手を裁きたいという単純な憎悪ではなく、なぜ自分だけが忘れられたのかという悲しみと、過去のいじめを止められなかった罪悪感です。森の怒りは確かに危ういものでしたが、その感情をそのまま殺人動機と結びつけることはできません。
羽立を呼び出したが殺害の実行犯ではない
森は裏掲示板を通じて羽立と接触し、羽立を呼び出していました。羽立だけが博士の存在を覚えていたこともあり、博士と羽立の関係は事件の真相に直結するように見えます。
しかし、森が羽立を呼び出したことと、森が羽立を殺したことは別です。森は羽立と会おうとしていましたが、最終回までに森が羽立殺害の実行犯だったとは示されていません。
森の行動が結果的に羽立の死の直前と重なっていたため、視聴者だけでなく高木たちも森を疑いやすい状況になっていました。これは森を黒幕に見せる強いミスリードですが、接触の事実だけを犯行の証拠として扱うことはできません。
一方で、森の行動にまったく問題がなかったわけでもありません。高木たちへの怒りを抱えたまま羽立へ秘密裏に接触したことは、森が過去を正面から語るのではなく、閉じた場所で処理しようとしていたことを示しています。
事件を起こしたのは宇都見・今國・東雲の3人
最終回までに、一連の事件は宇都見、今國、東雲の共謀によって進められていたことが明らかになりました。宇都見が実行面で動き、今國と東雲が計画や情報面で関わっていたことで、博士とは別の場所で殺人計画が進められていました。
森は高木たちと同じ過去に傷つけられた人物ではありますが、宇都見たちを指揮する黒幕ではありません。森の存在と真犯人グループが近くに配置されていたため、博士の正体を突き止めれば事件全体が解決するように見えましたが、実際には森の先にもう一段深い真相が隠されていました。
ここで重要なのは、森が犯人ではないからといって、森が完全な善人になるわけではないことです。殺人を実行した人物と、過去のいじめを止められなかった人物は同じではありませんが、本作はその違いを示しながら、どちらにも責任や後悔が残る構造を描いています。

博士=森智也は何をした?事件との関わりを整理

森は殺人事件の犯人ではありませんが、過去と現在をつなぐ重要人物です。旧サイト「鷹里小の森」を作り、そのサイトがいじめに使われる状況を止められなかったこと、羽立に接触したこと、消えたDVDを持っていたことによって、事件の外側にいるだけの人物ではなくなっています。
森の役割を理解するためには、殺人に関わったかどうかだけではなく、過去に何を見て、何をしなかったのかまで整理する必要があります。森は忘れられた被害者であると同時に、別の被害者が傷つけられる場面で声を上げられなかった傍観者でもありました。
旧サイト「鷹里小の森」を作りいじめを傍観した
森は、旧サイト「鷹里小の森」を作った人物でした。サイト名に自身の名字である「森」が含まれていたことは、博士の正体へつながる伏線のひとつです。
ただし、森が最初からいじめや復讐のためにサイトを作ったと断定できる描写はありません。問題は、そのサイトがいじめに利用されるようになったあと、森が状況を止められなかったことです。
森自身も高木たちとの関係を失いたくなかったため、仲間が誰かを傷つけていると分かっていても、正面から拒絶できなかった可能性があります。けれども、どのような恐れがあったとしても、見て見ぬふりをしたことで被害が続いた以上、森の中には傍観した責任が残りました。
森を理解するうえで大切なのは、忘れられた被害者だからすべて許されるわけではないという点です。森は傷つけられた側でありながら、別の誰かが傷つけられる状況を止められなかった人物でもあり、その矛盾が現在まで続く罪悪感になったと考えられます。
掲示板で羽立に接触し高木たちへの怒りを示した
博士は裏掲示板に現れ、羽立と接触していました。羽立が博士の存在を覚えていたことで、森にとって羽立は、失われた過去を共有できる数少ない相手だったと考えられます。
一方で、森は羽立と再会することによって、かつての友情を取り戻そうとしただけではありません。高木たちが自分を忘れている現実を突きつけ、森の中に残っていた怒りや孤独を言葉にしようとしていました。
森が高木たちへ抱いていた怒りは、単に名前を忘れられたことへの腹立ちではありません。森にとって大切だった時間が、相手側では存在しなかったことになっていたため、自分だけが過去に取り残されたような感覚を抱えていたのでしょう。
しかし、その怒りは殺人計画へつながっていません。掲示板での接触は森を疑わせる材料にはなりましたが、最終的には森が何を恨んでいたのかを明らかにする場面であり、森が真犯人だと証明する場面ではありませんでした。

消えた「みんなの夢」のDVDを持っていた
森は、学校から消えていた「みんなの夢」のDVDを持っていました。DVDには高木たちの小学生時代が記録されており、言葉だけでは取り戻せなかった記憶を映像として残していました。
森がどのような経緯でDVDを手に入れ、いつから保管していたのかは明確に説明されていません。そのため、森が学校から盗み出した、事件のために持ち出したといった経緯を事実として補うことはできません。
それでも、DVDを森が持っていたことには大きな意味があります。卒業アルバムには載らず、高木たちの記憶からも消えた森にとって、DVDは自分が6人と一緒にいたことを証明する記録でした。
森は自分の存在を覚えているためにDVDを必要としていたのかもしれません。高木たちに忘れられても、映像の中には7人で過ごした時間が残っており、その記録だけが森の記憶を一人だけの思い込みにしない支えになっていたとも考えられます。
DVDを高木へ渡し瀬戸紫苑の存在を思い出させた
森は最終的にDVDを高木へ渡しました。そこに映っていたのは、森を含む7人の友情だけではなく、高木たちがさらに深く記憶から遠ざけていた瀬戸紫苑の姿でした。
博士の正体が森だと分かった時点では、森こそ事件の中心にいる人物のように見えます。しかし、DVDが再生されたことで、森の正体は最終解答ではなく、瀬戸紫苑という本当の被害者へ近づくための入口だったと分かります。
森がDVDを渡した行動は、高木たちを苦しめるためだけのものではありません。高木たちが忘れていた過去を、自分たちの都合のいい思い出ではなく、傷つけられた人間も含めた記憶として見直させる行為でした。
森には高木たちへの怒りがありましたが、それでも記録を隠し続けるのではなく、高木へ渡しています。森は高木たちを許したわけではないものの、過去を破壊するよりも、過去を正しく見せることを選んだように見えます。
森智也が忘れられた7人目になった理由

森が高木たちの記憶から消えた背景には、卒業前の転校と、卒業アルバムに載らなかったことがあります。森は誰かによって記録を意図的に消されたわけではなく、転校と時間の経過によって、6人の共有記憶から少しずつ抜け落ちていったと考えられます。
ただし、忘れられた経緯が偶然だったとしても、森が受けた傷まで小さくなるわけではありません。忘れた側に悪意がなくても、忘れられた側にとっては、自分と過ごした時間を否定されたことになります。
卒業前に転校し卒業アルバムに載らなかった
森は卒業前に転校したため、高木たちの卒業アルバムには姿がありませんでした。大人になった高木たちが過去を振り返るとき、卒業アルバムは記憶を確認する大きな手がかりになりますが、その中に森はいません。
アルバムに載っていない人物は、同窓会や昔話でも思い出されにくくなります。高木たちは6人の写真や記録を見ながら過去を整理するうちに、森のいない形で子ども時代の物語を完成させてしまったのでしょう。
しかし、アルバムにいなかったことは、森が仲間ではなかったことを意味しません。森は転校するまで6人と時間を共有し、同じ遊びや秘密を知り、これからも友達でいたいと願っていました。
森の悲しさは、自分にとって人生を変えるほど大きな友情が、相手側の記録には残らなかったことです。存在した時間よりも、残された記録の方が強くなり、森のいた過去が6人の中から消えてしまいました。
高木たちは森との友情まで記憶から失っていた
高木たちが忘れていたのは、森の名前や顔だけではありません。7人で一緒にいた時間や、森が抱いていた「6人とずっと友達でいたい」という願いまで、記憶から失っていました。
森にとって高木たちは、転校しても心の中でつながり続ける友人だったのでしょう。ところが再会した高木たちは森を友人として認識せず、娘の担任として初めて出会った人物のように接しました。
この落差が森の怒りを生んでいます。森は6人を忘れられなかったからこそ、6人が自分を忘れている現実を受け入れられず、自分だけが過去に取り残されたような孤独を抱えました。
森の存在は、記憶が公平ではないことを示しています。同じ時間を過ごしても、その時間が人生の中心になる人もいれば、年月とともに忘れてしまう人もいるため、思い出の重さは必ずしも共有されません。
羽立だけが博士を覚えていた意味
高木たちの中で、羽立だけは博士の存在を覚えていました。ただし、なぜ羽立だけが森を覚えていたのか、その理由は最終回まで明確に説明されていません。
羽立が集団の中心ではなく周縁に近い立場にいたことが、森のように記憶からこぼれ落ちた人物へ意識を向けさせた可能性はあります。自分も仲間から外れる不安を抱えた経験があれば、同じように姿を消した森のことを忘れにくかったとも考えられます。
また、過去のいじめに対する罪悪感が羽立の記憶を残していた可能性もあります。人は自分に都合のいい記憶を薄めることがありますが、羽立は森や瀬戸紫苑に関わる過去を完全には切り離せなかったのかもしれません。
羽立だけが森を覚えていたという事実は、同じ6人の中でも過去の受け止め方が同じではなかったことを示しています。誰が何を覚え、何を忘れたかという違いそのものが、現在の事件を生む土台になっていました。
博士の伏線とミスリードを最終回まで整理

博士に関する伏線は、森智也の正体を示すものと、森を犯人に見せるミスリードが重ねられていました。森先生としての先行登場、人数のずれ、裏掲示板、旧サイト、古い動画、DVDはすべて森につながりますが、それらは森が殺人犯である証拠ではありません。
博士の伏線を振り返ると、本作が「正体」と「犯人」を意図的に混同させていたことが分かります。視聴者は博士の正体を突き止めることに集中しますが、本当の事件の真相は、博士のさらに先に隠されていました。
第3話の森先生と第5話の授業参観
森智也は、博士として名前が浮上する前から森先生として登場していました。高木の娘・花音の担任という現在の役割が強く印象づけられていたため、視聴者も高木も、森先生を小学生時代の同級生とは結びつけにくくなっていました。
第5話の授業参観でも、森は高木の家族に近い場所にいます。しかし、高木の中に森との過去がないため、森が目の前にいても記憶が反応しません。
博士の正体が分かったあとに見返すと、森先生の場面は単なる学校パートではなく、忘れられた人物が気づかれないまま友人の人生へ戻っていた場面になります。森は高木にとって初対面の教師でしたが、森の側から見れば、かつての友人との再会でした。
第4話の人数のずれともう1人分の影
第4話では、ゲームに登場する4人、カードの2人、漫画の1人を合わせると7人になるという人数のずれが示されました。高木たちが認識している仲間は6人であるため、計算上は1人足りません。
さらに、集合場面などではもう1人分の影が存在し、そこに誰かがいたことが視覚的にほのめかされていました。この影は、犯人グループの人数を示すものではなく、写真や記憶の外側に追いやられた森の存在を示していたと考えられます。
森は高木たちの過去から完全に消えたのではなく、形を失ったまま残っていました。人物として思い出されなくても、人数の違和感や影として痕跡が現れ、6人だけでは説明できない過去があることを伝えていました。
第5話の掲示板と第7話の古い携帯動画
第5話では裏掲示板に博士が現れ、羽立がその存在を覚えていることが分かりました。卒業アルバムにはいない人物が、インターネット上には痕跡を残していたことで、博士が高木たちの過去とつながる実在の人物だと見えてきます。
第7話の古い携帯電話の動画も、現在の記憶だけでは復元できない過去を映す記録として機能しました。高木たちの証言や思い出は欠けていますが、映像やデジタル上の記録には、忘れられた人物の存在が残されています。
ここで重要なのは、記録が真実のすべてを説明するわけではないことです。映像は森がそこにいたことを証明しますが、森がどのような感情で6人を見ていたのか、なぜ何も言えなかったのかまでは映しません。
そのため、記録が戻るほど森の存在は明らかになる一方、森が抱えてきた孤独や罪悪感は、本人の行動から読み解く必要がありました。
旧サイト名「鷹里小の森」と森先生の名前がつながる
旧サイト「鷹里小の森」という名前には、森智也の名字である「森」が含まれていました。博士が誰か分からない段階では学校に関係する一般的な名称にも見えますが、正体判明後には森が作った場所だったことを示す分かりやすい手がかりになります。
森は卒業アルバムには残らなかった一方、自ら作ったサイトには名前の一部を残していました。現実の記録から消えた人物が、デジタル空間には痕跡を残していたという対比も印象的です。
ただし、サイトは森の存在証明だけを担った場所ではありません。いじめに利用されたことで、森が仲間とのつながりを守ろうとした場所が、別の誰かを傷つける場所へ変わってしまいました。
「鷹里小の森」は、森の孤独を示す証拠であると同時に、森が目を背けた過去の証拠でもあります。森にとって、失った友情と傍観した罪が同時に残る場所だったと受け取れます。
DVDの先にいた瀬戸紫苑が真相を変えた
博士=森智也という答えにたどり着いたあと、物語はDVDによって瀬戸紫苑の存在を浮上させました。森の正体を知ることが事件の終着点ではなく、森もまた本当の過去へつながる途中の人物だったと分かります。
高木たちは森を忘れていましたが、さらに瀬戸紫苑の傷についても、自分たちに都合のいい形で記憶から遠ざけていました。森がDVDを渡したことで、6人の楽しい思い出だけでは成立しない過去が明らかになります。
この構造によって、森は真犯人を隠すだけのミスリードではなくなっています。森は視聴者の疑いを自分へ引きつけながら、最後には高木たちが忘れていた本当の被害者へ目を向けさせました。
博士の正体判明は、謎が解ける場面であると同時に、新しい責任が始まる場面です。高木たちは森を思い出すだけでは足りず、森の先にいた瀬戸紫苑と、自分たちが何をしたのかまで思い出さなければなりませんでした。
博士の「6人とずっと友達でいたい」という夢の意味

森が子どものころに抱いていた夢は、「6人とずっと友達でいたい」というものでした。この願いから分かるのは、森が本来求めていたものが復讐ではなく、仲間の一員として認められ、記憶され続けることだったという点です。
森の怒りは、友情がなかったから生まれたのではありません。森にとって友情が大切すぎたため、6人に忘れられた現実が、自分の存在そのものを否定されたような傷になりました。
忘れられた怒りの奥にあった仲間への執着
森が高木たちへ見せた怒りの奥には、6人を大切に思い続けた感情があります。本当にどうでもいい相手であれば、忘れられてもこれほど深く傷つくことはありません。
森は転校後も、6人との時間を自分の人生の一部として抱え続けていたのでしょう。それに対して、高木たちは森の存在を忘れ、6人だけの友情を自分たちの過去として語っていました。
森が欲しかったのは、6人を苦しめて勝つことではなく、自分もそこにいたと認めてもらうことだったと考えられます。だからこそ森は、高木たちを完全に破壊するのではなく、DVDを渡して自分たちの過去を見直させました。
森の執着は危うさを持っていますが、それは支配したいという欲望より、切り捨てられたくないという承認欲求に近いものです。仲間であり続けたいという子どもの願いが、忘れられたことで怒りへ形を変えていました。
被害者にも加害者にもなり切れない森の立場
森は、高木たちから存在を忘れられた被害者です。大切にしていた友情を相手だけが忘れていたことで、森は自分の過去を共有できる相手を失い、長い孤独を抱えることになりました。
しかし、森は旧サイトがいじめに使われる状況を止められなかった人物でもあります。森自身が直接いじめを主導したわけではなくても、見て見ぬふりをしたことで、瀬戸紫苑の傷を深くする側に立ってしまいました。
森が何も言えなかった背景には、6人との友情を失いたくない恐れがあったのかもしれません。仲間から外されることを恐れるあまり、傷つけられている人物より、自分の居場所を守ることを優先してしまったとも考えられます。
その結果、森は自分が忘れられる痛みを知りながら、過去には別の誰かが孤立する状況を止められませんでした。森は純粋な被害者でも、明確な加害者でもなく、その両方の要素を抱えているからこそ苦しみ続けていたのでしょう。
博士が映す「忘却も人を傷つける」というテーマ
森の存在が示しているのは、忘れることにも暴力性があるということです。高木たちは森を傷つけようとして意図的に忘れたわけではありませんが、悪意がなかったとしても、忘れられた森の傷は消えません。
人は自分にとって都合の悪い記憶や、現在の人生に必要のない記憶を無意識に薄めていきます。しかし、その記憶の中に別の人間の人生や痛みが含まれている場合、忘れた側だけが過去から自由になることになります。
森は、自分を忘れた6人を責める一方、自分も瀬戸紫苑の痛みから目を背けていました。つまり本作は、覚えている者と忘れた者を単純に善悪へ分けるのではなく、誰もが自分に都合のいい形で過去を選び直してしまう危うさを描いています。
『良いこと悪いこと』というタイトルの通り、森の中にも良い面と悪い面が同時に存在します。森は殺人犯ではありませんが何の責任もない人物ではなく、傷つけられた経験があるからこそ、過去の傍観と向き合わなければならない人物でした。
博士について最終回でも明言されなかったこと

博士の正体と物語上の役割は明らかになりましたが、森をめぐるすべての事情が細部まで説明されたわけではありません。分からない部分を推測だけで埋めると、森が犯人だったという古い考察へ再び戻ってしまうため、確定事項と未確定事項を分ける必要があります。
特に、博士というあだ名の由来、DVDの入手経路、羽立襲撃時の細かな役割分担、森が花音の担任になった経緯は、最終回後も断定できない部分として残っています。
「博士」というあだ名の詳しい由来
森がなぜ「博士」と呼ばれていたのか、詳しい由来は明確に説明されていません。森が旧サイト「鷹里小の森」を作っていたことから、パソコンやインターネットに詳しかったことがあだ名につながった可能性は考えられます。
ただし、作中で「パソコン博士だったから」と明言されたわけではありません。知識が豊富だった、何かを調べることが好きだったなど、別の理由も考えられるため、由来は推測の範囲にとどまります。
博士という呼び名には、本名の森智也を隠す効果もありました。高木たちはあだ名を聞いても森の名前へ結びつけられず、視聴者も博士という記号だけを追うことで、すでに登場していた森先生を見落としやすくなっていました。
森がDVDを持っていた正確な経緯
森が「みんなの夢」のDVDを持っていたことは明らかですが、学校から消えたDVDがどのように森の手元へ渡ったのかは詳しく描かれていません。森がいつから所持していたのか、誰かを経由して受け取ったのかも断定できません。
そのため、森が学校から盗み出した、事件を起こすために隠していたという説明は避ける必要があります。確実に言えるのは、森がDVDを保管し、最終的に高木へ渡したことです。
物語上の意味としては、入手方法よりも、森が記録を持ち続けていたことが重要です。高木たちが忘れてしまった7人の時間を、忘れられた本人である森が抱え続け、最後に過去の当事者へ返しています。
羽立襲撃時の実行役と共犯者の細かな役割分担
羽立の死を含む一連の事件は、宇都見、今國、東雲の共謀として整理できます。ただし、個々の現場で誰がどの動きを担当し、どの段階で情報を共有していたのかについては、すべてが細かく説明されたわけではありません。
森が羽立を呼び出したことから、森も襲撃計画を知っていたように見えますが、森が殺害の実行や共謀へ加わった事実は示されていません。呼び出しと襲撃の間にどのような情報の流れがあったのかは、確認できる描写を超えて補うべきではありません。
森を理解するうえでは、未説明の部分を理由に再び黒幕扱いするより、最終回で明らかになった犯人構造と森の役割を分けることが重要です。森は事件の近くにいましたが、殺人を実行した側ではなく、過去を開く鍵を持っていた人物でした。
森が花音の担任になった経緯
森が高木の娘・花音の担任になったことに、森自身の意図があったのかは明確にされていません。高木へ近づくために勤務先や担当を選んだと断定できる情報はなく、復讐計画の一部だったともいえません。
物語として見ると、森が花音の担任だったことは、高木と森の記憶の差を最も残酷な形で見せる仕掛けになっています。森は友人だった高木を知っている一方、高木は森を娘の担任としてしか見ていませんでした。
森に意図があったかどうかより、森がすでに高木の生活圏にいたのに、高木が気づけなかったことが重要です。忘却は距離によって生まれたのではなく、目の前に本人がいても過去を思い出せないほど深く進んでいました。
「良いこと悪いこと」の博士に関するFAQ

ここでは、『良いこと悪いこと』の博士について、最終回後に残りやすい疑問を整理します。確定した事実と、作中で明言されなかった部分を分けて回答します。
博士と森智也は同一人物?
博士と森智也は同一人物です。高木たちが「博士」と呼んでいた7人目の元同級生が、現在は教師となり、森先生として登場していました。
博士は花音の担任の森先生?
博士は、高木の娘・花音の担任である森先生です。高木は森とすでに顔を合わせていましたが、かつての同級生だとは思い出せませんでした。
博士は羽立を殺した?
博士は羽立と接触し、羽立を呼び出していましたが、羽立殺害の実行犯ではありません。森の接触は強いミスリードになりましたが、一連の事件を実行した犯人側とは分けて考える必要があります。
博士は連続殺人の黒幕?
博士は連続殺人の黒幕ではありません。事件は宇都見、今國、東雲の共謀によって進められており、森が3人を指示していた事実は示されていません。

博士は宇都見・今國・東雲の共犯?
森が宇都見、今國、東雲の殺人計画へ加担した事実はありません。森も高木たちへの怒りを抱えていましたが、その感情と殺人への共謀は別です。

博士はなぜ卒業アルバムにいない?
森は卒業前に転校したため、卒業アルバムに載っていませんでした。アルバムに姿が残らなかったことも、高木たちが森を思い出せなくなった一因と考えられます。
博士というあだ名の由来は?
博士というあだ名の詳しい由来は明確に描かれていません。旧サイトを作っていたことから、パソコンやインターネットに詳しかったことと関係している可能性はありますが、断定はできません。
博士が持っていたDVDには何が映っていた?
「みんなの夢」のDVDには、森を含む7人が一緒に過ごしていた過去と、瀬戸紫苑の姿が残されていました。DVDによって、高木たちは森だけではなく、さらに深く忘れていた瀬戸紫苑の存在へたどり着きます。
博士役の俳優は誰?
現在の森智也を演じているのは古舘佑太郎です。小学生時代の森智也は及川欽之典が演じています。


森が花音の担任になったのは高木へ近づくため?
森が高木へ近づく目的で花音の担任になったとは明言されていません。復讐や監視のために担当を選んだと断定せず、物語上、高木が森を思い出せないことを示す仕掛けとして受け取るのが自然です。
まとめ

『良いこと悪いこと』の博士の正体は、高木たちが忘れていた7人目の同級生・森智也です。森は現在、教師となって高木の娘・花音の担任を務めていましたが、高木は目の前の森がかつての友人だとは気づいていませんでした。
森は羽立へ接触し、旧サイト「鷹里小の森」や消えたDVDともつながっていたため、連続殺人の黒幕に見えました。しかし、森は殺人犯ではなく、事件を起こした宇都見、今國、東雲の共犯としても描かれていません。
森の本当の役割は、高木たちが失った記憶を開くことでした。森が渡したDVDによって瀬戸紫苑の存在が浮かび、博士の正体判明は事件の終着点ではなく、さらに深い過去へ進む入口になります。
森は忘れられた被害者である一方、過去のいじめを止められなかった傍観者でもあります。森という人物を通じて描かれたのは、忘れた側に悪意がなくても、忘れられた側には消えない傷が残ること、そして傷つけられた人も別の場面では誰かの痛みを見過ごしてしまうという、単純には分けられない「良いこと」と「悪いこと」でした。

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