ドラマ「トリック」シーズン2は、シーズン1で確立された“霊能力をトリックで暴く”構図を引き継ぎながら、より因習・信仰・予言といった重たいテーマへ踏み込んでいきます。
六つ墓村編では「毎年同じ日に死者が出る」という暦の恐怖を描き、百発百中占い師編では“信じたい気持ち”そのものが人を縛る様子を突きつける。
さらにサイ・トレイラー事件では、失踪者を見つける希望が復讐と狂気へ反転し、最終章「妖術使いの森」では、怪異の正体以上に“目撃そのものが信用できない”世界が提示されます。
この記事では、トリック シーズン2全話を通して描かれた事件・トリック・伏線を整理しながら、笑いと不気味さが同時に残る、このシーズンならではの後味と魅力を振り返っていきます。
TRICK/トリックのシーズン2のエピソード毎の概要

シーズン2(=TRICK2)は、2002年1月11日〜3月22日に放送された全11話の連続ドラマです。
章立てとしては「基本2話=1章」だが、冒頭の「六つ墓村」と次章の「百発百中占い師」は第3話が2部構成になっていて、どちらも“2.5話”の変則編成になっているのが特徴。まずは迷子防止のために、先に“章タイトル”を並べます。
- エピソード1:六つ墓村(第1話〜第3話前半)
- エピソード2:百発百中占い師(第3話後半〜第5話)
- エピソード3:サイ・トレイラー(第6話〜第7話)
- エピソード4:天罰を下す子(第8話〜第9話)
- エピソード5:妖術使いの森(第10話〜最終話・第11話)
ここでは各章が「どんな超常現象の顔をしていて」「何が分かるのか」を、ネタバレ前提でざっくり整理します。
エピソード1「六つ墓村」編(第1話〜第3話前半)
山間の六つ墓村にある旅館「水上荘」では“毎年1月11日に人が死ぬ”という噂がある。
超常現象の“権威”として名前が売れてしまった上田のもとに、旅館経営者が助けを求め、上田は奈緒子を連れて現地へ乗り込む。そこには謎解き目的の客も集まり、目の前で事件が起きる。
続く第2話では女流推理作家が死亡、さらに「手毬歌」が不穏な合図のように絡み、落ち武者の目撃まで飛び出して空気は完全に因習ホラーへ。第3話前半で奈緒子と上田は洞窟に落ち、白骨死体を発見する――“村の伝説”が、現実の死と地続きであることを突きつける章です。
この章でわかること
- 上田が「超常現象の権威」として事件に呼ばれる立場になっていること
- 「毎年同じ日に死が起きる」という“儀式化された恐怖”の作り方
- 手毬歌/落ち武者/洞窟など、因習の小道具が“人為”と結びつく下地
- 第3話が“次章の導入”も兼ねる、シーズン2特有の変則構成
エピソード2「百発百中占い師」編(第3話後半〜第5話)
後半は一転、「100%当たる占い師」が登場。言われた通りにしないと不幸になる――という“脅し型の信仰”が、人をどう縛るかを描く章です。
第4話では奈緒子と矢部が占い師・鈴木吉子の家に入り込むが、肝心の上田が見当たらない。家政婦のマツから語られるのは、この土地に昔からある“神隠し伝説”。
「当たる占い」と「消える人間」が並走し、事件の肌触りが怪談に寄っていく。第5話では奈緒子が吉子と対決するも決定的証拠がなく、信者に追い詰められた奈緒子が“でまかせの予言”を口にしてしまう――この瞬間、トリックを暴く側の人間も「言葉の力」で人を動かし得る、と皮肉に反転するのが怖い。
この章でわかること
- 「100%当たる」よりも「外したら怖い」で人は従う、支配の構造
- 神隠し伝説が、現代の“失踪の見え方”に利用される下地
- 証拠が掴めない時、暴く側の正義も簡単にぐらつくこと
- 奈緒子が“マジシャン”としてではなく“人間”として追い込まれる局面
エピソード3「サイ・トレイラー」編(第6話〜第7話)
世間の注目を集める能力者が「サイ・トレイラー」。
持ち物から“意識の痕跡”を追って失踪者を見つけ出すという、超能力とプロファイリングの境界を踏みにじる存在です。上田のもとに、能力の真贋鑑定を頼む男が現れ、奈緒子たちは検証へ。
第7話では、彼らの体をすり抜けたように現れる「人面タクシー」という怪現象が発生し、どう見てもサイ・トレイラーの仕業にしか思えないのに、本人にはアリバイがある――“能力の証明”ではなく“犯行の説明”が難しいタイプのミステリーに寄っていきます。
この章でわかること
- 「人を探せる力」が“救い”より先に“商品”になる怖さ
- 見た目が派手な怪現象ほど、真相は情報操作・誘導に寄る可能性
- “動機が見つからない”こと自体がミスリードになる設計
エピソード4「天罰を下す子」編(第8話〜第9話)
今度の看板は「祈祷で天罰を下す御告者」。天に願うとターゲットが必ず死ぬ、と噂される存在に、女子大生・塚本恵美が関わっていた。
怒りに任せて従兄弟へ天罰を望んだ後、実際に従兄弟が死亡することで、物語は「偶然か?」「人為か?」「それとも…」の三択を観客に突きつける。
第9話では奈緒子が潜入調査中、密室でセミナー主催者・大道寺の死体に遭遇し、矢部に逮捕されてしまう。暴く側の奈緒子が“容疑者側”に転落することで、視聴者の視点もいったん反転し、TRICKの不穏さが濃くなる章です。
この章でわかること
- 呪いが成立する条件は「信じる人数」と「恨みの方向」でもある
- セミナー(コミュニティ)が“天罰”の拡声器になる仕組み
- 奈緒子が逮捕されることで、上田が珍しく“守る側”に回る配置
エピソード5「妖術使いの森」編(第10話〜最終話・第11話)
最終章は、村伝説×閉鎖空間の濃度が最大になる「妖術使いの森」。
来さ村には“一度入ったら二度と出られない”と言われる白木の森があり、高速道路建設の調査隊が入ったまま戻らない。
建設部長・橋本が調査隊を出すが全滅し、上田・奈緒子・民俗学者の柳田らが森へ踏み込む。最終話では橋本の遺体が見つかり、上田は仮面の妖術使いを目撃。
一方、奈緒子が会った妖術使いの顔は「椎名桔平」。柳田いわく妖術使いは“相手の目に映る自分の顔を自由に変えられる”――つまり、誰もが妖術使いになれる(誰もが騙される)という地獄のルールが提示される。シリーズの最終章として、超常現象の正体だけでなく「疑うこと」そのものを試してくる締め方が印象的です。
この章でわかること
- “出られない森”という設定が、恐怖と支配を同時に生むこと
- 妖術使い=固定の犯人ではなく「役割」になり得る、という発想
- 最終章らしく、トリック暴きの快感より「余韻の不穏さ」が勝つ着地
【全話ネタバレ】トリック(シーズン2)のあらすじ&ネタバレ

1話:6つの墓――逃げ場のない日
“成功した上田”と“相変わらずの奈緒子”という温度差
シーズン2の幕開けとなる第1話「六墓」は、上田と奈緒子の関係が“少しだけ更新された状態”で始まります。
上田は『どんと来い、超常現象』の出版で有名人になり、教授に昇格するほどの成功を収めている一方、奈緒子は相変わらずの金欠生活。その格差だけが順調に広がっているのが可笑しく、同時に、この回で描かれる因習ホラーを際立たせる土台になっています。
しかも上田は、若い女性に頼られると本にサインまでしてしまう“俗っぽい権威”に成り下がっており、それを冷めた目で見る奈緒子との温度差が、初回からきっちり笑いを生む。ここが、シーズン2の掴みとしてとても強い。
六つ墓村と「毎年1月11日に死ぬ部屋」
今回の依頼は、山梨県の人里離れた六つ墓村にある旅館「水上荘」で、「毎年1月11日に、ある部屋に泊まると人が死ぬ」というもの。
旅館の主人・田島が上田に真相究明を依頼し、上田は半ば強引に奈緒子を連れて現地へ向かいます。
旅館には、女流作家と付き人、地元の有力政治家と秘書といった面々も同じ目的で宿泊しており、事件が“見世物”として仕組まれていく気配が濃厚です。
違和感の群れとして立ち上がる村人たち
到着早々、手毬歌を口ずさむ怪しい老女が現れ、番頭・平蔵は妙に丁寧すぎる言葉遣いで周囲を混乱させる。村の住人たちは、ひとりひとりが怪しいというより、“違和感の群れ”として立ち上がってくる印象です。
奈緒子が上田に騙されて連れて来られた、という定番の流れも含めて、視聴者の体感は「帰ってきたTRICK」そのもの。安心感と不安が同時に漂います。
暦で追い詰める因習ホラーの怖さ
六つ墓村に漂う空気は、因習ミステリを思わせる湿度に満ちています。手毬歌の不気味な着メロ、落ち武者の掛け軸が血の涙を流す現象、さらに「背中わらし」といった妖怪めいた言い伝えまで飛び出し、理屈で立つ上田の足場をじわじわ削っていく。
この回で特に効いているのは、怖がらせ方が派手な霊能力バトルではなく、「毎年同じ日」という暦の固定で逃げ場をなくす点です。逃げても、1月11日は必ず来る。その不条理さが、静かに恐怖を積み上げます。
軽口が多いほど夜が不穏になる構造
上田は名声を盾に「どんと来い」と虚勢を張り、奈緒子は温泉や景品といった餌に釣られて渋々同行する。
二人の軽口が多ければ多いほど、夜の見張りの場面が不穏に沈んでいく構造が巧みです。笑いがあるからこそ、闇の気配が際立つ。
謎の死で“祟り”が事件になる瞬間
終盤、奈緒子たちの目の前で宿泊客の一人が謎の死を遂げ、六つ墓村の「祟り」は単なる噂ではなく、明確な“事件”として確定します。
科学で説明する側の上田が、初回から面子を潰される設計が痛快であり、「ここからが本番だ」と強烈に宣言する引きになっています。
エンディング曲が「流星群」に変わり、余韻の色が少し冷えるのも象徴的。その冷えた空気のまま次回へ落とすのが、第1話の勝ち方です。
1話で判明する伏線
- 上田が『どんと来い、超常現象』で“超常現象の権威”になっていること
- 六つ墓村の旅館「水上荘」と、毎年1月11日に死者が出る部屋の存在
- 六つ墓村に残る落武者伝説(祟りと財宝の噂)
- 手毬歌の不気味な着メロの存在
- 落ち武者の掛け軸が血の涙を流す現象
- 「背中わらし」など妖怪めいた言い伝え
- 番頭・平蔵の過剰な敬語表現
- 同じ日に集まった宿泊客たちの配置
- 宿泊客の謎の死によって、六つ墓村編の事件が確定する
2話:落ち武者の謎――原因不明の死
“毎年1月11日”が現実の死になる瞬間
第2話「落ち武者の謎」は、第1話で示された「毎年1月11日に死人が出る旅館」という設定が、いきなり現実の死として噴き出す回です。
女流推理作家・栗栖禎子が死亡し、続いて彼女の助手・景子の携帯から不気味な手毬歌が流れ出す。皆が見守る中で景子にも異変が起きるのに、警視庁の矢部と石原が捜査しても死因は掴めない。
怪談めいた出来事が、旅館の日常の延長線上で淡々と進んでいくのが、この回の不気味さです。
推理する側が倒れるブラックユーモア
栗栖と景子が事件の中心に落ちてくる構図も、シリーズらしいブラックユーモアに満ちています。
栗栖はゴスロリ姿の大ベストセラー作家で、名前自体にミステリーへの遊び心が込められている。推理する側の人間が「死因不明」で倒れることで、ミステリーの文法そのものが物語の中へ侵入してくるんですよね。
しかも上田が景子に浮かれてしまうせいで、緊張感はいったんコントに崩れ、その反動で次の恐怖がより鋭く刺さる構造になっています。
手毬歌が持つ“知らせ”の機能
オカルト色が濃くなるほど、逆にトリックの輪郭が浮かび上がるのも面白い点です。
手毬歌は単なる怖がらせの演出ではなく、誰かが「知らせる」「誘導する」ためのサインにも見えてくる。音が鳴るタイミングを管理できるなら、恐怖も人の行動もコントロールできてしまう。
理屈で立つ上田と、「怖いものは怖い」と身体が先に反応してしまう奈緒子。この理性と生活感の二段構えが、超常を現実の領域へ引き寄せていきます。
落ち武者が“現象”になる瞬間
タイトル回収でもある番頭・平蔵の襲撃によって、落ち武者は“伝説”から“襲ってくる存在”へと格上げされます。
平蔵は丁寧語が行き過ぎて周囲との意思疎通が微妙に噛み合わない人物ですが、そのズレが「何かを隠しているのではないか」という疑念にも直結する。笑いとして作られたキャラクター性が、そのままミステリーの容疑へ変わる作りが巧妙です。
外の論理が入ることで増幅する不安
矢部の捜査パートが入ることで、温泉旅館という閉鎖空間に“外の論理”が持ち込まれるのも印象的です。ただし矢部はどこか雑で、石原はやたら真面目。
その凸凹が村の閉鎖性と噛み合わず、笑いながらも不安だけが増幅していく。このズレた安心感が、視聴者を余計に落ち着かなくさせます。
「原因が分からない」という恐怖
第2話の怖さは、「原因が分からない」という一点に集約されます。
怪我も争った形跡もないのに、人が倒れる。理屈の逃げ道が塞がるほど、視聴者は“祟り”の席に座らされる。でもTRICKは、そこで心霊に屈しない。手毬歌が呪いのジングルなのか、それとも人間が仕掛けた暗号なのか。推理心を煽ったまま次回へ投げる終わり方が、連続章ならではの強烈な引きになっています。
2話で判明する伏線
- 女流推理作家・栗栖禎子が死因不明で死亡する
- 景子の携帯から不気味な手毬歌が流れる
- 見守られていた景子に異変が起きる
- 矢部と石原の捜査でも死因が特定できない
- 番頭・平山平蔵が落ち武者に襲われる
- 手毬歌と事件(呪い)の結びつきが強まる
- 落ち武者伝説が“噂”から“現象”へ変わり始める
3話:手毬歌の謎&百発百中占い師――呪いが終わり、予言が始まる
六つ墓村・解決編としての「手毬歌の謎」
シーズン2第3話は、前回から続く六つ墓村編の解決と、新章「百発百中占い師」の導入が同居する二本立て回です。ひとつの呪いを畳む勢いのまま、次の不吉へバトンを渡す構成が心地よく、シリーズ後半の加速をはっきりと感じさせます。
洞窟に落ちた奈緒子と上田が発見するのは、財宝ではなく白骨死体。5年前に死んだ川島のものなのか、さらに4年前に死んだ大沢がなぜその存在に気付いていたのか、時間のズレが謎を深めます。密室で死亡した栗栖禎子と藤野景子の死も、もはや落ち武者の祟りだけでは説明できません。
手毬歌が「呪い」から「人の仕掛け」へ変わる瞬間
携帯に登録していないはずの手毬歌が勝手に鳴る現象は、恐怖演出であると同時に「人が鳴らしている音」に見えてくるのが厄介です。
手がかりが視覚ではなく、匂いや音といった触れないものへ寄っていくことで、観ている側まで疑心暗鬼にさせる。怖いのに笑えて、笑った直後に背中が冷える。この落差こそが六つ墓村編の強さです。
洞窟でも続く“いつもの二人”
印象的なのは、洞窟の息苦しさの中ですら、奈緒子と上田が無駄に張り合い、言い争いを続ける場面。
恐怖と漫才が同時進行する混線状態が、TRICKらしいリズムを生みます。事件の鍵だった手毬歌の着メロが、その後矢部の携帯にも使われるというズラしも、シリーズならではの悪ふざけです。
新章「百発百中占い師」の不穏な導入
後半から始まるのが、「100%当たる占い師」のエピソード。言われた通りにしないと不幸になるという“強制力”は、六つ墓村の呪いと地続きの恐怖を持っています。
警察への相談が増え、矢部が部下で試すほど社会が揺れているのに、上田は結局、奈緒子を現場へ送り込む。この軽率さが、次の事件の種になります。
呪いと占いに共通する「心理の檻」
ここが巧いのは、超常現象の正体が装置だけでなく、人の心理へ寄っていく点です。手毬歌は死の予告として人を縛り、占いは言葉の指示で行動を操る。
どちらも、従った瞬間から当人が自分で檻を補強してしまうタイプのトリック。奈緒子は信者の空気に飲まれかけながらも、「当たる」より前に「当てさせている」匂いを嗅ぎ取っていきます。
恐怖の種類を切り替える二本立ての妙
六つ墓村で味わったのは“閉じ込められる恐怖”。
そこから今度は、占いの言葉によって“行動を縛られる恐怖”へと切り替わる。逃げ場の種類だけを変え、視聴者の息を休ませない構成は、まさにトリックを仕掛けられた感覚を残します。シーズン2の強さを、はっきりと印象づける一話です。
3話で判明する伏線
- 洞窟で発見される白骨死体の正体と川島との関係
- 4年前に死んだ大沢が白骨の存在に気付いていた理由
- 手毬歌(着メロ)が恐怖演出であり合図でもある仕掛け
- 栗栖禎子と藤野景子の死に繋がる密室の違和感
- 匂いなど目に見えない手がかりの重要性
- 100%当たる占い師・鈴木吉子の存在
- 占いに従わないと不幸になるという脅しの構造
- 警察(矢部)への相談増加と捜査介入の兆し
- 上田が奈緒子を占い師の元へ向かわせる理由
- 次回以降の未来予知に繋がるモチーフ(テープや映像)
4話:100%未来予知~新たなナゾ
“当たりすぎる占い”が一線を越える導入
第4話「100%未来予知~新たなナゾ」は、これまで「当たる理由」を疑ってきた占いが、ついに“超常現象らしさ”の領域へ踏み込む回です。
前回、占い師・鈴木吉子から奈緒子が不吉な予言を受けた直後、上田が忽然と姿を消す。
奈緒子は矢部を連れて吉子の自宅へ半ば強引に入り込みますが、屋敷のどこを探しても上田の姿はありません。それでも奈緒子だけが妙な“気配”を感じてしまう。この瞬間、理屈派の主人公が一瞬だけ迷信側に足をかけ、観ている側も同じ感覚に引きずられます。
神隠し伝説が生む“時間の穴”という発想
屋敷で二人が出会うのは、家政婦の老女・マツ。
彼女が語るのは、この土地に昔から残る神隠しの伝説です。姿を消した少女が戻ってきて、「明日の世界に行っていた」と語り、翌日に起きる出来事を言い当てたという話。その現象を“時間の穴”と結び付ける導入が、ロマンチックでありながら不気味です。未来予知の正体を情報操作ではなく「時間」に接続することで、事件のスケールが一段階引き上げられます。
SFに行き切らないTRICKの距離感
ただしTRICKは、ここで真正面からSFへ舵を切るわけではありません。
矢部のずさんな潜入と奈緒子の現場勘が並走し、“信じたい人々”の熱量や空気の圧を、観客に体感させる構成になっています。そのうえで必ず、人間くさい穴を残す。超常を提示しながら、どこかで「本当にそうなのか?」という違和感を手放さない距離感が、このシリーズらしさです。
上田不在が生む不安の質
上田が不在のまま捜査が進むことで、いつもの凸凹コンビが崩れ、笑いが一段引いた空気になります。
普段なら「それは単なる錯覚だ」と切り捨てる役割の上田がいないため、マツの昔話がそのまま現実味を帯びて迫ってくる。説明役が欠けたことで、奈緒子がひとりで恐怖を受け止める構図になり、視聴者の不安も直接的になります。
神隠しが持つ根源的な怖さ
神隠し=子どもが消える話は、占いの“言葉の暴力”よりもさらに根源的です。理屈で止められない種類の怖さがあり、時間がずれているかもしれないという想像が、じわじわと侵食してくる。
奈緒子が気配を追えば追うほど、観ている側も「もし本当に時間がずれていたら?」という思考へ誘導されていきます。
解決より雰囲気を優先した章の入口
この回は、トリックの解決よりも雰囲気作りに振り切った印象が強い。
霊能や未来予知を“信じてしまう瞬間”を丁寧に描き、笑っていたはずなのに、気付くと背筋が冷えている。占い師の屋敷、神隠し、そして「明日の世界」というモチーフが並び、次回は種明かしだけでなく、上田の行方がどう回収されるのかへの期待を強く残します。
4話で判明する伏線
- 上田失踪の手がかり(屋敷内に姿がない)
- 奈緒子と矢部が鈴木吉子の自宅に潜入する流れ
- 奈緒子だけが感じる上田の“気配”
- 家政婦マツの存在と語られる神隠し伝説
- 「明日の世界」に行った少女の逸話
- 未来予知と結び付く「時間の穴」というキーワード
5話:百発百中占い師の謎~解決編
“時間の穴”の正体が、欲と恨みを引き寄せる装置だと分かる
第5話は、“100%当たる占い師”鈴木吉子編の決着回です。
前話までで提示されていた「時間の穴」や神隠し伝説が、単なる怪談ではなく、人の欲と恨みを吸い寄せる装置だったと明かされ、物語の空気は一段と重くなります。
奈緒子は吉子の未来予知をトリックだと見抜きながらも、決定的な証拠を掴めないまま、信者たちに取り囲まれる。「当たらなければ磔にして引き回す」という極端な脅しの中で、奈緒子が口走る“でまかせの予言”が、皮肉にも事件を大きく動かす導火線になります。
毒入りコップ勝負がへし折る挑戦心
この回最大の見せ場が、吉子による「毒入りコップ勝負」です。
三つのグラスのうち一つだけが毒だと告げられ、吉子は先に二つを飲み干し、最後の一杯を奈緒子に迫る。
極限の心理戦の末に明かされるのは、毒ではなく塩だったという意地悪な真相。命のやり取りに見せかけて、奈緒子の挑戦心そのものを折りにくるやり口が、実にTRICKらしい残酷さです。
文字と思い込みを利用した“未来の鍵”
さらに示される「怨/呪/叫」と書かれた箱も、未来を暗示する神秘的な小道具に見えて、実際は文字の思い込みを突いたトリックでした。
「叫」が「04」に見える錯覚を利用した釣りで、オカルト的な演出が、きちんと人間の認知のズレに着地していく。この“分かった瞬間の気持ちよさ”は、この回の大きな快感です。
出まかせ予言が当たり続けるカタルシス
追い詰められた奈緒子は、「ご飯がお金に変わる」「時計の針が逆回転する」「炊いたご飯が米に戻る」「鎧武者が動いて成敗する」と、思いつきの予言を乱発します。それがなぜか次々に当たってしまう展開は、笑いと緊張が同時に走る瞬間です。
ここで明かされるのが、上田が鎧の中に潜み、裏から“当てさせていた”という仕掛け。
予言が作られていたと分かった瞬間のカタルシスは格別で、同時に「超常を否定する人間が、同じ手口で予言を成立させる」という皮肉が鮮やかに浮かび上がります。
オカルトを剥いだ先に残る現実の冷たさ
しかし後半は、笑いだけでは終わりません。
時間の穴で儲けようとした瀧山の死、清水の裏切り、そして「祈りの岩」の抜け道こそが神隠し伝説の種だったという真相が、一気に後味を黒くします。
オカルトを剥いだ先に残るのが、ねじれた死体と、平然と人を切り捨てる欲望だと思うと、背中が冷えます。TRICKは、トリックが分かれば安心できる物語ではなく、「分かった上で、現実は痛い」と突きつけてくる作品だと実感させられます。
勝っても救われない結末
最後に明かされるのが、長部の正体です。彼は信者ではなく、吉子に婚約者を奪われた復讐者だった。
決着も「勝って終わり」ではなく、“殺すことでしか終われない”形になるのが苦い。
上田と奈緒子は生き残っても、救えなかったものが確かに残る。その苦味が、次のエピソードへと視聴者を引っ張る余韻になっています。
5話で判明する伏線
- 毒入りコップ勝負の仕掛け(毒ではなく塩)
- 「怨/呪/叫」の箱に仕込まれた文字トリック(「叫」=「04」)
- 上田が鎧の中に潜んでいた事実
- 奈緒子の出まかせ予言が的中した“作られた予言”の構造
- 上田の手紙が未来を知っていたように見えるカラクリ
- 「祈りの岩」が神隠し伝説の種になっていた抜け道
- 瀧山の死が示す「時間の穴」利用の危険性
- 清水の裏切りと死の真相
- 長部の正体(婚約者を奪われた復讐者)
- 鈴木吉子の未来予知が成立していた情報操作の全体像
6話:失踪者を必ず見つけ出す男
“サイ・トレイラー編”という空気の切り替え
シーズン2第6話は、物語の空気が一気に切り替わる“サイ・トレイラー編”の開幕回です。
マスコミで話題の能力者・深見博昭は、持ち物に残る意識の痕跡を追い、失踪者の居場所を突き止める「サイ・トレイリング」が使えるとされる人物。上田のもとに証券マンの岡本宏が現れ、3年前に失踪した婚約者・小早川恭子を探すため、深見が本物かどうかを鑑定してほしいと依頼します。
恭子だけでなく、女性がタクシーに乗ったまま消える“人面タクシー事件”まで噂になっており、導入から不穏さが濃い回です。
貧乏ギャグがそのまま伏線になる巧さ
この回の前半で印象的なのは、事件より先に奈緒子の生活が崖っぷちだと見せる構成です。
道で財布を拾い、一瞬だけ心が揺れる奈緒子。それを見つけて偉そうに説教する上田。いつもの貧乏ギャグなのに、「他人の人生の痕跡=財布」というモチーフが、この回のテーマときれいに重なります。TRICKらしい“軽口の形をした伏線”が、ここでも効いています。
権威になった上田が通じない相手
ここで浮き彫りになるのが、上田の立場の変化です。『どんと来い、超常現象』の出版などで“権威”になった上田は、超常を疑う側として肩書を持っています。しかし深見は、学位や理論を盾に信者を集めるタイプで、その権威が通じない。
奈緒子と上田が深見主宰のアカデミーに乗り込み、テストを仕掛けるものの、奈緒子のマジックはあっさり見破られ、深見は「もう二度とサイ・トレイリングはしない」と宣言して去ります。
普段は暴く側の奈緒子が、逆に言葉を失う瞬間が痛快で、深見の強敵感が一気に立ち上がります。
能力より重い、岡本の後悔
この回が胸に残るのは、超能力かトリックか以前に、岡本の「止められなかった」という後悔が物語の芯に据えられている点です。
深見の能力は、失踪者を探す希望として売られながら、同時に未練や罪悪感を食い物にする刃にも見える。探すこと自体が、救いなのか、傷を広げる行為なのか。その曖昧さが重く残ります。
テレビという舞台に引きずり出す一手
それでも岡本の必死さが、二人を次の一手へ押し出します。奈緒子が仕掛けたのは、上田が出演する番組内コーナーでの公開対決。
TRICKが得意とする“メタ構造”を使い、テレビの熱狂を味方にして深見をリングへ引きずり戻す展開が痛快です。
奈緒子が勝ち、サイ・トレイリングの実施を了承させた直後、深見は淡々と「被害者はすでに殺害されている」と告げ、報酬として1000万円を要求する。その冷たさが、この能力の正体を端的に示します。救いを求めた依頼が、いきなり遺体探しへ変わる残酷さが突き刺さります。
“見つかる”ことの意味を曖昧にした引き
恭子の叔父・小早川辰巳がスポンサーを申し出て話は動き出しますが、「見つかる」ことが希望なのか絶望なのかは分からないままです。
能力の実行が約束されても、安心は一切ない。この宙吊りの感覚のまま、物語は次回へ転がされていきます。
6話で判明する伏線
- サイ・トレイラー(サイ・トレイリング)深見博昭の存在
- 岡本宏の依頼と、婚約者・小早川恭子の失踪
- 人面タクシー失踪事件という連続性
- 深見主宰のアカデミーが能力鑑定の舞台になる
- 奈緒子のマジックが深見に見破られる
- 深見の「今後一切サイ・トレイリングはしない」宣言
- 上田出演番組での公開対決
- 深見が「被害者は既に殺害されている」と断言する
- 実施条件として提示される報酬1000万円
- 恭子の叔父・小早川辰巳がスポンサーになる展開
7話:失踪者必ず発見の謎~解決編
人面タクシーが“通り抜けた”という異様な幕開け
第7話は「サイ・トレイラー」編の解決回として、冒頭から強烈な映像を叩きつけてきます。
奈緒子たちの目の前で、人面タクシーがまるで人の体を通り抜けたかのように突進し、そのまま消える。
犯人に見えるのは深見博昭だけなのに、深見には完璧なアリバイがあり、動機も見当たらない。視聴者は、「本当に残留思念を辿っているのではないか」という、シリーズとしては最悪の問いに立たされます。しかも深見の決め台詞「ゾーン」が妙に耳に残り、胡散臭さと説得力が同居するのが厄介です。
初め
最初に明かされるのは、人面タクシーの正体です。強烈なライトで視界を奪い、急カーブへ誘導することで、視界が戻った瞬間に「直進した」と錯覚させる仕掛け。
さらに工事用ライトの位置を変えることで、進路そのものを誤認させていました。派手な怪談が、目の生理現象と心理操作で崩れる瞬間の快感があり、TRICKらしいロジックがここで一度、観る側を安心させます。
“発見され続ける遺体”が意味するもの
しかし本丸はそこではありません。問題は、失踪女性の遺体が次々と“発見”されていくことです。
上田の番組で深見がサイ・トレイリングを披露すると、岡本が探す婚約者・恭子以外の遺体まで次々と掘り当てられていく。
テレビに乗った瞬間、捜査は正義ではなく見世物へと変質し、上田の名声も奈緒子の怒りも、すべて深見の舞台装置に組み込まれていく。その構図が、じわじわと恐怖を広げます。
岡本の死と、スポンサーの正体
スポンサーとして名乗り出た小早川辰巳は、恭子の叔父でした。
そしてホテルで起きる岡本の飛び降り自殺によって、空気は一気に血生臭くなります。事件はもはや能力の真偽を問う段階を超え、「誰が、何のために」この舞台を動かしているのかへ焦点が移ります。
本物
真犯人は小早川辰巳。
恭子の資産を狙って殺害し、その快感から連続誘拐殺人へ踏み込んだ人物でした。そして深見は、恭子の実父だった。証拠のない娘殺しで終わらせないため、深見はあえて犯行を見逃し、サイ・トレイラーを名乗って世間とワイドショーを動かし、小早川に墓穴を掘らせる計画を選んだのです。
岡本の死ですら、ホテルの8階と3階が同じ間取りであることを利用した“誤認”を前提に組み込まれていたと分かると、正義と復讐の境界線は大きく揺らぎます。
笑えなくなるラストと残る後味
本格推理としての完成度は高く、矢部の軽口も含めて痛快さはあります。
けれど最後に残るのは爽快感ではなく、娘を失った父の“合理的な狂気”です。胡散臭い衣装と大声の裏にある過程を想像すると、それまで笑っていた自分が急に申し訳なくなる。
奈緒子の「あなたは優秀なサイ・トレーラーでしたよ」という言葉は、皮肉であり、慰めであり、同時に弔いにも聞こえる。救いきれなさを抱えたまま終わるのが、この回の最大の特徴でした。
7話で判明する伏線
- 人面タクシーが“体を通り抜けた”ように見えた視覚トリック
- 強烈なライトによる眩惑と急カーブの仕掛け
- 工事用ライトの移動による進路誤認
- 上田の番組で遺体が次々発見された理由
- 岡本宏の飛び降り事件の真相
- ホテル8階と3階が同一間取りである点
- 深見博昭が恭子の実父である事実
- 小早川辰巳がスポンサーになった本当の目的
- シャオジャオ
- 深見が小早川に墓穴を掘らせた一連の計画
8話:天罰を下す子
“天罰”が現実になるという噂の始まり
シーズン2第8話は、新章「天罰を下す子」の幕開けです。
祈祷によって“天罰”を下す「御告者」がいるという噂が広まり、願われた相手は必ず死ぬ――そんな因果の物語に、上田と奈緒子が巻き込まれていきます。
上田のもとを訪れた女子大生・塚本恵美は、怒りに任せて従兄弟へ天罰を望んだところ、数日後に本当に亡くなったと告白します。偶然なのか、誰かの仕業なのか、それとも本当に超常なのか。答えの出ないまま、上田に真相究明を依頼する導入から、不穏さが強く漂います。
事件より先に“恋に落ちる”上田というノイズ
ここからがTRICKらしいところで、上田は事件の解明より先に恵美へ惚れてしまいます。保護を口実に同居まで持ち込み、恋に浮かれる上田と、露骨に機嫌が悪くなる奈緒子。この温度差が笑いを生む一方で、恵美の「優しすぎる」態度が逆に不気味さを増幅させます。寿司を巡る小競り合いの軽さがあるほど、背後にある「人が死ぬ」という重さが際立つ構造です。
御告者の儀式が放つ幼さと残酷さ
調査は二方向に分かれます。上田は依頼を取り次ぐ天罰代行の男・倉岡に食い下がり、御告者の屋敷へ向かいます。
そこで現れるのが少年・針生光太と、その母・祖母。幼い少年が“天罰”を司る存在として儀式を執り行う構図は、幼さと残酷さのギャップで強烈な違和感を生みます。さらに、儀式直後に少年が「消える」見せ方まで用意され、視聴者の理屈を一度意図的に置き去りにします。
奈緒子の潜入と、自己啓発セミナーの罠
一方の奈緒子は、金目当ての潜入取材として自己啓発セミナー「笑顔がこぼれる会」に入り込みます。
会長・大道寺の胡散臭さ全開の語りと“奇術”を暴こうとしますが、逆に追い詰められ、ついには自分で手錠をかけてしまう間抜けさまで見せる。この軽さが愛おしい反面、終盤に向けて不安を溜め込む役割も果たしています。
笑いを切り裂く密室の死
終盤、奈緒子しかいない密室で大道寺が殺されるという衝撃の引きが用意されます。
笑いで油断させておいて、最後に一気に胃を冷やす。この落差こそが、第8話が“トラウマ回”として語られがちな理由を、入口の時点で納得させてくれます。
「天罰」をお願いするという発想の怖さ
個人的に刺さるのは、「天罰」を誰かに“お願いする”という発想そのものです。怒りや嫉妬を自分の手で扱えない人ほど、神様や超能力に委ねたがる。
しかも相手が子どもであれば、罪悪感まで薄まってしまう。その危うさが、理屈で斬り込もうとする上田と奈緒子の前で、ますます肥大化していきます。次回に待つ地獄のような展開を、これ以上ない形で予告する前編です。
8話で判明する伏線
- 祈祷で天罰を下す「御告者」の噂と仕組み
- 塚本恵美の依頼(従兄弟への天罰)と実際の死
- 天罰代行業・倉岡剛の存在
- 御告者・針生光太と母・祖母による儀式の構図
- 儀式にターゲットの持ち物が必要になる点
- 「一度下った天罰はキャンセルできない」というルール
- 儀式直後に御告者が消える現象
- 自己啓発セミナー「笑顔がこぼれる会」と大道寺安雄
- セミナーでの奇術と金銭誘導の空気
- 奈緒子の潜入取材が命取りになる流れ
- 緒子が手錠で動けなくなる状況
- 奈緒子しかいない密室で大道寺が死亡する引き
9話:天罰を下す子の秘密――解決編
密室の死体と、奈緒子が一番疑われる幕開け
奈緒子が潜入していたのは、英語まじりの胡散臭い言葉と「お金大好き」を連呼し、信者を煽って財産まで巻き上げるセミナー「笑顔がこぼれる会」。
その主催者・大道寺の密室の死体を発見した瞬間、奈緒子は矢部にあっさり逮捕される。証拠も事情も後回しで疑われる理不尽さが、いかにもTRICKらしい導入だ。
一方、上田は依頼人の女子大生・塚本恵美を連れて面会に訪れ、奈緒子が借りていたカメラの写真から事件の綻びを拾い始める。
ここが面白いのは、同じ事件を追っているのに、上田と奈緒子が完全に別ルートで走らされる点だ。上田は“恋”で視野が狭くなり、奈緒子は“金”で危険地帯に踏み込む。コンビが噛み合わないズレそのものが、今回の推進力になっている。
「自分にも天罰を」という依頼の違和感
恵美の依頼は、「従兄に軽い気持ちで天罰を頼んだら本当に死んだ。次は自分に天罰を下して、本物か確かめたい」というもの。上田は一目惚れの勢いで同居まで始め、「次郎」と呼ばれて舞い上がるが、この甘さが事件の不穏さと致命的に噛み合わない。
しかも恵美の周囲では、差出人不明の手紙や、毒が疑われるトイレットペーパーなど、不幸がわざとらしいテンポで重なっていく。視聴者も「これは自作自演では?」と疑いながら見られるため、推理への参加感が強い回になっている。
天罰の正体①――祖母の執念が生んだ殺人
解決編がえげつないのは、真相が一つではない点だ。
まず明かされるのは、少年・針生光太の「天罰が下るよ」という宣告を、祖母が裏で現実化し続けていた事実。孫を“特別な存在”にしたいという執念が、殺人すら正当化してしまう。
罪が露見した祖母は自殺し、それでも母は能力を信じ込み、光太は精神的に壊れていく。事件は解決しても、誰一人救われない。この後味の悪さが、このエピソードが語り継がれる理由だ。
天罰の正体②――被害者でいることの裏側
さらに刺さるのが、恵美自身の“被害者ポジション”が崩れる瞬間だ。
遺産をめぐる思惑が透け、天罰に見せかけた死の裏側に、はっきりと人間の欲が浮かび上がる。超常現象の怪談が、一気に現実の犯罪へ反転する瞬間でもある。
TRICKはオカルトを科学で倒す作品だが、この回ではそれ以上に、「信じたい気持ち」と「得をしたい気持ち」のほうが、よほど怖いと突きつけてくる。
笑わせてから、冷たい現実を置いていく
それでもシリーズらしさは健在だ。奈緒子の不憫さ──取調べでの雑な扱い、食への執着、理不尽な疑い──や、上田の恋愛暴走がギャグとしてテンポ良く挟み込まれる。笑わせて油断させた直後に、最後だけ冷たい現実を置いていく。この手つきが実に巧い。
第9話は、「面白かった」と同時に「嫌な気分になった」が確実に残る、忘れがたい解決編になっている。
9話で判明する伏線
- 「笑顔がこぼれる会」主催者・大道寺の密室死体事件
- 奈緒子が借りていたカメラ写真に写った決定的な手掛かり
- 恵美の「自分にも天罰を」という依頼の不自然さ
- 天罰演出に使われていた毒(トイレットペーパーの疑惑)
- 針生光太を支える家族関係の歪み
- 祖母が“天罰”を現実化していた真相
- 恵美の遺産をめぐる思惑と、従兄の死の裏側
10話:最終章!妖術使いの森
冒険活劇に振り切ったシーズン2終盤の導入
シーズン2の終盤へ向けて始まる「妖術使いの森」編の前半は、TRICKらしい胡散臭さを、ど真ん中の冒険活劇へと塗り替える導入回です。
上田のもとを訪れたのは、千葉県・来さ村役場の建設部長・橋本。高速道路建設の予定地に、「一度入ったら二度と出られない」と恐れられる白木の森があり、調査隊を出しても戻らないという。
さらに森には、明治維新の頃に南方から来た妖術使いが住み、重力を断ち切る板や心を読む岩、死人を生き返らせる棺桶といった術を使ったという記録まで残っている。オカルトと公共事業が直結する時点で、ただ事ではない空気が立ち上がります。
奈緒子が「自分の意思」で森へ向かう理由
いつもなら即座に「行かない」と拒否する奈緒子が、今回は違います。巻物に描かれた妖術使いの姿を見た瞬間、幼い頃に見た“あの形”と同じだと気づく。その一拍の間が、物語の温度を変える。
奈緒子は上田に押し切られたのではなく、自分の足で「行く」を選ぶ。ここでこのエピソードが、単なる怪異事件ではなく、奈緒子の過去へ触れる最終章であることが示されます。
第4次調査隊というクセ者ぞろいの布陣
第4次調査隊として集められた面子も強烈です。民俗学の権威・柳田国男、ルポライターの小松純子、探検家兼俳優のアラン井上、建設会社社員の日向。
体力よりも性格と立場がバラバラで、最初から隊列はギクシャクする。
しかも村側は歓迎ムードではなく、村長は「森から出たければ妖術使いを捕まえろ」と条件を突き付ける。発展と因習が真正面から衝突し、調査は最初から詰んだ空気を孕んでいます。
理屈と胡散臭さが交互に襲う森の現象
森の中では、巨大な顔岩、嘘をつくと炎が噴き出す「心を読む岩」、棺桶の“復活”といった現象が次々と起こる。
どれもオカルトの定番なのに、花粉や樹液で体毛が伸びるという間の抜けた異変まで混ざり、怖いのに笑ってしまう落差が生まれる。
上田が理屈で踏ん張るほど、森は「説明できる怖さ」と「説明できない気がする怖さ」を交互に投げつけてくる。この感覚の揺さぶり方が、TRICKらしい。
疑心暗鬼を煽る“妖術使いの声”
夜、森のどこかから聞こえてくる歌と、「私は蘇った。裁きを下すために」という宣告が、調査隊の疑心暗鬼に火をつけます。
妖術使いが実在するかどうか以前に、閉ざされた森の中では“信じた者から負ける”空気が生まれる。その心理的圧迫が、じわじわと人を追い詰めていきます。
最終章であることを示す決定的な引き
奈緒子が南方の島の話に耳を澄ませるほど、この森は単発の怪談ではなく、彼女の過去と直結した場所だと分かってくる。
シーズン1から積み重ねられてきた「出自」と「記憶」が、ここで最終章として回収される予感をはっきり残す。
次回の完結編へ向けて、冒険と因習と個人史が一気に絡み合う引きは見事です。
10話で判明する伏線
- 来さ村と白木の森の「一度入ったら二度と出られない」伝説
- 高速道路建設計画と、調査隊が戻らない事実
- 建設部長・橋本の依頼と、妖術使いの巻物の存在
- 妖術使いの術具(重力を断ち切る板/心を読む岩/死人を生き返らせる棺桶)
- 奈緒子が幼少期に見た妖術使いと同じ姿形
- 第4次調査隊の参加者それぞれの思惑
- 村長が突き付ける条件「妖術使いを捕まえろ」
- 森で次々起こる不可思議な現象
- 花粉や樹液による体毛の異変
- 夜に聞こえる妖術使いの歌
- 「私は蘇った。裁きを下すために」という宣告
11話(最終回):妖術使いの謎 完結編
“目撃そのものが信用できない”という疑念
森から姿を消していた橋本の遺体が発見され、上田はその近くで“仮面の妖術使い”を目撃したと語る。
ところが奈緒子が遭遇した男の顔は、なぜか椎名桔平そっくり。柳田は「妖術使いは、相手の目に映る自分の顔を自在に変えられる」と断言し、真相はさらに霧に包まれていく。
最終回の巧さは、怪異の正体より先に「目撃情報そのものが信用できない」という疑念を突き付ける点にある。誰でも“妖術使いのフリ”ができる――その一言で、物語は怪談から人間ドラマへ一気に転がる。
怪談を“罪の煙幕”へ反転させる回収
混乱の中で奈緒子が取るのは、直感ではなく地道な線の回収だ。
白木の森に絡む骨董「つぼ八」の横流し、半年前に森へ入った調査隊、消息を絶った岸本という男。
点だった情報が、橋本や日向の立場と結びついた瞬間、森の怪談は「罪を隠すための煙幕」に見えてくる。棺桶の仕掛けを追うと隠し通路が現れ、怪異アイテムが次々と“装置”へ反転していく流れが心地いい。
頼もしさを更新する上田
この章では、上田の存在感がいつもより頼もしい。スピーカーの配置や「心を読む岩」の種など、森に仕掛けられた演出を解いていくたび、彼の推理が単なる虚勢ではなく、積み重ねた経験値だと分かる。
奈緒子が上田のアリバイを嘘でかばう場面も、単なるサービスではない。合理主義の上田が「奈緒子は何か知っている」と気づいた瞬間、二人の間に初めて“事件より重い沈黙”が落ちる。
見えるものが書き換わる怖さ
今回の怖さは、質がいつもと違う。森の中で伸び続ける体毛の気持ち悪さ、地面から湧く歌声、椎名桔平の顔が岩や闇に増殖していく感覚。
笑えるのに背中が冷える。その両立を支えているのが、「見えるものは、相手の心と状況で書き換わる」というテーマだ。だからこそ奈緒子の幼い記憶まで揺さぶられ、黒門島へ繋がる“南の島”の影がちらついた瞬間、単なるインチキ退治では済まない気配が立ち上がる。
真犯人と、より生々しい動機
辿り着く結論は、妖術よりも生々しい。
真犯人はルポライターの小松純子。半年前に殺された恋人・岸本の復讐として、壺の横流しに関わった橋本と日向を追い詰め、口封じに柳田まで倒していく。
呪いの森は、結局「利権と隠蔽」が生んだ舞台装置だった――と腑に落ちたところで、里見の登場が一段ギアを上げて痛快にひっくり返す。
未完の余韻で映画へ渡す最終回
それでもラストに残るのは、解決の爽快感ではなく、封筒一枚分の寂しさだ。開けるなと言われれば開けたくなるし、追いかけたいのに追いつけない。エンドロールの先で映画へバトンを渡すように、離れ際の二人の表情が“最終回の答え”になる。未完の余韻こそが、TRICK2というシリーズの甘い毒だ。
11話(最終回)で判明する伏線
- 橋本の失踪の真相
- 妖術使いの「顔が変わる」設定と仮面の意味
- 「つぼ八」横流しと半年前の岸本事件の繋がり
- 「死人を生き返らせる棺桶」に隠された通路
- 地面から聞こえる歌声(スピーカー)の正体
- 「心を読む岩」のトリック
- 森のオブジェ(椎名桔平岩など)の仕掛け
- 小松純子の正体と復讐の動機
- 村の隠蔽と里見の介入
- ラストの封筒(開けるな)と別れの余韻
TRICK/トリックシーズン2の伏線

シーズン2の伏線は「章の中で回収される“トリックの鍵”」と、「シリーズの空気を積み上げる“関係性・テーマの伏線”」が混在しています。後から読み返しても拾いやすいよう、章ごとに並べます。
全体を通して効いてくる伏線
- 上田が“超常現象の権威”として依頼される立場になっている(=事件が寄ってくる構造)
- シーズン2は基本2話構成だが、序盤2章だけ“2.5話”(第3話が2部構成)
エピソード1「六つ墓村」編の伏線
- 「毎年1月11日に人が死ぬ」という旅館の噂
- 手毬歌が“死の合図”のように絡む違和感
- 落ち武者の目撃/襲撃騒ぎ
- 洞窟に落ちた先で見つかる白骨死体
エピソード2「百発百中占い師」編の伏線
- 「100%当たる」占いと「従わないと不幸」という縛り
- 上田が“いない”ことそのものが謎になる構図
- 土地に残る神隠し伝説の語り
- 奈緒子が“でまかせ予言”を口にしてしまう危うさ
エピソード3「サイ・トレイラー」編の伏線
- サイ・トレイラーの定義(持ち物から追跡し居所を当てる能力)
- 人面タクシーが“すり抜けた”ように見える怪現象
- 「犯行に見えるが、本人にはアリバイがある」という矛盾
エピソード4「天罰を下す子」編の伏線
- 御告者(祈祷で天罰を下す存在)の噂
- 恵美の“怒りの願い”と、その後に起きる従兄弟の死
- セミナー潜入中に起きる密室の死体発見
- 奈緒子が逮捕され、視点が反転する流れ
エピソード5「妖術使いの森」編の伏線
- 白木の森=「一度入ったら二度と出られない」という伝説
- 調査隊が戻らない/橋本の行方不明
- 妖術使いの顔が“見る側によって変わる”というルール提示
- (余韻の伏線)最終回後に語られがちな「開けるな」と言われる封筒の存在
TRICK/トリック(シーズン2)の主要キャラクター整理

シーズン2は、上田が“世間的に権威化”し、奈緒子は相変わらず金欠というギャップがさらに固定されます。ここでは関係性が迷子にならないよう、レギュラーを最低限で整理します。
山田奈緒子(仲間由紀恵)
自称・天才マジシャン。生活は常に極貧だが、超常現象めいた現場で「それ、手品でしょ?」に最速で辿り着く嗅覚を持つ。上田に巻き込まれつつ、結局は現場に行ってしまう“断れない性格”が事件を動かす。
上田次郎(阿部寛)
日本科学技術大学の物理学教授。理屈で怪異を否定したいのに、皮肉にも超常現象の“権威的存在”として依頼が舞い込む立場になっている。奈緒子を雑に扱うが、いざという時は守ろうとするツンデレ構造が、シーズン2で少し濃くなる。
矢部謙三(生瀬勝久)/石原達也(前原一輝)
警視庁コンビ。矢部は事件の捜査担当で、どこでも“現場の臭い”だけは嗅ぎつける厄介者。石原は振り回される相棒ポジションで、二人の温度差がシーズン2のギャグ密度を支える。
山田里見(野際陽子)
奈緒子の母。娘より商売上手で、場をかき回す装置として登場することが多いが、物語が“奈緒子の側”に寄る局面では強い存在感を持つ。
周辺のレギュラー
姜暢雄・池田鉄洋・大島蓉子ら、上田/奈緒子の日常パートを支える人物も継続登場し、事件の重さを一度“生活感”で薄める役割を担う。
TRICK/トリックシーズン2の全体の結末

シーズン2の結末を一言で言うなら、「超常現象は崩せても、人間の信仰と悪意はきれいに片付かない」。
各章で奈緒子と上田は“それっぽい能力”のタネを暴いていくが、暴いた瞬間に救われるのはむしろ“観客側(見ている私たち)”で、当事者の現実は苦いまま残る――このシリーズの体質が、シーズン2でさらに固まります。
最終章「妖術使いの森」では、妖術使いの顔が見る者によって変わる(=固定の犯人像が揺らぐ)という仕掛けが提示され、疑いの矛先すらコントロールされ得ることが明確になる。
橋本の死体が発見され、上田の目撃は仮面、奈緒子の目撃は椎名桔平の顔――このズレ自体が「目撃の信頼性」を破壊し、森の恐怖が“心理”に乗る。最終回が終わった後に残るのは、「結局、誰が誰を信じたせいでこうなった?」という後味です。
そして、視聴者の記憶に強く残る余韻として語られやすいのが、ラスト近辺で出てくる“開けるな”と言われる封筒(上田が開けたくなる/奈緒子が開けない、という対比まで含めて)です。
種明かしよりも先に、二人の距離だけが露骨に浮き彫りになる。恋愛に踏み込まず、でも関係性は確実に積み上がっている――TRICKが“永遠に言い切らない”ための、意地悪で上品な締め方だと思います。
TRICK/トリックシーズン2からシーズン3に繋がること

シーズン2→シーズン3の“繋がり”は、いわゆる連続ドラマのような「前回の続き」よりも、作品そのものがアップデートされていく“地続き感”にあります。
大きく言えば、放送枠の変化(深夜→ゴールデン)と、その間に挟まる劇場版(=橋渡し)が、シーズン3を「ただの続編」ではなく“次の段階”へ押し上げました。
放送枠が変わり、シリーズの見え方が変わった
まず押さえておきたいのが放送枠。
シーズン2(TRICK2)は、シーズン1と同じく「金曜ナイトドラマ」枠で放送されました。一方シーズン3(TRICK〜Troisième partie〜)は、木曜21時(木曜ドラマ)へ移動。視聴者層が広がる“ゴールデン進出”は、作品の見え方を変える大きな節目です。
この変化が何を意味するかというと、単純な「派手さ」ではなく、TRICKの様式美(オカルトを科学で解体し、最後にどこか不穏が残る)を、より多くの人に届けるための再整備。シーズン3のタイトルがDVD化などで「Troisième partie(第3シリーズ)」と明確に“第3章”を名乗るのも、作品としての格上げと同期している印象です。
シーズン2と3の間に入る「劇場版」が橋になる
視聴の流れとしては、シーズン2(2002)→『トリック劇場版』(2002/11/9公開)→シーズン3(2003)という並びが王道。公式の年表でも、シーズン2の次に劇場版第1作が置かれ、その後に連続ドラマ第3シリーズが続きます。
つまり、シーズン2が「連ドラとしての熟成」だとしたら、劇場版は「TRICKというフォーマットを映画サイズで拡張して見せる場」。
その経験値を持ち帰った状態で、シーズン3が“木曜夜9時のTRICK”として再起動する、という制作・視聴体験の繋がりがかなり大きいんですよね。
シーズン3は「章立て」が明確で、迷子になりにくい
シーズン2も複数話の章と単発回が混ざる構成ですが、シーズン3はより整理されていて、基本は2話完結×5章(全10話)で見取り図がわかりやすい。
「言霊」「瞬間移動」「老人ホーム」「駄洒落歌」そして最終章、という並びがタイトルの時点でくっきりしています。
この“章立ての明確さ”は、シーズン2で積み上げた「山田×上田の定型(喧嘩→検証→種明かし)」を、よりスムーズに回すための設計にも見えます。初見でも追えるし、見返すと小ネタや仕掛けが拾える。TRICKの中毒性が、構造としてきれいに整った感覚があります。
終盤で“縦軸”が再点火し、次シーズン以降の匂いを残す
そしてシーズン3は、単なる事件解決で終わらず、最終話で「霊能力は本当にあるのか?」というシリーズの根っこを再び突きにいきます。
最終話のあらすじとして、奈緒子が「本物の霊能力者だ」と宣告された直後に拉致され、実験で“力”を試される展開が示されています。ここに来て、山田奈緒子というキャラクターの輪郭が、コメディを突き破って急にシリアスに立ち上がる。
この“最後に残る不穏さ”があるからこそ、シーズン3は「完結」ではなく「次に持ち越す余韻」を作れる。
シーズン2→シーズン3の繋がりは、事件の連続というより、山田と上田の関係/TRICKの世界の不気味さが、作品のスケールアップと一緒に深くなっていく流れとして捉えると、かなり腑に落ちます。
シーズン3についてはこちら↓

TRICK/トリックシーズン2の感想

TRICK2(2002年放送・全11話)は、シーズン1で確立した「オカルトっぽい現象を、最後は人間の仕掛けに落とす」型を、いちばん“遠慮なく”磨いたシーズンだと感じます。
放送枠は金曜深夜で、笑いも不穏もやりたい放題なのに、物語の芯はむしろシビア。観終わった後に残るのは爽快感というより、「分かったのに、しんどい」という独特の余韻でした。
「コントの密度」が上がるほど、恐怖も鋭くなる
シーズン2の面白さは、冒頭から“お約束”が加速しているところ。上田は『どんと来い』で世間的に権威化しているのに、奈緒子は相変わらず極貧で、二人の格差と口げんかが初手から濃い。
だから視聴者も安心して笑うんですが、その直後に六つ墓村の「毎年1月11日に死者が出る」「手毬歌が鳴る」という因習ホラーが入ってきて、笑いの安全地帯が急に崩れる。水上荘の“閉じた空気”の中で、音(手毬歌)が合図になっていく作りは、怖がらせ方がすごく嫌らしいです。
TRICKって「タネが分かれば安心」ではなく、「タネが分かった瞬間に、もっと嫌な現実が見えてしまう」作りが多いんですが、シーズン2はその味が強い。因習・信仰・噂が、人間の欲や弱さに直結していて、笑っていたはずの自分が急に居心地悪くなる。ここが中毒性でもあります。
第3話の“二本立て”が、シーズン2の呼吸を決めた
個人的に好きなのは、序盤の変則構成。第3話が「六つ墓村の解決編」と「百発百中占い師の導入」を同居させる形になっていて、事件が終わった瞬間に次の不安へバトンを渡す。視聴者は息継ぎする暇がなく、安心する前にまた疑わされる。この“落下”の感覚がTRICK2のテンポを作っていると思います。
「終わった、はい次」ではなく、解決の余韻が残ったまま新章に入るので、感情が切り替わりきらない。そのまま占い師の“言うことを聞かないと不幸になる”構造に持っていかれると、怖さが怪談ではなく心理に寄ってくるんですよね。
サイ・トレイラー編は、シリーズの“倫理”を揺らす強さがある
シーズン2で一番「異物感」が強いのは、やっぱりサイ・トレイラー(深見博昭)編。
失踪者を探すという名目は“救い”に見えるのに、いつの間にかテレビ、金、名声、遺体発見のショーへ繋がっていく。人面タクシーの怪現象も含めて、表のネタは派手なのに、最後に残るのは「誰が誰を救ったんだ?」という苦さです。
ここは視聴者の評価でも強い印象があって、感想記事でも「サイ・トレイラー編が凄すぎる」と語られやすい章。実際、トリックの巧さだけじゃなく、復讐と正義の境界がぐらつく“後味”が記憶に刺さるからだと思います。
後半2章は「信じたい」が暴力に変わる瞬間が怖い
天罰編〜妖術使いの森編にかけて、シーズン2は“信仰の形”がより露骨になります。
天罰という言葉は便利で、願った側は手を汚さずに済むし、実行する側も「神の意志」に逃げられる。子どもが関わる構図も含めて、見ていて笑えない瞬間が増えるのに、TRICKはあえてギャグを挟む。ここが残酷で、同時に上手い。
そして最終章「妖術使いの森」は、閉鎖空間(出られない森)に“調査隊”という集団を入れ、疑心暗鬼を増幅させる。高速道路建設と伝説がぶつかる設定も含めて、「怪異」よりも「人間が怪異を必要とする状況」が描かれていて、終盤に行くほど苦味が増していきます。
エンディング「流星群」が、救いじゃなく“余韻”として残る
TRICK2のエンディングは鬼束ちひろ「流星群」。この曲が流れると、事件が片付いたはずなのに、どこか置き去りになった感情だけが浮き上がる感じがある。
シーズン2は特に「タネは分かった。でも気持ちは片付かない」が多いので、エンディングが“カタルシス”をくれないのが逆に似合うんです。明るく終わらせないから、次のエピソードを押してしまうし、結局また戻ってきてしまう。
総じてTRICK2は、シリーズの笑いが一段増えたのに、同じくらい不穏さも濃くなったシーズンでした。テンポ良く見られるのに、あとからじわじわ胃に残る。だからこそ、「面白かった」で終わらずに、何度も思い出してしまう――そんな“後味の悪い中毒”が、シーズン2の一番の魅力だと思います。
トリックの関連記事
シーズン1についてはこちら↓

トリックの考察について↓



コメント