祈れば、人は死ぬ。信じれば、救われる――はずだった。
第9話は、“天罰を下す子”という噂の正体が、最も残酷な形で明らかになる回だ。
奈緒子は密室殺人の犯人に仕立て上げられ、上田の周囲には不幸が連鎖する。
それでも誰もが口をそろえて言う。「これは天罰だ」と。
だが本当に恐ろしいのは、天罰そのものではない。人が“天罰だと信じてしまう心”が、どこまで他人を壊せるのか――
その答えが、この回には突きつけられている。
トリック(シーズン2)9話のあらすじ&ネタバレ

第9話は「天罰を下す子の秘密~解決編」。
前話から続く“御告者(おつげしゃ)”編の後半で、いよいよ「天罰は本当に下るのか?」が事件としても、人間ドラマとしても、決着に向かいます。ここから先は完全にネタバレ込みで書きます。
前回までの整理|「御告者」と「笑顔がこぼれる会」が並走していた
女子大生・塚本恵美は、従兄弟への怒りから“御告者”に天罰を願った直後、従兄弟が死亡したことで恐怖に飲まれます。
「偶然か」「誰かがやったのか」「本当に天罰なのか」を確かめるため、上田に“自分を囮にして調べてほしい”と頼み込み、上田はなぜか恵美を自宅で匿う流れへ。
ここに山田奈緒子の“食への嫉妬”と“上田への苛立ち”が加速して、同居パートは笑えるのに、物語の芯はずっと不穏という、TRICKらしい温度差が生まれていました。
一方で奈緒子は別件として、怪しい自己啓発セミナー「笑顔がこぼれる会」へ潜入し、会長・大道寺安雄の“いかにもな商売臭さ”に近づいていきます。この「天罰」サイドと「セミナー詐欺」サイドが、9話で一点に繋がっていくのがこの回のキモです。
密室で見つかった大道寺の刺殺体|奈緒子が“犯人”にされるまで
9話は奈緒子の大ピンチから始まります。大道寺のトリックを暴いた奈緒子は、関係者に捕らえられたところからなんとか脱出。しかし逃げる途中で躓き、転げた先にあったのは――大道寺の刺殺体。しかも外では「誰かいるのか」と扉を叩く声。動けば目撃される、動かなくても状況が悪い。最悪の“現場遭遇”です。
そして警察が到着。
矢部と石原が来た瞬間、「あ、詰んだ」と視聴者側も分かるのがつらいところで、案の定、矢部は奈緒子の浅い言い訳をスパッと見抜き、石原と息を揃えて奈緒子を指差し「犯人や(じゃ)」で逮捕。奈緒子が“事件の中心にいる=犯人にされやすい”という、シリーズおなじみの雑な扱いがここでも炸裂します。
ここで面白いのが、奈緒子の「どんな事件でもまず腹が減る」側面。
普通のドラマなら「濡れ衣で人生終わった…」のトーンに寄りますが、TRICKは「可哀想」だけで終わらせない。彼女の貧乏と逞しさが、後の“ある証拠”にまで繋がっていきます。
上田、警察署へ|取調べ撮影と“天罰ラッシュ”の始まり
上田は恵美を連れて警察署へ向かい、矢部に頼んで奈緒子と面会します。
ここで上田がまずやるのが、奈緒子が借りていたカメラの回収。そして取調べ風景の撮影。上田のことなので「証拠のため」という建前と「俺の推理力すごいだろ」という自己顕示欲が混ざっているのが、見ていて腹立つのに妙に納得できます。
ところが面会後から、上田に“連鎖的な不幸”が襲いかかる。
車が消える(レッカー移動)。取り戻したらガソリンが空。帰り道でゴミ箱に躓いて木に頭をぶつけ、子どもに笑われ、さらに落とし穴に落ちる。ここだけ切り取るとドリフのコントなのに、視聴者は「これ、天罰の“演出”だよな?」と疑い始める。上田が“理屈で否定したいのに、身体は恐怖を覚える”という構図が、笑いと不安を同居させます。
恵美は「自分のせいで上田先生が…」と落ち込むけれど、上田は「偶然だ」と言い切って励まします。
ここ、上田が本当に優しいのか、それとも“怯えている自分”を認めたくないだけなのか、曖昧で良い。TRICKって、優しさと臆病さの境界をわざと濁してきます。
鍵をかけた家に“脅迫状”が置かれる|手紙の不気味さ
散々な目に遭いながら帰宅した上田と恵美。鍵をかけていたはずの家の中に、何者かが侵入し、手紙を置いていく。「逃げても無駄」「天罰は明日中に下ります」といった内容で、脅迫としてもオカルトとしても嫌なやつです。
上田は手紙に残った“痕跡”から、天罰代行の倉岡剛の関与を疑います。
ここでTRICKの面白さは、「密室=超常」と見せておいて、“紙そのものが証拠”になる作りにある。侵入の謎より先に「これは誰の紙か」「どうやってこの紙がここに来たか」を詰める上田の思考は、物理学者というより探偵そのものです。
矢部に報告しても取り合ってもらえず、むしろ「手帳は盗難届が出ている」と言われて一蹴。矢部の“法に落とし込めないものは扱わない”姿勢が皮肉で、この事件が「呪い」ではなく「人間の手口」へ着地していく予感を強めます。
倉岡が死亡|「天罰」か「口封じ」か
上田が「手帳の名前の人間がどうなったか調べろ」と食い下がった直後、矢部に連絡が入り、倉岡の死が判明します。死亡推定時刻は約2時間前。
しかも、倉岡の死が“事故なのか他殺なのか”曖昧なまま出されることで、視聴者はまた揺さぶられるんですよね。「天罰って、本当に…?」と。
上田は「自分の頭脳を恐れて、針生屋敷の誰かが倉岡を殺したのでは」と推理するものの、針生屋敷の3人(光太・母・祖母)にはアリバイがある。つまり「やってない(ように見える)」のに、死人は出る。TRICKが一番気持ち悪くなるのはここで、理屈で追い詰めたはずなのに“理屈の外側”へ押し返される感じがします。
奈緒子の助言「真実だけを見ろ」|そして恵美の異変へ
行き詰まった上田は再び奈緒子に面会します。
奈緒子は「余計なものに惑わされすぎ」「真実だけを見るように」と助言。貧乏マジシャンの言葉が急に哲学になる瞬間で、この回は“奈緒子が上田を導く回”でもあります。
その直後、恵美から電話。「部屋に誰かがいる!」
慌てて帰宅すると、恵美は部屋で倒れている。上田はひとまず寝かせ、現像に出した写真を確認しながら状況を整理し始めます。ここからが後半の核心で、上田の推理が“点”から“線”へ変わっていきます。
写真に映った“場違いな人物”|セミナー殺人と御告者の接点
上田が写真から気づいたのは、「本来そこにいるはずのない人物」が写っていること。
写真の中に、針生屋敷の祖母・針生かずの姿があった。かずはセミナーの会員でも大道寺の部下でもない。なのに写っている。ここで一気に、「笑顔がこぼれる会」事件が「御告者」事件へ接続されます。
奈緒子は「大道寺は色んな人物から恨まれていた」「誰かが大道寺に天罰を下すよう依頼したのでは」と推測します。つまり大道寺は“天罰のターゲット”になった可能性が高い。ここで大道寺がただのセミナー詐欺師ではなく、「誰かに殺されてもおかしくないほど恨みを買っていた人間」として輪郭が濃くなるのが怖いんですよね。
ただし、この時点では「かずが犯人」と断定できる証拠が弱い。
奈緒子も「私が犯人だという証拠もない」と主張し、矢部はまさかの「ほな、もう帰れや」で解放。あんなにあっさり釈放されるのもTRICKの味で、警察の“手のひら返し”がギャグに見えて、実は「証拠がなければ裁けない」現実も刺さります。
恵美、毒を飲む|疑心暗鬼が「トイレットペーパー」にまで及ぶ
上田が帰宅すると、恵美は真っ青でぐったり。医者に診せると「毒を飲んだようだ」と診断され、解毒剤で一命を取り留めます。しかも“普通は口に入るものではない毒”。ここで上田は、食べ物や家中のあらゆるものを疑い始める。
この回で語り草になりがちなのが「トイレットペーパーに毒が…?」という発想まで飛ぶところ。怖がりの上田が、理屈を捨てて“生活のすべて”を疑い始める瞬間で、笑えるのに笑い切れない。視聴者側も、ここまで来ると「もし本当に呪いだったら?」と一回は頭をよぎります。
上田は「天罰の中止」を提案し、金も倍払うと言う。でも恵美は拒否。「敵を討ちたい」「自分はどうなっても構わない」と言い切ります。復讐心が“呪い”というシステムに適合していく怖さが、急に現実の温度で刺さってくる場面です。
腹巻きテスト|「今日中に消える」お告げの正体
上田は針生屋敷へ行き、腹巻きを使って光太に祈祷させます。
光太は「この持ち主は今日中に消えちゃうよ」とお告げ。ところがその腹巻きは上田のものではなく、祖母・針生かずのものだと上田が告げる。つまり光太は“自分の祖母に天罰を下した”構図になってしまう。光太が一気に揺らぐ瞬間です。
上田は「さっさとインチキを認めろ」と詰めるが、母・貴子は「力は本物」だと言い張る。上田は「天罰が下るか見届ける」と居座り、光太を席を外させ、かずに例の写真を見せます。かずは「しばらく一人にして」と部屋へ。しばらくして扉を開けると――かずの姿は消えていた。
この“消失”が、視聴者の感情を一番かき乱す。だってここまで散々「トリックだ」と積み上げてきたのに、最後に「本当に消えた」みたいな絵を置く。TRICKのいやらしさ(褒めてます)がここにあります。
ここからが真相|「天罰」を“実行した人”と、恵美の嘘
かずの正体は、光太を“御告者”に仕立て上げた人物。光太が幼い頃に言ったこと(予言めいた言葉)を、かずが陰で実現させ続けた結果、光太本人も「自分には力がある」と信じ込んでいった。
ところが噂が広まり、光太が「天罰が下る」というお告げばかりするようになり、かずは“天罰を成立させるために動く側”へ追い詰められていく。
つまり、天罰が「下った」のではなく、天罰が「下るように誰かがやっていた」。大道寺が殺された件も、かずが関わった“天罰”の一部として整理されます(大道寺は天罰のターゲットになり得るほど恨まれていた)。
そして、恵美が語っていた“最初の被害”も別の顔を持つ。恵美は従兄弟の死を「天罰のせい」と語るが、実際には遺産相続のために事故に見せかけて殺害していた、という構造が浮かび上がる。恵美の「悲劇の依頼者」という立ち位置が、ここで一気にひっくり返ります。
さらに恐ろしいのは、恵美の“天罰に遭いかけた”出来事が、途中から自作自演に見えてくること。
密室に置かれた手紙、毒、侵入者騒動――全部が「呪いっぽい絵」を作るための装置になり得る。視聴者が「どこかで怪しい」と思い始めるタイミングが、物語の設計と合致しているのも巧いです。
もう一つの“意地悪な真相”|上田が依頼した天罰の相手
そしてこの章のいちばんTRICKらしい一撃が、「上田が御告者に依頼した相手は誰だったのか」という部分。上田が(少なくとも視聴者に見える範囲では)恵美のために動いているように見せつつ、実は“山田(奈緒子)”を対象に依頼していた、という構図が示唆されます。
奈緒子が逮捕されていた数日間、彼女はきちんと食事ができていた。上田が奈緒子の食事風景を何度も撮影していた、という小ネタまで含めて、「守るための意地悪」として成立してしまうのが腹立たしくて笑える。奈緒子にとっては屈辱なのに、結果的に“天罰から隔離され、食事も確保される”という皮肉な安全策になっているのがTRICKです。
後味|“本物”のように見えてしまうラスト
最後に残るのは、天罰が「人間の手で実行された」事件としての解決と、それでも完全には晴れない不穏さ。かずの“消失”は、単なるトリックの勝利ではなく、人の罪と後悔の到達点として提示される。
しかも、その結末が「能力を本物にしてしまう」方向へ転がってしまうのが、いかにもTRICKの残酷さです。
トリック(シーズン2)9話の伏線

9話は「ネタ明かし回」なのに、観終わったあとに振り返ると、かなり丁寧に伏線が置かれています。ここでは“回収ポイント”が分かるように、印象的な仕込みを中心に整理します。
①「奈緒子が借りていたカメラ」|ただの小道具が“決定打”になる
上田が奈緒子の取調べ風景を撮るために回収したカメラが、のちに“写真の中の異物”=針生かずの姿を炙り出します。事件の接点は会話ではなく、画面の端っこの情報で繋がる。
この「映り込み伏線」はTRICKが得意なやつで、見返すと気持ちいい回収です。
②「不運の連鎖」|“天罰”の演出で視聴者の推理を揺らす
レッカー移動、ガス欠、落とし穴…と上田に不運が続くのは、単なるギャグだけじゃなく、「天罰って本当に…?」と視聴者の推理を一度ぐらつかせる仕掛け。理屈で見ている視聴者ほど、ここで心が揺れます。
③「密室に置かれた手紙」|“侵入の謎”より“紙の出どころ”が鍵
鍵をかけた家に置かれた手紙は、密室トリックに見せながら、実際には「誰が書いたか」「何の紙か」が伏線。上田が“痕跡”から倉岡を疑う流れも、後半の「倉岡の死」へスムーズに繋がります。
④「大道寺は恨まれていた」|“天罰の依頼”が成立する人物造形
大道寺はセミナー会長として多くの人から金を巻き上げ、恨みを買う立場。だからこそ「天罰を依頼された」という推測が自然に成立します。ここが弱いと“御告者編”と“セミナー編”がくっつかないので、人物造形が伏線として機能している回です。
⑤「真実だけを見ろ」|オカルトに見える現象を“人間の行動”へ戻す合図
奈緒子の助言は台詞としての伏線です。上田が「天罰」「呪い」という言葉に引っ張られそうになったとき、奈緒子の一言で“事実(写真・行動・動機)”に戻っていく。視聴者にも「怖がるな、観察しろ」と言っているように聞こえます。
⑥「腹巻き」|“予言”の正体を暴く、シンプルな実験装置
派手な超常現象を、腹巻き一枚で“検証”に落とし込むのが上田らしい。光太が「持ち主は今日中に消える」と言い、持ち主が祖母だと判明することで、“お告げ=人の人生を壊す言葉”へ一気に意味が転換します。
トリック(シーズン2)9話の感想&考察

9話は、TRICKの中でも「笑っていいのか、笑ってる場合じゃないのか」の振れ幅が最大級だと思います。ギャグの密度が高いのに、結末だけが妙に生々しい。だからこそ、記憶に残る回です。
「天罰」は超常現象ではなく、“願い”が生むシステムだった
この回の肝は、天罰が「降ってくるもの」じゃなくて「成立させてしまうもの」だった点。
誰かが願う → 権威(御告者)が言語化する → 周囲が信じる → その“物語”に合わせて誰かが動く。
この流れって、宗教でも噂でも炎上でも同じで、結局は「人間が現実を作る」話なんですよね。だからオカルトを否定しているようで、実はもっと怖い“社会の構造”を描いている。
上田の“天才”が珍しく機能する回|でも優しさは歪んでいる
上田って基本は臆病で、見栄っ張りで、すぐ調子に乗る。でも9話は、冷静に罠を張って観察している側面が見える。ここが少し意外で、シリーズを通しても「上田が上田らしく成長してる」ように感じます。
ただ、やり方が歪んでる。奈緒子を“守る”ために、結果として奈緒子を一番嫌な形で利用してしまう。だから奈緒子からしたら、救われても嬉しくない。ここが恋愛ドラマとしても絶妙で、「この2人、仲良くなるほど嫌な思い出も増える」っていう苦さが、TRICKの関係性の味です。
奈緒子が可哀想なのに笑える理由|“貧乏”が人格の一部になっている
奈緒子の扱いが酷い。逮捕され、推理は上田の手柄にされ、疑われ、下着も雑に扱われる。
それなのに視聴者が観られてしまうのは、奈緒子が“悲劇のヒロイン”になりきらないから。腹が減る、怒る、言い返す、意地汚い――それが彼女の生存戦略になっていて、そこにリアリティがある。
そして皮肉にも、拘置(取調べ)中の食事が奈緒子にとって“久しぶりの安定”になってしまう。笑えるのに胸が痛い。TRICKはこの手の「笑いで現実を刺す」瞬間が、たまに本気でえぐいです。
かずの“消失”が残す後味|「本物にしてしまう」最悪の一手
個人的に一番ゾッとしたのは、かずの結末。
彼女がどんな動機で動いていたとしても、最後に“消える”ことで、光太の言葉が「当たった」形になる。つまり、能力が本物に見える状態を、彼女自身が完成させてしまう。これは物語として残酷すぎます。
「真相は人間だった」では終わらず、「それでも“本物”みたいな映像が残る」で閉めるから、視聴者の記憶に“霊能力の余韻”が残る。TRICKが「本物の霊能力者」を断言しない理由って、たぶんここにあります。答えを出せば安心する。でも安心させない。だから怖いし、面白い。
恵美という“依頼者”の怖さ|善人の顔で、最もリアルな悪意を運ぶ
恵美は最初、視聴者の感情移入先として登場する。美人で、怯えていて、上田に頼ってくる。でも、途中から「わざとらしさ」が滲む。
TRICKは“インチキ霊能力者”を出すドラマなのに、この章で一番恐ろしいのは霊能力者じゃなく、普通に嘘をつける一般人なんですよね。
呪いを信じる/信じない以前に、恵美は「信じさせる物語」を作れる。手紙、毒、侵入者、怯えた演技――全部が“演出”になり得る。現代の詐欺や扇動に近い怖さがあって、だからこそ笑いと別種の恐怖が混ざります。
観終わったあとに残るのは「能力」じゃない|人の弱さの手触り
結局、この回が描いているのは「本物の霊能力」ではなく、
- 信じたい(救われたい)
- 怖い(不安を終わらせたい)
- 罰したい(憎しみを正当化したい)
そういう感情が、どれだけ人を動かし、壊すか。だからこそラストが重い。
そして、TRICKはそこに一切の説教をしない。上田も奈緒子も、完全な正義にならない。解決したのに、ちょっと嫌な気持ちが残る。これがTRICKの“味”で、9話はその味が濃すぎる回でした。
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