“必ず見つける”という言葉は、希望にもなれば、いちばん残酷な呪いにもなる。
霧の夜にすり抜けたように見えた人面タクシー。
未来を言い当てる男・深見博昭。
そして次々と消えていく人間たち。
第7話は、超能力を疑う物語ではなく、恐怖を使って人を動かす方法そのものを暴いていく回だ。
謎が解けた先に残るのは、正解よりも重い真実だった。
トリック(シーズン2)7話のあらすじ&ネタバレ

第7話は「失踪者必ず発見の謎~解決編」。サイ・トレイラー(残留思念の追跡)を名乗る深見博昭の“能力”が本物なのか、それとも巨大な仕掛けなのか――。
霧の夜に現れる「人面タクシー」の怪談が、疑いを深見へ寄せていく一方で、決定的な動機と証拠は掴めない。つまり、いつもの「超常現象→種明かし」だけでは終わらない、サスペンスの濃度が一段上がった回です。
事件の焦点は「人面タクシー」へ――“通り抜けた”ように見えた夜
前回、深見のサイ・トレイリングによって、恭子と同時期に失踪した女性3人の遺体が発見されました。残るは、3年前に忽然と消えた資産家の令嬢・小早川恭子。
しかし、その直前に婚約者・岡本が持ち込んだのが「人面タクシー」の目撃談です。霧の夜、白いタクシーが現れ、乗った者は二度と帰らない――しかもそのタクシーが、奈緒子たちの“体をすり抜けた”ように見えた。ここで物語は、遺体捜索のミステリーから、都市伝説めいた怪談の検証へとギアチェンジします。
奈緒子は、この「すり抜け」を“超常”のまま放置しません。
「見た」ではなく、「見せられた」可能性を疑い、矢部や石原まで巻き込んで現場を再検証。ここが奈緒子の面白いところで、彼女は基本的に金と意地で動きますが、火がついた時の推進力は異様に強い。
人面タクシーのトリック――霧・工事灯・数秒の“目をつぶる”
奈緒子たちは当初、霧に何かを投影した“プロジェクター説”のようなものを疑います。けれど、実物としてタクシーは存在し、映像ではない。
種はもっとシンプルで、そしていやらしい。
鍵になるのは「十字路」「濃霧」「工事灯(強い光)」「数秒の瞬き/目を閉じる行為」。視界が奪われる数秒のあいだに方向感覚を失い、右折したタクシーが直進したように錯覚させられる。だから、真正面から突っ込んで“体を通り抜けた”ように見える――超能力ではなく、人間の認知の穴を突くタイプのトリックです。
ポイントは、「目撃」がいちばん信用できそうで、いちばん脆い証拠だということ。
霧と光の条件が揃うと、脳は勝手に“筋の通った映像”を補完してしまう。TRICKがずっとやってきた“信じた瞬間に負ける”構造が、この人面タクシーで強烈に可視化されます。
深見が犯人に見えるのに、刺せない――「動機がない」「アリバイがある」
トリックを解くほど、逆に深見が怪しく見えてきます。
なぜなら「その場にいた(可能性がある)」だけでなく、「超常を演出できる立場」にいるから。
しかし奈緒子が詰めても、深見は崩れません。決定的なのは“動機の不在”。深見にとって、恭子を見つけることは金になるどころか、むしろ面倒が増える話に見える。さらに警察資料をあたると、恭子失踪のタイミングで深見は北海道にいた=物理的に連れ去れない、という情報も浮上します。
ここで視聴者の頭も揺れます。
「じゃあ本当に能力なのか?」
TRICKはたいてい、インチキ師の“欲”が動機になる。なのに今回は、欲だけでは説明できない人物が中心にいる。空気が一気に冷たくなるのが第7話の良さです。
恭子からの“メッセージ”――ゾーンという名の恐怖装置
さらに不穏なのが、恭子から叔父・辰巳へ届いたとされるメッセージ。
辰巳の机の引き出しに“いつの間にか入っていた”という時点で胡散臭いのに、深見がそのメッセージに触れた瞬間、顔色を変えて「危険だ」と呟く。
深見が持ち出す概念が「ゾーン」。
ここではオカルトというより、“恐怖を言語化して相手の行動を縛る”ための装置として機能します。岡本は人面タクシーを見たことで怯え、さらに“死んだ恭子の意識”に追われている、と刷り込まれていく。TRICKが得意な「支配の心理学」が、オカルト語彙でコーティングされていく感じです。
岡本失踪→ホテルへ――そして「ゾーン!」の叫び
深見は「岡本を早く確保しろ」と矢部に促しますが、岡本とは連絡が取れない。
深見はメッセージをサイ・トレイリングし、岡本がいる場所として“あるホテル”へ一同を導きます。
ここからが、今話の心臓です。
急いで部屋へ向かう廊下、扉の向こうから聞こえる岡本の絶叫――「ゾーン!」。そして一同が駆け込んだ時には、岡本は窓から落ちて死んでいる。遺書はない。状況だけが最悪に揃っていて、説明のしようがない。
深見は言います。
「恭子の意識が岡本をゾーンに引き込んだ」
この一言で、場の温度が“怪談”のそれになります。だが奈緒子だけは納得しない。彼女は一貫して「怖がらせて動かす=人間の仕業」と見ているからです。
深見宅の一夜――“閉じ込め”ではなく“監視”の空気
深見は「夜が明けるまでバラバラにならない方がいい」と提案し、一同は深見宅へ。
ここがまた巧い。
密室というより、“同じ屋根の下に置くことで、誰が何をしているかを管理できる状況”を作る。ゾーンの恐怖を共有させて、疑心暗鬼と結束を同時に生む。深見が場を支配するための、静かな配置転換です。
奈緒子は家の中を嗅ぎ回り、快楽殺人に関する本(栞つき)を見つけます。
「犯人は快楽殺人の衝動を止められない」「捕まえるまで続く」――そんな趣旨の記述が、これまでの“複数の白骨”と繋がり、背中が冷える。
「ホテルのマッチ」が一気に全部を繋ぐ――岡本は事故でも自殺でもない
岡本の死は、警察的には「事故か自殺」で処理されそうになる。
遺書なし、争った痕跡なし。ポケットの中は小銭とホテルのマッチだけ。
でも、奈緒子はこの“マッチ”で引っかかる。
自殺にしても事故にしても、残る小道具が綺麗すぎる。何より「窓から落ちた」という結果が、深見の“ゾーン”の物語と噛み合いすぎている。つまり、あまりに都合がいい。
ここで奈緒子の推理が“オカルト否定”から“人間の設計”に切り替わります。
岡本は、恐怖で追い込まれて落ちたのではない。落ちるように“誘導された”。
追跡の果てに「死んだはずの深見」――そして辰巳が崩れる
騒ぎの中で何者かが走り去り、一同は追跡。
そして事態はさらに転がります。深見が“脈のない状態”で見つかる。まさかの深見死亡。ここで叔父・辰巳は明らかに動揺し、取り乱す。
この動揺が“答え”です。
辰巳は一人で山へ向かい、埋めた白骨を掘り起こしているところを逮捕されます。掘り出された遺体こそ、探していた恭子のもの。
つまり、恭子はとっくに殺され、辰巳が埋めていた。
人面タクシーもゾーンも、恭子の失踪の“真相”を覆い隠す霧でしかなかった。
真相:深見は恭子の父――復讐のための“サイ・トレイラー劇”
ここで最大のどんでん返し。
死んだはずの深見が、ひょいと現れる。脈がなかったのは、ワザで“脈を取れなくする”仕掛け(体に小道具を挟む)を使っていたから。
深見の正体は、恭子の実の父。
目的は、娘を殺した辰巳を確実に法で裁き、極刑に追い込むこと。そのために深見は、サイ・トレイラーを名乗ってアカデミーを作り、テレビにも出て、1000万円という餌をぶら下げ、辰巳を“表舞台”に引きずり出した。
さらに残酷なのが、岡本の扱いです。
深見は岡本に「自分が父だと名乗れば恭子の財産は自分に入る。山分けしよう」と持ちかけ、岡本を協力者にしていた。だが最後は、その岡本すら“計画の部品”として切り捨てる。
岡本の死は事故ではなく、深見が仕組んだ“落下”。
岡本を薬で眠らせて部屋を移し替え、窓から逃げろという指示で恐怖を誘導し、結果として転落死させる。ゾーンの物語は、そのための恐怖演出でもあった。
最後に残るのは、TRICKらしい苦味です。
「超常の謎は解けた」――でも救われない。恭子は死に、岡本も死に、さらに他の女性たちも犠牲になっている。正義のための復讐が、別の地獄を作ってしまった。
だから第7話は、スッキリではなく、胃の奥に鈍い重さを残して終わります。
トリック(シーズン2)7話の伏線

第7話は「伏線を撒く→すぐ回収する」というより、前編(第6話)から張った“違和感”を、解決編で一気に束ねる構造です。ここでは、視聴中に引っかかった小さな針が、どうやって終盤の真相へ繋がっていくかを整理します。
「人面タクシー」は超常ではなく“認知のトリック”という予告
- 霧の夜にしか出ない/視界が奪われる
- 工事灯の強い光で“思わず目を閉じる”
- 十字路で方向感覚が狂う
この条件が揃った時点で、「見たもの=事実」ではなくなる。TRICKの王道である“目撃のズレ”が、ここでは怪談の皮を被って提示されていました。
深見の「動機がない」違和感が、“正体”の伏線になる
奈緒子が深見を犯人に仕立てようとしても、決め手が出ない。
それは単に「深見が白」だからではなく、深見が“別の目的”で動いているから。つまり、事件の中心にいるのに金や名声では説明できない――この矛盾が、父としての復讐に繋がっていきます。
「北海道のアリバイ」=“犯人じゃない”ではなく“犯人の条件を満たしていない”示し
恭子失踪時、深見は物理的に現場にいない。
この情報は「深見=誘拐犯」説を崩すと同時に、視聴者にこう思わせます。
「じゃあ深見は何をしている?」
つまり、深見は“連れ去った側”ではなく、“追い詰める側”である、という転換の布石です。
恭子のメッセージ/ゾーン=岡本を落下させるための恐怖装置
- “恭子からの手紙”という死者の介入
- 深見が口にする「ゾーン」
- 岡本が怯え切っていく描写
これらはオカルトっぽい味付けですが、最終的には「岡本を特定の行動へ追い込む」ための心理誘導だった、と回収されます。
「ホテルのマッチ」=“転落”の場所と状況に嘘がある合図
岡本の死が事故扱いになりかける中、マッチが奈緒子の引っかかりになる。
小道具としては地味ですが、「岡本がいた部屋/いた階層/落ちた理由」が偽装されている可能性を示す、重要なスイッチでした。
深見宅で見つかる“快楽殺人”の本=辰巳の正体と、深見の狙い
深見が集めた情報(あるいは深見自身の確信)として、辰巳の殺人が“止まらない種類”だと示唆する。
これが後半の「なぜ深見は辰巳をすぐ通報しないのか?」の答えになり、深見の復讐が“極刑まで持っていく設計”だったことに繋がります。
深見の“仮死”=「最終局面で辰巳を動かす」ための最終トリガー
深見が死んだ(ように見えた)ことで、辰巳は取り乱し、山へ向かい、恭子の遺体を掘り返してしまう。
つまり深見の仮死は、辰巳の“墓穴”を掘らせるための最後の一手。ここまで計算されていた、と回収されます。
トリック(シーズン2)7話の感想&考察

この回を見終わった時に残るのは、爽快感よりも「うわ、そこまでやるのか…」という薄い戦慄です。
TRICKって、本来は“インチキ霊能力者を暴く痛快さ”が売りなのに、第7話はそれを踏み台にして、もっと黒い場所――人間の執念、正義の暴走、そして救われなさ――まで連れていく。だから、シリーズの中でも特別に刺さる人が多いのだと思います。
「解けたのに勝った気がしない」――TRICKのサスペンス回としての強度
人面タクシーのトリック自体は、“認知の穴”を突くタイプで、好みは割れる(正直ちょっと強引だと感じる人が出るのも分かる)。実際、レビューでも「無理があるかも」という声はある。
それでも第7話が強いのは、トリックの良し悪し以上に、“解けた後の景色”が暗いからです。
- 恭子は戻らない
- 岡本も死ぬ
- 他の犠牲者もいる
- 深見は勝って、負ける(逮捕されることすら計画)
名探偵が勝った回ではなく、巨大な脚本の上で「名探偵役を演じさせられた」回。ここが、いつものTRICKと決定的に違う。
深見の復讐は「正義」か――法で殺すために、殺人を止めなかった男
深見は、娘の仇を法で裁く。その一点だけを見れば、気持ちは理解できる。
でも彼は、辰巳が快楽殺人に溺れていくのを止めない。むしろ“続けさせることで”極刑に近づける。
ここが最も苦いところで、深見は「自分の手を汚さない復讐」を選んだようでいて、結局は“もっと汚い手”を使っている。
復讐って、相手だけを地獄に落とす行為に見えて、実は自分も同じ穴へ降りていく。その落ち方を、深見は自覚的に選んでいるんですよね。
だから視聴後に残るのは、カタルシスではなく「怖さ」。
人が人を裁く時、どこからが正義で、どこからが快楽なのか。辰巳だけでなく、深見の側にも“快感”が混じってしまっているように見えるのが、また嫌なんです。
奈緒子と上田が“駒”になる構造――でも、駒だからこそ届く場所がある
この回の奈緒子は、いつも以上に“欲”が前に出ます。1000万円の匂いに敏感で、深見を犯人に仕立てようとさえする。
ただ、だからこそ彼女は執拗に嗅ぎ回り、違和感を拾い続ける。理想の探偵ではなく、雑味のある人間だから、真相に引っかかる。
深見が最後に奈緒子を(ある種の敬意で)評価するのも、そこだと思います。
「優秀な追跡者」って、知性だけじゃなく、執念としつこさの称号なので。
一方の上田は、今回かなり“科学”の人間として機能します。
超常を否定しつつ、目の前の現象は整理していく。なのに最終的には、深見の掌の上。ここが上田の切なさでもあり、魅力でもある。
上田って勝ち続ける天才じゃなくて、負け続けても“検証する姿勢”だけは折れない人なんですよね。
「ゾーン」という言葉の怖さ――能力より、物語が人を殺す
岡本が落ちたのは、窓の高さの問題でも、足を滑らせた事故でもなく、恐怖に追い込まれた結果でした。
そして恐怖の中身は、「死者の意識」「ゾーン」という物語。
TRICKが時々見せるのは、超能力よりも、物語の方が人を殺すという現実です。
「呪いがある」と信じた瞬間、呪いは“行動の設計図”になる。
今回のゾーンは、その設計図を深見が意図的に描いたもの。ここが、ただの怪談じゃなく、犯罪ドラマとして怖い。
視聴者の反応が割れるのも納得――“TRICKっぽくないのに、TRICKの核”に触れている
レビューを眺めると、やっぱりこの回は人気が高い。
「何度も見た」「今のところ一番好き」「脚本がずば抜けている」みたいな反応が多い一方で、「人面タクシーのトリックは強引」という声も混じる。
これ、両方正しいと思います。
人面タクシーの理屈だけで評価すると賛否が出る。でも物語全体としては、TRICKがずっと描いてきた「信じたい弱さ/救われたい欲望/それにつけ込む構造」が、最も濃い形で出ている。
だからこそ“TRICKっぽくない”と言われつつ、逆に“TRICKの核心”として記憶に残る。そんな回です。
次の章へ――解決しても、世界は日常に戻らない
事件は終わる。
でも、恭子は帰らないし、岡本も死んだまま。深見も逮捕される。全部が片付いたわけじゃない。
TRICKはここで、視聴者を変に慰めません。正義は達成されても、幸福は戻らない。
このビターさが、第8話以降の“また別の超常現象”へ戻る時に、逆に効いてくるんですよね。あの軽妙な日常が、少しだけ冷えて見えるようになる。
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