未来が見えるかどうかより、「見えると信じた人間が、どう動くか」が怖い。
百発百中占い師・鈴木吉子の屋敷には、未来を買いに来た人間と、未来を利用しようとする人間が入り混じっていた。
上田が消え、時間の穴という言葉が一人歩きを始め、占いは“当たるか否か”ではなく“従わせる力”へと姿を変えていく。
この第4話は、トリックを暴く物語から、信仰が現実を作ってしまう物語へと一歩、踏み込んだ回だ。
トリック(シーズン2)4話のあらすじ&ネタバレ

シーズン2第4話「100%未来予知~新たなナゾ」は、“100%当たる占い師”こと鈴木吉子(銀粉蝶)の本拠地に乗り込んだ奈緒子(仲間由紀恵)と矢部(生瀬勝久)が、消えた上田(阿部寛)を追いながら「時間の穴(=未来へ行ける穴)」という、シリーズ屈指の“厄介な言葉”に足を取られていく回です。
単に占いを暴くだけの話ではなく、信じる人間の熱量と、そこに寄生する欲望が、現象そのものを作っていく――そんな『トリック』の恐さがじわじわ濃くなる中盤戦でもあります。
上田が消えた――奈緒子と矢部が「吉子様」の屋敷に潜入
前回、奈緒子が鈴木吉子に占ってもらった直後から、上田次郎の姿が見当たらなくなる。
奈緒子にとって上田は「大切なもの」かと問われれば、口では絶対に肯定しないタイプの人間だし、何なら“いなくなったら清々する”くらいの減らず口も出る。けれど、いざ本当に消えると話は別。奈緒子は矢部を連れて、吉子の自宅へ乗り込むことになる。
この“矢部と奈緒子で潜入”という組み合わせが、まず面白い。上田がいないだけで、現場の温度がぐっと下がる。理屈のエンジンが不在のまま、ツッコミと勢いだけで突撃する感じ。
矢部は基本的に「面倒なことを避けたい」し、「自分は偉い」と思っている。奈緒子は「損をしたくない」「でも負けたくない」。この二人が同じ方向を向く理由が“正義”ではなく、だいたい“自分の都合”から始まるのが、『トリック』の気持ちよさでもあり、しんどさでもある。
屋敷にはすでに信者が集まり、吉子を中心とした“未来の売買”が、日常として回っている。奈緒子は上田が拉致され、どこかに閉じ込められているのではと直感する。
しかも、屋敷の中で「上田の声」を耳にしてしまう。視聴者にとっても、ここは一気に不穏だ。「いるのか、いないのか」が曖昧なまま、奈緒子だけが“気配”を感じ取る構図が、妙にホラー寄りの空気を連れてくる。
信者だらけの“説明会”と、長部の「貢ぎ芋」
屋敷では「占いの説明会」なるものが始まり、吉子のシステムが“商品”として提示される。
がまた露骨で、宗教というよりセミナーというより、もう“未来を売るサービス業”の顔をしている。いかにも「視聴者がこの時代に見てきたもの」を、わざと直球で突きつけてくるのが『トリック』っぽい。
奈緒子は映像や仕掛けを観察し、吉子のインチキを暴こうとするが、信者たちの熱が分厚い。中でも強烈なのが長部(伊藤俊人)だ。
彼は吉子への寄付を“貢ぎ芋”と呼ばれるサツマイモ入りの大きな鞄で運ぶほどの信奉者で、その鞄の中身は、冗談みたいな見た目と裏腹に「全財産」級の重みを持っているらしい。笑えるのに笑えない、まさにこの章の象徴的キャラだ。
奈緒子が「やめとけ」と止めても、長部は聞かない。というより、聞けない。ここで描かれているのは、説得の失敗ではなく“構造”だ。信者は未来を買うことで安心し、安心のために金を払う。
払った金額が大きいほど、「信じたことが正しかった」と自分に言い聞かせたくなる。だから止める声ほど敵に見える。奈緒子がいくら理屈を振り回しても、長部の足元にあるのは理屈ではなく、恐怖と依存の塊だ。
家政婦マツ救出と、神隠し伝説「明日の世界」
上田の声を追って屋敷周辺を探し回る奈緒子と矢部は、うめき声のような音に導かれ、手足を縛られ口を塞がれた老女を発見する。老女の名は大内マツ(絵沢萌子)。吉子の屋敷で信者の世話をしている家政婦だ。
助けた瞬間、ガラの悪い男たちに囲まれ、「こいつが金を盗んだ」と因縁をつけられる。証拠だと鞄を投げつけられた奈緒子は、そこに“見せたい証拠”が仕込まれていることを一目で見抜く。
ここ、奈緒子が“マジシャンとしての目”を取り戻す瞬間でもある。彼女の強みは超能力でも霊感でもなく、「人が見せたいもの」「人が見たいもの」を読む嗅覚だ。上田がいないぶん、奈緒子が現場で体を張って種を暴くしかない。だからこそ、奈緒子の“職能”が際立つ。
マツは上田の行方について曖昧な返事をしつつ、矢部が尋ねた「時間の穴」の話を始める。ここで出てくるのが、この一帯に昔からある“神隠し伝説”。山でふっと姿を消した女の子が、しばらくすると戻ってきて「明日の世界に行っていた」と語り、翌日起きることを言い当てた――という話だ。
この伝説が厄介なのは、単にオカルトとして置かれるのではなく、「未来が当たる」ための土台にされること。つまり、吉子の“商品”を支える土地の物語だ。信者たちは、吉子を信じているというより、この土地の空気を信じている。空気が信仰を生み、信仰が金を生み、金がさらに空気を濃くする。『トリック』の嫌らしさは、こういう循環を笑いながら描いてくるところにある。
翌朝の探索――「時間の穴」を巡る“欲”が集まってくる
翌朝、奈緒子たちは周囲を調べ、時間の穴を探すことにする。
すると、またしてもサツマイモを抱えた長部が現れ、場は妙ににぎやかになる。さらに割り込んできた男が「そんなところに時間の穴はない」と断言する。その男は、自分が奈緒子たちの目的を言い当てるように口にし、“こそこそ探すこと自体がもうバレている”と告げる。
ここで登場するのが瀧山(光石研)だ。吉子の信者に見えて、実は内心では時間の穴を見つけて金儲けをしようと画策する不動産屋。奈緒子と矢部に「組まないか」と持ちかけてくる。信仰の場に、信仰とは別種の“欲”が入り込むことで、物語の重力が一段上がる。
瀧山は「時間の穴はある」と言い切る。そして、吉子が自分の前で“それを証明して見せた”と語り始める。森の外れへ連れて行かれ、空の封筒を渡され、瀧山自身が封をする。
吉子は紙を渡して「30分後の自分宛てのメッセージ」を書かせ、紙を受け取ると森へ消える。しばらくして戻ってきた吉子は「30分後、あなたが持っている封筒の中にその手紙が入っている」と言う。実際に時間が経って封筒を開けると、手紙はそこにある。――未来に届けた、と。
奈緒子は「簡単な手品」と切り捨てる。視聴者も、マジックに詳しい人なら“あのタイプの封筒トリック”だと察せるだろう。けれどこの章の肝は、トリックの難しさではなく、トリックが成立する空気の厚さにある。瀧山は「見せられた」時点で半分信じ、残り半分は“信じた方が得”だから信じる。
長部は“信じないと全部失う”から信じる。中野は“当たるなら儲かる”から信じる。つまり、信仰の理由がそれぞれ違うのに、全員が同じ“吉子様”の周りに集まってしまう。そこが怖い。
奈緒子の逆襲プラン:信者を丸ごと奪う「未来予知」ビジネス
信者たちに囲まれた奈緒子は、矢部にとんでもない提案をする。――ここにいる全員を、逆に自分たちの味方にしてしまおう、と。
方法は単純で、下品で、そして『トリック』らしい。「時間の穴を見つけたことにする」。そして「吉子より格安で未来を予知する」と触れ回り、信者を丸ごと奪う。矢部が「どうやって未来を?」と問うと、奈緒子は“それなりにやり方はある”と、具体は濁す。ここ、奈緒子の倫理がギリギリの場所に立つ。
インチキを暴くために、より安いインチキを売る――理屈だけ見れば最低だ。でも奈緒子は「信じる側」を救うというより、「信じさせる側」を引きずり下ろしたい。自分が負けるのが嫌で、相手の土俵で勝ちたい。その欲が、観ていて厄介で、でも目が離せない。
奈緒子は信者を集めて「未来が見える」と宣言する。最初に絡んでくるのが中野(大河内浩)。元証券マンで、典型的な小市民として描かれる男で、「来週儲かる株の銘柄を教えろ」と直球で聞いてくる。奈緒子はそれを「汚らわしい」と拒絶し、“お金では買えない幸せ”を説く。だが中野の心には刺さらない。そもそも彼が買っているのは未来ではなく、儲け話だ。救いの言葉は、欲に負ける。
奈緒子はここで一計を案じ、いったん場を仕切り直す。信者を帰し、次の手を考える。いかにも“商売人”の動きで、奈緒子の哀しさも見える。彼女は正義の人ではない。でも、だからこそ、正義の顔をした詐欺師たちの“気持ち悪さ”が際立つ。
「邪悪な考えを持つ者」――吉子の警告と、バレた計画
そこへ瀧山が入ってきて、さらに具体的な提案をする。吉子は毎晩、夜遅くにこっそりどこかへ出掛ける。
おそらく時間の穴を通って未来を見に行っているのだ、と。だから尾行すれば、穴の場所が分かる。瀧山は無線機まで用意し、「これで目立たず連絡が取れる」と言うが……この無線機がやたらデカい。
こっそりする気ある?と笑ってしまうサイズ感が、緊張感を削ぎつつ、逆に“この作品はホラーにしきらない”という安心もくれる。
だが安心は長く続かない。信者の呼び出しで集まった場で、吉子は「この中に邪悪な考えをもった者がいる」と告げる。
密かに時間の穴を探ろうとしていることがバレている。誰かは名指ししないが、「うまくはいかない」と忠告する。その言葉が、妙に具体的で、妙に冷たい。未来が見えるなら、脅しは最強だ。だって反論しても「その反論も未来に含まれている」で終わってしまうから。
奈緒子たちは計画が漏れたのではと疑い、矢部は中止を提案する。だが瀧山は続行を主張する。
ここで“上田がいない”ことが効いてくる。上田がいれば、たぶん理屈で止める。けれど奈緒子は、怖くても突っ込む。瀧山は、欲が勝つ。矢部は、巻き込まれる。理性が不在のチームは、こうして崩れていく。
マツが預かった手紙――的中する予言と、上田の“異様な言葉”
そこへマツが現れ、昨夜、誰かが自分を訪ねてきたと言う。奈緒子たちが探している人物に“どことなく似た人”だった――そして手紙を預かった、と。
手紙には「時間の穴が確かに存在する」「未来を見てきた」という旨が書かれ、奈緒子たちに迫る未来が予言されている。計画はうまくいかない。さらに、瀧山は死に、奈緒子たちも窮地に陥る――そういった不吉な内容だ。そして、嫌なことに、予言が小さな形で的中していく。言葉が現実に追いついてくる感覚が、視聴者の背中を冷やす。
ここで『トリック』は、よくある“超能力 vs 科学”の形から少し外れる。未来予知を“証明”するのではなく、未来予知の言葉が「人間の行動」を支配していく過程を見せる。未来が見えるかどうかより、未来が見えると信じた瞬間、人はどう動くか。その方がよっぽど怖い。
そして奈緒子がふらっと歩いていると、人影を見つける。追いかけると、そこにいたのは上田次郎本人。
上田は奈緒子に「これ以上首を突っ込むな」と言い、磁場の影響で時間の穴が存在すると断言する。さらに「奈緒子のことが100年先まで読まれている」とまで言う。いつもの“超常現象など存在しない”の上田が、急にオカルト側に踏み込む。この異様さが、今回のいちばんの不気味さだ。
奈緒子が上田の胸中を探ろうとした瞬間、上田は消える。直後、奈緒子は何者かに頭を殴られて気絶してしまう。ここまでの流れが、ギャグを挟みながらも、完全にサスペンスの手触りで進むのが巧い。笑っているのに、急に首を絞められる感じがする。
便所前で目覚める奈緒子――夜の尾行、箱、そして消える瀧山
奈緒子が目を覚ますと、便所の前で倒れていたところを矢部が起こす。矢部は「瀧山が動き出した」と告げ、無線機に連絡が入る。吉子が部屋を出た。尾行開始だ。
奈緒子は止めた方がいいと言うが、瀧山は突っ走る。吉子が入った小屋から出てこないため、瀧山が潜入すると言い残して中へ。
小屋は物置のようで、そこにあったのが文字の書かれた“箱”だ。「怨むと呪う」「そして叫ぶ」……そして“叫ぶの箱”があるはずなのに、見当たらない。瀧山は奈緒子の制止も聞かず、箱を開ける。無線機からは瀧山が襲われる音。奈緒子と矢部が駆け込むと、箱はあるのに、瀧山はいない。“叫ぶの箱”もない。つまり、物だけが残り、人だけが消えた。
長部は混乱し、信者たちの不安が再燃する。奈緒子は彼らを落ち着かせるために、瀧山が見せた封筒の手品を目の前で再現してみせる。
皮肉なのは、ここで奈緒子のトリックが“救い”として機能することだ。本来、嘘を暴くための技が、人を安心させるための嘘になる。『トリック』はこういう瞬間に、人間の弱さと優しさを同時に見せてくる。
そして三人で小屋を再捜索した先で見つかるのが、「時間の穴に落ちた」という瀧山――。時間の穴は本当にあるのか。吉子の未来予知は本物なのか。上田は何を見てしまったのか。答えを次回へ投げつける形で、第4話は終わる。
トリック(シーズン2)4話の伏線

第4話は、解決編(第5話)に向けて“情報”がとにかく多い回です。
ただし『トリック』の伏線は、「謎解きの手がかり」だけじゃない。むしろ“人が信じたくなる理由”や“逃げられない空気”の方が、後から効いてくる。ここでは、次回以降に回収されていくであろう要素を、伏線として整理します。
① 上田の失踪が「拉致」っぽいのに、どこか自発的に見える
奈緒子は「閉じ込められているのでは」と疑うが、上田の出現の仕方は幽霊みたいにふっと現れてふっと消える。
しかも、上田自身が「時間の穴は存在する」と言い切ってしまう。ここは「上田が誰かに脅されている」だけでは説明しきれない温度があり、上田の行動原理が後で整理される前フリになっている。
② マツが語る「神隠し伝説」が、吉子の“商品設計”と結びつく
マツの昔話は一見ただの田舎怪談だが、「消えた子が戻ってきて、翌日を言い当てた」という骨格は、吉子が売る“未来予知”と同型だ。土地の伝説が、信者にとっては“根拠”になる。
つまり吉子は、ゼロから超能力を発明しているのではなく、すでにある物語に自分を乗せている。これを理解すると、次回の種明かしが単なる手品ではなく、“空気の設計”として見えてくる。
③ 長部の「貢ぎ芋」と大金寄付――“信者の財布”が狙われている
長部はギャグ担当に見えて、実はこの章の心臓部。彼の鞄(貢ぎ芋)は、信仰の重さそのものだ。彼が大金を寄付しようとするのを奈緒子が止めるシーンは、「この村で金が動く」ことを明確に提示している。
信者が多い=金が集まる。その金がどこへ流れるのか。未来予知の謎と同じくらい、金の流れが重要な伏線になっている。
④ 瀧山の二面性――「信者」なのに、いちばん欲深い
瀧山は信者の顔で近づきつつ、内心では“時間の穴を利用して儲けたい”と企む。
ここが次回の鍵になっていく。信者たちが求めるのは救いだが、瀧山が求めるのは利益だ。吉子の予知が「救いの顔をした支配」なら、瀧山の欲は「支配の顔をしたビジネス」。同じ穴(文字通り時間の穴)を巡って、欲の種類がぶつかる設計になっている。
⑤ 「空の封筒→手紙が入っている」デモは、手品そのものより“信じさせ方”が伏線
奈緒子が「簡単な手品」と言い切ったように、テクニック自体より、“封筒を瀧山に封させる”ことが重要だ。人は自分が封をした瞬間、そこに「不正がない」と思い込む。
つまり、トリックの伏線は仕掛けの中ではなく、手順と心理の中にある。次回はこの手順が別の形で応用される可能性が高い。
⑥ 吉子の「邪悪な考えを持つ者がいる」という宣言=屋敷が“見張られている”サイン
誰かが計画を漏らしたのか、あるいは最初から監視されていたのか。吉子の宣言は、能力よりも“情報の非対称”を匂わせる。未来が見えるのではなく、未来が起きるように人を動かしているのでは?という疑念が生まれるポイントで、次回の種明かしに直結する伏線になる。
⑦ マツが預かった「上田の手紙」と、的中する予言
手紙には「計画が失敗する」「瀧山が死ぬ」「奈緒子も窮地」と書かれる。これが当たり始めることで、奈緒子たちの行動が制限されていく。
つまりこの手紙は、トリックの証拠というより“行動を縛る道具”。未来予知が当たっているかどうか以上に、当たったと信じた時点で人が負けていく構造が、伏線として仕込まれている。
⑧ 物置小屋の「箱」と、“叫ぶの箱”が消えていること
「怨むと呪う」「そして叫ぶ」などの不穏な文字が書かれた箱があり、肝心の“叫ぶの箱”が見当たらない。この“欠け”が、次回のトリック(あるいは犯行の手順)に直結する可能性が高い。
さらに瀧山が箱を開けた直後に消える流れは、箱が単なる小道具ではなく“人を消す装置”として機能していることを示す最大の伏線だ。
トリック(シーズン2)4話の感想&考察

第4話は、いわゆる“解決前の溜め回”です。にもかかわらず満足度が高いのは、謎の種類が「トリックの種」だけじゃなく、「信じる人間の顔」「信じさせるシステムの顔」「信じたせいで壊れる日常の顔」と、多層で迫ってくるから。
笑わせておいて、急に胸がざらっとする。『トリック2』の中でも、この章の“後味の悪さ”がここで濃くなってきた印象です。
上田不在で見えてくる、奈緒子の“危うさ”と“職人性”
上田がいないと、奈緒子は良くも悪くも前に出る。普段は上田が理屈で現象を削り、奈緒子が現場で汚れ仕事をする役割分担だけど、第4話は“現場側の人間”だけで突っ走る。
その結果、奈緒子の強さ(仕掛けを見抜く目、相手の心理の読み)が光る一方で、危うさ(相手の土俵で勝とうとして自分も嘘をつく)が露わになる。「信者を奪ってやる」作戦なんて、倫理的にはほぼアウト。
でも、奈緒子がそれをやるのは、正義のためというより「負けたくない」から。ここが好き嫌い分かれるところで、僕はこの“人間臭さ”が『トリック』の味だと思っています。
「未来予知」の怖さは、当たることじゃなく“当たったことにされる”こと
この回で一番ゾッとするのは、時間の穴の伝説や封筒マジックそのものより、吉子の言葉が人の行動を縛っていくところです。
- 「邪悪な考えを持つ者がいる」と言われた瞬間、尾行する側はすでにビビる
- 上田の手紙で「失敗する」と書かれた瞬間、失敗に向かって動き始める
- 「瀧山は死ぬ」と言われた瞬間、瀧山の行動が乱暴になる(そして危険を呼ぶ)
未来が見えているかどうかではなく、未来を“予定表”にされることが恐い。人って、信じた瞬間に自分からハンドルを手放す。その弱さを、笑える程度のギャグで包みながら、最後はちゃんと地獄みたいな空気に落とすのが上手い。
矢部がいることで生まれる“笑い”が、逆に不穏を際立たせる
この回、矢部は基本的に役に立たない。だけど、矢部がいるから視聴者は笑える。笑えるから、次の不穏が刺さる。これは堤幸彦演出の“緩急”の作法だなと思いました(矢部は緩、上田の消失と手紙は急)。
特に無線機のくだり。あれを「目立たず連絡が取れる」と真顔で渡されるの、最高にバカバカしい。でも、その直後に起きるのが、襲撃音と失踪。笑った直後に冷える。感情の落差で心拍数をいじってくる。
上田が「時間の穴はある」と言った衝撃
上田次郎って、“超常現象を否定する側”の象徴じゃないですか。その上田が、磁場どうこう言いながら「時間の穴は存在する」と断言した瞬間、シリーズの常識が一度ひっくり返る。
ここで大事なのは、上田が“信じた”というより、“上田が信じているように見える”演出です。上田が揺らぐと、視聴者も揺らぐ。「え、もしかして今回は本当に?」という揺れ。その揺れが、次回の種明かしでどう着地するかが、この章の醍醐味だと思います。
考察:今回のテーマは「未来」じゃなく「支配」
第4話は「未来予知」の話に見えて、実は“支配”の話です。
- 吉子は、未来(不安)を売って支配する
- 信者は、金を払って安心(支配されること)を買う
- 瀧山は、時間の穴(情報)を奪って支配する側に回ろうとする
- 奈緒子は、トリック(技術)で支配を解体しようとするが、同時に“自分が支配する側に立つ誘惑”も持つ
この四角関係が、いちばん『トリック』らしい。誰も完全な善じゃないし、悪も“救いの顔”をしてる。だから見終わったあと、スカッとしきれない。でも、そのスカッとしなさが、次回の解決編でどう回収されるのか――そこまで含めて、めちゃくちゃ良い引きでした。
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