祟りは暴ける。でも、“信じさせる力”は消えない。
六つ墓村を覆っていた落ち武者の呪いは、蝋、酸欠、言葉の聞き間違い――あまりに人間くさい仕掛けとして、ついに正体を現します。
ところが第3話は、そこで終わらない。
民俗ホラーが崩れた直後、物語は一転して都会へ。今度は「言われた通りにしないと不幸になる」百発百中占い師という、別種の恐怖が立ち上がります。
祟りは解体できても、“人を従わせる仕組み”は形を変えて残り続ける。この回は、TRICKシーズン2の空気が
決定的に変わる分岐点です。
トリック(シーズン2)3話のあらすじ&ネタバレ

第3話は、前半で「六つ墓村」編がついに決着し、後半で“空気がガラッと変わる”新章「百発百中占い師」編が開幕する回です。
同じ1話の中で、「民俗ホラー×金田一パロディ」→「都市伝説×洗脳ホラー」へギアチェンジしてくるのが面白く、TRICK2の“幅”を見せつけてきます。
前半「手毬歌の謎」|洞窟に落ちた奈緒子と上田、白骨死体の正体
六つ墓村の旅館「水上荘」では、毎年1月11日に宿泊客が死ぬ。
落ち武者の祟り、手毬唄の呪い、血を流す掛け軸――村の空気は「信じるしかない」方向へ人を押し流していく。
前回までに起きたことを整理すると、
・落ち武者の手毬唄の着メロが鳴る
・女流推理作家・栗栖禎子とアシスタント景子が死ぬ
・番頭の平蔵まで“落ち武者”に襲われる
…と、事件は「祟りの筋書き」に沿って加速していました。
そして第3話前半、奈緒子と上田は“呪いの正体”を暴くためというより、もはや「この村に漂う、触れてはいけない何か」を確かめるために動きます。
手毬唄が示す場所、落ち武者の財宝が眠るという洞窟――「財宝」と聞けば目の色が変わるのがTRICKの人々ですが、奈緒子と上田も例外ではありません。特に奈緒子は「金」に弱い。上田は「名誉」に弱い。弱点は違っても、引っ張られる方向が同じなのが、このコンビの危ういところです。
洞窟の中へ入った二人は、探索中に足を滑らせ、穴へ転落。暗闇の底で、罵り合いながらも生き延びる術を探すことになります。
そしてその奥で見つかるのが、決定的な“現実”――白骨死体です。
この白骨死体は、どうやら「5年前に死んだ人物」ではないか。
さらに「4年前に死んだ大沢が、この存在に気づいていたらしい」という線も浮上し、事件は“今年だけの連続死”ではなく、長期的に続く隠蔽の物語だったことが見えてきます。
奈緒子にとって怖いのは、幽霊よりも「人が、都合の悪い事実を隠すためにどこまでやるか」です。
上田にとって怖いのは、幽霊よりも「自分の理屈が通用しない状況」――つまり、説明できないのではなく、説明する前に殺されること。
白骨死体の存在によって、手毬唄の“呪い”は一気に「仕掛け」に落ちていきます。
ここから先、TRICKが得意なやり方――超常現象を、超常のまま放置しない――が始まります。
「背中わらし」「血の掛け軸」…“怪異”が全部、人間の手触りに変わっていく
この六つ墓村編は、怪異の見せ方が徹底して「民俗ホラー」なのに、解体の仕方が徹底して「生活の理屈」なのが気持ちいい。
代表が、旅館に貼られていた「心のやましい者は立ち入ってはならぬ。背中わらしがとりつくぞ」という貼り紙。
奈緒子は案の定、やましさ満載で立ち入り、案の定、倒れます。
でも、ここで起きていたのは霊の憑依ではなく、酸欠(酸素不足)。
“背中わらし”の正体が、空気の薄い空間に入った人間がバタッと倒れる現象だと分かると、村の恐怖は急にチープになる…のではなく、逆に怖くなる。
なぜなら、酸欠は「誰でも倒れる」から。信仰の有無に関係なく、身体が屈服するからです。
同様に、落ち武者の掛け軸が“血を流す”怪異も、カラクリが判明します。
裏側に仕込まれた赤い蝋、そして掛け軸の裏に開けられた穴。
年に一度、1月11日だけ、日光が当たる位置に調整され、蝋が溶けて「血の涙」に見える。
村が「祟りだ」と言い続けたものが、実は“日光と蝋”で成立していたと分かった瞬間、祟りの正体が「怖い伝説」ではなく「維持されてきた装置」に変わります。
ここで重要なのは、TRICKが“タネが分かったら終わり”にしないところ。
タネが分かった上で、なお残るのは――それを仕掛け、維持し、利用してきた人間がいるという事実です。
六つ墓村は、祟りの村ではなく「祟りが便利な村」だった。
真犯人の狙い|「汚職事件」を隠すための連続死、そして“聞き間違い”がすべてを崩す
事件の核は、村の因習そのものではなく、もっと生々しい「汚職」です。
5年前の1月11日に亡くなった男が、県会議員の汚職事件の証拠を隠していた。そこから歯車が回り始めます。
そして前半の終盤、真犯人が浮かび上がる。
県会議員・亀岡善三と、その秘書・鶴山。
亀岡は小柄で見栄っ張り、思い込みが激しく、選挙権がない相手には露骨に冷たい――という“嫌なリアル”を背負った政治家として描かれています。
彼が「祟り」を信じていたのではなく、「祟りを使っていた」と分かった瞬間、事件の景色が変わる。
さらにTRICKらしいのが、決着の付け方が“名探偵の推理”ではなく、言葉のズレで崩れる点です。
水上荘の番頭・平蔵は、やたら丁寧で、何にでも「お」「ご」を付ける人。
この癖が、ここまで散々コメディとして使われてきたのに、最後に“刃”になる。
平蔵が言った「おしょくじけん」の話――それを亀岡は「汚職事件」だと受け取る。
しかし平蔵が言いたかったのは「お食事券」。
この“聞き間違い”が何を起こすかというと、亀岡の中でこうなるんです。
「こいつらは汚職の証拠を掴んだ。終わった。もう隠せない」
――その結果、亀岡は冥土の土産みたいに、自分からベラベラ喋る。
TRICKの犯人って、追い詰められて黙秘するより、追い詰められて口が滑る方が似合う。
しかもこの場合、追い詰めたのは論理ではなく、言葉の勘違い。“真相解明”が、実に間抜けで、実に痛快です。
そして最終的に、証拠を掴んだ上田と奈緒子は、亀岡を矢部に引き渡し、一件落着……と思いきや、ここで「後日談」が刺さります。
事件が終わった後、平蔵が掛け軸を処分するために外すと、汚職を証明する領収書(受領書)が貼られていた。
つまり、亀岡が恐れた“証拠”は、洞窟の奥ではなく、ずっと旅館の中にあった。
宝は見つからない。
祟りは偽物だった。
でも、汚職の証拠だけは、最悪のタイミングで出てくる。
TRICKはいつも、この“勝ったようで勝ち切れない後味”がうまいです。
後半「百発百中占い師」|“当たりすぎる”鈴木吉子が呼び込む、別種の恐怖
六つ墓村の事件が片付いたあと、物語は唐突に東京(あるいは都会の空気)へ戻ります。
そして始まるのが、100%当たる占い師の噂。
占い師の名は、鈴木吉子。
彼女は「こうしろ」と指示を出し、言う通りにしないと不幸になる――事故、損失、災難。
これがただの都市伝説なら笑い話ですが、厄介なのは「実害」が出ている点です。
警察も黙っていられず、矢部が動く。
問い詰めても「未来が見えるだけ」と言い逃れされ、証拠が出ない。
そこで刑事を一人送り込んで“逆らう実験”をしたところ、穴に落ちて骨折してしまう。
この時点で、占い師は「当たる/当たらない」の次元ではなく、行動を操る装置になっています。
上田はこの件を聞きつけると、当然のように奈緒子を呼びつけます。
「占い師の言うことと逆のことをやってみろ」
相変わらず、口で言うだけで自分は安全圏。こいつ、本当に学者なのか。いや、学者だからこそ、他人で実験するのか。
奈緒子は渋々ながらも引き受けます。
引き受けざるを得ない“弱み”を握られている感じが、TRICKらしい日常の嫌さで笑える。
奈緒子が禁を破る|「指示を無視したらどうなる?」を本当にやる女
奈緒子が占い師のもとへ行き、指示を受ける。
そして、あえて無視する。
ここが奈緒子の強さで、奈緒子の危なさでもあります。
信者に囲まれて空気が濃くなるほど、普通なら「逆らわない」が正解になる。でも奈緒子は逆らう。
なぜなら、彼女は“信じない”からではなく、自分の目で確かめないと気が済まないから。
ところが、指示を無視した直後――奈緒子の身に起きたのは、事故でも損失でもなく、もっと致命的なこと。
上田が行方不明になります。
一番ムカつく相棒が消えた。なのに、奈緒子は焦る。この反射で、二人がもう「依頼人と調査員」ではなく、「コンビ」になっているのが分かります。
山奥の屋敷へ|信者・長部と“貢ぎ物”、そして「時間の穴」の証拠
奈緒子は矢部に泣きつき、矢部は面倒くさそうに動く。
そこへ加わるのが、吉子を熱烈に信仰する男・長部由起夫。
彼は「貢ぎ物」ならぬ「貢ぎ芋」を大事そうに抱えている――という、笑えるのに笑えない信者の象徴です。
三人は、吉子の自宅がある山奥へ向かいます。
案内役は秘書の清水。
辿り着く家は、俗世と切り離された“結界”みたいな場所で、空気が違う。
しかも周辺では、異常な暑さまで起きている。吉子はそれを「時間の穴」の影響だと言う。
そして清水が見せるのが、決定的な“証拠”。
1週間前に撮影されたはずのビデオが、今日の出来事を映している――未来のニュースを先取りしているかのように見える。
ここで視聴者の脳内にも「え、これ…トリックで説明できるの?」が発生します。
六つ墓村は、蝋と穴と酸欠で片が付いた。
でも今回は、映像が未来を映す。
物理学者・上田が消えている。
“解体する側”が不在のまま、怪異だけが積み上がっていく。
最後に吉子本人が姿を現し、奈緒子へ釘を刺すように告げます。
「あなたの運命は私の手の中にある。大事なものはもう見つかりませんよ」
――上田のことを指しているのは明らかで、ここで第3話は不気味に幕を閉じます。
六つ墓村が“後味の悪い笑い”で終わったのに対し、占い師編の引きは“笑えない怖さ”で終わる。
この落差が、第3話のいちばんの魅力です。
トリック(シーズン2)3話の伏線

第3話は、前半が「六つ墓村」編の伏線回収、後半が「百発百中占い師」編の伏線提示――という構造になっています。
特に面白いのは、前半は“仕掛け(装置)”で回収し、後半は“空気(心理)”で引っ張るところ。ここを意識すると、同じTRICKでも別ジャンルみたいに見えてきます。
前半「手毬歌の謎」|回収される伏線・トリックの種
- 「背中わらし」注意書き
→ 正体は霊ではなく、酸欠による昏倒。怪異が“身体現象”に落ちる伏線。 - 落ち武者の掛け軸が“血を流す”
→ 裏側の赤い蝋と穴、日光が当たる日が年に一度(1月11日)という仕掛け。 - 手毬唄の着メロ=死の予告のように鳴る
→ “祟りの合図”として恐怖を煽る演出であり、犯人側の支配ツールになっている。 - 番頭・平蔵の「丁寧すぎる言い回し(何でも“お”を付ける)」
→ 終盤の決定打。「汚職事件」と「お食事券」の聞き間違いを成立させる、最大の伏線。 - 洞窟探索=財宝探しが、事件解決に直結する導線
→ 落下・白骨死体発見で「5年前の死」と汚職の影が繋がる。 - 亀岡の“思い込みの激しさ”
→ 聞き間違いで自爆するキャラ造形そのものが伏線。人物設定がそのままトリックになる。 - 事件が終わった“後”に出てくる受領書(領収書)
→ 真犯人を捕まえた後に、掛け軸の裏から証拠が出る後日談。カタルシスと後味の悪さを同時に残す。
後半「百発百中占い師」|次章へ続く伏線(この回で提示される不穏)
- 「言うことを聞かないと不幸になる」ルール
→ 奈緒子が指示を無視した瞬間、“事故”ではなく“上田失踪”が起きる。ここで「ルールが本当に効いている」ように見せる。 - 警察の“逆らう実験”が失敗している
→ 骨折などの実害が出ており、ただの噂で済ませられない状況を作る。信者以外の“公的な裏付け”として効く。 - 信者・長部の「貢ぎ物/貢ぎ芋」
→ 吉子の支配が、祈りや救いではなく「搾取」に繋がっている匂い。笑いの形で不穏を出す。 - 吉子のキーワード「時間の穴」
→ 占いの的中を“超常”で説明する装置。しかも周辺にフェーン現象のような異常まで起きていると語られ、現実側の理屈を崩してくる。 - 「未来を映す」ように見える映像提示
→ “トリックで説明できるはず”という視聴体験に、あえてヒビを入れる仕掛け。上田不在のまま、超常の証拠だけが積み上がる。 - 吉子のラスト台詞「大事なものはもう見つかりませんよ」
→ 上田失踪を“脅し”ではなく“運命”の言葉に変換し、奈緒子の焦りと視聴者の不安を固定する。
トリック(シーズン2)3話の感想&考察

第3話は、TRICK2の「怖さの種類」が二段階で来る回でした。
前半は“名作ミステリーの型”を借りた村ホラーで、後半は“都市の不安”を食う洗脳ホラー。
笑えるのに、ちゃんと怖い。そして、怖いのに、最後に変な笑いが残る。TRICKの美味しいところが濃縮されています。
六つ墓村の“怪異”は、結局「人間の都合」で作られる
前半の結末って、祟りの正体が蝋と穴と酸欠だった、だけなら「はいはいトリックね」で終わる話なんですよ。
でも、TRICKがイヤらしい(褒めてる)のは、タネが割れた後に残るのが「仕掛け」ではなく“仕掛ける理由”だという点。
落ち武者の伝説や手毬唄は、村にとっては“文化”の顔をしているけど、誰かにとっては“便利な壁”だった。
信じれば信じるほど、村の空気が濃くなるほど、「真相を知ろうとする人」が異物になっていく。
これ、心霊よりよほど現実的なホラーです。
「悪魔の手毬唄」味が濃いほど、TRICKの悪趣味が映える
「悪魔の手毬唄を聞くとトリック2が見たくなる」みたいな反応が出るくらい、今回の“手毬唄殺人”は、あえて寄せてきています。
金田一パロディのカメラワークまでネタにされるのが、TRICKの遊び心。
ただ、TRICKは“横溝っぽい空気”を借りながら、やっていることは横溝より更に意地悪で、軽薄です。
なぜなら、祟りの伝説を解体した後に「宝は見つからない」を突きつけるから。
ミステリーの“ご褒美”であるはずの財宝すら、視聴者に与えない。
このケチさ、最高にTRICKだなと思いました。
聞き間違いオチはギャグじゃなく「破滅のトリガー」になっている
「汚職事件」と「お食事券」。
文字にするとダジャレみたいなのに、劇中では“人が自分の罪で自分を追い詰める瞬間”になっているのが気持ちいい。
亀岡は、平蔵が何を言っているかを正確に聞こうとしない。
なぜなら、最初から「バレたに違いない」と思い込んでいるから。
この“思い込み”が、そのまま自白を引き出す。
つまり、今回のトリックって装置だけじゃなくて、犯人の心理が崩れる仕掛けでもあるんですよね。
装置を暴かれたから終わるんじゃなく、犯人が勝手に「終わった」と思い込むから終わる。この“人間の弱さで事件が解決する”感じが、TRICKのミステリーとしての独自性だと思います。
後半の占い師編、導入だけで「勝てる気がしない」恐怖がある
後半に入った瞬間、作品の温度が変わる。
六つ墓村は、いくら怖くても「村の中だけの話」だった。
でも占い師は、都会にいる。噂が広がる。警察も動く。信者が“組織”になっている。
しかも、吉子はインチキの証拠がない。
信者は洗脳されている。
そして何より、上田が消えている。
“解体役”が不在のまま怪異だけが提示されるから、視聴者側の安心が一気に消えるんです。この作り、ホラーとしてめちゃくちゃ強い。
奈緒子が「禁を破る」のは、無謀じゃなく“検証者の矜持”に見える
奈緒子って、怖がりだし、すぐ金に釣られるし、口も悪い。
でも「言うな」「するな」と言われた瞬間に、“じゃあ、やったらどうなる?”を確認するのが、彼女の主人公性です。
信者の空気に飲まれたら終わり。だからあえて飲まれない行動を取る。その結果が上田失踪という最悪の形で返ってくるのが、後半の引きの上手さでした。
第3話は「歌」と「言葉」で人を支配する回でもある
考えてみると、前半は“手毬唄”が人を縛り、後半は“占いの指示”が人を縛る。
どっちも、物理的に縛るんじゃなく、「従った瞬間から自分で檻を補強してしまう」タイプの支配なんですよね。
だからこそ、TRICKが描く“超常現象”って、最後はいつも人間の弱さに帰ってくる。
信じたい、救われたい、逆らうのが怖い。
その弱さを利用する構造が、前半は汚職と隠蔽に、後半は宗教ビジネスに接続していく。
第3話は、その接続が一話の中で完結するから、見終わった後に「TRICK2ってこういう作品だよな」と腑に落ちる回でした。
次回、上田はどこにいるのか。
そして「時間の穴」は本当に存在するのか。
六つ墓村を“解体”した直後に、解体しづらい相手を投げてくるこの意地悪さも含めて、続きが気になって仕方ありません。
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