シーズン2最終回は、「妖術使いの森」編の決着でありながら、解いたはずなのに安心できないという、TRICKらしさが最も濃く出た回だ。
白木の森で相次いだ失踪と殺人、仮面の妖術使い、そして奈緒子にだけ“椎名桔平の顔”に見えた存在。怪異はすべて人間の仕掛けとして説明されていく一方で、「目撃そのものは信用できるのか?」という疑念が最後まで残される。
妖術の正体、真犯人の動機、そして事件後に突きつけられる共同体の圧力――。最終回は、トリックを暴く物語でありながら、人間の恐怖と記憶が作り出す“見え方”そのものを問い直すエピソードになっている。
※ここから先は、シーズン2最終回(11話)の重大なネタバレを含みます。
トリック(シーズン2)11話(最終回)のあらすじ&ネタバレ

最終章「妖術使いの森」の決着編は、“怪談っぽさ”が極まったところから、いきなり「目撃は信用できない」という地獄の論理へ落としてくるのが恐ろしい回です。
橋本の遺体発見から始まり、「仮面の妖術使い」「椎名桔平の顔」「誰でも妖術使いになれる」という疑念が、登場人物全員を疑心暗鬼にしていきます。
前話(10話)まで:白木の森が“怪談の舞台装置”として出来上がりすぎている
この最終回は、前話で作り上げた“恐怖の土台”があってこそ刺さります。舞台は来さ村の白木の森。村役場の建設部長・橋本孝夫が、上田に「森の実態調査」を依頼し、奈緒子も(半ば巻き込まれつつ)同行。
民俗学者・柳田黒夫、ルポライター・小松純子、探検家アラン・ジャンポール・井上(自称日系フランス人)と部下たち、さらにやる気建設の日向栄一まで参加する“第4次探検隊”が結成されます。
森に入った瞬間から、TRICKらしい「しょうもないのに気持ち悪い」怪異が連打される。
眉毛、鼻毛、耳毛、手の甲の毛、髭、髪……“伸びる場所”が人によって違い、しかも本人がじわじわ追い込まれていく。森に鳴り響く「毛」にまつわる歌声(作中の“毛はえテノール”)が、笑いと不穏を同時に上げてくるのもズルいです。
さらに森には「オルメカ・ヘッドのような頭像」「嘘をつくと火が噴く“真実の岩(心を読む岩)”】【死者を蘇らせる棺】といった、怪談好きが盛り上がる“遺物”が揃いすぎている。ここまで整うと、もはや舞台装置が“本物っぽさ”を量産してしまう。
前話の終盤では、やる気建設の日向が巨岩(オルメカの頭像)に潰されるなど、怪異が「事故」ではなく「殺意」に見えてくるラインまで踏み込みます。そして何より決定的なのが、奈緒子が“妖術使い”と遭遇した瞬間。仮面の下の顔が、なぜか奈緒子にだけ「椎名桔平」に見える――この不気味さが最終回の核になっていきます。
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失踪した橋本の遺体発見:“目撃”がいきなり崩れる恐怖
最終回は、橋本が行方不明になったところから始まり、ほどなくして橋本の死体が発見されます。上田は遺体付近で妖術使いを見たと証言するが、彼が見た妖術使いは“仮面”をかぶっていた。
ところが奈緒子が会った妖術使いは、仮面ではなく「椎名桔平の顔」だった――この食い違いが、事件を「誰かがやってるトリック」から「目撃そのものが信用できないホラー」へ変質させます。
柳田はここで、最終回を象徴する理屈を持ち出します。
妖術使いは「相手の目に映る自分の顔を自由に変えられる」らしい。
つまり、椎名桔平に見えたのも、仮面に見えたのも、どちらも“見せられた”可能性がある。さらに最悪なのは、その論理が示す結論です。誰でも妖術使いのフリができる。
「仮面の男がいた」程度の情報では、もう犯人を縛れない。森の怪談が“社会的な密室”になり、疑いが全員に回り始めます。
「心を読む岩」と奈緒子の“嘘”:上田を守るための一歩
疑いの矛先は、当然“目撃者”の上田にも向きます。しかも上田はビビリのくせに口だけは達者なので、周囲からすれば「何か隠してない?」が成立してしまう。
ここで出てくるのが、森の名物アイテム「心を読む岩(真実の岩)」。嘘をついている者が手を入れると火が噴き出す――ローマの“真実の口”みたいな伝承を、森の怪談に直結させた装置です。
この場面の面白さは、単に「火が出る・出ない」ではありません。
奈緒子が“証明”を迫られる構図そのものが、シリーズの皮肉を体現している。
超常現象を否定し続けてきた奈緒子が、今度は「超常現象みたいな装置」で“真実”を判定される側に回る。しかも、奈緒子はここで、上田をかばうような形で動く。
上田が「奈緒子は何か知っている」と気づいた瞬間、いつもの掛け合いに混じって、事件より重い沈黙が落ちる――最終回の空気が変わるのはこのタイミングです。
柳田のICレコーダーと「つぼ八」:怪談が“利権”に変わる
森の怪異は、ビジュアル的には「呪い」「妖術」で押してきます。けれど最終回の推理は、そこを“利権と隠蔽”の形に変換していく。
鍵になるのが、柳田が残していく情報と、半年前に森へ入って消えた助手・岸本の存在です。柳田はICレコーダーに記録を残す癖があり、その性格が“後から残る証拠”になっていくのが皮肉でうまい。
そして浮上するのが骨董の「つぼ八」。
森の怪談を追っているようで、実はその背後で「壺の横流し」「森に入った調査隊」「消息を絶った岸本」が一本の線でつながっていく。
怪談は、罪を隠すのに都合がいい。誰かが死んでも「祟り」「妖術」で煙幕が張れるからです。最終回はここを丁寧に“地面に降ろして”いきます。
真犯人の告白:小松純子の復讐と、岸本の死
事件の結論は、妖術よりも生々しいところに落ちます。
真犯人はルポライターの小松純子。動機は、半年前に殺された恋人(岸本)への復讐でした。壺の横流しに関わった人間を追い詰め、口封じが必要なら柳田さえ倒す――“呪いの森”の正体が、結局は人間の欲と殺意だったと確定する瞬間です。
ここがTRICKのいやらしいところで、真相に辿り着いたからといってスッキリはしない。
「怪異の仕掛け」が分かっても、岸本が消えた理由と誰かが殺された事実は消えない。笑いながら見ていたはずの視聴者の胸に、じわっと“後味”を残してくる。
小松は告白のあと森へ逃げ、事態は一応「事件としては解決」に向かいます。だが、ここからさらにTRICK2最終回が“らしい”のは、事件の決着=安全な帰還にしてくれないところです。
村長と猟師たちの銃口:最後に出てくる“共同体の圧”
森を脱出した一行を待っていたのは、村長・大橋大三郎と猟師たち。銃を向けられることで、白木の森の恐怖が「妖術」から「共同体の暴力」へ切り替わります。
怪談の外側に、もうひとつの檻がある。村が守りたいもの(守らせたいもの)があり、外部の人間は“排除していい”という空気がある。ここまで来ると、もはや妖術より現実的で怖い。
この局面をひっくり返すのが、山田里見です。
ギャグの権化みたいな人が、最後の最後に「一番強いカード」として場を支配していく。里見は“おバカな言霊”で場をかき回しつつ、壺の在処を突き止める。結果、壺をネコババしていたのは村長だった――怪談の裏の“欲”が、最もダサい形で露呈します。
それでも残る“本物”の気配:妖術使いと黒門島の影
最終回が巧いのは、ここまで「全部、人間の犯罪」として終わらせつつ、最後に“説明しきれない層”を残すところです。
妖術使いは、黒門島に伝わる存在であり、黒門島を追われた者たちの生き残りでもある、とされる。
さらに奈緒子は幼少期に一度接触しており、妖術使いが奈緒子を呼び寄せようとしたことがある――この設定が、最終回の余韻を“恋愛”ではなく“縦糸の不穏”へ接続してしまう。
「奈緒子にだけ椎名桔平に見える」という一点も、笑えるようで笑えない。
人間は“意味のある顔”を探してしまう。恐怖がピークに達したとき、脳は勝手にパターンを拾う。だからこそ、妖術使いが本当に存在するのか、奈緒子の記憶と恐怖が作った“見え方”なのか、最後まで判定不能のまま置かれる。TRICKが時々やる、理屈で解体したのに、情緒だけが残るやつです。
エンディング:封筒と「開けるな」—最終回が“別れ”に見える理由
事件の危機は去り、一行は助かる。けれど、最終回のラストは“解決の爽快感”ではなく、妙な寂しさで締めます。
里見が上田と奈緒子に一枚ずつ封筒を渡し、「決して開けてはなりません。開けなければ、二人はまた会える」と言う。ここで視聴者は分かってしまう――上田が開けないわけがない。
案の定、上田は封筒を開け、中身は“なぞなぞ”。しかも答えは奈緒子の封筒にある。上田は奈緒子のあとを追うが、会えない。
「会えるはずだったのに、会えない」終わり方。
事件を解いても、二人の距離は“収束”しない。言い切らない関係だから、シリーズが続く。最終回の封筒は、恋愛の伏線であり、同時に“TRICKという物語の続き方”そのものです。
トリック(シーズン2)11話(最終回)の伏線

最終回は、前話で散らした「怪異アイテム」と「違和感の台詞」を、“全部トリック(=仕組み)として回収しながら、最後に回収しないものだけ残す構造です。
ここでは11話で見えてくる伏線を、回収ポイント込みで整理します。
伏線1:「妖術使いは顔を変えられる」=目撃証言を無効化する装置
橋本の遺体発見から出る“仮面”と“椎名桔平の顔”の矛盾。
これを柳田が「相手の目に映る顔を変えられる」と説明した瞬間、目撃証言がすべて疑わしくなる。つまりこの設定は、犯人当てのヒントではなく、推理を混乱させるためのルールとして機能します。
この時点で「誰でも妖術使いのフリができる」と観客が理解するので、以降の展開は“超常現象の正体”よりも“誰が何を隠しているか”へ軸が移る。怪談から人間ドラマへ転がすための伏線です。
伏線2:「三つの遺物」=怪談のアイコンに見せた“犯罪の煙幕”
オルメカ頭像、心を読む岩、蘇る棺。
この三点セットは、怖い伝承に見える一方で、最終回で見ると「仕掛けを置ける」「物語を誘導できる」道具に変わります。
棺を追えば通路が出てくる。地面から聞こえる歌声はスピーカーの配置で説明できる。つまり遺物は“怪談の顔”であり、同時に「誰かが作った舞台」でもある。
伏線3:「岸本」「つぼ八」=事件の動機を“現実”へ引きずり下ろす鍵
半年前に消えた柳田の助手・岸本の存在と、骨董「つぼ八」。
この2つが出てきた瞬間、「森が呪われている」ではなく「森が利用されている」に変わります。誰かが壺を横流しした、誰かが口封じをした――怪談は“都合のいいカバー”になる。最終回の真犯人・小松純子の復讐動機も、ここにぶら下がって回収されます。
伏線4:柳田のICレコーダー=“残る証拠”を作るキャラ付け
柳田はICレコーダーに吹き込む癖がある。
序盤はクセの強いギャグに見えるのに、最終回になると「死んだあとも残る声」になる。TRICKが得意な、“キャラ付けのギャグ=後の推理装置”です。
伏線5:里見の登場と封筒=解決の先に“続き”を残す装置
事件の黒幕が暴かれ、村長の隠し事まで炙り出されるところに里見が割って入る。最終回の里見は、ギャグで場を壊して、しかし結果として全員を救う“強制終了ボタン”です。
そして封筒。
「開けるな」は、上田なら絶対開ける。視聴者もそれを知っている。だからこそ、封筒は“事件後の寂しさ”を作る伏線になり、次(劇場版)へ気持ちを繋ぐ。
トリック(シーズン2)11話(最終回)の感想&考察

最終回って、本来は「全部片付けて気持ちよく終わる」か、「大きな謎を残して次へ繋ぐ」かの二択になりがちです。でもTRICK2の最終回は、そのどちらにも寄り切らない。
解決はするのに、後味は軽くならない。
そして“本物っぽい影”だけが、ちょっと湿ったまま残る。そこが好きです。
怪談を解体しても救われない:TRICKが最後に見せる「人間の弱さ」
小松純子の復讐で事件は説明がつく。壺の横流し、口封じ、村の隠蔽。
ここまで整然と落ちるのに、スッキリしないのは、彼女が“ただの悪”じゃないからです。恋人(岸本)を奪われた痛みが、呪いの森より現実的で重い。
怪談を信じるのはバカだからじゃなくて、信じないと耐えられないから。最終回はそこを真正面から見せてきます。
そして村の空気。銃を向けてくる共同体の圧は、妖術より怖い。「ここではこれが当たり前」という空気が、正義も法律も飲み込む。TRICKは笑わせながら、この“土着の暴力”をちらっと混ぜるのが上手い。
奈緒子の“嘘”が、バディを一段階だけ大人にする
奈緒子が上田をかばうような動きをしたとき、二人は初めて「事件」と別のところで繋がった感じがします。
これまでの上田と奈緒子は、推理の上では共犯者でも、心の上では常に喧嘩していた。ところが最終回は、奈緒子が“自分の判断”で上田を守ろうとする。
それが上田の側にも伝わって、二人の間に言葉にしない層ができる。最終回の空気が妙にしんみりするのは、この“層”ができたからだと思います。
「椎名桔平の顔」が増殖する怖さ:笑えるのに背中が冷える
この最終回、視聴後に妙に残るのは「椎名桔平に見える」現象です。
冷静に考えると完全にギャグなのに、奈緒子だけが本気で怯えているから笑い切れない。視聴者の心にも「いや、これ……怖いぞ?」が残る。
口コミでも「椎名桔平そっくりな岩」を連呼していたら、仮面を外した素顔まで椎名桔平で一気にシリアスになった、みたいな反応が出るの、分かりすぎます。ギャグの振れ幅が大きいほど、急に冷える瞬間が刺さるんですよね。
黒門島の影:最終回が“ただの事件”に見えない理由
TRICKは基本的に「超常現象を人間のトリックとして解体する」ドラマです。けれど一貫して、完全には断言しない。超能力や霊性の“匂い”だけ残す回がある。
妖術使いが黒門島に関係し、奈緒子の幼少期とも接点がある――この設定が出た瞬間、最終回は「森の事件」ではなく「奈緒子の縦糸」に触れた回になります。
事件は終わったのに、奈緒子の顔だけがまだ終わっていない。
それがTRICK2最終回の余韻であり、シリーズが長く愛される理由でもあると思います。
封筒エンドの美学:恋愛を“言い切らない”から続く
最後の封筒、あれは完全に意地悪です。
「開けなければ会える」と言われたら、上田は絶対開ける。上田が開けたら、奈緒子は絶対どこかへ行く。
視聴者はその“負け筋”が見えているのに、上田が開ける瞬間を止められない。だから笑えるのに、どこか胸が痛い。
しかも中身が「なぞなぞ」で、答えは奈緒子側にある。
二人の関係って、ずっとこれなんですよね。
上田は追いかける。奈緒子は逃げる。言い切らない。触れない。だけど同じ事件に吸い寄せられる。だから次が見たくなる。最終回は、それを“封筒一枚”でやってしまった。
シーズン2の次は劇場版TRICKに繋がる
シーズン2のラストは物語を完全に閉じず、劇場版TRICKへ続く余韻を残して終わります。
封筒が象徴する「明かされないままの関係性」や、説明しきれない怪異の気配は、テレビシリーズの延長線では回収されず、スケールを広げた劇場版で引き継がれていきます。
つまりシーズン2最終回は“区切り”というより、“映画へ渡すための助走”。ここからTRICKは、テレビの枠を越えた物語へ進んでいきます。

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