ABEMAオリジナルドラマ『MISS KING/ミス・キング』は、のん主演で描かれる“盤上の復讐劇”。
天才棋士の父に人生を奪われた少女・国見飛鳥が、将棋という知的な戦場で父を超えようとする物語です。
父への憎しみを原動力に“史上初の女性棋士”を目指す飛鳥の姿は、復讐と成長、そして人間の尊厳を描く濃密なヒューマンドラマ。
この記事では、第1話から最終回までのあらすじや見どころを完全網羅。
藤木直人演じる元棋士・藤堂とのバディ関係、異母弟・龍也との確執、そして黒幕・結城彰一(中村獅童)との父娘対決――。
誰もが予想できない“盤上のラストチェックメイト”までを、視点で丁寧に解説します。復讐の果てに飛鳥が手にしたものとは? 静かで熱い闘いの全貌を振り返ります。
MISS KING/ミス・キンは原作はある?

ABEMAの配信情報やプレスリリースを見ると、『MISS KING/ミス・キング』は既存の漫画や小説に基づくものではなく、ABEMAオリジナルドラマとして制作されています。
番組ページでは主人公・国見飛鳥が「天才棋士の父に人生を奪われ、その深い憎しみから開花させた才能で自らの人生を取り戻していくヒューマンドラマ」だと紹介されており、誰かの作品を映像化したとは書かれていません。
キャスト紹介でも脚本家に荒木哉仁・石田剛太・山岸聖太という名前が挙げられ、企画や制作プロダクションがABEMAであることが明示されています。同様に、第2話放送直前のプレスリリースでも、企画・脚本・監督がオリジナルメンバーであることが強調されており、リメイクや漫画の実写化でないことが分かります。
こうした情報から、本作には原作となる小説やマンガは存在せず、ABEMAのオリジナル脚本による完全新作ドラマだと断言できます。連続ドラマの脚本や企画には複数のスタッフが関わっており、脚本家がオリジナルストーリーを描き下ろしています。原作がないからこそ、視聴者は先の展開を全く知らない状態で毎週の配信を楽しめるわけです。
新しい物語がどのように展開していくのか──そこがドラマファンにとって大きな魅力と言えるでしょう。
【全話ネタバレ】MISS KING/ミス・キングのあらすじ&ネタバレ

配信開始直後から話題になっている『ミス・キング』は、主人公・国見飛鳥の壮絶な半生と復讐の物語です。
天才棋士である父・結城彰一は勝利への執念から妻子を捨て、飛鳥と母・桂子は貧困と孤独の中で生きることになります。やがて桂子は病で亡くなり、飛鳥は父への殺意と憎しみを募らせます。
しかし、父は将棋界で「将棋の神」と称されるほど成功し、テレビでは「原動力は家族だ」と語る姿を目にする。自分と母の存在を完全に消し去った父に対し、飛鳥は復讐を決意し──ここから彼女の物語が始まります。
1話:クソみたいな世界
物語は飛鳥(のん)の暗い独白から始まります。幼い頃の彼女は、父・彰一(中村獅童)と母・桂子(奥貫薫)に囲まれて幸せな日々を送っていました。将棋の才能を見込まれた飛鳥は父から手ほどきを受け、家族で将棋を囲む温かな場面も描かれます。しかし天才棋士である彰一は勝利への執念に取り憑かれ、スランプの末に家族を捨てて出奔。
飛鳥は将棋をやめ、母と二人で貧しい生活を続けます。やがて桂子は病に倒れ「私みたいにならないで、自由に生きてね」と言い残して亡くなり、飛鳥は深い絶望に沈みます。
母の死後、飛鳥は彰一の自伝を手にしますが、その本には自分たち家族の記録が一切なく、テレビでは「原動力は家族だ」と笑顔で語る父の姿が映ります。
自分たちを完全に消し去った父への怒りと憎しみは爆発し、飛鳥は復讐のためナイフを手に将棋の対局会場へ向かいます。対局場面で彼女は彰一を刺そうとしますが、その瞬間謎の男・藤堂成悟(藤木直人)が現れ、「俺も結城彰一を殺したいと思ってる」と告げ、「あの男を殺せるのは将棋しかない」と諭します。藤堂は父と因縁を持つ元棋士。飛鳥が盤面に駒を並べると、偶然にも彰一が勝利した将棋と全く同じ展開を再現してしまい、その天賦の才能を藤堂は見抜きます。
藤堂は「将棋で彰一を殺せる」と確信し、飛鳥と手を組んで復讐計画を立てることを決意します。この瞬間から飛鳥は“盤上のダークヒロイン”へと変貌し、将棋という静かな戦場で父を追い詰める人生を歩み始めるのです。第1話のラストでは、彼女が藤堂や礼子(倉科カナ)に支えられながら史上初の女性棋士を目指す決意を固める姿が描かれ、物語は壮大な復讐劇へと突入します。初回放送後、視聴者からは「のんのイメージがひっくり返った」「想像を超えるダークヒロイン」といった驚きの声が上がりました。

2話:絶望の縁で「共犯」を選ぶ夜――“駒を持つ”決意
第2話は、母を亡くしたばかりの国見飛鳥(のん)が、生活と社会の圧力に同時多発的に追い詰められていく回。家賃の滞納と更新料で計35万円の支払いに迫られ、清掃の仕事も契約打ち切りとなる。金銭と居場所を失う現実が、彼女の足元から体温を奪っていく。
そんな矢先、勤め先で窃盗事件が発生。覚えのない罪で飛鳥のカバンから複数の財布が見つかり、彼女は警察に拘束される。理不尽の連打によって心が軋むが、それでも彼女は呼吸をつなぎ、沈黙の中で耐える。
盤外では人間関係が動き出す。藤堂成悟(藤木直人)の恋人・堺礼子(倉科カナ)が初登場し、バーでの何気ないやりとりから長い関係の温度が立ち上がる。飛鳥と藤堂の距離が縮むほど、礼子の視線は“支える”と“揺れる”のあいだで微妙な振幅を見せ、のちの三角関係を予感させる。
一方の結城家は冷徹だ。異母弟・結城龍也(森愁斗)の恋人で女流棋士の早見由奈(鳴海唯)に対し、結城香(山口紗弥加)は「結婚するなら棋士をやめなさい」と通告する。肩書きと性別で線を引く現実は、幼い日の飛鳥が味わった“居場所の剝奪”と同じ痛みを響かせる。
物語が大きく転がるのは警察署。龍也が現れ、「自分なら助けられる」と口添えをする代わりに、結城家と関わらず、公言もしないという誓約書への署名を飛鳥に求める。やがて誤認逮捕だったと謝罪は入るが、すでに飛鳥は“血縁の手”に縛られた自由を受け取ってしまっている。これが彼の最初の一手であることを、彼女はまだ知らない。
その直後、香が飛鳥の前に姿を見せ、「復讐はやめて」と冷ややかに告げ、大金を差し出す。飛鳥は札束を空へ投げ、舞う紙片が白い拒絶の合図になる。買われることを拒むこの所作が、彼女の矜持をかろうじて守る。
クライマックスは屋上の場面。藤堂は「自分も結城彰一(中村獅童)に人生を殺された」と過去を吐露し、「あの男を否定するなら将棋で勝つしかない」と手を差し出す。その直後、彼は身を投げるが、下には大きなゴミ箱が用意されていた。何度落ちてもまた盤上に戻ればいい——そんな笑みと共に、彼は“死ではなく生を選ぶ勇気”を演出してみせる。
この夜、飛鳥と藤堂は“共犯”になる。復讐の駒として使われるのではなく、自ら“駒を持つ”側に回る決意が、彼女の指先に宿る。礼子の現実的なまなざし、香と龍也の制度的な圧、由奈が飲み込む悔しさ——感情と制度の二層が絡み合い、盤上より先に盤外が飛鳥を追い詰める構図が明確になる。
第2話は、飛鳥が「生きて抗う」ための起点を獲得する回だ。奪われた人生を取り戻す戦いは、もう“被害者の物語”ではない。静かな駒音とともに、彼女自身の将棋が始まる。

3話:谷底からの挑戦――盤上で復讐するための手順が動き出す
感情の爆発から“制度攻略”へのシフト
冒頭、飛鳥(のん)と藤堂(藤木直人)は「将棋で彰一に復讐する」と明確に同盟を結ぶ。
だが、父・彰一(中村獅童)と公式戦で対局するためには、飛鳥自身が“女性棋士”として登録されなければならない。年齢制限で奨励会入りは不可能――残された道は棋士編入試験のみ。その条件が提示されたことで、物語は感情の爆発から“制度を攻略する”論理へと重心を移していく。
復讐を“正しく勝つためのプロセス”へ翻訳した瞬間、本作の軸が鮮明になった。
アマチュア大会での惨敗――合理のレールを敷く“谷底”
地力を測るため、藤堂の段取りでアマチュア大会に出場した飛鳥。
しかし20年以上のブランクは大きく、中学生相手に完敗を喫する。藤堂は「将棋をなめるな。お前は最弱だ」と突きつける。才能神話を否定し、まず“基礎の欠落”を見せたのは、以降の「敗北→鍛錬→再挑戦」をご都合主義に見せないための布石。
敗北を悲劇でなく合理の起点に置くことで、反撃編の説得力が確立された。
師匠・上田三吉との出会い――型と反復が物語を動かす
職場を失った飛鳥は、藤堂の恋人・礼子(倉科カナ)の家に身を寄せながら、地域の将棋クラブで鍛錬を始める。
ここで登場するのが、上田三吉(五頭岳夫)という厳しくも温かい“町の師匠”。型と反復を積み重ねる身体的な修行が、飛鳥の怒りを勝ち筋へと変換していく。天才のひらめきではなく、段取りと努力を物語のエンジンに据えた演出が印象的だ。
名王戦での再挑戦――女流棋士・早見由奈の誘い
鍛錬を重ね、飛鳥は再びアマチュア大会「玉将戦」(媒体によっては「名王戦」表記)に挑む。前回敗れた中学生との再戦を制し、ようやく手応えを掴む。
会場にいた女流棋士・早見由奈(鳴海唯)は、飛鳥に「今度、私と対局しようよ」と声を掛ける。この一言は、飛鳥が“見えない挑戦者”から“注目される存在”へと変化した象徴。位置の更新こそが、物語を前進させる駒になっている。
“誓約書”と藤堂の介入――盤外の圧力が立ちはだかる
しかし、盤外の圧はさらに強まる。龍也(森愁斗)が現れ、かつて飛鳥に書かせた「将棋をするな」という誓約書を突きつける。法の顔をした紙切れが、彼女の自由を縛る“合法の檻”として立ちはだかる瞬間だ。さらに龍也は藤堂に「まだ将棋にしがみついていたのですか、藤堂先生」と挑発。二人の過去の因縁がほのめかされ、盤上と盤外の戦線が交錯していく。制度を攻略する復讐に対し、制度(家・契約)で妨害する構図が鮮やかに立ち上がる。
由奈×龍也の“盤外ドラマ”――将棋界の序列が私生活を侵食する
同時に、盤外では由奈と龍也の関係が露わになる。
由奈が将棋を諦める条件を口にし、龍也が彼女を抱きしめるシーンは大きな反響を呼んだ。恋愛の熱量と同時に、将棋界の序列や家制度が個人の感情を縛る構図が浮かび上がる。盤上の駒は、盤外の力学によっても動かされる。この対比が第3話の最大の見せ場となった。
総括――「正しく勝つ」ための地図が描かれた回
第3話は、
- 命題:復讐=勝つことではなく、正しく勝つこと(制度上の到達点=編入試験)
- 工程:惨敗→反復→再戦での手応え(位置の更新)
- 逆風:誓約書という盤外の“合法の檻”
を一挙に提示した回だった。怒りを燃料に走るのではなく、手順に落とし、位置を更新し、圧力を言語化する。飛鳥が“史上初の女性棋士”へ肉薄するほど、盤外の妨害も強まっていく――その拮抗の構造こそ、このドラマを長く熱く引っ張る推進力である。
3話のネタバレについてはこちら↓

4話:似ている2人
盤上で崩れ落ちる――「将棋をするな」という声の正体
物語はアマ大会の盤上から始まる。緊張の中、飛鳥(のん)は突如「将棋をするな」という声に襲われ、意識を失って崩れ落ちる。彼女にとって“将棋=誰かを不幸にする装置”という観念は、母の記憶と結びついた深層のトラウマであることが明示される。
控室へ運ばれた飛鳥は、敗北や失神という事実よりも、“また誰かを傷つけるかもしれない”という自己嫌悪に沈んでいた。
そんな彼女に向けて、藤堂(藤木直人)は冷ややかに言い放つ――「俺を、これ以上不幸にできるのか?」。
藤堂は飛鳥の脆さを“バディの欠陥”と見なし、離反を示唆して彼女を見放す。ここで、二人の関係には決定的な亀裂が走る。
藤堂の過去――「将棋で彰一を殺す」と誓った理由
中盤は藤堂の過去篇へ。かつて彼はプロ棋士であり、対局相手は飛鳥の父・結城彰一(中村獅童)だった。
藤堂が「将棋で彰一を殺す」とまで語る理由――その起点となる対局と、その後に起きた出来事が語られる。藤堂にとって将棋は、夢を与えたと同時にすべてを奪ったもの。
だからこそ、飛鳥の脆さに苛立つのではなく、“似ている”と感じてしまう。サブタイトルの「似ている2人」は、飛鳥と藤堂の“傷の性質”が写し鏡のようであることを示している。
結城家サイド――静かに動き出す盤外の戦い
一方の結城家サイドでは、結城龍也(森愁斗)と婚約者の早見由奈(鳴海唯)が書斎で棋譜を広げ、何事かを語り合う。
前話で初めて顔を合わせた三人(飛鳥・龍也・由奈)の関係が、盤外で静かに動き始めていることを示す挿話だ。龍也は“結城家に近づくな”という誓約で飛鳥を牽制してきたが、その警戒心が強まるほど、逆に飛鳥の存在感は増していく。
盤上と盤外――二つの戦場が同時に熱を帯びていく構図が、第4話で明瞭になる。
似ているからこそ、苛立ち合う――「傷の共鳴」という構図
終盤、飛鳥は“将棋=呪い”という思い込みと向き合い、藤堂もまた復讐心に囚われていた自分を省みる。
二人は決別したまま終わるのではなく、“傷の性質が似ているからこそ、相手の弱さが見える/苛立つ”という真理を突きつける。この構図があるからこそ、次話以降の再結集に論理が通る。
4話のネタバレやあらすじはこちら↓

5話:アイドル棋士・早見由奈との最終決戦と“編入拒否”の壁
女流棋士・早見由奈、最後の舞台へ
新人リーグの会場に現れた由奈は、結城龍也(森愁斗)との結婚を控え、将棋連盟専務の結城香(山口紗弥加)から暗に引退を迫られている。
本人も“最後の勝負”になることを悟っており、その立ち居振る舞いには覚悟と諦念が同居していた。「勝負の厳しさ」と「制度の硬さ」が彼女の一手一手に滲む。
女二人の“覚悟”――対話で交わる現実と理想
対局の合間、由奈は飛鳥を食事に誘い、「女であること」がプロの扉をいかに重くするかを率直に語る。
「トップ層は化け物だらけ。編入の壁は想像以上に高い」――現実を突きつける由奈に、飛鳥は「やってみなきゃ分からない」と即座に返す。
由奈の現実論が硬いほど、飛鳥の反発は強く燃える。二人は挑戦者としてぶつかるだけでなく、互いの覚悟を確かめ合う“同志”にもなっていく。
決勝戦――盤上での“殴り合い”
メディアが“女の頂上決戦”と煽る中、決勝の舞台が幕を開ける。
序盤は由奈が主導権を握り、挑発を交えた視線で飛鳥を翻弄。
しかし中盤から飛鳥の集中力が極限に達し、寄せの速さで形勢が一変する。
由奈の「負けました」の声すら飛鳥には届かない――盤に没入する者の孤独と残酷さが鮮烈に描かれた。
終局後、二人は笑みを交わし、敵意ではなく矜持を残して盤を降りる。
引退会見――“敗北”ではなく新たな選択
対局後、由奈は婚約会見で「家を守るために尽くす」と引退を明言する。
それは敗北の言葉ではなく、制度の中で自分の幸福を再設計する意思表明だ。彼女は盤上の炎を生活の光へと移し替え、別の形で戦い続けることを選んだ。
由奈の決断は、女性棋士の生き方を一つの方向ではなく複数の“勝ち筋”として提示している。
結城家の影――彰一と香、盤外の圧力
会場には結城彰一(中村獅童)の姿もあった。
テレビで娘の存在を知り、直接確かめに来たのだろう。藤堂(藤木直人)と視線を交わしながら、「いい勝負だった」とだけ言い残す。
その言葉が父としての感情なのか、棋士としての評価なのかは曖昧なまま。
同時に、飛鳥の編入試験エントリーが“却下”される異常事態が発生し、背後には香の圧力が見え隠れする。結城家は、飛鳥の台頭を盤外の“制度”で封じにかかる。
盤上の熱と社会の冷――第5話の核心
第5話は、盤上の熱量(二人の激闘)と、社会の冷たさ(結城家の圧力)の対比が際立つ回だった。
勝っても次の壁がすぐ現れる構造が、視聴者に「痛みを伴う快感」を与える。
飛鳥は勝って癒やす主人公ではなく、勝って壊す主人公として設計されている。
次回、飛鳥と藤堂がどの手筋で香の封じ手を破るのか――。盤上を越えた“政治の将棋”が、いよいよ動き始める。
5話についてのネタバレ&あらすじはこちら↓

6話:姉弟対局と“出場停止”――香の過去が開示され、勝負の意味が書き換わる
結城家の圧力がついに制度として顕在化する。
冒頭、飛鳥(のん)に「すべての大会への出場停止」という処分が下される。
師の藤堂(藤木直人)は将棋連盟へ直談判に向かうが、現れた結城香(山口紗弥加)は撤回を拒否。
道が閉ざされる中、“家の論理(結城家)=制度”という構図が浮かび上がり、将棋は単なる競技ではなく“アクセス権を握られた場”であることを思い知らされる。
安藤鉄斎の証言──香の過去が描く“敵の人間化”
打開の糸口は「過去」にある。
藤堂と飛鳥が訪ねたのは、元将棋連盟会長・安藤鉄斎(西岡德馬)。
安藤は香の元師匠であり、かつて彼女が女流棋士として活動していた時代の挫折と葛藤を語る。
かつて香が女流棋士として理不尽を受け、丸刈りで盤に臨んだほどの覚悟を抱えていた過去を語る。敵役を平板にしないこの開示が、「香=傷の番人」という立体像を生み出す。
さらに安藤は飛鳥と一局を交える。飛鳥は「クソみたいな世界を否定するために棋士になる」と言葉で真意を打ち出し、実戦でも勝利。
人の物語=証言が、規定の“解釈”を揺らし、閉ざされた入口を開く。6話の秀逸さは、制度を人間で動かす構造にある。
姉弟対局――盤外圧を身体でねじ伏せる
安藤の後押しで飛鳥の出場が認められ、対戦相手は異母弟・龍也。
龍也は姉の棋譜を研究し尽くし、視線や“間”を利用して集中を揺らす。
盤上の戦いを心理と時間にずらす“盤外戦術”だ。飛鳥はここで“対局飯”=豆大福を頬張り、呼吸と血糖を整えて主導権を奪い返す。
盤外の圧に対して、身体でリズムを取り戻す――この切り返しが勝負を変える。SNSでは「のんちゃんの対局飯!」と“もぐもぐタイム”が話題に。
掴む者と放す者――勝敗を“生き方”へ昇華する
勝負は飛鳥の勝利で幕を閉じる。
終局後、龍也は「頂点には父さんがいる」と吐露し、家の地図に囚われた苦さを見せる。
飛鳥は「高くて越えられないなら、みんなを踏み台にして超える」と宣言。
ここがタイトル「掴む者・放す者」の芯だ。
家の正しさに“掴まる”弟、そしてその手を放し、自分の盤を作る姉。6話は、“勝つ”という行為を“生き方の設計”にまで引き上げた回だった。
記事の影――盤上の入口が世間を呼び込む
ラストは次章への伏線。
週刊誌記者が藤堂に接触し、彰一のもとにも“とある事件”の記事が届く。盤上で開いた「入口」は、同時に世間という盤外を呼び込む。
公の言語=記事が、私的な動機=復讐を世間へ翻訳し、戦場が“将棋界”から“世論”へ拡張する。
7話以降、技術と制度に加え、評判という情報戦が加速するのは必至だ。
要点整理
① 制度の壁が具体化
出場停止という“入口”の制御で、競技の公平さがいかに脆いかを可視化。
② 敵役の人間化
香=“家の番人”の裏に、元女流棋士としての痛みがある。
安藤鉄斎の証言が対立の厚みを補強する。
③ 勝負の場の拡張
龍也の研究と嫌がらせによって、将棋は心理戦と時間戦へ。
飛鳥が掴むべきは“勝ち筋”より“折れない設計”だ。
6話のネタバレ&あらすじはこちら↓

7話:炎上と“師弟”の再起、そして父の宣戦布告
炎上の連鎖──暴かれる過去と、父の公表
夜、藤堂(藤木直人)は週刊誌記者の直撃を受け、飛鳥(のん)がかつて彰一(中村獅童)の命を狙い、藤堂とともに“将棋で復讐”を企てていた事実を掴まれてしまう。
記事が出ると同時に二人は大炎上。
世間の矢が向けられる中、彰一は理事会で「飛鳥は自分の実の娘だ」と公表し、波紋は将棋界全体へ広がる。
礼子(倉科カナ)の店もネット世論の標的となり、ついには物理的な荒らしまで発生。飛鳥を守ろうとする人々の行動さえ、炎上の燃料になっていく。
騒動の責任を一身に負おうとする藤堂は、「俺が首謀者でお前は利用されたことにして押し切る。
今から俺たちは赤の他人だ」と突き放し、世間から彼女を守るために姿を消す。
師を失った飛鳥は、編入試験の第一局に臨み、藤堂の“盾”となる覚悟を胸に白星スタート。
しかし、炎上は心を侵食し、第二局・第三局で連敗。
「将棋を指すことで周囲を不幸にするのでは」という自己呪縛が、盤上の手を止めていく。
再び“師匠”と呼ぶまで──礼子の言葉と、師弟の再生
折れかけた飛鳥の背を押したのは、礼子だった。
「あなたが将棋をしても、みんなは不幸にならない」と言葉を置き、藤堂の居場所を伝える。
翌朝、飛鳥は藤堂のもとを訪ね、「今、不幸ですか?」と真正面から問いかける。藤堂は「最悪だよ。お前のせいで。礼子もだ」と吐き出すが、飛鳥は引かない。
「私が将棋で治します。だから一緒に戦ってください」と頭を下げ、初めて藤堂を“師匠”と呼ぶ。この名乗り直しが、ふたたび“師弟の関係”を将棋盤の上へ引き戻す。
その後の第四局。飛鳥は一転して圧勝する。
迷いを断ち切った指先は速く、強く、序盤から主導権を握る。盤上の静けさの中に、再生した師弟の呼吸がはっきりと感じられる。
彼女が打つ一手一手は、“勝つため”ではなく“誰かを治すため”の将棋へと変化していた。
父の記者会見──家族の崩壊と、最終局の宣言
同時刻、将棋連盟は記者会見を開く。
彰一は「飛鳥が娘であること」を公にし、さらに週刊誌へのリークの犯人が龍也(森愁斗)であると明かす。
家族の内部から情報が漏れ、炎上が拡大していたことが判明する。
そのうえで彰一は、「一連の騒動に自ら決着をつける」と宣言。編入試験の最終対局の相手を自分が務め、対局後に引退すると告げる。盤上で父と娘が向き合い、復讐と救済が重なる“最終局”の幕がここで明確に見えた。
ラスト30秒では、彰一の直筆と思しき原稿用紙が映り、飛鳥と母・桂子に関する決定的な一文が示唆される。
父の“公的な告白”と原稿の“私的な独白”——二つの語りが交錯し、最終話への導火線が静かに灯る。
炎上、再起、そして家族の真実。第7話は、それぞれの“将棋”が交わる瞬間を描き、
最終章への扉を確かに開いた。
7話のネタバレについてはこちら↓

8話(最終回):親子対局の決着と「将棋やめます」宣言――復讐を“終わり”にし、“生”を“始まり”にする回
開戦前夜――香が手渡す“削除原稿”が、対局の意味を変える。
最終局直前、父・彰一の現妻・香が飛鳥に差し出したのは、彰一の自伝から削除された一部原稿。
そこに綴られていたのは、彼が家を出た本当の理由——妻と幼い娘を愛しながらも、勝負への執着が「この二人がいなければ勝てるのでは」という邪念を生み、さらに7歳の飛鳥が自分を凌駕する天才だと悟ったときに覚えた嫉妬と恐怖だった。
飛鳥は怒りと哀しみを抱いたまま運命の盤へ向かうが、“父は怪物ではなく、弱い人間でもあった”という事実が、彼女の「勝つ理由」を微妙にスライドさせる。
親子対局――殴り合いのような激闘、その末に。
舞台は「棋士編入試験・五番勝負の最終局」。演出は技術の応酬より“感情の衝突”。
互いに一歩も引かない手の連続は、まるで親子の殴り合い。そして終盤、飛鳥が渾身の一手で押し切り、父から初めて盤上の勝利をもぎ取る。
結果、史上初の女性棋士が誕生し、彰一は涙で「強くなったな、飛鳥」と告げる。この“勝利”は、相手の否定ではなく“存在の承認”へと反転していく。
会見の“反転”――「将棋ってほんとうに面倒くさい! だから、もう辞めます!」。
歓声の渦中、飛鳥は勝者会見で将棋引退を宣言する。唐突に見えるこの言葉は、復讐の武器として掴んだ将棋を自分の手で手放すという“最後の能動”。
しかもラストには、その発言の真実に触れる“回収の一手”が置かれ、衝撃は単なる撹乱で終わらない。物語は、肩書の栄光より“生の自由”を優先する決断として、この「辞めます」を位置づける。
2年後の余白――“復讐の相棒”は生活へ、父は家族へ、飛鳥は不在へ。
エピローグは静かな再配置だ。藤堂は礼子の店で働き、二人には子どもが生まれている。
彰一は息子・龍也と将棋を指し、勝負のために壊した“家”をやり直す。
だが飛鳥は姿を見せず、香は「どこに行っているのよ…」と待ち続ける。そして最後には飛鳥が将棋の対局にやってきた。
会見で辞める!と言いながら、その後に将棋を続けると言い、そのままプロになっていたのです。女性棋士として対局する…。そういったハッピーエンドを迎えました。
読み解き:勝利条件の再定義——“キング”に到達しながら降りる自由。
飛鳥は父への復讐を起動力に棋界へ飛び込み、男性中心の制度に風穴を開け、ついには史上初の女性プロ棋士という“到達点”まで登りつめた。
だがその瞬間でさえ、彼女は“キングの座”に居続ける道を選ばず、自分の人生の主語を取り戻すほうへ舵を切る。
対局で父から引き出した承認は、飛鳥が「勝負の世界に選ばれた存在」である証だった。
一方で会見での宣言は、その栄光を盾に父の影と呪縛から完全に離脱する意志表明でもある。
勝負に勝つことと、勝負から降りること—本来なら矛盾する二つの行為を同じ勇気でやり切ったからこそ、復讐譚は再生譚へと転じた。
ラストで示される“真実”が浮かび上がらせたのは、将棋という呪いを解き、肩書や頂点ではなく 「自分がどう生きるか」 を選ぶ主体の回復である。
補足メモ(事実ベース)
・最終局前に“削除原稿”が渡され、父の真意(愛・執着・嫉妬)が明かされる。
・“親子対局”の末に飛鳥が勝利し、史上初の女性棋士が誕生。
・会見での「将棋やめます」宣言と、ラスト1分で将棋をやめてなくプロ棋士になったという回収。
・2年後の情景(藤堂と礼子の子、彰一と龍也、香の独白)。
結論
8話は、勝つことで父を超え、プロとして棋士の頂に立ち、そのうえで“自分の人生を選び直す物語”だった。
復讐のために始めた将棋でプロになるという到達点に辿り着きながら、飛鳥は「これを最終目的にはしない」と自ら境界を引いた。
それは将棋を手放すのではなく、“父に勝つための将棋”から “自分のための人生” へ重心を移す一手。
肩書に縛られず、頂点に立った瞬間に自ら次の扉を選ぶ——その潔さと主体性こそ、復讐譚を再生譚へ反転させた核心だった。
ミスキングの最終話についてはこちら↓

MISS KING/ミス・キングのキャスト一覧
- 国見飛鳥(のん)・・・天才棋士の父に人生を奪われた主人公。深い憎しみを胸に将棋の才能を開花させ、復讐を誓う。
- 藤堂成悟(藤木直人)・・・元棋士の“ヒモ男”。飛鳥とバディを組み、将棋で父に挑む“共犯者”。
- 堺礼子(倉科カナ)・・・藤堂の恋人。迷走する飛鳥と藤堂を現実的に支える存在。
- 国見桂子(奥貫薫)・・・家族思いの飛鳥の母。飛鳥の心の根っこを形づくる人。
- 結城龍也(森愁斗)・・・飛鳥の異母弟。ずる賢い一面を持つ新進の棋士。
- 早見由奈(鳴海唯)・・・アイドル的存在の女流棋士。飛鳥の前に“憧れ”と“現実”を映す鏡として立つ。
- 安藤鉄斎(西岡德馬)・・・元将棋連盟会長。盤外の力学を象徴する重鎮。
- 結城香(山口紗弥加)・・・彰一の再婚相手で将棋連盟の専務。飛鳥の行く手に立ちはだかる“壁”。
- 結城彰一(中村獅童)・・・家族を捨てた“天才棋士”にして飛鳥の父。栄光の影が物語の原罪となる。
第1話ゲスト:棋士(村上健志/フルーツポンチ)・・・彰一の対局相手として登場。SNSでも“本物みたい”と話題に。
MISS KING/ミス・キングの結末。最終回はどうなる?
ABEMAオリジナルドラマ「MISS KING/ミス・キング」は、天才棋士の父に人生を奪われた主人公・国見飛鳥が、将棋というフィールドで父に復讐しながら、自分の人生を取り戻していく物語です。
全8話のラストは、キャッチコピー「クソみたいな世界、私が変える。」を自らの手で実現するような、親子対決と“その後”が丁寧に描かれていました。
ここから先は最終回の内容に深く触れていきます。未視聴の方はご注意ください。ライターとして、最終回を構成するテーマと流れを整理していきます。
最終回のざっくりした流れとラストシーン
最終話「終わりと始まり」。
飛鳥は史上初の女性棋士を目指す編入試験・五番勝負の最終局で、復讐相手であり実の父でもある結城彰一と対局することになります。
父親「彰一」が離婚して、飛鳥を捨てた本当のり有
対局直前、彰一の妻・香が訪れ、彰一の自伝から削除してしまった原稿の一部を飛鳥に手渡す。そこには、かつて飛鳥と桂子をどれほど愛していたか、また「家族」と「将棋」に引き裂かれるような葛藤が綴られていました。
その一方で、飛鳥の才能に怯え、7歳の娘への嫉妬と恐怖で追い詰められていた彰一の本音も判明します。「勝てないのはこの2人のせいではないか」という最低な感情と、「それでも2人を愛している」という真逆の本心が共存してしまい、彰一は家を出るという最悪の選択をしてしまったという事実が明らかになります。
しかし事実を知っても飛鳥の怒りは収まりません。「今さら何を勝手なことを」と藤堂にぶちまけ、
- お母さんと自分の人生を奪っておいて
- 「最も愛していた」なんて都合が良すぎる
と激昂。
飛鳥は赦すためではなく、“親子喧嘩としての決着”をつけるため、盤上へ向かう。「あいつをぶっ倒したら、棋士なんて辞める」という宣言は、その覚悟の表れでした。
彰一VS飛鳥の最終対決の結果は?
そして迎える親子対局。怒涛の攻めで父を追い詰め、何度も窮地に立たされながら、飛鳥はついに最終局を制します。
史上初の女性棋士の誕生。対局後、彰一が涙をにじませながら「強くなったな、飛鳥」と声をかける場面では、“将棋の化け物”として生きてきた男が、ようやく一人の父親へと戻っていく姿が描かれます。
しかし真のクライマックスはその後。記者会見で飛鳥は「将棋って本当に面倒くさい。だから辞めます」と宣言し、視聴者をざわつかせました。だがラストでその真意が明かされ、「面倒くさいけど、むちゃくちゃ面白い」と笑う飛鳥の姿が映し出されます。
飛鳥がやめようとしたのは「憎しみで指す将棋」であり、将棋そのものではなかった――ここが最終回の核心です。
飛鳥は復讐の先に何を手に入れたのか
個人的に最も心に残ったのは、「復讐は完遂するが、赦しを強制されない」終わり方でした。彰一の本音は、人として最低な部分と、父としての愛情がぐちゃぐちゃに混ざった告白です。本来なら「そんなの知らない」と切り捨ててもいい。飛鳥はそれをきちんと拒絶する。
- 罪は消えない
- 自伝の一節を読んだからといって“感動して和解”にはならない
この距離感を残したまま、盤上で親子喧嘩を決着させる構造がとても秀逸でした。
対局は復讐ではなく、“親子という関係の再定義”。
飛鳥は勝った瞬間、「父を超えるための道具」ではなく、“国見飛鳥という一人の棋士”として立つことができた。
一方の彰一も、娘に敗れることで初めて“負けてもいい自分”を許されていく。香の「ご苦労さまでした」という一言は、彼の長い呪いをそっと解くような言葉でした。
2年後エピローグと「クソみたいな世界」の変わり方
エピローグの2年後。飛鳥の世界は大きく変わっています。
- 藤堂は礼子のバーでエプロン姿になり、幸せそうに働いている
- 礼子は赤ちゃんを抱き、藤堂を優しく見守る
- 結城家では、彰一が龍也と穏やかに将棋を指し、由奈がそれを微笑ましく眺めている
- 香がマネージャーになりながら飛鳥がプロの棋士になっている
かつて「クソみたいな世界」と罵っていた飛鳥は、将棋を通じて新しい“家族”を手に入れていた。
飛鳥が辞めようとしたのは、「憎しみのための将棋」。その呪いを断ち切ったうえで、自分の人生の真ん中に“面倒くさくて面白い将棋”を置き直そうとしている。
最終回へのSNSの反応と感想
SNSでは、
- 親子対局に号泣
- ラストの記者会見に衝撃
- 「親子喧嘩としての将棋」が熱すぎる
と高評価。一方で「辞めるの?続けるの?」という戸惑いも。
あの会見は三つの意味を同時に抱えた“圧縮された一言”だと考えています。
- 復讐のための棋士はやめる
- 將棋に支配される生き方もやめる
- だけど、面倒くさいからこそ面白い将棋を続ける
父・彰一は将棋を選ぶために家族を捨てた。しかし飛鳥はその逆を選ぶ。
「父を倒しても、将棋だけは選ばない」。復讐の先にある“自分の人生”を、初めて自分で選び取っていく姿が描かれていました。
復讐を否定せず、赦しも強制せず、飛鳥の人生がようやく“自分のもの”になった最終回でした。

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