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ドラマ「ミス・キング」第5話のネタバレ&感想考察。飛鳥と由奈の勝敗、女性棋士を阻む「超えられない壁」

ドラマ「ミス・キング」第5話のネタバレ&感想考察。飛鳥と由奈の勝敗、女性棋士を阻む「超えられない壁」

ABEMAオリジナルドラマ『MISS KING/ミス・キング』第5話「超えられない壁」は、国見飛鳥の復讐が、父・結城彰一との個人的な問題を越え、女性を棋士の世界から押し戻してきた制度そのものへ触れていく回です。

宗桂杯新人リーグに出場した飛鳥は、人気女流棋士・早見由奈と決勝で対局することになります。華やかな笑顔と確かな実力を持つ由奈は、飛鳥にとって成功した女性に見えますが、その内側には女流棋士として評価されても「棋士」にはなれないという長年の挫折が積み重なっていました。

飛鳥と由奈の勝負は、どちらが強いかを決めるだけの一局ではありません。諦めずに進もうとする女性と、諦めるよう求められてきた女性が、盤上で互いの本音を引き出す対局です。

この記事では、ドラマ『ミス・キング』第5話のあらすじ&ネタバレ、伏線、感想と考察について詳しく紹介します。

目次

ドラマ「ミス・キング」第5話のあらすじ&ネタバレ

MISS KING/ミス・キング5話のあらすじ&ネタバレ

第5話で描かれるのは、飛鳥が由奈との決勝に勝利する一方、強さだけでは越えられない制度と権力の壁に直面するまでの物語です。

第4話で飛鳥は、将棋を楽しむことへの罪悪感から一度は盤を離れようとしました。しかし、藤堂成悟と互いの傷を語り合い、母・桂子の幻影を自分への禁止ではなく、応援として受け止め直すことで大会へ戻ります。

アマチュア棋匠戦で勝利した飛鳥の将棋は、少しずつ彰一のいる世界へ届き始めました。第5話では飛鳥がさらに大きな舞台へ進みますが、そこで出会う由奈の存在によって、勝ち続ければ誰でも棋士になれるという単純な実力主義が崩されていきます。

飛鳥は若手棋士の登竜門で由奈の引退を知る

飛鳥、藤堂、堺礼子の三人は、宗桂杯新人リーグの会場へ向かいます。飛鳥にとっては棋士編入試験へ近づくための重要な大会ですが、会場の注目を集めていたのは人気女流棋士の早見由奈でした。

宗桂杯新人リーグへ向かう飛鳥、藤堂、礼子

母への罪悪感を抱えながらも将棋へ戻った飛鳥は、藤堂の指導を受け、宗桂杯新人リーグへ出場します。彰一を公式戦で倒すには、自分自身が棋士にならなければならず、そのためには大会で勝利を重ね、編入試験へ進む資格を得なければなりません。

第3話で最初の大会に出た頃の飛鳥は、基本的な実戦経験すら不足し、中学生を相手に完敗しました。しかし、藤堂との対局や感想戦を重ね、母の幻影による異変にも向き合ったことで、以前とは違う落ち着きを見せています。

藤堂は飛鳥の成長を認めながらも、気を緩めません。一つの大会で勝っただけでは彰一へ届かず、今後も強い相手との対局を勝ち抜く必要があるからです。

礼子は二人と共に会場へ向かい、勝負の外側から飛鳥を支えます。藤堂が飛鳥を棋士へ近づける役割を担う一方、礼子は勝っても負けても戻れる日常を守り、飛鳥が再び自分を追い込まないよう見守っていました。

報道陣の中心に立つ人気女流棋士・早見由奈

会場には多くの参加者がいますが、報道陣が特に注目しているのは由奈でした。由奈は女流棋士として高い人気と実績を持ち、カメラを向けられると期待された通りの笑顔を見せます。

飛鳥から見れば、由奈は女性が将棋によって成功した姿です。実力があり、名前を知られ、周囲からも一人のプロとして認められているように見えます。

しかし、由奈の笑顔は将棋を楽しんでいる感情だけで作られたものではありません。人気女流棋士として振る舞うことを求められ、勝負の厳しさとは別に、愛想や華やかさまで期待されてきた人物です。

由奈は周囲の求める役割を理解し、それを崩さないことで現在の位置を守っていました。表面上は成功者でも、その内側では、飛鳥がまだ知らない「女性として将棋界に立つこと」の苦しさを抱えています。

由奈と龍也の婚約、そして女流棋士引退の予定

飛鳥は、由奈が結城龍也と結婚し、そのタイミングで女流棋士を引退する予定だと知ります。龍也は彰一と香の息子であり、飛鳥にとっては異母弟です。

飛鳥は由奈ほど強い人物が、なぜ将棋をやめるのか理解できません。実力があり、人気もあり、将棋を続けるための場所をすでに持っているように見えるからです。

結婚と引退が同時に語られることで、由奈の選択は祝福される人生の転換に見えます。しかし、由奈が本当に自分の意思だけで将棋を辞めるのか、それとも結婚や結城家の事情を含め、続けない方へ押されているのかは見えません。

由奈は笑顔を崩さず、周囲も婚約と引退を自然な流れとして受け止めています。けれど、勝負の世界で結果を残してきた女性が、結婚と同時に盤を離れることを当然のように扱われている点に、第5話の不穏さが表れていました。

強い由奈が将棋を辞める理由を飛鳥は理解できない

大会の夜、飛鳥と由奈は報道陣や周囲の人間から離れた場所で顔を合わせます。由奈は飛鳥が自分に勝った後、何を目指すのかを問い、飛鳥もまた、由奈がなぜ将棋を辞めるのかを尋ねました。

二人きりになった飛鳥と由奈

大会会場では、由奈は人気女流棋士として多くの視線を集めています。しかし夜に飛鳥と向き合う場面では、カメラへ見せていた笑顔とは異なる、勝負師としての緊張と疲れが表れます。

由奈は飛鳥の将棋へ早くから関心を持っていました。第3話で飛鳥の対局を見たときから、経験の浅さと危うさの中に、自分にはない直感的な強さを感じ取っていたのでしょう。

飛鳥にとって由奈は、自分より先に将棋界で成功した女性です。一方の由奈にとって飛鳥は、年齢や過去の空白がありながら、棋士になると迷わず口にする存在でした。

同じ女性として将棋へ向き合っていても、二人が立っている位置は違います。飛鳥はまだ壁の高さを知らず、由奈は何度も壁へぶつかり、越えられないものとして受け入れようとしていました。

由奈は飛鳥に「勝った後」を問いかける

由奈は飛鳥に、自分へ勝った後、何をするつもりなのかを尋ねます。目の前の大会で優勝することだけが目的なのか、その先にどのような未来を見ているのかを確かめようとしました。

飛鳥は棋士になり、彰一を倒すという目的を隠しません。自分を捨て、母との人生を公の記録から消した父を、彰一が最も価値を置く将棋で否定するつもりです。

飛鳥の言葉には迷いがありません。棋士になれるかどうかを冷静に検討したうえで話しているのではなく、自分が進む道はそれしかないという強さで言い切ります。

由奈には、そのまっすぐさが眩しく見えた可能性があります。同時に、女性が棋士になることの困難を知らず、才能さえあれば進めると信じている飛鳥へ、苛立ちも感じたのでしょう。

飛鳥は由奈になぜ辞めるのかと尋ねる

飛鳥は由奈の質問に答えたうえで、今度は自分から、なぜ将棋を辞めるのかと尋ねます。由奈は強く、将棋界でも多くの人に認められているため、飛鳥には引退する理由が見つかりません。

飛鳥の疑問は純粋です。由奈の能力を高く評価しているからこそ、続ければよいのにと考えています。

しかし、由奈にとってその純粋さは残酷でした。由奈も将棋を続けたいと思わなかったわけではなく、強くなろうと努力しなかったわけでもありません。

続ければよいという言葉で乗り越えられない壁を、由奈は何度も見てきました。飛鳥の質問は、由奈が諦めるまでに積み重ねた時間を知らないからこそ、簡単に答えられるものではありません。

飛鳥の称賛が由奈の傷を刺激する

飛鳥は由奈を強い棋士として認めています。女流棋士という区分よりも、目の前の対局相手として由奈の実力を見ていました。

それは由奈が本来求めてきた評価に近いはずです。女性だから注目されるのではなく、将棋が強いから一人の対局者として認められることを望んできたと考えられます。

しかし、その評価を今になって飛鳥から向けられても、由奈が失ってきた時間は戻りません。もっと早く同じように見てもらえていたら、違う道があったのではないかという感情も生まれます。

飛鳥の言葉に悪意はありません。それでも、無邪気な称賛だからこそ、由奈が長く見ないようにしてきた未練と怒りを呼び起こしました。

飛鳥と由奈は勝ち進み、決勝で戦うことになる

宗桂杯新人リーグが進む中、飛鳥と由奈はそれぞれ勝利を重ねていきます。やがて二人は決勝へ進み、個人的な関心や会話を、盤上の勝負によって確かめることになります。

藤堂との修行を生かして連勝する飛鳥

飛鳥は、これまでの大会で得た経験を宗桂杯の対局へ持ち込みます。最初の大会では自分の指したい手ばかりを優先していましたが、今では相手の狙いを読み、自分の判断を修正できるようになっています。

藤堂に何度も求められた感想戦も、飛鳥の将棋を変えていました。負けた対局から目をそらさず、自分がどこで主導権を失ったかを確認してきたため、苦しい局面でも慌てずに次の手を考えられます。

さらに第4話で、将棋を楽しむことへの罪悪感を完全ではないながらも乗り越えました。復讐のためだけに盤へ座るのではなく、目の前の一局へ集中できる時間が増えています。

飛鳥は勝利を重ね、注目される存在になっていきます。彰一の娘だからではなく、自分の指し手によって周囲の視線を集め始めたことに、大きな変化がありました。

由奈も勝ち上がり、女流棋士としての実力を示す

由奈も大会を勝ち進みます。人気や華やかさだけで現在の地位を得たのではなく、厳しい勝負を積み重ねてきた実力者であることが、対局の結果によって示されました。

由奈は相手のミスを見逃さず、形勢を崩しにくい整った将棋を指します。勝負を荒らしすぎず、自分が不利になる危険を抑えながら、相手を少しずつ追い詰めていく棋風です。

その将棋には、女流棋士として長く結果を出すために身につけた安定感があります。大きな失敗をせず、周囲から求められる優等生としての振る舞いを、盤上でも続けてきたように見えます。

由奈が引退を決めているからといって、将棋への集中を失っているわけではありません。むしろ最後になるかもしれない大会だからこそ、飛鳥との対局へたどり着こうとする意志が強く表れていました。

飛鳥の棋士志望へ報道陣の注目が集まる

飛鳥が連勝すると、報道陣も彼女の存在へ注目し始めます。女性でありながら、女流棋士ではなく彰一と同じ「棋士」を目指すという点が、珍しい挑戦として取り上げられます。

飛鳥自身は、話題になるために棋士を目指しているわけではありません。しかし、史上初の存在へ挑戦する女性として名前が広がれば、本人の意思とは関係なく象徴的な役割を負わされます。

由奈は、その光景を複雑な思いで見つめます。自分も将棋の実力を高めようと努力してきたのに、飛鳥は登場したばかりで「女性初」の可能性として注目されているように見えるからです。

もちろん、飛鳥が簡単に現在の位置へ来たわけではありません。母を失い、生活の基盤を奪われ、将棋から23年間離れていました。

それでも由奈の側から見れば、自分が長年求めても得られなかった期待を、飛鳥が短期間で集めているように感じられます。

飛鳥と由奈の決勝が決まる

勝ち進んだ飛鳥と由奈は、宗桂杯の決勝で対局することになります。飛鳥にとって由奈は、棋士編入試験へ近づくために越えるべき強敵です。

一方、由奈にとって飛鳥は、単なる若い挑戦者ではありません。自分が諦めようとしている道を、何の迷いもなく進もうとする女性です。

二人の間には、個人的な憎しみはありません。しかし、飛鳥の存在そのものが、由奈が受け入れようとしてきた諦めを揺らします。

決勝は大会の優勝者を決めるだけでなく、同じ壁の前で異なる選択をした二人が、互いの将棋と生き方をぶつける一局になりました。

由奈が明かした女性には越えられない壁

決勝を前に、由奈は飛鳥へ自分が見てきた将棋界の現実を語ります。人気女流棋士として華やかに見える由奈も、女性であることによって役割を限定され、棋士の世界へ進めない挫折を抱えていました。

女流棋士として求められる笑顔と華やかさ

由奈は女流棋士として、勝負の結果だけでなく、報道陣や観客へ向けた振る舞いも求められてきました。厳しい対局に敗れても笑顔を見せ、華やかな存在として将棋界を盛り上げる役割を期待されます。

それは由奈の人気を作り、活動の場所を広げた要素でもあります。しかし、将棋の強さだけで評価されたい由奈にとって、女性らしい愛想や見せ方まで求められることは苦しさにもなっていました。

男性棋士が勝負師として不機嫌さや厳しさを見せても許される一方、女流棋士には親しみやすさが求められる。その違いは、由奈が盤上だけに集中することを難しくします。

由奈は期待される役割をこなしてきました。だからこそ成功した女性に見えますが、その成功は自分が本当に望んだ「棋士として認められること」と同じではありませんでした。

女流棋士としての成功と棋士になることの違い

飛鳥は、由奈が女流棋士として活躍しているため、すでに将棋界で夢をかなえた人物だと考えていました。しかし由奈が求めていたのは、女性だけの別の立場で評価されることではなく、性別によって区分されず、同じ棋士として勝負することだったと考えられます。

由奈は努力を重ねても、棋士を目指す道の前で壁に直面してきました。勝負の実力だけではなく、育成制度、年齢、周囲の期待などが重なり、挑戦し続けること自体が難しくなります。

女流棋士として成功しているのだから十分ではないかという見方は、由奈が本当に望んだものを無視します。与えられた場所で高く評価されても、入りたかった場所へは行けないという痛みが残るからです。

由奈の語る「超えられない壁」は、単に自分の棋力が足りなかったという話ではありません。女性を別の制度へ置き、同じ場所で競う入口を狭くしてきた構造の壁でした。

結婚は引退のきっかけでも、唯一の原因ではない

由奈は龍也との結婚を機に女流棋士を引退します。そのため、表面的には将棋より結婚生活を選んだように見えます。

しかし、由奈が将棋を辞める理由を結婚だけで説明することはできません。棋士を目指しても越えられない壁を見せられ続け、女流棋士としては笑顔や華やかさを求められ、自分の欲望を盤上へ出すことさえ抑えてきた時間があります。

結婚は、長い挫折の末に将棋から離れるための、社会的に理解されやすい理由になった可能性があります。自分は壁に負けたと語るより、結婚を機に引退すると発表する方が、周囲から祝福されるからです。

由奈が結婚を望んでいないと断定することはできません。ただし、結婚を選んだことと、将棋を自由に続けられなかったことは両立します。

由奈の引退は、幸福な選択か強制された諦めかという二択ではなく、複数の事情が重なった決断でした。

飛鳥への怒りに混ざる羨望と未練

由奈は飛鳥に対し、女性には簡単に越えられない壁があると突きつけます。棋士になると言い切る飛鳥の姿が、現実を知らない無謀さに見えたのでしょう。

同時に、その怒りの中には羨望も含まれているように見えます。飛鳥は自分がどれほど困難な道へ進もうとしているかを理解し切っていなくても、諦めるという選択肢を持っていません。

由奈もかつて、同じように壁を越えられると信じていた可能性があります。しかし、挑戦を続ける中で何度も押し戻され、現在では壁を越えられないものとして受け入れようとしています。

飛鳥を倒すことは、由奈にとって目の前の大会に勝つ以上の意味を持ちます。飛鳥の理想を盤上で止めることで、自分が諦めた判断は間違っていなかったと確かめようとしていました。

由奈は優等生の将棋を捨てて飛鳥へ挑む

宗桂杯新人リーグの決勝が始まります。由奈はこれまで見せてきた安定した棋風から離れ、飛鳥を倒すために激しい攻防を仕掛けました。

決勝序盤は由奈が経験と安定感を見せる

対局が始まると、由奈は豊富な実戦経験を生かし、落ち着いて盤面を整えます。飛鳥の直感的な攻めにすぐ反応するのではなく、相手が踏み込んできたときに反撃できる形を作っていきました。

飛鳥は藤堂との修行によって成長していますが、由奈には長い年月をかけて積み上げた読みと対局経験があります。飛鳥が勢いだけで崩せる相手ではありません。

序盤の由奈は、自分の弱点を作らず、飛鳥へ自由に攻めさせない将棋を選びます。それは由奈が女流棋士として結果を残してきた強さであり、周囲から期待される優等生的な棋風でもありました。

飛鳥も由奈の安定感に押されながら、簡単には攻め急ぎません。最初の大会での敗北を経験しているため、自分の直感だけを信じず、由奈が何を狙っているかを慎重に読みます。

由奈が整った棋風を崩し、激しい攻防へ踏み込む

対局が進むと、由奈はこれまでの安全な形から外れ、激しい攻めへ踏み込みます。形勢を崩さないことより、飛鳥へ自分のすべてをぶつけることを選びました。

由奈が捨てたのは、技術的な安定だけではありません。常に笑顔を見せ、失敗せず、周囲の期待へ応える「優等生」としての自分です。

引退を決めた由奈にとって、飛鳥との決勝は最後の大きな勝負になる可能性があります。だからこそ、評価やその後の立場を守るためではなく、自分が指したい将棋を指そうとしたのでしょう。

由奈は飛鳥を倒すために棋風を変えたのではなく、飛鳥との対局によって、長く抑えてきた自分の勝負欲を最後に解放したように見えます。

飛鳥も由奈の本気に応え、直感的な攻めを選ぶ

由奈が激しい攻防へ踏み込むと、飛鳥もその変化を受け止めます。安全に勝つことだけを考えるのではなく、由奈が差し出した本気へ、自分の本気を返そうとします。

飛鳥の強みは、盤面の変化を直感的につかみ、相手が予想しにくい方向へ踏み込めることです。しかし、以前はその直感を支える基礎がなく、一度崩れると立て直せませんでした。

現在の飛鳥には、藤堂との修行によって身につけた読みと、敗北から学ぶ力があります。直感と基礎が結びついたことで、由奈の激しい攻めにも対応できるようになっていました。

由奈が優等生の将棋を捨てたことで、飛鳥も復讐のための手堅い勝利ではなく、将棋そのものへ没頭していきます。二人は相手を押さえ込むのではなく、互いの強さを引き出しながら盤面を動かしました。

勝敗を越えて二人が自分のために将棋を指す

対局が激しくなるほど、飛鳥と由奈の間から、女性棋士という肩書や周囲の期待が薄れていきます。盤上に残るのは、目の前の相手に勝ちたいという純粋な欲望です。

飛鳥は彰一への復讐のために将棋へ戻りました。しかし由奈との対局中は、父を倒す未来より、目の前の一手をどう返すかに集中しています。

由奈も、引退を発表する人気女流棋士としてではなく、一人の勝負師として飛鳥へ向かいます。周囲の求める笑顔や安全な棋風から離れ、自分が本当に指したかった将棋を盤上へ出しました。

どちらが勝っても、女性を取り巻く制度がすぐ変わるわけではありません。それでも、この対局の時間だけは、二人が他人から与えられた役割ではなく、自分の欲望で将棋を指せる場所になっていました。

飛鳥が由奈に勝利し、彰一との距離を縮める

激しい攻防の末、飛鳥は由奈との接戦を制します。会場には彰一も姿を見せており、飛鳥の将棋を自ら見ることで、父娘の対局が現実のものへ近づいていきます。

接戦の終盤で飛鳥がわずかな勝機をつかむ

決勝終盤まで、飛鳥と由奈の勝負は簡単には決まりません。由奈は経験を生かして飛鳥の攻めを受け止め、飛鳥も一度の形勢変化で集中を切らさず、次の道を探します。

由奈が普段とは異なる激しい将棋を選んだため、飛鳥にとっても読み切ることは困難でした。由奈がどこまで踏み込むかを予想しにくく、わずかな判断の遅れが敗北につながります。

飛鳥は盤面全体を見直し、由奈の攻めの中に生まれたわずかな隙を見つけます。勢いだけで駒を進めるのではなく、藤堂との感想戦で身につけた修正力を使い、勝機へつなげました。

最後まで由奈は簡単に崩れません。飛鳥が勝利を得られたのは、由奈よりも夢が大きかったからではなく、この一局でわずかに相手を上回る判断ができたからです。

飛鳥が由奈に勝利する

激戦の末、飛鳥が由奈に勝利します。棋士編入試験へ進むための実績としても、大きな一勝となりました。

ただし、この勝利を由奈の努力不足や諦めの結果として読むことはできません。由奈は引退を控えながらも、自分の本気をすべて盤上へ出し、飛鳥を最後まで追い詰めています。

飛鳥が勝ったのは、由奈が弱かったからではありません。由奈ほどの相手と向き合ったことで、飛鳥自身もこれまで以上の将棋を引き出されました。

飛鳥の勝利は由奈を踏み台にした結果ではなく、由奈が本気で立ちはだかったからこそ得られた、互いへの尊敬を伴う勝利でした。

彰一が会場で飛鳥の対局を見届ける

決勝の会場には、彰一も姿を見せていました。第4話までの彰一は、飛鳥にとって遠くから追いかける存在でしたが、今回は飛鳥の対局を自ら見ています。

彰一がどの時点で飛鳥を娘として意識し、どのような感情で対局を見ていたのかは断定できません。しかし、飛鳥の棋譜や勝利が、無視できないものとして彰一のもとへ届いていることは分かります。

飛鳥は彰一の名前を利用して注目されたのではなく、自分の将棋によって父を会場へ引き寄せました。自伝から消され、結城家から存在を隠すよう求められた飛鳥が、盤上の結果によって自分の存在を示し始めています。

彰一が飛鳥を単なる有望な挑戦者として見ているのか、娘として見ることを恐れているのかは、まだ分かりません。ただ、父娘の距離は飛鳥が一方的に追う段階から変わり始めました。

藤堂と彰一が再び向き合う

決勝後、藤堂と彰一も顔を合わせます。藤堂にとって彰一は、父を亡くした直後の対局で自分を破り、その後の暴力によって将棋界を去るきっかけとなった相手です。

以前の藤堂は、感情を抑えられず彰一を殴りました。しかし今回は物理的な攻撃ではなく、飛鳥の将棋を通して彰一へ向き合います。

藤堂は、飛鳥がいずれ彰一を倒すという強い意志を示します。飛鳥を自分の復讐の駒として差し出すだけでなく、師匠として育ててきた棋士の可能性を彰一へ突きつけました。

藤堂が暴力ではなく盤上の勝負へ戻ったことは、第4話で父の遺骨を手放した変化ともつながっています。彰一への怒りは残っていても、自分の人生を再び暴力で終わらせるのではなく、飛鳥と共に将棋で決着をつけようとしていました。

由奈の引退と飛鳥への出場妨害

飛鳥と由奈が本気をぶつけ合った決勝の後、由奈は龍也との婚約と女流棋士引退を公表します。一方、勝利を重ねる飛鳥には複数の大会から出場を拒まれる事態が起きました。

由奈が龍也との婚約と引退を発表する

由奈は龍也と並び、婚約を発表する場に立ちます。同時に女流棋士を引退することも明かし、将棋の世界から離れる決断を公にしました。

周囲から見れば、人気女流棋士が結婚を機に新たな人生へ進む祝福すべき発表です。由奈も求められる笑顔を見せ、会見の場を乱しません。

しかし、飛鳥との決勝で優等生の将棋を捨て、自分のために戦った由奈の姿を見た後では、その笑顔を単純な幸福として受け取ることはできません。

由奈が結婚を選んだことと、将棋への未練が残っていることは矛盾しません。決勝で最後に自分の将棋を取り戻した直後だからこそ、引退会見で再び期待される役割へ戻った姿が苦しく映ります。

飛鳥は勝利を重ね、公式戦8連勝まで進む

由奈に勝利した飛鳥は、その後も結果を残し、公式戦で8連勝するところまで進みます。棋士編入試験へ近づくために必要な実績を、一局ずつ積み上げていきました。

飛鳥はもはや、彰一の娘という事実だけで注目される人物ではありません。対局の結果によって、実力のある挑戦者として名前を知られ始めています。

由奈との決勝で得たものも大きく、女性であっても強ければ道を開けると、飛鳥はさらに強く信じた可能性があります。由奈が見せた壁を理解し始めながらも、自分は勝ち続けることで越えようとします。

藤堂も、飛鳥が彰一との対局へ近づいている手応えを感じていました。ところが、盤上での成長とは別の場所から、飛鳥の道を止める動きが始まります。

複数の大会から飛鳥のエントリーが拒否される

藤堂が次の大会への出場を進めようとすると、飛鳥のエントリーが受け入れられない事態が続きます。一つの大会だけではなく、複数の大会で参加を拒まれ、飛鳥は勝負の場そのものへ入れなくなりました。

飛鳥は対局に負けたわけではありません。むしろ連勝し、棋士編入試験へ近づいている最中です。

それにもかかわらず、次の実績を作るための大会へ出られません。

参加拒否の具体的な主体や、誰がどのような働きかけをしたのかは、第5話の時点では確定できません。しかし、複数の大会で同じことが起きる以上、偶然の事務的な判断だけでは説明しにくい状況です。

藤堂は、飛鳥を将棋界から遠ざけようとする何らかの圧力を疑います。彰一へ近づく飛鳥を危険視する人物や、女性棋士誕生を望まない制度側の力が動いている可能性が浮かびました。

盤上で勝っても盤外から排除される飛鳥

由奈は飛鳥に、女性には超えられない壁があると語りました。飛鳥は由奈との対局に勝つことで、その壁も実力で越えられると証明したように見えます。

しかし第5話のラストで、壁は対局相手としてではなく、大会への入口を閉じる形で現れました。どれほど強くても、対局の機会そのものを与えられなければ、勝利を積み重ねることはできません。

由奈が見てきた壁は、女性の棋力が低いという単純な問題ではありませんでした。女性が同じ舞台へ進むことを、制度や周囲の判断によって止められる構造です。

第5話の結末は、飛鳥が由奈という強敵を越えた直後に、勝負すらさせない盤外の壁を突きつけることで、「強ければ認められる」という希望を正面から否定しました。

飛鳥は彰一との対局へ確実に近づいています。それだけに、誰が出場を妨げ、何を守ろうとしているのかという不安も強くなりました。

次回では、藤堂たちが盤外の圧力へどう立ち向かい、飛鳥が再び対局の場を得られるのかが焦点になります。

ドラマ「ミス・キング」第5話の伏線

ドラマ「ミス・キング」5話の伏線

第5話では、飛鳥と由奈の決勝によって女性棋士の壁が具体化し、彰一との対局も現実味を帯びました。しかし、勝利を重ねた飛鳥は大会への出場を拒まれ、盤上の強さだけでは進めない構造が表面化しています。

ここでは後続回の確定した展開を先取りせず、由奈の引退、彰一の来場、藤堂との再会、出場妨害など、第5話で残された伏線を整理します。

由奈が結婚を機に引退すること

由奈は龍也との婚約と同時に、女流棋士からの引退を発表します。結婚は本人の人生にとって大きな選択ですが、なぜ将棋を完全に辞めなければならないのかという疑問が残りました。

結婚と引退が当然の組み合わせとして扱われる違和感

由奈の婚約は祝福され、引退もその一部として自然に受け入れられています。しかし、龍也が結婚後も自分の仕事や立場を手放すことを求められている様子はありません。

結婚によって生活が変わるのは二人とも同じはずですが、将棋を辞める選択をするのは由奈です。ここには、結婚後の女性が家庭や相手の家へ合わせることを当然とする価値観が表れています。

由奈が自分で引退を決めたとしても、その決断が完全に自由な環境で行われたかは別の問題です。将棋を続けても棋士にはなれず、結婚すれば引退が歓迎される状況では、残された選択肢そのものが偏っています。

決勝で取り戻した勝負欲と引退会見の笑顔

由奈は飛鳥との決勝で、それまでの整った棋風を捨て、激しい攻防へ踏み込みました。将棋を続ける意味を失った人物ではなく、勝ちたいという強い欲望を現在も持っていることが分かります。

その直後、由奈は婚約会見で女流棋士引退を発表します。決勝で見せた本音と、会見で見せる笑顔の差が、由奈の未練を感じさせました。

引退後の由奈が何を選ぶのかは、この時点では分かりません。ただし、飛鳥との一局が由奈の中に残した感情は、簡単に消えるものではなさそうです。

由奈が語った「超えられない壁」

由奈は飛鳥に、女性が棋士を目指す道には超えられない壁があると語りました。第5話のラストで飛鳥の大会出場が拒まれたことにより、その言葉は個人的な諦めではなく、具体的な現実として現れます。

由奈が見てきた壁は棋力だけの問題ではない

飛鳥は由奈に勝利しました。しかし、その結果だけを見て、由奈が棋士になれなかったのは飛鳥より弱かったからだと考えることはできません。

棋士になるには、実力を示すための対局機会が必要です。大会への出場、指導環境、育成制度への入口など、盤へ座る前の条件がそろわなければ、どれほど強くても証明できません。

由奈はその構造の中で何度も壁へぶつかり、女流棋士として与えられた場所で結果を出してきました。壁を越えられなかった人物ではなく、壁の前で長く戦い続けた人物として見る必要があります。

飛鳥への出場拒否が由奈の言葉を証明する

飛鳥は由奈との決勝に勝ち、公式戦でも連勝を続けています。実力が足りないことを理由に排除するのが難しくなったところで、大会への入口そのものが閉ざされました。

これは、由奈が語った壁が「女性は男性より弱い」という単純な主張ではなかったことを示します。女性が勝ち上がりそうになったとき、盤外の判断によって挑戦を止められる可能性があるという壁です。

飛鳥がこの排除を受けて諦めるのか、由奈が受け入れざるを得なかった壁へ別の方法で挑むのかが、次回以降の重要な焦点になります。

由奈が優等生の将棋を捨てた意味

決勝の由奈は、普段の安定した棋風から離れ、激しい攻めを仕掛けました。それは勝つための戦術であると同時に、周囲の期待へ合わせてきた生き方から一時的に離れる行動でもあります。

整った棋風は由奈を守ってきた

由奈の優等生的な将棋は、消極的だったという意味ではありません。大きなミスを避け、安定して結果を出すために磨いてきた強さです。

女流棋士として注目される由奈には、敗北や失敗も女性全体の評価へ結びつけられかねない重圧があったと考えられます。その中で安全な形を作り、結果を残し続けることは、自分の立場を守る方法でもありました。

しかし、守ることを優先するほど、自分が本当に指したい将棋は抑え込まれます。飛鳥との決勝で棋風を変えたことは、由奈がその鎧を一度脱いだ瞬間でした。

飛鳥との対局が由奈の欲望を呼び戻した

飛鳥は周囲に合わせるより、自分が勝ちたい方向へ盤面を動かします。危うさはありますが、自分の欲望を隠さない将棋です。

由奈は飛鳥へ怒りを感じながらも、その姿に自分が失ってきたものを見たのでしょう。だからこそ、最後の対局では飛鳥を止めるだけでなく、自分も本気で勝ちたいと望みました。

由奈の引退が決まっているからこそ、この勝負欲が今後どのような意味を持つのかが気になります。飛鳥に負けたこと以上に、自分がまだ将棋を欲していると気づいたことが、由奈の中へ大きな揺れを残したはずです。

彰一が飛鳥の対局を見に来たこと

彰一は宗桂杯の会場へ足を運び、飛鳥と由奈の決勝を見ています。飛鳥を自伝から消し、接触を避けてきた人物が、将棋を通して娘へ近づき始めました。

彰一は飛鳥を娘として見たのか、棋士として見たのか

彰一が会場へ来た理由を、第5話の時点で一つに決めることはできません。飛鳥が自分の娘だと意識した可能性もあれば、興味深い棋譜を指す挑戦者として確認しに来た可能性もあります。

彰一にとって、家族と将棋は長く切り離されてきました。飛鳥を娘として認めることは避けても、強い将棋を指す人物としては無視できないのかもしれません。

飛鳥が父へ近づく方法として将棋を選んだことは、ここで初めて明確な効果を持ちます。彰一は家族としての接触を拒めても、棋士として飛鳥の強さへ関心を持てば、自ら同じ場所へ来ることになるからです。

藤堂との再会が彰一へ与えた影響

彰一は会場で藤堂とも向き合います。藤堂は過去に彰一を殴り、将棋界を去った人物ですが、現在は飛鳥の師匠として戻ってきました。

藤堂が飛鳥を育てている事実は、彰一にとって過去の因縁と現在の娘が結びついたことを意味します。飛鳥の挑戦を単なる新人の台頭として片づけることが難しくなります。

彰一が藤堂の意志や飛鳥の勝利をどう受け止めたかは、まだ表面化していません。ただ、父娘の対局へ向けて、彰一側にも意識の変化が始まった可能性があります。

飛鳥への大会出場拒否と盤外の圧力

公式戦で8連勝した飛鳥は、複数の大会からエントリーを拒否されます。誰が関わっているのかは確定していませんが、将棋界内部の影響力が使われている可能性が浮上しました。

単なる大会運営上の判断では説明しにくい

一つの大会で参加条件に合わず拒否されたのであれば、事務的な事情も考えられます。しかし、複数の大会で同様の拒否が続く状況は不自然です。

飛鳥は成績を落としているのではなく、連勝によって棋士編入試験へ近づいています。挑戦者としての価値が高まる時期に、対局機会だけが失われていきました。

藤堂が圧力を疑うのは、飛鳥の実力以外の理由で道が閉ざされているように見えるからです。結城家の名声を守ろうとする動きなのか、女性棋士の誕生を嫌う制度側の判断なのかは、この段階では分かりません。

結城家と将棋界の影響力がどこまで及ぶのか

彰一は将棋界の頂点に立つ人物であり、香や龍也もその周辺で強い立場を持っています。飛鳥は龍也から、彰一や家族へ近づかないこと、損害を与えないことを求められてきました。

飛鳥が勝ち続ければ、彰一の過去や血縁関係が注目される可能性があります。そのため、結城家を守りたい人物には、飛鳥の挑戦を止める動機が生まれます。

ただし、出場妨害の主体を第5話の段階で断定することはできません。重要なのは、飛鳥が強さを証明しても、権力を持つ側が対局機会を管理できる構造が見えたことです。

ドラマ「ミス・キング」第5話を見終わった後の感想&考察

MISS KING/ミス・キング5話の見終わった後の感想&考察

第5話を見終えて強く残るのは、飛鳥が由奈に勝った爽快感より、その直後に飛鳥の出場機会が奪われた苦しさです。由奈が語った壁を、飛鳥は盤上で越えたように見えましたが、壁の本体は対局相手ではなく、勝負の場を管理する制度と権力でした。

由奈は飛鳥の成長を示すために敗れるライバルではありません。飛鳥より先に同じ壁へぶつかり、努力だけでは越えられない現実を知った人物です。

その由奈と飛鳥が本気をぶつけたことで、第5話は個人の復讐劇から女性たちの失われた時間を描く物語へ広がりました。

由奈は飛鳥の敵ではなく、先に制度へ負けさせられた女性

由奈は飛鳥に厳しい言葉を向け、決勝では全力で倒そうとします。しかし、その態度を飛鳥への嫉妬だけで説明すると、由奈が背負ってきた挫折を見落とします。

由奈は努力しなかったから諦めたのではない

人気女流棋士として活動している事実だけでも、由奈が長い時間を将棋へ費やしてきたことが分かります。大会で勝利し、報道対応を行い、女流棋士として求められる役割にも応えてきました。

それでも、由奈が本当に望んだ棋士の世界へは進めません。実力を高める努力とは別に、制度上の入口や周囲の期待が、由奈の前に壁として立ち続けたからです。

由奈の引退を、最後まで努力しなかった人間の選択として読むことはできません。むしろ、努力を続けても壁が動かない現実を知り、自分を守るために諦める形を選ばざるを得なかった人物に見えます。

飛鳥の登場によって、由奈は自分が本当に限界まで戦ったのかという問いを再び突きつけられました。その痛みが、飛鳥への強い態度になって表れています。

飛鳥に勝つことで自分の諦めを正当化したかった

飛鳥が本当に棋士へ進めるなら、由奈が受け入れてきた「女性には越えられない」という結論が揺らぎます。自分にも別の選択があったのではないかという後悔が生まれるからです。

由奈が飛鳥を倒そうとしたのは、挑戦者を妨害したかったからだけではありません。飛鳥に勝ち、理想だけでは進めないと証明することで、自分が諦めたことは正しかったと確かめたかったのでしょう。

しかし盤上で本気を出すほど、由奈の将棋への未練も明らかになります。飛鳥を止めようとした対局が、逆に由奈自身の欲望を呼び戻しました。

由奈は飛鳥の敵ではなく、飛鳥がこれから向き合う壁を先に知る人物です。二人は勝者と敗者ではなく、同じ制度の異なる地点で傷ついた女性として描かれていました。

飛鳥の純粋な称賛が由奈には残酷に響いた

飛鳥は由奈を本気で強いと考え、なぜ辞めるのか理解できません。その言葉に悪意はありませんが、由奈が諦めるまでの過程を知らないため、結果的に深い傷へ触れてしまいます。

「強いなら続ければいい」が通用しない現実

飛鳥の考え方は単純です。由奈は強く、将棋を指せる場所もあるのだから、辞める必要はない。

飛鳥自身が将棋を続けるために多くを失ってきたからこそ、好きなものを自分から手放す由奈を理解できません。

しかし由奈にとって、強さは自由を保証しませんでした。女流棋士として勝っても棋士とは別の場所に置かれ、人気が出れば勝負以外の役割も増えます。

続ければよいという言葉は、続けるために由奈が払ってきた代償を見ない言葉にもなります。飛鳥の純粋さは希望である一方、壁の前で傷ついた人間へは無神経にも響くのです。

それでも飛鳥の評価は由奈が求めていたものだった

飛鳥は由奈を、華やかな女流棋士ではなく、強い対局相手として見ています。女性だから特別に評価するのではなく、自分が本気で勝ちたい相手として認めました。

それは由奈が長く求めていた視線だった可能性があります。笑顔や人気ではなく、将棋の強さだけで一人の棋士として見られることです。

だからこそ、飛鳥の言葉は由奈を傷つけながら、同時に眠らせていた勝負欲も呼び戻しました。自分を本気の相手として見る飛鳥には、優等生の将棋で応じることができなかったのでしょう。

飛鳥の未熟さは由奈を傷つけましたが、その未熟さが壁を当然のものとして受け入れない力にもなっています。現実を知らないから進める飛鳥と、現実を知ったから止まった由奈の対比が鮮明でした。

由奈が優等生の将棋を捨てたことは自分の欲望の回復

決勝で由奈が棋風を変えた場面は、第5話最大の見どころです。勝敗以上に、由奈が他人から求められた姿を離れ、自分のために将棋を指したことへ意味がありました。

優等生であることは由奈の弱さではない

由奈は長い間、安定した将棋を指し、報道陣には笑顔で対応してきました。それは自分の感情を持たないからではなく、女性が将棋界で生き残るために必要な振る舞いだったと考えられます。

失敗すれば女性だからと言われ、感情を出せば扱いにくい人物と見られる。そうした環境では、常に正しく振る舞うことが自分を守る手段になります。

由奈の優等生的な棋風も、長い年月の中で身につけた生存戦略です。それを飛鳥との決勝で捨てたことは、過去の自分を否定するのではなく、守る必要のない一局で本音を選んだ変化でした。

最後に一人の勝負師へ戻れた一局

由奈は引退後の評価や立場を守る必要がなくなったからこそ、危険を伴う攻めへ踏み込めた面もあります。しかし、そこに表れたのは投げやりな態度ではなく、どうしても飛鳥に勝ちたいという強い欲望です。

飛鳥もその本気に応え、二人の対局は激しい攻防になりました。由奈は人気女流棋士としてではなく、一人の勝負師として盤へ向かいます。

結果は飛鳥の勝利でしたが、由奈は敗北によって価値を失ったわけではありません。むしろ、最後に自分が本当に指したかった将棋を取り戻したことが、由奈の人物像を深くしています。

由奈にとって飛鳥との決勝は、将棋を辞める前の敗戦ではなく、自分がまだ将棋を愛していると認めざるを得ない一局でした。

飛鳥の勝利を由奈の努力不足として読んではいけない

飛鳥は由奈に勝利し、女性棋士への道を進みます。しかし、飛鳥が勝てたことと、由奈が越えられなかった壁は別の問題です。

一局の勝敗は制度の公平さを証明しない

飛鳥が由奈より強い一手を選び、決勝に勝ったことは事実です。しかし、その一局によって、女性にも平等な機会があると証明されたわけではありません。

むしろ直後に飛鳥の大会エントリーが拒否されたことで、実力を示しても挑戦機会を奪われる現実が明らかになります。

由奈が棋士になれなかったのは、努力や才能が不足していたからだと結論づければ、壁を作っている制度側の責任が見えなくなります。

飛鳥の才能と努力を評価することと、由奈が置かれてきた不公平を認めることは両立します。第5話は二人を比較して優劣を決めるのではなく、同じ制度が女性たちへ異なる諦めを強いてきたことを描いていました。

飛鳥、由奈、香は異なる場所で同じ壁に関わっている

第5話の時点で香の過去の全容は明かされていません。それでも、飛鳥、由奈、香という三人の女性が、彰一や龍也を中心とする将棋界と結城家の周辺で、それぞれ異なる選択を迫られていることは分かります。

飛鳥は壁の存在を知らないまま正面から越えようとし、由奈は長く壁へ挑んだ末に引退を選びます。香は結城家の内側に立ち、現在の秩序を守ろうとしています。

三人を勝った女性、負けた女性、邪魔をする女性と単純に分けることはできません。同じ男性中心の制度に傷つけられながら、生き残るために異なる位置を選んだ人物として見る必要があります。

飛鳥の挑戦が進むほど、由奈や香がこれまで受け入れてきたものも揺らぎます。個人の勝利が、ほかの女性たちの過去まで問い直す構造になっています。

盤外の出場妨害が単純な実力主義を否定した

飛鳥は由奈という強敵に勝ち、公式戦8連勝まで進みました。それでも、大会へ出られなければ彰一との公式対局へ近づくことはできません。

勝負の場を管理する側が最も強い

将棋では、盤上でよりよい手を選んだ者が勝ちます。しかし、その原則が成立するのは、二人が同じ盤の前へ座る機会を与えられた場合だけです。

飛鳥への出場拒否は、対局で倒せない相手を盤外へ追い出す行為に見えます。飛鳥がどれほど強くても、エントリーを受け付けなければ結果を残せません。

由奈の「超えられない壁」は、盤上にあるのではなく、誰を盤へ座らせるか決める側にあります。実力主義を掲げながら、実力を証明する機会を選別できる構造こそが問題です。

飛鳥の復讐は、彰一へ勝つことだけでは終わらなくなりました。彰一の前へ進むためには、将棋界の入口を管理する力とも戦わなければなりません。

個人の復讐が制度への挑戦へ変わった

第1話の飛鳥が望んでいたのは、母と自分を捨てた父を殺すことでした。藤堂と出会い、復讐の方法を将棋へ変えてからも、目的は彰一個人を倒すことです。

しかし第5話で、飛鳥が棋士になる道そのものが女性に閉ざされてきたと分かります。彰一へ届くための挑戦が、結果的に将棋界の前提を揺らすものになりました。

飛鳥は女性全体のために戦うと宣言したわけではありません。それでも、自分の人生を取り戻そうとすれば、同じ道を奪われてきた由奈たちの時間とつながります。

第5話は、飛鳥の復讐を父娘だけの物語から、女性が夢を持ち続ける権利を取り戻す物語へ広げた重要な転換回でした。

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