最終回で事件は決着した。
けれど、人の人生はそこで終わらない。
10.5話「良いこと悪いこと」は、犯人の正体や新たな謎を描く物語ではありません。描かれるのは、事件が終わった数日後、登場人物たちが“何事もなかったかのように続いていく日常”の中で、もう一度選択を迫られる姿です。
子どもの宿題、学校の空気、仕事の理由。
それらはどれも些細で、地味で、逃げようと思えば逃げられる問いばかり。でも、このドラマはそこから目を逸らさない。
ここから先は、10話までの内容と10.5話の結末を含むネタバレを交えながら、この後日談がなぜ必要だったのか、そして「良いこと悪いこと」というタイトルがどこに着地したのかを丁寧に整理していきます。
良いこと悪いこと10.5話のあらすじ&ネタバレ:Huluオリジナル

Huluオリジナルストーリー10.5話「良いこと悪いこと」は、本編最終回(10話)の“その後”を描くエピローグです。
すべての真相が明らかになって数日後。事件は終わったはずなのに、心だけが追いつかない人たちの日常が、静かに続いていきます。
ここから先は、10話まで+10.5話のネタバレを含みますので、未視聴の方はご注意ください。
「どの子」園子の原点は、いじめの前の日常だった
10.5話の入りは、園子がまだ“どの子”と呼ばれる前の記憶から始まります。
小学校6年生の頃、園子はニコと仲良く、プロフィール帳を書いたりして遊んでいた。ここがまず大事で、物語は「最初から地獄だった」ではなく、「普通に笑っていた時間が確かにあった」と提示してきます。
ただし、回想は甘いだけではありません。
園子が転校してきた瞬間、クラスの空気が“勝手に”選別を始める。誰かが明確に命令したわけでもないのに、距離が生まれ、線が引かれていく。
あの頃の大人たちが止められなかった小さな暴力が、22年後の連鎖につながったのだと、10.5話は冒頭から静かに釘を刺します。
事件後の現実|アポロ編集部に残った「空席」と、園子の再出発
回想から現在へ。園子が戻るのは、週刊アポロの編集部です。
そこにはもう東雲の席がなく、デスクは片付けられている。事件が終わっても、失ったものは戻らない。その事実を、この“空席”が無言で突きつけます。
編集部では同僚の松井が園子に「なぜ記者になったのか」を尋ね、園子は「東雲と同じ」と答えます。
短い言葉ですが、園子の中で東雲が“過去の人”ではなく、今も指針として生き続けていることがはっきり分かる場面です。
さらに園子は、「いじめを無くすまで」というテーマの記事、あるいは本を書こうとしていることが示されます。
10話までが「真相を暴く物語」だったとしたら、10.5話の園子は「言葉で未来を変える」側へ踏み出していく。その変化が、後日談の芯になっています。
学校パート前半|花音のいじめが発覚し、キングと加奈が「親」として試される
10.5話で最もしんどいのは、事件が終わっても“次の世代”で同じ構図が繰り返されていることです。
高木将(キング)と加奈は、娘・花音のことで学校に呼ばれ、担任の森先生と面談します。花音はいじめに遭っており、クラスには花音を避ける空気がある。
森先生は、「すべて解決します」とは言いません。
大人がずっと守れるわけではない、という現実を正直に語る。その誠実さが、かえって胸をえぐります。守りたい側にとって、「守れない可能性」を突きつけられるからです。
それでも、小さな光は置かれます。
クラスの中で、リョーマだけが花音を避けなかった。ただそれだけの描写が、この作品では“希望”として強く機能します。
学校パート後半|「避ける」という優しさのフリが、一番残酷に刺さる
花音へのいじめは、殴る蹴るといった露骨な暴力ではありません。
「関わらない」「距離を取る」という形で、静かににじみ出てくる。先生が介入しても、空気そのものは簡単に変わらない。
10.5話が突きつけるのは、いじめは悪意だけでなく“保身”によっても増殖する、という現実です。
だからこそ、リョーマの「避けない」という態度が際立つ。
同調しないだけで、世界の見え方が変わる。10話まで描いてきた“群れの暴力”を、子どもたちの場面で再提示してきます。
宿題『将来の夢』が再び“地雷”として戻ってくる
物語の中心に来るのが、花音の宿題『将来の夢』です。何を描けばいいのか分からず、花音は両親に問いかけます。
「ママはなんで看護師さんになったの?」
「パパはなんでペンキ屋さんになったの?」
加奈は、自分が注射が苦手だったからこそ、あえて看護師を選んだと話します。
弱さや苦手を仕事に変えた、その説明はきれいで誠実です。だからこそ、キングの番が重くなる。
キングは即答できません。
彼にとって「なぜペンキ屋になったか」は、夢や憧れではなく、贖罪と再生の入口だからです。花音の宿題は、親が避けてきた“説明できない過去”を、真正面から言語化させようとします。
トヨの「理由」が、答えのヒントになる
キングはトヨの店で髪を切りながら、トヨが美容師になった理由を聞きます。
トヨは、昔見たドラマに影響を受けたからだと笑う。
この会話は軽く見えて、実は大事です。立派な志が最初からある人ばかりじゃない。憧れ、影響、偶然。そこから積み重ねて、今がある。
キングが花音に語れない“本当の理由”があるとしても、「今の自分として何を選んでいるか」は語れる。その方向へ背中を押す場面に見えました。
「いじめを無くすまで」と、倉庫の白塗りが示す“その後”
終盤、園子は改めて「いじめを無くすまで」というテーマに向き合います。
事件の真相を暴くだけでは、次の被害者を止められない。園子の仕事は、過去の清算から未来の防止へと移っていきます。10.5話が必要だった理由が、ここで明確になります。
そしてキングは、小学校の校庭にある倉庫の塗装を塗り直します。
そこはかつて、園子を閉じ込めた場所。10話までのキングは、過去から逃げ続け、最後に向き合った人でした。10.5話のキングは、その向き合い方を変えます。
見なかったことにするのではなく、手を動かして塗り直す。しかも、涙を浮かべながら。
いじめの記憶は消えない。
倉庫を白くしたところで、園子が受けた痛みが帳消しになるわけでもない。それでもキングは、「自分がやった」という事実から逃げず、“今の自分”を選び直す。
エピローグとして、これ以上なく残酷で、これ以上なく誠実な締め方でした。
良いこと悪いこと10.5話の感想&考察:Huluオリジナル

10.5話は、事件の謎解きでも、犯人の追跡でもありません。
むしろ「事件が終わったあとに、人はどうやって生き直すのか」を、これ以上ないほど地味な素材で真正面から描いた回でした。
最終回で“終わったはず”の物語が、ここでようやく「日常に戻る」ところまで描かれます。
10.5話は「最終回の後日談」ではなく、“宿題”の回だった
象徴的なのは、やはり宿題『将来の夢』です。
本編では、夢の絵が復讐の装置として使われていました。10.5話では、それが子どもの宿題として家庭に戻ってくる。
ここが巧いのは、過去が「終わった出来事」ではなく、「今の生活の中で再び問い直されるもの」だと示している点です。
キングと園子は、10話までで過去の責任を突きつけられました。でも責任は、謝ったら終わりではない。
子どもが同じ問いを投げかけてきたときに、どう答え直せるのか。10.5話は、そこを静かに試す回でした。
園子が書こうとする「いじめを無くすまで」が、作品のテーマを直球で回収する
園子が「いじめを無くすまで」という記事(あるいは本)を書こうとしている描写は、単なる職業描写ではありません。これは園子の復讐ではなく、園子自身の再定義だと思います。
松井に「なぜ記者になったのか」と聞かれて「東雲と同じ」と答える場面も印象的でした。
東雲を“過去の犠牲者”として消費するのではなく、今も指針として引き受けて生きている。園子の中で東雲は、事件の被害者ではなく、今も隣で働いている同僚なんですよね。
花音のいじめ描写が突きつける「継承」と、「断ち切れる可能性」
花音がいじめに遭っている、という展開は正直かなりしんどいです。ただ、10.5話が優しいのは、そこで終わらせなかったことでした。
クラスの空気が花音を避ける中で、リョーマだけが避けなかった。
この一点が“希望”として描かれるのは、キングがかつてできなかった選択を、次の世代ができるかもしれない、という可能性が示されているからです。
いじめは継承されやすい。
空気に飲まれるのが一番楽だから。でも、継承を断つのもまた「空気に逆らう一人」から始まる。10.5話は、犯人探しのドラマではなく、ここを描くための物語だったんだと腑に落ちました。
キングの白塗りは「過去を消す」ではなく「塗り直して生きる」宣言
倉庫を白く塗り直す場面は、贖罪の儀式のようにも見えます。同時に、白く塗ることで過去が綺麗に見えてしまう危うさも感じました。
ただ、キングは泣いていました。
そこが決定的です。過去を消せると思っていたら、人は泣かない。
泣くのは、「消えない」と分かっている人間の反応です。
だからあの白塗りは、逃避ではなく、「消えないと分かったうえで、それでも塗り直して生きる」という矛盾した決意に見えました。
トヨの一言が示す「理由の作り方」…親は子に、完璧な答えを返せない
トヨが美容師になった理由が、昔見たドラマの影響だった、という話も地味に効いています。
親は子どもに「立派な理由」を示したくなる。でも実際の人生は、憧れや偶然から始まることのほうが多い。
キングが「なぜペンキ屋さんになったの?」という問いに正面から答えるのは簡単ではない。
それでもトヨの話があることで、「理由を説明する」より先に、「今どう生きているか」を見せればいい、という方向に救われているように感じました。
SNSでの受け止め方も二極化しそう…でも、僕はこの後日談が必要だったと思う
10.5話は派手ではありません。
だから「もっと事件の裏を知りたい」「もっと黒幕を掘ってほしい」という期待には応えないタイプです。
でも、事件後の心の処理をちゃんと描いたからこそ、最終回の消化不良が少しだけ整う。
特に、花音の宿題を通して「また同じことが起きるかもしれない恐怖」を見せつつ、リョーマという小さな光を置いた構成は、きれいごとではなく現実の延長としての希望でした。
最後に…10.5話の本当の主役は「答え」じゃなく「選び直し」だった
10.5話で示されたのは、事件の追加情報ではありません。
- 園子は、言葉で戦う道を選ぶ
- キングは、過去を抱えたまま手を動かす
- 花音は、悩みながらも夢を描こうとする
この三つが、最終回の“その後”として最も説得力のある答えでした。
「良いこと悪いこと」というタイトルは、良いことを選ぶのは簡単じゃない、でも選び直すことはできる、という意味だったのだと思います。
事件が終わっても人生は続く。
だからこそ、10.5話は蛇足ではなく、必要なエピローグでした。
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