フジテレビ火9ドラマ『新東京水上警察』は、日本の連ドラ史上初となる“水上警察”を舞台にした刑事ドラマ。
陸の捜査がカメラとテクノロジーで進化する一方、海と川は犯罪の抜け道として取り残されていた――。そんな“水上の空白地帯”を埋めるため、新設された東京水上警察署。
ベテラン刑事・碇拓真(佐藤隆太)と、本部から左遷されたエリート・日下部峻(加藤シゲアキ)、そして海のプロ・有馬礼子(山下美月)が、海上アクションとロジカルな捜査を武器に難事件へ挑む。
本記事では、第1話の「漂流箱事件」から、謎の連続殺人、湾岸署との因縁、そして最終回の結末まで――“海でしか描けない正義”の物語を全話まとめて詳しく解説します。
【全話ネタバレ】ドラマ「新東京水上警察」のあらすじ&ネタバレ

1話:漂う指と「次は」――海から始まる初動捜査はこうして動く
なぜ“今”、水上なのか――物語の出発点
ドラマ『新東京水上警察』の幕開けは、まず「なぜ“今”、水上なのか」という必然性を提示するところから始まる。東京オリンピックから4年、陸の治安は防犯カメラの普及で検挙率が上がる一方、“海と川”は犯罪の抜け道として取り残されていた。
警視庁はその空白を埋めるべく、湾岸部に『東京水上警察署』を新設。発足初日、経歴も性格も異なるが現場力を持つメンバーが集う。海上という“監視の効きにくい領域”を主戦場に据えることで、警察ドラマの地形が一変する。
チームの顔ぶれと“海の作法”
中心となるのは強行犯係の係長・碇拓真(佐藤隆太)。所轄で20年以上の経験を積んだ叩き上げの刑事で、事件のためなら危険も厭わない。一方、日下部峻(加藤シゲアキ)は本部捜査一課から望まぬ異動で水上署に来たキャリア組。
早く本部に戻りたいという功名心が彼の原動力だ。さらに、船舶免許を持つ海技職員・有馬礼子(山下美月)が加わり、“海の安全”という視点を現場に持ち込む。署を束ねるのは、元海技職員の異色署長・玉虫肇(椎名桔平)。
この異種混合の布陣によって、従来の“刑事と相棒”という二項対立では生まれなかったチームの力学が浮かび上がる。
「指」と「次は」――海が運ぶ不穏なメッセージ
やがて「海上に発泡スチロールの箱が漂っている」との通報が入り、警備艇「あかつき」で出動した碇たちは、箱の中から黒く変色した“人間の指らしきもの”を発見する。
そこには、溶けかけた文字で「次は」とだけ書かれたメモが。同時に物語は一気に“連続性”を帯び、犯人の犯行継続を示唆する。海上という匿名性がその予告をさらに不気味にし、水上署は捜査一課と合同で“陸と海”のすり合わせを開始。海では証拠が流れ、漂流物は移動する――つまり時間が情報を奪う。だからこそ初動の“速さ”が唯一の武器になる。
海が描く三段構成――設定・チーム・事件の連動
第1話の構成が見事なのは、設定提示→チーム紹介→事件発火点を“海”で一気に繋いでみせた点だ。
① 水上という監視の薄いフィールドの提示。
② 陸と海のハイブリッドな編成(刑事+海技職員+元海上署長)。
③ 漂流箱の異物感で観客の感覚を“海側”に引き込む仕掛け。
海という環境特性(視界・証拠・移動の速さ)と、人物の初期値(碇=現場勘/日下部=結果主義/有馬=操船と安全)が噛み合い、“水上でしか起こり得ない捜査ドラマ”の輪郭が明確になる。
“正しさが二つある”――人物間の衝突と統合
人物同士の火花も初回から鮮明だ。碇の現場主義は、日下部のキャリア志向としばしば衝突する。
しかし、有馬という“海の作法”の体現者が介在することで、単なる主導権争いではなく“生き延びるための合理性”が成立する。海で生きる正しさと、犯人を挙げるための正しさ。
二つの“正しさ”が同じ艇上でぶつかり、やがて融合していく。この対立と統合の構図こそ、シリーズの駆動力となる。初回の「指」と「次は」は、その統合を強制するタイムリミットとして機能している。
総括――海がルールを変える
総じて第1話は、「海という環境がルールを書き換える」ことを徹底して描き、次回以降への連続性(“次は”の宣告)を見事にセットした。
現場勘で動く碇、結果主義の日下部、操船と安全を担う有馬、そして海を知り尽くした玉虫署長。――この布陣だからこそ、“海の匿名性”と“犯人の予告”に立ち向かえる。捜査はもはや岸では完結しない。次の“箱”が浮かぶ前に、彼らが掴むべきものは何か。その問いを、波の速度で投げかける初回だった。
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2話:第六台場の白骨遺体と“観閲式”の影――海と陸をつなぐ捜査線
第六台場で発見された遺体――海と介護施設が交錯する序章
2025年10月14日放送。東京湾唯一の人工無人島・第六台場で、銃殺され半ば白骨化した遺体が発見される。
身元は介護施設「キズナオーシャン豊洲」に入居していた資産家・服部義光。水上署の碇拓真(佐藤隆太)と日下部峻(加藤シゲアキ)は、施設の元職員・三上慎吾(松本怜生)を容疑者として追跡。
小型船で逃走を図る三上を追い詰めた瞬間、同乗していた田淵響(山崎裕太)が発砲し、三上は海へ転落する。命は取り留めたものの、事件は再び“水上の現場”に引き戻される。
「湾岸ウォリアーズ」――陸の暴力が海へ転生する構図
田淵は薬物密輸船を狙った強盗グループの主犯格で、かつて台場周辺を荒らした暴走族「湾岸ウォリアーズ」の元メンバー。
総長・黒木謙一(柿澤勇人)を今も崇拝し、陸から海へと活動の場を移している。
陸の暴力が海へ転生し、水上犯罪の生態系が拡張される――本作の世界観を体現する重要な一幕だ。
水上署と湾岸署の主導権争い――「観閲式」の謎が浮上
救命後、三上は沈黙を貫くが、日下部が粘り強く寄り添うことでようやく口を開く。
「服部は自殺だ」と明かし、さらに田淵の行方を問われた際、「観閲式の日……」と言いかけたところで、湾岸署の和田毅(谷田歩)らが病室に押し入り、身柄の引き渡しを強行。
日下部は排除され、水上署と湾岸署の主導権争いが表面化する。
シリーズ設定で明かされていた両署のライバル関係を実地で示し、事件が“捜査の政治”を帯び始める瞬間。
ここで語られた「観閲式」という公的イベントの日時が、攻撃の座標として不穏な意味を帯びてくる。
“水曜の毒殺”――海と陸、二つの現場をつなぐ二重螺旋
捜査の照準は、施設内で毎週水曜に発生する入居者の連続死へと移る。
海(銃撃・転落・救助)と陸(介護施設での毒殺疑惑)という二つの線が二重螺旋を描くように絡み合う。
服部の“銃死”と施設の“毒死”が同一線上にあるのか、それとも別系統なのか。
死の意味の切り分けが、次回への宿題として残される。
シリーズイントロが掲げる「水上の穴場で増える犯罪を、船で追う」というテーマが、海と陸を往還する捜査線として具現化された。
碇の“水恐怖症”――手順で恐怖を制する主人公像
碇は“水恐怖症”という致命的なトラウマを抱えながらも、水上署に所属する刑事。
そのため第2話の緊張は、派手に海へ飛び込むヒーロー譚ではなく、救助を“手順”で成立させる知的サスペンスとして描かれる。
誰がどの順で何を行い、どう人員を動かすか――碇は判断と段取りで現場を制す。
海上アクションの迫力ではなく、“作業の緊張”で物語を支える手法が、水上警察というテーマのリアリティを裏打ちしている。
総括――海と陸、現場と行政をつなぐ“交差点”の回
第六台場の白骨遺体を起点に、田淵=湾岸ウォリアーズの残響、観閲式という“日時”の仕掛け、施設の“水曜”というパターンが一列に並べられた。
海と陸、現場と行政の交差点で物語を加速させ、「まだ終わっていない」という気配を残して幕を閉じる。
観閲式の日に何が起きるのか、服部の死は本当に“自殺”なのか――。
“海で起きたことを陸の制度と言葉で解く”という、このドラマの勝ち筋が鮮明になった回だった。
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3話:観閲式突入を阻止せよ――『あかつき』強奪事件の全貌
暴走する『あかつき』――“儀礼の海”が一瞬で“実戦の海”に
放送は2025年10月21日。日下部の報告を受けた碇は、『キズナオーシャン豊洲』職員・三上が田淵に撃たれた一件から、田淵が警備艇を奪い観閲式会場へ突っ込む計画を掴む。
田淵が暴発した背景には、薬物密輸船を狙った強盗を水上署に封じられ、稼業が立ち行かなくなった焦りがあったと示唆される。
同時に海技職員・有馬礼子が人質となり、艇『あかつき』が強奪される。舞台は一気に“儀礼の海”から“実戦の海”へと転じる。
群衆の恐怖を封じた“正当な嘘”
観閲式会場には来賓・報道・市民が密集。
その緊迫の中、細野由起子が「これは展示訓練です」と即興アナウンスを放つ。意図は明快で、群衆心理の暴走(パニック)を抑止するための“正当な嘘”だった。
視線とフラッシュが走る中、別艇で追尾する碇と日下部は『あかつき』の針路に並走。二隻が至近距離に寄った刹那、碇は舷側から“飛び”、強行ボーディングに成功する。
“秒で判断・秒で動く”という水上署の職能が、ここで最も鮮明に描かれる。
黒木の存在――“見せ場”と“見せしめ”の交錯
来賓席には暴走族「湾岸ウォリアーズ」総長・黒木謙一の姿。
実行犯・田淵の元所属組織の頂点が、公の式典に座すという皮肉な構図が、事件の“見せしめ性”を際立たせる。
裏社会の力学が表舞台に出現し、「見せ場」と「見せしめ」が同じ舞台で共存する」という強烈な構図が完成した瞬間だ。黒木の出席は、暴力の政治性を象徴し、事件を単なる突発的犯罪ではなく“メッセージ”として印象づける。
ボーディングから制圧まで――“秒”で止める職能のロジック
艇内では碇が襲いかかる田淵を制圧し、操舵室へ急行。
礼子の安全を確認しながら、観閲式会場へ向かう暴走針路をギリギリで逸らす。事件は暴走船の衝突回避と田淵の確保によって収束した。
派手な爆発や演出に頼らず、“やるべきことをやる”現場のロジックで見せ切る構成が秀逸だった。映像的にも、冷静なカット割りと音の抑制が“実働の静けさ”を引き立てている。
碇が“なぜ海にいるのか”命を投げ出す覚悟の真相とは
クライマックスの後には、碇の内面を掘り下げる余韻が残される。
彼の過去(38年前の飛行機事故)にまつわる心の傷が、「なぜ海に居続けるのか」という問いと共にほのめかされ、
次話以降の人物ドラマへと滑らかに橋を架ける。
水を恐れる理由は明かされなかったが、38年前の飛行機事故で“代わりに死んだ子”への罪責感を抱えていると判明。彼の無茶な行動は、その罪と生存への葛藤から来ていた。
結論
第3話は、公共空間の危機管理・現場の判断力・権力の見せ方が同時進行する濃密な一編だった。条件が揃えば惨事は起きる。
だからこそ条件を分解し、現場で潰す――。このドラマが一貫して見せてきた“論理のうねり”が、最も鮮やかに立ち上がった回である。
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4話:潮風臨海公園の爆発と“あかつき”シージャック――無線がつなぐ父の声
第4話は、二重構造の危機が並走する。
ひとつは潮風臨海公園沖で起きたドローン爆発事件。碇(佐藤隆太)たち水上署が現場へ急行するが、先着の湾岸署に「ここはウチの案件」と押し返される。
それでも碇は引き下がらず、現場近くで“釣り禁止”を訴えていた環境団体「ヴァードアース」に照準を当てる。「まだ湾岸署の事件と確定したわけじゃない」と動きを止めない姿勢が、後半の説得劇で“材料”として効いてくる。
彼の信念は、“組織の境界線”よりも“海で起きた事実”を優先することにある。
職場見学から一転――警備艇「あかつき」シージャック発生
同じ頃、水上署では藤沢(中尾明慶)が妻・麻美(清水葉月)と息子・陸(加藤叶和)を職場見学に招いていた。
警備艇「あかつき」での穏やかなひと時が、突如惨事に転じる。
凶器を手にした上原修也(小須田康人)が現れ、藤沢を刺傷し、妻子を含む隊員を人質に船を占拠。
「早く出航しろ」と脅され、米田航基(宮津侑生)は操舵を強要される。湾岸署との縄張り争いが続く中、水上署は主導権を奪われたまま、艇が沖へ出ていく——最悪の展開が静かに始まった。
礼子の直感――モールスが灯す“声なき通信”
管制室では、有馬礼子(山下美月)が艇内の監視カメラ映像から状況を分析。
カメラの通電ランプに目を止め、点滅をモールス信号代わりにするという奇策を思いつく。
礼子の点滅信号に気づいた藤沢は、命懸けで応答。上原が起爆装置らしきものを持っていることを外へ伝えることに成功する。
だが、異変に気づいた上原がカメラを破壊し、視覚情報は遮断。以降、現場は“言葉だけが頼り”の交渉戦へと切り替わる。
上原の動機――誤解と悔恨の暴走
捜査線上に浮かび上がったのは、上原の息子の死。
彼はSNS炎上を苦に息子が自殺したと信じ込み、警察への不信と怒りを膨らませていた。
しかし、碇と日下部(加藤シゲアキ)の調べで、真相は違うことがわかる。息子は、釣り針にかかった鳥を助けようとして海に落ちた――“誰かのため”の行動だったのだ。
怒りは外側に向いていたが、根底には“息子を理解できなかった父”としての悔恨が渦巻いていた。
クライマックス――海が語る父への赦し
碇は無線を手に、海と風景、潮流、父子の記憶を紡ぐように言葉を選ぶ。
「息子さんは、鳥を助けようとして落ちた。あなたが教えた“優しさ”が、彼の中に生きていたんです」。
その声に、上原の手が震える。
自分を“加害の父”と決めつけていた彼は、初めて赦しの光を見る。
海は命を奪った場所ではなく、優しさを証明する場所だった——その言葉が、彼の暴走を止めた。上原は武器を下ろし、無事確保。藤沢の命もつながる。
この解決は、戦術でも武力でもなく、“人の声”が人を救った瞬間だった。
エピローグ――「海は死ぬ場所じゃない」
事件後、OBの大沢俊夫(小林隆)が署を訪れ、署長・玉虫(椎名桔平)と碇に語る。
「海は死ぬ場所じゃない。生かす場所だ」。
この一言が、シリーズの核となる哲学を再び呼び覚ます。
碇が抱える38年前の飛行機事故の記憶、上原の喪失、藤沢の家族愛――それらすべてが“海”という場所で交わり、
“死を語る海”から“生を語る海”へと物語の重心が移動する。
総括――海と声で人を救う警察ドラマ
第4話は、爆発・シージャック・家族の絆という複合事件を、無線=声の力で解決に導いた回。
水上署と湾岸署の軋轢を超えて、現場の知恵と感情で突破する姿勢が際立つ。
科学でも拳でもなく、“言葉”と“海の記憶”で真実に到達する——それこそが『東京水上警察』の真髄だ。
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5話:前言撤回します。私に捜査の指示をください
第5話では、水上警察チームが女性アイドルグループ「Re Rise」を巡る事件に挑む。
刑事・細野由起子(山口紗弥加)は、かつて湾岸署勤務時代に不良少女だった北原萌歌(山本奈津美)を補導し、更生を見守ってきた過去を持つ。
そんな矢先、東京湾でブルーシートに包まれ、重りを付けて沈められた女性の水死体が発見される。それは他ならぬ萌歌の遺体だった。
検視の結果、死因は溺死――生きたまま海に沈められた可能性が高い。
由起子は深い衝撃を受け、碇拓真(佐藤隆太)とともに捜査を開始する。現場の重りから倉庫街が特定され、防犯カメラの映像から萌歌が事件当夜、深夜にその倉庫を訪れていたことが判明する。
同時に、日下部峻(加藤シゲアキ)の聞き込みによって、萌歌がかつて最終オーディションで落選した坂上優愛(糸瀬七葉)に逆恨みされていた事実も浮かび上がる。
さらに、萌歌と実業家との不倫疑惑を報じるスキャンダル記事が出回り、SNSでは「権力者による殺人隠蔽」といった陰謀論が過熱。
由起子は「萌歌の死には何か裏がある」と心を乱されていく。
一方、碇は記事掲載のタイミングの不自然さに気づき、「情報を意図的に流した人物がいる」と疑念を抱く。
出版社を訪ねた碇と由起子は、記者・久米島を直撃。だが直後、ヘルメットをかぶった人物に久米島が刺される。咄嗟に由起子が犯人を取り押さえると、正体は記事で“犯人扱い”された実業家・牧原の妻だった。
彼女は「夫が中傷で壊れていくのを見ていられなかった」と供述。夫の名誉を守ろうとした行動が、新たな罪を生んでしまった。
この刺傷事件をきっかけに、萌歌の死の真実が明らかになっていく。
礼子(山下美月)の潮流計算をもとに捜索を行った碇たちは、河川敷で牧原のバッグを発見。中には萌歌に関する手帳が残されていた。そこに記された内容から、碇は事件の全貌を読み解く。
真実――「殺人」ではなく「隠蔽」だった
『Re Rise』のメンバーを集めた碇が告げたのは、驚愕の一言だった。
「萌歌の死は事故死だ。そして、それを隠したのは君たち自身だ」
デビュー前夜、5人のメンバーは誰にも告げず倉庫街に集まり、花火と飲酒を楽しんでいた。
未成年のメンバーがいたため、真面目な萌歌は「未成年に飲ませるわけにいかない」と代わりに酒を飲み干す。結果、泥酔した萌歌は足を滑らせて川に転落。仲間が助ける間もなく溺死してしまう。
恐怖とパニックに陥った少女たちは「未成年飲酒の発覚でデビューが終わる」と怯え、萌歌の死を他殺に偽装するという最悪の選択をした。
遺体をブルーシートで包み、倉庫の重りを括り付けて海に沈め、さらには週刊誌記者に「不倫スキャンダル」を匿名でリーク。世間の注目を実業家に向け、事件を“権力の闇”にすり替える計画だった。
すべては、夢を守るための嘘。だが、その代償はあまりにも大きかった。
碇の論理的な追及により全てが露見し、メンバーたちは泣き崩れる。由起子は静かに、しかし厳しく語りかけた。
「あなたたちは取り返しのつかないことをした。でも、生きていればやり直せる。命がある限り、罪と向き合いなさい。」
その言葉を聞いた少女の一人が泣きながら叫ぶ。
「全部、私のせいです。未成年なのに私が飲まなきゃいけないお酒を、萌歌ちゃんが代わりに飲んでくれたんです!」
萌歌が最後まで仲間思いで、正義感の強い少女だったことが明らかになる。
真相が明らかになった今、由起子は萌歌の魂に報いるように静かに祈りを捧げる。彼女の目に浮かんだ涙は、悔しさと優しさが入り混じるものだった。
ラスト――“更生”を拒む闇の再来
事件の後、日下部(加藤シゲアキ)が更生支援を続けてきた元暴走族・三上慎吾(松本怜生)が出所する。
「もう悪い奴らと関わるなよ」と声をかける日下部に、三上は笑顔でうなずいた。
だが、帰宅した彼を待ち構えていたのは――黒木謙一(柿澤勇人)。
黒木は三上に向かって冷たく笑い、グラスにワインを注ぐ。
「警察にチクったのはお前だな。海の底で詫びるか、俺の下で一生償うか、選べ」
かつての悪の象徴が、更生を目指す若者を再び闇に引きずり込もうとする。
更生を信じた由起子の物語と、再び過去に縛られる三上の現実――二つの“やり直し”の物語が対照的に描かれ、第5話は重い余韻を残して幕を閉じた。
余韻――夢と罪のはざまで
事故死を隠した少女たち、罪を背負いながらも前を向こうとする刑事たち。
「海は人が死ぬ場所じゃない」という信念のもと、碇たちは真実を掘り起こし続ける。
若者の夢と罪が交錯する痛ましい事件を通して、第5話は“更生の難しさ”を二重の形で描いた。由起子が語った「生きていればやり直せる」という言葉は、水上警察というドラマ全体の信念そのものでもあった。
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6話:半月(ハーフムーン)が照らす水面の殺意——篠宮班合流、そして“消えるアプリ”が導く真相の輪郭(あらすじ&ネタバレ)
湾岸に浮かぶ“半月殺人”──検視報告と篠宮班の合流
深夜、東京水上警察署・刑事防犯課に検視報告が届く。
海から上がった若い男性の身元は大学生・増田健二。死亡推定は先週月曜の深夜1時ごろ。頭部が“半月”の弧を描くように損壊した猟奇的殺人で、先月の工務店勤務・佐藤守の事件と手口が一致していた。
いずれも発生日が半月。世間では〈ハーフムーン殺人事件〉の通称で騒がれ、同一犯の可能性が濃厚となる。碇拓真(佐藤隆太)は湾岸地図を広げ、被害者の“水の道”をたどる決意を固める。
事件の連続性を受け、警視庁捜査一課が応援に入る。
派遣されたのは、殺人犯捜査第10係=篠宮班の警部・篠宮多江(野波麻帆)。彼女は碇の警察学校時代の同期で、かつて交際していた過去を持つ。
初動会議では、①遺体がどこから流れ着いたかの特定、②被害者同士の共通項の洗い出しを同時進行で指示。
“現場の勘”で動く碇と、“数字で詰める”篠宮の視点が衝突し、緊張感が一気に高まっていく。
その頃、若手刑事・日下部峻(加藤シゲアキ)は、母・涼子の入院を知らされ動揺。
医師から「詳しい結果は明日」とだけ告げられ、焦りが判断を鈍らせる。この“私事の火種”が、後の行動に影を落とす布石となる。
“消えるアプリ”Fog talk──通信の霧が暴く二重鍵
翌日、鑑識班から増田のスマホ復元の報告が入る。
そこに見つかったのは「Fog talk」というメッセージアプリ。
匿名で通信でき、履歴が自動消去される仕組み——犯罪組織“トクリュウ”が常用する“消えるアプリ”だった。
さらに、先の被害者・佐藤のタブレットにも同アプリの痕跡が発見される。物理的な足跡は消えても、通信の癖は消えない。事件は“半月”という時間条件と、“Fog talk”という通信条件の二重鍵で結ばれ始める。
捜査線上には新たな人物が浮上。
不動産会社「ゼネラルハウジング」の社員・泉圭吾(内博貴)。
湾岸の土地勘に明るく、人目の薄い倉庫や空き地に通じる職種であることから、関心の中心に置かれる。母の病を知った日下部は焦る気持ちのまま、泉を任意同行に。
取調室で対峙する二人の間には、「急ぎたい捜査」と「身に覚えのない男」の温度差が生まれる。彼は黒か、グレーか、それとも別の伝声管か——答えはまだ出ない。
海が語る“流れ”──半月の潮と犯人の設計図
水上署と一課の綱引きは続く。
篠宮は“流入点の特定”を重視し、碇は海で拾える微細な手掛かりを積み上げる。半月の夜は潮の動きが読みやすい。犯人は“流れを読む者”なのか、それとも“半月”そのものを儀式として崇拝する者なのか。
トクリュウを媒介にした“設計者”の存在は、依然として霧の中。
だが、被害者二人の行動圏と通信履歴に共通する“時間帯の癖”が見つかり、チームの視線は少しずつ同じ方向を向き始める。
クライマックスでは、事件の全貌はまだ掴めないまま、篠宮班と水上署の“正義”の形だけが鮮明になる。
合理を求める篠宮、現場を信じる碇、焦る日下部——三人の異なる“正しさ”がぶつかり合い、それぞれの覚悟が試される。
第6話は、ハーフムーンの連続性とFog talkの媒介性を際立たせ、“水上の連続殺人”の設計者が確実に存在することを視聴者に確信させる“助走の回”だった。夜の海面に浮かぶ半月が、真相の輪郭を静かに照らし出す。
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7話の予想:『半月×Fog talk×蘇我事件の“外側”』――設計者はどこにいるのか
確定情報からの整理──半月の夜に浮かぶ「設計者」の影
水上署と捜査一課・篠宮班は、〈ハーフムーン殺人事件〉の犯人を追っている。
第6話では、泉圭吾(内博貴)の任意同行をめぐる日下部(加藤シゲアキ)の強引な取り調べが問題化し、彼は謹慎処分に。現場の戦力が減ったまま、第7話に突入する。
篠宮(野波麻帆)は、5か月前に佐藤・増田と弁護士・蘇我誠の自宅に押し入った瓜谷雄志をハーフムーン容疑で逮捕。ただし、瓜谷にはアリバイがあり、偽装の可能性もある。
碇(佐藤隆太)は「口封じにしては頭部損傷が激しすぎる」と違和感を覚え、瓜谷は「侵入時、蘇我はすでに死亡していた」と供述する。
蘇我はヤメ検で、闇金や暴力団と関係を持ち、千堂太一という組員を囲っていた——ここまでが第7話の確定情報だ。
ここから導かれる焦点はただ一つ。
“半月連続殺人の設計者は誰か”。
第7話は、〈半月〉〈Fog talk〉〈蘇我事件〉の三つの線が、ひとりの“設計者”へと収束する回になると考えられる。
三つの論点──潮と通信と過剰損傷がつなぐ設計図
① 半月は“潮を読む者”のタイムコードか、儀式か。
半月期に発生する事件の連続性は、海上で証拠を“設計的に移動させる者”の存在を示唆する。
半月は潮の振れ幅が安定し、漂着の逆算が容易になる。
犯人は“流れを読める”者、つまり湾岸倉庫や船舶、不動産動線に精通する人物である可能性が高い。
第6話で浮上した泉圭吾は、空き地・倉庫・桟橋といった“死角の動線”にアクセスできる職種であり、
現場の伝声管=指示役として合理的だが、彼は“前座”の可能性が濃い。
第7話で焦点化されるのは、**海と地下経済の双方を往復できる“本当の設計者”**である。
② Fog talkは犯人ではなく“装置”。
第6話で明らかになった“消えるメッセージアプリ”〈Fog talk〉は、犯罪組織「トクリュウ」が常用する匿名通信ツール。
増田と佐藤の端末に共通して存在していたことから、同一ネットワーク経由で動いた線が確実視されている。
ただし重要なのは、Fog talkそのものが“犯人”ではなく、匿名性による“犯人隠しの仕組み”である点。
誰が送信し、誰が削除権限を持っていたのかを突き詰めることで、通信の上位設計者が見えてくる。
篠宮がアリバイの偽装を疑っているのは、
水上という物理証拠の薄い現場において、「時間認証」こそが最強の武器だからだ。
第7話は、時刻証明と通信ログの復元によって“Fog talkの向こう側”へ踏み込む展開になるだろう。
③ 過剰損傷は口封じに不釣り合い——見せるための暴力。
碇が抱いた違和感、「損傷の激しさ」は儀式性かメッセージ性を示す。
口封じなら静かに殺すはずが、半月形を強調した異様な打撃。
それは“見せたい誰か”へのサインであり、その“誰か”は蘇我事件の利害関係者の可能性が高い。
蘇我は闇金や暴力団の仲介を担っており、その“外周”こそが設計者のいる領域。
第7話で登場する千堂太一は、その外周と内側を結ぶ“接続線”。
千堂の証言と足取りが、蘇我殺害と半月連続殺人をつなぐ最初の橋になるだろう。
仮説と展望──設計者Xの輪郭と“海が喋る”瞬間
仮説①:瓜谷は“現場の一枚”であって司令塔ではない。
篠宮がアリバイ偽装を視野に置きながらも断定しないのは、
背後に“上位設計”の影を感じ取っているからだ。
瓜谷は蘇我邸侵入の実行犯だが、蘇我死亡の先行性(供述)と過剰損傷(碇の指摘)がズレを生む。
設計者Xは、自首を考えた佐藤・増田を“半月フォーマット”で処理し、
連続殺人に擬態させて黙らせた可能性が高い。
仮説②:Fog talkはXの指示網。泉は“地取りの鍵”だが上位ではない。
泉は倉庫・廃ビル・桟橋など“目の死角”を提供できる。
だが送信権限の上位、つまり通信を設計できる人物は別にいる。
その上位は、蘇我の顧客筋か、法と裏社会を横断する金融・不動産のハブに位置する人物。
篠宮と碇がこの“通信×金の交点”を掘り当てた瞬間、物語は一気に核心へと進む。
仮説③:第7話の着地点=千堂ラインで“蘇我殺害→半月連続”が一本化。
千堂は蘇我の“身内に近い外部”。
この線がつながったとき、動機の核(金の流れ・債権回収・口封じの理由)が露わになる。
半月は潮読みの利便と儀式の象徴という二重の意味を持ち、
それが解かれたとき、設計者X=“海と地下経済を両睨みで操る者”の姿が確定するはずだ。
人物観点の更新。
篠宮多江は「アリバイの構造」から詰める正攻法で挑み、
第7話では偽装アリバイの仕掛け(第三者立証・タイムスタンプ改竄など)を解体し、“時間”の支配権を奪い返す。
碇拓真は“過剰な損傷”に潜む動機の匂いを探り、漂着逆算と行動圏分析で“海の地図”を描く。
謹慎中の日下部峻は、非番の立場から泉の周辺(地取り)を再点検し、
廃倉庫の短期賃借や桟橋の無許可係留といった“見落としのピース”を拾う可能性がある。
それが皮肉にも、チームを次の段階へ進める引き金となる。
演出的期待。
・海の“静かな暴力”——半月夜の穏やかさと、頭部損傷の凄惨さのコントラスト。
・通信と物理のクロス——Fog talkの消えるログと潮汐・漂着の“消せない物理”の対比。
・篠宮(合理)×碇(直感)の緊張共存——かつての恋人同士の最適解が設計者Xへの突破口になる。
まとめ
第7話は、「半月の夜」「Fog talk」「蘇我事件」という三つの歯車がひとりの設計者Xに収束する回になる。
瓜谷は現場の駒、泉は地取りの鍵。
だが通信と金のハブを握る“上位の権限者”こそ、真の黒幕だ。
鍵となるのは千堂ラインの精査。
ここで儀式(見せ方)と利害(黙らせる理由)が一本に繋がる。
第7話では、海が沈黙を破り、潮の流れが真実を語る瞬間が訪れる。
“消える通信”と“消えない海流”——その狭間で、設計者の輪郭がついに浮かび上がるだろう。
8話以降:※未放送
※物語が出次第、更新予定。
原作「東京水上警察」の結末は?簡単にネタバレ

原作の位置づけとシリーズ構成
まず前提を整理しておく。フジテレビ火9ドラマ『東京水上警察』(正式タイトル:『新東京水上警察』)の原作は、吉川英梨による小説シリーズで、講談社文庫から全5巻が刊行(2016〜2020)。
公式でも「現在第5弾まで刊行」と明記されている。したがって“シリーズとしての最終回”はまだ提示されておらず、各巻ごとに独立した事件が完結する構造となっている。また、小説では「五港臨時警察署」が舞台で、ドラマでは「東京水上警察署」へ改称されており、時間軸と組織設定のアレンジが行われている。
各巻クライマックスの簡易ネタバレ(最小限)
1巻『波動』——“観閲式”の海で追跡が頂点へ
白骨遺体と半グレ集団を追う捜査が、都知事臨席の水上観閲式という“予定の塊”に向かって収束。クライマックスは警備艇による追跡劇で、「海×時間×動線」を読み切った水上警察の作戦勝ちで幕を閉じる。シリーズの基軸――速さ=正義、操船=推理――がここで確立される。
2巻『烈渦』——台風下、“都政の闇”を呑み込む決戦
保存船「宗谷」で発見された腐乱死体を発端に、台風接近と湾岸署との主導権争いが同時進行。暴風雨の東京湾という“証拠が溶ける場”を逆手に取り、命懸けの海上戦で真相へ到達する。環境(天候)すら作戦の変数に落とすシリーズの手法が、ここで極まる。
3巻『朽海の城』——豪華客船の“帰港”が審判となる
焼死体を抱えたまま走る豪華客船セレナ・オリンピア号と、湾内で見つかった斧刺さりの水死体――二つの事件が一線上で繋がる。母港への帰還というボトルネックを利用し、包囲を完成。船上と湾内、陸と海の二点同時解決を実現する。タイトルの“城”は、移動する密室=海上構造を象徴している。
4巻『海底の道化師』——“海底の断片”が陸の真相を指す
海底から引き揚げられた免許証、相次ぐ水死体。救難と捜査を並行しながら、連続殺人の影と災害の芽が交錯。最終局面では海底に眠る証拠線を陸の因果と結びつけ、“水の匿名性”を突破して真相に辿り着く。救出の速度と論理の鋭さが両立する巻となっている。
5巻『月下蝋人』——クレーンの“蝋人形”が空中の密室
ガントリークレーンに吊るされた蝋人形の中から刺殺体が発見される。胸元の「996」という数字と異様な製法が手がかりとなり、事件は吊り下げ構造(空間)と数字(記号)の二重トリックで収束。人物の私生活にも揺らぎが生じるが、最終的には“職務としての正しさ”が現場を押し切る形で幕を閉じる。
総括――原作の結末に通底する“海の論理”
シリーズは“各巻完結+世界観継続”。第5弾で完結の告知はなく、“原作としての単一の最終回”は存在しない。したがって「結末」を問うなら、各巻のクライマックスで繰り返される、“海の匿名性を無効化する”=海で論理的に決着をつける手法こそがシリーズ全体の答えとなる。
ドラマ版は、時代設定と組織名を調整し(五臨署→東京水上警察署)、このコンセプトをそのまま継承。シリーズの核である「時間(観閲式などの予定)×水域(潮汐・航路)×動線(船の配置)」を、追跡・包囲・救難という作法で描く。“アクション=解法”という思想は、原作の終わり方に通底する理念として、ドラマ全体を貫いている。
新東京水上警察の原作についてはこちら↓

「新東京水上警察」のキャスト一覧

フジテレビの公式発表によれば、『新東京水上警察』は個性豊かなキャラクターが集結する群像劇です。
主演の佐藤隆太さんを中心に、実力派俳優から若手まで幅広い顔ぶれが揃い、水上署を舞台にしたドラマを力強く彩ります。ここでは主要キャストを一覧で紹介します。
主要キャスト
碇拓真(いかり たくま)…佐藤隆太:
水上警察署強行犯係の係長でリーダー。20年以上のキャリアを持つ刑事だが、水にまつわるトラウマを抱えている。
日下部峻(くさかべ しゅん)…加藤シゲアキ:
捜査一課から異動してきたエリート刑事。上昇志向が強く、碇とは水と油の関係ながら、次第に絆を深めていく。
有馬礼子(ありま れいこ)…山下美月:
若手の海技職員で船舶運航のプロ。チーム碇の「航海士」として活躍する。役作りのため一級船舶免許を取得している努力家。
細野由起子(ほその ゆきこ)…山口紗弥加:
水上署のベテラン刑事。物怖じしない性格で現場を仕切る姉御的存在。少年事件にも詳しい。
藤沢充(ふじさわ みつる)…中尾明慶:
元鑑識官の刑事。水上署に鑑識係がいないため貴重な戦力となる。温厚で家族思いだが、優柔不断な一面もある。
遠藤康孝(えんどう やすたか)…齋藤璃佑:
交番勤務から昇格した最年少刑事。真っ直ぐな性格で、碇を憧れの存在としている。
高橋宗司(たかはし そうじ)…皆川猿時:
水上警察署の課長。自由奔放な部下をまとめる中間管理職。碇と日下部に振り回されつつも署内を仕切る存在。
玉虫肇(たまむし はじめ)…椎名桔平:
水上署の署長で元海技職員という異色の経歴を持つ。“海を知るプロ”として警察に転身し、調整役を担う。署内では“たぬきおやじ”と呼ばれる人物。
ライバル・周辺キャスト
和田毅(わだ たけし)…谷田歩:
湾岸署の刑事で碇の天敵。水上署設立に強く反発し、最大のライバルとなる存在。
黒木謙一(くろき けんいち)…柿澤勇人:
人材派遣会社社長。かつて湾岸ウォリアーズの総長だった過去を持ち、水上署に立ちはだかる敵。
三上慎吾(みかみ しんご)…松本怜生:
介護施設スタッフ。事件に関わる重要なキーパーソンとして登場する。
大沢俊夫(おおさわ としお)…小林隆:
海技職員OB。水上署の活動に深く関わる人物であり、過去の経験が物語に影響を与える。
ドラマ「東京水上警察」の今後の予想や展開

連続性の核:「漂流箱」=予告型事件の始動
第1話の発端は、発泡スチロールの箱に入った黒い“指”と「次は」というメモ。これは「匿名性」「連続性」「水域」という三要素を同時に配置するトリガーだ。
“次は”は犯行継続の意思表示であり、水上は証拠が流れる(消える)環境。今後も潮流や漂流シミュレーションなど“水のロジック”を活かした事件が反復されるだろう。
各話の事件は解決しても、背後で黒幕につながる連続アークが進行する二層構造が予想される。
チームの駆動原理:陸と海、二つの“正しさ”の融合
碇拓真は直感派の現場刑事、日下部峻は本部エリートからの“望まぬ異動”、有馬礼子は海技職員(船舶運用のプロ)、署長・玉虫肇は海技職員上がりの異色の警察官。刑事(陸の論理)×海技(海の論理)という“作法の違い”が毎話の摩擦を生み、最終的に目的合理的に統合されていく。
結果として潮流読みや操船、海上包囲などの戦術が“見せ場”でありながら解法の本質となる。
主人公の課題:碇の“水恐怖症”が中盤の焦点に
碇が“水恐怖症”を抱える設定は、海が舞台のドラマとしては意図的なハンデだ。
序盤はチームに頼りながら“水際”の捜査をこなすが、中盤で自ら水に入らなければ救えない局面に直面し、恐怖を乗り越える。この“閾値突破”が後半の結束=最終局面の根拠となる
バディ構造:日下部は“手柄主義”から“任務主義”へ
日下部は当初「一課に戻りたい」と焦るキャリア組。
現場主義の碇とは衝突するが、海の捜査では単独行動が致命的リスクとなるため、KPIではなく“誰も落水させない”という現場基準へと価値観が変化する。その転換が、後に湾岸署との比較構造をより鮮明にする。
ライバル配置:湾岸署は“鏡”であり“共闘相手”
イントロダクションで「ライバルには湾岸署も登場」と宣言。
和田(湾岸署刑事)らが敵視しつつも“熱い正義漢”として描かれる。前半は縄張り争いで衝突するが、密輸ルート遮断など単独では解決できない事案で共闘に発展する。対立→相互理解→目的共有という段階を踏む展開が自然だ。
長尺アークの敵:企業と旧不良文化の癒着
「湾岸海洋ヒューマンキャリア」社長が、実は「湾岸ウォリアーズ」初代総長という設定が明かされている。
表の顔は港湾ビジネス、裏の顔は非合法ネットワーク。各話の事件(漂流物・密輸・違法操業・労働搾取など)の背後で、この“企業-不良複合体”が糸を引く。終盤は資金・物流・人材の三軸を立証する戦いとなり、水上署のハイブリッド捜査がそれを可視化して追い詰める構図が想定される。
“海の知”の継承:OBと有馬の物語
海技職員OBは“生き字引”の存在。礼子が刑事への憧れを抱く線もあり、操船の達人から捜査の達人へ成長する。
OBの過去が現在の事件と共鳴し、礼子は“海の知”を受け継ぐ後継者として描かれる。玉虫署長は“海と警察の橋渡し”として機能し、最終局面では礼子の操船と判断がカギを握るだろう。
捜査の技術:海ならではの論理が主役に
“水上”は視界が広くても証拠が残りにくい。ゆえに時間=情報となる。AIS(船舶自動識別装置)や潮流・風向分析による漂流軌跡の推定、河口や運河網のボトルネックを押さえる戦術、警備艇の配置と転回半径による包囲計算など、海の論理そのものが解法の主役となる。
警備艇「あかつき」の追尾・遮断・救難の一連が、その“推理の言語”を体現する。
結論
この作品の面白さは、アクションが必然であることに尽きる。海は証拠を溶かす――だから速さが正義。操船と潮流読みが解法になる。碇は水恐怖症という矛盾を抱え、日下部は手柄主義から任務主義へ、礼子は“海の知”を継承する。
外側では湾岸署と企業-不良複合体が鏡像として配置され、物語は“海の匿名性”を無効化する最終作戦で幕を閉じる。すべてが“海の法則”に従って展開していく――その必然こそが、このドラマの最大の快楽である。

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