フジテレビ火9ドラマ『新東京水上警察』は、日本の連ドラ史上初となる“水上警察”を舞台にした刑事ドラマ。
陸の捜査がカメラとテクノロジーで進化する一方、海と川は犯罪の抜け道として取り残されていた――。そんな“水上の空白地帯”を埋めるため、新設された東京水上警察署。
ベテラン刑事・碇拓真(佐藤隆太)と、本部から左遷されたエリート・日下部峻(加藤シゲアキ)、そして海のプロ・有馬礼子(山下美月)が、海上アクションとロジカルな捜査を武器に難事件へ挑む。
本記事では、第1話の「漂流箱事件」から、謎の連続殺人、湾岸署との因縁、そして最終回の結末まで――“海でしか描けない正義”の物語を全話まとめて詳しく解説します。
【全話ネタバレ】ドラマ「新東京水上警察」のあらすじ&ネタバレ

1話:漂う指と「次は」――海から始まる初動捜査はこうして動く
なぜ“今”、水上なのか――物語の出発点
ドラマ『新東京水上警察』の幕開けは、まず「なぜ“今”、水上なのか」という必然性を提示するところから始まる。東京オリンピックから4年、陸の治安は防犯カメラの普及で検挙率が上がる一方、“海と川”は犯罪の抜け道として取り残されていた。
警視庁はその空白を埋めるべく、湾岸部に『東京水上警察署』を新設。発足初日、経歴も性格も異なるが現場力を持つメンバーが集う。海上という“監視の効きにくい領域”を主戦場に据えることで、警察ドラマの地形が一変する。
チームの顔ぶれと“海の作法”
中心となるのは強行犯係の係長・碇拓真(佐藤隆太)。所轄で20年以上の経験を積んだ叩き上げの刑事で、事件のためなら危険も厭わない。一方、日下部峻(加藤シゲアキ)は本部捜査一課から望まぬ異動で水上署に来たキャリア組。
早く本部に戻りたいという功名心が彼の原動力だ。さらに、船舶免許を持つ海技職員・有馬礼子(山下美月)が加わり、“海の安全”という視点を現場に持ち込む。署を束ねるのは、元海技職員の異色署長・玉虫肇(椎名桔平)。
この異種混合の布陣によって、従来の“刑事と相棒”という二項対立では生まれなかったチームの力学が浮かび上がる。
「指」と「次は」――海が運ぶ不穏なメッセージ
やがて「海上に発泡スチロールの箱が漂っている」との通報が入り、警備艇「あかつき」で出動した碇たちは、箱の中から黒く変色した“人間の指らしきもの”を発見する。
そこには、溶けかけた文字で「次は」とだけ書かれたメモが。同時に物語は一気に“連続性”を帯び、犯人の犯行継続を示唆する。海上という匿名性がその予告をさらに不気味にし、水上署は捜査一課と合同で“陸と海”のすり合わせを開始。海では証拠が流れ、漂流物は移動する――つまり時間が情報を奪う。だからこそ初動の“速さ”が唯一の武器になる。
海が描く三段構成――設定・チーム・事件の連動
第1話の構成が見事なのは、設定提示→チーム紹介→事件発火点を“海”で一気に繋いでみせた点だ。
① 水上という監視の薄いフィールドの提示。
② 陸と海のハイブリッドな編成(刑事+海技職員+元海上署長)。
③ 漂流箱の異物感で観客の感覚を“海側”に引き込む仕掛け。
海という環境特性(視界・証拠・移動の速さ)と、人物の初期値(碇=現場勘/日下部=結果主義/有馬=操船と安全)が噛み合い、“水上でしか起こり得ない捜査ドラマ”の輪郭が明確になる。
“正しさが二つある”――人物間の衝突と統合
人物同士の火花も初回から鮮明だ。碇の現場主義は、日下部のキャリア志向としばしば衝突する。
しかし、有馬という“海の作法”の体現者が介在することで、単なる主導権争いではなく“生き延びるための合理性”が成立する。海で生きる正しさと、犯人を挙げるための正しさ。
二つの“正しさ”が同じ艇上でぶつかり、やがて融合していく。この対立と統合の構図こそ、シリーズの駆動力となる。初回の「指」と「次は」は、その統合を強制するタイムリミットとして機能している。
総括――海がルールを変える
総じて第1話は、「海という環境がルールを書き換える」ことを徹底して描き、次回以降への連続性(“次は”の宣告)を見事にセットした。
現場勘で動く碇、結果主義の日下部、操船と安全を担う有馬、そして海を知り尽くした玉虫署長。――この布陣だからこそ、“海の匿名性”と“犯人の予告”に立ち向かえる。捜査はもはや岸では完結しない。次の“箱”が浮かぶ前に、彼らが掴むべきものは何か。その問いを、波の速度で投げかける初回だった。
1話についてはこちら↓

2話:第六台場の白骨遺体と“観閲式”の影――海と陸をつなぐ捜査線
第六台場で発見された遺体――海と介護施設が交錯する序章
2025年10月14日放送。東京湾唯一の人工無人島・第六台場で、銃殺され半ば白骨化した遺体が発見される。
身元は介護施設「キズナオーシャン豊洲」に入居していた資産家・服部義光。水上署の碇拓真(佐藤隆太)と日下部峻(加藤シゲアキ)は、施設の元職員・三上慎吾(松本怜生)を容疑者として追跡。
小型船で逃走を図る三上を追い詰めた瞬間、同乗していた田淵響(山崎裕太)が発砲し、三上は海へ転落する。命は取り留めたものの、事件は再び“水上の現場”に引き戻される。
「湾岸ウォリアーズ」――陸の暴力が海へ転生する構図
田淵は薬物密輸船を狙った強盗グループの主犯格で、かつて台場周辺を荒らした暴走族「湾岸ウォリアーズ」の元メンバー。
総長・黒木謙一(柿澤勇人)を今も崇拝し、陸から海へと活動の場を移している。
陸の暴力が海へ転生し、水上犯罪の生態系が拡張される――本作の世界観を体現する重要な一幕だ。
水上署と湾岸署の主導権争い――「観閲式」の謎が浮上
救命後、三上は沈黙を貫くが、日下部が粘り強く寄り添うことでようやく口を開く。
「服部は自殺だ」と明かし、さらに田淵の行方を問われた際、「観閲式の日……」と言いかけたところで、湾岸署の和田毅(谷田歩)らが病室に押し入り、身柄の引き渡しを強行。
日下部は排除され、水上署と湾岸署の主導権争いが表面化する。
シリーズ設定で明かされていた両署のライバル関係を実地で示し、事件が“捜査の政治”を帯び始める瞬間。
ここで語られた「観閲式」という公的イベントの日時が、攻撃の座標として不穏な意味を帯びてくる。
“水曜の毒殺”――海と陸、二つの現場をつなぐ二重螺旋
捜査の照準は、施設内で毎週水曜に発生する入居者の連続死へと移る。
海(銃撃・転落・救助)と陸(介護施設での毒殺疑惑)という二つの線が二重螺旋を描くように絡み合う。
服部の“銃死”と施設の“毒死”が同一線上にあるのか、それとも別系統なのか。
死の意味の切り分けが、次回への宿題として残される。
シリーズイントロが掲げる「水上の穴場で増える犯罪を、船で追う」というテーマが、海と陸を往還する捜査線として具現化された。
碇の“水恐怖症”――手順で恐怖を制する主人公像
碇は“水恐怖症”という致命的なトラウマを抱えながらも、水上署に所属する刑事。
そのため第2話の緊張は、派手に海へ飛び込むヒーロー譚ではなく、救助を“手順”で成立させる知的サスペンスとして描かれる。
誰がどの順で何を行い、どう人員を動かすか――碇は判断と段取りで現場を制す。
海上アクションの迫力ではなく、“作業の緊張”で物語を支える手法が、水上警察というテーマのリアリティを裏打ちしている。
総括――海と陸、現場と行政をつなぐ“交差点”の回
第六台場の白骨遺体を起点に、田淵=湾岸ウォリアーズの残響、観閲式という“日時”の仕掛け、施設の“水曜”というパターンが一列に並べられた。
海と陸、現場と行政の交差点で物語を加速させ、「まだ終わっていない」という気配を残して幕を閉じる。
観閲式の日に何が起きるのか、服部の死は本当に“自殺”なのか――。
“海で起きたことを陸の制度と言葉で解く”という、このドラマの勝ち筋が鮮明になった回だった。
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3話の予想:観閲式襲撃と「あかつき」強奪――碇の“水恐怖症”は越境できるか
「観閲式の日」が意味するもの――時間と場所が重なる危機
第2話のラストに残された三上の「観閲式の日…」という未完の言葉が、第3話の導火線となる。
公式予告では、その“日時”が攻撃の座標になることが明言された。逃走中の田淵(山崎裕太)が海技職員・有馬礼子(山下美月)を拘束し、警備艇「あかつき」を強奪して観閲式会場へ向かう。
しかも会場には、田淵がかつて属した暴走族〈湾岸ウォリアーズ〉の総長・黒木謙一(柿澤勇人)が来賓として出席。時間と場所を一点に固定し、加害者・被害者・観衆を同じフレームに置く――緊張の導線を明確化した設計が、1秒ごとの判断に意味を与える。
碇の“水恐怖症”――恐怖を“段取り”で乗り越える主人公像
予告映像では、碇(佐藤隆太)が別艇から「あかつき」に飛び移るスリリングな展開も示されている。
鍵を握るのは、彼の“水恐怖症”という致命的な設定。水上警察の刑事として海に飛び込むことすら難しい彼が、身体で海に踏み込むか、判断で海を制するか――その選択が試される。
第1・2話では「誰が何をどの順に行うか」という段取りの精度で救助や追跡を成立させてきた碇。3話はその作法の極限テストだ。跳ぶ前に風・距離・波を“言葉で整える判断力”、跳んだ後は操船という“次の作業”で冷静に制御する能力。
碇が“恐怖を抑え込むヒーロー”ではなく、“恐怖ゆえに手順に逃げ込むプロ”として描かれるなら、シリーズのリアリティは一段深まる。
“段取り主義”が描く現場のリアル――言葉で秩序を取り戻す
観閲式当日は、警備の導線が最も複雑な日。由起子(山口紗弥加)が「展示訓練」とアナウンスして観客の混乱を抑える――この一言が戦術として効く。
銃や殴打よりも、言葉で秩序を取り戻す展開。
水上署と湾岸署の関係も再燃する。前回の身柄引き渡しをめぐる火花の余熱が残るなか、誰が指揮を執り、誰の決裁で動くのか。行政の正義と現場の正義の線引きが問われ、観閲式という“公の海”が、組織間の優先順位を露出させるステージとなる。
二段構えのアクション――身体と作業、二層の“勇気”
アクションの見せ場は二段構えになると予想される。
第一段は“接近戦”――別艇から横抱き寄せやランデブーで舷間距離を詰め、ボート間ジャンプで一気に制圧を狙う。
第二段は“操船戦”――あかつきの速度・舵角・逆転を駆使して衝突エネルギーを緩和、もしくは人のいない方向へ逃がす。
碇が飛び移る“身体の勇気”を見せた瞬間に、今度は“作業の勇気”――全速逆転を選び、命を守るために舵を切る判断が求められる。
勇気の中身を「瞬間の決断」と「継続する作業」に二層化して見せる構成が、3話最大の見どころとなる。
礼子の拘束――“プロの不在”が生む成長の余白
礼子は水上業務のスペシャリストで、普段は操船のロジックをチームに供給する側。
その彼女が拘束されることで、碇は“自分で海を扱う”壁に直面する。
無線やホイッスルなどの非対面コミュニケーションで助言を送る可能性はあるが、基本は碇―日下部―由起子の三角体制で、現場・追跡・会場を同時制御する展開になる。
“プロの不在”は、他者の成長の余白として使われる――礼子の“穴”が、碇の越境のトンネルになる。
黒木謙一という“影”――倫理を帯びたアクションへ
黒木謙一(柿澤勇人)の来賓設定は、動機の強化と人質の価値を同時に引き上げる仕掛け。
田淵にとっては“総長の前で成功を証明する舞台”であり、一方で黒木を安全に退避させる警備線が、あかつきの進路に干渉する可能性もある。
“誰を守るか”という優先順位が変われば、最短の操船が最善ではなくなる。
ミリ単位の操船判断に倫理の重みが乗ることで、アクションが単なる力比べでは終わらない。
結末予想――“部分勝利”で前章を締める
- 会場側:由起子のアナウンスと現場誘導でパニックを回避し、「展示訓練」として処理。
- 海上側:碇が接近→飛び移り→制圧まで到達。衝突直前にスロットル全後進と舵角微調で“減速寄せ”を狙う。
- 田淵線:田淵は逮捕されるが、資金や銃の背後関係は不明のまま。黒木と〈湾岸ウォリアーズ〉の実態が次章へ持ち越される。
- 碇の弧:水恐怖症は“克服”ではなく、“手順で上書きできる恐怖”として再定義される。
3話は「仕組みを残した部分勝利」で終わる。勝ち切らないことで、次への戦いが開ける――これが連ドラの呼吸だ。
視聴時の注目ポイント
- 言葉の運用:由起子の「展示訓練」アナウンスがどう変化するか。
- 操船の実務:スロットル・舵角・逆転の描写がどれだけ“作業”としてリアルか。
- 組織の線引き:水上署と湾岸署、どちらの判断で行動が決まるか。
- 黒木の位置:その視線が田淵の動機や行動にどう影響するか。
- 碇の越境:恐怖を“消す”のではなく、“意味を持ち替える瞬間”が映るか。
これらが噛み合えば、海で起きたことを言葉と作業で捌く――という本作の美学が最も鮮明に立ち上がる。
放送は2025年10月21日(火)夜9時。“公の海”で、誰が、何を、どの順に行うのか――その手順こそが主役となる。
4話:※未放送
※物語が出次第、更新予定。
5話:※未放送
※物語が出次第、更新予定。
原作「東京水上警察」の結末は?簡単にネタバレ

原作の位置づけとシリーズ構成
まず前提を整理しておく。フジテレビ火9ドラマ『東京水上警察』(正式タイトル:『新東京水上警察』)の原作は、吉川英梨による小説シリーズで、講談社文庫から全5巻が刊行(2016〜2020)。
公式でも「現在第5弾まで刊行」と明記されている。したがって“シリーズとしての最終回”はまだ提示されておらず、各巻ごとに独立した事件が完結する構造となっている。また、小説では「五港臨時警察署」が舞台で、ドラマでは「東京水上警察署」へ改称されており、時間軸と組織設定のアレンジが行われている。
各巻クライマックスの簡易ネタバレ(最小限)
1巻『波動』——“観閲式”の海で追跡が頂点へ
白骨遺体と半グレ集団を追う捜査が、都知事臨席の水上観閲式という“予定の塊”に向かって収束。クライマックスは警備艇による追跡劇で、「海×時間×動線」を読み切った水上警察の作戦勝ちで幕を閉じる。シリーズの基軸――速さ=正義、操船=推理――がここで確立される。
2巻『烈渦』——台風下、“都政の闇”を呑み込む決戦
保存船「宗谷」で発見された腐乱死体を発端に、台風接近と湾岸署との主導権争いが同時進行。暴風雨の東京湾という“証拠が溶ける場”を逆手に取り、命懸けの海上戦で真相へ到達する。環境(天候)すら作戦の変数に落とすシリーズの手法が、ここで極まる。
3巻『朽海の城』——豪華客船の“帰港”が審判となる
焼死体を抱えたまま走る豪華客船セレナ・オリンピア号と、湾内で見つかった斧刺さりの水死体――二つの事件が一線上で繋がる。母港への帰還というボトルネックを利用し、包囲を完成。船上と湾内、陸と海の二点同時解決を実現する。タイトルの“城”は、移動する密室=海上構造を象徴している。
4巻『海底の道化師』——“海底の断片”が陸の真相を指す
海底から引き揚げられた免許証、相次ぐ水死体。救難と捜査を並行しながら、連続殺人の影と災害の芽が交錯。最終局面では海底に眠る証拠線を陸の因果と結びつけ、“水の匿名性”を突破して真相に辿り着く。救出の速度と論理の鋭さが両立する巻となっている。
5巻『月下蝋人』——クレーンの“蝋人形”が空中の密室
ガントリークレーンに吊るされた蝋人形の中から刺殺体が発見される。胸元の「996」という数字と異様な製法が手がかりとなり、事件は吊り下げ構造(空間)と数字(記号)の二重トリックで収束。人物の私生活にも揺らぎが生じるが、最終的には“職務としての正しさ”が現場を押し切る形で幕を閉じる。
総括――原作の結末に通底する“海の論理”
シリーズは“各巻完結+世界観継続”。第5弾で完結の告知はなく、“原作としての単一の最終回”は存在しない。したがって「結末」を問うなら、各巻のクライマックスで繰り返される、“海の匿名性を無効化する”=海で論理的に決着をつける手法こそがシリーズ全体の答えとなる。
ドラマ版は、時代設定と組織名を調整し(五臨署→東京水上警察署)、このコンセプトをそのまま継承。シリーズの核である「時間(観閲式などの予定)×水域(潮汐・航路)×動線(船の配置)」を、追跡・包囲・救難という作法で描く。“アクション=解法”という思想は、原作の終わり方に通底する理念として、ドラマ全体を貫いている。
新東京水上警察の原作についてはこちら↓

「新東京水上警察」のキャスト一覧

フジテレビの公式発表によれば、『新東京水上警察』は個性豊かなキャラクターが集結する群像劇です。
主演の佐藤隆太さんを中心に、実力派俳優から若手まで幅広い顔ぶれが揃い、水上署を舞台にしたドラマを力強く彩ります。ここでは主要キャストを一覧で紹介します。
主要キャスト
碇拓真(いかり たくま)…佐藤隆太:
水上警察署強行犯係の係長でリーダー。20年以上のキャリアを持つ刑事だが、水にまつわるトラウマを抱えている。
日下部峻(くさかべ しゅん)…加藤シゲアキ:
捜査一課から異動してきたエリート刑事。上昇志向が強く、碇とは水と油の関係ながら、次第に絆を深めていく。
有馬礼子(ありま れいこ)…山下美月:
若手の海技職員で船舶運航のプロ。チーム碇の「航海士」として活躍する。役作りのため一級船舶免許を取得している努力家。
細野由起子(ほその ゆきこ)…山口紗弥加:
水上署のベテラン刑事。物怖じしない性格で現場を仕切る姉御的存在。少年事件にも詳しい。
藤沢充(ふじさわ みつる)…中尾明慶:
元鑑識官の刑事。水上署に鑑識係がいないため貴重な戦力となる。温厚で家族思いだが、優柔不断な一面もある。
遠藤康孝(えんどう やすたか)…齋藤璃佑:
交番勤務から昇格した最年少刑事。真っ直ぐな性格で、碇を憧れの存在としている。
高橋宗司(たかはし そうじ)…皆川猿時:
水上警察署の課長。自由奔放な部下をまとめる中間管理職。碇と日下部に振り回されつつも署内を仕切る存在。
玉虫肇(たまむし はじめ)…椎名桔平:
水上署の署長で元海技職員という異色の経歴を持つ。“海を知るプロ”として警察に転身し、調整役を担う。署内では“たぬきおやじ”と呼ばれる人物。
ライバル・周辺キャスト
和田毅(わだ たけし)…谷田歩:
湾岸署の刑事で碇の天敵。水上署設立に強く反発し、最大のライバルとなる存在。
黒木謙一(くろき けんいち)…柿澤勇人:
人材派遣会社社長。かつて湾岸ウォリアーズの総長だった過去を持ち、水上署に立ちはだかる敵。
三上慎吾(みかみ しんご)…松本怜生:
介護施設スタッフ。事件に関わる重要なキーパーソンとして登場する。
大沢俊夫(おおさわ としお)…小林隆:
海技職員OB。水上署の活動に深く関わる人物であり、過去の経験が物語に影響を与える。
ドラマ「東京水上警察」の今後の予想や展開

連続性の核:「漂流箱」=予告型事件の始動
第1話の発端は、発泡スチロールの箱に入った黒い“指”と「次は」というメモ。これは「匿名性」「連続性」「水域」という三要素を同時に配置するトリガーだ。
“次は”は犯行継続の意思表示であり、水上は証拠が流れる(消える)環境。今後も潮流や漂流シミュレーションなど“水のロジック”を活かした事件が反復されるだろう。
各話の事件は解決しても、背後で黒幕につながる連続アークが進行する二層構造が予想される。
チームの駆動原理:陸と海、二つの“正しさ”の融合
碇拓真は直感派の現場刑事、日下部峻は本部エリートからの“望まぬ異動”、有馬礼子は海技職員(船舶運用のプロ)、署長・玉虫肇は海技職員上がりの異色の警察官。刑事(陸の論理)×海技(海の論理)という“作法の違い”が毎話の摩擦を生み、最終的に目的合理的に統合されていく。
結果として潮流読みや操船、海上包囲などの戦術が“見せ場”でありながら解法の本質となる。
主人公の課題:碇の“水恐怖症”が中盤の焦点に
碇が“水恐怖症”を抱える設定は、海が舞台のドラマとしては意図的なハンデだ。
序盤はチームに頼りながら“水際”の捜査をこなすが、中盤で自ら水に入らなければ救えない局面に直面し、恐怖を乗り越える。この“閾値突破”が後半の結束=最終局面の根拠となる
バディ構造:日下部は“手柄主義”から“任務主義”へ
日下部は当初「一課に戻りたい」と焦るキャリア組。
現場主義の碇とは衝突するが、海の捜査では単独行動が致命的リスクとなるため、KPIではなく“誰も落水させない”という現場基準へと価値観が変化する。その転換が、後に湾岸署との比較構造をより鮮明にする。
ライバル配置:湾岸署は“鏡”であり“共闘相手”
イントロダクションで「ライバルには湾岸署も登場」と宣言。
和田(湾岸署刑事)らが敵視しつつも“熱い正義漢”として描かれる。前半は縄張り争いで衝突するが、密輸ルート遮断など単独では解決できない事案で共闘に発展する。対立→相互理解→目的共有という段階を踏む展開が自然だ。
長尺アークの敵:企業と旧不良文化の癒着
「湾岸海洋ヒューマンキャリア」社長が、実は「湾岸ウォリアーズ」初代総長という設定が明かされている。
表の顔は港湾ビジネス、裏の顔は非合法ネットワーク。各話の事件(漂流物・密輸・違法操業・労働搾取など)の背後で、この“企業-不良複合体”が糸を引く。終盤は資金・物流・人材の三軸を立証する戦いとなり、水上署のハイブリッド捜査がそれを可視化して追い詰める構図が想定される。
“海の知”の継承:OBと有馬の物語
海技職員OBは“生き字引”の存在。礼子が刑事への憧れを抱く線もあり、操船の達人から捜査の達人へ成長する。
OBの過去が現在の事件と共鳴し、礼子は“海の知”を受け継ぐ後継者として描かれる。玉虫署長は“海と警察の橋渡し”として機能し、最終局面では礼子の操船と判断がカギを握るだろう。
捜査の技術:海ならではの論理が主役に
“水上”は視界が広くても証拠が残りにくい。ゆえに時間=情報となる。AIS(船舶自動識別装置)や潮流・風向分析による漂流軌跡の推定、河口や運河網のボトルネックを押さえる戦術、警備艇の配置と転回半径による包囲計算など、海の論理そのものが解法の主役となる。
警備艇「あかつき」の追尾・遮断・救難の一連が、その“推理の言語”を体現する。
結論
この作品の面白さは、アクションが必然であることに尽きる。海は証拠を溶かす――だから速さが正義。操船と潮流読みが解法になる。碇は水恐怖症という矛盾を抱え、日下部は手柄主義から任務主義へ、礼子は“海の知”を継承する。
外側では湾岸署と企業-不良複合体が鏡像として配置され、物語は“海の匿名性”を無効化する最終作戦で幕を閉じる。すべてが“海の法則”に従って展開していく――その必然こそが、このドラマの最大の快楽である。
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