『TRICK(トリック)』は、単なるミステリードラマでも、オカルト作品でもありません。
毎回の事件は「超常現象をトリックで暴く」という形を取りながら、物語が進むにつれて浮かび上がってくるのは、人がなぜ信じてしまうのか、なぜ嘘にすがるのか、という人間そのものの弱さでした。
ドラマ全3シーズン、スペシャルドラマ、そして複数の劇場版を通して描かれたのは、売れないマジシャン・山田奈緒子と物理学者・上田次郎という凸凹コンビの活躍だけではありません。
村の因習、宗教、家族、血縁、信仰、そして「本物」を求める欲望。TRICKは、笑いと悪ふざけの裏側で、一貫して同じ問いを投げ続けてきました。
この記事では、トリックの全ドラマ・全映画を俯瞰しながら、各作品がどんな役割を担い、最終的に何を残したのかを整理していきます。
シリーズを初めて振り返る人にも、最後まで見届けた人にも向けた“総まとめ”です。
TRICK/トリックの概要

『トリック』は、自称・天才マジシャンの山田奈緒子と、自称・天才物理学者の上田次郎がコンビを組み、“超常現象に見える事件”の裏側にある人間が仕掛けたトリックを暴いていくミステリードラマです。
笑える小ネタやパロディで徹底的にふざける一方で、事件の根っこには「信じたい」「救われたい」「金がほしい」「許されたい」といった人間の弱さがあり、解決しても後味が苦い──この笑い×不穏の混ざり方がシリーズの中毒性になっています。
シリーズは基本的に“奈緒子・上田 vs インチキ霊能者”の図式で進み、毎回「それっぽい権威(村・信者・メディア)」が現象を補強し、二人が現場で検証し、最後に種明かし…という流れが王道。
とはいえ、まれに「説明しきれない気配」を残す回もあり、“全部が科学で割り切れるわけではない”余韻も作品の味です。
制作の核には、演出の堤幸彦を中心とした独特のテンポがあり、脚本陣・演出陣も複数名でシリーズを支えています
音楽は辻陽の「Mystic Antique」が作品世界を決定づけ、エンディングはシーズンごとに変化(シーズン1=鬼束ちひろ「月光」、シーズン2=「流星群」、シーズン3=「私とワルツを」、新作SP=Joelle「ラッキー・マリア」など)して“空気の色”を更新していきます。
「トリック」シリーズ毎のネタバレ&あらすじ。ドラマ&映画まとめ

ここからはシリーズ全体を俯瞰するネタバレとして、各シリーズの「何が起きたか(あらすじ)」と「何が分かるか(シリーズの獲得情報)」を、章ごとに整理します。
ドラマ「トリック:シーズン1」のネタバレ&わかること
シーズン1(2000年放送・全10話)は、奈緒子と上田の“運命的な出会い”から始まり、シリーズの型を一気に作り上げたシーズンです。
ざっくりあらすじ(ネタバレ)
売れないマジシャンの奈緒子は、賞金目当てで上田に近づいたつもりが、結果的に“超常現象の解体仕事”に巻き込まれていきます。最初の大きな事件は、霊能力者・霧島澄子が中心の宗教団体「母之泉」。信者が作る権威と空気に対し、奈緒子はマジックの原理で綻びを作り、上田は理屈で追い込む。ここで二人のコンビネーションが固まります。
そこから先も、村人が“まるごと消えた”という集団錯覚レベルの事件(宝女子村/ミラクル三井)、“霊能力で遠隔殺人を行う”と名乗る女性による監禁・予告型の事件(黒坂美幸)、千里眼で何でも当てる男(桂木弘章)など、“本物に見せる仕掛け”のバリエーションで畳みかけてきます。
そして最終章の「黒門島」では、奈緒子の亡き父・山田剛三が“目の前に現れる”という、シリーズの縦軸を開く展開へ。もちろんそれは“死者の復活”ではなく、父の姿を模した黒津兄弟によるもの。
しかし彼らは「父の死に関わった人物を知っている」と匂わせ、奈緒子は真相を探るため、母がかつて住んでいた沖縄・黒門島へ向かいます。結果、奈緒子の生い立ちが“事件の背景”として表面化し始め、単発ミステリーから「主人公の出自」へ物語が伸びていきます。
このシリーズでわかること(ポイント)
- 奈緒子と上田が“母之泉”事件を起点に組むこと(コンビ誕生の原点)
- 「消失」「遠隔殺人」「透視」など“超常っぽい現象”を、基本はトリックとして解体する作劇フォーマット
- ラストで奈緒子の生い立ち(黒門島/父の死)がシリーズの縦糸として立ち上がる
シーズン1についてはこちら↓

ドラマ「トリック:シーズン2」のネタバレ&わかること
シーズン2(2002年放送・全11話)は、事件のスケールが上がりつつ、上田が“世間に顔が売れる”ことで、二人の戦いがより公的なものになっていくシーズンです。
ざっくりあらすじ(ネタバレ)
上田は『どんと来い、超常現象』の出版で有名人になり、教授としても存在感を増します。すると彼の元に持ち込まれるのは、より「社会が信じてしまう怪異」。幕開けは旅館「水上荘」で起きる、“毎年決まった日に、その部屋に泊まると人が死ぬ”という六つ墓村の怪談めいた事件。ここでTRICKは、村と因習を“舞台装置”にして疑心暗鬼を増幅させる路線を強化します。
続く章では、予言が外れない100%当たる占い師(鈴木吉子)、残留思念を追うサイ・トレイラー、祈りで死を下すとされる天罰の少年(針生光太)など、能力の種類が多彩に。しかも「当たる」だけではなく、当たった結果として人が死ぬ/消える/追い詰められる形で、物語の手触りがよりダークになります。
最終章「妖術使いの森」では、入ると戻れない“白木の森”で調査団が不可思議な現象に襲われ、奈緒子は妖術使いの巻物を見て“過去に同じ姿の妖術使いと遭遇していた”ことを思い出す。ここが重要で、シーズン2は単に事件を解く話ではなく、奈緒子側に“過去と繋がる影”が差し込み、縦軸(黒門島の気配)をじわっと再点火するシーズンになっています。
このシリーズでわかること(ポイント)
- 上田が出版で有名になり、事件が“社会化”していく(信じる側の規模が大きくなる)
- 「六つ墓村」「100%当たる占い師」「サイ・トレイラー」「天罰の少年」「妖術使いの森」など、霊能力の“顔”が増えていく
- 「妖術使いの森」で奈緒子の過去が匂わされ、縦軸が再び動き出す
シーズン2についてはこちら↓

映画「トリック:劇場版」のネタバレ&わかること
劇場版第1作(2002年11月公開)は、連ドラの面白さを“祭り”として拡張した作品です。テレビの延長線で見られるのに、舞台は山奥の村、神々(自称)も増量、スケールも悪ノリも大きくなります。
ざっくりあらすじ(ネタバレ)
奈緒子は報酬に釣られ、300年に1度災いが起こると恐れられる糸節村で、村人の不安を鎮めるため「神を演じてほしい」と依頼されます。ところが村には、すでに“神”を名乗る者が3人もいた。奈緒子は上田と合流し、埋蔵金の噂と村の伝説が絡む状況で、ニセ神たちと“神対決”に突入していきます。
さらに劇場版らしく、上田の高校時代の同級生たち、埋蔵金をめぐる騒動、そして「トイレツマル」という言葉を手がかりにした珍妙な暴走(全国トイレ水洗化計画)まで加わり、「信じる空気」が暴走する面白さを最大出力で描いていきます。
最終的に二人は“本物の神”という言葉が意味する地点に辿り着き、TRICKらしく「人間の欲と伝説」が生む怪物と向き合うことになります。
この作品でわかること(ポイント)
- 奈緒子が“神を演じる”=自分がインチキ側に立つことで、TRICKの皮肉がより露骨になる
- 自称の神が複数出ることで、「本物っぽさ」は“能力”より“演出と空気”で作られると分かる
- テレビの事件規模から一段上がり、“村伝説×金”の混線がシリーズの武器として固まる
劇場版1作目はこちら↓

ドラマ「トリック:シーズン3」のネタバレ&わかること
シーズン3(2003年放送・全10話)は、ついに木曜夜9時枠へ進出。テンションはそのままに、事件の見せ方がより派手になり、そして終盤で縦軸(黒門島)が“第二幕”へ入ります。
ざっくりあらすじ(ネタバレ)
前半は“能力の概念”そのものが強い敵が続きます。言葉で運命を指定する言霊使い(芝川玄奘)、時空を裂いて移動する瞬間移動の女(スリット美香子)。TRICKは毎回「それでも人間がやっている」と落とすのに、この2本は“世界のルール”をいじってくるタイプで、解体の快感が大きい。
中盤以降は、噂自体が凶器になる。入居すると死なない老人ホームの謎、旧家の伝説と“開けてはいけない扉”が連鎖する駄洒落歌の呪い。どちらも「閉じた共同体の空気」「噂が人を動かす構造」を、笑いで包みながらちゃんと怖く描きます。
そして最終章「念で物を生み出す女〜黒門島の謎II」。占い師・長谷千賀子を巡る村の因習と権力争いの裏で、“この事件とは別に奈緒子を狙う人物たちがいる”と明言され、奈緒子の出自=黒門島の縦糸が再び表に出てきます。ここでシリーズは「毎回のトリック解体」から、奈緒子自身が“事件に巻き込まれる側”ではなく“狙われる鍵”へ変わっていく。
このシリーズでわかること(ポイント)
- ゴールデン進出で、能力の見せ方・舞台設定がより派手に(言霊/瞬間移動など)
- 「死なない老人ホーム」「旧家の呪い」など、“噂・共同体・伝説”が現象を作る回が増える
- 最終章で黒門島の縦軸が再浮上し、「奈緒子が狙われる理由」が濃くなる
シーズン3のネタバレについてはこちら↓

ドラマ「TRICK 新作スペシャル」のネタバレ&わかること
新作スペシャル第1作(2005年放送)は、連ドラの“章立て”を一本に圧縮しつつ、「死の予言」という強いテーマで一気に引っ張る構成です。テレビシリーズのテンポのまま、事件の密度だけ上げている印象。
ざっくりあらすじ(ネタバレ)
売れっ子占星術師の緑川祥子は「宇宙の波動から死期を予言できる」と称し、生放送で上田を含む大学教授たちと対決。番組中、因縁をつけてきた男に“死ぬ”と予言し、実際に男は心臓発作で死亡。目の前で「予言が当たった」以上、教授陣は引くに引けず、緑川の記念館がある富市山村で真偽を確かめることになります。
奈緒子は一度は誘いを断るものの、家賃滞納で追い出されて結局同行。
調査が進むにつれ、検証していた教授が次々と命を落とし、ついには奈緒子と上田も窮地に追い込まれる──という、“逃げ場のない検証地獄”がスペシャルの面白さです。ここでのTRICKは、現象そのものよりも「予言を当てることで支配する」構造が怖い。
トリック新作スペシャルはこちら↓

映画『トリック劇場版2』のネタバレ&あらすじ
『トリック劇場版2』(2006)は、シリーズの“劇場版らしい大仕掛け”を用意しつつ、結局は「信じたい人間の心」と「救われなさ」があとに残る、TRICKらしい後味で締めてくる一本です。
舞台は孤島と山村の二段構え。前半で「教祖の奇跡」を見せつけ、後半で“それでも人は信じる”を突きつけてくるのが、この作品の骨格だと思います。
物語は、上田が富毛村の青年・青沼から「10年前に失踪した幼なじみ・美沙子を救ってほしい」と頼まれるところから動き出します。美沙子は、箱を使って天界と下界を行き来すると喧伝する霊能者・筺神佐和子が支配する“筺神島”に囚われている――。超常現象案件と聞いてビビる上田は、いつものように山田奈緒子を巻き込み、入信希望者として島へ潜入する、というおなじみの導入です。
島では、教団「箱のゆーとぴあ」の“奇跡”がいくつも披露されます。巨石を動かす、村を消す――劇場版ならではのスケールで「これ、さすがにタネあるの?」と観客の視線を煽ってくる。けれど、上田と奈緒子が辿り着くのはいつもの場所で、「神の力」の正体は、人間が作った“装置”と“支配の構造”だった、というTRICKの王道です。
そして後半、この映画がいちばんエグいのは、“奇跡の否定”そのものよりも、その奥にある親子の真相です。奈緒子は、火のついた箱から脱出するという教祖との対決に巻き込まれ、同じ仕掛けを逆手に取って生還する。そこから露わになるのは、美沙子が「村の子」ではなく、置き去りにされた子であり、厄介者として扱われた末に死のうとした過去、そして彼女を助けたのが佐和子だったという事実。さらに決定打として、佐和子が美沙子の実母だったと明かされます。
けれど母性が救いになるわけではない。佐和子は“母”として美沙子を抱けず、“本物の霊能力者でなければ自分は母になれない”みたいな倒錯した自己正当化に落ちていく。最後はそのまま沼へ落ちていく形で終わり、観客の胸に残るのは「トリックを暴いたのに、誰も得してない」苦さです。
追い打ちのように、東京へ戻った奈緒子には“いつもの貧乏オチ”が来る。住んでいたアパートが建て替えで更地になっていて、帰る場所が消えている。大きな事件を終えたのに、日常は何も守ってくれない。奈緒子が上田の車を追いかけるラストは、ギャグに見せて「この二人は、結局こうやって走り続けるしかない」というシリーズの姿勢そのものです。
トリック劇場版2のネタバレはこちら↓

SP『TRICK 新作スペシャル2』のネタバレ&わかること
劇場版3(霊能力者バトルロイヤル)の直前、2010年に放送されたスペシャル。
舞台は“凶事が起きると契り祭が行われる”という因習が残る一夜村で、事件は「10年前の未解決事件」とも絡みながら進みます。奈緒子・上田・矢部が村に向かい、最終的に「村長・賢三の策略で起こされた事件だった」と暴いていく流れ。
ここで重要なのは、スペシャル2が“劇場版3の1週間前”として描かれている点です。
つまり、次に来る「霊能力者バトルロイヤル」へ橋を架ける役割を持っている。実際、スペシャル2のラストのやり取りが、劇場版3の出来事へ間接的に繋がる形になっていることも明言されています。
この作品でわかること(ポイント)
- TRICKが得意とする「因習×歌(子守唄)×連続する死」の型が強めに出る(オマージュ色が濃い)
- “村のルール”は超常ではなく、人間の都合で作られていく(村長の策略という着地)
- 劇場版3に向けて、次の舞台=「霊能力者の真贋」を一段ギアを上げて提示する
TRICK 新作スペシャル2のネタバレについて↓

映画『劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル』のネタバレ&わかること
シリーズ10周年記念の劇場版第3作。
舞台は山奥の万練村で、村を治める霊媒師“カミハエーリ”の後継を決めるため、全国から霊能力者を集めて勝ち残り方式で戦わせる――という、名前通りの「霊能力者バトルロイヤル」が開催されます。
翔平という青年が上田を訪ね、「本物の霊能力などないことを証明して因習を止めてほしい」と依頼するのが発端です。
一方の奈緒子は、貧乏の極みらしく“賞金と財宝”目当てで大会参加を決めていて、ここでも動機がきれいに割れている。しかも二人は村で鉢合わせし、知り合いだとバレないようにしながら、財宝獲得のために一時的に共闘する。この「同じ場所にいるのに別の顔で動く」感じが、劇場版3の前半の面白さを作っています。
大会は“それっぽい能力披露大会”で始まるのに、途中から急激に嫌な方向へ舵を切ります。参加者の一人・鈴木玲一郎の存在が、バトルを「見世物」から「命の奪い合い」へ変質させていく。ここが劇場版3の特徴で、コメディの顔のまま死が増えていくので笑いが冷えていくんですよね。
ネタバレの核は二つあります。
1つ目は、村の因習が“ただの田舎の風習”ではなく、黒門島のシャーマン「カミヌーリ」の縦糸と接続されること。万練村の「カミハエーリ」という名称自体が、カミヌーリに由来する、とまで説明されます。つまりここで、奈緒子(山田家)側の“霊性の物語”が、別の村の因習を通じて再浮上する。
2つ目は、「本物の霊能力者はいるのか?」というテーマを、わざと燃える形で残すこと。作中では、鈴木の人生に影響を与えた霊能力者・松宮佐和子が“何もないところから物を出す”“未来予知”などを持っていたと語られます。TRICKは基本、超常を解体するシリーズなのに、こういう“揺らぎ”を混ぜてくるから、視聴者の議論が止まらなくなる。
加えて、バトルロイヤル内の「脱出マジック」周りには、双子の入れ替わりと死体が絡む、かなりえげつない真相が置かれています。成功した“瞬間移動”が、誰かの犠牲で成立していた――というタイプのオチで、TRICKが得意とする「タネが分かったところで救われない」の最悪な実装例です。
この作品でわかること(ポイント)
- 万練村の因習(カミハエーリ)が黒門島のカミヌーリ由来で、シリーズ縦軸を太くする
- 「霊能力は全部ウソ」と断言しきれない“本物の気配”を、松宮佐和子の存在で残す
- 因習が人を殺す。トリックを暴く行為が、人間の残酷さを可視化してしまう

SP『TRICK 新作スペシャル3』のネタバレ&わかること
2014年のスペシャル第3弾。導入がまず“上田の立場の変化”を象徴しています。
大手メーカー社長・水神達郎が主催するイベントに招かれて講演をする上田。しかしその水神家の当主が亡くなり、遺言状の開封のため、上田と奈緒子は長野県の尾古溝村へ向かう――というスタートです。
遺言状の開封と同時に、「呪われた財宝」の手がかりが入った箱が開けられ、それを境に水神家の人間が次々と死んでいく。TRICKの“村×因習×呪い”の定番セットを、「遺言」「暗号」「財宝」というミステリー側のギミックで組み直した回、という印象です。
この作品でわかること(ポイント)
- 上田が“超常現象解明の権威”として社会的に利用される立場になっている(講演依頼の形)
- 呪いの装いの中身は、人間関係と利害(遺産・財宝)が引き起こす地獄、というTRICKの基本に回帰
- 劇場版ラストステージへ向けて、「呪いの正体=トリック」だけで終わらない不穏さ(死が続く後味)を強める
TRICK 新作スペシャル3についてはこちら↓

映画『トリック劇場版 ラストステージ』のネタバレ&わかること
シリーズ完結編。舞台は日本を飛び出し、赤道スンガイ共和国へ。
村上商事が進めるレアアース採掘事業に対し、現地で信奉される呪術師“ボノイズンミ”が「聖なる土地を渡さない」と住民を動かしている。村上商事は上田に「霊能力のトリックを暴して、科学で目を覚まさせてほしい」と依頼します。が、その説明の最中、“呪いを受けた”とされる社員が予言通りに突然死する。ここで観客は「今回はヤバいかも」と思わされるし、上田は研究費と世間体を天秤にかけた末に現地へ行く決断をする。
奈緒子は例によって追い詰められていて、上田に“どっきり番組”の延長みたいな形で連れ出される。いつも通りのコメディの顔で始まるのに、現地へ着いてからは上田が原因不明の発疹で苦しみ、ボノイズンミが妖しい儀式で治してしまう。村人の信頼は絶対になり、「これはトリックで説明できるのか?」の緊張が続きます。
中盤以降、ボノイズンミの“裁き”が加速します。資源開発者の川島が現地の若者を殺し、呪術師が「この水を飲めば犯人だけが死ぬ」と宣言。全員が飲み、川島は皆の前で変死。さらに医師・谷岡が呪術師を撃とうとして帰りに謎の死を遂げ、呪術師は「何もない水槽から谷岡の手首を取り出す」ような不気味な演出まで見せてくる。
ただ、この映画の核心は「呪いのトリックを暴く」だけじゃない。奈緒子が何度も見る“巨大な火球が空で爆発する夢”が現実の災厄の予兆で、ボノイズンミの本当の役割が「村を守るための犠牲」にあると分かってくるところです。彼は“次に起きる爆発”を知っていて、危険が迫れば地中深くでガスを爆発させ、村人を救うつもりだった。
つまり、呪術師は詐欺師である前に「防災装置」でもあった。
そして奈緒子は、ここで“鍵”としての顔を取り戻します。自分が残って呪術師の後を継ぐと言い、上田たちに逃げろと告げる。上田は引き返し、奈緒子を連れ戻そうとするが、洞窟が崩落して二人は瓦礫越しに引き裂かれる。
奈緒子は「死後の世界があるなら1年後に連絡する。その時は寿司と餃子を死ぬほど奢れ」と言い残し、地中で爆発を起こして消息を絶つ。恋愛の告白ではなく、食い物と冗談で別れを包むのが、TRICKの美学なんですよね。
1年後、上田は科学賞の席で「本物の霊能力者に賞金を譲る」と呼びかけるが現れない。そこへ里見が現れ、奈緒子を呼び出せる霊能力者を探してくれてありがとう、と礼を言って去る。里見が黒門島のカミヌーリ家系で、奈緒子と“何らかの力で繋がっている”ように描かれるのも、このラストで効いてきます。
…と思わせてからの、エンドロール後。記憶を失った奈緒子が賞金目当てに現れ、「私は本物です(本物の霊能力者です)」と言い、かつて上田に見せたマジックを披露する。シリーズが最後まで「本物か?全部トリックか?」の答えを濁し続ける、最大の置き土産です。
この作品でわかること(ポイント)
- ボノイズンミは“敵”というより「村を守る役割」で、TRICKがときどき触れる“霊性の役割”を極限まで押し出す
- 奈緒子と上田の関係は、決着ではなく“別れの余韻”で完結する(言い切らないから続く、を最後まで貫く)
- ラストの奈緒子が「本物」と名乗ることで、シリーズ全体の“本物の霊能力者論争”に永遠の火種を残す
トリック劇場版 ラストステージについてのネタバレはこちら↓

【ネタバレ】TRICK/トリックの登場人物について解説

『トリック』は「超常現象の正体=トリック」を暴くのが表の顔。
でもシリーズを追うほど、事件の“タネ”以上に、登場人物の「信じたい/信じたくない」「救いたい/救われたい」が物語を動かしているのが分かります。
ここでは主要人物を、“正体(物語上の核)”と“最後(ファイナルでどうなるか)”に絞って整理します。
山田奈緒子の正体と最後はどうなった?
奈緒子の表の肩書きは、自称・超売れっ子天才美人マジシャン。実態は家賃滞納に追われながら、賞金目当てで上田の研究室に乗り込む“生存最優先”の人です。そもそもシリーズの入口が「貧乏と野心」なのが、奈緒子の強さでもあり弱さでもある。
でもシリーズを通して奈緒子は、単なる“事件を解く相棒”から、物語の縦糸(黒門島・家系・霊性)を背負う鍵へ変わっていきます。母・里見が「黒門島に代々伝わる霊媒師(カミヌーリ)の家系」であり、奈緒子と“何らかの力で繋がっている”と公式プロフィールでも示されているのが重要です。
そして議論が爆発するのが、シーズン3終盤。奈緒子は「本物の霊能力者だ」と宣告され、実験で“見ないで当てる”テストを課され、本人が一番驚く形で“当ててしまう”描写が入る。ここで視聴者の頭に「え、奈緒子って…?」が芽生えるんですよね。
で、ファイナル(=映画『トリック劇場版 ラストステージ』)で奈緒子はどうなるか。
結末はかなり“トリックらしい残酷さ”と“らしさ”が両立しています。
- 奈緒子は、村を救うために洞窟の奥へ進み、地中で爆発を起こして消息不明になる。
- そして1年後、上田が“本物の霊能力者に賞金を譲る”と呼びかけ続ける場に、記憶を失った奈緒子が現れる。
- 奈緒子は「私は本物です」と言い、最後に“かつて上田に見せたマジック”を披露して終わる。
つまり奈緒子は「死んだ」ではなく、生きて戻ってくる。ただし“二人の積み重ね”だけが抜け落ちる。この一撃が、シリーズ完結編の温度を決めています。
奈緒子についての記事はこちら↓

上田次郎の正体と最後はどうなった?
上田の表の肩書きは、日本科学技術大学の物理学教授で、著書『どんと来い、超常現象』など「超常を科学で斬る」側の象徴です。
ただ、上田の“正体”を物語機能で言うなら、単なる合理主義者ではなく、
「権威としての科学」+「人間としての未熟さ(見栄・臆病・執着)」を同居させた装置なんですよね。
上田は毎回、事件の入口では「科学で証明できる」「非科学は認めない」と構える。けれど現場で汗をかいて、泥を踏み、結局いちばん“超常に近い場所”へ連れていかれるのも上田。
この矛盾があるから、奈緒子との掛け合いが単なる漫才で終わらず、だんだん“関係性の物語”になっていく。
ファイナルでは、その上田が最も象徴的な反転をやります。
1年後の授賞式で、上田は「本物の霊能力者に賞金を譲る」と呼びかける。つまり、最初は“インチキを叩き潰すための挑戦状”だったのに、最後は「奈緒子の声を聞くために、霊能力に賭ける」側へ回っている。
上田の最後は、勝利でも敗北でもない。
“答えを出せない人間”として、待ち続ける顔で終わる。それが『トリック』のロマンです。
山田里見の正体と最後はどうなった?
里見は一見、強烈な母ギャグ(商売人・圧・強引さ)で回す存在に見えます。ところがシリーズが進むほど、里見は「笑いの装置」ではなく、縦糸の当事者として立ち上がってくる。
公式プロフィールで、里見は黒門島に代々伝わる霊媒師(カミヌーリ)の家系とされ、奈緒子と“何らかの力で繋がっている様子”がある、とされている。
つまり里見は、奈緒子の“正体”を語る鍵であり、同時に「娘を守るために何かを隠してきた人」でもある。
ファイナルの終盤でも里見は重要です。
上田が授賞式で呼びかけた後、里見が現れて「奈緒子を呼び出せる霊能力者を探してくれてありがとう」と礼を言って去る。ここで里見は、上田の“執着”を肯定し、奈緒子の帰還へ橋をかける役を担います。
里見が“最後まで母の顔”なのが残酷で優しい。
娘が戻ってきても、娘は記憶を失っている。里見はそれを飲み込んだ上で、上田に頭を下げる。ギャグのまま終わらせない、最終盤の里見は本当に強いです。
山田剛三の正体と最後はどうなった?
剛三は奈緒子の父で、有名なマジシャン。そして重要なのは、剛三が「霊能力なんてものはない。全部マジックで説明できる」と信じていた人物だという点です。
ただし剛三は、最期に矛盾を残す。
水中脱出トリック中の事故で亡くなった後、剛三が残したとされる言葉として「本物の霊能力者はいると信じる」という趣旨が語られる(=“否定の象徴”が最後に揺らぐ)。
剛三は物語上、もう“現在”にはいない。けれど剛三の残した矛盾が、奈緒子の「恐れ」を作り、里見の「隠し事」を加速させ、上田の「探究」を暴走させる。
つまり剛三は、死んでなおシリーズを駆動するエンジンです。

TRICK/トリックの伏線回収

『トリック』の伏線回収って、普通のミステリーみたいに「これが真犯人です!」でスッキリ終わるタイプじゃないんですよね。
むしろ「タネは分かった。でも気持ちは救われない」という余韻の回収が多い。その上で、シリーズ全体の縦糸はきちんと“繋いで”終わらせています。
回収① 黒門島=ただの舞台ではなく「奈緒子の物語」だった
シーズン3終盤で、奈緒子は拉致され、目的は「里見が黒門島から持ち出し隠したモノ」。封印を解くには“5文字の言葉”が必要で、「里見の血を引き霊能力を持つ奈緒子なら解ける」とされる。
ここで黒門島は「また村の因習か」ではなく、奈緒子自身の出自(縦糸)に直結する装置として再定義されます。
さらに完結編の『ラストステージ』では、奈緒子が「呪術師の後を継ぐ」と言い出すところまで行く。これは“事件を解く相棒”から、役割を背負う人間へのシフトで、縦糸が最終形に到達した瞬間です。
回収② 「本物の霊能力者はいるのか?」を、あえて“結論”にしない回収
剛三が最後に“本物の霊能力者”の存在を匂わせる。
奈緒子は“当ててしまう”体験をして動揺する。
そしてラストでは、上田が“本物の霊能力者”を呼びかけ、記憶を失った奈緒子が「私は本物です」と現れる。
この流れって、答えを出しているようで出していない。
でも「本物/偽物」を能力の真偽で決着させず、“二人が何を信じてしまったか”で着地させたのは、シリーズとして最も誠実な回収だと思います。
能力者についての記事はこちら↓

回収③ 「寿司と餃子」=ふざけた約束が、最終回で“誓い”になる
『ラストステージ』で奈緒子が残す言葉は、「死後の世界があるなら1年後に連絡する。寿司と餃子を奢れ」。ふざけているのに、上田にとっては唯一の希望になる。
この“軽口で重い”感じが、14年分の関係性を一行で回収しています。
TRICK/トリックの未回収伏線

未回収というより、“回収しないことを選んだ”余白が多いのが『トリック』の特徴です。ここが好き嫌いの分かれ目でもある。
未回収① 奈緒子の霊能力は結局、本物なのか?
公式プロフィールでは里見が霊媒師家系で、奈緒子と繋がっている描写が示される。作中でも奈緒子が“当ててしまう”瞬間があり、本人が動揺する。
でも最終的には、「本物です」と言いながら披露されるのはマジックで終わる。
この“どっちとも取れる”設計が、未回収に見えて、実は作品テーマのど真ん中なんですよね。
視聴者が答えを選ぶ余白を、最後まで残している。
未回収② 上田と奈緒子の関係は「確定」しない
公式サイトのファン感想でも、ラストシーンの上田の表情や二人の関係性に言及する声が多い。
でも作品は、恋愛として確定させない。
“言い切らない”ことが、このシリーズの寿命を伸ばしてきたし、完結編でもその美学は崩しません。
未回収③ 黒門島の因習の「全貌」は語り切られない
黒門島は設定として強いのに、百科事典的に全部説明されることはない。
だからこそ「怖い」「気になる」「また触れてほしい」が残る。未回収というより、“神話のまま置く”選択です。
TRICK/トリックの最終回の結末。ファイナルでどうなった?

シリーズとしての完結は、映画『トリック劇場版 ラストステージ』とスペシャル『TRICK 新作スペシャル3』の時期で「完」とされます。
物語の“最後の答え”は、基本的に『ラストステージ』が担っています。
物語は、上田が企業から依頼を受け、海外の秘境で“呪術師のトリック”を暴す…という、原点回帰の導入から始まる。上田は例によって奈緒子を巻き込み、矢部もなぜか合流して村へ向かう。
しかし終盤で判明するのは、「呪術師=人を騙す悪」だけではないという事実。
呪術師は、地中ガスの引火による大惨事を予見し、村を救うため“地中で爆発を起こす役割”を背負っていた。奈緒子はその役割を継ぐと決め、上田の制止を振り切って洞窟奥へ進む。結果、奈緒子は爆発に巻き込まれ消息を絶つ。
そして1年後。
上田は授賞式の場で「本物の霊能力者に賞金を譲る」と呼びかけるが、本物は現れない。そこへ里見が現れ礼を言って去り、最後に記憶を失った奈緒子が賞金目当てに現れる。奈緒子は「私は本物です」と言い、マジックを披露する――ここで終わり。
“完結”なのに、二人は振り出しに戻る。
この矛盾が、トリックの最後の意地です。
TRICK/トリックのラストシーンの意味
ラストシーンは、はっきり言って感動です。
記憶を失った奈緒子は、二人の14年を忘れている。上田だけが積み重ねを抱えている。だからこそ、上田の表情が刺さるし、公式サイトの感想でも「ラストの上田の表情が忘れられない」「二人の関係が素敵だ」と語られている。
でも同時に、あの場面は“希望”でもある。
- 「私は本物です」は、
本物の霊能力者なのか、本物の山田奈緒子なのか、わざと二重にしてある。 - そして最後に見せるのは霊能力ではなくマジック。つまり、トリック(手品)こそが彼女の生き方だと再提示される。
- 二人は“最初の出会い”に似た形で、もう一度始められる。
結局『トリック』が最後に残したのは、「本物の霊能力があるか」より、「人は、信じたいものを信じてしまう」というどうしようもない真実と、それでも一緒に立ってしまう二人の関係なんだと思います。
TRICK/トリックの全体を通しての感想

『トリック』をシリーズ通しで見終わったとき、いちばん強く残るのは「面白かった!」だけじゃなく、笑っていたはずなのに、なぜか胸の奥が冷えるという不思議な感覚でした。
超常現象を“科学と手品”で解体していく痛快さはもちろんある。
けれどこの作品は、種明かしの瞬間に気持ちよくスッキリさせて終わるよりも、「人はなぜ信じるのか」「信じた方が楽な日もある」という弱さを毎回置いていく。だから見終わったあと、誰かの顔やセリフがじわじわ返ってくるんですよね。
しかもそれを、堤ワールド的な小ネタ、間の抜けた会話、意味のないカット、バカみたいな駄洒落や看板、やたら身体を張る展開で包みながらやる。
この「ふざけ方」と「残酷さ」の同居が、トリックを“唯一無二”にしていると思います。
「オカルト×科学」ではなく、「弱さ×構造」を描くドラマだった
表面上は、奈緒子(自称天才マジシャン)と上田(自称天才物理学者)が、霊能力者や教祖や因習に立ち向かい、トリックを暴く話です。
でも全体像で見ると、超常現象はだいたい“入り口”で、作品が本当に暴きたいのは 「本物らしさが成立してしまう仕組み」 なんですよね。
- 目撃者が多いほど、現象は強化される
- 共同体が閉じているほど、疑う側が悪になる
- 権威(教祖・村長・メディア)が付くほど、反論は封じられる
- 「救い」を欲しがる人が多いほど、嘘が優しく見える
この構造があるから、種明かしが終わっても「じゃあ全員ハッピー」とはならない。
むしろ、“トリックが暴かれた後の現実”の方が地獄だったりする。そこが『トリック』の苦さであり、妙に現実的で怖いところです。
奈緒子と上田は「相棒」じゃなくて、“厄介ごと”そのもの
このシリーズを長く支えたのは、事件のアイデアより、奈緒子と上田の関係性だと思っています。
二人は最初から綺麗なバディじゃない。金と体面と恐怖と意地で動く、どこか情けない大人同士です。
- 奈緒子は、家賃と賞金とプライドに追い回される
- 上田は、学者として偉そうなのに、肝心なところでめちゃくちゃ怖がる
- でも現場では、二人とも“逃げ切れない”ラインまで踏み込む
この「利害で始まるのに、人生だけは預け合ってしまう」感じが、シリーズが進むほど重みになります。
そして最終的に、完結編『ラストステージ』でそれが最も残酷な形で結晶化する。
奈緒子は村を救うために洞窟の奥へ進み、爆発を起こして消息を絶つ。
上田は1年後の授賞式で“本物の霊能力者”に賞金を譲ると呼びかける――つまり、理屈の男が最後にやることは「証明」じゃなくて、奈緒子に届くかもしれない“祈り”なんですよね。
この反転だけで、シリーズを追った価値があると思えるくらい、上田の「人間」が剥き出しになります。
「黒門島(縦糸)」は、物語を“コメディ”から引き剥がす刃だった
『トリック』は基本が単発ミステリーの連続なので、どこから見ても楽しめる。
それでもシリーズ全体に通る縦糸として、黒門島・カミヌーリ・里見(母)・剛三(父)の要素がじわじわ効いてきます。
この縦糸が上手いのは、最初から「壮大な血筋の物語です!」と派手にやらないところ。
普段は里見がギャグで暴れ、奈緒子は貧乏で転び、上田は偉そうに空回りする。なのに、ふとした瞬間に「封印」「鍵」「血」「儀式」みたいな単語が刺さってくる。
それで視聴者は気づくんです。「あ、これ、ただの“インチキ退治”じゃない」と。
黒門島が出てくる回は特に、空気が変わる。
笑いのテンポを保ちながら、奈緒子の“出自”が揺れることで、彼女が立っている地面そのものが不安定になる。
だからこそ、シーズン3終盤の「能力テスト」的な描写(奈緒子自身が一番驚く形で“当ててしまう”)が効く。視聴者の中にある「全部トリックだろ」という安心を、完全には許さないんです。
“本物の霊能力者”を断言しないのが、トリックの誠実さだった
『トリック』を語る上で一番面倒で、一番楽しいのがここです。結局、霊能力は本物なのか? 奈緒子は本物なのか?
作品の作りとしては、当然「トリックで説明できる」方へ寄せる。
でも完全否定もしない。なぜなら、『トリック』が描いているのは科学vsオカルトの勝ち負けじゃなく、人間が“信じてしまう”現象だからです。
そしてこの“断言しない美学”が、完結編で最悪に刺さります。
消息を絶った奈緒子が戻ってくるのに、記憶を失っている。
彼女は「私は本物です」と言い、最後に見せるのは霊能力ではなく“マジック”。
あれは、霊能力者として本物だと言っているのか、山田奈緒子として本物だと言っているのか。あるいは、賞金目当てのいつもの嘘なのか。全部成立する。だから視聴者の中で終わらない。
この終わり方って、サービス精神とは別の意味で“誠実”だと思うんです。
視聴者に答えを押しつけない。解釈の分だけ、作品が生き続ける。
だから「最終回どう思った?」で一生揉めるし、一生語れる。
映画・スペシャルで“祭り”にしながら、結局は後味を苦くするところが好き
劇場版やスペシャルは、連ドラよりも派手で、いかにも“お祭り”に振れる。
神を名乗る連中が増えたり、村の因習がどんどん濃くなったり、スケールの暴力で笑わせに来る。でも結局、最後に残るのは「人間の欲」「共同体の圧」「親子の傷」「赦されなさ」だったりする。
たとえば劇場版2の母と娘の真相。
一見すると“奇跡の話”なのに、最後に残るのは愛と罪悪感のねじれで、救いとして回収しない。
霊能力者バトルロイヤルはもっと露骨で、“霊能力”という言葉が人を殺す仕組みになっている。
ラストステージは言うまでもなく、最終的に残るのは「恋愛の成就」じゃなく「喪失の形」でした。
このシリーズ、何回も「ギャグで逃げる」チャンスがあるのに、最終的には逃げない。
だから軽い気持ちで見てたのに、いつの間にか人生の話になっている。そこが好きです。
いま見ても古びない理由は「小ネタ」より「人間」を描いているから
トリックは時代の空気(小道具・テロップ・ノリ)で笑わせる場面も多いので、正直“古さ”が見える瞬間はあります。
でもそれ以上に、人間の弱さの描写がまったく古びない。
- 「救い」が欲しい人は、いつの時代もいる
- 「権威」にすがる構造も、形を変えて残り続ける
- 「信じたい」気持ちは、論理より強い
- そして“信じた後の現実”は、意外と残酷
だからこそ、トリックは今でも刺さるし、見返すほど発見が出てくる。
1周目は事件のタネに笑って、2周目は共同体の怖さに引いて、3周目は奈緒子と上田の関係がしんどくなる――みたいに、味が変わるドラマだと思います。
最後に:トリックの“本物”は霊能力じゃなく、関係性だった
「本物の霊能力者はいるのか?」という問いは、最後まで確定しません。
でも、シリーズを通して確実に“本物”として積み上がったものがある。
それは、奈緒子が上田の隣で事件に立ち続けたこと。
上田が奈緒子の嘘も冗談も、結局は抱え続けたこと。
二人が一度も“美しい形”に収まらなかったのに、離れきれなかったこと。
だから私は、トリックの“本物”は能力ではなく、「言い切れないまま続いてしまう関係性」だったと思っています。
恋愛とも友情とも断言できない。正義の味方でもない。だけど、あの二人が並んでしまう限り、世界はちょっとだけ面白く、ちょっとだけ怖い。
完結したのに、なぜかまた1話から見返してしまう。それが『トリック』の中毒性であり、シリーズ全体を通しての最大の魅力です。

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