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もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう(もしがく)10話のネタバレ考察&感想。久部の“怪物化”が加速…蓬莱=予言の男判明で物語は最終章へ

もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう(もしがく)10話のネタバレ考察&感想。久部の“怪物化”が加速…蓬莱=予言の男判明で物語は最終章へ

10話を見終えた瞬間、「あ、もしがくは“成り上がり物語”ではなく“自己崩壊の物語”なんだ」と腹の底から理解しました。

久部がトニーのテープを武器に交渉を制し、大門夫妻を追い出し、WS劇場を自分の色に染めていく。その成功の裏側で、蓬莱の正体=“男から生まれた男”が明かされ、おばばの予言が一気に現実味を帯びる。

六郎とモネの祝福ムードとは対照的に、久部は確実に“怪物の道”へ足を踏み込んでいく——。

最終回直前、物語はどんな結末へ向かうのか。ここでは、10話の伏線とテーマを深掘りしながら徹底考察していきます。

目次

もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう(もしがく)10話のあらすじ&ネタバレ

もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう(もしがく)10話のあらすじ&ネタバレ

10話「さらば八分坂」は、いよいよ最終回直前の“最終章のクライマックス”として位置づけられる回でした。

第9話ラストで若き蜷川幸雄が姿を現し、久部の人生は一気に加速。その勢いのまま久部はWS劇場の実権を握り、大門夫妻を追い出し、さらにライバル劇団・黒崎組のハムレットと真っ向勝負する道を選びます

一方、おばばの新たな予言「男から生まれた男に気をつけろ」が突きつけられ、その正体が蓬莱省吾であることも判明。久部の運命はますます不穏な方向へと転がっていきます。

ここからは、10話の物語を時系列で追いながら、ポイントごとに整理していきます。

蜷川幸雄の言葉で、久部のスイッチが完全に入る

物語は9話ラストからの続きでスタート。

客席に突然現れたのは、若き日の蜷川幸雄。舞台を観終えた蜷川は久部に声をかけ、彼のこれまでのがむしゃらな努力をしっかり認めつつ、「今は全力で突き進みなさい」と背中を押すようなニュアンスの言葉を贈ります。

久部は、長年憧れてきたカリスマ演出家から直接エールを受け取ったことで、自分が“選ばれた側”であるという感覚をより強固にしていきます。

短いシーンながら、久部の中で何かがカチッと切り替わる“スイッチの瞬間”として機能し、10話全体のトーンを決定づける重要な導入になっています。

トニーのテープを武器に、ジェシーとの交渉へ

蜷川との対面のあと、久部と大門はWS劇場オーナー・ジェシー才賀のもとへ向かいます。

ここで鍵を握るのが、9話ラストでトニーが託した“カセットテープ”。

このテープには、トニーがジェシーの違法な闇取引に関与させられていた経緯が録音されており、ジェシーにとっては致命的な“証拠”

久部はこれを交渉材料にし、これまで法外だった上納金の見直しを求めます。

交渉の結果、ジェシーへの支払いは週30万円にまで大幅減額

WS劇場はようやく現実的な経営が見えてきました。

このシーンは、久部が“純粋な演劇青年”から“したたかなプロデューサー”へ変貌しつつある姿を象徴しています。

トニーの犠牲の上に勝ち取った成果であり、「トニーの残したものを最大限生かす」という美談にも見える一方で、“他人の不幸をてこにして成り上がる久部”という影も同時に描かれています。

WS劇場に祝福ムード、六郎がモネに公開プロポーズ

劇場では久部の交渉成功も相まって、一気に祝福ムードへ。
その最中、大きなイベントが起こります。

元警官で今は役者一本の六郎が、舞台上からモネへ公開プロポーズ。

かつて風営法絡みで問題を抱えていた2人が、今度は劇場仲間に祝福されながら堂々と愛を誓い合うシーンになっています。

続く打ち上げでも、六郎は皆の前でモネとの婚約を報告。

WS劇場という“居場所”を得た六郎が、恋愛面でも一歩踏み出す姿は、この作品の「報われない人間たちにも、小さな幸せが訪れる」というテーマを体現していました。

しかし、この“幸せな空気”があるからこそ、後半の展開との落差がより痛烈に感じられる構成にもなっています。

久部、大門夫妻を追い詰める決意を固める

六郎たちが幸せを掴みつつある裏で、久部の心には冷たい決意が芽生えていきます。

おばばの占いによれば、今の久部は運気上昇中。

そこにリカが「大門さんを“勇退”させて、久部が支配人になればいい」と誘惑めいた囁きを投げかけます。

この言葉が、久部の内側に潜んでいた野心を一気に刺激。

久部は「劇団のため」「未来のため」と自分に言い聞かせながら、大門夫妻の“退場”を本気で画策し始めます

売上金問題を盾に、大門夫妻を追放

久部はまず、大門の金の扱いに目をつけます。

これまでも大門夫妻が売上金を一部“自分たちのもの”にしていた可能性が示唆されていましたが、10話では久部がその疑いを皆の前で直接突きつける展開へ。

久部の追及を受け、大門は妻の挙動をみて観念したように土下座。フレも動揺し、その場の空気は張りつめていきます。

そして久部は、“久部らしいやり方”で追放劇を完遂します。

表向きには「大門さんは勇退した」と美しい言葉で締め、劇団メンバーの心情にも一定の配慮を見せつつ、実質的に彼らを排除する。

フレは久部に向かって「疫病神」と吐き捨て、強い怒りと悔しさをにじませて劇場を去っていきます。

これでWS劇場の支配権は完全に久部のものに。

久部を拾い、居場所を与えた大門夫妻を、自らの手で追い出したという構図の重さが視聴者に深く残るシーンでした。

おばばが告げる予言「男から生まれた男に気をつけろ」

大門夫妻を追い出し、交渉でも勝利した久部は、まさに順風満帆。そんな彼の前に、おばばが再び現れます。

久部の表情を見たおばばは、

「いいねぇ、悪い顔になってきたよ」

と意味深に笑い、さらに新たな警告を告げます。

「お前の足を引っ張るのは、男から生まれた男だ」

この謎めいた一言に、視聴者は一気にざわつきます。

タロットを軸に未来を暗示してきた“予言モチーフ”が、ここで決定的に不穏な形をとって物語に絡み始めました。

「男から生まれた男」の正体は蓬莱省吾だった

同じ頃、蓬莱は樹里へ自分の身の上を語り始めます。

「僕の母親、“乙姫の乙”に“子”と書いて乙子って言うんです。だから僕、“オトコから生まれてきた”んですよ」

樹里は酔って聞き流してしまいますが、視聴者は即座におばばの予言を連想。
“男から生まれた男=乙子(おとこ)から生まれた蓬莱” とつながる仕掛けです。

つまり久部の足を引っ張る存在は、これまで友人であり語り部であり協力者でもあった蓬莱だった。
視聴者の間では、

  • 蓬莱ラスボス説
  • 蓬莱=久部に最後の「落とし前」をつける運命の人物

など、物語の核心に迫る考察が一気に加速しました。

黒崎劇団で、トロが“ハムレット”の主役に

終盤、久部は黒崎劇団を訪問。
そこで目にしたのは、黒崎組の新作『ハムレット』で主役を演じるトロの姿でした。

かつてリカの元情夫であり、久部と激しくぶつかってきたトロが、“敵陣営の看板役者”として堂々とハムレットを演じている。

久部は衝撃を受ける一方で、強烈な闘志を燃やします。

「俺には劇場がある。最高のハムレットを見せてやる」

WS劇場の久部版ハムレット vs 黒崎劇団のトロ版ハムレット。

小劇団の意地を懸けた“ハムレット対決”が、最終回の中心軸になることがここで明らかになります。

10話は、久部の成功と闇堕ち、蓬莱の正体判明、ハムレット対決の火蓋など、
最終回へ向けた“主要カード”を一気にテーブルに並べた回 と言えます。

もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう(もしがく)10話の感想&考察

もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう(もしがく)10話の感想&考察

10話まで来て、いよいよ「もしがく」という作品が目指している着地点が見えてきました。

個人的には、“久部が夢をつかむ話”というより、“久部が自分の中の怪物と向き合う話”として見ると、10話は驚くほど腑に落ちる構成だったと思います。

ここでは、印象に残ったポイントごとに感想と考察を整理していきます。

久部が完全に“マクベスの道”へ踏み込んだ回

公式やインタビューで語られているように、久部は「最初はハムレット、途中でリチャード三世、最後はマクベスになる」という設計で作られたキャラクターです。


10話の久部は、まさにその“マクベス化”が一気に加速した回
でした。

  • トニーのテープを交渉材料にし、ジェシーと真っ向勝負する
  • 「劇場のため」という名目で、大門夫妻を事実上追放する
  • “勇退”という美しい言葉で、追放劇をソフトに演出する

これらはすべて、“正しさ”と“エゴ”が入り混じった行動。

ジェシーとの不平等契約を改めさせ、大門夫妻の甘さを正したことは、劇場運営としては正しい。ただ、その過程で久部が採用しているやり方は、明らかに「恩義」や「情」を切り捨てた冷徹な判断になってきています。

特に、大門とフレが土下座する場面で、久部が一歩も動揺せず“追放の段取り”を整えていく姿は、
「この人、最初は神社で右往左往していた青年だったよな……?」
と視聴者が思い出すほどの劇的変化でした。

おばばの「悪い顔になってきた」という台詞も含め、10話は明確に“久部の顔つきが変わる回”。
久部が「怪物」へ踏み込んだ瞬間を静かに描き出しています。

「男から生まれた男」=蓬莱省吾という伏線回収の見事さ

おばばの予言「男から生まれた男に気をつけろ」。

この抽象的なフレーズが、蓬莱の口から母の名前“乙子(おとこ)”が語られることで一気に回収されます。

まさに三谷脚本らしい回収。

  • 不気味で記憶に残る予言
  • その直後、何気ない日常会話の中でさらっと“答え”が提示される
  • 視聴者だけが「あ、そういうことか!」と理解する構造

蓬莱はこれまで“物語の外側にいる男”として描かれ、久部に仕事を運んだり、人生を俯瞰するような語り口を持った存在でした。

その蓬莱が、久部の運気を下げる“ラスボス候補”として浮上するのは、物語構造的にも非常においしい。

しかも、蓬莱自身は悪事を働いているわけではなく、むしろ誠実に仕事をしている。
だからこそ、

  • 「ラスボス=悪役」という単純構造にはならない
  • 久部が“勝手にライバル視し、勝手に敵にしてしまう”可能性が高い

この“敵は自分の心の中にいる”構造は、悲劇の王道。
ハムレットやマクベスの文脈と完全に重なり、ラストへの期待値が一気に高まりました。

六郎とモネのプロポーズが描く、「報われる人もいる世界」

10話で唯一まっすぐに幸せだったのが、六郎の公開プロポーズ。

六郎は、当初は要領の悪い警官として登場しましたが、劇場に馴染み、役者としての道を見つけ、そしてモネとの関係を誠実に育ててきた人物。

このラインは、もしがくの中でも珍しく“順調に階段を登る人間”として描かれていて、今回のプロポーズはその象徴でした。

ただ、六郎が幸せをつかむほど、
久部・リカ・樹里・蓬莱ら主要キャラが抱える“行き場のなさ”が強調されるのも事実。

三谷作品に特有の「人生は必ずしも公平ではない」というほろ苦さが、この対比でより強く浮かび上がります。

大門夫妻退場の切なさと、WS劇場の“空気”の変化

大門とフレの退場シーンは、10話で最も胸に刺さる場面でした。

たしかに2人は完璧ではなく、金の管理に甘い部分もあった。

それでもWS劇場という箱を守り続け、久部や六郎たちが夢を見る「居場所」を作ってきたのは間違いなく彼ら。

そんな2人が、“勇退”という名目で静かに追放されていく。

フレの「疫病神!」という叫びは、久部に向けられた言葉でありながら、WS劇場全体の“空気の変質”を象徴する呪いのようにも聞こえました。

久部が成功を手に入れていく一方で、劇場から何か大切な“ぬくもり”が失われていく——
その感覚が、最終回のタイトル「さらば八分坂」とも美しく響き合っています。

久部 vs トロ、「ハムレット」をめぐる二重構造の対決

黒崎劇団でトロがハムレットを演じているのを見た久部が、「こっちも最高のハムレットを見せてやる」と闘志を燃やす場面

表の対決

  • 久部版ハムレット vs トロ版ハムレット(劇団同士の勝負)

裏の対決

  • 久部とトロの“リカをめぐる感情”
  • 久部と蓬莱の“創作者としてのプライド”

“作品を巡る対決”と“人間の感情を巡る対決”が重なることで、ハムレット対決は単なる芝居合戦以上の意味を帯びてきます。

さらに、ハムレット自身が“迷いと向き合う少年”である以上、久部がどんなハムレット像を作るかは、久部という人間の“最終形”を映す鏡にもなる。

最終回でのハムレット本番は、おそらくこのドラマの“答え”そのものになるはずです。

10話までで見えてきたラストへの伏線

●おばばの予言ライン

  • 愚者の逆位置
  • 世界の逆位置
  • 男から生まれた男(=蓬莱)
    → 久部の成功は“未完成”、その先には“破綻”があるという暗示。

●久部の“マクベス化”

  • 恩ある人すら切り捨て、野心のために道を選ぶようになった
  • トニーや六郎など“善性の象徴”を踏み台にしている構図

●ハムレット対決 & 蓬莱ラスボス化

  • 表のラスボス=トロ
  • 裏のラスボス=蓬莱(予言・語り部・“男から生まれた男”)

●樹里という“観客代理”の存在

  • 最終回で、彼女が何を見るのか=久部の結末とリンクする可能性大。

10話は派手な事件は起きないものの、
「久部はどこへ向かっているのか」
「誰が彼を止める(あるいは見届ける)のか」
という物語の核心が、台詞と演出の両方で明確に提示された回でした。

“静かな転落の始まり”とも言える10話。

最終回で、久部がマクベス的な破滅へ向かうのか、それとも“楽屋=自分の居場所”を見つけるのか。

長いタイトルがどのような意味で回収されるのか——いまから期待と不安を抱えたまま、最終回を待つしかありません。

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