『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』(シーズン5)は、情報が武器となる時代を舞台にした“新章の開幕”だ。
総理直轄の新組織DICT(情報犯罪特命対策室)が、SNS・闇バイト・匿名グループ“トクリュウ”といった現代的な犯罪構造に挑む。
主人公・二宮奈美(沢口靖子)は、テクノロジー中心の捜査チームの中で、あえて“人と向き合う”ことを選ぶ刑事。アナログとデジタル、感情と情報が交差するその姿勢は、シリーズの原点「人間の正義」を呼び戻す。
この記事では、シーズン5の結末予想、原作の有無、そして前作との繋がり(桜木泉・山内徹・深沢ユウキ)を時系列で解説。15年続く絶対零度ユニバースの全体像を、論理的に読み解いていく。
絶対零度(シーズン5)は他のシリーズとの関係はある?

結論から先に…あります。しかも“強い連続性”が物語の燃料になっている。
今作は『絶対零度』15年の歴史を引き継ぐ第5シリーズで、舞台は「情報犯罪特命対策室(DICT)」へ刷新。
一方で人物とテーマの“橋”が複数本かけられ、S1〜4の文法を現在形に接続しているのが最大の魅力だ。イントロでは、S1-2=桜木泉(上戸彩)期、S3-4=ミハン(井沢範人/沢村一樹)期の系譜を明示し、S5では“真犯人の正体が見えない情報犯罪”に挑むと宣言。
つまり「新章」でありながら「独立」ではなく、“連続する世界の次の章”として構築されている。
時系列とテーマの継承:S1-2(未解決/潜入)→S3-4(ミハン)→S5(DICT)
S1は“未解決事件”、S2は“潜入捜査”、S3-4は“未然犯罪(ミハン)”と、シリーズは時代ごとに犯罪の姿を反映してきた。
S5では情報犯罪を取り扱い、匿名・流動型犯罪(通称トクリュウ)やサイバーテロまで、“顔の見えない敵”との戦いに焦点を当てる。ここにシリーズの必然がある。「こう変化した社会だから、こうテーマを変える」というロジックが明確だからこそ、長寿シリーズでも“続編疲れ”を感じさせない。
キャラクターの橋渡し①:山内徹(横山裕)が“ミハン”の記憶を運ぶ
ミハン時代のキーパーソン・山内徹がDICTメンバーとして5年ぶりに帰還。
元ミハン→捜査一課→DICTというキャリアの縦軸が、そのまま“世界は続いている”証拠となっている。山内の冷静な判断力と捜査一課ネットワークは、情報捜査主体のDICTに現場の血を通わせるブリッジの役割を果たす。「ミハンの先読み」×「DICTの情報解析」という“かけ算”の構造を、1人の復帰で自然に成立させた点が巧みだ。
キャラクターの橋渡し②:深沢ユウキ(丸山智己)が14年ぶりに“今”へ帰還
S1-2で“頭脳”として活躍した深沢ユウキが、捜査一課の管理官として第1話に登場。
初期作の記憶と新章を現在形で接続する重要なピースである。
被害者がSEと判明した際にDICTの山内を呼び出す――という自然な導線が、警察組織の横のつながりを感じさせ、ファンに“世界の連続性”を強く印象づけた。「こう配置するから、こう世界がつながる」というシリーズ設計の妙が光る。
“桜木泉”という名前の鳴り――旧主人公の“気配”を繋ぎ続ける
第1話の終盤、山内のスマホに「桜木泉」からの着信が入る。
本人は気づかないが、名指しの一打でS1-2との地続きが示された。過剰に登場させず、名前だけを響かせる“余白の演出”が絶妙だ。出過ぎず、記憶を呼び起こす――「こう一瞬だけ響かせるから、こう連続性が増幅する」という設計が効果的に機能している。
新組織DICTとは? “ミハン”との違いと補完関係
ミハンが“未来の犯罪を予測して先手を打つ装置”だったのに対し、DICTは“情報犯罪の現在進行形を追う機関”。匿名化した指示系統や流動化した実行役など、逮捕が末端に偏る現実を前提としている。
イントロでは「やがて国家存亡を脅かす危機」とまで射程を拡げ、「情報=武器化」した時代相に対して、DICTは解析(清水)×機動(南方・掛川)×現場会話(奈美)の三位一体で挑む構造を描く。現代社会のサイバー犯罪への回答として、シリーズの中でも最もリアルな布陣となっている。
【全話ネタバレ】絶対零度(シーズン5)のあらすじ&感想

新章のキーワードは「匿名化×流動化」。総理直轄の新組織DICT(情報犯罪特命対策室)が、“顔の見えない真犯人”とどう対峙するのか。『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』シーズン5は、情報が凶器となる時代を背景に、サイバー空間と現実世界の狭間で起こる新たな脅威を描く。
シリーズ15年の歴史と地続きで始まった本作では、生活安全課上がりの刑事・二宮奈美(沢口靖子)が、アナログな“人に向き合う捜査”とDICTの最新解析技術を組み合わせ、見えない敵の輪郭を浮かび上がらせていく。
1話:情報は凶器にな…DICT始動と“トクリュウ”の輪郭
まずは要点の整理。半年前、総理・桐谷杏子(板谷由夏)と官房副長官・佐生新次郎(安田顕)の直轄でDICTが発足。しかし成果は乏しく、メディア対応に追われている……という“現在地”から物語は動き出す。主演の二宮奈美(沢口靖子)は、生活安全課上がりの最年長刑事。ハイテク色の強いチームの中で「現場に出て、人と向き合う」ことにこだわるタイプだ。
都内で“情報”を悪用した強盗が連続発生。
田辺智代(馬場園梓)が複数事件の共通点から、匿名・流動型犯罪グループ“トクリュウ”の関与を示唆する。清水紗枝(黒島結菜)がデータから実行役を特定し、南方睦郎(一ノ瀬颯)と掛川啓(金田哲)が逮捕に至るが、末端止まりで“上”には届かない。
この構図は、警察白書が定義する「匿名性と流動性を特徴とする集団」そのものだ。実行犯はSNSで都度募集され、逮捕されても入れ替わるため、中核は常に見えない。ドラマはこの社会構造を的確に捉えている。
奈美は室長・早見浩(松角洋平)に直訴して現場へ。同行するのは、旧作ミハン班から“越境参加”した山内徹(横山裕)。現場周辺で聞き込みを続ける奈美は、近所の老婦人・真田富貴子(梅沢昌代)と世間話を重ねるうちに、「息子」を名乗る不審電話の記憶を拾い上げる。後
日、富貴子のもとに“警察”を装う電話がかかり、指定の待ち合わせ場所に現れたのは一人の少年だった。ようやく“受け子”に接触できるが、やはり“指示役”までは遠い。アナログの会話で、サイバー解析がこぼす「人の気配」を拾う設計が実に巧みだ。
第1話の“顔”を作ったのは、奈美のキャラクター造形だ。街も階段も全力疾走し、取り押さえでは“ワンパン”まで飛び出す。加えて、回復した富貴子を見舞う病室でVaundy『怪獣の花唄』を歌うシーンの落差も印象的。走る・戦う・寄り添うという三拍子が、堅い題材に温度差を生み出している。SNSでは「最初からずっと走ってる」「奈美さん激つよ」「まさかの『怪獣の花唄』」といった声が多く、キャラクターの新鮮さが際立った。
ゲストは高山蓮(奥智哉)。「楽して稼げる」という勧誘から闇バイトに足を踏み入れ、身分証や家族情報を握られて抜け出せなくなる――被害者性と加害者性が同居する若者像を体現している。彼を“ただの犯罪者”として扱わない奈美の視線に、シリーズが貫く倫理軸が見える。現代的な社会病理を人間ドラマとして描くバランスが絶妙だ。
シリーズ的な“仕掛け”も秀逸。深沢ユウキ(丸山智己)が14年ぶりに帰還し、被害者がSEであることを受けてDICTの山内を呼び出す場面が用意された。
世界が連続していると信じられるだけで、視聴体験は格段に豊かになる。さらに終盤では、“桜木泉(上戸彩)”から山内のスマホに着信するという“音のサプライズ”が挿入される。旧主役の影を名前だけで立ち上げ、今後の連動を仄めかす――過去を消費せず、現在を拡張する参照の仕方が実に見事だ。
音楽面も抜かりない。主題歌は十明の「GRAY」。初回放送日に先行配信が告知され、リリックビデオも公開された。DICTの冷ややかなオペ室に、KOHTA YAMAMOTOによる劇伴が硬質な緊張と有機的な温もりを往復させる。“つながりの過多”が人を惑わせるというテーマに、言葉と音が見事にシンクロしていた。
最後に、第1話がなぜ面白かったかを論理的に整理したい。
(1)社会実在のモデル=トクリュウを事実ベースで置く。
(2)アナログ(奈美)×サイバー(紗枝)×現場経験(山内)の三項関係を提示。
(3)成果は末端止まりという“解けない方程式”を宿題として残す。
この構成により、視聴者は「上(真犯人)に触れるまでのプロセス」を追う動機を持続できる。そこに“深沢”や“泉”といったシリーズの遺伝子を添えることで、絶対零度ユニバースとしての期待値を高めている。制度(官邸直轄)×現場(DICT)×市民(富貴子・蓮)の三層を一話で噛み合わせた設計が、シリーズ新章の盤石さを証明した。

2話:ロマンス詐欺は“恋とお金”の二重回路――「宛先→手順→依存」で解体する回
氷山の一角――DICTに下された“1270億円”の警告
第2話は、内閣官房副長官・佐生(安田顕)の通達から始まる。「今回の検挙は氷山の一角。被害総額は昨年だけで1270億円以上。中枢に迫れ」――国家規模の脅威を掲げ、DICT(デジタル犯罪対策センター)の手順を加速させる号砲だ。
早見室長の指示で二宮奈美(沢口靖子)らは被害者・芝田(星田英利)を聴取。“米軍医エマ”を名乗る相手にマッチングアプリ経由で送金していた経緯を再構成する。資金の流れは海外へ抜けているが、途中に日本人名義の中継口座が存在していることが判明する。
名義人・橋本咲希――宛先から“逆読み”でほどくDICTの論理
中継口座の名義人は橋本咲希(桜井玲香)。奈美と掛川(金田哲)が勤務先のスーパーで接触すると、咲希は「心当たりがない」と否定。
しかし奈美はわずかな表情の変化を見逃さず、店長と同僚・藤井遥香(菜葉菜)から聞き込みを重ねる。咲希が休憩中に“恋人”と頻繁に連絡を取っていた事実が浮かび上がる。DICTの勝ち筋はここだ――宛先(口座名義)→手順(連絡と送金の導線)という構築を、逆順で解体していく。
“恋人”は隣にいた――加害と被害が同居する二重回路
やがて明らかになるのは、咲希が“韓国在住”を名乗る恋人に口座情報を渡していた相手こそ、同僚の藤井だったという事実。
藤井は“架空の恋人”を演じ、オンライン上で咲希の感情と送金手続きを同時に操っていた。咲希は「恋人を信じたい」気持ちと「友人を守りたい」気持ちの間で揺れ、事件は感情の衝突へと発展する。「ニセモノでも、恋は恋だった」――その錯綜こそがロマンス詐欺の核心だ。
DICTの武器は“AI”ではなく“人の観察”
この回で描かれるDICTは、技術ではなく“人の手触り”で勝つ。奈美はAI解析よりも、聞き込みや照合、会話の癖の分析といった地道な方法で構図を浮かび上がらせる。
初回の面談で拾った咲希の一拍の遅れ、同僚の証言の重なり、メッセージの言葉遣いの一致――その細部を束ねて、「誰が何を知り、いつどう動いたか」を時間軸で確定していく。
ロマンス詐欺は“恋”と“お金”の二重回路で成立する犯罪。DICTは宛先(誰に渡したか)→手順(どう渡したか)→依存(なぜ渡したか)という三段階で構造を解体する。
カナと“スコット”――個人を揺らすもう一つの詐欺線
一方、連ドラ全体を貫く別軸も動き始める。総理・桐谷杏子(板谷由夏)の娘・カナ(白本彩奈)の前に、“スコット”と名乗る男(樋口幸平)が現れる。彼はSNS上の甘い言葉でカナの心を揺らし、危うい“仕事”へ誘う。
これはロマンス詐欺の個人版――感情をハックするソーシャル・エンジニアリングだ。第2話は“個”の勧誘(カナ×スコット)と“集団型”詐欺(芝田/咲希×闇バイト)を並走させ、DICTが対峙する“敵の地図”を観客に示す構成となっている。
“恋の真実”よりも線引きの論理――DICTの静かな勝利
本話の肝は事件の結末ではなく、線引きのロジックにある。咲希は“恋人を信じる”ことと“友人を守る”ことの間で足を取られ、藤井は“ニセモノを演じ続ける”ことに疲れ、逃げ場を失う。
奈美は「あなたは何を誰に渡したのか」を事実の列として整理し、誤配――つまり“間違った相手に渡してしまった愛と金”を正す。DICTの地味な言葉こそ、ハイテク犯罪より強い武器になる瞬間がここにある。
構造の伏線――末端で終わらせないための布石
国家サイドの不穏要素(官邸へのサイバー脅威、SE連続殺人)は、「末端しか捕まらない」というシリーズの命題を補強する装置。ロマンス詐欺でも中枢への決定打はまだ見えない。
次の一手は、“合意書”や“名目”に偽装されたマネーフローを時間のズレで剥ぐことだろう。第3話(経営統合詐欺)に向けて、宛先→手順→資金流のプロセスをDICTが“制度の言葉”に翻訳できるかが問われる。
総括――“恋と金”を人の温度でほどくDICTの手法
第2話は、ロマンス詐欺を“恋の悲劇”で終わらせず、宛先・手順・依存の三点で犯罪の構造を解きほぐした。テクノロジーではなく人の観察で、虚偽の関係と送金のレールを外す。スコットの登場で、個人の動機をハックする新たな線も走り始めた。末端で終わらせないために、DICTが詐欺の構造をどう言語化するか――第2話はその“正しい入口”を作った回だった。
2話についてはこちら↓

3話:悪の連鎖を断て!カリスマ教祖の罠
承継支援の仮面を被った“資金抜き取り”の構図
物語は、町工場「ミズハラ製作所」の社長・水原明人(小林三十朗)が経営不振から税理士・上村元也(松岡広大)に救いを求める場面から始まる。
上村は外部資本の導入を勧め、株式会社「ネッブス」社長・奥田真斗(町田悠宇)との“経営統合”を仲介する。
しかし、口座資金は数日で丸ごと消え、負債だけが残される。水原は絶望の末、自ら命を絶つ――承継支援の仮面を被った資金抜き取りという犯行の“型”が、冒頭で明示される。
DICT始動――宗教法人「ルミナス会」とのつながり
官房副長官・佐生新次郎(安田顕)は、同様の被害が複数発生していること、そして裏に宗教法人「ルミナス会」の教祖・黒澤道文(今井清隆)と、その経済圏「黒澤ホールディングス」の存在があることに着目する。
DICT室長・早見浩(松角洋平)のもと、二宮奈美(沢口靖子)と南方睦郎(一ノ瀬颯)は被害店舗の和菓子店を訪問。
ここでも奥田の会社との統合が確認され、紹介者は上村だった。
〈入口=税理士/媒介=統合契約/出口=資金吸い上げ〉というフローが浮かび上がる。
南方と上村――友として、捜査官として
南方にとって事件は他人事ではない。上村は大学時代の同級生で、真面目で努力家だった。
南方は「気づかないはずがない」と直談判するが、確証を掴めない。
奈美は上村の身なりや返済遅延から経済的逼迫を見抜き、掛川の助言を受けた南方は、自分が過去の相談を放置したことを思い出す。
再訪の末に友へ謝罪し、上村は“承継詐欺”への加担を認め、「黒澤ホールディングス」へ金が流れる証拠データの提出を決意する。“線”を切り替えようとする若い加害協力者の“翻意”が、折り返し点として置かれる。
口封じの刃――失われた証拠と理不尽な現実
だが、その一歩は無惨に断ち切られる。
上村は警察に向かう途上で、「ミズハラ製作所」社長の息子に背後から刺され、命を落とす。携えていた証拠データも何者かに持ち去られる。
個人の復讐と組織的犯罪の合理が一点で重なり、DICTが掴みかけた“本丸への導線”は消失。ここでドラマは、「正しい手順(保護→供述→立件)」が現実の暴発に追いつかない非対称性を強く刻む。
政治の壁――官邸の“切り札”と凍結された捜査
さらに追い打ちをかけるように、官邸からDICTへ捜査中止の指令が下る。佐生は「政治には切り札が要る」と言い切り、桐谷総理(板谷由夏)を説得。
現場が正当に積み上げた糸口は、“上”の一声で凍結される。一方で、縦糸の布石として総理の娘・カナ(白本彩奈)がSNSで知り合った男と海外へ向かおうとする描写も挿入され、匿名ネットワークと越境資金というテーマが次話へ橋渡しされる。
余韻と仕掛け――小さな再会が残す現実の温度
終盤では、40年以上続いた団子屋が詐欺被害で閉店。
シャッター前で奈美が立ち尽くす傍らに、福本莉子がサプライズで“通行人”として一瞬登場する。沢口靖子×福本莉子という「東宝シンデレラ」受賞者同士の共演を仕込むことで、物語の余韻を現実の話題性へ接続する演出も光った。
“悪のトライアングル”とDICTの課題
総じて第3話の肝は、〈上村=入口の信頼〉〈奥田=契約の正当性〉〈黒澤=出口の語り〉という“悪のトライアングル”が、制度の影でがっちり噛み合ってしまう構図にある。
DICT側も“横串の知見”と“保全の段取り”を同時に強化しなければ勝てない――そうした課題が、「こうだからこう」という論理の流れで明確に提示される。
南方にとっては、論理の人から当事者の人へと一歩踏み出す“成長回”であり、その代償が痛烈に刻まれた回でもあった。
3話についてのネタバレ&感想はこちら↓

4話:NPO職員刺殺と寄付金の闇――“手紙”が監視を破る
第4話は、国際NPO法人「ヒューマン・フューチャー・ブリッジ(HFB)」職員・与田健二の刺殺事件から始まる。
凶器はサバイバルナイフで、山内徹が追っていたシステムエンジニア2名の殺害と手口・凶器が一致。
バラバラだった事件が“同一犯による連続殺人”として一線に結ばれ、DICTの捜査は個人犯罪から組織的犯行へとフェーズアップする。山内は凶器の購入経路を、奈美は現場周辺とNPO内部の動きをそれぞれ担当し、二方向から核心に迫る。
HFBの内部捜査と“経理担当”の動揺
奈美と掛川啓は、HFBの理事・杉浦吉子を聴取するが、同僚への聞き取りを頑なに拒まれる。一方で経理担当・宮崎絵里子のわずかな挙動から、奈美は「話せない事情」を嗅ぎ取る。
同じ頃、DICTの清水紗枝が寄付金の流れを解析し、宗教法人「黒澤ホールディングス」から多額の寄付があった事実を掴む。
その背後には、かつてDICTがマークしていた教祖・黒澤道文の存在。人道支援を装った資金洗浄の可能性が急浮上し、NPOと宗教資本の癒着が一気に現実味を帯びる。
デジタルを逆手に取る“手紙”という戦術
職員端末が監視アプリで管理されていると見た奈美は、電子通信を封じられた相手に“手紙”を選ぶ。
郵便ならば監視の網をくぐり抜けられる――奈美の直筆は、絵里子の恐怖と良心の間に揺れる心を静かに突いた。いったんは手紙を破棄した絵里子だったが、与田の死を報じるニュースをきっかけに決意を固める。
息子を守るため、そして真実から逃げないために、彼女は協力を決断する。
手書きの“裏台帳”とマネロンの構図
絵里子はHFBの入出金に不自然な動きを感じるたび、手書きで照合メモを残していた。
改ざんされた電子台帳には記録されない“裏の証拠”だ。
彼女がそのコピーを郵送し、DICTが寄付金の経路と照らし合わせた結果、理事・杉浦の周辺が“正規の寄付”を装って犯罪資金を洗浄していた構図が明らかになる。
実行役の逮捕とスマホの押収を経て、ネットワークの指令系統が次々と露出。
NPOの刺殺事件と資金洗浄が、一枚の地図としてつながった瞬間だった。
二つの突破点――“手口の共通化”と“アナログの逆襲”
今回の捜査には、二つの転換点がある。
ひとつは、与田殺害とSE連続刺殺の手口一致が、事件を個人犯罪から“組織的処理”へ押し上げたこと。
もうひとつは、奈美の“手紙作戦”だ。
テクノロジーに支配された社会で、アナログの手段こそが最大の盲点となる。DICTがハイテク組織でありながら、人間の想像力で突破口を開く――そのバランスが、本作のリアリティと温度を支えている。
ラスト――奈美を狙う“監視の逆流”
事件は一応の決着を見るが、最後に奈美の背後を不審車両が尾行。
予告では誘拐・監禁が示唆され、サイバー攻撃や停電など新たな脅威も登場する。
第4話で掴んだスマホ情報が、敵側の“逆利用”に転じているのか。DICTと黒澤ホールディングスの正面衝突が、いよいよ始まる。
第4話は、犯行手口の一致で“点”を結び、手紙というアナログの力で“網”を破る。
理詰めの捜査と人間の勇気が、情報犯罪という無機質な壁に風穴を開けた。次回、奈美が誘拐されるその瞬間、DICTの覚悟が試される。
4話のネタバレ&あらすじについて↓

5話:停電×拉致──“情報の目”を潰されても、奈美は言葉と観察で反撃する
冒頭の回想は11年前。
街頭演説中の都議・桐谷杏子(板谷由夏)を、警備中の二宮奈美(沢口靖子)が救出する。
感謝の言葉に対し、奈美が返した“厳しい一言”が、のちの二人の人生を変える伏線として描かれる。ここで「個人史」と「国家案件」が初めて交差する線が引かれる。
一斉停電と犯行声明──情報と物理、二重の“目潰し”
現在、都内一帯で早朝に一斉停電が発生。
DICTは発電所へのサイバー攻撃を検知するが、発信元は不明。
同時に奈美の不在が判明し、SNSには拉致の犯行声明が投稿される。
「日没までに救出できなければ命の保証はない」。
拡散された拘束写真は加工されており、手掛かりは乏しい。
停電によって防犯カメラ映像も途切れ、犯人は情報と物理の両面から“監視の目”を潰してきた。
DICTはサイバー×拉致の複合事件と判断し、山内徹(横山裕)と南方睦郎(一ノ瀬颯)が捜索に動き出す。
奈美の監禁──観察で相手の心を読む
監禁された奈美の前に現れたのは、素顔をさらしながら名乗らない男(和田聰宏)。
飴玉を差し出し、「ずっと見ていた」と囁くその距離感が不気味だ。
しかし奈美は怯まず、会話の間合い、手当ての手順、言葉の癖から男の背景を分析。
“妹の最期”という心の傷を逆手に取り、場所を移動させる作戦を立てる。地下から屋外へ自ら導線を作り出すこの駆け引きは、奈美の知性と胆力を同時に描く見せ場だ。
拘束下でも“言葉と観察”で主導権を奪う、奈美らしい反撃の瞬間である。
救出と新たな影──DICTを狙う“見えない組織”
DICTの追跡は、わずかな映像と移動履歴から導線を割り出す。
山内が現場に到達し、奈美を救出。犯人は確保されるが、その背後には“無名の組織”の影が残る。
現場にはDICTメンバーの顔写真と経歴が貼られた監視部屋が発見され、狙いが奈美という個人ではなく、DICTそのものだったことが明らかになる。
入院した奈美は、内閣官房副長官・佐生新次郎(安田顕)に「近いうちに大事件が来る」と警鐘を鳴らす。
一方、杏子の娘・カナ(白本彩奈)は特殊詐欺グループの“かけ子”拠点に巻き込まれ、国家の裏側と日常の搾取が一本の線でつながっていく。
ロジックで要点整理
原因:犯人は停電による監視遮断とSNS声明による世論操作で、DICTの“目”と“時間”を奪った。
作用:DICTはサイバーと実地の両輪で追撃し、奈美は言葉と観察で犯人を屋外に誘導する。
結果:個人の救出には成功するが、監視部屋と無名の組織の存在により、より大きな敵の輪郭が立ち上がる。
第5話の面白さは、犯人当てではなく、“情報が武器化された時代にどう戦うか”というテーマ設定にある。
“目を潰されても勝つ”ために必要なのは、
①体制の先回り(情報の分散と即応)、②現場の観察力(奈美)、③政治との連携(佐生)。
この三点を軸に、ドラマはDICTという組織の存在意義を再定義した。
また、奈美が拘束・暴行・絞扼までを“受け切る”演技を見せたことで、彼女が単なる“完璧な刑事”ではなく、痛みを抱えた人間としての芯の強さを体現していた。
次回への布石──DICTの敵はどこにいるのか
監禁犯はあくまで“末端”にすぎない。
誰が停電を仕掛け、なぜDICTを挑発したのか。
カナの“かけ子”事件は、資金・人材・思想が結びつく現代型犯罪ネットワークの導入線でもある。DICTの戦場は、単なる“事件の解決”から“災厄の予測”へと拡張していく。
第5話は、その拡張への宣戦布告であり、DICTの物語が“個人の戦い”から“国家の危機管理”へシフトしていく転換点として描かれた。
5話のネタバレ&あらすじについてはこちら↓

6話:因縁の「ルミナス会」再始動——フェイク教祖と“指南役”の影
第6話は、DICTがかつて捜査を途中で断念したカルト宗教「ルミナス会」と再び対峙する回です。
教祖・黒澤道文(今井清隆)は「大災厄が日本を襲う」と終末を煽る動画を配信し、“神札”と呼ばれるお守りを高額で販売していました。
内閣官房副長官・佐生新次郎(安田顕)は、その収益が国際犯罪組織へ流出しているとにらみ、DICT室長・早見浩(松角洋平)に証拠収集を命じます。
DICTはまず資金の流れを追うものの、送金先は巧妙に偽装されており、特定には至りません。
オンライン潜入の始動──「信者」を装う分析班
行き詰まりを打破するため、司令塔の二宮奈美(沢口靖子)はオンライン潜入作戦を指示します。
清水紗枝(黒島結菜)が信者を装って教団のオンラインサロンに潜入したところ、教団施設近くの喫茶店で“オフ会”が開催される情報を掴みます。
現地潜入には南方睦郎(一ノ瀬颯)と掛川啓(金田哲)が選ばれ、二人は“熱心な新規信者”として調査を開始。同時に、現場派の山内徹(横山裕)は所轄刑事・酒井美香(三浦真椰)から、郊外で発見された白骨遺体の情報を入手します。
遺留品にはルミナス会のロゴ入りアイテムが含まれており、資金の流れと“粛清”の実態が一本の線で繋がる可能性が浮上。DICTは資金・現場・潜入の三方向から教団を包囲していきます。
告発者の影──小泉真紀の証言と教団内の分断
オンライン監視を続ける中で、清水は複数の裏アカウントを使い教団を批判するユーザーを発見。
身元を割り出した結果、その人物は信者の小泉真紀(羽柴志織)であることが判明します。南方と掛川がオフ会で接触すると、彼女は「教団をマスコミに売ろうとした裏切り者は裁きを受け、突然姿を消した」と語ります。
その証言によって、行方不明者と白骨遺体の線が急速に接近。
DICTは彼女のような“不満分子”を情報源とし、現場での証言収集を進める方針へと転換します。
オフ会当日、信者たちの間で対立が表面化します。
古参信者は「オラクル(道文)こそ唯一絶対」と崇める一方で、若手信者は「金の集金ばかり」「教祖がオンラインにしか現れない」と不信を漏らす。
奈美は「今こそ教祖に迫る好機」と判断し、指示系統と資金の受け皿の特定に全力を注ぎます。ところがその場に現れた“教祖代理”は、なんと道文の息子・黒澤聡(市川知宏)でした。
真相の反転──フェイク教祖と指南役の存在
ここから終盤にかけて、真実が一気に反転します。
実際には道文はすでに死亡しており、息子・聡が父になりすまして動画を配信していたのです。
“終末予言”の動画群はすべてフェイクで、聡は信者を欺きながら資金を操作していました。DICTは、清水によるデータ解析、南方と掛川の潜入報告、そして山内の現場捜査を結集させ、聡の成りすましと資金流用の証拠を固めます。
教団内の分裂が決定的となり、ルミナス会は崩壊。
しかし、事件の背後には“指南役”と呼ばれる存在が見え隠れします。
動画の生成方法や資金の消し方が、DICTが追ってきた別件の“設計思想”と酷似していたためです。
つまり、ルミナス会は黒幕そのものではなく、より上位の設計者に操られた装置だったという構図が浮かび上がります。
奈美たちは黒澤聡を逮捕し事件を終結させるものの、背後にいる指南役の正体は依然として謎のまま。DICTの視線は次の大規模犯罪へと向けられ、物語はさらなる展開を予感させながら幕を閉じます。
6話についてのネタバレはこちら↓

7話の予想:病院ランサム×政争の交差点——“H-WKN159”が試すのは、DICTの判断力
第7話は、これまでの「システム障害」「SE連続殺人」「奈美拉致」を貫く黒幕組織の名が初めて明確化される回です。
事件は「警察庁広域重要案件 H-WKN159」に格上げされ、内閣官房副長官・佐生新次郎(安田顕)はDICTに全貌解明と壊滅を指示。
足の治療で大学病院を訪れていた二宮奈美(沢口靖子)は、偶然エレベーター内に閉じ込められます。同乗していたのは入院中の少女・久野真由(白山乃愛)、看護師、そして清掃員。
その裏で、与党幹事長の妻・光江の心臓手術が突如中断。病院全体がシステム暗号化=医療ランサムの被害に遭います。DICTは遠隔で清水紗枝(黒島結菜)とシステム技術者・瀬野康太(味方良介)を連携させ、現場には田辺・掛川が急行。
政治サイドでも、佐生を通じて桐谷総理へ案件が共有され、病院の地下と官邸が同時に揺れ動きます。
攻撃の構造──デジタル犯行と“目のある現場”
病院LANの暗号化やエレベーター停止は純粋なサイバー攻撃だけでも成立しますが、奈美が偶然閉じ込められている点は“現場に監視の目がある”可能性を示します。
想定されるのは二層構造の犯行。上層が「H-WKN159」のコアメンバーで指示と設計を担当、下層が院内協力者(外注・夜勤要員など)として物理的な仕込みを行う。
看護師や清掃員の配置も、実は“監視役”としての意味を持つと見られます。
一方で、緊急招集されたシステム技術者・瀬野は“復旧側”として登場するが、物語上は撹乱要素(レッドヘリング)として置かれている可能性が高い。
攻撃の目的は単なる金銭要求ではなく、「政府の無力」を世論に可視化すること。
与党幹事長夫人の手術停止を“政治の急所”に据え、病院と官邸を同時に揺さぶる設計です。暗号化された医療データを盾に取った人質劇は、命と国家を同一線上に並べる“見せしめ”。
その映像がSNSで拡散されれば、H-WKN159は一気に政治的な示威効果を得ることになります。
DICTの対処──時間、手順、そして“手の痕跡”
DICTは三面作戦を展開します。
現場の田辺・掛川は非常電源を手動で起動し、エレベーター救出と病院指揮系統の再建を担当。遠隔の清水と瀬野は、暗号鍵の解析と侵入経路の追跡を進め、犯人による二重脅迫(「復旧してもデータを公開する」型)に備えてリーク経路を封鎖します。
政治ルートでは、佐生が桐谷総理に報告し、対立する官邸とDICTの足並みを「命を最優先する」という一点でまとめていく。この三層が噛み合った時、初めて“救出・特定・組織の輪郭露出”が同時に到達する構図です。
奈美は閉じ込められたエレベーターで、点滴の滴下速度から残り時間を逆算し、少女の命を延命させながら状況を観察。
同乗者の身振り、手袋、靴の汚れなどの“手の痕跡”を分析し、院内の協力者を特定する糸口を掴みます。
その情報がDICTへと伝えられ、犯人の行動とシステム障害の“手順”が鏡写しのように解かれていく。
救出の段取りを逆手に取って、犯人の作為を暴く“手順の逆回し”が見どころです。
黒幕への接線──「病院」を選んだ意味と終局の形
H-WKN159は、社会インフラの脆弱点を「停電→医療→金融」の順で試す構成を取っています。
第7話の舞台=医療は、命と政治が最も直結する分野。目的は金銭ではなく、国家の威信を破壊することにあります。犯行声明の金額条件は煙幕であり、真の狙いは「政府の無能」を世論化するデモンストレーション。
DICTが鍵を奪い、システムを復旧させた瞬間に、犯人は第二声明を発信し、背後の“上位層”の存在をチラ見せして終幕を迎えるでしょう。
奈美の“勝ち筋”は時間の延命と証拠の確保。少女の命をつなぎながら、犯行手順そのものを逆算して暴く。そして事件後、H-WKN159の次のターゲットが示唆され、シリーズ全体を貫く“情報犯罪の連鎖”へと物語は接続されます。
第7話は、「命を人質に取る情報犯罪」の恐ろしさを最短距離で描く回です。
焦点は、デジタルと現場を結ぶ“手順”そのもの。誰が、いつ、どの系統を、どの順序で落としたか。そのわずかな作業の痕跡が犯人の正体を映し出し、DICTの判断力が試される一話になるでしょう。
8話以降〜
※放送後に更新します。
絶対零度(シーズン5)の結末&予想

ここからは第1話までの事実と公的資料が示す犯罪モデルを前提に、論理で積む予想編。
S5は①匿名・流動型犯罪(トクリュウ)と②官邸直轄のDICTという二つの“圧”が交差する物語だ。終盤〜最終回の座標を見取り図にする。
黒幕の座標:トクリュウの“中核”は匿名化×レイヤリング
警察白書が描くトクリュウの本質は、中核の匿名化と役割の細分化、そして使い捨て構造にある。
SNSなどで実行役を募り、末端だけが捕まる一方、資金はレイヤリング(中継口座→換金→再投資)で洗われる。よって最上段は“個人”ではなく“ネットワーク”の可能性が高い。
S5の“国家存亡レベル”というスケールで考えると、暗号資産や闇両替、海外事業体を経由した資金中枢が日本国内の“ハブ”と結びつく構図が最終盤で露出する――これが犯人像=名指しのクライマックスになると予測できる。
政治のKPIが生む“歪み”:佐生新次郎(安田顕)は“合理の化身”
DICTは総理・桐谷杏子と官房副長官・佐生新次郎の直轄組織。
短期的な成果(検挙件数)を求める政治のロジックは、末端逮捕に偏る危険を内包する。佐生は“官邸の黒子”として現場へ“見える数字”を要求する一方、奈美は“人に向き合う”ことで勧誘動線と資金網を上流へたぐる。最終盤ではこの「合理 vs. 現場」の対立軸が、「真犯人に届くための非効率の必要性」へと収束し、政治側に“選択”を迫る展開になるだろう。
“国家存亡”という言葉は、この行政判断が物語のスイッチになることを示唆している。
捜査の最適解:奈美×山内×清水の“三位一体”が“匿名”を破る
奈美(二宮)…生活安全課仕込みの会話力と記憶力で、被害者や“受け子”の証言から“勧誘チャネル”を特定。
山内…ミハン由来の先読みと冷静さで、次の動きを詰める。
清水(黒島結菜)…ネットワーク解析で中継口座・DM群・端末指示のグラフ化を進める。
この三角形が末端→指示役→資金ハブを階段状に抜き、情報の可視化=犯人像の具象化へ到達する。「こう役割分担するから、こう“匿名”が破れる」という最短ルートの構築こそDICTの真価だ。
旧作の資産は“点”ではなく“線”で効く:深沢と“泉の名前”
深沢ユウキは“頭脳”として、DICTが掴んだ技術断片(サーバやSE人脈)を捜査一課の導線に繋ぐハブになるだろう。さらに“桜木泉”の着信は、直接登場を煽るための装置ではなく、視聴者の記憶を能動化する遠近法の仕掛けと考えられる。
「過去を消費しない参照」として、最終盤の精神的支点――選択の瞬間に響く“名前”や“台詞”として機能する可能性が高い。こうして過去が現在を押し広げるのが、S5の連続性の美学である。
結末像(予想):“匿名”を“実名”に——国家規模の情報戦を可視化して終わる
最終回のキーワードは可視化。
- 資金の地図(レイヤリングの連鎖)を一枚のグラフに落とし込む。
- 指示系統のハンドル(メッセージハブ/鍵管理)を特定。
- 官邸ラインの意思決定を“告発”か“是正”のどちらかで収束。
この三点が同時に地図上で合う瞬間、“匿名”だったトクリュウの中核が“実名”に変わる。DICTは“見える成果”よりも“届く成果”を取り、政治と世論の視線を浴びながら再始動。
主題歌「GRAY」が流れ、“グレー”だった世界が輪郭だけは白黒に近づいたところで幕を閉じる――というのが筆者のロジックだ。「こう設計されたテーマだから、こう閉じるのが最も美しい」という理にかなう結末である。
社会的射程:なぜ“トクリュウ”が最終話レベルの題材になり得るのか
公的資料が示す通り、トクリュウは強盗や詐欺から資金洗浄までを横断する“犯罪のOS”であり、暴力団との結節も確認されている。
“匿名”と“流動”を武器に、若者を使い捨て、中核は不可視という構造は、ドラマ的にもボスを“組織”として描く必然を生む。
S5が“国家存亡”を掲げる根拠はここにある。現実の犯罪構造が巨大だからこそ、ドラマの敵も巨大化する――このリアリティが、物語の緊迫感を支えている。
まとめ(筆者)
S5は「新しい舞台」×「続く世界」の二項併置が面白い。
山内の帰還と深沢のカムバック、そして“泉の名前”が鳴る仕掛けが、ファンの記憶と現在の緊張を一本線に束ねる。
こうだからこう――情報が凶器化した時代だから、“人に向き合う刑事”が必要であり、DICTというシステムと“会話”というアナログをかけ合わせるロジックが今作の推進力だ。結末は“匿名の破壊=可視化”。その瞬間、シリーズは過去と未来を同時に照らすはずだ。

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