5話で見えた“取調べの矜持”が、6話でさらに別の角度から試されていきます。
医師国家試験という大きな制度をめぐる疑惑と、ひとりの契約社員の沈黙。
表向きの正しさと、誰にも気付かれない小さな真実が交差する中で、キントリが何を守ろうとするのかが静かに浮かび上がる回でした。ここから物語は、白と黒の境界線をより細やかに探る段階へ進んでいきます。
緊急取調室/キントリ(シーズン5)6話のあらすじ&ネタバレ

第6話のテーマは「白を証明する」。
医師国家試験という“絶対に汚れてはいけない制度”と、そこにぶら下がる利権、そして「自分は白だ」と最後まで言い切らない男・山田弘。その沈黙が、かえって真犯人を炙り出していく一時間でした。
物語の舞台になるのは、医師国家試験の問題印刷を請け負う「鶴栄堂印刷」。
営業部長・岩崎が早朝の公園で絞殺され、試験問題が入ったノートPCも消えたことで、「殺人事件」と「国家試験漏洩疑惑」が一気に同時進行していきます。最初に逮捕されたのは、同じ会社の契約社員・山田弘。殺害に使われたのは、山田の日常的に使っていたパソコンのコードでした。
一見すると“状況証拠が揃った冴えない中年男の犯行”。ところが取調べ室に連れてこられた山田は、責め立てられてもどこか飄々としていて、肝心なところで口をつぐむ。
キントリは、山田のスケッチブックと「白いリーディンググラス(老眼鏡)」という二つの“白”から、事件の本当の構図を読み解いていきます。
ここからは、ほぼ時系列に沿って第6話の流れを追っていきます。
事件の発端 医師国家試験と殺人が結びつくまで
早朝の公園で、鶴栄堂印刷の営業部長・岩崎の遺体が発見されます。首を絞められた痕があり、パソコンのコード。死亡推定時刻は早朝。
ほぼ同時刻、医師国家試験の問題が入ったはずの岩崎のノートPCが会社からも行方不明になっていることが判明し、「国家試験問題の漏洩」と「殺人」が一点で交わる事件として捜査がスタートします。
捜査二課の如月と金本は、事件の鍵を握る人物として、最初から契約社員の山田弘に目を付けていました。
・被害者の上司から長年いじめを受けていた
・現場近くの公園によく通っていた
こうした事情から、山田は「上司への恨みを晴らすために殺し、ついでに試験問題を売ろうとした」と見なされ、逮捕されます。
ただ、ここでキントリ側が違和感を覚えるのは、山田の“動機の軽さ”。あまりにも教科書的すぎる構図に、有希子たちは「誰かが山田に罪をなすりつけているのでは」と直感します。
キントリと二課の対立 「黒を固めたい」vs「白も疑う」
山田の取り調べは、本来なら殺人捜査一課の案件ですが、今回は「国家試験漏洩」という知能犯罪の要素もあるため、捜査二課が前のめり。そこにキントリが“協力”という形で呼ばれます。
二課が欲しいのは「漏洩を認める自白」。
キントリが追いたいのは「殺人と漏洩、両方を含めた事件の全体像」。
如月と金本は、「とにかく山田を黒にして終わらせたい」圧の強いコンビ。対して真壁有希子たちは、「白かもしれない可能性」まで含めて相手の言葉を待つスタイルです。
・山田に前のめりに誘導尋問を仕掛ける二課
・一歩引きつつ“沈黙の意味”を測ろうとするキントリ
この温度差が、第6話の前半を通してじわじわと描かれていきます。
取調室に現れた「白いスケッチ」の男・山田弘
いよいよキントリの取調べ室に山田が入ってくると、彼は典型的な“やりづらい被疑者”として描かれます。
質問にまともに答えない。
かと思えば急に関係なさそうな思い出で話をそらす。
罪を認めもしないが、強く否定もしない。
有希子たちの問いかけに山田は「刑務所でも絵は描けますよ」とぼそり。普通なら「覚悟の自白」に見えてもおかしくない一言ですが、その表情には諦めとも違う微妙な影があります。
一方控室では、菱本たちが山田のスケッチブックをめくりながら「この人、本当に犯罪者か?」と首をかしげています。そこに描かれているのは、毎朝同じ公園で描き続けていた風景画。
朝焼けの空、並ぶビル、そしてある一瞬だけ現れる「二つの太陽」。
・ひとつは本物の朝日
・もうひとつはビルのガラスに反射した光
山田は、この「二つの太陽が揃う瞬間」を描くことを、自分のライフワークのように続けてきた。ここが、のちの“アリバイ証言”の核になっていきます。
スケッチブックが暴く「病院」「再雇用」「試験漏洩」の線
山田のスケッチの中には、公園の風景だけでなく、
・妻が入院していた「江北女子医大」の外観
が描かれていました。
山田は証言で、妻の見舞いの際に岩崎と、本部長・蓮沼を病院内で見たことがあると言います。
忙しいはずの本部長と営業部長が、人気のない廊下で人目を気にしながら立ち話をしている。僕に見られたらすぐにいなくなった。
「えらい人たちなのに、なんかやましいことでもあるのかなと思った」
その違和感がスケッチに残されていたことで、キントリは「国家試験漏洩の出口は病院側にあるのでは」と考え、江北女子医大へ向かいます。
そこで浮かび上がるのが、事務長・酒木。
・ここ数年、江北女子医大の医師国家試験合格率が異様に高い(99%超え)
・病院の財政難を抱える酒木
追い詰められた酒木は、「試験問題は岩崎と蓮沼から持ち込まれた。合格率を上げるため、8,000万円を支払った」と漏洩を認めます。
ただし殺人は否定。その結果、漏洩ルートは固まりつつも、岩崎殺害の黒幕はまだ不明のままです。
“白いリーディンググラス”が指し示す黒幕・蓮沼
酒木の供述を受け、キントリは蓮沼本部長を再び追及。
・事件後、蓮沼が毎晩会社に残って資料をあさっていた
・ビルの防災センターで「落とし物の眼鏡」をしつこく探していた人物がいた
・山田の証言で蓮沼の愛用は真っ白なフレームのリーディンググラス
公園で目撃されていた“白い眼鏡の人物”とも一致し、蓮沼は一気に黒幕候補へ。問い詰められた蓮沼は国家試験漏洩は認めるものの、殺人は否認。逃走を図るも確保されます。
ここで、
・試験問題の漏洩は蓮沼・岩崎・酒木ライン
・病院から印刷会社へ金が渡っていた
・岩崎は良心の呵責から出頭を考えていた
という構図が固まり、「口封じ」という動機が蓮沼側に濃厚になります。
ラスト取調べ 山田の沈黙が意味していた「白」の証明
再び取調室へ。山田は、亡き妻との約束でもあった「二つの太陽」を描くため、毎朝5時の公園に通っていました。その習慣が、結果的に山田の“アリバイ”でもあり“白の証明”にもつながっていきます。
小石川が山田に「蓮沼が漏洩を認めた」と告げて去り、真壁が静かに尋ねます。
「なぁ、無実なんだろ?」
ここで山田は初めて、自分が見ていた光景を語り出します。
・妻の入院中、蓮沼と岩崎が病院の廊下で慌てて話していた
・事件当日、二人が激しく言い争うのを目撃した
・岩崎が蓮沼を突き倒して去ったが、その後は見ていない
そして核心の言葉。
「あの朝日は、刑務所じゃ描けない」
刑務所でも絵は描ける。
でも、あの公園の二つの太陽が揃う瞬間だけは描けない。
山田は「絵」で、自分の“白”を証明していたのです。
最後に静かに頭を下げ、
「申し上げます。私は殺しておりません」
と告げる山田。
「もっと早く否認してくれればよかったのに」という真壁に返した、
「否認したら信じてくれました? 向こうは役員です。こっちは、しがない消しゴムみたいなもんですから」
という言葉も胸に刺さります。
山田の沈黙は諦めではなく、“キントリへの信頼”の裏返しでした。
ラスト 白いスケッチとキントリの矜持
ラストで、山田のスケッチの中に描かれた“二つの太陽と白い眼鏡の影”がクローズアップされます。
自分はその朝そこにいた。
だが、殺してはいない。
真の黒幕は別にいる。
その沈黙のメッセージが一枚の絵に込められていました。
「白を証明する」とは、相手を黒に染めるのではなく、相手の中に残る白を見つけ、世に出すこと。
第6話は、そんなキントリの矜持を“白いスケッチ”に凝縮した回でした。
緊急取調室/キントリ(シーズン5)6話の感想&考察

ここからは、ドラマを見終えたあとの感想と考察を、整理していきます。
テーマはやはり「白を証明する」と「沈黙の戦略」。
山田弘という「厄介な善人」
まず一番印象に残るのは、イッセー尾形さん演じる山田弘の“厄介さ”です。
・自分からは決して「違う!」と声を荒げない
・冗談とも本気ともつかない返しを続ける
・捜査側が「黒だ」と決めつける隙を、わざと与えているようにも見える
普通の刑事ドラマなら、「そんな態度を取るから疑われるんだろ」とツッコミたくなるキャラクターですが、今回の山田は違いました。
・自分が声をあげても、“しがない契約社員”の言い訳で終わってしまう
・権力側のストーリーを、ひとりでひっくり返す力は自分にはない
・だからこそ、“プロの取調べ屋”が気付くことに賭ける
その結果、彼は「積極的に白を証明しない」戦略を選ぶことになります。
重要なのは、この態度が単なる賢さではなく、「傷ついてきた善人」の延長にある点です。
妻を看病しながら、病院と会社の不穏な動きを見てしまった。けれど、声を上げる勇気はない。ただスケッチブックだけは、事実を正直に写してきた――。
この積み重ねが、最終的にキントリの武器になる。その構造が、とても美しい。
「白を証明する仕事」を可視化した構成
シーズン5のキントリは、毎回テーマがはっきりしていますが、第6話は特に「白を証明するとは何か」を物語の構造そのもので示してきた回でした。
・序盤 … 状況証拠だけなら山田は“限りなく黒”
・中盤 … スケッチ、病院、再雇用など“白の可能性”が広がる
・終盤 … 真犯人の黒が濃くなり、相対的に山田の白が浮かび上がる
ここで面白いのは、キントリが「山田の無実を信じよう」と盲信の方向へ行かないことです。
・山田の沈黙を“ひねくれた態度”として疑う視点
・一方で、そこに「信頼」の影があると感じ始める視点
この二重構造が、視聴者の中でも同時に起こるよう設計されている。
特に好きだったのは、小石川が「もし蓮沼と岩崎がやったなら、ちゃんと言ってください」とだけ残して部屋を去るシーン。
・「お前は無実だ」「信じてるよ」とは言わない
・でも、「君の見たものを、君のタイミングで話していい」とだけ橋をかける
この距離感こそが、「白を証明する側」の矜持だと感じました。
キントリvs捜査二課 “正しさ”のスタイルの違い
今回、如月・金本コンビが非常に良いコントラストになっていました。二課のやり方は、とにかく「黒を固めたい」。世間に対し、「国家試験漏洩事件の犯人を逮捕した」と早く示したい。
・山田の“都合の悪い沈黙”を黒の裏付けと扱う
・再雇用や病院の線が見えてきても、「それでも山田が主犯」と決めつけたい
一方、キントリは「白か黒か」を急がず、「なぜこのタイミングで黙るのか」を見続ける。
同じ“正義”でも、
・社会に対して「説明責任」を優先する正義
・目の前の人間に対して「理解」を優先する正義
その違いが、取調室の空気によく表れていました。
終盤、如月が少し軟化し、「お前らのやり方にも一理ある」とでも言いたげな空気になるのも、シリーズならではの良さ。彼ら自身もまた、“自分たちの正しさ”の幅を広げてきているのだと思います。
ゲスト俳優の存在感と、言葉の温度
イッセー尾形さん、でんでんさん、近藤公園さん、林泰文さん――第6話はゲスト陣の佇まいだけで見ごたえのある回でした。
・イッセー尾形さんの、何を考えているか分からないが“動じない目”
・近藤公園さんの、最初から最後まで漂う蓮沼の胡散臭さ
・林泰文さんの、ウザいほどの二課刑事感
この芝居が、山田の沈黙に説得力を与えています。
特に山田の一言、
「否認したら、信じてくれました?」
ここにあるのは皮肉ではなく、長年の諦念と、ほんの少しの希望。声を荒げても「被疑者の言い訳」と切り捨てられる現実を、彼はよく知っている。
だからこそ、スケッチブックという“別の言語”で、自分の正しさを残そうとする。その選択に、イッセー尾形さんの人生経験のような重さが滲んでいて、とても刺さりました。
シーズン5全体への布石としての第6話
シリーズ全体で見ると、第6話は「キントリが何を守ろうとしているか」を改めて示す回でもありました。
・制度の正しさか
・世間体か
・それとも、たった一人の“白”か
キントリが守り抜いたのは、“消しゴムみたいな存在”だと自嘲する契約社員の「見てしまったもの」と、その人が描いた一枚のスケッチ。
巨大な医師国家試験制度の不正を暴くこと以上に、
「目の前の一人が、ちゃんと白として社会に戻れるか」
ここに徹底してこだわる。
シーズン5はこれまでも“白と黒のグラデーション”を扱ってきましたが、第6話はその中心にあるエピソード。ここから終盤に向けて、「キントリという部署そのものの存在意義」が、より鋭く問われていく予感があります。
個人的には、ラストに映る二つの太陽のイメージが、シリーズ全体のメタファーにも思えました。
・ひとつは、まっすぐ差し込む“正義”の光
・もうひとつは、歪んで反射した利権や保身の光
ぱっと見では区別がつかない二つの光の中で、キントリは「本物の太陽」を探そうとし続けている。第6話は、その姿勢を静かに、しかし強く刻みつける回だったと思います。
以上、第6話の見終わった後の感想と考察でした。
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