『トリック』シーズン1第6話「瞬間移動殺人の秘密」では、これから霊能力で三人を殺すと自ら警察へ申し出た黒坂美幸が、山田奈緒子と上田次郎の前に現れます。美幸は逃亡するどころか、自分を一晩中監視してほしいと要求しました。
奈緒子と上田が美幸から目を離さなければ、遠く離れた場所にいる人間を直接殺すことはできないはずです。しかし美幸が研究室で絞殺や刺殺のパントマイムを行った後、予告された人物は本当に死亡します。
しかも現場には、美幸の指紋や毛髪まで残されていました。
監視は美幸を追い詰めるためのものではなく、彼女が犯行現場へ行けなかったと証明するための装置へ変えられていきます。この記事では、ドラマ『トリック』シーズン1第6話のあらすじ&ネタバレ、伏線、感想と考察について詳しく紹介します。
ドラマ「トリック シーズン1」第6話のあらすじ&ネタバレ

第5話までの宝女子村事件を終えた奈緒子と上田は、東京へ戻っています。村人全体が協力して作った消失事件を解決しても、奈緒子の生活は変わらず、家賃の支払いに追われる日々が続いていました。
そんな二人のもとへ矢部謙三が連れてきたのが、黒坂美幸です。美幸は被害を訴えるためではなく、自分がこれから三人を殺すと宣言するために警察へ現れました。
さらに、犯行中の自分を監視してほしいという異様な要求を突きつけます。
第6話で美幸が作ろうとしているのは、犯人がアリバイを隠す犯罪ではなく、科学者とマジシャンに自分のアリバイを証明させる犯罪です。
黒坂美幸が霊能力で三人を殺すと警察へ申し出る
物語の入口で示されるのは、呪いや霊能力による殺人を法律がどのように扱えるのかという問題です。美幸は、殺す意思を隠さずに告げながら、通常の殺人では成立しない因果関係の空白を利用しようとします。
呪いを宣言しても殺人として裁けない法の空白
冒頭では、誰かへ呪いをかけた後、その相手が死亡したとしても、呪いと死の間にある因果関係を証明することは難しいという問題が示されます。殺意を口にしただけでは殺人にならず、実際に死亡させた手段を特定しなければ刑事責任を問うことはできません。
たとえば、相手を呪い殺すと宣言した直後にその人物が病気や事故で死亡しても、言葉だけで命を奪ったとは証明できません。被害者側には強い疑いが残っても、司法は超常現象を殺人手段として簡単には認められないからです。
この法の空白を理解している人物が、自分には霊能力があると主張して殺人を予告した場合、警察は対応に困ります。予告だけで逮捕することはできず、実際に死者が出ても、霊能力以外の具体的な犯行方法を示さなければならないためです。
美幸はまさに、この矛盾を利用しようとしていました。自分が殺すと事前に宣言し、予告どおり相手が死んでも、自分が物理的に現場へ行っていなければ、警察は殺人との因果関係を立証できません。
女性の写真を並べる上田に奈緒子が冷たい視線を向ける
上田の研究室では、事件の不穏さとは対照的な軽いやり取りが続いていました。上田は複数の女性の写真を並べ、女性関係に余裕がある人物のように振る舞いながら、奈緒子へ意見を求めます。
上田は天才物理学者として認められたいだけでなく、女性からも魅力的な男性だと思われたい承認欲求を持っています。しかし奈緒子には、その振る舞いが見栄であることを見抜かれていました。
奈緒子は上田の自慢へ付き合うより、写真を並べて自分を大きく見せようとする姿へ冷ややかな反応を返します。二人は宝女子村で命の危険を共にした後でも、互いを素直に評価する関係ではありません。
この場面は、まもなく現れる美幸の容姿へ上田が惑わされる下地にもなっています。超常現象には警戒する上田も、自分を好意的に見てくれそうな女性を前にすると、判断が甘くなりやすい人物です。
矢部が黒坂美幸を連れて研究室へ現れる
そこへ矢部と石原達也が、黒坂美幸を連れて現れます。美幸は怯えて保護を求める様子ではなく、落ち着いた態度で奈緒子と上田を見渡していました。
美幸は警察へ、自分が霊能力を使って三人の人間を殺すと申し出ています。殺害対象は最初から決まっており、これから順番に死なせると語りました。
普通の犯人なら隠すはずの殺意を、美幸は自信を持って公表します。
矢部は、美幸が殺人を予告しただけでは逮捕できないと説明します。凶器を持っているわけでもなく、具体的な犯行計画を語っているわけでもありません。
自分には念じたことを現実にする力があると主張しているだけです。
それでも実際に三人の命が危険にさらされている可能性があるため、警察として無視することもできません。矢部は科学的な監視と検証を行える人物として、上田へ美幸を預けようとします。
美幸が自分を一晩監視するよう要求する
美幸は、奈緒子と上田に一晩中自分を監視してほしいと要求します。殺人を疑われたくない人物なら、監視を避けるのが自然です。
しかし美幸は、監視されることを自分から望んでいました。
美幸の説明では、自分はその場から動かず、イメージした出来事を遠く離れた場所で現実にできるといいます。監視中に殺人が起きれば、自分が物理的に犯行現場へ行っていないことを奈緒子と上田が証明してくれます。
上田は美幸の美しさに気を取られ、監視役を引き受けることへ前向きになります。奈緒子は、殺人を予告した本人が監視を求める不自然さに警戒し、美幸の本当の目的を考えます。
美幸にとって監視は自由を奪うものではなく、自分には犯行が不可能だったと証明するために必要な証人を確保する行為でした。
警察はまだ起きていない事件だけでは美幸を拘束できません。こうして矢部は監視を上田へ任せ、奈緒子、上田、美幸の三人は外部から隔離された研究室で夜を過ごすことになります。
奈緒子と上田が美幸を秘密研究室で一晩監視する
監視場所に選ばれたのは、上田が用意した秘密研究室です。出入口と周囲を確認できる空間へ美幸を置き、奈緒子と上田が交代せず見張れば、犯行現場へ移動することはできないはずでした。
逃げ道のない研究室へ美幸を連れていく
上田は美幸を、自分の秘密研究室へ案内します。外部から簡単に出入りできず、美幸が部屋を離れればすぐ分かる環境です。
科学的な監視を行うには適した場所に見えました。
奈緒子は出入口だけでなく、窓、壁、天井、床など、美幸が隠れて移動できる経路がないかを確認します。マジックでは、観客が出入口だと思っている場所とは別の通路が用意されていることがあるからです。
上田も、物理学者として美幸が部屋から消えられないことを確認します。二人が同時に監視し、美幸がずっと目の前にいれば、遠くの現場へ移動して殺人を行うことは不可能です。
美幸は厳しい監視を嫌がらず、むしろ奈緒子たちが条件を確認する様子を楽しんでいるように見えます。自分から場所を選んだわけではないのに、計画どおり進んでいるという余裕がありました。
上田が美幸に浮つき奈緒子は警戒を強める
監視が始まっても、上田は美幸へ必要以上に親切な態度を取ります。殺人予告をした危険人物として扱うより、魅力的な女性と一晩過ごす状況を意識しているように見えました。
美幸も上田の反応を理解し、緊張を和らげるような振る舞いを見せます。上田が自分を疑うより好意的に見れば、監視の厳しさや判断へ影響を与えられる可能性があります。
奈緒子は、上田が美幸の外見に惑わされていることへ苛立ちます。単なる嫉妬として見るより、監視対象へ感情を動かされることが捜査上の弱点になると考えているのでしょう。
上田が美幸の話を信じそうになるたび、奈緒子は目の前の現象に仕掛けがないかを確認します。二人の役割は、上田が理論的に不可能だと示し、奈緒子が実際の手順やごまかしを探す形へ分かれていきます。
美幸が小さな念動現象を披露する
美幸は、自分にはイメージしたことを現実へ変える力があると説明し、その証拠として小規模な念動現象を見せます。触れていない物が動いたように見え、上田は驚きます。
しかし奈緒子は、すぐに人間の手で作れる仕掛けだと見抜きます。目立たない糸や単純な細工などを使えば、物が自然に動いたように見せることはできます。
少なくとも、この現象だけでは美幸の霊能力を証明できません。
美幸は仕掛けを指摘されても、慌てたり言い訳したりしません。小さな現象が手品だと暴かれることを、最初から想定していたように見えます。
奈緒子は、美幸が本当に霊能力を信じさせたいなら、簡単に見破られる手品を見せる理由がないと考えます。小さな仕掛けへ注意を向けさせ、その後に起きる本当の殺人を説明不能な現象として際立たせようとしている可能性があります。
簡単な手品を囮にして本命の殺人を待つ美幸
美幸は、奈緒子が小さな念動現象を暴いたことに対し、敗北した様子を見せません。むしろ奈緒子の観察力を確認できたことに満足しているようでした。
手品を一つ暴いた奈緒子は、美幸が見せる現象には仕掛けがあるという方向へ意識を向けます。次に人が死亡しても、美幸が短時間で現場へ移動した方法や、研究室から抜け出す経路を探そうとするはずです。
美幸は、奈緒子がどのように疑い、上田がどのように理論を組み立てるのかを観察しています。二人の思考を把握したうえで、その推理が届かない場所へ殺人の仕組みを隠そうとしているように見えます。
小さな念動現象は能力を証明するためではなく、奈緒子へ「美幸本人が仕掛けを動かしている」と思わせるための囮に見えます。
やがて美幸は最初の標的として梅木隆一の名を挙げ、目の前で殺人を始めると宣言します。
絞殺のパントマイムと崖下で発見される梅木の遺体
美幸は研究室から一歩も外へ出ないまま、梅木をベルトで絞め殺す様子を演じます。上田は美幸に示された場所へ向かい、奈緒子は研究室に残って監視を続けました。
その後、崖下から梅木の遺体が発見されます。
美幸が梅木をベルトで絞める動作を始める
美幸は梅木を最初の標的として示し、その人物を今から殺すと告げます。美幸の手には実際の梅木も凶器もありません。
それでも目の前に相手がいるかのように腕を動かし、ベルトで首を絞めるパントマイムを始めました。
美幸の動作は、曖昧な念を送る仕草ではありません。どのような方法で梅木が殺されるのかを、奈緒子と上田へ明確に見せる演技です。
後に同じ状態の遺体が発見されれば、美幸のイメージが現実になったように見えます。
上田は、研究室にいる美幸が遠隔地の人間へ物理的な力を加えられるはずがないと考えます。一方で美幸の自信に満ちた表情から、すでに梅木の身に何かが起きているのではないかという恐怖を抱きます。
奈緒子は美幸の手や周囲を観察し、遠隔操作の装置や外部へ合図を送る手段がないか探します。しかし、美幸が行っているのは目の前での演技だけに見えました。
上田が指定された崖へ向かい奈緒子は監視を続ける
美幸は、梅木の遺体が見つかる場所を示します。上田は現地へ向かい、実際に事件が起きたかを確認する役割を担います。
奈緒子は研究室へ残り、美幸が上田の不在中に外へ出ないよう監視を続けました。
上田が現場へ向かうことによって、奈緒子と上田の役割が分断されます。上田は死亡の確認、美幸の監視は奈緒子一人に任される形です。
美幸は、この分担が必要になることまで予測していたように見えます。
奈緒子は美幸から目を離さないよう努めますが、一晩中同じ部屋で監視を続ければ、確認や移動のための短い空白が生まれる可能性があります。美幸が狙っているのが、そのわずかな時間なのかはまだ分かりません。
美幸は奈緒子へ、上田が何を発見するかを待つよう促します。自分が犯行現場へ行っていないことを奈緒子自身が知っているため、結果が出るほど美幸の霊能力を否定しにくくなります。
梅木が絞殺され崖下へ落とされた状態で見つかる
上田と警察は、崖下で梅木の遺体を発見します。梅木は首を絞められた痕跡があり、さらに高い場所から落とされたような状態でした。
美幸が研究室で見せた絞殺のパントマイムと、梅木の遺体に残る状況が一致します。単に梅木が死亡していたのではなく、美幸が事前に示した方法で殺されていたことが重要です。
上田は奈緒子へ連絡し、梅木が実際に死亡していることを伝えます。奈緒子の目の前には、その間ずっと研究室にいた美幸がいます。
美幸が崖まで移動して梅木を殺したとは考えられません。
美幸は驚かず、自分のイメージが現実になっただけだという態度を取ります。奈緒子と上田の監視によって、むしろ霊能力以外の方法では説明できない状況が強まります。
パントマイムの時刻と梅木の死亡時刻が重なる
警察が遺体を調べると、梅木が死亡したと考えられる時間帯は、美幸が研究室で絞殺のパントマイムを行っていた頃と重なります。遺体が何時間も前に用意されていたという簡単な説明はできません。
もし梅木が美幸の演技より前に殺されていたなら、美幸は死亡時刻を予測していたことになります。演技の後に殺されたなら、研究室にいる美幸とは別に、梅木へ近づいた人物がいることになります。
奈緒子は、推定死亡時刻には幅がある可能性を考えます。美幸がその幅を利用し、殺人の演技と実際の死を一致して見せたのではないかと疑いますが、現時点では具体的な方法へ届きません。
美幸の殺人が恐ろしいのは、死を予告したことではなく、監視されている時間と被害者が死亡した時間を重ねていることです。
美幸の指紋と毛髪が残るのに完全なアリバイがある
梅木の遺体には、遠隔殺人だけでは説明できない物証が残っていました。被害者の手には美幸の毛髪と一致するものが握られ、凶器となったベルトからは美幸の指紋が検出されます。
それでも奈緒子と上田は、美幸が犯行現場へ行っていないと証言できます。
梅木の手に美幸の毛髪が握られている
梅木の遺体を詳しく調べると、手には女性の毛髪が握られていました。犯人に抵抗した際、相手の髪をつかんだように見える状況です。
毛髪を確認すると、美幸のものと一致します。美幸が梅木のそばにいたなら自然な証拠ですが、美幸は奈緒子と上田の監視下にありました。
事前に美幸の毛髪を採取し、遺体へ持たせた可能性はあります。美幸自身が自分の毛髪を用意し、協力者へ渡していたなら、現場へ行かずに証拠を残すことはできます。
しかし美幸は自分が疑われる物証を消すどころか、意図的に残しているように見えます。普通の犯人が避けるはずの証拠を増やすことで、物証とアリバイの矛盾を警察へ突きつけています。
凶器のベルトから美幸の指紋が検出される
梅木の首を絞めたと考えられるベルトからは、美幸の指紋が検出されます。美幸がベルトへ触れたことを示す直接的な証拠です。
ただし指紋が付着した時期までは、指紋だけで確定できません。美幸が以前にベルトへ触れ、別の人物がそれを使った可能性もあります。
美幸が自分の指紋を付けた凶器を、あらかじめ誰かへ渡していたことも考えられます。
奈緒子は、毛髪と指紋があまりにも美幸へ都合よく結びついていることを不審に思います。犯行を隠したいのではなく、自分が殺したと示すために用意された物証のように見えるためです。
美幸は、物証が自分を示すことを恐れません。自分には完全なアリバイがあり、警察がどれだけ証拠を集めても、通常の殺人として犯行方法を説明できないと確信しています。
奈緒子と上田が美幸の完全なアリバイを証明する
警察が美幸を疑っても、奈緒子と上田は彼女が研究室にいたと証言しなければなりません。二人は美幸を追い詰めるため監視したはずなのに、その監視が犯行不可能を証明する材料になります。
上田は、美幸が壁を抜けたり瞬間移動したりしない限り、短時間で遠くの崖へ行き、梅木を殺して戻ることはできないと説明します。奈緒子も、美幸が長時間部屋から姿を消していないことを確認しています。
警察は、現場の指紋と毛髪から美幸を疑います。しかし監視者の証言を無視して逮捕すれば、犯行方法も移動経路も説明できないままです。
物証は有罪を示し、アリバイは無実を示しています。
美幸は奈緒子と上田を事件の解決者ではなく、自分には犯行ができなかったと保証する証人へ変えました。
美幸が科学者と警察を同時に挑発する
美幸は、自分が霊能力で梅木を殺したと認めます。通常の犯人なら黙秘や否認を選ぶ場面ですが、美幸は殺意も結果も隠しません。
それでも警察が逮捕するには、美幸が梅木へどのような手段で致命的な力を加えたのかを示す必要があります。霊能力を殺人手段として認定できなければ、美幸の言葉は犯罪の告白ではなく、証明できない主張にとどまります。
美幸の目的は、被害者へ復讐するだけではないように見えます。科学では自分の行動を説明できず、警察も自分を裁けないという状況を作り、両方へ勝利することを楽しんでいます。
奈緒子が仕掛けを暴こうとするほど、美幸は監視条件や物証を追加し、さらに解きにくい状況を作ります。事件は一人の殺人をめぐる捜査から、科学、奇術、法律の限界を試す挑戦へ変わっていきます。
四分で五キロを移動した瞬間移動殺人なのか
奈緒子は監視の流れを振り返り、美幸から完全に目を離さなかったわけではないことへ気づきます。わずかな空白を利用して現場へ行った可能性を考えますが、移動距離と時間が合いません。
奈緒子が数分だけ美幸から目を離したことを思い出す
奈緒子は、美幸を監視していた一晩の行動を細かく振り返ります。美幸はほとんどの時間、奈緒子か上田の視界に入っていました。
しかし確認や移動のため、奈緒子が数分だけ目を離した時間がありました。
完全なアリバイに見えても、一瞬の空白があれば犯行へ利用された可能性があります。奈緒子は、その時間に美幸が研究室を抜け出し、別の場所へ移動したのではないかと考えました。
美幸が監視を自分から求めたのは、監視の中にある空白を最初から把握していたからかもしれません。監視者が「一晩中見ていた」と記憶しても、実際には数分の見落としが生じることを利用できます。
奈緒子は、わずかな空白こそが瞬間移動の正体ではないかと考えます。超能力ではなく高速の移動手段を使えば、短時間だけ現場へ近づける可能性があります。
研究室と崖の距離が物理的な移動を否定する
ところが研究室と梅木の遺体が見つかった場所には、短時間で往復するには遠すぎる距離があります。奈緒子が美幸から目を離したのは数分程度で、距離はおよそ五キロに及びます。
四分ほどの間に五キロを移動し、梅木を絞殺し、崖から落とし、研究室へ戻ることは、通常の徒歩や自動車では困難です。道路状況や乗り降りの時間まで考えれば、さらに余裕がありません。
上田は、物理的に可能な速度や移動方法を検討します。しかし高速で移動できたとしても、梅木を殺す時間と、凶器や証拠を整える時間が必要です。
研究室に秘密の通路や特殊な運搬装置がある可能性も考えられますが、上田自身の施設であり、そのような設備は確認できません。奈緒子の発見した監視の空白は重要に見える一方、それだけでは犯行を説明できません。
奈緒子が車両や別の運搬手段を疑う
奈緒子は、美幸が自分の足で移動したという前提を外し、車両や別の運搬手段が使われた可能性を考えます。研究室の近くまで高速で迎えに来る協力者がいれば、移動時間を短縮できるかもしれません。
しかし美幸が外へ出れば、建物の出入口や周辺に痕跡が残る可能性があります。監視場所を上田が用意した以上、美幸が事前に秘密の車両や設備を配置することも簡単ではありません。
また、美幸が現場へ行ったと考える限り、数分の空白にすべての行動を押し込まなければなりません。奈緒子は具体的な移動方法を探すほど、時間の不足という壁へぶつかります。
美幸は奈緒子の推理を聞き、瞬間移動したと考えればよいのではないかという態度を見せます。奈緒子が物理的な移動へこだわっていることを見抜き、その方向では答えに届かないと確信しているようです。
美幸の余裕が奈緒子の移動仮説を揺さぶる
奈緒子が監視の空白を指摘しても、美幸は焦りません。犯行に使った唯一の隙を発見されたのであれば、何らかの反応があってもよいはずです。
美幸の余裕からは、数分の空白さえ計画の中心ではない可能性が見えます。奈緒子へ空白を見つけさせ、車両や瞬間移動を考えさせること自体が、美幸の誘導かもしれません。
奈緒子と上田は、美幸本人が現場へ行った方法を探しています。しかし美幸が研究室から動く必要のない犯行なら、移動時間を計算することに意味はありません。
奈緒子が「美幸はいつ現場へ行ったのか」と考えている間、美幸は「自分が現場へ行った」という前提そのものを疑わせないようにしているように見えます。
第一の殺人を解明できないまま、美幸は次の標的を殺すと宣言します。今度は絞殺ではなく、見えないナイフによる刺殺でした。
見えないナイフで竹下を刺し返り血が飛び散る
第二の殺人では、美幸の演技がさらに現実へ近づきます。美幸が見えないナイフで竹下を刺す動作をすると、目の前で血が噴き出し、美幸の身体と研究室の壁へ飛び散りました。
その直後、竹下の死が確認されます。
美幸が第二の標的・竹下を刺す動作を始める
美幸は、第一の殺人を解明できない奈緒子と上田の前で、第二の標的として竹下の名を挙げます。今度はベルトを使う仕草ではなく、手に見えないナイフを握っているかのように構えました。
美幸は目の前に竹下が立っているように視線を向け、何度も刃物を突き刺す動作を行います。相手の反応まで想像しているような演技には、殺人への迷いより、奈緒子たちへ結果を見せつける余裕があります。
上田は美幸の手元を確認しますが、実際のナイフは見えません。奈緒子も、袖や衣服の中に凶器や装置が隠されていないかを観察します。
第一の殺人では、現場の遺体と物証が後から見つかりました。第二の殺人で美幸が狙っているのは、研究室にいる奈緒子と上田へ、殺人が今この瞬間に起きていると実感させることです。
美幸の身体と壁へ突然返り血が飛び散る
美幸が竹下を刺す動作を続けた瞬間、突然、血液が飛び出します。美幸の衣服や身体に付着し、研究室の壁にも赤い飛沫が残りました。
奈緒子と上田は、目の前で起きた現象に圧倒されます。梅木の事件では、研究室の演技と遠くの遺体を別々に確認しました。
しかし今回は、遠隔地の被害者から飛んできたような返り血が研究室に現れています。
奈緒子は、血が本当に空間を越えて飛んできたとは考えず、研究室内のどこかに血液を噴出させる装置があるはずだと疑います。壁、床、美幸の衣服、周辺の物を確認し、血が出た方向を特定しようとします。
ただし美幸の身体から血が現れたように見えることで、単純に壁へ装置を置いたという説明では足りません。美幸が自分で仕掛けを作動させたのか、外部から合図に合わせて動かされたのかも分かりません。
竹下の遺体が刺殺された状態で発見される
上田は矢部たちへ連絡し、竹下の安否を確認させます。やがて竹下が実際に刺殺されていることが判明しました。
竹下が死亡したと考えられる時間帯は、美幸が研究室で刺殺のパントマイムをしていた頃と重なります。第一の梅木と同じく、演技の時間と現実の死が対応しています。
さらに、竹下の傷は美幸が見せた刺す動作と結びつくような状態でした。美幸は研究室から一歩も出ていないにもかかわらず、遠くの竹下が目の前の演技どおりに死亡しています。
上田は物理学者として、血液や刃物が空間を越えて移動したとは認められません。それでも研究室にいる美幸と、現場で死亡した竹下の間を結ぶ仕組みを説明できず、言葉を失います。
返り血と凶器の物証まで美幸へ結びつく
研究室へ飛び散った血液を調べると、竹下の血液と一致します。演出用に用意した別人の血や動物の血ではなく、死亡した被害者本人の血が、美幸の身体と壁に付着していたことになります。
さらに竹下を刺した凶器からは、美幸の指紋が検出されます。梅木事件と同様に、美幸が犯行現場へいたことを示す物証がそろいます。
しかし奈緒子と上田は、竹下が死亡した時間帯にも美幸を監視していました。美幸は研究室におり、見えないナイフを振るパントマイムをしていただけです。
二人の証言は、物証と正面から矛盾します。
第6話の結末では、目撃証言が美幸の無実を証明し、指紋、毛髪、返り血が美幸の犯行を証明するという両立しない状況が完成します。
美幸は、まだ一人の標的が残っていることを示し、次の殺人でも奈緒子と上田に証人になってもらうつもりでいます。二人は監視者として呼ばれたはずが、犯罪を裁けなくするためのアリバイ装置として利用されていました。
美幸はどうやって被害者の血を研究室へ出現させたのか。凶器に指紋を残しながら、なぜ現場へ行かずに済んだのか。
第一と第二の殺人に共通する仕組みを見つけられないまま、第6話は終了します。
ドラマ「トリック シーズン1」第6話の伏線

第6話では二人の被害者が死亡しますが、瞬間移動殺人の仕組みはまだ明かされません。美幸が自分から監視を求めたこと、簡単な念動現象を見せたこと、物証を大量に残したことには、すべて奈緒子たちの思考を誘導する意図があるように見えます。
美幸が自分から監視を求めた本当の目的
殺人を計画する者にとって、常に他人から見張られる状況は不利なはずです。しかし美幸は、警察へ申し出た段階から監視を望んでいます。
この逆転した行動こそ、完全アリバイの中心です。
事件前に三人を殺すと宣言する不自然さ
美幸は、被害者が死亡する前から殺害対象を三人に絞り、自分が霊能力で殺すと宣言しました。犯行を隠したい人物なら、標的や殺意を事前に明かす理由はありません。
事前の宣言には、死亡した人物と美幸を明確に結びつける役割があります。予告した相手が本当に死ねば、偶然ではなく美幸の力によるものだと周囲へ思わせられます。
一方で警察が扱えるのは、超常的な因果関係ではなく、物理的な犯行手段です。美幸は自分が殺したと認めながら、その方法だけを説明不能にすることで、告白しても裁かれない状況を作ろうとしています。
奈緒子と上田が最も強いアリバイ証人になる
美幸の監視役に選ばれた奈緒子と上田は、普通の目撃者ではありません。奈緒子は奇術による抜け出しや入れ替わりを疑い、上田は物理的な移動可能性を検証する人物です。
この二人が、美幸は研究室から動いていないと認めれば、通常の監視員より強い証言になります。科学者とマジシャンの両方が見ても仕掛けを見つけられなかったという事実が、美幸の霊能力を補強するためです。
美幸は自分の敵になり得る二人を、最初からアリバイの一部へ取り込みました。奈緒子と上田が真剣に監視するほど、美幸には犯行が不可能だったという証明が強くなります。
殺害対象が最初から三人に決まっている理由
美幸は衝動的に標的を選んでいるのではなく、最初から三人を殺すと決めています。三人の間には、美幸が復讐を望む共通の事情があると考えられます。
第6話では、美幸がなぜこの三人を選んだのか、その全体像までは明かされません。ただ、無関係な人物を能力の実験台として殺しているのではなく、過去から続く強い感情を抱いていることは伝わります。
第一、第二の殺人で同じようにアリバイと物証を成立させていることから、三人全員を同じ計画の中で処理しようとしている可能性があります。残る一人への犯行が、これまでの二件を解く材料になるかもしれません。
美幸を示す物証が多すぎることへの違和感
犯人は通常、自分につながる指紋や毛髪を消そうとします。しかし美幸の事件では、毛髪、指紋、返り血が次々と見つかります。
これは失敗ではなく、美幸が自分の犯行を証明するために配置した証拠と考えられます。
梅木の手に残された毛髪は抵抗の証拠に見せられる
梅木の手に美幸の毛髪が握られていれば、犯人ともみ合い、髪をつかんだと考えるのが自然です。現場での接触を示す分かりやすい証拠になります。
ただし毛髪は、身体から離れた後でも別の場所へ運べます。美幸が事前に自分の髪を用意しておけば、誰かが梅木の手へ持たせることは可能です。
毛髪があることは美幸の接触を示すように見えても、美幸が死亡時刻に現場へいた証明にはなりません。奈緒子たちは、物証の存在だけでなく、いつ、誰が、どのように置いたのかを考える必要があります。
凶器の指紋は犯行時に付いたとは限らない
梅木のベルトと竹下の凶器には、美幸の指紋が残ります。どちらの事件でも同じ人物の指紋が出れば、美幸が実行犯だと考えたくなります。
しかし指紋は、犯行時ではなく、それ以前に付けることもできます。美幸が自分の指紋を付けた凶器を用意し、別の人物が使用した可能性は排除できません。
重要なのは、凶器へ美幸の指紋が残ることが、美幸にとって不利益になっていない点です。完全なアリバイがあるため、指紋が出るほど「現場へ行かずに殺した」という異常さが強調されます。
返り血が研究室に現れた方法が第二の殺人の鍵になる
第二の殺人で最も不可解なのは、竹下の返り血が研究室へ現れたことです。指紋や毛髪は事前に移動できますが、被害者本人の血液を、殺人と同じ時間に噴出させるには準備が必要です。
美幸の衣服や周辺の壁に、血液を入れた小さな容器や噴出装置が隠されていた可能性があります。ただし奈緒子は美幸を間近で監視しており、明らかな装置には気づくはずです。
また、竹下の血液が事前に採取されていたのか、殺害後に運ばれたのかによって、事件の時間関係も変わります。血液の出現は超常現象のように見えますが、誰かが研究室へ血を用意できたなら、外部の協力を疑う必要があります。
美幸へつながる証拠が増えるほど、犯人を追い詰めるのではなく、美幸が現場へ行かずに殺せたという物語が強くなっています。
四分間の空白と簡単な念動現象が誘導する推理
奈緒子は、美幸から目を離した数分間に注目し、研究室と犯行現場を往復する方法を探します。しかし時間と距離は合いません。
美幸が見せた簡単な手品も、奈緒子を「本人が動いた方法」へ集中させる誘導に見えます。
監視の空白は重要そうに見えて時間が足りない
一晩の監視に数分の空白があったことは、美幸の完全アリバイを崩す手がかりに見えます。しかし約五キロ離れた場所へ移動し、殺人を行って戻るには短すぎます。
移動速度だけを上げても、被害者へ近づき、抵抗を抑え、凶器を使い、遺体を処理する時間が必要です。四分という数字へすべてを押し込むのは現実的ではありません。
そのため、監視の空白が犯行そのものに使われたのではなく、証拠や装置を操作するために使われた可能性も考えられます。奈緒子は移動距離だけでなく、空白の間に研究室内で何が変化したかを見る必要があります。
美幸本人が現場へ行くという前提が仕掛けになる
奈緒子と上田は、美幸の指紋や毛髪が現場にある以上、美幸本人が何らかの方法で移動したと考えます。瞬間移動、秘密通路、高速の車両など、本人を現場へ届ける方法を探しています。
しかし美幸が現場へ行く必要がなければ、距離と時間の矛盾は消えます。誰かが美幸の物証を持ち、代わりに犯行を行うことができれば、美幸は監視下に残れます。
第6話では、その協力者が誰なのか、どのように美幸と連携しているのかは分かりません。ただ、美幸が研究室で行うパントマイムと、遠くの犯行が正確に対応している以上、一人だけでは成立しない可能性が高まっています。
小さな念動現象は美幸の手元だけを疑わせる囮
美幸が最初に見せた念動現象は、奈緒子がすぐ見破れる程度の仕掛けでした。能力者としての信用を得たいなら、見せる意味がないように思えます。
しかし奈緒子が仕掛けを見抜けば、美幸の現象はすべて手品であり、美幸本人が何かを操作していると考えます。研究室にある糸、装置、秘密通路などへ注意が向きます。
本命の殺人が研究室の外で別の手順によって行われているなら、小さな手品をわざと見破らせることは効果的です。奈緒子の観察力を働かせながら、見るべき対象だけを誤らせられるからです。
ドラマ「トリック シーズン1」第6話を見終わった後の感想&考察

第6話の面白さは、犯人らしき美幸が自分の無実を主張しないところにあります。指紋も毛髪も返り血も自分のものだと認め、殺したのも自分だと言いながら、具体的な犯行方法だけを警察へ証明させません。
美幸はアリバイを隠さず奈緒子と上田に作らせる
通常のミステリーでは、犯人がどのように監視を抜け出したのかが問題になります。しかし美幸は抜け出した形跡さえ見せず、監視者自身に犯行不可能を証言させます。
この発想の逆転が、瞬間移動殺人を強く見せています。
監視役が事件解決者から犯人側の証人へ変わる
奈緒子と上田は、美幸の能力を暴き、殺人を防ぐために監視を始めました。ところが梅木と竹下が死亡すると、二人は美幸が研究室にいたことを証言しなければなりません。
監視を怠ったと認めれば自分たちの責任になりますが、厳密に見ていたと証言すれば、美幸の完全アリバイを補強します。どちらを選んでも美幸に有利な状況です。
美幸は、奈緒子と上田が嘘の証言をしない人物だと理解していたように見えます。二人は美幸を嫌疑から外したいわけではなくても、自分が見た事実を曲げることはできません。
美幸は監視を突破したのではなく、正直な監視者ほど自分を無罪に近づける状況を作りました。
科学者とマジシャンの権威が美幸の力を証明する
上田は物理学者として、研究室から犯行現場への移動が不可能だと説明します。奈緒子はマジシャンとして、秘密通路や入れ替わりを疑いながらも、美幸が長時間その場にいたことを認めます。
二人の専門性は、本来なら霊能力を否定するためのものです。しかし現象を解けないまま監視の確かさだけを保証すると、美幸の遠隔殺人を本物らしく見せます。
美幸は科学と奇術を敵視するのではなく、自分の計画へ利用しています。上田が移動不可能と計算し、奈緒子が手品を見抜けないほど、超常殺人という説明が強くなります。
上田の女性への弱さも監視の穴として利用される
上田は美幸の外見に気を取られ、奈緒子ほど厳しく警戒できていません。美幸の言葉を好意的に受け取り、危険人物として距離を取るより、自分へ関心を持つ女性として意識しています。
この弱さが直接犯行を可能にしたと断定はできませんが、美幸にとって上田は反応を読みやすい人物です。親しげに振る舞えば警戒を緩め、恐怖を見せれば守ろうとする可能性があります。
奈緒子は上田の浮つきへ苛立ちますが、その苛立ちによって美幸だけでなく上田の行動まで気にすることになります。美幸は二人の関係性も含めて、監視する側の注意を分散させているように見えます。
霊能力で殺したと告白しても裁けない犯罪の怖さ
美幸は殺意も対象も結果も隠しません。それでも、霊能力が殺人手段として認められなければ、告白だけでは逮捕できません。
第6話は、真実らしきものと法的に立証できるもののずれを中心に置いています。
本人の告白より因果関係の証明が必要になる
美幸が梅木と竹下を殺したと語り、実際に二人が死亡しても、それだけでは通常の殺人として十分ではありません。美幸の言葉が虚言や偶然の予知だった可能性を排除できないためです。
警察は、美幸が凶器を使ったこと、被害者へ接触したこと、共犯者へ命令したことなど、死へつながる具体的な行為を示す必要があります。
美幸は、この立証の必要性を逆手に取ります。自分が犯人だと印象づける物証を残しながら、監視アリバイによって具体的な犯行行為だけを否定します。
物証とアリバイが両立すると法律は動きにくくなる
指紋、毛髪、返り血は、美幸と事件を結びつけます。一方、奈緒子と上田の証言は、美幸が現場へ行けなかったことを示します。
警察が物証だけで逮捕すれば、弁護側から監視アリバイを指摘されます。アリバイだけを重視すれば、現場に残る明白な証拠を無視することになります。
この矛盾を解消するには、美幸が現場へ行かずに物証を残した仕組みか、美幸以外の人物が犯行を行った可能性を示さなければなりません。超常現象として処理する限り、法は事件へ届きません。
美幸が狙っているのは証拠のない完全犯罪ではなく、証拠がありすぎるのに犯行方法だけを証明できない犯罪です。
美幸は被害者だけでなく制度へ復讐しているように見える
美幸が特定の三人へ強い恨みを持っていることは明らかですが、彼女の態度には個人的な復讐を超えた優越感があります。警察へ自ら現れ、科学者とマジシャンを呼び、目の前で殺人を成立させます。
美幸は、警察が超常現象を扱えないことを知り、上田が物理的に不可能だとしか言えない状況を楽しんでいます。自分を裁けない制度の無力さを見せつけることも目的に見えます。
被害者を殺すだけなら、もっと隠れた方法を選べた可能性があります。それでも公開の監視を求めたのは、自分の知恵が科学と法律を上回ったと証明したいからでしょう。
奈緒子と上田が同じ事件を別の弱点から見る
奈緒子は仕掛けを探し、上田は移動距離や物理法則から可能性を絞ります。しかし美幸は、それぞれの思考の癖を利用しています。
二人が互いの弱点を補わなければ、同じ誘導から抜けられません。
奈緒子は自分が見落とした数分間へ執着する
奈緒子はマジシャンとして、観客が目を離した瞬間に仕掛けが動くことを知っています。そのため数分の監視の空白を見つけると、そこへ犯行の中心があると考えます。
しかし、空白を発見したこと自体が美幸の想定内なら、奈緒子は用意された謎を解いているだけです。美幸本人が移動したという前提を変えない限り、四分と五キロの矛盾を越えられません。
奈緒子の観察力は鋭い一方、目の前の人物が仕掛けを動かすというマジックの基本構造へ引っ張られています。今回は舞台の外側にいる人物や、事前に準備された物証を見る必要がありそうです。
上田は不可能な移動速度の計算から抜け出せない
上田は研究室と崖の距離、監視の空白、移動に必要な速度を計算します。その結果、美幸本人が犯行を行うのは不可能だと結論づけます。
この結論は正しくても、事件解決にはなりません。不可能だから霊能力だと認めるのではなく、移動しなくても成立する方法を考える必要があります。
上田は科学的な計算へ自信を持つほど、計算の前提となる人物や時刻の認識を疑いにくくなります。美幸は上田が出す「移動不可能」という結論を、自分のアリバイへ利用しています。
互いの記憶を照合することが真相への入口になる
奈緒子と上田は、美幸を監視した時間、目を離した場面、パントマイムの時刻を別々の立場から記憶しています。どちらか一人の記憶だけなら、見間違いや時間の誤認で処理される可能性があります。
しかし二人が行動を照合すれば、美幸がどの場面で誰の注意を誘導したのかを細かく再構成できます。相手を疑い合うより、自分が見ていなかった部分をもう一人の記憶で補うことが重要です。
美幸は奈緒子と上田をアリバイの証人にしましたが、二人の異なる視点が結びつけば、そのアリバイを崩す証人にもなり得ます。
第6話の段階では二人とも答えへ届きません。それでも第二の殺人で返り血という新しい物証が加わったことで、美幸の身体、研究室、犯行現場を結ぶ具体的な仕掛けを探れる状態になりました。

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