第4話「村人が全員消えた」は、『トリック』の空気が一段階、ホラー側へ傾く回です。
爆発も奇跡も起きていない。
あるのは、人だけがいなくなった村と、昨日まで営まれていた生活の痕跡。
畑は手入れされ、食卓は途中で止まり、扇風機だけが回り続けている。
この“説明不能な日常の空白”が、じわじわと視聴者の神経を削ってきます。
さらにこの回では、自称霊能力者・ミラクル三井の登場によって、奈緒子の個人的な因縁――父・山田剛三の影――が事件と直結。
そしてラスト、上田の失踪と「首のない死体」という最悪の引きが投下され、笑いで逃げられない『トリック』が顔を出します。
第4話は、事件が始まる話ではありません。世界そのものが信用できなくなる回です。
トリック(シーズン1)4話のあらすじ&ネタバレ

第4話「村人が全員消えた」は、シーズン1の中でも“空気の質”が一段変わる回です。
前の章である「母之泉」が“人の欲望”を宗教という形で煮詰めた話だったとしたら、ここからは「村」という共同体そのものが、異様に見えてくる。人が一人もいないのに、生活だけが残っている――その違和感で、視聴者の足元をじわじわ崩してくる導入になっています。
依頼は「村人が消えた」から始まる
発端は、群馬県の山間にある宝女子村(ほうめごむら)。そこに赴任したばかりの駐在警官・前田から、本署に一本の通報が入ります。内容はシンプルで、だからこそ怖い。
「村人が……全員いなくなりました」
“失踪”というより、“最初からそこにいないみたい”な空白。
警察は半信半疑で捜索隊を出すものの、入ったはずの捜索隊まで行方不明になってしまう。普通の事件の捜査手順が、通用しなくなる。そこで白羽の矢が立つのが、科学の権威でありながら超常現象に首を突っ込み続ける男――上田次郎です。
上田に持ち込まれる「不自然すぎる案件」
上田が呼び出されるのは、警察の公安側の人間(伊藤)からの依頼。
いかにも“面倒そうな匂い”がする案件なのに、上田は妙にノリがいい。ここが上田らしいところで、本人は「科学的に解明してやる」という使命感を装いながら、心のどこかでは“自分の理屈が勝つ舞台”にワクワクしている節がある。
ただし、上田ひとりで現場に行くのは心許ない。そこで、当然のように呼ばれるのが山田奈緒子。
奈緒子にとっては、事件よりもまず「家賃」「生活」「今日を生きる」の方が切実なので、上田の誘いは胡散臭い副業案件にしか見えない。それでも、金の匂いと、断り切れない“縁”が背中を押して、またしても二人は同じ現場に立つことになります。
4人パーティの妙なバランス
今回、村へ向かうメンバーは、上田・奈緒子・矢部・前田(駐在警官)の4人構成が軸になります。
- 上田:理屈を立てる人間(しかし恐がり)
- 奈緒子:現場を肌で見る人間(しかし貧乏で現実的)
- 矢部:捜査側の人間(しかし見栄と保身の塊)
- 前田:現場を見た人間(しかし怯えきっている)
このバランスが絶妙で、視聴者の視点を“理屈”“感覚”“権威”“当事者”の4方向に分散させる。結果として「誰の目線でも不安が消えない」作りになっています。
宝女子村へ――人だけが消えた、生活だけが残る
宝女子村に入った瞬間から、空気が変わります。
家はある。畑もある。道もある。けれど、人だけがいない。
さらに不気味なのが、“消えたのがついさっき”のような痕跡が残っていること。
食卓には食事の支度が残り、扇風機が回り続けていたりする。つまり「誰かがここで暮らしていた」という事実は、あちこちにべったり貼りついているのに、住人の姿だけが抜け落ちている。
この手の演出は、ド派手な怪現象より怖いんですよね。瞬間的な驚きではなく、「説明がつかない状態が続く」恐怖。理屈が追いつく前に、視聴者の身体が先に“嫌だ”と感じる。
“現れては消える”謎の少女
探索中、奈緒子たちは村で一人の少女を見かけます。――しかし、その少女は追いかけても追いかけても、ふっと視界から消えてしまう。
この「いる/いない」の感覚が、村の不気味さに“幽霊っぽさ”を足してくるのがいやらしい。奈緒子が怖がるというより、むしろ冷静に観察しようとする分、怖さが増す。しかも矢部はこういう現象が大嫌いなので、テンションが“捜査”ではなく“帰りたい”へ傾いていく。
ミラクル三井の登場――「消したのは私です」
そして、この章の顔が出てきます。
自称霊能力者、ミラクル三井。
彼は「村人を消したのは自分だ」と言い切り、堂々と“超常現象の犯人”として立ちはだかる。ここで重要なのが、TRICKが毎回やる手口――権威と演出で、先に信じさせるという構造です。
ミラクル三井は、ただ能力を主張するだけじゃない。
喋り方、立ち姿、見せ方、言葉のテンポ――全部が「信じさせるための舞台装置」になっている。
そして奈緒子は、こういう“舞台の作り方”に敏感な側の人間です。マジシャンだから。だから余計に、彼のことが許せない。
“因縁”が刺さる:山田剛三の名前
ミラクル三井の話が進むにつれ、奈緒子の胸に刺さる名前が出てきます。
山田剛三――奈緒子の父であり、天才マジシャン。
三井は過去に大衆の前で「それは手品のトリックだ」と暴かれ、屈辱を受けた。その相手として剛三の影がちらつく。ここがこの回の面白いところで、事件が“村”の話でありながら、奈緒子の個人的な感情にも火がついてしまうんです。
奈緒子は普段、貧乏だし、やさぐれてるし、目の前の生活でいっぱいいっぱいに見える。でも「マジック」という“誇り”の部分に触れられると、急に芯が出る。この回の奈緒子は、そういう「怒りのスイッチ」がはっきりしていて良い。
三井が見せる“証明”――前田が「過去ごと」消える
奈緒子たちが疑いの目を向けた瞬間、三井は「なら見せてやる」と言わんばかりに、より強いデモンストレーションに出ます。
そこで標的になるのが、怯えきっている前田。
三井は前田を“消す”。しかも、ただ姿を消すだけで終わらない。
「過去ごと消す」――つまり、存在そのものをなかったことにするような消失。
これが本当に恐いのは、物体消失よりも、「記録」「証拠」「記憶」にまで手が伸びる気配があることです。目の前の人間がいなくなるだけでも十分ホラーなのに、「いなくなった人間を思い出すことすら許されない」方向へ、じわじわ話が滑っていく。
上田の失踪、そして「首のない死体」
さらに追い打ちをかけるように、上田が姿を消します。
理屈で押し切ろうとする男が、“理屈の外”に飲み込まれる展開は、TRICKの中でもかなり意地が悪い。
そして奈緒子と矢部が見つけるのが、押し入れの中の“首のない死体”。
服装や体格が上田に似ている。――けれど、首から上がない。
この瞬間、奈緒子が思わず絶叫してしまうのが、視聴者としても刺さります。奈緒子は基本的に強がるし、冷静な顔を作ろうとする。でも、目の前にある“死”のリアルが想像を超えてくると、身体が反射で叫んでしまう。
第4話は、ここで終わります。
村人が消えた謎は解けない。前田も消えた。上田まで消えた。
そして“死体”だけが残る――。
笑いと不穏のバランスが、ここまで一気に恐怖側へ傾く回も珍しくて、だからこそ「続きが気になって仕方ない」引きになっていました。
トリック(シーズン1)4話の伏線

第4話は「解決編へ続く前編」なので、伏線が“刺さったまま終わる”気持ち悪さが強い回です。
ここでは、4話時点で提示されている違和感やキーワードを、後の回収まで見越して整理します(※次回の展開に触れるものも含みます)。
「生活だけ残っている」違和感
村から人がいなくなっているのに、家や食卓や日用品が“今さっきまで使われていた”ように残っている。
これは超常現象っぽさを演出しつつ、同時に「意図的に人が消えたように見せているのでは?」という推理の足場にもなる伏線です。
“消失”が「存在」まで及ぶという恐怖
前田の消え方がポイント。単に姿が見えなくなるだけなら、隠し通路や煙幕でも成立します。
でも「過去ごと」「存在ごと」という方向に話が振られることで、視聴者は“トリックで説明できる範囲”が揺さぶられる。
この揺さぶり自体が、TRICKがいつもやる「信じかける→疑う→また信じかける」の心理誘導になっています。
謎の少女の出現
村に現れては消える少女は、事件の“怖さ担当”であると同時に、宝女子村が抱える秘密を示すサイン。
この少女の存在があることで、村の消失が「ミラクル三井だけの芸」ではなく、村そのものの闇へ繋がっていると匂わせます。
ミラクル三井と山田剛三の因縁
三井がただの詐欺師ではなく、「暴かれた過去」と「恨み」を背負っていること。
そしてその因縁の相手に“奈緒子の父”が絡むことで、事件が奈緒子側の物語にも食い込んでくる。
この回の奈緒子の苛立ちがやけにリアルなのは、ここが刺さっているからです。
前田の怯えと“立ち位置の不自然さ”
前田は事件の第一通報者で、唯一生き残った存在として描かれます。
でも「恐怖に支配されている」「村に戻るのを嫌がる」という挙動が強調されるほど、逆に“何かを隠している可能性”も濃くなる。前編の時点では断言できないけれど、見返すと引っかかるポイントです。
上田が消える=「理屈役」が奪われる構造
上田がいなくなるのは、単に事件が危険という演出ではなく、視聴者の安心材料(検証役)を奪う構造的な伏線になっています。
上田が不在だと、現場の判断は奈緒子と矢部に委ねられ、理屈より先に“体感の怖さ”が来る。
その結果、視聴者も「もしかして本物なのか?」に寄ってしまう。これが次回の恐怖を増幅させる仕掛けです。
首なし死体の“見せ方”が残す疑問
首なし死体は、衝撃の引きとして強烈ですが、同時に「上田かどうか確証が持てない」形で置かれます。
ここが卑怯で、視聴者は“上田が死んだ”と信じたいわけじゃないのに、「でも見た目はそうだ」という不安を背負わされる。この曖昧さ自体が、次回の推理・種明かしに繋がる重要な伏線です。
トリック(シーズン1)4話の感想&考察

第4話を見終わった直後に残るのは、「え、これ深夜ドラマのテンションで見てていいやつ?」という感情です。
TRICKは基本、笑える。でも第4話は笑っていた口が、いつの間にか閉じてる。怖いというより、嫌な感じがずっと続く。ここがこの回の強さだと思います。
“消失”が怖いのは、マジックじゃなくて「空白」だから
派手な超能力演出って、見てる側が“見世物”として処理できるんですよ。
でも宝女子村の消失は、そうじゃない。
家があるのに、人がいない。
使われた形跡だけがある。
そのせいで、視聴者は「村人が消えた」という事実より、「なぜこの空白を受け入れてしまうのか」に目が行く。
ここがTRICKの“オカルト×科学”の上手いところで、超常現象を盛るほど、最後に残るのは「人はどうして信じてしまうのか」という人間の話に落ちる。第4話は、その土台作りがものすごく丁寧です。
ミラクル三井は“強敵”だけど、嫌い切れない
ミラクル三井って、登場の時点で圧が強い。
声の張り方も、間の取り方も、常に舞台の上。
だから普通に見たら「はいはい、胡散臭い霊能力者ね」と切れるはずなんだけど、剛三との因縁が入った瞬間、急に“人間の傷”が見えてくる。
彼は「能力を信じさせたい」んじゃなくて、もっと根っこで「自分の存在を信じさせたい」側の人間に見える。
だからこそ、奈緒子の反発も“正義”だけではなくなる。マジシャンとしての誇り、父への感情、自分が売れないという現実――いろんな感情が混ざった反発になる。
この“混ざり方”がTRICKらしい。善悪でスパッと切らないから、後味が残る。
矢部がいると、怖さが増す(頼りないから)
矢部って基本的にコメディの人なんですけど、この回に限っては「こんな人しか味方がいない」という絶望を底上げする装置になってます。
上田が理屈で引っ張ってくれるうちは、矢部がポンコツでも笑える。でも上田が消えた瞬間、矢部の頼りなさが一気に現実になる。
奈緒子が“相棒”として矢部を見なきゃいけない瞬間が生まれて、そこで初めて「奈緒子って、こういう状況でも立っていられるんだな」という強さが見えてくるのが良い。
奈緒子の絶叫が、視聴者の感情そのもの
首なし死体のくだり、TRICKとしては結構攻めてます。
“事件もの”だから死体は出る。でも、上田らしき死体を出すのは反則級に効く。
奈緒子が叫んだのは、単にホラー演出に乗ったからじゃなくて、やっと感情が漏れたからだと思うんですよね。
奈緒子って、普段は損しても強がるし、貧乏でも口では負けないし、辛くても「どうせ私なんて」で飲み込む人。そういう人が、飲み込めないものを見た時の声って、視聴者の声に重なる。
ここで終わるのも巧い。
謎も解けない。安心もない。
ただ「続き見ろ」という引きだけが残る。
考察:この回が描いているのは「消える現象」より「消される恐怖」
第4話のテーマを一言でまとめるなら、「消える」じゃなくて「消される」です。
村人が消えた。前田が消えた。上田が消えた。
そしてそれは、“何かにやられた”ではなく、“誰かの手によって消されたかもしれない”方向へ進む。
ここが怖い。
怪奇現象より、人間の悪意の方が怖い。
そしてTRICKは、いつも最後にそこへ着地する。
だから第4話は、まだ答えを出さない代わりに、「この物語は結局、人間の話だよ」と骨だけ先に見せてくる。
この“骨の見せ方”が上手いから、解決編が気になって止まらないんだと思います。
トリックの関連記事
トリックシーズン1の全話のネタバレはこちら↓

トリックの考察記事については

次回以降のお話はこちら↓

トリックの過去の話についてはこちら↓



コメント