第6話を見終えたあと、「助かったな」より先に、ぞっとする感覚が残りました。
事件は解決する。
東海林の容疑も晴れる。
それでも、この回はどこか後味が悪い。
理由ははっきりしています。第6話が描いたのは、
人が疑われた瞬間に、どんな言葉を投げられるのか
そして、社会がどれだけ簡単に“犯人役”を作ってしまうのか、という現実だったからです。
タイトルの「友達じゃない」は、事件の加害者たちだけを指していません。
誰を信じ、誰を切り捨てるのか。その線引きが、静かに、でも確実に変わっていく回でした。
ここでは、東海林が疑われた連続殺人事件の流れを整理しながら、なぜ第6話がシリーズの“空気を変えた回”なのかを考察していきます。
アンナチュラル6話のあらすじ&ネタバレ

第6話のタイトルは「友達じゃない」。ここまでのシリーズが積み上げてきた“UDIの仕事”に、いよいよ現実の社会が本気で噛みついてくる回です。
事件自体は「連続殺人の容疑者に東海林がされる」という、UDIにとって最悪の構図から始まります。
公式のあらすじでも、東海林が疑われること、そして中堂が「任意同行に応じると殺人犯にされる」と逃亡を促すことが明言されているのが、この回の緊迫感を象徴してます。
前振り:前回の“後味”を残したまま、東海林が合コンへ
第5話でミコトと中堂がぶつかり合った後、UDIの空気はどこかピリついている。
そこへ東海林が「異性間交流会(合コン)」に参加する流れが入ってくるのが、上手いんですよね。空気が重いところに“日常”を差し込むから、次に来る非日常が鋭く刺さる。
そしてこの合コンが、ただの恋愛小ネタで終わらない。東海林が参加したのは、高級スポーツジム「ASID」主催のパーティー。そこで出会う男たちが、そのまま事件の中心に入ってきます。
ホテルの朝:東海林、隣に死体で目を覚ます
翌朝。東海林が目を覚ます場所は、見覚えのないホテルのベッド。
隣には昨夜のパーティー参加者・権田原登が“死体”として横たわっている。東海林は混乱し、ミコトをホテルに呼び出す。けれど、東海林本人は「店を出た後の記憶がまったくない」。状況だけ見れば、最悪の“容疑者ポジション”です。
ミコトは遺体の状態から、窒息死の可能性を直感する。さらに、遺体には“ある痕”がある。ここがこの回のミステリーの入口で、後から回収される「赤い痕」=感電の痕跡に繋がっていきます。
2人目の死体:UDIでつながる「同じジム」と「同じ死」
一方UDIでは、中堂と六郎が、道端で突然死した男性の解剖をしていた。
偶然にも、その男性と権田原の“意外なつながり”が判明する――事件は「偶然の連鎖」ではなく「同じ円の中で起きている」ことが早々に提示されます。
その突然死の男性は細川隆文(外資の銀行マン)。そして権田原と細川は、どちらも高級ジムASIDの会員。しかも2人とも“窒息死所見+手首や耳の後ろの発赤”という共通点がある。東海林の記憶喪失も含めて、警察が「連続殺人」を疑うには十分すぎる材料が揃っていきます。
容疑者・東海林:警察が作る“分かりやすいストーリー”
警察は連続殺人事件として捜査を開始。で、矛先が向くのは東海林。
「第一発見者」「直前まで一緒にいた」「記憶がない」。この3点セットは、現実でもドラマでも一番疑われる。
ここで中堂が東海林に言い放つのが、あの一言――
「警察の任意同行に応じると殺人犯にされる」。
このセリフ、単なる“反権力”じゃなくて、中堂自身の過去(冤罪・取り調べ)を背負った言葉として響く。だから怖いし、説得力がある。
さらに神倉所長にとっても、東海林が逮捕されるのはUDIの存続に直結する。UDIチーム全体が“死因究明+仲間を救う”の二重タスクに追い込まれていくのが、この回の加速装置です。
手掛かりはバイタルデータ:ウェアラブルが“証言”し始める
この回のキモは、タイトルの人間関係だけじゃなく「データ」です。
亡くなった2人はジムで、腕時計型の装置と耳のイヤーカフでバイタルデータを取っていた。そこに残っている“数字”が、死の直前の状況を語り始める。
目撃者がいなくても、データが「何かが起きた」ことを示してしまう。現代らしい怖さ。
社長・岩永への接近:嘘の肩書きと、写真一枚の突破口
ミコトと東海林は、ウェアラブル機器を開発した会社の社長・岩永充に接触する。岩永はジムASIDの会員でもある。
ここで面白いのが、ミコトが“別の仕事をしている医師”のフリをして話を引き出すこと。法医学者って「法廷で戦う」だけじゃなく、必要なら現場で嘘もつく。正義のための手段が、いつも綺麗とは限らない。
そしてバイタルデータを“写真に撮る”という、地味だけどリアルな突破口で情報を持ち帰る。
この小さな行為が、後で事件の構造をひっくり返します。
坂本再登場:明邦大学で得る「窒息死の空白」
死因究明の手掛かりを求め、ミコトと六郎は、UDIを去った坂本誠が働く大学へ向かう。
6話が“UDIのネットワーク”を使う回でもあることが分かる場面です。
坂本が立ち会った司法解剖では「窒息死」までは見えても、“どうやって窒息したか”が分からない。ここが事件の核心。
外傷もない、薬物も出ない。なのに呼吸が止まっている。つまり、凶器は「ロープ」でも「毒」でもなく、もっと別の形で仕込まれている。
宍戸が握る“悪い仲間”の過去:集団暴行と暗号通貨
六郎は情報を得るため、フリー記者・宍戸理一に接触する。ここから6話は、単なる一話完結ではなく、シリーズの縦軸(六郎と週刊誌、宍戸と中堂)を一気に前進させます。
宍戸が持ち込む情報で明らかになるのは、権田原と細川が“学生時代の仲間”で、さらに“集団暴行事件”を起こしていたこと。加えて現在、4人組で仮想通貨の詐欺に関わり、4億円を得ていた――事件の動機が「金の取り分」だったことまで踏み込まれていきます。
悪い仲間はあと2人。
ベンチャー企業社長:岩永充
パイロット:立花圭吾
仕掛けられた殺人:コンデンサと“微小電流”
UDI側の検証で決定的になるのは、「亡くなった2人の端末だけに、他と違う仕込みがあった」こと。
バイタルセンサーにコンデンサが組み込まれ、微小な電流を流し、それをイヤーカフで増幅させて神経を麻痺させ、結果的に窒息死に至らせた――というロジックが組み上がる。
そんな細工ができる人間は誰か。
機器の開発者で、端末にアクセスできる人間――つまり、岩永が浮上する。
最終局面:小型機、離陸直前。滑走路へ“突入”するフォレスト車
この回のクライマックスは、UDIが「次の犠牲者」を救うために動く場面。
残る1人、パイロット立花が狙われていると分かった時点で、殺害が成功すれば“飛行機事故”という二次災害に飛び火する。
そこでミコトと東海林、そして木林(フォレスト葬儀社)が飛行場へ向かう。
滑走路という“止まれない場所”で、命を止めないために車が突っ込む。
この逆転の絵が、ドラマ的に強い。しかもこれ、ただ派手なだけじゃなくて「UDIは死者だけでなく、生者の未来も救う」というシリーズの理念を、アクションで説明してるんですよね。
真相:友達ではない男たちが、金と秘密で食い合った
最終的に、岩永が権田原と細川を殺し、さらに立花も消そうとしていた構図が固まる。動機は「4億円の取り分」と「過去の汚れた秘密」。
“友達”と呼べる関係ではなく、利害でつながった男たちが、最後は利害で殺し合う。
タイトル「友達じゃない」が、事件そのものにも刺さってくる。
事件の後:ミコトと東海林の乾杯、そして六郎の落とし穴
事件が終わり、東海林の容疑は晴れる。
ラストは、ミコトと東海林が屋台で乾杯する一方で、中堂と所長が所長室で酒盛りをしている描写が入る。
そして、もう一つの“後味”。
六郎は宍戸から、あの脅迫文に関する情報を突きつけられていく。
つまり、六郎は「情報を取りに行ったつもりで、情報に取り込まれる」ターンに入った。
この回のラストが爽快で終わりきらないのは、この“落とし穴”がきっちり仕込まれているからです。
アンナチュラル6話の伏線

6話は事件としては完結しているのに、シリーズ全体の背骨が太くなる回でもあります。
タイトルの「友達じゃない」は、回収しつつ、次の地獄への道標にもなっている。ここでは“あとで効いてくる”要素を、伏線として整理しておきます。
「友達じゃない」二重の意味:ミコト×東海林/六郎×宍戸
この回、明確に対比が組まれてます。
ミコトと東海林:口では「友達じゃない」「ただの同僚」と言う。でも行動は完全に“味方”。
六郎と宍戸:言葉では「俺たち友達なんだから」と距離を詰める。でも実態は“脅し”と“支配”。
同じ「友達」という言葉が、片方では絆の確認に、片方では鎖になる。この言葉遊びが、後の展開(六郎のスパイ問題、宍戸の暗躍)に直結するのが怖い。
中堂の「任意同行=自白させられる」発言が示す過去
中堂の「逃げろ」には、ただの荒っぽさじゃなく“取り調べの恐怖”が乗ってる。
つまりこの回は「中堂がなぜ警察を信用しないのか」の説明回にもなっていて、彼の復讐(夕希子事件)の根っこを補強している。
脅迫文の正体:UDIが“外から”狙われているサイン
第4話で出てきた脅迫文「お前のしたことは消えない 裁きを受けろ」。
第6話で、その貼り紙が宍戸の指示で行われたこと、侵入者(門松)が六郎を見ていたことが明かされる。
これ、単に「宍戸は嫌な奴」という話じゃない。
“UDIの内部”がすでに外部の視線にさらされ、侵入され、物語化される準備が整っている、という宣告なんですよね。次回以降、UDIが抱えるリスクが一気に現実味を帯びる。
バイタルデータとウェアラブル:証拠の形が変わる伏線
第6話の事件は、デジタルの健康データが“死の鍵”になる。
ここで一度「データは嘘をつかない(ただし改ざんされる)」という構図が提示されると、今後の事件でも「証拠が物ではなく情報」という方向に観客の視点が鍛えられていく。
シリーズとして新しい推理の型を提示した回でもあります。
木林の“便利さ”が増していく危うさ
木林はこの回で、調布西飛行場までのドライブと滑走路突入という派手な活躍を見せる。すでに彼は“中堂の私的依頼を遂行できる戦力”として機能している。
この便利さは、後々「中堂がどこまで踏み込めるか」という危険なラインを押し広げる材料にもなる。味方がいる復讐は、加速するから。
アンナチュラル6話の感想&考察

6話を見終わったあと、僕の中に残ったのは「スカッとした」よりも「怖っ…」の方でした。
事件が解決して、東海林の容疑も晴れる。それでも後味が軽くないのは、この回が“人間の言い訳”と“社会の偏見”を真正面から扱っているからだと思います。
被害者が「クズ」でも、死因究明を止めないという矜持
この回、亡くなった男たちの過去がエグい。集団強姦事件、仮想通貨詐欺、金の取り分で仲間割れ。視聴者の感情としては「因果応報じゃん」と寄りたくなる。
でも、ミコトたちは“だから放っておく”を選ばない。
ここが『アンナチュラル』の背骨で、「不自然な死を許さない」は“善人だけを救う”ではないんですよね。むしろ、誰が死んでも社会は死因を曖昧にしがちだから、UDIが必要になる。
「友達じゃない」からこそ守れる距離感
ミコトと東海林の関係って、分かりやすい“親友”じゃない。
お互いの過去を全部話さないし、踏み込まない。でも、事件の現場では命を賭けて動く。僕はここに、仕事の相棒としての理想形を見ました。
「友達」って、良い言葉なんだけど、時に“期待”を抱かせる。
「ここまでしてくれるはず」「ここまで話すべき」。
でも「同僚」なら、線引きしながら、必要なときに全力で支えられる。6話の乾杯シーンが効くのは、その線引きが“冷たさ”じゃなく“信頼の形”として描かれてるから。
東海林への“二次加害”がリアルすぎる
この回、僕が一番胸糞悪かったのは、東海林が疑われる流れそのものより、「疑われたときに投げられる言葉」の方です。
「酒を飲んだ方にも問題」「服がどうこう」という、論点ずらしの“ありがちな二次加害”が出てくる。そしてミコトが「同意のない性行為は犯罪」と跳ね返す。
ドラマって、どうしても事件の派手さに目が行くけど、こういう「言葉の暴力」をちゃんと描く作品は信用できる。
東海林が“事件に巻き込まれた”のに、世間は簡単に“自己責任”にする。この社会の癖を、ミコトが司法解剖医として、じゃなく一人の人間として止めに入るのが強い。
テクノロジーの怖さ:健康データが凶器になる時代
バイタルセンサーって本来、健康のための道具です。
でも6話は、その道具が“殺人のスイッチ”になる。ここが現代的で、嫌なリアリティがある。
僕らは便利さの代わりに、身体の情報を差し出してる。
その情報が「医療」や「保険」だけじゃなく、「犯罪」にも流用され得る。6話はそこを、エンタメの形で突きつけてきます。
六郎が一番怖い位置に立った回でもある
事件の解決で安心した直後に、六郎が宍戸に絡め取られる。
ここから六郎は“ただの弟キャラ”じゃいられない。
宍戸の恐ろしさは、暴力じゃなく「物語化」なんですよね。真実より“面白い記事”を優先し、人の人生を材料にする。
そして「友達」という言葉で距離を詰め、逃げ道を塞ぐ。これ、現実にもいるタイプの支配で、だから怖い。
まとめ:6話は「折り返し」ではなく「構造が変わる回」
事件としてはドタバタで、アクションもあって、最後は乾杯で終わる。なのに、シリーズ全体で見ると6話は“温度”が変わるポイントだと思います。
UDIが外部(警察・メディア)に本格的に狙われ始める
中堂の過去が言葉として噴き出す
六郎が宍戸に捕まる
「友達」という言葉の美しさと怖さが、同時に提示される
だから6話は、見終わった瞬間より、あとから効いてくる回。
「友達じゃない」と言いながら、誰よりも背中を預け合う2人がいる。
その対比で、これから“友達”を名乗る誰かが、もっと恐ろしく見えてくる。
そんな回でした。
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