前回、勝男と鮎美の“本音”がようやく少しずつ見え始めたその矢先。

8話では、海老原家を大きく揺らす存在——勝男の母・陽子が突然の上京を果たします。
キッチンから始まる小さなすれ違い、街角でこぼれる本音、そして思わぬ再会。
家族として、元恋人として、ひとりの大人として。それぞれが抱えてきた想いが静かに動き出す回です。料理と会話がそっと心をほどく、あたたかくて少し切ない第8話へ。
じゃあ、あんたが作ってみろよ8話のあらすじ&ネタバレ

化石母が転がり込んだ夜、キッチンから始まる本音
8話は、海老原家の“化石母”陽子が上京し、勝男・父の勝・鮎美を巻き込みながら、「母と息子」「夫婦」「元カップル」の関係がゆっくりほどけていく回でした。
勝男の暮らすマンションに、突然スーツケース片手の陽子が乱入します。大分の実家から家出してきたらしく、父・勝と何かがあった空気だけが部屋に漂います。
心配な気持ちがある一方で、陽子は家事へぐいぐい入り込むタイプ。スーツは知らぬ間にクリーニングへ出され、キッチン周りの古い調理器具は新しい物へ総入れ替え。「良かれ」で連発される行動に、勝男のイライラはじわじわ上昇していきます。
このままでは自立生活が崩壊してしまう——そう感じた勝男は、母親が勝男に彼女ができるまでいるという発言に対して、“現状を分かってもらう作戦”として「彼女がいる」と装う形だけのカノジョ計画を思いつきます。白羽の矢が立ったのは、今や“戦友”のような椿でした。
「母に紹介したい人がいる」と体裁を整え、椿を彼女役としてマンションへ招きます。
陽子は到着した椿へ質問ラッシュ。出会い、仕事、家族背景、結婚への考え方……と遠慮なし。椿は「会社の先輩から紹介された」という設定でなんとか切り抜け、キッチンへ招かれることに。
調理中、陽子は遠慮のない母トークを繰り広げます。
「結婚は早いほうがいい」
「高齢出産は大変よ」
椿が“まだ様子見”だと伝えても、陽子は時代感覚のズレた価値観をさらりと口にしてしまい、勝男は隣でヒヤヒヤ。「お茶飲もっか」と話題変更に必死です。
食卓には陽子の手料理が並び、三人で夕食。椿は素直に「本当においしい」と笑顔を見せ、陽子も「そんなふうに言ってもらえるなら、教えてあげたいくらい」と照れながらつぶやきます。
ここで陽子の過去が少し語られます。
姑からイヤミを浴び続け、
「夫が飲み歩くのは嫁の料理のせい」
「子どもは一姫二太郎が理想」
といった言葉を何度も受けてきた歴史。絶対あんな姑にはならないと誓ったはずが、自分も似た言い回しをしてしまっていた——と、静かな反省がこぼれます。
夕食後、陽子は余ったご飯でおにぎりを作り、椿へ持たせます。勝男が玄関まで見送ると、椿はメキシカンフェスのチラシを取り出し、「この前、鮎美に会ったよ」と伝言。「ここで鮎美の料理が味わえる」と笑顔で渡したその瞬間、二人の様子を鮎美が遠くから目撃してしまいます。
一報、鮎美目線で…。
鮎美は地元から届いた段ボールいっぱいの野菜を抱え、勝男宅へ向かう途中、マンション前で勝男と椿が並んで歩く姿を目撃します。鮎美は笑顔を作りながら箱だけ渡し、すぐに引き返しますが、ひとりになった瞬間、胸の奥に言葉にならないモヤモヤが浮かびます。
勝男の本音がわかり、陽子は家を出る…
椿が帰ったあと、勝男は陽子と向き合います。
「ほんとは椿ちゃんと付き合ってないんやろ?」
陽子は母の勘で一瞬で見抜き、「つまり自分が邪魔って意味なんやね」と寂しそうに笑います。
勝男は最近の心境を素直に伝えます。
・料理に挑戦したい
・一人暮らしでも自信をつけたい
・“女の人がいたほうが安心”という頼り方をやめたい
そんな変化に気づいてほしかった、と。陽子も自分の干渉がプレッシャーだったと理解し、「ごめん」と頭を下げます。
陽子と鮎美の東京散歩、カフェでこぼれる“本音の春巻き”
翌朝、陽子が部屋にいないことに気づいた勝男。外へ探しに行こうとしたとき、鮎美から「陽子さんと商店街にいる」と連絡が入り、合流します。
陽子はカフェの前で立ち尽くし。興味はあるのに、一人で入る勇気が出ず、入口で足が止まっていたのでした。鮎美が「一緒に入ってみませんか」と声を掛け、二人のカフェ時間が始まります。
ここで陽子は少しずつ胸の内を語ります。
・大分の家からも勝男の家からも家出状態であること
・勝男が“彼女がいる”と装ったことにも気づいていること
・夫との間に積もったモヤモヤがあること
「ずっとしてこなかった」のではなく、「一人で外食できない自分になっていた」ことに、驚きと情けなさを覚えていると語ります。
その後二人は商店街を歩き、雑貨を見たり、余った春巻きを分け合ったりと、小さなピクニックのような時間を過ごします。
「昔、夫は王子様みたいだった」
陽子はそう語り、結婚当初の手紙、理想の夫婦像、介護や家事で余裕を失い、夫の言葉が胸を刺し続けた日々を振り返ります。幸せもあった。でも生活をひっくり返す勇気は出ない。「離婚を考えた時期もある」と言いつつ、その難しさを静かに吐露します。
鮎美も自分の恋を語ります。
・勝男と別れる際「話しても伝わらない」と最初から諦めていた
・ちゃんとぶつかっていたら別の未来もあったかもしれない
その悔いが、笑い混じりの声に滲みます。
陽子の言葉は鮎美の心をそっとほぐします。
「二人の暮らしは二人だけで決めていい」
「料理に正解なんてひとつもない」
春巻きの香りと紙コップの飲み物と一緒に、その言葉は鮎美の胸に静かに染み込んでいきました。
鮎美はここで食べた春巻きをヒントにメキシカンタコスのヒントを得たのでした…。
父・勝の不器用な上京、男たちの「責任」とマザコン告白
そのころ、勝男の部屋には予想外の来客がありました。インターフォンに映ったのは、父・勝。テーブルに茶を出す勝男へ「ぬるいな、急須ないんか」と、最初からマイペース節を発揮します。
勝男が「母がここにいると知って来たのか」と確認しても、勝は「兄に聞いた」とやってきた。更に持参したのは充電切れで使えない電話の子機。
「いつもお母さんが充電してたから、自分ではやり方が分からん」と口にする姿は、頼りなさと長年の依存関係の象徴でもありました。
その最中、勝男に鮎美から着信。陽子と一緒にいることや「かなり元気に満喫中」との状況に、勝男は安心しつつも複雑な思いが揺れます。
陽子と鮎美が東京散歩から戻ると、リビングには勝の姿。風呂場で湯につかる父の間に、勝男がそっと陽子へ伝えます。
・父は陽子に頼り切っている
・本当は大分へ戻ってきてほしいと思っている
・兄に聞き回り居場所を探して、ようやくここに来た
陽子は「自分の時代は“結婚しない女は不幸”と刷り込まれ、男は結婚して一人前と教えられてきた」と語り、古い価値観に縛られてきた人生を振り返ります。椿や鮎美のように“一人で立つ女性”を見て、「今の子は自分と違う道を進めている」と気づき、少し寂しそうに笑いました。
夜、リビングには珍しく父と息子が布団を並べる光景が。勝は「昔は二歳まで自分が寝かしつけ担当だった」と穏やかに語り始めます。祖父が倒れ、会社の継承で忙殺された日々。朝から晩まで働き詰めで家にいられなくなった経緯——。
勝男が大変だったねと言うと…
「大変じゃない。家族をちゃんと暮らさせるのが自分の責任なんや」
その言葉は昭和型父親像そのもの。寝室で横になる陽子は、静かにその声へ耳を傾けていました。
鰹節から始まる朝ごはん、母の“心の一人部屋”宣言
翌朝、勝男はキッチンで鰹節削りに初挑戦。ぎこちない手つきの息子の背に、「あんた早起きやな」と陽子が声を掛けます。
「鰹節からやるつもりなん?」と器具を受け取った陽子はプロ級の腕前で、ふわふわの削り節を一瞬で完成。勝男は素直に「すごい」と感嘆します。祖母から叩き込まれた技だと知り、親の歴史がふと見える瞬間でした。
陽子は味噌汁事情も打ち明けます。
・夫の分はインスタントで済ませることも多い
・「このくらいで十分」と少し復讐していた
長年の細やかな反発が、どこか可笑しみを帯びて語られます。
ここで勝男は思わず本音をこぼします。
「俺さぁ、ちょっとマザコンぎみかも」
椿が困る顔に気づきながら、陽子に遠慮して何も言えなかった。母の犠牲を思うと踏み込めなかった——そんな心のループに、ようやく名前がつきました。
陽子は肩の力が抜けたように言います。
「犠牲なんかじゃない。好きで育てたんやけん」
「親子といっても、もう大人同士よ」
これからは世話を焼きすぎないように、と宣言し、勝男にも「困った時はちゃんと口に出して」と伝えます。さらに自分のこれからについても小さな計画を語ります。
・心の中に“自分だけの一人部屋”を作る
・そこでだけは家族から離れて深呼吸する
実際の家出の代わりに心に逃げ場所を作る——そのイメージだけで耐えられると微笑む陽子。長年の閉塞感の奥に、小さな出口が灯る瞬間でした。
朝食のテーブルには勝男の味噌汁やおかずが並びます。
勝は茶碗を陽子へ差し出しかけたところで勝男へ差し出し直し、「自分が作ったんだから最後まで責任持て。おかわり」とひと言。「悪くない」と照れ隠しのような評価も添え、不器用な愛情がにじみます。
最終的に勝と陽子は二人で大分へ戻ることに。完璧な和解ではないけれど、互いがほんの少し歩み寄った朝でした。
メキシカンフェスで揺れ出す、鮎美の“元カノ心”
やがて太平のバーではメキシカンフェスが開催。鮎美は陽子と食べた春巻きをヒントにタコスを作り、胸を張って提供。また勝男が来店した瞬間、胸の奥で何かが静かに動き出します。
8話では告白や復縁は描かれません。しかし、
・母から自立し始めた息子
・夫へ本音を出す勇気がまだ半分の妻
・元カレへの感情が“ゼロではなかった”と気づく鮎美
それぞれの揺れが、キッチンと食卓、そしてフェスのキッチンカー前で静かに描かれました。
じゃあ、あんたが作ってみろよ8話の感想&考察

8話を見終えた夜、心に残ったのは「大抵の男はマザコン」というタイトル級のフレーズ以上に、“母も、元カノも、みんな一度はマニュアル通りの幸せに向かって頑張った人たちなんだな”という実感でした。
「マザコン」ってラベルより、「好きで育てたんやし」という一言
今回、一番刺さったのは、勝男の「自分、ちょっとマザコンぎみかも」という告白と、陽子の返事。
勝男は、椿が困っている顔に気づいていたのに、陽子に遠慮して何も言い出せなかった。「母が犠牲になって育ててくれた」と信じているからこそ、母の機嫌を第一優先にしてしまう。その流れは、多くの人に身に覚えのあるやつだなと感じました。
そこへ返ってくる「犠牲なんかじゃない、好きで育てたんやけん」。
この一言で、母子のあいだに長年固まっていた“借り”のような空気が少しほどけた気がしました。“犠牲になった親”は、子ども側にとってものすごく重い存在で、「苦労して育ててもらったのに、自分の幸せを勝手に選べない」とブレーキがかかりやすい。でも「好きで育てた」と笑ってもらえるなら、そこから「じゃあ自分も自分の人生を選んでいこうかな」と前へ進む余白が生まれる。
マザコン問題は“息子の依存”だけでなく、“母がどんな言葉で関係を語るか”にも左右される——しみじみそう感じる場面でした。
母の東京散歩は、陽子自身の「自分探し」
鮎美と陽子の街歩きシーンは、静かな名場面でした。
カフェの入口で足が止まってしまう陽子は、“外の世界へ出る自信を失った大人”の象徴のよう。若い頃は恋もして、結婚もして、手紙をもらって、オシャレなカフェくらい軽やかに入れていたはず。それが、日々の役割・介護・家族中心の生活の積み重ねで、“ひとりで好きな場所へ行く感覚”を失ってしまう。
陽子の「してこなかったんじゃなくて、できなくなってた」という言葉は、家事・育児・介護のなかで役割を背負い続けた人にまっすぐ響くフレーズでした。
鮎美と雑貨屋を回って、春巻きをつまんで、過去の恋愛や夫婦生活を本音で語る姿は、ただの“嫁姑モドキの女子会”ではなく、「まだ自分の人生は終わっていない」と確認し合うセラピーのようにも見えました。
SNSでも「ひとりでも生きていいと肯定された気がした」「母の気持ちが分かった」と共感が多数。この回が多くの視聴者の“母へのモヤモヤ”“自分の未来”と重なったのだと思います。
「二人の暮らしは二人で決める」って、恋愛だけの話じゃない
春巻きを分けながら陽子が口にした「二人の暮らしは二人で決めていい」という言葉。
鮎美へのアドバイスとして聞いていると完全に“恋愛論”なのだけれど、実は夫婦、親子、元恋人同士——どの関係にも当てはまるルールでした。
今までの勝男は、
・母のやり方に合わせ
・父の価値観に黙って従い
・鮎美との生活もどこか“手本通り”をなぞっていた
そんなふうに、誰かのマニュアルへ寄りかかっていた印象があります。
だからこそ8話で、
・一人で料理に挑戦する
・親子の距離を自分で調整しようとする
・元カノや椿にも正直な距離で向き合う
そんな“勝男自身の生き方”がやっと芽生えたのだと感じました。
陽子もまた、「男は結婚して一人前」「嫁が家を守れ」といった古い価値観の檻から、少し外へ出ようとしていた。“心の中に一人用部屋を作る”という表現は、優雅でやさしい自立の仕方で、「全部リセットする勇気はないけど、今のままじゃ苦しい」という気持ちに寄り添っていました。
鮎美のモヤモヤは、「やり直し」ではなく「今の自分」への違和感
勝男・椿・鮎美の三角関係は大きく動いたわけではないのに、鮎美の表情ひとつひとつが揺れ始めているのが分かりました。
・玄関で野菜だけ渡すときの軽い笑顔
・二人が並んで歩く姿を見たときのわずかな間
・フェスで再会した瞬間の、わずかに揺れる目線
それらの揺れは、“元カレだから気になる”というより、「変わってしまった勝男」と「勝男を手放した自分」を見比べる作業のようでした。
鮎美は「最初から話しても伝わらないと思っていた」と語っていたように、かつての恋は“諦め”から始まっていた部分もある。だからこそ今は、勝男の変化も、自分の変化も、ちゃんと見て確かめたいというモードに入っている。復縁が目的ではなく、“今の自分がどうしたいか”を選び直すための揺れだと感じました。
タイトルに込められた、「家族も恋も、言い訳やめよ?」というメッセージ
タイトルの「じゃあ、あんたが作ってみろよ」。言い方こそ強めですが、8話まで来ると、
・母へ
・父へ
・元恋人へ
・そして自分自身へ
全部に向けた言葉に見えてくるようになりました。
「文句を言う前に、自分の人生レシピを、自分の手で作ってみろ」
そう背中を押されるようで、視聴後は少し深呼吸したくなる回でした。母へのモヤモヤも、恋の歴史も、「全部あの時の自分が精いっぱいだった」とやさしく振り返れるような時間。
大きな事件が起きたわけではないのに、キッチンと食卓だけでここまで“人の心の変化”が描けるんだなと思わされた8話。次の9話では、陽子が来た夜から動き始めた、小さくて確かな変化がどんな未来へつながるのか——火曜の夜がまた楽しみになる余韻で締めくくられた回でした。
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