TBS火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は、彼氏に尽くしてきた女性が突然プロポーズを拒否し、6年の恋を清算するところから始まる“再生ロマンスコメディ”です。
料理をテーマに、男女の価値観の衝突と成長を描く本作は、放送開始直後から多くの共感と話題を呼んでいます。
本記事では、ドラマの原作情報やドラマと原作の違い、さらに原作マンガの結末——“二人は復縁するのか?”——について、女性目線でたっぷり考察・解説します。
筆者ならではのエモーショナルな視点も交えながらお届けします。
ドラマ「じゃあ、あんたが作ってみろよ」は原作がある?

谷口菜津子さんによる同名の漫画『じゃあ、あんたが作ってみろよ』が原作です。
原作漫画は2023年4月からぶんか社の漫画雑誌「comicタント」で連載がスタートし、2025年4月現在コミックス第3巻まで発売中となっています。
社会人カップルの勝男と鮎美が主人公で、同棲6年目に突入した矢先に訪れた“突然の転機”から物語が展開します。
勝男の何気ない価値観(「料理は女が作って当たり前!」という発言)がきっかけで2人は破局し、勝男は不器用ながら料理に挑戦しながら自分の固定観念を見直していく——そんな新時代のラブストーリーです。
原作の評価・人気
原作漫画『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は発売直後から高い評価を受け、2024年「CREA夜ふかしマンガ大賞」で第1位、「このマンガがすごい!2025」オンナ編で第4位に選ばれるなど注目を集めました。
第26回手塚治虫文化賞新生賞を受賞した作者・谷口菜津子さんの最新作ということもあり、連載開始当初からSNSでも話題沸騰。こうした原作人気の高さもあり、今回のドラマ化にも大きな期待が寄せられていました。
じゃあ、あんたが作ってみろよ…ドラマと原作の違う所や見どころ

ドラマ版と原作漫画では基本的なストーリーラインは共通していますが、細部ではいくつか違いがあります。
ここではドラマと原作の主な違い、そして両者の見どころについてご紹介します。
結末の違い(予想)
最大の違いは結末部分になりそうです。
原作漫画は現在も連載中で完結しておらず、最終的にどんな結末になるかは作者以外まだ誰も知りません。そのためドラマ版ではオリジナルの最終回を迎える可能性が高いと言われています。
原作者の谷口菜津子さんも「原作はまだ完結していないので、ドラマではオリジナルのラストになるのでしょうか。鮎美と勝男はどうなるのか結末が楽しみです」とコメントしています。
原作と異なる展開がドラマ最終回で描かれるかもしれない…となると、ファンとしてもドキドキですよね。
オリジナル要素の追加
谷口さんは「脚本の安藤奎さんが物語を大事にしながら新しい要素もふんだんに入れてくれている(面白い!)」と発言しており、ドラマ化にあたって原作にはないエピソードや演出が追加されていることを示唆しています。
実際、ドラマ版では劇中に架空のテレビドラマ『フォーエバーラブは東京で』が登場し、劇中劇として随所に織り込まれるというオリジナル演出があります。
原作漫画にはこのようなメタ要素は登場しないため、ドラマならではの遊び心ある仕掛けと言えます。
作者自身も「原作とドラマの違いを楽しんでほしい」と語っており、メディアの違いによる物語の再構築を前向きに捉えているようです。
キャラクター描写の違い
漫画とドラマではキャラクターの描かれ方にも若干の違いがあります。
漫画版では勝男の兄2人(鷹広・虎吉)が登場し、価値観形成の背景として家族との対話が描かれます。
例えば虎吉(勝男の兄)は自分の娘の性自認の悩みを勝男に打ち明け、勝男が多様な価値観に気付くきっかけになるなど、原作ではサブキャラも含め丁寧にエピソードが積み重ねられています。
一方ドラマ版では放送枠や尺の都合もあり、兄弟の登場は今のところ確認できません。
その代わりに、勝男の同僚や鮎美の友人たちが物語を盛り上げる存在としてクローズアップされています。たとえば勝男の会社の後輩・ルイは料理好きで、勝男に料理の厳しさを叩き込む重要な人物。
鮎美の親友・渚(担当美容師)は、鮎美に自己を取り戻すきっかけを与えるキーパーソンです。
登場人物の顔ぶれや比重に多少の違いはありますが、「勝男がいろいろな人との出会いから学ぶ」という軸は共通しています。
物語のトーン
漫画版は日常の中の機微を繊細に描いた作品で、派手な展開は少ないものの読後に心にじんと響くような余韻が残るのが特徴です。
一方ドラマ版はコメディタッチが強めで、勝男を演じる竹内涼真さんの絶妙に“ウザい”爽やか演技が笑いを誘います。
「竹内さんがあまりにも爽やかに『君がやるんでしょ』みたいな顔をするのでムカッとくる」といった感想も多く、思わず笑ったとの声がありました。
俳優陣の熱演によって“笑いと怒り(共感)”を同時に呼び起こすのは、実写ドラマならではの醍醐味。
原作の空気感を尊重しつつも、テンポの良い演出とコミカルな表現でエンタメ性を高めているのがドラマ版の特徴です。
見どころ(共通点と魅力)
原作・ドラマ双方に共通する一番の見どころは、「誰かの時間と手間」に対する気付きと尊重のテーマです。
勝男は鮎美と別れた後、自炊に挑戦する中で「料理ってこんなに大変だったのか!」と衝撃を受けます。筑前煮を作ろうとしても下ごしらえや火加減に四苦八苦し、味も見た目もボロボロ…。
そんな失敗を重ねて初めて、彼は今まで当たり前に享受していた料理の裏に膨大な時間と労力が積み重なっていたことを体感するのです。
この「目に見えない家事労働の尊さ」に気付いていく過程は、漫画でもリアルな台所描写とともに丁寧に綴られており、本作最大のメッセージとなっています。
ドラマ版でも勝男が料理に悪戦苦闘するシーンはしっかり描かれており、観ているこちらまで「家事って本当に大変だよね…」と頷きながら応援してしまいます。
誰かの支えに対する敬意に気付く物語という点が、本作の何よりの魅力です。
キャラクターの成長と人間関係の変化
もうひとつの見どころは、キャラクターの成長と人間関係の変化です。
勝男と鮎美の「すれ違いからの再生」はもちろんですが、2人を取り巻く人々も個性豊かで魅力的。鮎美の友人で美容師の渚は自由奔放で天真爛漫な女性で、その恋愛観が鮎美に大きな影響を与えます。
渚の彼氏・太平は包容力があり、価値観を変えたい鮎美をあたたかく見守る存在です。
勝男の後輩ルイは心優しく面倒見が良い青年で、料理初心者の勝男に時に厳しく、時に親身にアドバイスをくれます。
さらに鮎美が別れた後に出会う年下男子のミナトは不思議な魅力を持ち、勝男がマッチングアプリで知り合う椿は思ったことをズバズバ言うハキハキした女性です。
世代も価値観も異なる様々なキャラクターたちとの出会いを通して、勝男も鮎美も刺激を受け、自分をアップデートしていきます。
誰の言葉に共感できるか、どのキャラがきっかけで主人公たちが変わっていくか——そんな視点で見てもとても面白い作品です。
憎めない主人公たちと“間違い”の優しさ
そして何より、勝男と鮎美という主人公2人が憎めないのが本作の魅力。
勝男も鮎美もある意味極端な性格ではありますが、根は真面目で一生懸命な2人なので応援したくなります。勝男は昭和的な古い価値観に凝り固まってはいるものの悪人ではなく、素直で真っ直ぐな性格ゆえに成長の余地がたくさんある。
鮎美も一途に相手に尽くす健気な女性で、だからこそ自分を見失ってしまったのですが、別れを機にちゃんと自分を取り戻そうともがきます。
「間違っていたかもしれない自分」を2人とも内省できるところが良いですよね。
異なる価値観を持つ2人がもう一度一緒に生きていくには何が必要なのか——作品を楽しみながら、ふとそんなテーマについて自分自身も考えさせられるのが、本作ならではの魅力だと思います。
原作マンガ「じゃあ、あんたが作ってみろよ」は結末はどうなる?※復縁するか知りたい

ドラマはまだ始まったばかりですが、「原作マンガでは結末がどうなるの? 勝男と鮎美は復縁するの?」と気になっている方も多いでしょう。
ここでは原作漫画の最新ストーリー展開を踏まえ、2人の関係が今後どうなるのかを考察します。
(※以下、原作のネタバレを含みます)
プロポーズから別れ…鮎美が別れを決断した理由
大学時代から付き合い、同棲もしていた勝男と鮎美。
しかし勝男のプロポーズに対し、鮎美はまさかの「無理…」と返答し、その場で別れを切り出します。勝男にとっては寝耳に水の失恋でしたが、鮎美が別れを決断した背景には“自分を見失っていたことへの気付き”がありました。
彼女はそれまで「彼氏に好かれる自分」でいることを最優先していて、「自分が本当は何を好きか」を考えたことがなかったのです。
担当美容師の渚から「自分を大切にしていいんだよ」と示唆されたことでハッと目が覚め、「このまま勝男と結婚したら一生自分が無くなってしまう」と危機感を覚えたのが真相でした。
勝男が亭主関白的な価値観を無自覚に振りかざし、鮎美がそれに必死で合わせる——そんな関係を6年間続けてきた末に、彼女の中で何かがプツンと切れてしまったのです。
「こんな関係のままじゃダメだ、自分を取り戻したい!」という鮎美の切実な思いが、プロポーズという人生の節目で爆発した形でした。
勝男に理由を問われても鮎美は「どうせ分からないし、分かってもらおうとも思わない」と告げて去ります。
それほどまでに彼女は追い詰められていたのです。
この別れのシーンは、原作でもドラマでも非常に印象的に描かれていて、“長年積もった想いが静かに崩れていく様子”が痛いほど伝わってきます。
別れた後の二人〜新たな出会いと変化
鮎美と年下彼氏・ミナトの関係
勝男と別れた鮎美は、「自分らしさ」を取り戻すため、それまでの清楚な黒髪を金髪に染め、雰囲気をガラリと変えて心機一転を図ります。
そんな折、ふと立ち寄った酒屋で年下の青年・ミナトと出会い、勢いで声をかけ、そのまま交際に発展します。ミナトは勝男とは正反対のタイプで、結婚願望がなく自由な生き方を貫く男性でした。
最初は「こんな生き方もあるんだ」と彼の奔放さに新鮮な刺激を受けた鮎美ですが、価値観の違いから徐々にズレが生じます。
ミナトは束縛や干渉を極端に嫌い、恋愛より自分のペースを優先する主義。
一方の鮎美は本来、相手に合わせて尽くしてしまうタイプですから、ミナトのドライさに物足りなさや不安を感じてしまったのでしょう。
結局2人は長く続かず、鮎美はミナトにフラれてしまいます。
しかしこの短い恋は、鮎美にとって大きな収穫をもたらしました。
ミナトとの関係を通じて、鮎美は「自分の理想と現実の違い」をまざまざと実感し、「他人に合わせる恋愛」から「自分を主軸にした恋愛」へと恋愛観を転換するきっかけを得たのです。
自分中心に生きるミナトと付き合ったことで、「私はずっと相手軸でしか生きてこなかった」と気付いた鮎美は、本当に自分の望む幸せについて考え始めます。
ミナトとの別れは辛かったですが、鮎美にとっては自己改革の重要な通過点になったと言えそうです。
勝男とマッチングアプリの女性・椿の関係
一方、失意の勝男も心機一転を図ろうと合コンに出向きますが、亭主関白発言でことごとく女性にドン引きされてしまいます。
この合コン描写はコミカルですが、勝男にとっては「世の中の常識は変わったのか!?」とショックを受ける出来事でした。
そんな中、同僚の勧めでマッチングアプリに挑戦し、出会ったのが椿という女性。
椿は明るく豪快な性格の持ち主で、初対面から物怖じせず勝男にグイグイ話しかけてくるパワフルな女性でした。勝男にとって彼女の率直さは新鮮で、一緒にいると刺激を受ける存在だったようです。
とはいえお互い失恋同士ということもあり、椿とは恋人というより“人生の新しい仲間”といった関係へと発展していきます。
2人はお互いの過去の恋愛について腹を割って語り合い、弱みもさらけ出すことで深い友情が芽生えていきました。恋人同士にはならなかったものの、お互いの人生に良い影響を与え合う関係を築いたのです。
この椿との交流は、女性に対する勝男の考え方にも少しずつ変化を与えたように思います。
椿の飾らない意見や励ましは勝男にとって耳が痛いこともあったでしょうが、それだけに心に響いたはずです。
勝男はこうした新たな人間関係や助言を通じて、自分の何がいけなかったのかを少しずつ理解し、価値観をアップデートしていきます。
互いに相手を思い出す瞬間も…
鮎美は勝男との復縁について「今は考えていない」というスタンスですが、まったく勝男のことを忘れたわけではありません。
原作では、鮎美がふと新しい相手と比較して「勝男だったら○○してくれたのに…」と勝男を思い出す描写もあります。
例えばミナトとの付き合いの中で、「勝男はもっと私を気遣ってくれていたな」と感じる場面も。もちろん当の勝男は無自覚にやっていただけでしょうが、そんな瞬間に鮎美はハッとして自分の本心に揺れます。
ただ、今のところ素直に「やっぱり勝男が好き」とは認めていません。
しかし完全に未練ゼロでもないところが、人間らしくて切ないですよね。
一方の勝男は言わずもがな、鮎美への未練タラタラ。
彼女への想いを断ち切ろうと必死で新しい出会いを求めますが、結局「まだ鮎美が好きなんだ」と自覚して落ち込む場面も描かれています。
周囲の友人からも「きっと鮎美ちゃんも同じように思って泣いてるよ」と慰められる始末。
お互いに一度は別の相手と付き合ってみたり、新しい生活を始めたりしているものの、完全に心が離れきったわけではない——この微妙な距離感が今の2人と言えるでしょう。
最終回の予想:勝男と鮎美は復縁する?
結論から言えば、原作漫画の最終回はまだ描かれていないため、現時点では2人が復縁するかどうか公式には分かっていません。
しかし、ジャンルが“再生ロマンスコメディ”と銘打たれていることや、ストーリー展開から考えても最終的には2人が元サヤに戻る可能性が高いと予想されています。原作ファンやメディアも「最終的には勝男と鮎美が復縁してハッピーエンドになるのでは」と予想しており、筆者も同感です。
もちろん、仮に復縁するとしても「何も変わらずヨリを戻す」のでは意味がありません。もし元の関係に戻ってしまったら、鮎美はまた自分を抑えて苦しい日々を送ることになってしまうでしょう。
物語のテーマは“互いの成長と価値観の変化”にありますから、ハッピーエンドに至るには勝男が古い価値観を捨て去り、鮎美も自分の本当の気持ちに向き合うことが大前提です。
その点、原作では勝男がさまざまな出会いを経てどんどん考えをアップデートし、自分の何が悪かったのかを理解していく過程が丁寧に描かれています。また、鮎美もいろんな経験を通して「アップデートされた勝男こそ結婚相手にふさわしいかもしれない」と気付く展開になるのではと示唆されています。
つまり、勝男がしっかり成長し反省を行動で示すこと、そして鮎美が「変わった勝男ならもう一度信じてもいい」と思えること——その条件が整えば、2人はもう一度結ばれる可能性が高いでしょう。
実際、原作者の谷口菜津子さんも「これは時代遅れな男の反省と成長を見守る物語であると同時に、時代とともに変わっていく価値観について私たち自身が考える物語です」とコメントしています。
勝男が変わり、鮎美も変わることで“新しい2人の関係”が再生する——それが原作の目指すところだと筆者は思います。連載がこのまま進めば、最終的にはおそらくお互いに成熟した上での復縁という形で物語が完結するのではないでしょうか。
筆者自身、6年も愛し合った2人ですから、お互いが変わった今だからこそもう一度やり直して幸せになってほしいと強く願っています。
ドラマ版の結末が一足先に描かれるかもしれませんが、その際もきっと視聴者が納得できるハッピーエンドを用意してくれると信じています。
原作マンガ「じゃあ、あんたが作ってみろよ」の感想&考察

最後に、原作マンガを読んだ感想と考察を筆者目線で語ってみたいと思います。
恋愛ものではありますが、単なる男女のラブストーリーに留まらない——本作の深みと魅力について感じたことを綴ります。
共感ポイント1:勝男に訪れる“ざまあ”からの成長にほっこり
正直、序盤の勝男には「何この昭和男!勝男ザマア😂」と思ってしまいました。
毎日美味しい手料理を作ってもらっておきながら「彩りが足りないかな」なんて上から目線のアドバイスをする勝男…。
現代ではありえない亭主関白ぶりに、鮎美じゃなくても「無理!」と言いたくなりますよね。
案の定プロポーズをフラれて落ち込む勝男には「自業自得だよ!」とツッコんでしまいました。
しかし、そんな勝男像がガラリと変わったのが、自分で筑前煮作りに挑戦したあたりからです。慣れない包丁さばきで野菜の面取りもうまくいかず、味付けもボロボロで落ち込む勝男の姿は滑稽でもあり可哀想でもあり、不思議と放っておけない愛おしさが芽生えてきます。
読者レビューにも「勝男ざまぁと思ったのに、健気に筑前煮を作って大失敗するあたりから愛おしくなってきた」という声がありましたが、本当にその通り。失敗続きでもめげずに頑張る不器用な姿には、いつしか胸がほっこりと温かくなって応援せずにいられなくなるんです。
周りも基本的に良い人たちばかりで、勝男が「ざまぁ」と痛い目を見る痛快さよりも、「頑張れ~!」と見守りたくなるほっこり系の漫画だと感じました。
勝男だけでなく鮎美も大変身していきますし、男女両方の成長物語として微笑ましく読める作品ですね。
共感ポイント2:鮎美の痛みと強さに女性として励まされる
鮎美の物語も決して脇役ではありません。
筆者は最初、鮎美が勝男に尽くすあまり自分を見失っていたと知り、「そんなに無理しなくても…」と胸が痛みました。
6年もの間、仕事で疲れていても笑顔で手料理を作り続け、「口角を上げて丁寧にお客様に応対する受付嬢」であろうと自分を律してきた鮎美。彼女がどれだけ頑張ってきたかを思うと、本当に健気で切ないです。
でも、そんな鮎美が渚や太平との出会いを通して殻を破り、自分自身と向き合っていく姿には深く共感すると同時に勇気をもらいました。
別れた直後の鮎美が金髪にイメチェンし、夜の街で仲間と羽目を外すシーンでは、「よくやった!もっと自分を解放していいんだよ!」と拍手したくなりました。
とはいえ、自由奔放なミナトとの経験でうまくいかず傷付いてしまう鮎美には「やっぱり根が真面目だから無理しちゃったのかな…」と同情もしてしまって。でもそれすら、彼女が自分の幸せを取り戻すために必要な遠回りだったのでしょう。
鮎美は長年「相手に合わせること=愛」だと信じて生きてきましたが、そうじゃないかもしれないと気付けただけでもすごい成長です。
勝男と距離を置いたことで初めて「自分」を見つめるチャンスを得たわけですから、鮎美がこれからどんな自分らしさを見つけていくのか楽しみでなりません。女性読者としては、鮎美が再び自分を大事にし、自分の好きなものを胸を張って「好き」と言える女性になっていく過程は痛快でもあり感動的でもあります。
同時に「私も過去に誰かに合わせすぎていたことあったかも…」とハッとさせられる瞬間もあり、自分自身の恋愛を振り返るきっかけにもなりました。
心に残るテーマ:他人とどう向き合うか、自分を大切にするとは?
本作を読み終えて真っ先に感じたのは、胸の奥がじんと温かくなるような不思議な余韻でした。
クライマックスでも号泣するような劇的シーンがあるわけではないのに、静かだった心にじわじわ波紋が広がるような感動が押し寄せてきます。それはきっと、この物語が派手なドラマチックさではなく、日常の中の小さな違和感や心の揺れを丁寧にすくい取って描いているからだと思います。
読んでいて「あるある、こういうすれ違いって地味だけど積もると効くんだよね…」と何度も頷いてしまいましたし、
逆に勝男が改心して見せたさりげない思いやりの描写には「わかる…そういうのが嬉しいのよ」としみじみ共感しました。恋愛を題材にしながらも、根底にあるのは「他人とどう向き合うか」という普遍的テーマだと感じます。
自分の当たり前を疑わず生きてきた勝男が他人の価値観に触れて変わっていく姿、自分を殺して相手に合わせてきた鮎美が本当の自分を取り戻していく姿は、恋愛のみならず人間関係全般に通じるメッセージですよね。
「自分が当たり前だと思ってきたことは本当に当たり前なのか?」「相手に自分の価値観を押し付けて築く幸せは本物なのか?」——
そんな問いかけが作品を通じてなされているように思います。
読後にはなんだか自分の身近な人への接し方をもう一度見直してみたくなりましたし、
未来のパートナーとはお互いの良さを損なわない関係でいたいな、なんて優しい気持ちになれました。
作品全体の感想:静かに染み入る優しいラブストーリー
総合的に見て『じゃあ、あんたが作ってみろよ』は、派手さはないけれど心に静かに入り込んでくる優しいラブストーリーでした。
極端な亭主関白男と健気な女性という設定ながら、登場人物たちは皆どこか不器用で憎めず、チャーミングです。だからこそ、最初は「ひどい男!」と思った勝男もだんだん可愛く見えてきますし、鮎美にも「もっと幸せになってほしい」と感情移入してしまいます。
物語が進むにつれ、登場人物一人ひとりの背景や本音が丁寧に描かれるので理解が深まり、いつの間にか自分自身の人間関係まで振り返っている——そんな不思議な感覚に包まれました。
派手な事件は起きませんが、それゆえに日常生活で忘れがちな感謝の気持ちや思いやりの大切さが胸に染みます。読者レビューには「地味」「派手さがない」という声も一部あるようですが、個人的にはこのゆったりとしたペースこそが本作の良さだと思います。
クスッと笑えてほろりと泣けて、読み終わる頃には心がぽかぽか温まっている。
そして「よし、私も明日から大事な人にちゃんと感謝しよう」とか、「自分のことも大切にしよう」なんて前向きな気持ちになれるんです。こんな風に未来を優しく考えたくなる余韻を残してくれる作品って、実はなかなか無いのではないでしょうか。
ドラマ版でもきっと同じような温かい感動を与えてくれることを期待しつつ、原作の今後の展開も引き続き見守っていきたいです。勝男と鮎美が二人とも心から笑顔になれる結末を迎える日を、筆者も心から楽しみにしています。
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