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「緊急取調室/キントリ」(シーズン1)第5話のネタバレ&感想考察。“3人のうるさい女”に隠れた罠…一致しすぎた証言の真相とは?

「緊急取調室/キントリ」(シーズン1)第5話のネタバレ&感想考察。“3人のうるさい女”に隠れた罠…一致しすぎた証言の真相とは?

緊急取調室(シーズン1)5話は、「一致=真実」という思い込みを鮮やかに覆す回でした。

スーツケース遺体事件に名乗り出た3人の主婦は、離れた場所で見たはずなのに、まるで示し合わせたように同じ特徴を語る。

しかし有希子は、その“揃いすぎた証言”にこそ嘘の匂いを嗅ぎ取り、取調室で3人を対面させていく。

そこで崩れていく一致、露わになる彼女たちの共通点、そして警察内部へと延びる黒い影――目撃証言の危うさを逆手に真相へ迫る、シリーズ序盤の重要エピソードです。

目次

緊急取調室(シーズン1)5話のあらすじ&ネタバレ

緊急取調室(シーズン1)5話のあらすじ&ネタバレ

第5話の副題はしばしば「3人のうるさい女」と呼ばれる。

物語は、“一致しすぎた目撃証言”という違和感から真相へ向かう逆算型の取調べ劇で、ラストは「犯人=警官」というシリーズ序盤の価値観を揺らす一撃に着地する。

以下、時系列で事件の骨子→取調べの要点→結末の順に整理する。

冒頭:池のスーツケースと“8年前”の亡霊

都内の公園の池からスーツケースが引き揚げられ、中には男性の絞殺体。

被害者は詐欺グループ幹部の真木祐介(竹財輝之助)

8年前、彼を取り逃した過去を持つ監物(鈴木浩介)は、悔恨と執念をあらわにする。事件は緊急事案対応取調班(キントリ)が受け持つことになり、やがて「当夜、スーツケースを運ぶ男を見た」という3人の主婦が名乗り出る。

“一致しすぎた”3人の目撃証言

名乗り出たのは、春日小夜子(根岸季衣)/望月芳江(茅島成美)/松井蘭子(西尾まり)。

3人は別々の場所・別々の時刻に目撃したはずなのに、供述は判で押したように一致していた――「40歳前後・中肉中背・短髪・眉が濃い・細面・頬にほくろ」。有希子(天海祐希)は、この“一致の精度”こそが不自然だと直感する。

監物の執念と“空振り”の防犯カメラ

監物は相棒の渡辺(速水もこみち)、現場管轄の所轄刑事・石田克之(正名僕蔵)と連携し、マンションの防犯カメラを徹底洗い出し。

しかし一致する人物は1人も映っていない。監物の焦燥とは裏腹に、有希子の中では「3人は口裏を合わせているのではないか」という疑念が育つ。

有希子の違和感:視界の悪い夜に「頬のほくろ」?

3人が目撃したのは夜で、かつ離れた位置から。

それなのに“頬のほくろ”という細部まで共通している――ここに有希子は虚構の“設計”を嗅ぎ取る。一致の強さ=真実の強さではない。むしろ証言が揃いすぎるとき、そこには“物語の作り手”がいる。

総当たりの再聴取へ:3人の“関係”を剥がす段取り

キントリは3人の身辺を調査するが、表向きの接点は皆無。

そこで有希子は3人を同席させた再取調べを提案。取調室で彼女たちを“対面”させ、矛盾の指摘と問いの順番で“嘘の一致”を“真実の不一致”へと崩していく。

すると、3人の間に言い争いが起こり、ついに秘められていた共通点が露見する。

告白1:3人は“デート商法”の被害者だった

3人はそれぞれ真木の色仕掛け詐欺の被害者で、独自に追跡する過程で知り合い、情報交換をしていた。そして真木の居所を素人捜査で突き止め部屋に踏み込むが、すでに真木は死亡。

その直後に現れた男に口止めと脅迫を受け、“雑誌に載っている有名人の顔立ち”を目撃者の似顔として証言するよう指示され、さらにスーツケース遺棄まで強要された――これが3人の“真実”だった。

告白2:似顔の出典=雑誌、そして“新しい似顔絵”

キントリが3人の家を洗い直すと、望月宅から該当雑誌が見つかり、真木の指紋も検出。似顔の“設計図”は雑誌だったことが裏付けられる。

菱本(でんでん)は3人の虚飾を外した“新しい似顔絵”を描き直す。そこに浮かんだ顔は――所轄の刑事・石田克之。監物を尊敬する若手の“はず”の石田が、真犯人として立ち上がる。

逆走する正義:真犯人は“警官”だった

石田は真木の詐欺グループに内通し、捜査情報を流して逃走を助けていた。

8年前に取り逃した“後悔”を燃料に突っ走る監物の目の前で、味方のはずの警官が敵だったという皮肉。怒りが爆ぜた監物は石田に頭突き。制服の内側に潜む腐敗が、“目撃証言の一致”という薄皮によって覆い隠されていた構図が露見する。

死体の状況と“プロの手口”の残り香

遺体の口にはティッシュが噛ませてあったとされ、絞殺の手際は素人離れしていた。

事件の“プロ”感は、詐欺グループと内通した警官という二重の職能犯罪を際立たせるディテールになっている。

ラスト:個人の事件から“警察組織”の匂いへ

打ち上げの場で小石川(小日向文世)は「上(組織)が石田を泳がせていたのでは」と示唆。

有希子の顔色が変わる。

彼女の夫の死(殉職)にまつわる疑念がよみがえり、郷原(草刈正雄)と梶山(田中哲司)の立ち位置にも政治の影が差す

個人事件のはずが、組織の物語へと接続される縦軸が静かに点灯する締めくくりだ。

緊急取調室(シーズン1)5話の感想&考察

緊急取調室(シーズン1)5話の感想&考察

第5話の焦点は、「一致」の危うさだ。一致=真実ではない。

むしろ、人は怖れや利害のもとで“同じ物語”を作ってしまう――視界の悪い夜に“頬のほくろ”まで揃う証言は、その瞬間から言葉の“設計”に変わる。ここからは、いくつかの観点で掘り下げたい。

「一致」に潜む作為――“物語化された目撃”をどう剥がすか

有希子がやったのは、一致の心地よさを不一致の豊かさへひっくり返す作業だ。

3人を同席させるという舞台設計は、相互監視→相互暴露を誘発し、“嘘の一致”を“本当の不一致”へと解凍する。人は各々の立場で違う角度から見ている――不一致こそ一次情報であり、それを丁寧に接ぎ木していくのが取調べの技術だ。

これはシリーズ全体に流れる取調べ観のコアでもある。

「被害者の連帯」が“真犯人の物語”を上書きする

3人の主婦は、加害の連鎖に巻き込まれた被害者だ。

彼女たちは被害の共通項で結びつき、“私刑”の衝動を抱えながらも、最後は言葉を選ぶ。被害者が事実を語り直すことで、真犯人の“設計した物語”(雑誌由来の似顔)を上書きした点が重要だ。

正義は被害者の語り直しから始まる――このドラマが繰り返し示してきた倫理が、今回は鮮明だった。

「警官が犯人」の衝撃は、監物のドラマを二重化する

“捕まえる側”にいながら“逃がす側”にも加担した石田。

ここでの主語は、もはや石田個人ではなく、「制度の内側にできる空洞」だ。8年前の取り逃がしに囚われる監物と、内側から腐る石田。同じ制服が別々の痛みを抱え、同じ現場で交差する――その二重露光が回の緊張をつくる。監物が頭突きに走るのは、正義の表情が割れる音だ。

“プロの手口”という痕跡――職能犯罪のケレン味

遺体の口のティッシュや絞殺の手際は、職能の匂いを残す。

詐欺×警察という二重の職能犯罪が素人の目撃談で覆い隠される皮肉。

専門性はしばしば正しさと取り違えられるが、ここでは悪の効率として作用する。専門性を持ち込む者=真実の担保とは限らない――この相対化は、シリーズが一貫して行っている“プロの倫理”の問い直しでもある。

取調べ=“合意形成”の技術

第5話の快感は、犯人を口割らせること以上に、関係者が同じ真実に収束していくプロセスにある。

被害者3人、監物の自意識、キントリの矜持――バラバラの向きが、問いの順番で同じ方向を向き直す。法廷の前段で行われる言葉の合意形成としての取調べが、いかに繊細で倫理的な営みかが構図として見やすかった。

「上は泳がせていたのでは」――縦軸への接続

終盤の小石川の独白は、事件を“個の犯罪”から“制度の利害”へブリッジする。

石田ひとりの堕落ではなく、組織がコントロールする“泳がせ”があったのか――この含みは、有希子の夫の事件へと直結する。横軸=一話完結の達成に、縦軸=シリーズ神話の火種を足す設計。ここから先、視聴者の視線は犯人でなく組織にも向きはじめる。

小さな不満と、それでも残る“説得力”

難を言えば、動機の掘り下げ(石田がどこまで“なぜ”内通に踏み切ったか)にもう半歩ほしかった。

だが、その穴を埋めるのが主婦3人の連帯と有希子の“一致の解体”だ。雑誌の似顔という安直な装置を、倫理の逆転劇にまで高めた脚本(井上由美子)の整理力はやはり見事。

総括

第5話は、“一致”を疑い、“不一致”から真実を編むという取調べのアルゴリズムがもっとも鮮やかに機能した回だった。

主婦3人の声は、最初“うるさい”ノイズに見える。だが、その不揃いこそが一次情報へ至る道だと示した有希子の問いの順番に、僕はシリーズの美学をみる。犯人が警官という答えはショッキングだが、より重要なのは、被害者が自分たちの物語を取り戻す過程が、一人の女性(有希子)の言葉によって可能になるということ。

結果として、個人の贖罪(監物)と制度の綻び(内通・“泳がせ”)が同時に露出する。可視化された取調室は、一致の快楽に流されやすい社会へ、不一致を受け止める勇気を教える装置でもある――そんなことを、静かに突きつけられた一本だった。

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