第6話までで揺らぎ続けてきた“遺体の取り違え”問題が、第7話でついに具体的な起点を持ちます。鍵となるのは、おととしのクリスマスイブの記憶と、幸雄が持ち去った免許証。
一方で、週刊誌記者・天童は紗春の過去へ踏み込み、一樹は孤立を深めながら真実を思い出す。そして久留川の白骨遺体をきっかけに、聖子と紗春の力関係が逆転。
今回は「誰の嘘が、どの嘘を崩したのか」という視点で、第7話の流れを時系列で整理していきます。
※この記事は、ドラマ「夫に間違いありません」第7話のネタバレを含みます。未視聴の方はご注意ください。
ドラマ「夫に間違いありません」7話のあらすじ&ネタバレ

第7話は、“遺体の取り違え”が起きた起点がついに言語化され、紗春が抱えていた「別の嘘」まで浮かび上がる回です。
週刊誌記者・天童は一樹を追う手を緩めず、次のスクープに向けて紗春の周辺まで洗い直しに入る。
一方の聖子は、子どもたちの生活を守るために「夫と連絡を断つ」という決断を下し、一樹は孤独の底へ落ちていきます。
そして“おととしのクリスマスイブ”の記憶が戻った一樹の口から、紗春の証言と真逆の事実が出てくる――。
ラストは久留川で発見された遺体をきっかけに、聖子と紗春の関係性が決定的に反転。これまで「弱み」を握られていた側だった聖子が、初めて主導権を取り戻して終わります。
栄大が真実に近づく――光聖との面会で「知らないふり」を命じられる
朝比家の中で、いちばん早く“空気の異変”を察知しているのは長男の栄大だ。
父・一樹の死が確定したはずなのに、母・聖子はどこかよそよそしく、家には妙な緊張が残っている。大人たちが言葉を濁し、肝心な話題だけを避ける――その態度が、逆に「何かある」と教えてしまっている。
栄大は母に正面からぶつかれない代わりに、叔父の光聖へ会いに行く。
面会の場で栄大は単刀直入に切り出す。「父さんのこと、何か知ってるでしょ」。しかし光聖は答えない。
答えないというより、“答えられない”。光聖自身が抱えているのは、姉を守るために積み上げてきた嘘と、その嘘が家族を壊していくのを見ている苦しさだ。
光聖は、栄大が欲しい言葉を一つも渡さない代わりに、冷たい結論だけを置いていく。
「姉ちゃんを守りたいなら、知らないふりをしてろ」
真実を知れば、栄大は正義感の矛先を母へ向けてしまうかもしれない。光聖はそこを恐れている。母を守るために、息子から“正しさ”を奪うしかない――それが光聖の選択だ。
栄大は納得できず、怒りを抱えたまま帰る。
この時点で、朝比家は“秘密を抱えた夫婦”の問題から、“秘密に巻き込まれていく家族”の問題へスライドし始める。第7話は、その切り替えを最初に栄大で見せてくる。
食堂パート:紗春の異変――ミス連発と、聖子の「気にしないで」が届かない
聖子の店では、紗春が明らかに落ち着きを失っている。
注文を取り違え、皿を割り、手元が狂う。普段の紗春は、場の空気を読んで自分を調整できるタイプだ。だからこそ、この“雑さ”は目立つ。
ミスをして「すみません」と頭を下げても、目だけはどこか上の空。心が別の場所にある。
聖子は「大丈夫」と言いながらも、内心では違和感を積み上げていく。
(あの記者に何か言われた?)
(それとも、紗春自身が別の問題を抱えてる?)
ただ、今の聖子は人の事情に踏み込む余裕がない。自分の足元が崩れそうで、他人の地雷を踏む勇気が出ない。
聖子はあえて軽く言う。「あの記者のことは気にしないほうがいい」。
巻き込みたくないし、何より自分が“余計な繋がり”を増やしたくない。だが紗春の反応は薄い。
「気にしない」で済む段階を、紗春はすでに通り過ぎているように見える。ここが第7話の不穏さだ。
天童が紗春に接触――「旦那さんは1年前に死んだ」と言い切り、紗春が激昂
天童は一樹の行方を追いながら、聖子の周辺にいる紗春にも引っかかりを覚える。
“偶然知り合ったはずの女”を、聖子は店の内側に入れている。普通なら警戒して距離を置くはずなのに、なぜここまで近いのか。
取材者目線で言えば、そこは必ず理由がある。
天童は紗春に揺さぶりをかける。
「あなたの旦那さんが、1年前に死んだことを知っている」
この一言で紗春は一気に表情を変える。笑顔は消え、怒りが前に出る。
「勝手に夫を死んだことにするな」
彼女の反応は、“否定”というより“触れるな”に近い。ここで天童は確信を深める。紗春は何かを隠している。
天童はさらに、光聖から録った音声を出し、紗春に取引を持ちかける。
「一樹の情報が欲しい。あなたも困っているはずだ。協力するなら助ける」
けれど紗春は、音声を聞くより先に“拒否”へ振り切る。録音機を踏みつけ、壊す。
交渉のカードを潰し、議論の入口を塞ぐ。これは感情的な行動に見えて、実は冷静だ。取材者の土俵に乗った瞬間、引き返せなくなるからだ。
そばで見ていた聖子は、秘密を直接言い当てられなかったことに一瞬ホッとする。
だが同時に、紗春の豹変が怖い。
(この人は、何を隠してる?)
安心と不安が同時に膨らみ、聖子は“味方のはずの人”を信用できなくなっていく。
聖子が一樹に送った絶縁メッセージ――「家族を守る」ための冷酷な判断
天童の嗅覚が一樹へ近づいている以上、聖子は最悪の事態を想定するしかない。
一樹が生きているとバレたら、保険金の不正受給が疑われ、子どもたちの日常が吹き飛ぶ。聖子が今守りたいのは“夫”ではなく“生活”だ。ここが第7話の残酷なリアルでもある。
聖子は一樹にメッセージを送る。
「もう連絡を取り合うのはやめよう」
「一人で逃げ切って」
送信ボタンを押す指は迷う。それでも押す。迷っている間に、天童が一樹へ辿り着くかもしれないからだ。
一樹からすれば、唯一の繋がりを切られるに等しい。
彼は逃げているだけでも限界なのに、仕事も家も失い、精神が削られている。その上で“家族”からも切り離される。
聖子の決断は家族を守るためのものだが、同時に一樹を“孤独の加速”へ放り込む決断でもある。
天童の調査:幸雄の社宅へ――「家族像」と「バスケ熱」、そして封筒の中身
天童は紗春の反応をきっかけに、紗春の夫・幸雄について調べ始める。
彼が向かったのは、紗春一家が住んでいた社宅。天童は調査会社の人間を装い、幸雄の部下に接触する。
取材のやり方がえげつないのは相変わらずだが、天童がやっているのは“噂”ではなく“裏取り”だ。相手の口から事実を引っ張り出し、積み上げていく。
部下の話から見えてきた幸雄は、外面の良い男だった。職場での評判は良く、家族ぐるみで付き合う相手もいたという。
そして印象的に語られるのが、バスケットボール。幸雄も紗春も特定のチームのファンで、紗春の熱量は特に強い。
チケットを自分で手配し、勝敗で機嫌が激しく揺れる。「負けたら1日が地獄」――その言い方が笑い話にならない温度で語られる。
ここで天童は、紗春が“家で娘とクリスマス準備をしていた”と言っていたことを思い出す。
それが真実なら、紗春は家庭的な妻のはずだ。
しかし部下が語る紗春は、家庭よりも「勝敗の感情」が前に出るタイプ。
このズレが、天童の疑いをさらに濃くする。
さらに部下は、天童に封筒を託す。
「奥さんに渡してほしい」と。
封筒の中身は、幸雄の運転免許証。失踪した日に出張へ行く予定があり、レンタカーの手続きのために部下が一時的に預かった。結局返せないまま時間が経ち、今になって渡す術がない。
つまり、幸雄の失踪当日、免許証が本人の手元にない時間帯があったことになる。
この一点は、後半の“取り違え”を説明するピースになっていく。
天童にとって免許証は、ただの落とし物ではない。「本人確認の根拠」になり得るからこそ、遺体誤認の仕組みを逆算できる。ここで天童の視線は、一樹の逃亡だけでなく“遺体の正体”そのものへ向かい始める。
薩川の追加情報――保険金の影、そして天童の仮説が形になる
天童は社宅で得た情報を持ち帰り、契約カメラマンの薩川とすり合わせる。
薩川が別ルートで掴んでいたのは、紗春が失踪の少し前に「夫の生命保険を増額しようとしていた」という痕跡だ。しかも、その増額は一度は断られている。
増額の経緯や成否はともかく、“増やそうとした”という事実があるだけで、天童の頭の中では動機が立ち上がる。
天童は、ここで二つの線を引く。
・紗春は夫の失踪を「事故」や「被害」として語っているが、反応が不自然に強い
・保険金に触れようとしていた形跡がある
・勝敗で感情が振り切れる
――この三点が揃うと、天童の中では「夫殺し」の仮説が現実味を帯びる。
さらに天童は、紗春の連絡先が途中で変わっていることも掴む。
人は、何かを隠したいときに連絡線を切る。天童はそこに“後処理”の匂いを見る。
こうして天童は、一樹の件とは別軸で、紗春の過去へ踏み込んでいく。
閉店後の店に天童が現れる――「ほくろ」まで言い当て、聖子に別の恐怖を植え付ける
店を閉めたあと、天童は聖子の前に姿を見せる。
彼は単に脅すのではなく、聖子が“何を根拠に遺体を夫だと信じたのか”を逆に言語化してみせる。
遺体の特徴を言い当て、聖子の表情が固まる。
(そこまで知っているのか)
聖子は、天童が遺体誤認の核心に手をかけていると悟る。
天童は、聖子の逃げ道を塞ぐように言う。
「あなたが見たのは、本当に朝比一樹でしたか」
答えを迫るのではない。答えられない状況を作って楽しんでいるようにも見える。
聖子は怒りたいのに、怒れない。怒った瞬間、何かを隠していると認めることになるからだ。
そして天童は、意味深な言葉を残す。
「本当に怖いのは僕じゃなくて、葛原紗春かもしれませんよ」
ここで聖子は、“敵が二人いる”状況を自覚する。天童は暴く側。紗春は、何をするか分からない側。
聖子にとって厄介なのは、暴く側の天童より、予測不能な紗春のほうかもしれない――その発想が、聖子の行動を変えていく。
栄大との会話――「もっと助けたい」と言う息子を、聖子が未来へ逃がそうとする
聖子は栄大に、紗春が忘れたスマホを届けに行くと告げる。
栄大は光聖との面会を思い出し、母に伝える。「母さんを悲しませるようなことはするなって言われた」と。
その言葉の裏にあるのは、栄大が“母を守りたい”側に踏み出し始めているという事実だ。
栄大は言う。「俺はもっと助けたい」。
だが聖子は、息子を共犯の位置に立たせたくない。
だから答える。「だったら、推薦を取って、獣医になる夢を叶えてほしい」。
家の中の地獄に巻き込まれるより、外の未来に逃げろ。聖子の言葉は優しいが、同時に“線引き”でもある。
ここで栄大は引き下がるしかない。母の言葉は、“助けるな”ではなく“巻き込まれるな”だからだ。
スナックパート:二人の距離が詰まりすぎる――紗春の探りと、聖子の警戒
夜、店がスナックの顔になる。客が帰ったあと、聖子と紗春は並んで酒を飲む。
紗春は、ふっと笑いながら聖子に刺すような言葉を落とす。生活の中で「お金」が人を追い詰める感覚――そこに話題を寄せてくる。聖子が抱えている事情に触れてくる時点で、紗春が“情報を拾っている”のが分かる。
支えるふりをしながら、弱点を把握している。
そして紗春は核心を突く。
「遺体の確認はしたんでしょ? 一樹さんに間違いなかったんだよね?」
聖子は思わず問い返す。「なんでそんなこと聞くの?」
紗春は笑って誤魔化す。「そんな怖い顔しないでよ」。
だが、笑顔は柔らかいのに、質問の刃は鋭い。ここで二人の関係は“友人”から“取引相手”に近づく。
紗春はさらに、天童の言葉を引き合いに出す。
「あの記者が言ってたの。朝比さんもいるなら話が早いって。あれ、どういう意味なんだろ」
自分だけが狙われていると思っていた紗春が、聖子も当事者だと気づき始めた瞬間だ。
「遺体のこと、ちゃんと知ってる?」
紗春の質問は、友達への確認ではなく、当事者への追及に近い。
そこへ娘の希美が起きてきて、空気が一度だけ緩む。紗春は母の顔に戻り、声色を変える。
でも緩んだのは一瞬で、すぐにまた緊張が戻る。聖子が店を出るとき、車のキーを置いたまま出てしまう場面もあり、日常のミスが不穏な意味を帯びて見える。
紗春が聖子の車に気づく――「なんで同じ車?」が、二人の関係をさらに歪める
スナックを出るタイミングで、紗春は店の前に止まった聖子の車を見て足を止める。
「その車……」と小さくつぶやき、聖子を見る目が一瞬だけ鋭くなる。紗春にとって車は、夫を迎えに行った夜の“記憶の道具”でもある。だから同じ車種・同じ雰囲気が目に入るだけで、過去の映像が呼び戻されてしまう。
紗春は聖子に問いかける。
「なんで、その車に乗ってるの?」
聖子はとっさに言葉を濁す。偶然だと言えばいいのに、声が上ずる。ここで聖子は気づく。紗春の質問は、好奇心ではない。確認だ。
“遺体を夫だと信じた理由”の一つに、所持品や車の情報が絡んでいたなら――。
紗春はそこまで計算していなくても、嗅覚で近づいてくるタイプだ。聖子は車一台の一致で、紗春が一気に自分へ疑いを向けてくることを実感する。
紗春は笑って引き下がるが、引き下がったわけではない。探りの刃を、次にどこへ入れるか測っている。聖子はその目線を背中に感じながら、車に乗り込む。
一樹の転落――警察の影、仕事の打ち切り、暴力、そして「思い出したくなかった記憶」
一方その頃、一樹は追い詰められていた。
警察や記者に追われる身で、まともな仕事はできない。ようやく潜り込んだ現場にも警察が来て、彼は逃げ出す。派遣会社からは「これ以上は仕事を紹介できない」と切られる。
生活の足場が崩れ、孤独だけが増えていく。
さらに聖子から届いた「もう連絡を取るな」というメッセージが、最後の支えを折る。
一樹は昼間から酒を煽り、街で若者にぶつかってしまう。そこから揉め事になり、暴力を受ける。
殴られ、蹴られ、投げ飛ばされた先はゴミ置き場。袋が破れて中身が散る。その瞬間、一樹の脳内に“おととしのクリスマスイブ”の断片が一気に戻ってくる。
(そうだ、あの夜。俺は――)
思い出したのは、都合の悪い真実だ。
一樹は聖子に電話をかける。聖子は無視する。だが紗春が「店は見てるから、出てきたら」と促し、聖子は渋々電話に出る。
ここでも紗春は聖子の行動をコントロールしているように見える。支えているのか、誘導しているのか。曖昧な距離が不気味だ。
「おととしのクリスマスイブ」の回想――遺体取り違えの起点は“財布と免許証”
電話口で一樹は言う。「あの時のこと、思い出した」。
そして語り始めるのは、遺体取り違えの“起点”になる出来事だ。
ここで重要なのは、ただの酔っ払いトラブルでは終わらないこと。
一樹が思い出したのは、幸雄が行方不明になった日――2024年12月24日(クリスマスイブ)の夜そのものだった。つまり“取り違え”の根っこは、遺体が見つかった後ではなく、遺体が川へ落ちる前にすでに仕込まれていたことになる。
おととしのクリスマスイブ、酔っていた一樹は通りがかりの男にぶつかり、男の服を汚してしまう。後に行方不明となる葛原幸雄――紗春の夫その人だ。
男は怒り、クリーニング代を払えと迫る。しかし一樹の財布にあるのはわずかな金。
一樹が払えるのは、ポケットの小銭程度。男はそれを見下し、勝手に財布を開き、現金を抜き取る。
そして「残りは後で請求する」と言いながら、担保のように免許証が入った財布そのものを持ち去る。理不尽だが、酔った一樹は抵抗しきれない。そこで男は勝ち誇ったように笑う。
そこへ車が止まり、女が男を迎えに来る。
男は女の名前を呼ぶ。「紗春!」
女は男に謝りながらも、どこか苛立っている。男は汚れた服を見て不満をこぼし、女は「大変だったね」と宥める。
車から降りてきた紗春は、まず男の服の汚れに目を落とし、次に一樹へ視線を移す。その一瞬の目線が、一樹の記憶に焼き付いている。気まずさというより、値踏みのような冷たさだ。
男は「年寄りにやられた。最悪だ」と吐き捨て、紗春は「遅くなってごめん」と言いながらも、心ここにあらずの顔で男を車へ促す。一樹に向けて謝罪めいた言葉はあるが、謝っているのは“ぶつかったこと”ではなく“面倒が増えたこと”のようにも見える。
そして男は、取り上げた財布を握ったまま車に乗り込み、紗春はそのまま発進する。一樹は冬の冷気の中で取り残され、ただ立ち尽くすしかない。
一樹が覚えているのは、“男が女を紗春と呼んだ”という一点だ。
今、聖子のそばにいる葛原紗春と一致してしまう。
一樹は言う。
「クリスマスイブの夜、紗春って女が夫と一緒にいた。…あいつ、嘘ついてる」
紗春はこれまで、「その夜は家で娘とクリスマスの準備をして、夫の帰りを待っていた」と語っていた。
だが一樹の記憶では、紗春は外にいて、車で夫を迎えに来ている。この矛盾が成立するなら、紗春の“被害者の妻”という立場そのものが揺らぐ。
さらに一樹は推測する。
男が自分の財布を持ったまま、その後川に落ちたのではないか。
そうであれば、遺体から見つかった所持品が“一樹のもの”であることは説明できる。聖子が遺体を夫だと誤認した理由も、ここで一本の線になる。
聖子は電話を切り、震える。
守るべき生活のために切り捨てた夫が、今さら“決定的な情報”を持って帰ってきた。しかもそれは、紗春という「近すぎる他人」を敵に変える材料だ。
聖子が紗春に“遠回し”に突きつける――笑顔のまま、嘘の綻びを踏む
電話のあと、聖子は店へ戻り、紗春を見つめ直す。
これまで見えていたのは「同じ痛みを抱えた妻」だった。
だが今は違う。「嘘をついて近づいてきた女」だ。
聖子は正面から責めない。責めたら、今度は自分の嘘(夫の生存)が突かれる。
だから聖子は遠回しに言う。
「あなたのこと、誰かが調べてる。気をつけて」
具体的な言葉は避けるが、視線と間の取り方で“知っている”を匂わせる。
紗春は一瞬だけ表情を固める。そこから先は笑って誤魔化すが、動揺は隠しきれない。
このやり取りが、後半の警察署の場面へ繋がる。
聖子は“告発”ではなく“主導権”を取りにいく。第7話の聖子は、守りのために攻める。
紗春の「あの日」――バスケの敗戦、荒れた部屋、そして橋の上の嘘
一樹の回想で浮かんだ矛盾。その答え合わせのように、物語は紗春側の過去へ切り替わる。
おととしのクリスマスイブ。紗春は家でバスケの試合を見ている。だが贔屓のチームは負ける。
その瞬間、紗春の感情は振り切れる。せっかく整えたはずのクリスマスパーティの準備は崩れ、部屋は荒れる。床にはピザの残骸が散り、生活の匂いが一気に“破綻”へ寄る。
勝敗一つでここまで空気が変わる。その極端さが、紗春の危うさを裏付ける。
紗春は車を走らせ、酔った夫・幸雄を迎えに行く。夫は酔い、機嫌よくしゃべり、家庭の空気など気にしていない。
紗春はそんな夫を横目で見ながら、淡々と嘘を重ねる。タイヤがパンクした、修理を呼んだ、ちょっと外に出て――。
橋の上で車を止め、夫を車外へ誘導する。
夫は疑いながらも、紗春の言葉に従う。
次の瞬間、紗春は夫を突き落とす。久留川へ。
水音がして、紗春は息を止める。
それでも彼女は車に戻り、何事もなかったかのようにハンドルを握り直す。
ここで明示されるのは、「幸雄は事故で消えたのではなく、紗春が落とした」という事実だ。
そして天童に対して紗春が激昂した理由も腑に落ちる。
“夫が死んだ”という言葉が、すぐに“自分が殺した”へ繋がってしまうからだ。
久留川の白骨遺体ニュース――紗春が警察へ走り、聖子が追う
現在へ戻ると、テレビが久留川で発見された白骨遺体のニュースを流す。
紗春は青ざめ、反射的に警察署へ向かう。
彼女の中にあるのは二つの感情だ。
夫の遺体が見つかれば、保険金に繋がるかもしれない。だが見つかれば、自分がやったことが“形”になる。
希望と恐怖が同居しているから、走り方が必死になる。
紗春は受付で必死に状況を確認しようとする。
その必死さは、行方不明者の家族として自然にも見える一方で、どこか“焦って回収しに来た”ようにも映る。
聖子もそれを追う。
追う動機は別だ。聖子は一樹から聞いた話で、紗春が嘘をついていると確信し始めている。
(紗春が動いた。つまり、そこに真実がある)
聖子はそう判断し、警察署へ向かう。
警察署で告げられた現実――遺体は「女性」、そして聖子が握った主導権
久留川のニュースが流れた瞬間から、紗春の動きは“速すぎる”。迷う暇もなく警察署へ駆け込み、受付で声を荒らげる。
事情を知らない人から見れば、行方不明者の家族が当然の反応をしているように見える。けれど聖子には分かる。あれは「確認」ではなく「回収」に近い焦りだ。
聖子は少し遅れて警察署に着く。
追いかけてきたというより、紗春が“どこで崩れるか”を見届けに来たような足取り。手の中には、紗春が忘れていったスマホ――そして一樹の言葉で繋がった“矛盾”がある。
聖子は廊下の端で黙って待つ。ここで大声を出せば、逆に自分のほうが疑われる。だから、静かに、息を潜めて紗春を観察する。
警察から告げられた遺体の性別は、紗春が期待していたものではなかった。
遺体は女性。
紗春は一瞬、理解できない顔をする。夫ではない。保険金にも直結しない。むしろ「夫の遺体は別にある」可能性だけが濃くなる。
期待と恐怖が混ざったまま走ってきた分、その落差は大きい。膝が抜けるように、その場で崩れそうになる。
そこへ聖子が近づく。
聖子は紗春の目の前にスマホを差し出す。画面には、紗春が語ってきた“あの夜”の説明と食い違う材料が揃っている。
聖子は声を荒らげない。責めもしない。だからこそ怖い。
そして静かに言う。
「私、あなたのやったこと、絶対誰にも言わないから」
この一言は、慰めの形をした脅しだ。
“言わない”は“言える”の裏返し。つまり聖子は、紗春の弱点を掴んだ。
その言葉を聞いた紗春の顔から血の気が引く。今まで握っていたはずの主導権が、音もなく奪われていくのが分かるからだ。
その言葉は、優しさにも聞こえる。
だが聖子の表情は“救い”ではなく“支配”に近い。
これまで聖子は、一樹の生存と保険金の件で紗春に怯え、主導権を握られていた。しかし今は違う。紗春が夫を落とした事実を知った瞬間、聖子は“握れる側”に回った。
第7話のラストは、聖子が初めて紗春に対して強く出られる条件を手に入れた瞬間で終わる。
ドラマ「夫に間違いありません」7話の伏線

第7話は「伏線の回収回」であると同時に、「次の地雷を置いていく回」でもありました。ここでは“描写として確定したこと”と、“今後回収されそうな論点”を分けて整理します。
【回収】取り違えの決定打:財布(免許証)と“ほくろ”が噛み合った
今回、遺体取り違えが成立した理由がかなり具体化しました。
- 幸雄が一樹の財布(免許証入り)を預かった
- その財布が遺体発見時の材料になった
- しかも一樹と幸雄は、右手の同じ位置にほくろがあった
この「所持品+身体特徴」が重なると、身元確認の現場は一気に“ミスが起きる側”に傾く。視聴者が「聖子の誤認」を責めにくい形で、構造として回収してきました。
【増えた】紗春の豹変スイッチ=常陸モンキーズの勝敗
同僚夫婦の証言で出てきた「負けたら1日が地獄」「おおかみ男みたいに変わる」は、今後の伏線としてかなり強い。
ポイントは、“勝敗”が紗春の感情を切り替えるスイッチだということ。
この情報があるだけで、今後もし紗春が急に荒れるシーンが来たとき、「ただのヒステリー」じゃなく、前段(試合/結果/金/借金など)を疑えるようになります。
【増えた】保険金増額未遂:動機が「衝動」から「計画」に寄る
薩川が掴んだ「失踪2か月前の増額未遂」は、紗春の犯行(疑い)を“計画犯罪”側へ寄せる材料です。
ここが重要なのは、増額が「断られている」こと。
もし計画なら、ここで一度“詰んで”いる。つまり紗春は、
- 断られても別ルートを探した
- あるいは、増額できないまま“実行”に切り替えた
どちらにせよ、紗春の中で「金の必要性」が相当強かったはず、という推測が成立します(ただし断定はできない)。
【増えた】免許証を預けた“前日”と、電話番号変更の意味
幸雄が免許証を同僚に預けたのが失踪の前日で、その後紗春が電話番号を変えていた。
この並びは地味ですが怖いです。
「遺品整理」なら、番号変更はもっと後でもいい。逆に、事件直後の番号変更は“遮断”の匂いが強い。つまり紗春は、失踪(あるいはその直後)に、誰かと連絡を取られたくなかった/取らせたくなかった可能性が上がります。
ここは今後、天童が“通信ログ”を狙う導線になりそう。音(ICレコーダー)が潰れた以上、次はログと書類です。
【増えた】久留川の“女性遺体”は誰か:瑠美子案件と繋がる可能性
ラストの「久留川で再び遺体」→「女性だった」は、さすがにただのミスリードで終わらせない気がします。
ここで浮かぶ候補は大きく3つ。
- A:瑠美子の遺体の可能性
一樹が追われている“キャバクラ嬢殺し”が、物証として現実化するルート。これが一番ドラマ的には強い。 - B:紗春/幸雄の事件に関連する別被害者
「紗春が川に落とした」のが幸雄だけなのか? あるいは当日の別件か? ただし現時点では材料不足。 - C:まったく別件(ただし“聖子に有利な局面”を作る装置)
女性遺体に紗春が動揺し、聖子が“握る側”に回るための舞台装置だった可能性。
断定はできないけど、Aが成立する条件は「遺体の発見場所/死亡推定時期/一樹の過去行動」とつながること。次回以降、警察パートがどう出るかで見えてきます。
【いちばんの伏線】聖子が“強気”になれた瞬間=黒を握ったから
第7話の最後、聖子は「言わない」と言いながら、言外にこう言ってる。
私はあなたの秘密を知った。だからあなたは私に逆らえない。
これって、勝利というより“同じ沼に足を突っ込んだ”瞬間でもあるんですよね。
脅しの構図に入った時点で、聖子は「告発者」ではなく「握って支配する側」に寄ってしまう。ここから先は、聖子の正義がどこまで保てるのかが、最大の未回収伏線です。
ドラマ「夫に間違いありません」7話の感想&考察

第7話を見終わって一番残ったのは、「このドラマ、救いがない」という感情じゃなくて、“救いの作り方が全部いびつ”という感触でした。誰かを守ろうとするほど、別の誰かを追い詰める。第7話は、その構図を「聖子↔紗春」で鮮明にしてきた回だと思います。
「妻が妻を追い込む」構図が、いちばん生々しい
一樹が逃亡して、天童が追って、警察が迫る。
サスペンスとしての外堀はちゃんとあるのに、結局いちばん怖いのは“家庭内の力学”なんですよね。
聖子が紗春に言った「絶対誰にも言わない」は、優しさの顔をした支配。
紗春が天童を踏み潰したのは、恐怖の顔をした防衛。どっちも「やってること」は同じで、“自分の生活を守るために情報を握る”です。
このドラマって、暴力より情報のほうが人を縛れる、って冷静に突きつけてくる。
そしてそれを、夫同士じゃなく妻同士でやるから、妙にリアルで、妙に後味が悪い。
天童の怖さは正義じゃない――“確証を積む”タイプの執念
天童は正義のヒーローじゃない。
でも、やり方が“仕事のプロ”なんです。
ICレコーダーが潰されたら、足で情報を取りに行く。
証言を集めて、物証(免許証)に繋げて、さらに保険の履歴まで掘る。
この「音→足→書類」への切り替えの速さが怖い。
天童の“目的”は、たぶん暴露じゃなく、記事として成立する確証。
だからこそ一回の失敗で諦めないし、逆に言うと、確証が揃ったら躊躇なく出す。聖子が相手にしているのが、感情じゃなく「確証の収集速度」なのが、視聴者側も息が詰まるポイントだと思います。
一樹の孤独は自業自得だけで片づけられない(でも許されもしない)
一樹に同情するか?と言われると、正直むずい。
キャバクラ嬢殺しの件がある時点で「逃げるなよ」と言いたくなる。
でも第7話で描かれた一樹の追い詰められ方って、“罪の罰”というより“生活の破綻”なんですよ。
仕事が途切れて、周囲が警察になる気配を感じて、唯一の連絡先(聖子)からも距離を置かれる。踏切前で止まるのは、罪悪感より先に「これ以上どう生きる?」が来てる気がした。
だからこそ、一樹は危ない。
「どうせ終わるなら」と考えた瞬間、人は自分も他人も巻き込める。終盤の一樹の空気は、そういう危うさをずっとまとっていました。
紗春の動機は「金」だけじゃない:母としての防衛線が犯罪に変わる瞬間
紗春が幸雄を突き落とした――ここは衝撃だけど、ドラマとしての怖さは「じゃあ紗春は最初から悪人だった」で終わらないところ。
保険金増額未遂が示すのは、金が必要だった事実。
ただ、金が必要になる理由って、貪欲だけじゃなく“防衛”でも起きる。子ども(希美)がいて、生活があって、逃げ道がなくなったとき、人は倫理より先に「明日」を選ぶことがある。
もちろん、それで殺しが正当化されるわけじゃない。
でも紗春は、たぶん「私が悪い」より先に「私が落ちたら希美が終わる」と思うタイプの危うさがある。第7話の“豹変”は、その危うさが表に出た瞬間に見えました。
「遺体取り違え」は事故じゃなく“条件が揃えば起きる”
このドラマの題材の肝は、たぶんここ。
取り違えって、誰か一人のミスに見えがちだけど、本当は「条件が揃ったら、普通に起きる」。
- 所持品(免許証入り財布)が動く
- 身体特徴(ほくろ)が似ている
- 遺体が損傷していて顔で確認できない
- 確認する側(聖子)が“そうであってほしい”状態にある
この条件が重なると、「夫に間違いありません」は“思い込み”じゃなく“推定”として成立してしまう。第7話は、その成立条件をきれいに見せてきた回でした。
だから怖い。
このドラマの地獄は、特別な悪人が作るんじゃなく、「普通の生活の中の小さなズレ」が積み重なって完成する。
次回へ:聖子は優位に立ったのか、それとも“共犯”に落ちたのか
第7話ラストの聖子は、明らかに“握る側”になった。
でも、優位ってだいたい短命です。
握った情報は、握った瞬間から「相手にとっての爆弾」になる。
紗春が追い詰められたら、最後は爆弾を抱えて突っ込むしかなくなる。しかも相手は、夫を殺して川に落とせる人間。聖子の「言わない」は、紗春にとって“慈悲”ではなく“首輪”です。
ここから先は、おそらくこういう勝負になる。
- 聖子:黙らせたい(生活を守りたい)
- 紗春:黙らされたくない(生き残りたい)
- 天童:確証を集めたい(記事として成立させたい)
- 一樹:逃げたい(でも孤独で壊れそう)
第7話は“真相が見えた回”というより、全員の逃げ道が狭くなった回でした。だから次が一番怖い。
ドラマ「夫に間違いありません」の関連記事
全話のネタバレについての記事はこちら↓

元ネタの事件についてはこちら↓

過去の話についてはこちら↓




コメント