「アリバイ崩し承ります」は、派手なトリックや超人的な推理で驚かせる作品ではありません。このドラマが描くのは、人が信じてしまった“時間の物語”を、静かにほどいていく快感です。
時計修理店を営む美谷時乃が成功報酬5,000円で請け負うのは、犯人探しではなく“アリバイ崩し”。
察時美幸という少し不器用な管理官と組みながら、言葉の行き違い、思い込み、時間のズレを丁寧に並べ替えていきます。
本記事では、ドラマ「アリバイ崩し承ります」の全話(連続ドラマ+スペシャル)を通して、
・各話のあらすじとネタバレ
・アリバイが成立してしまった理由
・崩された決定打と伏線
・時乃と察時の関係性の変化
を、時系列で分かりやすく整理します。
一気見した後の振り返りにも、途中話数の確認にも使える“全話ガイド”としてご活用ください。
「アリバイ崩し承ります」の原作はある?

結論から言うと、原作はあります。ドラマ『アリバイ崩し承ります』は、大山誠一郎さんの同名ミステリー小説がベースです。
この作品の肝は「犯人当て」よりも、“成立してしまったアリバイ”を論理で崩す快感。時計店という舞台設定も、アリバイ=時間の証明という構造にピタッと噛み合っていて、ドラマ版の軽妙なテンポとも相性が良いんですよね。
原作小説の基本情報
原作は、時計店の若き店主・美谷時乃(みたに ときの)が「一回5000円」で依頼を受け、話を聞いただけでアリバイを崩していく――という“安楽椅子探偵”型の連作短編集。
ドラマでおなじみの決め台詞「時を戻すことができました。アリバイは、崩れました」も、原作の時乃像を象徴するフレーズとしてしっかり根付いています。
続編・コミカライズは?
「原作は1冊だけ?」と思われがちですが、続編(第2作)も存在します。タイトルは『時計屋探偵の冒険 アリバイ崩し承ります2』。
さらに、漫画版(コミカライズ)も展開されていて、原作・大山誠一郎さん/作画・sanorinさん名義で読めます。
ドラマを入口にして「もっとアリバイ崩しが見たい」となった人が、原作→続編→漫画へスライドできる導線が用意されているタイプの作品ですね。
ドラマ版で変わったポイント
原作を読んだ人ほど「あ、ここドラマで肉付けしたな」と感じるのが、“時乃に依頼する刑事”の設定です。
原作では、時乃に相談するのは名前のない新米刑事(作中では「僕」)ですが、ドラマではこれが 察時美幸(さじ よしゆき)に置き換えられています。
この変更が効いていて、ドラマは「謎解き」だけじゃなく、
- キャリア官僚が地方で空回りする悲哀
- それでも“功名心”と“正義感”が同居してしまう人間臭さ
みたいな、感情の層が一段増えてる。原作のミニマルな面白さを損なわず、連続ドラマとしての起伏を作った改変だと思います。
【全話ネタバレ】アリバイ崩し承りますのあらすじ&ネタバレ

1話:死者のアリバイ
事件の導入|“死者が告白する殺人”という逆転の一手
第1話「死者のアリバイ」は、このドラマの“型”を一気に提示する導入回です。
那野県の商店街で祖父の時計店を継いだ美谷時乃は、時計修理の傍ら「アリバイ崩し承ります」を成功報酬5,000円で掲げて暮らしています。そこへ霞が関から“飛ばされた”管理官・察時美幸が下宿人として転がり込み、二人の目前で人気作家・奥山新一郎が交通事故に遭遇する。
重傷の奥山は「さっき人を殺した」と告げ、遺体は確かに“藪マンション”で発見される。しかし奥山本人には鉄壁のアリバイがある。
ここで視聴者の思考は一度止まり、「何が前提として間違っているのか」を探すフェーズに引き込まれます。事件も登場人物もシンプルなのに、解決の肝は派手な仕掛けではなく、“言葉の受け取り違い”と“時間の並び替え”にある――それを最初の一話で明確に示してきました。
時乃の推理|崩すのは“犯人”ではなく“物語”
時乃が崩していくのは、犯人の巧妙な工作というより、周囲が無意識に組み立ててしまった“物語”です。
最大の鍵は、奥山が聴覚障害を持っていること。事故直後の混乱の中で質問を取り違えた結果、奥山の発言が「犯行場所の特定」と誤解され、捜査は遠回りしてしまう。
彼が危険に気づかなかった違和感、音を必要としない生活導線、メール中心の端末、音楽データのないPC――点が線につながった瞬間、時乃の決め台詞「時を戻すことができました」は、単なる演出ではなく、この作品全体の推理思想そのものになります。
真相への切り替え|時間軸を並べ替える推理
香澄が一度襲われながらも生還し、帰宅直後に“別の人物”に殺された可能性へ切り替えた瞬間、証拠は「死亡推定時刻」に沿って整列し始めます。
部屋の合鍵を持つ管理人、奥山への歪んだ忠誠心、弱みを探す計画の綻び。動機も手段も、アリバイの裂け目から自然に立ち上がる構造です。
察時がイヤホンを装着して管理人に迫る小技も、単なるキャラ付けではなく、「聴こえる/聴こえない」という推理テーマを映像で補強する役割を果たしていました。
キャラクターとトーン|軽さが推理を支える
個人的には、コロケ争奪戦や察時の妙なプライドが、推理パートの硬さをほどよく中和していたと感じます。
察時の“頼んでないけど頼っている”距離感と、時乃の可憐さの裏にあるドライな合理性。このバディ感が、作品全体のトーンを決定づけています。
視聴者の反応も分かれ、「浜辺美波を堪能した」という声がある一方で、薄味さや物足りなさを指摘する意見も見られました。
また「警察でも気づけたのでは?」という不満もありますが、そこを飲み込むと、この物語の武器が“現場検証”ではなく“言葉と時間の整合性”だと腑に落ちます。
導入回としての評価|“時を戻す”快感の提示
時乃が「祖父に一人でやるなと言われた」と躊躇する場面には、シリーズ全体の縦軸――孤独と継承のテーマも忍ばせてありました。
第1話は、時計の針を戻せない現実に対し、推理だけが「時を戻す」ことができる。その快感をきれいに鳴らした、完成度の高いスタートだったと思います。
1話で判明する伏線
・奥山の頬に残る3本の傷
・事故直前の呼びかけに反応しなかった違和感
・「どこで?」と「どこに住んでる?」の質問が入れ替わったこと
・メール専用の携帯と、音楽データのないPC
・香澄の爪に残された皮膚片
・香澄の車がマンションに残っていた事実
・管理人だけが持つ合鍵の存在
・管理人室に並ぶ奥山のサイン本(全巻)
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2話:ストーカーのアリバイ
事件の概要|“鉄壁のアリバイ”から始まる捜査の迷走
第2話「ストーカーのアリバイ」は、シリーズの核である“時間”を、トリックだけでなく人間の選択としても描いた回です。
医科大教授・浜沢杏子が自宅で包丁により刺殺され、第一発見者の弟・安嵐は、元夫・菊谷吾郎の犯行だと断言します。しかし菊谷には、友人と居酒屋にいたという鉄壁のアリバイがあり、捜査本部は次第に「借金と保険金」を抱える弟へ疑いの軸を移していきます。
その中で察時だけが、世論も捜査も傾く方向に抗うように、菊谷を疑い続けます。孤軍奮闘の末、時乃へ正式に“依頼”する流れは、プライドが高く不器用な察時という人物像を、1話よりも一段深く掘り下げていました。
時乃の介入|アリバイという言葉に反応する探偵
時乃の動きも抜け目がありません。
バレンタインのマカロンを手土産に捜査一課へ入り込み、会議を盗み聞きする中で、彼女が反応したのは「アリバイは成立している」という一言だけでした。
さらに、渡海の嫉妬が火に油を注ぎます。察時が時乃の家に下宿していると知った瞬間、渡海の疑念と苛立ちは露骨になり、捜査の緊張感と、三角関係未満のコミカルな空気が同時進行します。
この軽さがあるからこそ、後半に待つビターな真相が、より深く刺さる構造になっていました。
アリバイの正体|“犯人”ではなく“被害者”が作った時間
今回の最大のポイントは、アリバイを成立させていたのが、犯人の巧妙な小細工ではなく、被害者自身が組み立てた“時間割”だったことです。
SNSの投稿時刻、胃内容物から割り出される死亡推定時刻、夕食のシチュー写真――どれも「その時にそうだったはず」という前提があるからこそ、強固なアリバイとして機能していました。
時乃が掴んだのは、研究生が差し入れた塩饅頭を「甘いものは控える」と断ったにもかかわらず、その後ケーキを食べているという小さな矛盾です。
食事のタイミングを3時間ずつ前倒しし、投稿だけを“定刻”に見せる。
時計の針は前に進んでいるのに、情報の針だけが逆回転している――この瞬間、アリバイ崩しが「時間を戻す」行為であることが、はっきり腑に落ちました。
真相と余韻|“ストーカー”という役を引き受けた理由
明かされた真相は苦いものでした。
杏子は膵臓がんで余命わずか。弟・安嵐に保険金を残すため、自殺ではなく“殺人”という形を選び、菊谷に依頼していたのです。
タイトルの「ストーカーのアリバイ」は、世間体のために“悪役”を引き受けた菊谷の立場を象徴しています。アリバイが崩れた先に浮かび上がるのは、「本当は誰を守るための物語だったのか」という問いでした。
ドラマ版では、刺し傷の向きなど映像ならではのヒントが加えられ、原作の反転構造をうまく補強していたと思います。
評価と縦軸|精密さより“時間を偽る心理”
胃の内容物だけで死亡時刻を断定するのは現実的か、というツッコミが出るのも理解できます。ただ、この回が描きたかったのは鑑定精度ではなく、「人は時間を偽れると思い込む」という心理です。
限りある命の時間を“演出”してしまった杏子の覚悟は残酷で、時乃の推理が暴くのは犯人そのものより、残された人間がどう受け止めるか、という部分にあります。
ラストで渡海が「察時の裏に協力者がいないか」と時乃に探りを入れる場面も、次回以降の縦軸としてしっかり効いてきそうです。
2話で判明する伏線
- 杏子のSNS投稿(12時・15時・19時35分)の時刻と内容
- テーブルのシチューが“手つかず”だったこと
- 研究生の塩饅頭を『甘いものは控える』と断った矛盾
- 弁当とケーキの“色合い”が似ている違和感
- 胃・十二指腸の内容物から割り出された死亡推定時刻
- 菊谷が“知らないはずの死亡推定時刻”を口にする点
- 菊谷の居酒屋アリバイ(18時〜0時/中座5分)
- 杏子の膵臓がん(余命わずか)
- 安嵐の借金額と生命保険金の一致
- 最後のシチュー投稿を“誰が”行ったのか
- 渡海が察時のアリバイ崩しに疑念を抱き、時乃に内偵を依頼
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3話:美人姉妹のアリバイ
事件の入口|“アリバイを崩さない”異色の依頼
第3話「美人姉妹のアリバイ」は、シリーズの看板である“崩し”をいったん横に置き、逆に「アリバイを探す」ことで物語を転がした変化球回です。
ピアノ講師・河谷敏子が自宅で殺害され、翌日になってマッサージ店店長・芝田和之が「事件当日の朝、敏子は店で施術を受けていた」と証言します。さらに敏子は、ホステスとして働く妹・純子とも揉めていた。
純子は夢遊病を抱え、「袖に血が…自分が姉を?」と口にする。捜査が一気に“自白”へ飛びつきそうになる空気を、察時が強く嫌う導入がとても巧みでした。
初めての依頼|“アリバイ探し”という選択
察時が時乃に依頼したのは、シリーズ初となる「アリバイを崩す」のではなく「アリバイを探す」仕事。
祖父から教えられたのは“崩す技術”であって、“救う技術”ではない。ここで時乃が一度ためらい、それでも純子の曖昧な不安と察時の執念を前に踏み出す。この瞬間、時乃は単なるトリック崩しの探偵から、一段階倫理を引き上げた存在になったように感じました。
トリックの核心|「20時間の眠り」が作る生存証明
トリックの骨格は、純子の「20時間も眠った」という異常な長さにあります。
犯人は純子を薬で眠らせ、化粧とカツラで敏子に似せ、芝田のマッサージ店で“敏子が生きていた証拠”を作り出す。そうすれば「11時20分まで生存」に見え、以降アリバイのある自分は容疑圏外へ。
時乃が店に潜入し、
・施術途中で新人に交代していた時間
・長時間眠り続ける客への違和感
・スタッフの目線のズレ
を拾い上げていく過程は、まさに現場で時間を復元する作業でした。
「夢」を手がかりにする推理の危うさと新鮮さ
個人的に最も印象に残ったのは、純子の“夢”が推理の手がかりとして扱われた点です。
空を飛ぶ夢、洞窟の夢、身体を触られる夢――本人は記憶として確定できないのに、体験の断片が無意識側に“ログ”として残っている。
ミステリ的には反則すれすれですが、アリバイ=時間の証明を主観側から逆算するという発想は新鮮でした。時乃の推理は「覚えている/いない」ではなく、「体が知っている違和感」を言語化していく作業でもあったと思います。
後味の悪さ|“生存時間を捏造する”冷酷さ
真犯人が芝田だと判明した後味も、かなり苦い。
敏子は共犯者として利用され、最後は切り捨てられる。不倫、家庭、欲望、そして「人を眠らせて運ぶ」という暴力性。SNSでは「さすがに起きるだろ」というツッコミも多かったようですが、それ以上に残るのは、替え玉で生存時間を捏造する発想そのものの冷酷さでした。
縦軸の進行|察時と“見えない相棒”の影
一方で、純子に心奪われる察時がコミカルに描かれる中、渡海は察時をかばいながらも「彼は何者なのか」という疑問を抱き始めます。
事件そのものが「誰かを犯人に仕立てる仕組み」を描いていたからこそ、察時が抱える“見えない相棒”疑惑が、ここで強く縦軸として浮上しました。
第3話は、単なる一話完結ではなく、シリーズ全体の構造――
アリバイとは何か/時間は誰のものか
を改めて問い直す、静かだけど重要な回だったと思います。
3話で判明する伏線
- 純子の「20時間睡眠」
- パジャマの袖についた血
- 芝田の「事件当日の朝に施術」証言
- マッサージが新人に交代していた“20分”
- 芝田が11時から別客を担当していた事実
- 合鍵の扱い(姉が出入りできる構造)
- 純子の夢(空を飛ぶ/洞窟/体を触られる)
- 化粧とカツラ(替え玉の可能性)
- マッサージベッド下の指紋
- 渡海が察時をかばい「何者だ」と問い始める
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4話:山荘のアリバイ
導入|“助けてくれ!”から始まる出張アリバイ崩し
第4話「山荘のアリバイ」は、シリーズ初の“出張アリバイ崩し”。
察時からの「助けてくれ!」という電話をきっかけに、時乃が山梨のペンションへ向かう導入だけで、人情・コメディ・ミステリーが同時に立ち上がります。
時計台で宿泊客・黒岩賢一が遺体で発見され、地元刑事は察時を含む宿泊客とオーナー夫妻を疑う展開に。殺害推定時刻に明確なアリバイがないのは、警官志望の中学生・原口龍平だけ。
察時が「夢を壊したくない」という一心で時乃を呼び、渡海も半ば巻き込まれていく構図が、この回らしい温度を作っています。
トリックの主役|雪の足跡が語る“順番の嘘”
謎解きの中心は、雪に残された足跡。
裏口から時計台へ向かうサイズ25cmの足跡(往路)と、長靴の足跡(往復路)が残されていました。
誰もが「黒岩→犯人」の順で時計台に行ったと決めつけたことで、犯行時刻が後ろにズレ、その結果、龍平だけが容疑を背負う流れが作られてしまう。しかし時乃は、察時の目撃証言と足跡の“矛盾”に注目します。
察時は、黒岩が一度立ち止まり、ペンションをうかがったように見えたと言う。
もし立ち止まったなら、雪には“溜め”の痕が残るはず。ところが25cmの足跡は一直線。一方で、長靴側には停止痕がある。
ここから導かれる結論は明快です。
時計台にいた順番は「犯人→黒岩」。
足跡の主と人物が、そもそも入れ替わっていた。
ロジックの収束|条件に当てはまる“ただ一人”
順番が反転した瞬間、容疑は一気に絞られます。
条件は3つ。
- 黒岩より前に時計台へ行けた人物
- 察時が窓を見ていた23時〜23時10分の間に、確実なアリバイがない人物
- 黒岩と同じ靴サイズ25cmの人物
これに当てはまるのが、野本和彦。
察時が23時過ぎに廊下で出くわした野本を「部屋から出てきた」と思い込んだのもミスリードでした。
実際は、野本は時計台から戻ってきた直後だった。
目撃そのものは正しくても、解釈がズレるとアリバイが生まれる――このシリーズらしい怖さが、ここで綺麗に決まります。
真相|勘違いと偶然が積み上がったアリバイ
真相は皮肉に満ちています。
黒岩は偽名で、正体は特殊詐欺グループの逃亡リーダー・白田公司。夕食時の癖などから、幼なじみの野本に正体を気づかれたと疑い、口封じのため時計台へ呼び出します。
しかし待っていた野本に抵抗され、結果的に黒岩は殺害されてしまう。
野本は咄嗟に靴を交換し、足跡の“持ち主”を入れ替えた。
計画的に練られたアリバイではなく、勘違いと偶然が積み重なった結果のアリバイ。
だからこそ崩し方も、「一度止まったかどうか」という微差に帰結するのが見事でした。
後味|“見ていたはずの時間”の重さ
個人的に最も刺さったのは、察時が「もっと窓を見ていれば…」と悔やむ場面。
捜査は派手な証拠よりも、「見たはずの“間”を覚えているか」で決定的に変わる。
露天風呂での察時と渡海の掛け合いという緩急も効いていて、SNSでも時乃の露天風呂シーンに「反則」と沸いたのも納得です。
雪山×時計台×足跡という古典的ロマンを、シリーズの軽やかさのまま成立させた好回でした。
4話で判明する伏線
- 察時の「助けてくれ!」の電話と“出張アリバイ崩し”
- 時計台へ続くサイズ25cmの足跡(一直線)
- 長靴の足跡にだけ残る「立ち止まった痕」
- 長靴の足跡がサイズ25cmの足跡を踏んでいる箇所
- 察時の目撃:黒岩が時計台へ向かう直前にペンションをうかがった
- 察時が窓の外を見ていた時間帯(23時〜23時10分)
- 廊下で出くわした野本の“出てきた/戻ってきた”解釈違い
- 野本と黒岩の靴サイズが同じ25cm
- 指紋照合で判明する黒岩の正体「白田公司」と特殊詐欺グループ
- 夕食時の“癖”が正体バレの引き金になる可能性
- 原口龍平の祖母が詐欺被害者だった事実
- 靴の交換(足跡の“持ち主”入れ替え)という咄嗟の偽装
- 黒岩の部屋の鍵/侵入の可能性
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5話:ダウンロードのアリバイ
導入|白骨遺体がつなぐ“過去の失踪”と“現在の殺人”
今回の事件は、3カ月前に健康器具会社社長・富岡真司が殺された一軒家の庭から、身元不明の白骨遺体が掘り起こされるところから始まります。
しかも一緒に出てきたのは「和田」と刺繍された布切れ。遺体は死後十数年と推定され、過去の失踪事件と現在の殺人が一気に一本の線で結ばれます。
この発見は、牧村匠が抱えてきた未解決の記憶を強く刺激するもので、現場の空気はいつも以上に重い。
捜査線上に浮上するのは、白骨の息子で天才大学生・和田英介。動機としては復讐が濃厚ですが、富岡殺害当日(11月20日)には“脆弱なのに崩せない”アリバイが用意されていました。
英介のアリバイ|少なすぎる柱が生む違和感
英介の主張は一見すると盤石です。
講義後に友人・古川と食事をし、帰りにコンビニへ寄った記録(レシート)も残っている。さらに帰宅後は深夜までゲームをしており、23時46分には明城徹郎の楽曲「キャッスル・オブ・サンド」をダウンロードした履歴まである。
決定打に見えるのは、この楽曲が11月20日0時から24時間限定配信だったという事実。
デジタル証拠が揃っているのに、なぜアリバイが“脆弱”なのか。
それは、最終的に日付を支えているのが「古川の記憶」ただ一つだからです。限定配信という動かない事実があるほど、人は逆に思考停止しやすい――その危うさが、このアリバイの核心でした。
時乃の違和感|“整いすぎた部屋”と一つの質問
普通なら日付が固定され、ここで詰み……のはず。
けれど時乃は、聞き込みの段階で英介の部屋に漂う“整いすぎた空気”に引っかかります。
この回は、時乃が初めて容疑者と真正面から対峙する回でもあり、その視線は物証ではなく人間そのものに向いています。
彼女が古川に投げかけた一言が、すべてを貫く針になります。
「限定配信だと知ったのは、いつですか?」
トリックの正体|“時間を動かす”のではなく“時間に任せる”
種明かしは驚くほどシンプルでした。
英介は、部屋の時計とスマホを15分遅らせた状態で、19日の23時46分にダウンロードを実行。
それを古川に「20日の出来事」だと思い込ませたまま、数カ月間放置します。
その後で「配信は20日限定だった」という情報を後出しすれば、曖昧な記憶は“限定”という強いラベルに引っ張られ、丸一日ズレる。
このトリックの中心は「時間操作」ではなく、時間が経つことそのもの。だからこそ時乃の推理は、物証よりも人間の心理と記憶を見抜く形で成立します。
後味|“ズル”を突きつける静かな一言
個人的に最も刺さったのは、英介が察時に投げるこの問いです。
「仲間をだますって、つらくないですか?」
親友をアリバイ工作に使った後悔と、察時の抱える“ズルさ”を見抜いた冷静さが同時に滲む一言。
牧村の「ズルは良くない」という信条が、ここでブーメランのように返り、察時の表情が変わるのも印象的でした。
入浴&熱唱の小ネタで笑わせつつ、最後は倫理を静かにえぐる。
第5話は、アリバイ崩しの技術だけでなく、「人をだますことの代償」を真正面から描いた回で、シリーズの空気を一段深くしたエピソードだったと思います。
5話で判明する伏線
- 庭から発見された白骨遺体と「和田」刺繍の布切れ
- 白骨遺体が死後十数年(13年前)経過している事実
- 3カ月前の富岡真司殺害事件が未解決で再捜査になる
- 白骨遺体の息子・和田英介が捜査線上に浮上
- 友人・古川桔平の「当日ずっと一緒にいた」という証言
- コンビニのレシートがアリバイの補強材料になる
- 明城徹郎「キャッスル・オブ・サンド」の“24時間限定配信”設定
- ダウンロード履歴「23:46」という時刻
- 英介の部屋の時計&スマホが「15分遅れていた」事実
- 「限定配信だと知ったのはいつ?」という時乃の切り口
- 「仲間をだますってつらくないですか?」という英介の台詞
- 察時の“ズル”が周囲に刺さり始める空気
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6話:最終章…凶器のアリバイ
導入|“凶器が先に見つかる”という異常事態
第6話は、シリーズの中でも珍しく「人」ではなく「凶器」にアリバイが付く回です。
郵便ポストから血痕付きの拳銃が先に発見され、後日になって製薬会社勤務の布田真が自宅のオーディオルームで射殺体として見つかる。この順番だけで、捜査の思考は一気に縛られます。
しかも現場は防音仕様。捜査一課に加えて組対の真壁剛士が介入し、女帝・村木キャサリンの名前まで飛び交うことで、事件は暴力団抗争の色を帯びていく。
けれど時乃が引っかかったのは、派手な背景ではなく一点だけ。「なぜ、凶器が先に出る?」という素朴な疑問でした。
容疑者と“凶器に引っ張られた時間軸”
容疑者として浮上するのは、布田の上司・平根勝男。
モルヒネ横流し疑惑があり、動機は十分。しかし死亡推定時刻(午後2時〜4時)には、従兄弟との食事から映画館という鉄壁のアリバイを持っています。
ここで捜査がハマる罠が、「午後3時に回収された拳銃=犯行銃」という思い込み。
凶器が先に見つかったことで、犯行時刻そのものを午後に固定してしまう。平根が「なぜ午前中の予定を聞く?」と反応する場面は、こちらの勘を刺激するのに、決定打にはならない。その曖昧さを、組対が握る密売ルートや購入者リストが補強していきます。
時乃の逆転ロジック|“凶器は一つじゃない”
時乃の解は、驚くほどシンプルで残酷でした。
前提をひっくり返すのは、「犯行銃はその拳銃だけとは限らない」という発想です。
平根は午前中に布田の自宅を訪れ、モルヒネで身動きを取れなくしたうえで、太腿と床に一発ずつ撃つ。
その後、拳銃をポストへ投棄し、凶器を先に“消す”。
午後は食事と映画で完璧なアリバイを固め、夕方に再び別の拳銃(同じ口径)で口腔内を撃ち、とどめを刺す。弾丸は砂袋で回収。
ラグマットの移動痕、床の砂粒、遺体が横向きだった違和感――すべてがこの二段構えに収束します。
さらに平根が二丁の拳銃を別名義で購入していた事実まで重なり、アリバイ工作の執念が露わになる。
テーマ|“見た目の証拠”ほど疑え
この回で一番刺さる教訓は、「派手な証拠ほど推理を鈍らせる」という点です。凶器が先に見つかるという分かりやすさが、捜査の視野を狭めてしまう。
しかも今回は、時乃一人の推理で完結しない。
捜査一課の聞き込み、組対の情報網、キャサリンの圧力で出てくる資料――縦割りだった捜査が横断された瞬間に、ロジックが証拠へ接続する構造になっています。
キャラクター劇|重さを中和する人間味
重い事件の中で、真壁と渡海の幼なじみ感(強面なのにメンタル弱めな真壁)が、絶妙に空気を緩めるのも印象的でした。
渡海が察時の秘密に迫る流れから、「付き合ってるんですか?」というズレたオチに着地するのも、このシリーズらしい呼吸。
放送前は成田凌×間宮祥太朗の親友共演や、木村カエラ演じるキャサリンの女帝ぶりが見どころとして押されていましたが、実際にはそれらがロジックの硬さを中和する役割として機能していたのが秀逸です。
最終章の入口として、事件ロジックは一段深く、キャラクター同士の関係は一段近くなる。
第6話は、その両方をきっちり加速させた一話だったと思います。
6話で判明する伏線
- 凶器の拳銃が遺体発見より先に見つかっている
- 郵便ポストの集荷時間(午前10時/午後3時)
- 拳銃の残弾数(8発中6発)
- 指紋が残っていない拳銃
- 被害者・布田真の銃創(右大腿部/口腔内)
- 現場が防音のオーディオルームであること
- 遺体が横向きで発見された違和感
- ラグマットを動かした痕・家具を動かした形跡
- ラグマット下に残る砂
- 口腔内の弾丸が体内に残っていない
- 平根が「午前中の予定」を聞かれて動揺する反応
- 平根の“映画館”のアリバイが単独で弱いこと
- 組対が掴むモルヒネ横流しの情報
- 密売人逮捕と購入者リスト(購入者が2名いる)
- 2丁の拳銃が同じ口径である点
- 平根が反社と通話している描写
- 察時が時乃に5000円を渡す場面を渡海が目撃する
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7話(最終回):多すぎる証人のアリバイ
導入|“証人が多すぎる”という最悪の鉄壁
最終回のテーマは、文字通り「証人が多すぎる」アリバイです。
河川敷で発見された焼死体。そのそばに落ちていた名刺から浮上するのは、雄馬の父であり衆議院議員の渡海一成。死亡推定時刻は後援会パーティーの真っ最中で、会場には「ずっと先生を見ていた」と証言する後援会員が大勢いる。ここまで“崩せない”条件が揃った状態から物語は始まります。
感情の揺らぎ|察時と時乃が抱く「信じたくなさ」
この回で効いてくるのが、察時の違和感と、時乃の「信じたくない」という感情です。
祖父・時生の囲碁仲間でもあった一成に対し、時乃は珍しく歯切れが悪い。理屈で切り崩すはずの探偵が、個人的な情を抱えてしまう。その揺れが、最終回らしい緊張を生みます。
さらに察時が依頼を一度取り下げる場面もあり、これまでの“割り切った協力関係”に小さな人情が混ざる。感情が入った瞬間に、推理は一段難しくなる——その危うさを物語が正面から描いてきます。
雄馬の成長|「信じるなら、捜査で証明する」
ここで印象的なのが雄馬の立ち位置です。
普段はボンボン扱いされがちな彼が、父が容疑者になった瞬間だけは顔色を変える。けれど感情に流されて暴れるのではなく、「父を信じるなら、捜査で証明するしかない」と刑事の筋に戻ってくる。この地味な成長線が、シリーズ終盤として静かに効いていました。
派手な恋愛やドラマチックな自己犠牲はない。でも「仕事としての正しさ」に立ち戻れるようになったこと自体が、雄馬の変化だと思います。
トリック|衆人環視を崩す“時間の応用”
トリック面は、過去回で使われた「食事による死亡推定時刻のズレ」を、衆人環視のパーティーへ応用した形です。
食事時間の調整で犯行時刻を前後させつつ、名越徹と安本孝之の似姿を利用した“一人二役”。多数の証人がいるからこそ、「誰が見られていたのか」を曖昧にできる。鉄壁に見えたアリバイが、実は群衆の思い込みで成り立っていたことが浮かび上がります。
また、「灯油」というキーワードが先に植え付けられていた点も巧妙でした。情報を流した側が誰なのかを考えさせる構造が、終盤のサスペンスを支えています。
真相|告発が誘導に変わる瞬間
真相は、藤枝ミホの“告発”そのものが誘導だったという反転。
時乃の推理が進むほど、告発者自身のアリバイが崩れていく構造になっていました。後継者に指名された名越への嫉妬、そして「地盤を守る」という建前。
動機は決して巨大ではなく、あまりに人間臭い欲と弱さに着地するのが、この作品らしいところです。
最終回としての手触り|論理だけが静かに残る
当時の反応を見ると、「7話で短い」「大きな伏線回収がない」といった賛否もあったようです。
ただ、このドラマは世界をひっくり返すタイプの最終回ではない。時計店のカウンター越しに積み上げた論理だけが、人の嘘と欲を静かに暴いていく。その“変わらなさ”こそが魅力でした。
祖父が遺した「一人でやるな」という戒めも回収され、時乃が危険を引き受ける姿を見せて幕。
成功報酬5,000円の価値は、派手さではなく「最後まで論理が裏切らないこと」にあったと思います。
7話(最終回)で判明する伏線
- 焼死体のそばに落ちていた「渡海一成の秘書の名刺」
- 渡海一成の口から出た「灯油」というひと言
- 藤枝ミホの「秘書を殺したのは先生かもしれない」という告発
- 渡海一成と美谷時生が囲碁仲間だった事実
- 後援会パーティーに紛れ込んだ「後援会メンバーではない参加者(安本孝之)」
- 捜査資料で浮かぶ「名越徹と安本孝之の容姿の近さ」
- 時乃に迫る身の危険(誰が、何のために狙うのか)
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スペシャル:史上最難関のアリバイ
導入|“密着カメラ”が歪める捜査の空気
連ドラから4年。那野県警に人気番組『県警密着24時』の取材が入るところから、物語は始まります。
察時は東京復帰のチャンスと鼻息が荒く、渡海は「自分を撮れ」と暴走、時乃は番組のファンで素直にテンションが上がる。この時点で、今回の事件が「真相」よりも「見せ方」に左右される空気をまとっているのが分かります。
そんな中、資産家・富宰建一が自宅で刺殺される事件が発生。凶器は見つからず、遺産は120億円。姪・甥にあたる朝倉、宇川、井田の3人が激しく口論しますが、死亡推定時刻(午後2〜4時)には全員がアリバイを主張します。
察時は「今回は自力で解く」と意地を張るものの、結局こっそり時乃に助けを求める流れが、いかにもこのコンビらしい導入です。
カメラが生むノイズ|見栄えが真相を覆う
密着カメラが回り始めると、人は事実より“映り方”を気にし始める。
察時の焦り、雄馬の嫉妬、本来なら推理のノイズになる感情が、視聴者にはコメディとして届く。この緩衝材として効いているのが、恒例の《お風呂でモグモグ》シーンです。時乃がコロッケを頬張る無邪気さがあるからこそ、直後に訪れる不穏さが際立つ。
第一段階|崩したはずなのに“解けない”アリバイ
時乃が最初に崩すのは、朝倉の「宅配便受取」アリバイ。
配達員の証言——フードとサングラス、花の匂い、下敷きの上でのサイン——から、替え玉と不可視インクのトリックが浮かび上がります。送り主の医師・江島聡美が協力者として見えてきて、事件は一気に動いたように見える。
ところが朝倉は「殺しに行ったが、もう死んでいた」と言い張り、決定打として刃物恐怖症(先端恐怖症)が裏付けられる。
ここで重要なのは、“アリバイを崩したのに真相に届かない”点です。スペシャル回の肝は、この違和感にあります。
反転|崩される前提で作られたアリバイ
後半、朝倉が第二の被害者となったことで、推理は一段メタな次元へ跳ね上がります。
朝倉は最初から「崩される前提のアリバイ」を演じていた。替え玉トリックは実在せず、警察に“替え玉がいた”と信じ込ませることで、江島聡美に完璧なアリバイを与える装置だったのです。
動機は、聡美の婚約者が朝倉のパワハラで自死した復讐。
さらに彼女は、闇サイトでアリバイトリックを“購入”していたことが示されます。ここでアリバイは技術ではなく「商品」へ変質し、物語は一気に冷えた現代性を帯びます。
ラスト|真実はカメラの外に落ちている
皮肉にも、『県警密着24時』がカメラを向けたのは、察時の逮捕劇ではなく、蒔絵と井田の違法賭博摘発でした。
真実はいつも、カメラの外に落ちている。見せたい物語と、起きた事実は一致しない——このシリーズのテーマが、ここで強烈に突きつけられます。
黒ずくめの人物、白衣、残された時乃の写真。不穏な余韻の中で、時乃の「成功報酬5,000円」は、可愛らしい看板から“狙われる才能”へと姿を変える。
個人的には、時乃の“初恋”が恋ではなく「先輩のアリバイのズレを指摘したかっただけ」というオチまで含め、笑いと寒気の温度差が最高のスペシャルでした。
スペシャルで判明する伏線
- 人気番組『県警密着24時』が捜査一課に密着する
- 富宰建一刺殺事件で「凶器が現場にない」
- 死亡推定時刻が「午後2〜4時」
- 朝倉のアリバイ「宅配便を自宅で受け取った(時間指定)」
- 配達員の証言:フード+サングラス+マスクの受取人
- 配達員の証言:部屋に「花のような匂い」
- 配達員の証言:サイン時に「下敷き」を敷く
- 配達票の指紋・筆跡が“朝倉のもの”と一致
- 不可視インク(冷やすと文字が出る)を使ったサイン工作
- 朝倉の「刃物恐怖症(先端恐怖症)」の診断
- 朝倉の「殺しに行ったが、すでに死んでいた」という主張
- 富宰家の模様替えで「玄関からリビングが見えない」
- 江島聡美が“替え玉役”を認める
- 朝倉が第二の被害者として殺害される
- 朝倉のパワハラで自殺した人物(江島の婚約者)の存在
- 闇サイト/「アリバイプランナー」でトリック購入の告白
- ラストの黒ずくめの人物、白衣、時乃の写真
- 葉加瀬裕次郎(ポアロ先輩)が重要参考人として浮上する
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ドラマ「アリバイ崩し承ります」主要なキャスト

ドラマ版の魅力は、アリバイ崩しのロジックと、キャラ同士の温度差コントが両立しているところ。特に主要キャストは“役割分担”が明快で、事件の難度が上がっても空気が重くなりすぎない設計になっています。
主人公トリオ
- 美谷時乃(浜辺美波)
美谷時計店の店主で、祖父仕込みの“アリバイ崩し”の実力者。依頼を受けると淡々と時間を巻き戻すように論理を組み直し、決め台詞で一気に盤面をひっくり返す。 - 察時美幸(安田顕)
那野県警・捜査一課の管理官。プライドは高いのに現場で上手く回らず、結局時乃に頼ってしまう人。時乃に対する“頼りたい”と“頼りたくない”が同居していて、そこがコメディにもドラマにもなる。 - 渡海雄馬(成田凌)
捜査一課の刑事で、国会議員の父を持つ“忖度される側”。時乃に惚れていて距離感が常にバグってる一方、察時に対しては反発心むき出し。この三角の摩擦が、毎話の会話劇のエンジンになっています。
捜査一課&周辺メンバー
- 樋口秀人(柄本時生):鑑識課の検視官。察時に距離感近めで、情報面でも空気面でもスパイスを入れる役。
- 牧村匠(勝村政信):捜査一課の係長。部下の雄馬を「ジュニア」と呼んで持ち上げる“忖度芸”が強烈。
- 美谷時生(森本レオ):時乃の祖父(故人)。“アリバイ崩しの名人”として時乃の土台を作った存在で、シリーズ全体の背骨。
- 綿貫哲治(中丸新将):那野県警の本部長。上も下も忖度が止まらない県警組織の象徴みたいな人。
※スペシャル版では、ここにゲスト枠が厚めに追加されます(後述の結末で触れます)。
ドラマ「アリバイ崩し承ります」の最終回の結末は?

ここ、質問の意図としては「連続ドラマの最終回」と「スペシャルのラスト」どちらも気になるはず。
実際この作品、2020年の連ドラ(全7話)でいったん“型”を完成させて、2024年のスペシャルで「アリバイ崩し」そのものを一段進化(というか不穏化)させています。
連続ドラマ最終回(第7話)「多すぎる証人のアリバイ」の真相
最終回は、シリーズの総決算としていきなり重い事件から入ります。河川敷で焼死体が見つかり、そばに落ちていた名刺から“ある大物”に捜査線が伸びる。
そして浮上するのが、雄馬の父で衆議院議員の 渡海一成。被害者は秘書の 名越徹(名刺の主)で、一成は事件当時、後援会パーティーに出席していた――つまり「300人が証人」という鉄壁のアリバイ持ちです。
察時は“ある違和感”から一成を疑い、時乃にアリバイ崩しを依頼。ところが時乃は、一成が祖父・時生の囲碁仲間だったこともあり、感情が揺れる。最終回にして、時乃の側にも“守りたい過去”が出てくるんですよね。
で、結末。
真犯人は秘書の藤枝ミホ(一成の秘書)です。
動機はシンプルで生々しい。
「自分のほうが長年尽くしてきたのに、地盤を名越に譲る」ことがどうしても許せなかった。政治の世界って“能力”より“順番”が刺さる瞬間があって、そこで歪んだ人間の行動がミステリーのトリガーになるのが、この最終回の嫌なリアルさです。
そしてアリバイトリックがえげつない。ポイントは3つ。
① 名越が「安本」に変装して“会場に出現”する
パーティー中、名越の携帯に電話がかかり(実は名越が別の携帯から自分でかけている)、それを合図に名越は会場を出る。車内で別人(安本孝之)に変装し、安本のふりをして再び会場に現れる。
これで周囲の記憶には、「あの時間、安本が会場にいた」が刻まれる。
つまり“多すぎる証人”を逆手にとって、証言の質を落とし、顔の確認を曖昧にする作戦です。
② 変装の痕跡を消すため、名越の遺体を焼く
パーティー終了後、藤枝は名越と合流して車内で殺害。変装の痕跡が残ると計画が崩れるので、灯油をかけて焼いて証拠ごと消す。
③ 本物の安本は監禁→翌日殺害(胃の内容物まで計算)
実は安本はパーティー当日に拘束され、監禁されていた。すぐ殺さなかったのは、胃の内容物から“パーティー以外の食事”が出ると、時間の整合性が壊れるから。翌日、藤枝は安本を殺害し、パーティー券の領収書や議員の著書などを置いて「パーティーに来ていた男」像を補強する。
この最終回、ロジックとしては「証人が多い=盤石」という常識を、
「証人が多い=個々の観察が雑になる」に反転させてるのが見事。まさに“アリバイ崩し承ります”のタイトル回収でした。
ラストは、察時が時乃に頼っていたことが完全に露見して大崩壊……にはならず、県警内の空気は相変わらずのまま。察時は(反省しつつ)また時乃に依頼する未来が見える形で終わります。つまり作品としては「終わった」より、「この関係は続く」が結末。
スペシャル(2024年)の結末:復讐と“アリバイプランナー”の影
スペシャルは、連ドラの“いつもの空気”を維持しながら、結末だけ急に不穏さを上げてきます。
事件は、資産家の建設会社社長 富宰建一が自宅で刺殺されるところから。相続予定の甥・姪3人(朝倉正平/宇川蒔絵/井田泰明)にそれぞれ動機があり、しかも全員アリバイがある。
察時は“東京に戻れるチャンス”を前に、時乃に頼らず自力で解決しようとするが、結局は依頼してしまう。ここも察時の人間味で、見てる側は「分かる、でも頼れ」となる(笑)。
まず崩されるのが、朝倉の「宅配便を受け取った」アリバイ。
伝票の仕掛け、不可視インク、熱で消えるサイン、冷やしてサインを再出現させる“下敷き”――この手順で「受け取ったのは朝倉本人」に見せかける、かなり技巧派のトリックが出てきます。
ところが、朝倉は自白しながらも「叔父はすでに死んでいた」と主張し、さらに後日、朝倉自身が同じ凶器と思われる包丁で殺害されてしまう。
ここから真相が反転します。
- “替え玉トリック”は、そもそも実行されていない
- 「崩されるためのアリバイ」だった
- 朝倉のアリバイが崩れることで、別の人物にアリバイが与えられる
そして真犯人は、推理小説を送っていた医師 江島聡美。
聡美は、朝倉から借りた鍵で富宰宅に侵入し、午後2〜4時に富宰を刺殺。狙いは富宰ではなく、本命は朝倉でした。富宰殺害は“カムフラージュ”。
動機は、朝倉のパワハラが引き金となって婚約者を失ったことへの復讐。ここ、ドラマのトーンは軽いのに、動機だけは救いがなくて刺さります。
さらに結末が怖いのはここからで、聡美は取り調べで「アリバイプランナーの手を借りた」と供述。察時が探しても実体が掴めない。
最後に映るのは、暗い部屋のPC画面に「100万円でアリバイ作ります」という文字。部屋には白衣がかかり、写真立てには“察時の後ろを歩く時乃”の写真――つまり、時乃のことを把握している誰かがいる。これ、スペシャルで一気に「続編の敵」を立てに来たラストです。
結末を見て思うこと
僕がこの作品の結末で一番うまいと思うのは、事件が解決しても“時間”だけは戻らないと、毎回ちゃんと突きつけるところです。
時乃は「時を戻すことができました」と言うけど、実際に戻るのは“論理の時計”であって、死んだ人は戻らない。察時の決め台詞「後悔しても、時は戻せない」も、物語の倫理を締める楔になってる。
そして連ドラ最終回もスペシャルも、ラストの余韻は共通してます。
- 察時は結局、時乃を必要としている
- 雄馬は結局、恋も仕事も空回り気味
- 時乃は“崩したい衝動”と“危険”の間で揺れ続ける
だからこそ、スペシャル終盤で匂わせた“アリバイプランナー”の存在が不気味に効く。
時乃が「崩す側」なら、相手は「作る側」。この対立構造が立ち上がった瞬間、物語は一段ギアが上がる。もし続きが作られるなら、ここが本当の意味での「結末の次」になるはずです。

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