『絶対零度 シーズン5』最終回11話は、「すべてを解決する回」ではなく、すべてを突きつける回でした。
総理大臣の娘誘拐という国家的事件。
情報犯罪特命対策室DICTが追い詰めた“指示役”。そして、最後の最後で明かされる衝撃の黒幕――。
けれどこの物語は、犯人が捕まってスッキリ終わるタイプのドラマではありません。
むしろ最終回は、「なぜ終われないのか」という…現代社会の冷たさを、視聴者にそのまま残して幕を下ろします。
この記事では、最終回11話の結末をネタバレ込みで整理しながら、黒幕の正体と動機、桐谷総理の決断の意味、そして“絶対零度”というタイトルが最後に回収される瞬間までを、丁寧に読み解いていきます。
絶対零度(シーズン5)11話(最終回)のあらすじ&ネタバレ

第11話(最終回)は、総理大臣・桐谷杏子の娘カナ誘拐事件が、ついに「国家としての選択」に直結し、情報犯罪特命対策室(DICT)が“黒幕の輪郭”そのものに踏み込んでいく回でした。
放送は2025年12月15日(月)。ここから先は、最終回の結末まで含めたネタバレを扱います。未視聴の方はご注意ください。
シーズン5の舞台は、総理と内閣官房副長官直轄の組織「DICT」。
特殊詐欺やサイバーテロなど、犯人の正体が見えにくい情報犯罪を相手にする“少数精鋭”のチームです。
最終回は、このDICTが追い続けてきた「末端は捕まるのに、真犯人に届かない」という構造と、桐谷総理の家庭――とりわけ“娘”という最も個人的な存在――を、一本の線で結びつけていきます。
オープニング|野村の供述で「久慈が指示役」と判明。それでも見えない“上”が怖い
物語は、DICTが追ってきた複数の事件が「久慈幹二」という名前へ収束していくところから始まります。連続殺人事件で逮捕された野村翔の供述により、これまでの犯行が久慈の指示によるものだったと判明。
通常なら「ついに黒幕に辿り着いた」と感じる局面ですが、最終回の空気はまったく逆でした。
久慈は、顔も名前も割れている。
それなのに、なぜか捕まらない。
ここに、情報犯罪の厄介さが凝縮されています。犯人が現場にいない。証拠はネットの向こうに散らばり、追えば追うほど足場が崩れていく。
DICTの捜査会議の空気も、勝利への高揚ではなく、「本当に間に合うのか」という焦りで重く沈んでいきます。
そんな中で、二宮奈美は一度、空気を引き取るように言い切ります。
「情報は完全には消えない。必ず痕跡は残る」
この言葉が、最終回の捜査方針そのものになります。
机の上に並ぶのは、ログ、地図、人物相関。見えない相手と戦うほど、こちらは“見える形”に落とし込まなければならない。最終回は、その地味で根気のいる積み重ねが、ちゃんとドラマとして機能していました。
捜査の突破口|清水紗枝が“脅迫電話”を解析。声の主=久慈、発信源=都内へ
突破口になるのが、清水紗枝の解析です。
カナ誘拐で桐谷総理の元に届いた脅迫電話。
その発信源を割り、声の主が久慈であることを突き止めます。さらに、発信が「都内」からだと判明する。
一見すると“あと一歩”に見える情報です。
けれど、現場の感覚はむしろ逆でした。「都内にいる」という事実は、広すぎる。
久慈は、匿名・流動型犯罪、いわゆるトクリュウ的な構造の中に身を置き、端末・回線・移動手段も“消せる側”の人間です。監視カメラも、スマホも、交通ICも、通常の捜査では武器になるものが当てにならない。
見えない敵と戦っている感覚が、チーム全体を静かに締め付けていきます。
山内、南方、掛川といった現場組が不安を募らせるのも無理はありません。
「首脳会談までに捕まえられるのか」
「カナは生きているのか」
焦りは、会話の端々に滲み出ます。
それでも奈美は、情報の海に溺れかけるチームを“言葉”で引き上げていく。
DICTは技術集団であると同時に、人を前へ進ませるための根拠を提示する組織なのだと、改めて感じさせられる場面でした。
官邸パート|「50兆円無償援助」を要求される桐谷総理。総理の顔と母の顔が割れる
同時進行で描かれるのが、桐谷総理の究極の選択です。
カナが拘束されているとみられるレンガラ民主共和国に協力要請をするものの、返答は得られない。
佐生新次郎は「インターポールでも踏み込めない」「タイも協力に消極的」と説明し、国際的な枠組みが機能しない現実を突き付けます。
そんな中で届く、誘拐犯からの要求。タイで行われる首脳会談の場で、「日本からレンガラへ50兆円の無償援助を発表しろ」。応じなければ、カナを殺す――。
金額の大きさに目を奪われがちですが、本質はそこではありません。これは“金銭要求”ではなく、“外交カードの強制”です。
軍事独裁政権の国への援助を公式に打ち出せば、日本は国際社会からの信頼を失いかねない。つまり犯人は、娘の命を盾にして、日本の立ち位置そのものを世界の前で変えさせようとしている。
桐谷総理に、逃げ場はありません。総理としては、国家として屈したくない。
母としては、娘を助けたい。どちらを選んでも、何かを捨てるしかない。
最終回という時間の中で、この矛盾を最後まで引きずるからこそ、物語は軽くならない。国家と家庭、その両方を背負う立場の残酷さが、ここで一気に浮き彫りになります。
現場が動く|IP・音声・利用履歴…バラバラのログを重ねて「場所」を割り出す
久慈を追う鍵は、「久慈本人」ではありません。「久慈が使ったもの」「久慈が使った場所」でした。
紗枝が拾った通信の痕跡、音声、IP。点でしかなかったログを、DICTが総力で重ねていきます。すると、ある利用環境が浮かび上がってきます。
情報犯罪は、被害者側から見ると“突然起きた事故”に見える。
でも、実行する側は必ず何かを使っている。回線、端末、アカウント、場所。
どれか一つを完璧に隠しても、別のどこかに歪みが出る。その歪みを拾えるかどうかが、捜査の勝負どころです。
そして辿り着いたのが、都内のコワーキングスペース。匿名の犯人が、社会の中で“普通に息をしている”場所です。
ここまで来て、ようやく捜査が本当の意味で「現場」に戻ってきます。
久慈確保|山内が踏み込み逮捕。なのに久慈は「雇われ」と言い、終わらせない
山内が踏み込み、久慈を確保。
施設内には普通の利用者がいる中で、捜査員だけが張り詰めている、あの独特の空気。情報犯罪の指示役が、社会に溶け込む場所で呼吸していたという事実が、逆に恐怖を増幅させます。
スピードと執念の勝利。視聴者としても「やっと捕まえた」と一度は息がつける瞬間です。
しかし、久慈は崩れません。取り乱さず、むしろ余裕すらある。
彼は平然と「自分は雇われだ」と言い放ち、黒幕は別にいる可能性を匂わせます。
情報犯罪の最も嫌な現実が、ここで突きつけられます。
末端を捕まえても“上”が見えない。逮捕=解決ではない。捕まる側がそれを分かっていて、捜査側を挑発する。
DICTは確かに“勝った”。
けれど、同時に“何も終わっていない”ことも、はっきりしてしまうのです。
久慈の取り調べ|「雇われ」の限界。逮捕しても“芯”に触れない感触が残る
久慈を確保した山内たちは、すぐに取り調べへ移ります。
ただ、ここで久慈が見せるのは、追い詰められた犯人の焦りではありませんでした。妙に整った受け答え、計算された間合い。そこにあるのは“逃げ切れない人間”の態度ではなく、“役割を終えた人間”の顔です。
久慈は、自分が事件全体の設計者ではないことを匂わせながらも、黒幕の正体には一切触れようとしない。
「雇われ」という言葉は、責任を薄めるための保険であり、同時に捜査側の神経を逆撫でするための刃でもあります。
捕まった側が、どこまで話せば自分が守られ、どこから先が地雷かを理解している――その事実自体が、事件の“層の深さ”を示していました。
ここでDICTが感じるのは、逮捕できた達成感よりも、むしろ「まだ、核心には触れていない」という手応えのなさです。捕まえたのに、終わらない。
終わらないことが、はっきりと分かってしまう。
二宮奈美は、久慈の言葉を一旦“事実”として受け取りながらも、感情的には動かされません。
相手のペースに乗らない。言葉の裏を疑いながら、残る情報を積み上げていく。
生活安全課で“人と向き合う”捜査を続けてきた奈美の芯が、この取り調べの場面にも静かににじみ出ていました。
タイへ|佐生が政治ルートを動かし、首脳会談は中止へ。目的は救出へ一本化
久慈を確保しても、カナ救出は終わりません。むしろ、この時点で“本当の勝負”が始まります。
ここで佐生が動きます。
政治ルートを使ってレンガラ側との接点を探り、さらにタイ側とも直接交渉。
その結果、首脳会談は中止となり、「会談よりも救出を優先する」方向へと舵が切られます。
この判断が意味するのは、犯人の要求に正面から乗らないという意思表示です。
50兆円を発表して娘を救うのではなく、要求を拒否したまま救う。リスクは最大。けれど、国家が一度でも屈すれば、次の要求が必ず来る。
ここでようやく、“国家としての戦い”が始まります。
二宮奈美は、桐谷総理に同行し前線へ。
護衛であり、救出作戦の当事者であり、同時に刑事としての判断も求められる立場です。奈美の肩にのしかかる重さが、最終回で一気に増していきます。
救出作戦の最終整理|「ここにいる」を証明しないと助けに行けない。だからDICTは“確定情報”を積む
レンガラは政情不安で、外から踏み込めない。
だからこそ、救出に動くには「カナが拘束されている」という確度の高い情報が必要になります。噂や推測では部隊を動かせないし、総理も国家として軽率な判断はできない。
DICTがやっているのは、この“確定情報の積み上げ”です。誘拐犯からの連絡、監禁映像、通信の痕跡、久慈の足取り。
バラバラの情報を突き合わせ、矛盾のない一本の線を作っていく。
奈美が何度も口にしてきた「情報は消えない」という言葉は、哲学ではなく作戦そのものです。
消えない痕跡を拾い続けること。それしか、道がない。
そしてここで、桐谷総理の覚悟も定まっていきます。
屈するか、屈しないかではない。「屈しないまま救う」。
奈美が同行する理由も、はっきりしてきます。護衛としてだけでなく、“現場で判断できる刑事”が必要だから。国家と現場、その接続点に奈美は立たされていきます。
クライマックス|廃ビル突入、爆弾、モニター越しの笑い。救出は“ゲーム”に変わる
監禁場所が特定され、舞台は廃ビルへ。罠の匂いしかしない。それでも行くしかない。タイムリミットが迫っているからです。
建物の内部は静かで、だからこそ怖い。どこにカナがいるのか分からない。
誰が待ち構えているのかも分からない。そんな中で爆弾の存在が判明し、救出は一気に「制限時間付き」になります。
奈美は総理を守り、総理は娘を救うために踏み込む。
派手な銃撃戦はない。
ただ、静かな緊張が続く。
ひたすら「間に合え」と祈るタイプのクライマックスです。
奈美が周囲を冷静に見渡し、総理を守る位置取りを変えながら進む姿は、いかにも“現場の刑事”らしい。
総理もまた、怖くて足がすくむ瞬間があっていいはずなのに、それでも前に出る。その姿は強いけれど、同時に危うい。国家のトップがここに立たされている時点で、犯人の狙いはすでに一部成功しているとも言えます。
ここで踏み込んだ部屋で爆発が起きます。
奈美が直前に気づいたことで、間一髪で総理は助かる。……助かったはずなのに、モニターに映るカナが笑う。
ここで空気が凍ります。
この誘拐事件は、救出劇ではなく、最初から“公開処刑に近いゲーム”だった。
その事実が、視聴者にもはっきりと突き刺さる瞬間です。
ラストシーンと結末|黒幕はカナ。辞任、銃口、爆破、そして逃走…「絶対零度」は終わらない
最終回最大の真相は、誘拐されていたはずのカナが黒幕だったこと。
久慈は手駒。
事件を拡散させ、国家を揺らし、母である総理を追い詰める。
モニター越しのカナは
「私が作ってくれたゲーム楽しんでくれた?DICTを作っても私が作ったゲームの中で楽しんでいただけ」と言い、総理の心をおりました。
後日、日本にもどった二宮奈美。電話がハッキングされ、カナと繋がる…。
桐谷総理は辞任を表明。
娘が黒幕だったという事実は、個人の問題ではなく、国家の信用を揺るがすものです。
政治の責任を引き受ける形で、桐谷総理は舞台から降ります。
そして、彼女は二宮奈美に接触し、背中に銃を当てて犯行理由を告げる。それでも奈美は揺れません。
感情論に乗らず、刑事としての線引きを崩さない。人と向き合い続けてきた奈美だからこそ、ここでブレない。その姿が、逆に冷たくすら見えます。
その態度に、カナは吐き捨てるように言います。
「つまんない人だね。バイバイ」。
直後、高層ビルは爆破され、カナはあっかんべーをしたまま姿を消す。
捕まらないまま、ゲームマスターは盤面から退場します。
ただし、捜査は終わっていません。DICTは、目の前でカナを取り逃がしたままです。久慈や野村といった実行・連絡の層は押さえられても、ゲームマスター本人が消えた以上、同じ構造がまた起きる可能性は残る。
ここが、この最終回でいちばん冷たいところ。捕まえたのに終わらない。
終わったように見せて、次が始まる。
タイトルの「絶対零度」は、犯人が逃げ切ったという事実以上に、社会が抱える構造が何も変わっていないことを指しているようでした。そんな苦い余韻を残しつつ、物語は幕を下ろします。
絶対零度(シーズン5)の続編はある?シーズン6/SP/映画の可能性を考察
最終回が「犯人逮捕でスッキリ終了」じゃなかった以上、視聴者として一番気になるのはここですよね。僕も正直、「これ…続き、ありますよね?」って思いながらエンドロールを見てました。
ここでは現時点での“確定情報”と、“考察(予想)”を分けて、続編の可能性を整理します。
現時点で続編(シーズン6)の公式発表はある?
結論から言うと、執筆時点では「続編決定!」と断定できる公式発表は確認できません。
なので、ここから先は「ありそう/なさそう」をロジックで整理するパートです。
(※公式発表が出たら、この見出しに追記してアップデートするのがベスト)
それでも「続編がありそう」と言われる理由|最終回が“終わらせない設計”だった
シーズン5最終回は、物語を畳むよりも、“終われない構造”を視聴者に突きつける終わり方でした。
- 指示役(久慈)を確保しても、それが「芯」ではない
- 黒幕が捕まらず、しかも“次の一手”を打って消える
- DICT側が「勝った」と言える瞬間がない
この形って、続編がなくても成立はするんですよ。
ただ、成立する代わりに 「視聴者のモヤモヤ」を強く残す。
逆に言えば、制作側が“モヤモヤを残す価値”を選んだ=続きで回収できる余白を用意したとも読めます。
続編の舞台は「~情報犯罪緊急捜査~」のままが濃厚?
シーズン5は、シリーズ新章として「情報犯罪特命対策室(DICT)」を舞台に切り替えました。
情報犯罪って、コールドケースや潜入捜査と違って、犯人を一人捕まえても終わらないジャンルなんですよね。
模倣・連鎖・スポンサー(資金源)・海外ルート…“上”が残る限り、いくらでも次の事件が起きる。
だからこそ、続編があるならタイトルも舞台も大きく変えず、「絶対零度~情報犯罪緊急捜査~(シーズン6)」みたいに、同路線で積み上げるのが一番自然だと思います。

続編は連ドラ?SP?映画?それぞれの“あり得る形”
ここは完全に予想ですが、可能性を優先順位で並べるとこんな感じです。
- シーズン6(連ドラ)
一番描きやすい。黒幕が逃走した以上、「長期戦」の緊張感は連ドラ向き。DICTメンバーの関係性も育て直せる。 - SPドラマ(2時間枠など)
「逃げた黒幕を確保して答え合わせ」だけならSPがハマる。制作スケジュール的にも現実的。 - 映画
国際犯罪・大規模テロ・海外ロケ…とスケールアップするなら映画は映える。
ただし、絶対零度の強みは“地味な積み上げ捜査”でもあるので、派手さに寄りすぎると別物になるリスクも。
シーズン6があるなら、次に回収すべき“未回収ポイント”(※予想)
続編で一番気持ちいい回収になるのは、僕はこの3本だと思っています。
- 黒幕が逃走できた「資金・人脈・装備」の出どころ
個人の暴走で片づけるには、動かせたものが大きすぎる。
つまり“雇う側/支える側”が別にいる可能性が高い。 - 久慈の「雇われ」発言の回収
あれは挑発であり、同時に構造のヒント。
続編があるなら、ここが最大の入口になるはずです。 - 過去シリーズとの接続(名前だけ出た人物・未説明の線)
“名前だけ出して終わり”って、シリーズ物では一番ズルい引きでもあるので(笑)
もし続くなら、過去の絶対零度と新章DICTが交差する展開も見たいところです。
続編の情報が出たら、放送時期・キャスト続投・ストーリー軸をこの見出しに追記していきます。「捕まらない真相」を突きつけた以上、物語としては“捕まえるまで”やらないと終われないと思うので。
絶対零度(シーズン5)11話(最終回)の感想

最終回を見終わって、正直に思ったのは「これは最初から、気持ちよく終わらせる気がなかったな」ということでした。
でも、それは投げっぱなしの終わり方ではありません。
情報犯罪というテーマそのものが、逮捕=解決にならない。被害も、加害も、正義も悪も、境界線が曖昧なまま残る。その現実を、最後にまとめて突きつけてきた最終回だったと思います。
「情報犯罪」は“見えない悪”ではなく「感情を突く犯罪」
シーズン5の軸は一貫して「情報犯罪」でした。匿名性、流動性、偽情報、サイバーテロ。犯人の顔が見えず、捕まえても終わらない犯罪。
ただ、最終回で一番怖かったのは、犯人が高度な技術者だったからではありません。
人の感情をハックしてくること。
カナの“ゲーム”は、爆弾や通信の前に、恐怖と焦りを社会全体にばら撒くことから始まっていました。
娘の命を人質にして国家を動かす行為は、論理ではなく、感情の裏口から侵入してくる攻撃です。
だからこそ、最後に効いたのが二宮奈美の姿勢でした。
感情的に怒鳴らず、説得もしない。淡々と線を引く。
派手ではないけれど、「人間として向き合う捜査」という、このシーズンの答えがあの態度に集約されていた気がします。
二宮奈美がブレないほど、カナの虚無が際立つ
奈美は最後まで一切ブレませんでした。背中に銃を向けられても、相手のペースに乗らない。説教もしないし、感情で対抗もしない。
この強さは、才能というより“積み重ね”だと思います。
生活安全課で、人の弱さや現実を見続けてきた人だからこそ、相手を「事件」ではなく「人間」として見ている。
一方で、カナの動機は「日本で一番大きなゲームがしたかった」。
ここは賛否が分かれるポイントでしょう。
ただ、動機が弱いというより、動機を言語化できない空虚さをあえて描いているように見えました。
守りたいものも、取り返したいものもない。
世界が自分に反応する快感だけを追っている。
だから奈美の正義は刺さらず、刺さらないから爆破で返す。
最終回は、正義と悪が“議論では交わらない”ことを、かなり冷たく描いていました。
桐谷総理の辞任は敗北か?
桐谷総理の辞任を、単なる敗北だとは感じませんでした。娘が黒幕だったという事実だけで、国の信用は揺らぐ。総理が居座れば、事件は永遠に政争の材料になります。
だから辞任は、政治の責任を自分が引き取るという選択に見えました。
ただし、それで救われるわけでもない。
娘は捕まらない。
被害は消えない。
国の傷も残る。
この「どうやっても取り返しはつかない」後味こそが、最終回の苦さだったと思います。
佐生新次郎という存在
最終回で印象的だったのが、佐生の立ち位置です。
捜査員ではないのに、政治ルートを動かし、国家の判断を現実的に成立させた人物。
同時に、こういう人間が疑われるのも自然です。
権力に近い人ほど、情報を持ち、隠せてしまう。
最終回で分かるのは、佐生が善か悪かではなく、国家の論理を実装する役割だったということ。
もし続編があるなら、この立ち位置はもう一段掘られる気がします。
伏線回収と未回収:久慈は回収、カナは逃走、そして最大の空白
久慈が“黒幕ではない”位置に収まったのは明確な回収でした。
捕まえたのに、芯に届かない。情報犯罪の構造そのものが、事件の構造になっていました。
一方、最大の未回収はやはりカナです。
・資金
・人脈
・装備
・国際的な動線
カナが単独で国家を揺らすだけのリソースを持てたとは考えにくい。
残っている疑問を整理すると、
- 久慈は誰に雇われていたのか
- レンガラを脅しの装置にできた理由
- 爆破を実行できる現実的な手配ルート
- カナが“被害者役”から“黒幕”へ切り替えたタイミング
- 逃走を許した制度的な限界
最終回は答えを出すというより、「この空白を見てくれ」と提示して終わった印象です。
もし次があるなら「カナ vs DICT」の長期戦
カナが姿を消した時点で、事件は終わっていません。むしろ始まった。
捕まらないゲームに快感を覚えた黒幕は、次はもっと巧妙に社会を揺らしてくるはずです。
鍵になるのはDICTのあり方。
技術だけでは追えない。
人を見て、心理を読み、行動を先回りする捜査。
シーズン5の最終回は、「次はここを描く」と静かに宣言して終わったように見えました。
最終回の後味について
黒幕は逮捕されない。
スッキリしない。
モヤモヤが残る。
でも、そのモヤモヤ自体が情報犯罪の正体なんですよね。
犯人が消えたら終わり、ではない。消えたことそのものが、次の脅威になる。
気持ちよくは終わらない。でも、現代を描くなら、こういう終わり方しかない。
スッキリしないのに、忘れられない。そんな冷たい余韻を残す、シーズン5の最終回でした。
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