『絶対零度(シーズン5)』9話は、シリーズ最大級の緊張が走る“疑念の回”。
桐谷総理の娘・カナ誘拐事件は一週間が経っても進展せず、犯人から突如届いた「第一の要求」は、単なる身代金とは次元の異なる“総理への政治的攻撃”でした。
一方、同時多発的に起きている大規模サイバーテロでは、SE連続殺人が発生し、DICTは「誘拐」と「テロ」が一本の線で結ばれ始めたことを察知。
さらに、官房副長官・佐生の不可解な判断が次々と露呈し、“内部に裏切り者がいるのか”という疑念が急速に広がります。物語が最終局面へ向けて大きく揺れ動く中、9話は伏線の濃度が一気に高まった重要回となりました。
絶対零度(シーズン5)9話のあらすじ&ネタバレ

フジ月9『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』は、DICT(情報犯罪特命対策室)を舞台に、特殊詐欺やサイバーテロといった“顔の見えない犯罪”に挑むシリーズ5作目。
今作では、生活安全課出身のベテラン刑事・二宮奈美(沢口靖子)が、女性総理大臣・桐谷杏子(板谷由夏)を守りながら、国家レベルの情報犯罪の真相に迫っていきます。
一週間後も沈黙を続ける犯人と、追い詰められる女性総理
9話は、前話から続く「桐谷総理の娘・カナ誘拐」と「大規模サイバーテロ」の2本の縦軸がさらに絡み合い、“犯人の狙いは何なのか”“内部に裏切り者はいるのか”というサスペンスが強まる一方、事件自体はまだ決着しない“溜め回”として描かれています。
物語は、桐谷杏子の娘・カナが誘拐されてから一週間後。国家を揺るがすサイバーテロが続く中で、犯人からの直接的な連絡は沈黙したまま。DICTは、カナが恋人・沢北卓とバンコクへ入国していたことまでは突き止めていますが、その先の足取りは途絶え、捜査は完全に行き詰まっています。
DICT室長・早見浩は「すべての可能性を洗え」と指示し、奈美には引き続き総理の身辺警護を命じます。奈美が「情報分析」よりも「桐谷杏子という一人の人間」に寄り添う立ち回りをするのが、今作の象徴的なポイントです。
犯人からの初要求──狙いは「総理の政治判断」
奈美が総理執務室に戻ると、内閣官房副長官・佐生新次郎と杏子の夫・晋一が待機。緊迫した空気の中、杏子のスマートフォンに犯人からメールが届き、拘束されたカナの写真が添付されていました。
続けてかかってきた電話の冒頭では、カナ本人の声が一瞬だけ聞こえますが、すぐに犯人に遮られます。
ここで犯人が告げた「第一の要求」は、身代金でも逃走手段でもなく──
“桐谷総理が過去に活動停止にした団体”に対し、それが不適切だったと国民に謝罪せよ
という政治的要求。
“総理の政治判断そのもの”を揺さぶる犯行であり、これは単なる誘拐事件を超えた「国家への揺さぶり」であることが明白になります。
杏子はこの要求を即座に拒否。
しかし、母としての感情と総理としての責務、その双方が杏子を追い詰めていきます。
ガサ入れ・ディープフェイク──揺れる政権とDICTの判断
犯人が触れた団体の中から、杏子はある宗教団体を指摘。DICTは残党メンバーに一斉ガサ入れをかけますが、カナ誘拐に関わる手がかりは一切得られません。
この過程で奈美は、桐谷総理の精神状態の限界を感じ取り、佐生に対して「前話で出したディープフェイク映像の公開は本当に正しかったのか」と問い詰めます。総理の不倫疑惑を“フェイク映像”で否定し、炎上を鎮静化することで犯人捜索の時間を稼いだ──その政治判断の代償を問う場面です。
佐生は“国を守るための合理性”を優先し、「その判断で時間は稼げた」と断言。
国家のために個人を切り捨てられる人物であることが改めて強調され、奈美との思想の違いが鮮明に浮かび上がります。
会見場での突き上げ──記者との異例の密談
外では、総理の不倫疑惑によるSNS炎上が加速し、「娘の所在が怪しい」といった憶測も飛び交っています。
公式会見では、記者・磯田涼子がカナの所在を鋭く質問。杏子は冷静に装いつつ、内心は限界寸前です。
会見後、奈美は磯田を強引に公用車へ呼び、総理と直接対面させます。杏子は涙を堪えながら、
「娘は誘拐されている。犯人も目的も分からない。すべてが終わったら独占記事を書いていい。だから今は黙ってほしい」
と頭を下げます。
メディアと政権の緊張が頂点に達する、静かで強烈なシーンです。
SE連続殺人──サイバーテロとの“接点”が浮上
そんな最中、新たな事件が発生。システム会社のエンジニア・国見が殺害されます。犯人は、山内徹がかつて取り逃がした男・野村翔と推定されました。
国見は“大規模サイバーテロで使われたシステムのバックドアの実装者”。さらにペアで働いていた森宮は行方不明。
もし国見が“口封じ”なら、森宮も命の危険が迫っている可能性が極めて高い──。
「誘拐事件」と「サイバーテロ」が一本の線でつながる予感が一気に高まります。
匿名アプリと挑発──「残念でした」
国見のスマホから匿名アプリを発見した奈美。これは以前の組織犯罪でも使われていた連絡ツールで、GPS機能でユーザー位置を把握できる仕様。
DICTの分析で野村の居場所が特定され、山内らが急行しますが、現場はもぬけの殻。
置き去りにされたスマホには、
「残念でした」
の文字。
DICTが情報分析の専門集団であるにもかかわらず、ことごとく犯人側が一枚上手。背後に“情報戦に特化した組織”が存在することが強烈に示唆される場面です。
総理に突きつけられる監禁動画──個人への心理攻撃
その頃、杏子のスマホへ不気味なURLが送られ、ビデオ通話が自動再生。そこで映されたのは、拘束され衰弱したカナの姿。「助けて」と震える娘の声はすぐにかき消され、映像は途切れます。
犯人は世論よりも、あくまで“総理本人の心を折る”ことを目的としていると分かる演出でした。
佐生新次郎への疑念が最大化──「なぜ総理に伝えなかったのか」
元公安・掛川啓が入手した情報で、
「カナの海外出国は、公安が早い段階で把握していた」
ことが判明。
奈美は佐生を直撃。
「なぜ総理に知らせなかったのか」
と問い詰めます。
佐生は「その時点では家出と判断した」「自分の仕事は政権を守ること」と冷たく答えるだけ。
奈美は「総理を追い詰めるために情報を操作しているのでは」と疑念をさらに深めます。シリーズを通して描かれてきた“佐生は敵か味方か”問題が、ここで大きく動き出します。
ラスト──「カナさんを助ける方法があります」
物語終盤、杏子の元に届く一通のメッセージ。
「カナさんを助ける方法があります」
・誰から送られたのか
・どんな方法なのか
・犯人側の裏切り者なのか
・政府内部の者なのか
・まったく別の第三者なのか
いずれも判明しないまま、9話は緊張感を残して幕を閉じました。
カナの安否を心配する声がSNSでも多く、誘拐事件が物語軸として強く機能していることを裏付ける回となりました。
絶対零度(シーズン5)9話の感想&考察

ここからは、ライターとしての個人的な感想と、伏線や構造への考察をまとめていきます。
9話は「事件の解決」ではなく「疑念と不安を積み上げる」回で、テンポ面では賛否が分かれる構成でしたが、縦軸としての“情報犯罪と政治権力の関係”をじわじわ炙り出す重要なパートでもあったと感じています。
「事件を引っ張りすぎ」という不満と、その裏に見える狙い
視聴者の反応を追っていると、「事件を引っ張りすぎ」「DICTが全然成果を出せていない」という厳しい声が目立ちます。
たしかに、
- サイバーテロの全貌
- カナ誘拐の真犯人
- DICT内部/政権内部の“裏切り者”
いずれも決定打が出ないまま9話が終わるので、「もう9話なのに、まだここ?」というモヤモヤはかなり強く、視聴者としてのフラストレーションは理解できます。
一方で構造的に見ると、制作側はかなり意図的に“DICTの無力感”を描いているようにも思えます。
DICTは、
- 情報分析能力を持つスペシャリスト集団でありながら
- 常に一歩先を読まれ、罠にかけられ
- 重要な情報は官邸サイド(佐生)や公安に握られている
という立ち位置に置かれている。
9話は、その「情報の非対称性」を視聴者に体験させるための回でもあり、DICTがどれだけ真面目に捜査しても、より上位のレイヤーで情報が握られている限り、彼らは“操作される側”に過ぎない──その構造を強調しているように感じます。
もちろん、視聴者としての本音は「そろそろ何か1つくらい決定的なピースを明かしてほしい」ですが(笑)、ラスト3話に向けて疑念と緊張を最大限に膨らませる“溜め回”としては納得できます。
桐谷総理は「母か、総理か」──政治ドラマとしての面白さ
9話で最も印象に残ったのは、桐谷杏子というキャラクターの描き方でした。
日本初の女性総理として、SNS炎上やスキャンダルに冷静に対処しつつも、一方で娘を人質に取られた“母親”としての顔も持つ。この二重性が、電話のシーンや記者・磯田との密談で顕著に描かれていました。
犯人の「第一の要求」が本当に巧妙で、
「あなたの過去の政治判断を“誤りだった”と国民に向けて謝罪せよ」
というもの。
これは、単なる身代金型の誘拐ではなく、
- 母として「どんな屈辱でも飲み込んで娘を救いたい」
- 総理として「政策判断を訂正することは政権の正当性の崩壊につながる」
という二つの重圧をぶつける“政治的誘拐”になっていました。
また、磯田記者への「すべてが終われば独占記事を書いていい」と頭を下げるシーンには、
- 情報公開の重要性
- しかし情報公開が命を危険に晒すという現実
この二つが緊張し合う様が凝縮されていて、「絶対零度」が政治ドラマとしても成立している深みを感じました。
佐生新次郎は黒幕か、それとも「国家の犬」なのか
シーズン通して怪しさが漂っていた官房副長官・佐生新次郎。9話では疑念がさらに強まりました。
ポイントは、
- カナの出国情報を早い段階で掴んでいながら総理に報告しなかった
- ディープフェイク公開を主導した
- 「国を守るためには犠牲もやむなし」という冷徹な哲学
という3点。
ここまで揃うと「お前が黒幕だろ!」と突っ込みたくなるのは自然ですが、個人的には「佐生=主犯格」という単純な構図では終わらない気がしています。
佐生は、
- 国家安全保障のプロ
- DICTの立ち上げにも関与
- 奈美だけは“自分が選んでいない存在”として警戒している
という背景があり、
「国家のためなら違法スレスレでもやる、極端なリアリスト」
という人物像が浮かびます。
つまり、「悪」ではなく「国家優先の価値観」を体現した存在で、黒幕は別にいる可能性も高い。
最終局面で佐生が“国家のための嘘”と“人としての良心”の板挟みになる展開は十分ありえると思っています。
カナ誘拐とサイバーテロがつながり始める快感
9話で最も物語が進んだと感じたのは、
- SE連続殺人
- バックドアを仕込んだシステム
- 匿名アプリとGPS
- 口封じの可能性
これらが1本の線につながり始めた部分。
若手エンジニアが“副業感覚で”仕込んだバックドアが、犯罪組織側で大規模テロに転用され、後から口封じされる──という流れは現代の情報犯罪の構造と非常に近い。
さらに匿名アプリは、
- 犯人側にとっては“末端管理の道具”
- 捜査側にとっては“位置特定の手がかり”
という両刃の剣であり、DICTが「捕まえられた」と思った瞬間に“残念でした”と煽られる構図は、まさに情報戦の残酷さ。
DICTが常に一歩遅れることで、
情報を握る者 vs 情報を与えられる者
というドラマのテーマが構造として体験できるようになっていました。
視聴率と“9話の役割”を踏まえた位置づけ
視聴率が伸び悩む中で、9話はあくまでも“終盤戦への助走”。
ここまでに溜めた疑念や情報が、ラスト数話で爆発する構造だと考えると、
- 誘拐事件の全体像をどう説明するか
- 佐生の行動原理をどう描くか
- DICTメンバーの“何を守るか”がどう結実するか
この3点が最終的な満足度を左右すると感じています。
今後の展開への個人的な予想
最後に、これまでの伏線から気になるポイントをピックアップします。
・「活動停止リスト」の本当の意味
宗教団体は空振りでしたが、リストそのものに“本丸”が潜んでいる可能性はまだ高い。
・久慈ラインの“情報漏洩者”問題
DICT側の情報が犯人に筒抜けになっている描写が続いており、内部の誰かが関与している可能性も。
・奈美と佐生の価値観の衝突
この2人の対立が最終局面の鍵になる予感。
・カナの立場の複雑さ
カナ自身が過去に詐欺に関わっていた描写がある以上、誘拐の構図は単純ではないはず。
9話はもどかしさの強い回でしたが、
- 総理の精神的追い込み
- 佐生への疑念の増幅
- 情報犯罪の構造提示
という三本の柱を丁寧に積み上げた、非常に重要な一話。
ここから“伏線回収の快感”がどれだけ返ってくるか。
考察好きとしては、その一点に期待しながら最終回を見届けたいと思います。
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