9話は、これまで積み重ねてきた“嘘”と“家族の形”が試されるように、登場人物それぞれが痛みと覚悟を突きつけられる回でした。
偽ママ契約の暴露をきっかけに、学園も会社も揺れ始め、慎吾の影がいろはと茉海恵へ迫っていく。
その中で薫は、自分の大切な人たちを守るために、ある決断を下すことになります。静かに、しかし確実に物語が最終章へ向かって動き出したと感じさせる一話でした。
フェイクマミー9話のあらすじ&ネタバレ

9話は、「嘘を守るための嘘」と「母として守りたいもの」が限界まで試される回でした。
薫が“ニセママ”であることが報じられ、学園も会社も大炎上。そこへ本当の父・慎吾が、いろはとRAINBOWLABの両方を奪いに動き出します。
ここからは、話の流れに沿って細かく追っていきます。
ニセママ報道の余波と、薫の「嘘を貫く」決意
前回のラストで週刊誌に“偽ママ契約”が暴かれたことで、薫は一気に「ニセ母」として全国的な炎上対象に。9話冒頭では、その余波が一気に押し寄せます。
柳和学園には保護者やマスコミから問い合わせが殺到し、教頭や校長は対応に追われます。
薫の元にも校長から事情を確認したいと強く求められ、空気は一層張り詰めていきます。
一方、自宅では佐々木先生が茉海恵を訪れ、「学校が大変な状況になっている」と淡々と報告。
ここで茉海恵はついに腹をくくります。
「全部、私が話す。もう終わらせよう」
自分がいろはの母であり、薫になりすましを依頼したことも含め、すべて公表する覚悟を見せます。
しかし薫は、真っ直ぐな目でその言葉を遮ります。
「終わらせません。レインボーラボも、いろはさんの夢も。 嘘をつき通しましょう。私は、日高いろはさんの母ですと言い続けます」
薫は佐々木にも深く頭を下げ、「これは誰かを傷つけるための嘘ではなく、守るための嘘だ」と協力を求めます。
学園側は薫の「事実無根です」という説明を一応は受け取るものの、完全には信じきれず保護者の不安も残ったまま。
いろはのクラスにも上級生が冷やかしに来ますが、クラスメイトが「いろはをいじめるな」とかばう姿も描かれ、いろはが“守られる子ども”であることが強調されます。
慎吾の「会社も娘も返してもらう」宣言
騒動の最中、RAINBOWLABには三ツ橋食品の社長・本橋慎吾が突然現れます。
社長室で二人きりになると、慎吾は相変わらず不遜な笑みを浮かべながら言います。
「一人で会社を立ち上げてここまで大きくした。すごいよね」
「僕たちの間には天才児が生まれた。会社もいろはも、ちょっとは僕のおかげじゃない?」
茉海恵の努力も、いろはの才能すらも、自分の手柄にすり替えようとする慎吾。
茉海恵は凍りついたような目で言い放ちます。
「あんたは関係ない」
しかし慎吾は続けます。
「もう返してもらうから。会社も、いろはも」
ここで彼は、会社の買収といろはの“親権”を同時に取りに来るという最悪のプランをにおわせて去っていきます。この瞬間、「会社」「子ども」「ニセママ騒動」という三つの爆弾を慎吾がすべて握っている構図が明確になります。
三羽ガラスの差し入れと、薫を支える“ママ友”のまなざし
そんな中、下校時の薫は九条玲香たち“柳和会の三羽ガラス”に呼び止められます。正直、ここは「ついに吊し上げか…?」と身構えてしまう流れでした。
しかし三人は、薫の自宅に大きなタッパーを抱えて訪れ、「作りすぎちゃって」と手作りサンドイッチを差し出します。
薫が「私…」と何かを言いかけると、玲香は優しく遮ります。
「私は何も聞かないつもりよ。少しは、あなたって人を知ってるつもりだから」
薫はこらえきれず涙をこぼしながらサンドイッチを頬張ります。
序盤では“ママ社会の象徴”として描かれていた三羽ガラスが、ここで“支える側”に回ったこと。
物語の空気が静かに変わり始める印象的な場面でした。
学園で進む“公開裁判”の準備と、いろはへの手紙
柳和学園では、ニセママ騒動への対応として、理事会と柳和会の合同説明会を開くことが決定。
“日高茉海恵”として薫に出席要請が入ります。
慎吾もOBとして顔を出し、「学園の名誉のためにも、理事会と柳和会の前で直接事実を確認すべきだ」と“正義の味方”を装って提案。
佐々木は「報道を否定している以上、裁くような場にするのは違う」と反論しますが、多くは慎吾の意見に流されます。
その裏では、慎吾がいろはに接触し、校庭で手紙を渡します。
手紙には、
「ママのことで大事な話がある。
11月4日、夜0時。マンションの前に出てきて。
誰にも言わないで。パパより」
とあり、子どもに深夜の単独外出を指定する内容に強い不気味さが漂います。
夜、眠れないいろはは茉海恵に尋ねます。
「いろはのパパって、どんな人? いい人? それとも…」
茉海恵はしばらく黙ったあと、「もう忘れた」とだけ告げ、部屋の明かりを消します。語れないほど深い傷と、単純に説明できない過去の重さがにじむ瞬間でした。
圭吾の本音と、竜馬の「父親宣言」
いろはは「しばらく学校を休む」とクラスに告げます。
心配そうに見つめる圭吾に、大好きな宇宙の本を渡し、「じゃあね」と笑ういろは。
夜、圭吾は母・さゆりの問いに対し、
「偽のママのことなんて、いろはには関係ないじゃん。
いろははいろはじゃん。いろはがいなくなったら寂しい」
と本音を漏らします。
大人が“正しさ”で戦っている一方で、子どもにとっては「友達がいなくなる」ことのほうがよほど重要。
この対比が作品の核を際立たせています。
一方、日高家では竜馬が夕食を作りに来ます。三人で並んで料理する光景は嵐の前のひとときの温もりのようでした。
片付けのあと、竜馬は薫に迫ります。
「理事会と柳和会の合同説明会…どうするつもりなんですか。
相手は本橋慎吾ですよ。どう見ても勝ち目はない」
それでも薫は静かに答えます。
「私は、いろはさんが宇宙に行く姿が見たいんです。だから、あきらめたくありません」
竜馬はさらに食い下がります。
「一人で抱え込まないでください。俺にも少しは分けてください。
俺って、そんなに頼りないですか? 一応、父親ですから」
“父親ですから”という言葉は、血よりも時間で繋がった竜馬の覚悟そのもの。
フェイクから始まった家族が、本物へ近づいた瞬間でした。
佐々木の言葉と、茉海恵の号泣
虹汁の店舗「Ittéki」を訪れた茉海恵は、心の限界があふれるように言葉をこぼします。
「全部、自分が責任取れると思ってた。会社も、いろはも、全部守れるって。
でもそうじゃなかった。みんなに辛い思いさせて、迷惑かけて…」
泣き崩れる茉海恵に、佐々木は静かに寄り添います。
「それはダメなことじゃない。真っ直ぐで、どんなことにも本気で前に進もうとしている証拠です。
嘘をつくことは正しいとは言えないかもしれないけれど、この嘘は誰かを大切にし、幸せを願っている嘘だと思っています。
だから、茉海恵さんは今のままでいい。きっと大丈夫です」
“嘘そのもの”ではなく“嘘に込めた願い”を肯定する言葉。
茉海恵が肩にもたれたその姿は、恋ではなく“生きる支え”の関係に見えました。
深夜0時の密会と、「本橋家の人間になりなさい」という条件
約束の夜。
いろははベッドを抜け出し、眠る茉海恵の横をそっと通り過ぎて外へ向かいます。
慎吾の車が待っていました。
車内で慎吾は星形の髪飾りやワンピースを差し出し、甘く距離を縮めます。いろはが圭吾について聞くと、「いろはの弟になるね」と答えます。
そして“本題”が始まります。
「ママの会社は大変なことになっている。社員も辞めさせられるかもしれない。でも、いろはがパパのところに来れば、それをなしにできる」
「本橋家の人間になりなさい。賢いいろはなら、どうすればいいかわかるよね?」
会社の未来も、母の未来も、偽ママ騒動さえも、“いろは一人の選択”に背負わせようとする言葉。
その残酷さに息が詰まる場面でした。
「いろはのいない人生なんて意味がない」母と娘の抱擁
翌朝。
いろはは決意したように言います。
「いろは、あの人のところに行く。パパのところに」
茉海恵は愕然とし、「あいつに会ったの?」と問い詰めます。いろはは慎吾の言葉を最初誤魔化しながら話しますが、やがて涙ながらに告白します。
「私がパパのところに行けば、ママは社長でいられるし、マミーも…会社のみんなも助けられるって…」
茉海恵はいろはを強く抱きしめます。
「いろはがいたから、ここまで頑張って来られた。いろはのいない人生なんて、なんの意味もない。絶対に離さない」
娘の自己犠牲を前提にした“救い”など受け入れない――
その叫びは、茉海恵の深い愛そのものでした。
屋上の別れと、薫の決断
その後、薫は竜馬と訪れた雑居ビルの屋上へ。そこに来た竜馬へ素直に伝えます。
「竜馬さんがいてくれて、とても心強かったです。ずっと」
照れ隠しのように頭を下げ去ろうとする薫。竜馬は声を返せず、その背中を見つめるしかありません。
薫が“誰かに頼る”ことを少し覚えつつ、それでも「最後の決断は自分で」と覚悟していることが痛いほど伝わるシーンでした。
合同説明会と、薫の「私は母親ではありません」宣言
ついに柳和学園の合同説明会の日。
理事や柳和会の面々、そして慎吾が揃う中、薫は“日高茉海恵”として前に立ちます。
慎吾は問いかけます。
「いろはさんの母親であると、ここで明言できますか」
薫は静かに宣言します。
「私は…日高いろはさんの、母親ではありません」
会場がざわつく中、薫は続けます。
「私は日高茉海恵社長が子どもの存在を隠しているのを知り、その弱みに付け込んで脅し、偽物の母親になりすますことで報酬を得ました。茉海恵さんといろはさんは被害者です」
完全に事実と逆の“嘘の自白”。自分を加害者に仕立て上げることで二人を守ろうとする、究極の自己犠牲でした。
「罪を認めるんですか」と問われても、薫は迷いなく答えます。
「はい。自首します。二人にはどうか寛大な措置をお願いします」
深く頭を下げ会場を後にする薫。
佐々木は衝撃の表情で、その姿を見るしかありませんでした。
パトカーに乗り込む薫と、いろはの叫び
茉海恵が急いで学校へ駆けつけると、校門前はマスコミとパトカーで騒然。報道陣のフラッシュの中、薫が姿を現します。
茉海恵といろはを見つけた薫は、ほんの一瞬優しい笑顔を向け、何も言わずパトカーへ乗り込みます。
ドアが閉まる寸前、いろはの叫び声が響きます。
「マミー!!」
その泣き声を残したまま画面は暗転。
9話は、薫の自首という衝撃のラストで幕を閉じました。
フェイクマミー9話の感想&考察

9話を見終わったあと、しばらく動けませんでした。
「嘘」から始まった物語が、ここへきて「一番痛い形の自己犠牲」にたどり着いてしまったからです。
ここからは、感情と構造の両方から整理していきます。
薫の“自己犠牲”は、本当に正しい選択なのか?
まず、いちばん心を掴まれたのは、やはり薫の決断です。
薫はずっと、“合理的で正しいこと”を優先して生きてきた人でした。
東大卒、大手商社、転職市場でも“スペックの高い人材”として扱われながら、気づけば「誰の人生を生きているのか」が分からなくなっていた。
そんな薫がフェイクマミー契約を通して得たのは、履歴書には書けないけれど、自分の心には確かに刻まれた“役割”でした。
いろはの母として振る舞い、茉海恵の相棒として戦い、竜馬や佐々木に支えられながら、“自分の居場所”を初めて体感していく。
だからこそ、
「いろはと茉海恵の未来を守るためなら、自分の人生を差し出してもいい」
という覚悟まで持ってしまったのだと思います。
ただ視聴者としては、どうしても葛藤します。
・薫が全部かぶる必要、本当にある?
・慎吾や柳和学園の“古いシステム”こそ裁かれるべきでは?
・嘘を守るための“さらに大きな嘘”は、いろはにどんな傷を残すのか?
SNSでも、「なんで全部一人で背負うの」「ここからハッピーエンドにできるのか不安」という声が多く上がっていました。
私はこの自己犠牲を“美談”で終わらせてほしくないと感じました。
薫の覚悟は尊いけれど、それを“正解”にしてしまうと、現実の世界で「優しい人ほど全部背負ってしまう」構図を肯定してしまいそうで怖いからです。
最終回では、この自己犠牲に対し、周りの大人たちがどう抗うのか。
“みんなで背負い直す”物語になれるのかが、とても大事なポイントだと思います。
慎吾という「構造的モラハラ男」の怖さ
本橋慎吾は、9話でついに“本性フルスロットル”でした。
・元恋人の成功も娘の才能も「俺のおかげ」
・会社の買収と子どもの親権をセットで狙う
・子どもを夜中に呼び出し、“みんなを助けたいなら本橋家の人間になれ”と迫る
彼の行動は、一つひとつが個人攻撃を超えて、
「権力と立場を利用して弱い立場の人間に選択を迫る構造」そのもの。
いろはに向けた言葉も、“優しさ”と“責任感”を逆手に取って追い込んでいくタイプで、優しい子ほど自分を犠牲にしてしまう心理を理解しているかのようでした。
そして何より怖いのは、
彼が社会的には“立派な成功者”“柳和OB”“企業の社長”であること。
表向きは学園を気遣うOBの顔をしながら、裏では私的な執着と会社支配を同時に満たそうとする。この二面性が、現実にも“いそう”と思わせるリアルさで描かれていました。
ドラマとしても、
「悪役を倒すか」ではなく「構造そのものをどう変えるか」を問いかけているように思います。
いろはの“自己犠牲”と、子どもに背負わせる“大人の事情”
今回もっとも胸が痛んだのは、いろはの告白でした。
「私が行けば、ママは社長でいられるし、マミーも会社のみんなも助けられる」
この一言に、子どもがどれだけ空気を読むか、
どれだけ“自分が我慢すればいい”と考えてしまうかが凝縮されていました。
茉海恵が、
「いろはのいない人生なんて意味がない」
と抱きしめたのは、いろはを手放したくないからではなく、
「あなたは誰かを救うための犠牲になるために生まれてきたわけじゃない」
という、母としての絶対的な宣言だったと思います。
一方で圭吾の、
「いろはに関係ないじゃん。いろはがいなくなったら寂しい」
というまっすぐな言葉。
大人の複雑な“正しい・正しくない”よりも、子どもの「そこにいてほしい」という本音の方がずっと真実味がある。
ドラマは“大人の事情”と“子どもの気持ち”のズレを、いろはと圭吾という対極の視点で描き続けてきました。
9話では、そのズレがついに限界点に達したように感じました。
三羽ガラスと佐々木先生、“味方になる大人たち”の心の変化
9話でもう一つ大きかったのは、
「敵だと思っていた大人たちが、味方になり始めている」という変化です。
三羽ガラスが差し入れを持って来て、「何も聞かないつもりよ」と寄り添う。
佐々木先生が、「この嘘は誰かを大切にするための嘘」と伝える。
この二つのシーンは、どちらも“ジャッジする側”から“支える側”へ変わる象徴でした。
柳和会としては学園の名誉を守る責任があり、教師としてはルールを守る立場がある。
それでも、目の前の誰かが本気で誰かを守ろうとしているとき、ルールだけで裁くのではなく、その人の“願いの部分”に手を伸ばす。
薫と茉海恵が一人で戦っていた物語が、
少しずつ「大人たち全員の物語」に広がっていくのが、9話の大きな転換点でした。
だからこそ、薫がすべてを背負ってしまうラストには、
彼らの反撃がきっと描かれるはず――と信じたくなります。
竜馬の「父親になる」決意と、薫への淡いラブライン
竜馬の「一応、父親ですから」というセリフは、照れ隠しのようでいて、実は本気でした。
茉海恵の側で“右腕”として働き、いろはを長年見守ってきた男が、ここで初めて「父としての覚悟」を言葉にした。
そして屋上で薫が、
「竜馬さんがいてくれて、とても心強かったです。ずっと」
と言った瞬間の竜馬の表情は、
彼自身の心が大きく動いたことを物語っていました。
このドラマはラブラインを正面に出さない作品ですが、
・薫と竜馬
・茉海恵と佐々木
という“恋愛になるかもしれないし、ならないかもしれない”絶妙な距離が魅力でもあります。
私は、派手な恋愛成就よりも、“人生を並走してくれる誰かがいる”というかたちで光が差す結末だといいなと感じています。
9話は「破壊の回」、最終回は“どう再構築するか”が鍵
9話は徹底して“破壊”の回でした。
・偽ママ契約が暴かれる
・学園で公開裁判のような場が開かれる
・会社は買収危機
・娘はいろはを“取引材料”にされかける
・最後に薫が自首し、家族から引きはがされる
ここまで壊すのかと驚くほど、徹底的でした。
だからこそ最終回は、“どう再構築するか”が最大の見せ場になります。
私は個人的に期待しているポイントがあります。
・薫の自己犠牲を“美談”で終わらせない
・慎吾の行為に社会的なカウンターが入る
・柳和学園というシステムも変化を迫られる
・いろはが「自分の人生を自分で選ぶ」瞬間
・フェイクで始まった家族が、“それでも家族だ”と言える居場所に辿り着く
9話ラストで、視聴者が抱いた不安と期待は、最終回でこそ回収されるべきだと思います。
フェイクで始まった関係が、どこまで“本物の家族”になってしまったのかを突きつけてくる――それが9話でした。
薫の嘘は、もう“契約”ではなく、「母としての覚悟」と同じ温度を持ってしまった。
だからこそ苦しい。
でもだからこそ、最終回を信じて待ちたくなる。
このドラマを見ていると、誰かを責める前に、自分の中の“黙ってきた本音”と向き合いたくなります。
「本当は、誰を守りたかったんだろう」と。
最終回を見たあと、またこの9話を見返したくなる――そんな予感がしています。
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