現在TBS系で放送中の日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』は、早見和真さんの同名小説が原作です。
原作小説では、主人公の栗須栄治(くりす えいじ)とヒロインの野崎加奈子(のざき かなこ)が物語の軸として20年にわたる競馬ドラマを繰り広げます。
本記事では、原作小説における栗須栄治と野崎加奈子それぞれの歩みと結末を解説し、二人は最終的に結婚するのかという疑問に答えます。
また、原作とドラマ版の違いや共通点についても比較・考察します。
主人公「栗須栄治」の歩み:挫折から夢への挑戦

栗須栄治(以下「栗須」)は物語の主人公であり、語り手的な立場を担っています。
父親と共に税理士事務所で働くことを夢見ていた栗須でしたが、父の急逝と自身の挫折を経験したことで希望を見失い、人生の方向性を見失ってしまいます。
そんな彼の前に現れたのが、人材派遣会社ロイヤルヒューマンのワンマン社長であり、熱心な馬主として知られる山王耕造(さんのうこうぞう)でした。耕造は〈ロイヤル〉の名を冠した馬で有馬記念を制覇するという大きな夢を抱えており、栗須は思わぬ縁からその壮大な夢に巻き込まれていきます。
山王耕造との出会いと競馬の世界へ
税理士としての道に挫折していた栗須は、友人の伝手を通じて耕造と出会い、「絶対に俺を裏切るな」と強い言葉を残して期待を寄せられ、会社に拾い上げられます。
競馬に関する知識や経験がほとんどなかった栗須でしたが、耕造に気に入られてロイヤルヒューマン社の競馬事業を担当する専属マネージャー(秘書)となり、未知の競馬の世界へと足を踏み入れることになります。
ここについてはドラマの1話↓


耕造は情熱的で夢に一直線な人物である一方、その強引さゆえに会社経営は行き詰まり、家族からも距離を置かれ孤立していました。栗須は亡き父を耕造に重ねるように彼を支えたいと考え、今度こそ大切な存在を失わないために尽くすと決意します。
一方の耕造も、献身的に働く栗須を家族のように信頼するようになり、互いに欠けていた“家族の絆”を補い合う関係へと変わっていきます。
やがて栗須は耕造の片腕として競馬サークルでの人脈作りや資金管理など多岐にわたる業務に尽力します。
しかし物語の前半では耕造の夢への道のりは険しく、会社の違法派遣問題や隠し子騒動、さらに耕造自身の肺がん発覚など試練が相次ぎます。
栗須はそれらの困難にもめげることなく奔走し、愛馬ロイヤルホープと共に耕造が念願としてきたGⅠ勝利(有馬記念制覇)を目指します。
序盤、耕造が購入したロイヤルホープはデビュー戦でライバル馬主・椎名の馬に勝利する快挙を成し遂げますが、その後はGⅠの壁に苦しみ、なかなか夢を叶えることができません。
野崎ファームとの出会いと元恋人との再会
栗須にとって大きな転機となったのが、北海道日高地方の小さな牧場、野崎ファームとの出会いでした。
ロイヤルファイトとロイヤルイザーニャに続く有望馬を探していた耕造は、経営難に直面していた野崎ファームで一頭の幼いサラブレッド(のちのロイヤルホープ)に目を留めます。
そしてその牧場で働いていたのが、栗須の大学時代の元恋人である野崎加奈子でした。加奈子は栗須にとってかつて真剣に愛した相手であり、思いがけない再会に栗須の胸は強く揺さぶられます。
野崎ファームの牧場長である加奈子の父は、経営が立ち行かなくなった状況で耕造に未来を託す決断を下します。耕造はその期待に応えるようにロイヤルホープを庭先取引(牧場との直接取引)で購入し、牧場への資金援助も行いました。
その裏側には、栗須が密かに加奈子と牧場を救いたいという想いがあったとも示唆されます(ロイヤルホープが栗須の想い人である加奈子の馬であったことが、耕造の購入判断に影響したという描写もあります)。
こうして栗須は仕事として耕造の競馬プロジェクトを進めながら、かつて別れた恋人である加奈子とも再び深く関わることになっていきます。
ここはドラマの話はこちら↓

野崎加奈子の歩み:別れと再起、母としての決意

野崎加奈子(以下「加奈子」)は日高の生産牧場である野崎ファームの一人娘です。
大学時代に栗須と交際していましたが、物語開始前の2001年に栗須と別れ、その半年後に別の男性と結婚しています。
しかし結婚生活は順風満帆ではなく、息子の翔平(しょうへい)を出産した後は東京(夫の元)と地元の日高を行き来する二重生活となり、最終的には息子のために離婚してシングルマザーの道を選びました。
現在はバツイチのシングルマザーとして実家の牧場を手伝いながら、翔平を女手一つで育てている状況です。
シングルマザー加奈子と牧場の危機
加奈子が実家へ戻り牧場を継いだ頃、野崎ファームは存続の瀬戸際に立たされていました。
父である牧場長は廃業も検討するほど追い詰められながら、起死回生を狙って自ら米国まで種付け(交配)に赴き、期待の仔馬を誕生させるなど最後の賭けに出ていました。
しかし資金繰りは厳しく、このままでは牧場の閉鎖も避けられないという状況でした。そんな中で現れたのが山王耕造と栗須です。耕造は野崎ファームの熱意と仔馬(後のロイヤルホープ)の素質に惚れ込み、資金援助と引き換えにロイヤルホープの馬主となりました。
これにより牧場は当面の危機を脱し、加奈子も父と共に〈ロイヤル〉の冠名を持つ馬で大レースを勝つという耕造の夢に協力していくことになります。
久しぶりに再会した栗須に対し、加奈子は毅然とした態度を崩しません。
大学時代から快活で物怖じしない性格だった加奈子は、シングルマザーとなった現在も芯の強さを保ち続けています。一方で栗須は、加奈子が自分と別れた後に結婚と離婚を経験し、子育てに奮闘していると知って複雑な想いを抱きます。
過去に想い合いながらも別々の道を歩んだ二人が、馬主と牧場スタッフという立場で再び関わり合うことになったのです。
息子・翔平の夢と新たな家族のかたち
加奈子の一人息子である翔平は中学生になっており、将来は騎手(ジョッキー)を志す少年です。
幼い頃から牧場で馬と共に育った翔平にとって、母の加奈子や祖父の姿は大きな影響を与えてきました。栗須が久々に牧場を訪れた際、翔平は突然現れた元母の恋人である栗須に警戒心を抱きますが、物語が進むにつれて彼自身が競馬の世界に深く関わっていくことになります。
物語後半(第二部)では山王耕造の志を次世代へ引き継ぐ展開が描かれます。
耕造は病に倒れながらも隠し子である青年・中条耕一(ちゅうじょうこういち)に夢を託し、自らの所有馬を彼に継がせました。中でもロイヤルファミリーと名付けられた馬は耕造の遺志を象徴する存在であり、そのロイヤルファミリー号の主戦騎手に指名されたのが加奈子の息子である翔平でした。
栗須と加奈子が協力して育んだ馬と若者が、次世代の夢の継承を担っていくのです。加奈子にとって、息子が大舞台でロイヤルの名を背負って戦うことは牧場経営者としても母親としても大きな誇りでした。同時にそれは、栗須や耕造ら大人たちの夢を若い世代が受け継ぐ瞬間でもありました。
栗須栄治と野崎加奈子の結末:二人は結婚する?

結論から言えば、原作小説において栗須と加奈子は最終的に結婚します。
物語後半、栗須は一度加奈子にプロポーズを試みますが、「今は耕造さんのそばにいてほしい」と加奈子は栗須の求婚をいったん断ります(耕造の夢が決着するまでは待つ、と伝える)。ドラマでは馬に人生を任せたくなく、自分のタイミングでも決めたいとも言いました。
それでも二人は互いに想い合う気持ちを育みながら交際を続け、後日談では今度は加奈子の方から栗須へプロポーズをし直し、入籍という運びになりました。
二人が籍を入れたのは、競走馬ロイヤルファミリー号が復帰初戦で勝利を収めた日であり、夢が実を結んだ瞬間に私生活でも新たな門出を迎えた形です。
こうして栗須栄治と野崎加奈子は長い時間と思いを経て夫婦となり、翔平を含めた新たな家族を築いていきました。
ロイヤルファミリー号と家族の歩み
ロイヤルファミリー号が出走するクライマックスの有馬記念では、栗須と加奈子、そして成長した翔平が一丸となってレースに挑みます。
結果、ロイヤルファミリー号は写真判定の末に惜しくも2着に敗れました(物語としては「夢が簡単には叶わない現実」が描かれています)。しかしこの結果を受け、馬主となった耕一たちは引退を撤回し、夢を次の年へ繋いでいく選択をします。
物語自体はこの時点で幕を閉じますが、エピローグではその後ロイヤルファミリー号がついに有馬記念を制覇したことが示唆されており、親子二代にわたる壮大なドラマは読後に温かな余韻を残します。
栗須と加奈子に関して言えば、長い時間をかけて愛情と信頼を取り戻し結ばれた二人の姿は、物語のテーマである「継承」や「家族の絆」を象徴しています。
栗須は耕造の夢を継ぐ存在であり、加奈子は牧場と息子を通して次世代を育ててきた人物です。そんな二人が結婚し、翔平も含めた新しい家族を作ったことは、血の繋がりを超えて夢と絆を受け継いできたロイヤルファミリー(王族)の完成形とも言えます。
タイトルである『ザ・ロイヤルファミリー』は競走馬の名前であると同時に、この物語に登場する家族や仲間たちの絆そのものを指しており、栗須と加奈子の結婚はその集大成として描かれているのです。
原作小説とドラマ版の比較:二人の描かれ方の違い

現在放送中のドラマ版でも栗須(妻夫木聡さん)と加奈子(松本若菜さん)は主要キャラクターとして登場しており、大筋は原作に沿っています。
ただし細かな設定や描写には原作とドラマの間でいくつか違いがあります。
例えば、栗須と耕造の出会い方が原作とドラマで異なります。原作では栗須がビギナーズラックで当てた馬券をきっかけに、友人の叔父である耕造と知り合い転職する展開ですが、ドラマ版では栗須が耕造の会社の内部調査を依頼されて関わりを持つ設定に変更されています。
このようにドラマ版は限られた尺で物語を進めるため、一部エピソードを端折ったり再構成したりしています。視聴者の間でも指摘されている通り、「大筋を変えてくることはない」と考えられており、栗須と加奈子の関係性や物語テーマは原作に忠実であると言えるでしょう。
再会の描写やプロポーズの時期の違い
ドラマ版でも栗須が北海道で加奈子と偶然再会する場面が第2話で描かれ、二人の過去(大学時代の恋人同士だったこと)に触れられています。
また、栗須が加奈子にプロポーズする展開もドラマ中盤で盛り込まれました。劇中では「ホープが勝ったら結婚してほしい」と栗須が告白し、加奈子が「今は耕造さんを支えて」と返すシーンがあります。このプロポーズのくだりは原作終盤の要素を前倒しした形ですが、加奈子が栗須の申し出を一度保留する流れは原作と一致するものです。
今後、ドラマが最終回に向けて原作第二部の要素(耕造の死や耕一・翔平の物語)をどこまで描くか注目ですが、原作と同じ結末に向かうのであれば栗須と加奈子が最終的に結ばれる可能性は高いと見られます。
時間軸と年齢設定の違い
時間軸にも違いが見られます。原作小説は1997年から2018年頃までの約20年間を描いていますが、
ドラマ版では設定年代を現代寄りに調整し、2011年スタートになっています。初回の演出でも「2011年から19年間にわたる歴史が描かれる」と示唆されており、おそらく2030年前後までの物語となる見込みです。
したがって栗須と加奈子の年齢や翔平の成長タイミングも、原作より現代寄りにシフトしています。例えば原作で栗須は1997年時点で29歳、加奈子は26歳でしたが、ドラマでは2011年時点で同程度の年齢設定になっていると推測できます。
この年代調整があるものの、物語の核となる「夢の継承」「親子二代」「再会した元恋人同士の絆」という要素は共通しています。
雰囲気・テーマの違いと共通点
最後に原作とドラマの雰囲気の違いに触れると、原作小説は圧倒的な熱量とリアリティを持って競馬と家族愛を描いた作品であり、結末も競馬小説らしくドラマチックでありながら現実味を帯びたものになっています。
ドラマ版も映像ならではの臨場感で競馬シーンや人間ドラマを描いており、栗須役の妻夫木聡さんと加奈子役の松本若菜さんの好演も相まって、二人の関係には原作同様の説得力と深みがあります。
原作を読んだファンからは「全体に温かい物語で、最後はカタルシスを外されたようにも感じるが心に残る」といった感想も寄せられており、ドラマ最終話でどのような余韻が残されるのか注目が集まっています。
まとめると、原作『ザ・ロイヤルファミリー』では栗須栄治と野崎加奈子が幾多の試練を乗り越えて最終的に結婚というハッピーエンドに至ります。それまでの過程で二人はそれぞれの立場から山王耕造の夢を支え、また翔平という次世代へ夢を受け継ぎました。
二人が歩んだ過程から結末に至る物語は、単なる恋愛を超えた親子二代の壮大な人間ドラマとして読者の心を捉えるものです。ドラマ版を視聴している方も、原作小説で描かれた栗須と加奈子の結末を知ることで、より深く作品世界を味わえるのではないでしょうか。
二人の20年にわたる軌跡と結末は、競馬という夢の舞台を通して家族や絆の在り方を問いかける感動的な物語となっています。
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