「人を愛してはいけない」——ノナマーレの鉄則を破った文太の心は、もう止められない。

第4話は、愛と倫理の衝突を軸に、Eカプセルの誤飲が引き起こす“能力の覚醒”と“勢力の分岐”を描いた。
四季の祝福の息が破壊の風となり、文太の嫉妬は“感情が世界を揺らす瞬間”へ変わる。
そして市松の部屋で飲み込まれる二つのEカプセル——
“ちょっとだけエスパー”の物語は、ここから“もう少し危険な世界”へと進化していく。
ここからはちょっとだけエスパーの4話について解説していきます。
ちょっとだけエスパー4話のあらすじ&ネタバレ

第4話は、「Eカプセル誤飲」→「監視の気配」→「市松の接近」→「四季の誕生日」→「能力の発現」→「“未確認因子”側の布陣が露わに」という流れで進む。
コメディの軽やかさの下で、恋と倫理、そして“能力の拡散”が同時に加速する、シリーズの大きな転換点となった。
Eカプセル誤飲と“見られている気がする”違和感の芽
文太(大泉洋)が“ちょっとだけエスパー”になるために服用していたEカプセルを、風邪薬と間違えて飲んでしまった四季(宮﨑あおい)。
当初は目立った変化こそないが、四季は「いつも誰かに見られている気がする」と不穏な違和感を口にする。
同時に、ノナマーレ社長・兆(岡田将生)は“未確認因子”の存在を感知し、既存のミッション設計そのものが揺らぎ始める。ここで「外からの監視」と「内(体内)からの変化」という二つのベクトルが同時に立ち上がり、第4話の構造的な焦点が定まっていく。
市松の接近、文太の焦り──そして“偽装夫婦”の誕生日
エスパーたちの拠点「たこっぴ」に、“たこ焼き研究会”所属の大学生・市松(北村匠海)が現れる。
四季とは“たこ焼き愛”で意気投合し、急速に距離を縮める。
二人の親しげな様子に、文太はほのかな嫉妬を抱き、同時に“見られている気がする”の主が市松なのではと疑う。
半蔵(宇野祥平)とともに調査を始めるが、彼の焦燥は滑稽でありながら、実は“未確認因子”側の計画的接近を炙り出す構図にもなっている。
一方、花屋の桜介(ディーン・フジオカ)のもとには息子・紫苑(新原泰佑)が現れ、父子関係が物語の表へ。
花束を手渡す“ある所作”が、のちにヴィラン側の匂いを濃くする伏線として作用し、市松と紫苑の立ち位置を対比的に浮かび上がらせる。
その頃、文太は偶然、四季の誕生日を知り、偽りの夫婦でありながら何か贈らねばと焦る。
みなとみらいでのデートを象徴的に描く時間の中で、文太の感情は「好き」から「愛している」へと傾斜。しかし、ノナマーレには「人を愛してはいけない」という鉄則が存在する。
任務(ルール)と感情(越境)の対立が可視化され、文太はルールも正体も守れない自分に愕然とする。
四季の“風”と市松の正体──ヒーローとヴィランの境界線
静かな前振りの末、四季の体内で眠っていた“変化”が突発的に覚醒する。
バースデーケーキのろうそくを吹き消す息が、ケーキどころか文太まで吹き飛ばすほどの威力——四季の能力は“風を起こす”系であることが明示される。
クリーニング店で働く彼女が夢想していた「汚れを“消す”力」は、“吹き飛ばす=影響を消す”方向で顕在化。祝福の場に、異能の歓びと恐怖が同居する。
その裏で、市松は文太たちがエスパーであることを知っているとほのめかす。
最初は“たこ焼き研究会”として接近し、文太に家を突き止められると「超能力研究会」のオカルト好きとしてキャラを更新。
文太に“血の滲む努力”を求められる滑稽な場面も、ラストで意味が反転する。
市松の部屋のテーブルにはEカプセルが二つ。
そこには新キャラ・久条(向里祐香)、市松、そして桜介の息子・紫苑の姿。
久条の「どうぞ」の合図に従い、市松と紫苑がEカプセルを飲み込む。
この瞬間、“未確認因子”側の能力者誕生が映像として刻まれ、文太たちと対をなす“もう一つの勢力”が明確に姿を現す。
直前の通話シーンでは、市松が「アイちゃんは心配性だよね」「見つけた、会うことになってる。名前は久条」と語る。
この断片から、“アイちゃん”という恋人の存在が偽装の盾であり、“恋の言葉”が工作のツールとして使われていたことが明らかに。
文太の嫉妬と探偵ごっこは、実は核心をかすめることもなく、すべてが“裏側で進行していた真実”に回収されていく。
ラストシーンでは、兆が未確認因子の波長を明確に感知し、物語は次章の対立構図へ。
“ちょっとだけ”の力を持つ者たちと、“完全な能力者”の誕生。
ヒーローとヴィランの線引きが初めて可視化され、「能力が世界をよくするとは限らない」という現実的な主題が導入される。
笑って見送れない余韻を残し、第4話はほろ苦く幕を下ろした。
ちょっとだけエスパー4話の感想&考察

第4話は、「愛してはいけない」というルールを“愛してしまう身体”が越境する物語。
その揺らぎが、能力の拡散と敵味方の線引きを同時に起動した回でした。以下、主題・人物線・世界設定の順に深掘りします。
「愛してはいけない」×「愛してしまう」──規範の破れが世界を動かす
文太が四季の誕生日に焦る姿は、一見“偽装夫婦コメディ”だが、実際には規範の破綻を告げる音でした。
人を愛さないことで保たれてきたノナマーレという組織の均衡が、一人の“好き”の高鳴りによって崩れていく。
嫉妬(市松への敵意)と祝福(誕生日)の二色で塗り分けられた第4話は、“愛すること”を禁じたシステムに、人間的な感情が流れ込む最初の亀裂を描いています。
文太が「好き」から「愛している」へと傾いていく描写は、次回以降の代償——任務の喪失、秘密の暴露、仲間の裏切り——を見せる前に、純粋な感情の瞬間を観客と共有するための美しい呼吸でもありました。
四季の“風”──願望の裏返しと力の二面性
四季が望んでいたのは“汚れを消す力”。
しかし、顕在化したのは“風を起こす”という形でした。
“消す”の広義化として“影響を消す/距離を作る”という機能を持つ風は、彼女の慎ましい優しさ——過度に踏み込まない、邪魔しない——という性質と響き合っています。
祝福の息が破壊の風に変わる二面性は、愛と力の関係を美しくも不穏に照らしました。
この先、四季の物語は「どこまで吹き飛ばすか」ではなく「いつ止めるか」を学ぶ過程になる。
その兆しは、バースデーケーキの一吹きで誰かを吹き飛ばした瞬間、すでに芽を出していました。
市松と“未確認因子”──恋の仮面と作戦言語
市松は“たこ焼き愛”から“オカルト研究”へと巧みに言葉をすり替え、文太たちの日常に侵入してきます。
電話で語る「アイちゃん」は恋語りの皮を被った作戦言語であり、ラストのEカプセル2錠は、文太たちの物語が知らぬ間に複製・量産されていく恐怖を映していました。
久条が差し出した「どうぞ」の手は、誘いの手であり契約の手。
紫苑の“花”をめぐる所作は、倫理の線引きを放棄する記号です。
この時点で、ヒーローとヴィランの境界は“善悪”ではなく“関係の持ち方”で引かれると宣言されたに等しい。
久条・市松・紫苑のトリオがEカプセルを飲み込む場面は、“未確認因子”側の新たな能力者誕生を意味し、本作の勢力図が一気に塗り替わる瞬間となりました。
ノナマーレの恐怖──制御不能への不安と倫理の変質
兆が察知した“未確認因子”とは、すなわち“エスパーの増殖=制御不能”。
これまでの任務は“ちょっとだけ力を持つ者”という前提で成立していました。
しかし、Eカプセルが敵味方を問わず流通した時点で、力の独占も管理も崩壊し、ルールは倫理へと姿を変えるしかなくなる。
第4話は、ノナマーレという組織が恐れていた“均衡の破れ”を真正面から描き、視聴者をその入口へと立たせた回でした。
次回への射程──「能力は人を幸せにするのか?」
第5話は、文太たちと“未確認因子”側の初接触=激突が予告されています。
注目は、市松と紫苑の能力の方向性、そして久条の意図。
また、文太が犯す“愛すること”という規範破りが、半蔵・円寂・桜介といった仲間たちにどう波及していくのか。
“好き”は世界を救うのか、それとも壊すのか。
第4話は、その問いを観客に委ねるように幕を閉じました。
演出考察──喜劇の顔で悲劇を孕む
誕生日ケーキのろうそく、たこ焼きの香り、みなとみらいの夜景。
甘いディテールで彩られたシーンが、最後のEカプセル一つで意味を裏返す。軽やかさから不穏への転換が見事で、“今日を生きる”日常と、“世界を救う”壮大さを同じ画面に共存させた演出が光った。
多くのレビューが「能力者さらに誕生で急展開」と評したのは、このトーンの転覆に対する驚きと、コメディの仮面を外した瞬間の緊張感への共感にほかなりません。
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