第4話の40分は、“なくす”と“ある”の境目をそっと照らしていました。

スーツケースの中の空虚も、ダムカレーの涙も、全部「ここにあった証拠」になる。
恋も家族もお金も、完璧には救えないけれど、言葉ひとつで世界は少しだけマシになる。玄一の優しさと、索の理性、そしてほたるの涙が同じ温度で混ざり合う。
「なくなったってことは、あったってこと」――その一言が、現実をやさしく反転させる。今回は、“喪失=証拠”という発想が生まれた夜を掘り下げていきます。
ぼくたちん家4話のあらすじ&ネタバレ

第4話は“恋”と“家族”と“お金”が、同時に引っ張り合うジェットコースター回。
玄一(及川光博)の告白は甘酸っぱく空を切り、ほたる(白鳥玉季)をめぐる「3000万円」と“ロクデナシ父”仁(光石研)が物語を一気に攪拌。
差出人不明の手紙が導火線になって、三人の運命は加速します。公式の第4話イントロと各種メディアのリキャップを軸に、出来事を時系列で整理していきます。
告白は「今はほたるさんのこと」でかき消される——玄一の初手は不発
幕開け、玄一は担任の作田索(手越祐也)に「好きなんです」と真正面から告白。
しかし索の返答は情に溺れないもの――「そんなことより、今はほたるさんのことですよ」。恋の矢は刺さらず、まず優先すべきは“生徒の安全”と“現実の危機”だと釘を刺す。
この“スルー”がのちの行動原理(索=感情を翻訳して現実を動かす人)を明確にする一手となる。
“ニセ親子”の秘密、父・仁に露見——学校に押しかけてくる現実
ほたると交わした「親子のフリ」の契約は、3000万円を狙う実父・仁に知られてしまう。
索は「本当の父親が通報でもしたらどうするんですか?」と玄一を責め、黙認してきた大家・井の頭(坂井真紀)にも「共犯ですよ」と厳しい指摘。
翌日、仁は中学校にまで押しかけ、「娘に会いに来た。悪いか」と開き直るが、金にしか興味がない本音を覗かせると、索は毅然と追い返す。教師としての矜持が見える場面。
差出人不明の手紙→スーツケース→連れ去り——導火線に火がつく
そんな中、ほたるのもとへ差出人不明の手紙が届く。
手紙を読んだほたるは、玄一の部屋に隠していた“3000万円入りのスーツケース”を持ち出してアパートを出るが、直後に仁にさらわれてしまう——ここで物語は一気に走り出す。
玄一と索はほたるを追って走る、追う者と追われる者の並走パートへ。
湖畔のカフェと“ダムカレー”——堰が切れて、ほたるの涙があふれる
仁が連れて行ったのは、家族の思い出が残るレイクサイドのカフェ。
テーブルに並ぶのは“ダムカレー”。楽しげに“父親らしさ”をアピールする仁を前に、ほたるの胸に溜めてきた感情が決壊する。
「全部、なくなっちゃった」――家族の記憶も、居場所の温度も、消えてしまったように感じる彼女の言葉。ここで索は、道中で玄一から受け取ったフレーズをやさしく返す。
「なくなったってことは、あったってことだよ」――喪失を“証明”へ言い換える、人を立ち直らせる言葉の手触り。
名言がSNSで反響——“喪失=証拠”という視点の反転
玄一の「なくなったってことは、あったってこと」という台詞は、放送後にSNSで大きな反響を呼ぶ。
索が抱えてきた“初恋の喪失”エピソード(中学時代、先輩の髭を「好きの証拠」にしていた…)が語られ、その痛みを包み込む言葉として視聴者の胸を強く叩く。
大切なのは“消えたこと”ではなく“確かに存在したこと”。この逆転が第4話の核心。
駐車場での奪い合い——スーツケースの中身は“お金”ではなく“思い出”
クライマックス、駐車場でスーツケースをめぐる攻防。
仁は金を奪うつもりで掴みかかるが、開いた中身は“3000万円”ではなく、幼い頃の家族の思い出の品々。
ほたるは、母が来てくれるかもしれないという“一縷の望み”を鞄に詰めていたのです。仁の「全部やり直すんだよ!」という虚勢は空を切り、現実の重さだけが残る。喪失は、確かに“あった”ことの証明。物語が掴んだ主題が、ここで視覚化される。
そして“共犯関係”は次の段階へ——索、契約書にサイン&引っ越しへ
一件落着ののち、索は“ニセ親子契約書”へのサインを決断。
さらに井の頭アパートへ引っ越してくる流れが示され、三人の共同生活は“仮の関係”から“手順のある関係”へ。第5話の次回予告でも、索の“仮住まい”としての引っ越しが明言され、舞台は一層同じ場所へ収束していく。
エンディングの“バッタ”と「運命ですね」
疲れ切って戻った夜、索の足に一匹のバッタが止まる。ふと見ると玄一の足にも――小さな偶然を前に二人は「運命ですね」と微笑み合う。
百瀬(渋谷凪咲)が授けた「運命だって思わせるんです」という恋のテクニックが、ちゃっかり現実に顔を出すラストカット。甘さと可笑しみが同居する、絶妙な“恋の温度”で幕が閉じた。
ぼくたちん家4話の感想&考察

第4話を見終えて、胸の奥がじんわり温かい。
あの一言——「なくなったってことは、あったってこと」。この台詞に、救われたのはほたるだけじゃない。
画面のこちら側で「もう戻らないもの」を抱えて生きている私たちも、同じ熱で照らされていた気がします。
言葉が人を動かし、関係を繋ぎ、現実を少しだけマシにしてくれる。その証拠が、今回の40分にはぎゅっと詰まっていました。
1)“喪失=証拠”という視点の革命——台詞が物語のソウルになる
索の初恋の回想は、ただの“ゲイのカミングアウト小話”ではありませんでした。彼が握りしめていた“髭一本の記憶”は、好きになった自分を証明する“遺品”のようなもの。
その“証拠”を失くした恐怖を、玄一は一行で反転させる。「なくなったってことは、あったってこと」。
この見方を受け取った索が、ほたるの「全部、なくなっちゃった」に向けて言葉を渡す連鎖に、私は涙腺が崩壊。台詞が単独で輝くのではなく、受け取って、渡すという“ケアの動線”になっている構造が素晴らしかった。
“お金”より“居場所”が強い——スーツケースの種明かし
スーツケースの中身が“現金”ではなく“思い出の品々”だった仕掛けは、テーマのど真ん中。
「3000万円」という数字が動かしていたのは、実はほたるの“家族が戻るかもしれない”という祈り。
金額の大きさより、誰と食べた、どの景色で笑ったといった具体の温度が、人を生かす。だから、仁の「全部やり直すんだよ!」は本質を外す。やり直しより、続ける勇気が人を救うのだと、静かに突きつけられた。
玄一=“できること”の人——日常のケアは恋より強い
玄一の魅力は、ドラマが重ねてきた小さな動作に宿ります。
犬の散歩、挨拶、道を譲る、虫を逃がす——「できることを毎日やるしかない」。
彼は派手なヒーローではないけれど、日々の反復で“居場所の温度”を上げ続ける人。その延長線上に「父親のフリ」も置かれているから、嘘が嘘で終わらない。
ケアの反復は、恋より強い——そう思わせる説得力が、今回の玄一にはありました。
索の役割は“翻訳”へ——教師から、関係のエンジニアへ
序盤で告白を受け流し、学校で仁を追い返した索は、常に“現実”の側に立ちます。
でも彼の強さは、ただの正論で押すことではない。ほたるに言葉を渡すとき、索は玄一のフレーズをそのままなぞりつつ、相手の年齢と文脈に合わせて言い換える。これが“翻訳”。
教師としての機能を越えて、関係のエンジニアとして動き始めた瞬間に、三角形の重心がふっと安定したのを感じました。
“バッタ”と「運命ですね」——甘さではなく、偶然を受け取る技術
終盤の“バッタ”は、恋の甘さの演出だけじゃない。
百瀬が授けた「運命だって思わせる」というテクニックを、現実の偶然が裏打ちしてくれた象徴です。
ふたりは“運命”を信じるのではなく、受け取ることを覚えた。過剰に演出しない小品のようなラストが、逆に二人の関係の“地に足”を感じさせて、最高に好き。
仁という“痛みの装置”——父の名札と中身の乖離
仁は「父」という肩書で世界を渡ろうとするけれど、中身は空洞。
ダムカレーのテーブルで“俺のほうが父親らしい”と競う姿には、幸福の形式にしがみつく弱さがにじむ。
彼が去ったあとに残るのは、ほたるの涙と、スーツケースの思い出だけ。だから、このドラマの“父”は名札ではなく、すること(ケア)で決まると強く伝わってきます。
“共犯”の次の段階へ——索のサインと引っ越しが意味するもの
索が契約書にサインし、アパートにやって来る決断は、関係の形式化です。
恋の気配を匂わせながらも、「ほたるの最善」を最優先するために生活の手順を整える。第5話の予告でも“仮住まい”のニュアンスが明示され、恋は焦らず、まず生活を整える物語だと宣言されました。
これは“恋バナ”でありながら、“生活設計ドラマ”としての強度を上げる選択。ワクワクしかしません。
次回への視線
・学校のルールは、どこまで“居場所”のために柔らかくなれるか。(索の言葉の選び方に注目)
・仁の再登場はあるのか。彼が“名札”を脱ぎ捨て、“すること”に向き合えるのか。
・ともえの手紙の真相。母の不在を“喪失=証拠”でどう回収するのか。物語の針が、過去から現在へ、そして未来へと確かに進み始めています。
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