『あなたの番です』の中でも、南雅和ほど“正体の読めないまま恐ろしく見える人物”はいなかったかもしれません。
事故物件に自ら飛び込み、住民全員を疑うように話を聞き回る姿。
家具のない部屋、カメラだけが置かれた生活空間──初登場時から怪しさ全開でした。
しかし、その裏には想像以上に重く深い理由が隠されていました。
本記事では、南とは何者だったのか、南の娘を殺害した犯人は?その核心に迫っていきます。
南雅和とは?まずは「事故物件住みます芸人」という顔から

ドラマ後半で502号室に引っ越してくる謎の男・南雅和。
赤池夫妻が殺された“事故物件”にわざわざ入居し、住民たちにやたら事件の話を聞きまわるその姿に、「絶対コイツ黒幕でしょ…」と思った人は多いはずです。
南は自らを「事故物件住んでみました芸人・南サザンクロス」と名乗り、訳あり物件に実際に住んでレポートする芸人。部屋にはほとんど家具もなく、三脚に乗ったカメラだけがぽつんと置かれている──という、いかにも怪しい登場をします。
しかし、のちにスピンオフ「扉の向こう」では、彼が本当に事務所に所属している“売れない芸人”であり、マネージャーに支えられながら細々と活動していることも描かれます。
つまり、「芸人」は完全なカバーストーリーではなく、“本物の職業だけれど、それ以上に隠しているものがある”という二重構造になっているのがポイントなんですよね。
では、その「隠しているもの」とは何なのか。ここからが、南というキャラクターの本質に迫る部分です。
南の正体:5年前の「笑う少女殺人事件」の被害者遺族
5年前の高知県香南市で起きた事件。南の娘が被害者
南の正体が本格的に明かされるのは、反撃編終盤・18話前後。
そこで語られるのは、5年前の高知県香南市で起こった少女殺害事件です。
- 大雨の日、小学3年生の女の子が何者かに殺される
- 遺体の顔は“微笑んでいる”ように見えた
この「笑っている死に顔」という不気味な特徴こそ、『あなたの番です』全体を貫くモチーフ。
浮田・赤池夫妻・菜奈など後半の被害者にも共通する死に顔で、事件同士のつながりを示すキーになっています。
そして、この事件で殺された少女こそ、南の娘・南穂香。最終回で黒島の部屋から片方の靴が見つかったことで、黒島に殺されていたことが確定します。
18話についてはこちら↓

なぜ南は事故物件に住み続けるのか

娘を殺された南は、その後、犯人探しに人生を捧げるようになります。
ただ、生活していくには仕事も必要。その結果として編み出されたのが、
「訳あり物件に住み込み、芸人として動画を撮りつつ、同時に事件の情報を集める」
という痛々しい生き方。
- 売れない芸人としての活動
- 娘の事件を追う“復讐者”としての本音
この 2つを同時進行するために、“事故物件住みます芸人”は南にとって職業でもあり、カモフラージュでもあるわけです。
スピンオフではマネージャーに「もっと家族ネタを出して」と言われた瞬間、南が完全に固まる描写があり、
彼が“笑えなくなった芸人”であり、“家族の話は封印している”ことが強烈に伝わってきます。
南は「笑う死体」を追ってキウンクエ蔵前へ

南がキウンクエ蔵前に来た理由は、かつて娘の事件を担当した刑事から「笑って死んでいる遺体が出た」と聞いたことでした。
- 娘の事件と同じ“笑う死体”が東京で見つかった
- そのマンションでまた殺人が続いている
南は「これは絶対に何かある」と確信し、あえて最も凄惨な事件が起きた502号室に入居します。
表向きは「事故物件レポートの撮影」としてカメラを回しながら、実際には
- 被害者たちの共通点を洗い出し
- 元銀行員としてのリサーチ力を発揮し
- 田宮・黒島・内山の過去を独自に調査
という、もう一人の“外部探偵”のような動きをしていました。
南の行動から読み解く「父親としての狂気と正義感」

田宮を疑った理由
南がまず疑ったのは、元銀行員の田宮。
- 5年前、南と同じ高知の銀行支店に勤務していた
- 田宮宅で“高知の少女殺害事件の記事”を発見
- 当時の避難所運営などで少女と接点があった可能性
これらから南は「娘の犯人は田宮では?」と思い込み、田宮を襲って問い詰めます。
ここで印象的なのは、南が理性より“父親としての感情”で暴走している ところ。
元銀行員で本来は冷静なはずの南が、“娘の事件”が絡んだ瞬間に視界が狭くなる──この危うさが南を「単純な善人」にさせない深みになっています。
黒島・内山へ続く“高知ライン”
南は調査の中で、黒島と内山が高知県香南市出身であることにも気づきます。
- 内山の履歴書 → 出身高校は高知
- 黒島 → 同じエリアで高校生活を送っていた
- 5年前、田宮・黒島・内山・南が“同じ地域に存在した”可能性
この“高知ライン”が、南を黒島・内山へ向かわせる大きな伏線になっていました。
個人的に、ここが脚本の巧妙な部分だと思っていて、南は 「黒島を疑う最初の外部視点」 なんです。
翔太・二階堂はマンション内部から推理しますが、南だけは“地方の過去の事件”からつなぎ始める。
その結果、黒島・内山・田宮という三人が一本の線で結ばれる構図になっていくわけです。
南の登場と…翔太たちへの影響
南は登場当初、住民たちから嫌われ役でしたが、実は
- 翔太たちを赤池幸子に会わせるきっかけを作る
- “笑う死体”という共通点に気づくチャンスを与える
- 5年前の高知事件という“別のレイヤー”を物語に持ち込む
という形で、主人公側の捜査を一段押し上げる役割を果たしています。
南がいなければ翔太たちは「マンション内の交換殺人」の枠から抜け出せなかったはずで、物語を “局地的事件”から“連続殺人の系譜”へ広げたキーパーソン だと感じています。
最終回で明かされる真実と、南に残されたもの

娘の殺人の犯人:黒島の部屋で見つかる「片方の靴」
最終回で黒島の自宅に警察が踏み込んだ際、次々と殺人の証拠品が見つかる中、南が無理やり部屋に入り込みます。そこで彼が見つけてしまうのが、娘・穂香の「片方の靴」。
この一瞬で、
- 5年前の未解決事件の真犯人が黒島であること
- 南の“長すぎる復讐の旅”が報われたのか、報われていないのか分からないまま終わること
が、視聴者にも突き付けられます。
ドラマ本編では穂香殺害の詳細は描かれませんが、補足的な情報では、
- 嵐の日、衝動を抑えられなくなった黒島が家を飛び出す
- 偶然出会った穂香を殺害
- 家庭教師はそれを疑いながらも黙ってしまう
という流れが語られています。
南の視点に立つと、これは本当に残酷です。
犯人は“人を殺すことが好き”だと言うサイコパスであり、しかもその衝動を止められなかった周囲の大人たちの“放置”も重なっている。
翔太が黒島を警察に連れて行くことで物語としては一応の決着を見ますが、南に残るのは、
- 娘はもう帰ってこない
- 犯人の動機はあまりにも理不尽
- 5年間の調査も、ただの父親の足掻きに過ぎなかった
という、救いようのない現実だけなんですよね。
南にとっての“終わらない物語”
最終回の時点で、南がこの先どう生きていくのかはほとんど描かれません。
YUKIとしては、ここが逆にリアルだと思っています。
復讐ものでは、
- 犯人を自分の手で討ち取り、全てを終わらせる
- 復讐を断念し、新しい人生を歩み始める
といった“スッキリした結末”が用意されがちですが、南にはどちらの選択肢も与えられていない。
- 犯人は生きて裁きを受ける
- しかし娘の命は戻らない
- 自分の人生も、芸人としても父親としても中途半端なまま
この宙ぶらりんな状態こそ、
『あなたの番です』が描こうとした “事件のその後を生きる人たちの痛み” なんじゃないかと感じました。
感想&考察:南は『あな番』でもっとも残酷なポジション
最後に、南というキャラの“うまさ”を整理しておきます。
① 視聴者の「疑い」と「共感」を両方背負うキャラ
- 登場時は怪しさ満点で、「黒幕候補」として疑念を集める
- 正体が明かされると一転、“被害者遺族”として強い共感を呼ぶ
この感情の振り幅の大きさが、南を強烈に印象づけています。
「イヤな奴だと思っていた人の背後に、大きな喪失があった」
その描き方によって、ドラマは単なる“犯人当てゲーム”から、加害と被害が折り重なる人間ドラマへ深まっていく。南はその象徴の一人でした。
② 事件のスケールを広げた“もう一人の探偵”
- 翔太たちは「マンション内の交換殺人ゲーム」から真相を追う
- 南は「5年前の地方都市の少女殺人」から真相を追う
この二つの捜査線が合流することで、物語は一気にマンションを越えた“連続殺人の系譜”へと広がります。
南がいなければ、高知・笑う死体・黒島の過去といったレイヤーは十分に掘られなかったはず。
ミステリー構造の中核を支える重要キャラクター と言えます。
③ 「笑えない芸人」という残酷なアイロニー
どうしても触れたいのが、
娘を殺されたせいで“笑えなくなった男”が、「お笑い芸人」を名乗り続けている
という設定の残酷さです。
- ネタは暗く、笑いにならない
- 家族の話を封印しているから芸にも深みが出ない
- それでも「事故物件芸人」という形で、自分の悲劇を仕事に変換している
“トラウマをネタにしなければ生きていけない人間”という描き方は、『あな番』の中でもトップクラスにしんどいテーマでした。
まとめ:南は「黒島の物語」を外から照らすスポットライト
黒島という連続殺人犯の過去と現在をつなぐうえで、
南は 被害者遺族という立場から真相に光を当てるスポットライト のような存在です。
- 502号室に乗り込んできた謎の男
- 5年前の少女殺害事件の父親
- 笑えない“事故物件住みます芸人”
- そして犯人を知っても何一つ救われない男
『あなたの番です』を見返すとき、南のシーンだけを追っても作品の印象は大きく変わります。
黒島の記事とセットで読むと、このドラマが持つ“残酷な優しさ”がより立体的に浮かび上がるはずです。
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