1話では新たに発足されたDICTが動き始めました。

第2話では、“騙す側”と“騙される側”の境界が曖昧になる。
DICT〈情報犯罪特命対策室〉に下された任務は、SNSで広がるロマンス詐欺の実態解明。内閣官房副長官・佐生(安田顕)は「被害総額1270億円、中枢を叩け」と命じ、二宮奈美(沢口靖子)らが動き出す。
マッチングアプリで“米軍医エマ”を名乗る相手に多額を送金していた被害者の証言から浮上したのは、“日本人名義の中継口座”と、そこに関わる二人の女性――橋本咲希(桜井玲香)と藤井遥香(菜葉菜)。ディープフェイクで作られた“恋人”の正体と、嘘を知りながら依存していく咲希の心理。
本記事では、第2話からのあらすじとネタバレ、感想&考察を紹介します。
絶対零度(シーズン5)2話のあらすじ&ネタバレ

国家規模の脅威と、現場の“違和感”が一本に繋がる
第2話は、国家レベルの危機と現場の小さな違和感が一つの糸で結ばれていく。内
閣官房副長官・佐生新次郎(安田顕)がDICT〈情報犯罪特命対策室〉に発したのは、“SNS型ロマンス詐欺は氷山の一角。被害総額は昨年だけで1270億円超。中枢に迫れ、絶対に取り逃すな”という厳命。ここから二宮奈美(沢口靖子)たちによる“人間観察×情報解析”の捜査が始まる。
被害者・芝田の証言と送金ルート――事件の端緒
DICT室長・早見(松角洋平)から共有を受けた奈美は、掛川啓(金田哲)と共にロマンス詐欺の被害者・芝田(星田英利)に接触。
芝田はマッチングアプリで“米軍医のエマ”を名乗る人物に多額の金を送金していた。南方(一ノ瀬颯)は送金ルートを追い、田辺(馬場園梓)はアカウント照会を担当。奈美と掛川は過去の事案との共通項を洗い出すという分担で、DICTのチームワークが加速する。
“日本人名義の中継口座”という鍵――橋本咲希という糸口
芝田の資金は海外口座へ流れていたが、途中に“日本人名義の中継口座”が一つだけ存在することが判明。
名義は橋本咲希(桜井玲香)。奈美と掛川が勤務先スーパーで接触すると、咲希は「身に覚えがない」と否定。しかし奈美はわずかな表情のひっかかりを見逃さず、店長と同僚・藤井遥香(菜葉菜)から事情を聞く。咲希が休憩中に“恋人”と頻繁に連絡を取っていた事実が浮上し、“恋人”の存在が捜査線上に浮かび上がる。
“韓国在住パク”の正体――DMが暴く二重の顔
再訪した奈美は、咲希の口座が資金洗浄に利用され、すでに犯罪に巻き込まれていると説明。
すると咲希は、“韓国在住の恋人・パク・ヒジョンに口座情報を渡した”と告白し、スマホのDMを奈美に預ける。DMには“誕生日の花束”を示すヒントが潜み、そこからパクの正体が“身近な人物”であることが判明していく。
奈美の観察と照合は、日常の細部を言葉へ変換する“人間的推理”として描かれる。
“偽りの恋人”の正体――藤井遥香の自首
やがて藤井遥香が出頭。闇バイトでロマンス詐欺に加担し、ディープフェイクを使って半年間“パク”を演じていたと供述する。
しかしここで事態は一転。咲希は、藤井が“パク”だとすでに知っていたのだ。それでも“恋人のパク”に依存し続け、犯罪と分かっていながら進んで加担してしまった――“ニセモノをやめたい加害者”と、“ニセモノでもすがりたい被害者”が真正面からぶつかる、痛切なクライマックス。
“末端しか捕まらない”構造――DICTの新たな壁
藤井のスマホからは上層の情報を引き出せず、手元に残ったのは膨大な詐欺マニュアルだけ。
DICTは“末端だけが捕まる”構造を目の当たりにし、次の段階へ踏み出す必要が生じる。ここでシリーズの主題――“真犯人の正体が見えない情報犯罪”――が一層明確になる。
並走する国家案件――“官邸の障害”と“SE連続殺人”
一方、官邸では頻発するシステム障害をサイバーテロと疑い、対策が進む。山内徹(横山裕)は独自にSE連続殺人を追い、被害者の妻の証言から“裏金の流れ”を嗅ぎ取る。
第2話は、ロマンス詐欺の捜査と国家規模の不穏が並走することで、DICTという組織の射程を縦に拡張して見せた。
総理の娘・カナと“スコット”――連続ドラマの長い弧
さらに、総理・桐谷杏子(板谷由夏)の娘・カナ(白本彩奈)がSNSでやり取りしていた“スコット”(樋口幸平)が、ついに現実に姿を現す。「カナのスキルを活かせる最高の仕事」という誘い文句は、別の“勧誘”の匂いを漂わせる。
ここから物語は、国家と個人を繋ぐ長い弧を描き始める。
ゲスト情報――橋本咲希を演じる桜井玲香
この回のキーパーソン・橋本咲希を演じるのは桜井玲香。月9ドラマは12年ぶりの出演となる。
“ごく普通の店員”が、いつの間にか巨額詐欺の鍵を握る存在になるという難役を繊細に演じ、恋人をかばおうとする咲希の姿が捜査の唯一の糸口として描かれる。
総括――人の観察がハイテク犯罪を超える瞬間
第2話は、AI解析よりも“人の観察力”で事件の真相に迫るDICTの姿を描いた。
恋と依存、正義と後悔が交差するロマンス詐欺を通して、情報犯罪の構造と人間の弱さを両面から描くエピソード。ハイテクを超える“人間の温度”が、DICTの最大の武器であることを証明した回だった。
絶対零度(シーズン5)2話の感想&考察

“被害者の錯誤”ではなく“被害者の依存”を描いた妙
第2話の巧さは、“被害者が騙された”という単純な構図ではなく、“嘘と知りながらも依存してしまう心理”を真正面から描いた点にある。
ロマンス詐欺の基本は「嘘を信じてしまう構造」だが、本話は“嘘を降りたい加害者”と“嘘でも縋りたい被害者”を正面衝突させた。詐欺の本質はテクニック(ディープフェイク)ではなく、人間の孤独と承認欲求――そこを掘り下げたことで、咲希と遥香の感情の衝突に論理と必然が宿った。
「観察→照合→固定」――DICTの勝ち筋は“手順”
奈美の強みは、最新技術ではなく“人間観察の微差”を分析手順に変えること。
最初の咲希との接触で拾った表情の揺らぎ、職場での証言、DMの断片(花束)――それらを状況証拠として束ね、“誰がパクを演じているのか”を特定していく。
DICTの戦いは“見えない敵”に対して“見える手順”で挑む作業だ。だからこそ、上層の情報が得られず“マニュアルしか残らない”という現実が、今後の宿題として強く残る。
“氷山の一角”を“人間の断面”に翻訳する構成
佐生の「1270億円超」という数字は、ただの統計ではない。その背後にある“個々の人生”を、咲希と遥香の関係が可視化した。国家が語る“氷山の一角”と、奈美が読む“一人の表情”。
マクロとミクロが噛み合うことで、視聴者は“制度と生活”の両面から詐欺を体験する。シリーズのテーマである「情報犯罪に挑む」という抽象命題を、人の手触りにまで落とし込んだ回だった。
ディープフェイクの使い方が現実的
本話で扱われたAI要素は、過剰演出ではなく“匿名・流動型犯罪(トクリュウ)”のリアルに即している。
顔の偽装はあくまで“関係を延命させる装置”であり、詐欺の目的は送金と口座貸しの“協力”を引き出すことにある。テクノロジーは目的ではなく、人を操るための道具として配置されている。
終盤、DICTが得たのは“マニュアル”だけ――人を操るレシピが商品化される現代への警鐘として機能している。
横山裕の“別線”が物語の奥行きをつくる
奈美のロマンス詐欺捜査と並行し、山内(横山裕)はSE連続殺人を追う。
官邸システム障害=サイバーテロ疑惑と合わせ、DICTの守備範囲は一気に拡張される。“末端の詐欺”と“国家のリスク”を同じフレームで描くことで、黒幕のネットワーク(資金・人・マニュアルの流通)が観客の頭に“地図”として浮かび上がる。 経営統合詐欺へとつながる布石としても自然な流れだ。
“スコット”の投下タイミングが絶妙
第2話で“スコット”(樋口幸平)がカナ(白本彩奈)の前に実体として現れることで、個人のスキル勧誘という別ルートが開いた。これはロマンス詐欺と相似形のソーシャル・エンジニアリング。
好意や承認を餌に“動機”を揺さぶる点で、同じ手口が貫かれている。第2話時点で彼を“謎ごと提示”したのは正解。“末端しか捕まらない構造”を超える“使い手=ハンドラー”の存在をほのめかす導入となった。
キャスティングの説得力――桜井玲香の重心
桜井玲香は、“普通の店員”の柔らかさと、“壊れかけた依存”の危うさを見事に両立させた。恋人をかばう微細な仕草が、法的には罪でも心理的には必然に見える。
第2話は「加害/被害」という二項を、セリフではなく態度の揺れで描いた回。
感情の連鎖にリアリティが宿っていた。
制作面の精度――“人間の温度”が画に残る
本作のキャッチコピーは「真犯人の正体が見えない情報犯罪」だが、カメラは常に“人の温度”に寄り添う。奈美の聞き込みは“井戸端会議”のように見える瞬間もあるが、その雑談の網にこそ核心が引っかかる。
DICTは技術ではなく、“人の話を聞く”ことで勝つ組織。そのため、中枢に届かない苛立ち(マニュアルしか残らない)が、視聴者の心にも残る。
次回への射程――“構造”をどう破るか
末端の実行犯は捕らえたが、上層はまだ見えない。第3話は“経営統合詐欺”が題材となる。
“マニュアル化された詐欺”を破る鍵は、現場の言葉を制度の言葉へ翻訳できる人物の存在。
奈美の“観察と手順”が、数字と契約の世界(南方・田辺の領域)と交わるとき、中枢への一本の線が引かれるだろう。シリーズが本格的に“情報犯罪の構造”を撃ち抜く導入として、極めて精度の高い一話だった。
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