ドラマ「おコメの女」5話は、いわゆる“港区インフルエンサー案件”として始まりながら、物語の重心が一気に「政治とカネ」「国税の内側を知る者の悪意」へ移行する回でした。
動画配信者・カナちぇるの派手な生活を追ううちに、宗一郎、下柳、大瀬良、そして正子が長年追い続けてきた箱山哲郎の名前が一本の線でつながっていきます。
とくに今回は、借用書3億5千万円の発見と「行為計算否認」という国税の切り札が描かれ、単なる脱税調査では終わらない“戦争の始まり”がはっきり示されました。
勝ったはずなのに後味が悪い。その理由が、ラストで箱山の一言として突き刺さってくるのも、この回ならではです。
この記事では、5話の流れを時系列で整理しながら、
・港区ギャラ飲みの実態
・社債を使った金のスキーム
・箱山哲郎が「宿敵」になる理由
をネタバレありで詳しく解説していきます。
ドラマ「おコメの女」5話のあらすじ&ネタバレ

第5話は、華やかな“港区セレブ”の匂いがするインフルエンサー案件から始まって、ついに正子が長年追いかけてきた宿敵・箱山哲郎と正面衝突する回です。
表向きは「動画配信者の脱税疑惑」なのに、追えば追うほど“政治とカネ”“国税の内側を知る人間の悪意”に踏み込んでいく――後半戦のスタートみたいな構図でした。
鷹羽錦之助の死去――“お別れの会”で正子が嗅ぎ取る違和感
引退後も影響力を残していた元大物政治家・鷹羽錦之助が亡くなり、都内でお別れの会が開かれます。国税調査官である米田正子は、ただの弔問ではなく“空気”を確かめるように会場へ足を運ぶ。
弔いの場なのに、人が集まるほど“引き継がれるもの”も増えていく。権力者の死は悲しみで終わらず、残された側の思惑が渦を巻く――このドラマが得意な温度感が、開始数分で立ち上がります。
正子が会場で思わず足を止めるのは、まさかの人物――新潟で暮らしているはずの父・田次の姿でした。新潟以外で会うのは久しぶりだと、田次は「香典でも数えに来たのか」と冗談めかして笑う。
けれど、続く一言が重い。錦之助は「世話になった相手だった」というのです。ここで早くも、米田家の過去と鷹羽家の過去が“同じ地続き”にあることが匂わされる。
正子は調査官としては感情を見せない。しかし娘としては、父が言葉を濁していることが刺さる。
田次が何をしてきたのか、誰に借りがあるのか、なぜ今さら弔いの席に顔を出したのか――聞きたいことは山ほどあるのに、正子は“ここでは聞けない”と判断して飲み込む。この「聞けない」「聞かない」沈黙が、後半で箱山に突かれる弱点になるんだろうな…という嫌な予感も含めて、序盤から緊張感が高い回でした。
会場で目に入った“ポンギ★カナちぇる”――派手さが浮く瞬間
もう一つ、正子の視線を引き寄せたのが、動画配信者・ポンギ★カナちぇるの存在でした。お別れの会という場に似つかわしくない佇まい、そして「この場にいる理由が見えない」立ち位置。
ザッコクの仕事は“怪しい人を捕まえる”ではなく、“怪しい金の匂いを嗅ぎ分ける”こと。だから、最初の引っかかりはいつも些細です。場違いな人ほど、場違いな金と一緒にいることが多い。
カナちぇるは、会場での振る舞いそのものがどこか軽い。弔いの場に“映える空気”を持ち込んでしまうタイプというか、本人に悪気があるかは別として、周囲から見れば「何しに来たの?」となる。
この“軽率さ”が、後半で宗一郎の隠し子疑惑へ火をつける引き金になっていきます。
ザッコク始動:登録者5000人なのに超セレブ?数字と暮らしの不一致を洗う
ザッコクがカナちぇるを調査対象として洗い始めると、すぐに「数字と暮らしが釣り合っていない」ことが浮き彫りになります。チャンネル登録者は約5000人。普通に考えれば、豪奢な暮らしを継続できる規模ではないのに、彼女は“超セレブ”の生活を送っている。
ここでザッコクがやるのは、派手な生活を「羨ましい」で終わらせず、“生活の固定費”として見る作業です。
・どんな活動で収益化しているのか
・動画の再生数や案件の匂いはあるのか
・店舗(ブティック)を持てるだけの原資はどこから来たのか
――そういうピースを一つずつ拾っていく。こういう地味な積み上げが、後で一気に効いてきます。
調べるほどに出てくる名前が、錦之助の息子で現・経済産業大臣の鷹羽宗一郎。カナちぇるは宗一郎の愛人ではないか――そんな噂がちらつき始めます。さらにもう一人、元東京国税局員で税理士の箱山哲郎の影も見えてくる。
この段階で、案件が二層構造になるのが面白いところです。
表層:インフルエンサーの収益と支出が合わない(=脱税の匂い)
深層:政治家のスキャンダルが絡む(=火消しと資金提供が動く)
さらに深層:国税の手口を知る“元身内”が噛んでいる(=調査が読まれる)
国税側が相手にするのは数字だけじゃない、という嫌な現実が早々に見えてきます。
ここでザッコクがブレないのは、「怪しいのはスキャンダルではなく金」という基本姿勢です。宗一郎の愛人かどうかは、週刊誌の仕事。国税が見るのは、生活と収入の差。
登録者5000人クラスの配信者が“超セレブ”を維持しているなら、どこかで帳尻を合わせる金が動いている。そこを掴めば、愛人疑惑の真偽とは別に「税務の問題」として相手の足元を崩せる――正子たちが冷静に狙いを定めていくのが、第5話の前半でした。
宗一郎の周辺で進む“火消し”――灰島は表で謝り、裏で金を動かす
同じ頃、宗一郎の周辺も静かにきな臭さを増していきます。秘書の灰島直哉は、週刊誌に撮られたスキャンダルをもみ消したと宗一郎に報告し、表向きは“有能な火消し役”として振る舞う。
ただし、第5話で明かされるのは、その裏側です。灰島は箱山から金を受け取り、それを不倫相手の助川に渡して「宗一郎と接触しないように」と釘を刺す。火を消すというより、火種を動かしやすい形に整えて、手元に置く――そんな動きに見えました。
ここでポイントなのは、灰島が“宗一郎のため”だけに動いていないこと。
宗一郎を守るために動いているようで、同時に宗一郎をコントロールできる材料(スキャンダル・女・金)を管理している。だから宗一郎が怒鳴っても、灰島の顔色は変わらない。
政治家の側近って、本来こういう怖さがあるよな…とゾッとする描写でした。
優香が港区ギャラ飲みに潜入――“金を出す側”の顔ぶれが見えてくる
笹野の調査で、カナちぇるが“港区女子”を集めて、会社経営者たち相手にギャラ飲みを回している構図が見えてきます。正子は俵優香を潜入させ、現場で空気ごと情報を掴ませる。
ここでのギャラ飲みは、ただの派手な飲み会ではありません。誰が席の主導権を握っているか、誰がどこで愛想を振りまいているか、誰が“金の出どころ”として君臨しているか――そういう序列が、そのまま脱税スキームの入口になります。
優香の役回りは、数字になる前の“人間の序列”を見抜くこと。彼女が場に溶け込みながら、視線で情報を拾っていく描写が、地味に効いていました。
優香が潜入した場には、会社経営者の下柳健太郎が姿を見せます。カナちぇると下柳が愛人関係だという噂も出て、カナちぇるの派手な生活の“スポンサー”が宗一郎だけではない可能性が濃くなる。
さらにこの場には、後に重要人物として浮上する税理士・大瀬良要も同席していました。表面上は地味で冴えない印象なのに、金の流れの中枢に立っているかもしれない――このギャップが後半で効いてきます。
“派手な人間ほど怪しい”じゃない。むしろ“地味な人間が金のハブ”になっている時がいちばん怖い、というのを、ここで布石として置いたのが上手かったです。
優香がこの場で掴んだのは、「場の主役はいつも金を出す側」という当たり前の現実でもありました。
カナちぇるが笑っていようが、港区女子が華やかに振る舞おうが、最終的に場の空気を決めるのは“支払いをする男”です。下柳が席にいるだけで空気が変わる。その背後に税理士(大瀬良)が座っているだけで、金の匂いが濃くなる。
この“空気の変化”を掴めるのが、優香というキャラの強さだなと感じました。
作久子のブティック潜入――「子ども」「店名の読み」「養育費」の火種
優香が“夜の現場”で情報を取る一方、飯島作久子はカナちぇるが経営するブティックへ。ここが今回、いちばん生々しいヒントが転がっている場所でした。
店内は一見おしゃれでも、どこか“素人っぽい空気”が漂っている。店員はやる気がなく、むしろ軽い嫌味すら混ぜて雑談をこぼす。その雑さが逆にリアルで、国税の聞き取りがいつも「完璧な尋問」ではないことを示します。
作久子は上品に距離を詰め、相手の油断を引き出していく。ここは“圧でねじ伏せる”というより、「聞き役の強さ」を見せた場面でした。
そこで飛び出すのが、カナちぇるに子どもがいるという事実。しかも店名に絡めて「月詠」と書いて“らいと”と読む、息子の名前だと明かされます。さらに、数年前までは養育費がもらえないとぼやいていた――という過去まで出てくる。
この情報だけで、ザッコク側は「金の流れを“養育費”として整理できるかもしれない」と踏んでいきます。作中でも、認知されていない子どもへの金銭の渡し方が税務上の問題になり得る…という論点が示され、事件が一気に“家庭の闇”と“会計処理”でつながっていく。
脱税の話なのに、結局、最後に皺寄せが行くのは子ども――その構図が、ここでくっきり出ました。
「宗一郎とは友人」動画が逆効果――映り込んだ“税理士”が決定打に
カナちぇるは宗一郎との愛人疑惑を否定する動画を公開します。「仲の良い友人だ」という体裁で、疑惑の火消しを狙ったもの。
こういう否定って、視聴者(=世間)の疑いを止めるより、むしろ“疑う人に燃料を渡す”ことが多い。第5話もまさにそうで、動画は火消しのはずが、ザッコクにとっては“答え合わせ”になります。
なぜなら、その映像の中に、税理士・大瀬良要が映り込んでいたからです。優香が潜入したギャラ飲みにもいた男が、今度はカナちぇると宗一郎をつなぐ場面に現れる。これで「夜の現場」→「金の処理」→「政治家周辺」の線が一本になる。
疑惑の中心にいるはずの宗一郎本人よりも、“周辺の金の動かし方”が先に浮き彫りになるのが、このドラマの気持ちいいところです。
政治家のスキャンダルは派手ですが、国税の武器は派手さではなく数字。映り込み一つで、相関図の重心が動く――まさにザッコク回でした。
笹野のログ戦で見えた「社債ルート」――大瀬良と箱山の接点が浮上
笹野は大瀬良を洗い、彼が役員を務める会社と下柳の会社の間に社債のやり取りがあることを突き止めます。ここが今回の“スキーム”の背骨。
社債って、普通は資金調達のために使うものです。でも、誰が買って誰が利子を受け取るか、どういう名目で資金が動くか――そこを設計すると、「表の顔は資金調達、中身は別目的」という使い方ができてしまう。
ザッコクが追っているのは“社債そのもの”ではなく、その社債が「誰に金を渡すための通り道になっているか」という実態です。
そして怖いのは、このルートが“人を介して”繋がっていること。大瀬良が過去に箱山の税理士事務所にいたという繋がりが明かされ、盤面が一気に悪くなる。
つまり、今回の案件は「港区インフルエンサー」から始まっているように見えて、実際には“元国税局員の悪徳税理士”が裏で糸を引く構図が濃くなっていきます。正子が険しい顔をするのも当然で、ここからはただの調査ではなく、過去の因縁ごと焼き直す戦いになっていく。
下柳の会社へ臨場――宿敵・箱山哲郎が“余裕”で待ち構える
ザッコクは、カナちぇると下柳の間の金の流れを掴むため、下柳の会社へ臨場します。スタイリッシュなオフィス、妙に静かなフロア。そこにいるのは下柳だけ。
そして、下柳の視線の先にいたのが箱山哲郎でした。元国税局員で、国税側の手順も癖も知り尽くしている男。箱山は正子に向けて、挑発的に“評判は聞いている”と言い放ち、正子を「ガサ入れの魔女」と揶揄して場の空気を意図的に冷やします。
箱山は委任状を出して堂々と立ち会い、秘書も紹介しながら「下柳は夕方パリへ出張だから2時間以内」と時間制限まで設定する。表向きは協力的、実態は“調査の主導権を握る”動きです。
国税の臨場は「許可を取って、資料を押さえ、事実を積み上げる」真面目な仕事。でも相手が元国税だと、こちらの真面目さが逆に読まれてしまう。箱山は、その読みの上で“余裕”を演出してきます。
ただ、ザッコク側が動揺しないのがこのチームの強さ。笹野も優香も、体面を気にしていたらそもそもこの部署にいない、とばかりに前へ出る。箱山が突きたいのは法律ではなく人間関係ですが、ひとまずこの場では仕事として切り返していきます。ここで噛み合う“ワンチーム感”が、後で壊される伏線にも見えるから怖い。
借用書3億5千万円を発見――社債の利子で“養育費”を回すスキーム
臨場が始まると、笹野が早い段階で決定的な書類を掘り当てます。カナちぇるへの貸付け3億5千万円の借用書。これで下柳→カナちぇるの資金提供が、噂ではなく紙の証拠として形になります。
ザッコクはここから、金の流れを「社債」「利子」という“合法っぽい顔”に変換している可能性を突きます。
下柳は子どもを認知しておらず、だからこそ直接の支払いを避けたい。けれど金は渡している。そこで、社債の利子という形で金を迂回させ、帳簿上は必要経費として扱える形に寄せて税負担を薄める――という筋立てが見えてくる。
そしてこのスキームがいやらしいのは、関係者それぞれに“うまみ”がある点です。
下柳は体裁を守りながら金を出せる。カナちぇるは「愛人」ではなく「事業者」として金を受け取れる。大瀬良は仕組みを回すことで手数料を取れる。箱山は“設計者”として最終的に守られる立場に立つ。
一見すると派手な男女トラブルなのに、実態は徹底的に“損得勘定”で回っている。ここが作品の冷たさであり、リアルさでもありました。
さらにスケールがえげつない。借用書だけでも3億5千万円という額が出てきましたが、作中では「養育費(もしくはそれに準ずる金)」が1億規模で動いている可能性まで示されます。
数百万円の小技じゃなく、“人生を買える金額”で人間関係と会計処理が組み上がっている。だからこそ、正子が一歩でも退いた瞬間に、相手は平然と逃げ切る――そんな圧がありました。
箱山の言い分は「グレーゾーン」――勝てそうで勝てない空気を作る
箱山は涼しい顔で「脱税には当たらない」「グレーゾーンだ」と言い切ります。形式を整えた以上、国税は踏み込めないだろう――そういう“経験の圧”で、正子たちの一手を遅らせに来る。
“グレー”という言葉は便利です。白と黒の間に逃げ込めば、人は判断を先延ばしにしてくれる。法律の議論に見せかけて、実は心理戦。
箱山がやっているのは「違法か合法か」を語ることではなく、「国税が踏み込むのを躊躇する空気」を作ることなんだと、ここで分かります。
でも正子は、そこで引かない。引けない。目の前の下柳を落とすことが目的ではなく、この先にいる“もっと大きい敵”を見据えている顔でした。
“この場で勝つ”より、“この場で退かない”を選ぶ。その選択が、正子という主人公の怖さでもあります。
伝家の宝刀「行為計算否認」――下柳が崩れ、箱山が責任をすり替える
正子が切ったカードが「行為計算否認」。表面上は合法でも、実態が別目的なら認めない――取引の“中身”で裁くための強烈な手段です。箱山が「国税の伝家の宝刀」と口にし、現場の空気が変わる。
追い詰められた下柳は、怒りを爆発させつつも、最終的には耐えきれず口を割る。ここでザッコクは一応の“勝ち”を取ります。
ただし、勝ち方がきれいに終わらない。行為計算否認は相手の逃げ道を塞ぐ代わりに、こちらも引き返せなくなる手段です。
正子はこの一手で、下柳だけでなく“箱山が作ったグレーの流儀”そのものに踏み込んだ。だから、この勝利は次の戦争の開始線でもあります。
そして箱山は、ここで鮮やかに責任の線をずらします。「下柳の担当は自分ではなく大瀬良だ」と名前を出し、自分に届くはずだった矢をかわしていく。土壇場で逃げたというより、最初からこうなる逃げ道を用意していたような余裕――この“勝ち逃げ”が、正子の怒りをさらに煮詰めます。
さらに箱山はザッコクに対して「米田の真実の姿を知っても、その態度でいられるのかな」「ついていく人間が彼女でいいのか」と、チームの信頼を崩す種まで置いて去る。
勝ったのに胸がざらつくのは、相手が“法律”ではなく“人”を壊しに来ているからです。
箱山が残した“言葉の地雷”――勝ちを「不快」に変えるラストの一撃
行為計算否認が刺さって下柳が崩れた時点で、ザッコクは「調査」としては勝っています。書類も押さえたし、取引の実態も崩せた。いわゆる“税務ドラマ的な決着”はついた。
それでも胸が軽くならないのは、箱山がこの一件を「守る/負ける」で見ていないからです。箱山の狙いは、下柳の脱税を守ることではなく、正子を止め、ザッコクを割り、国税そのものを動けなくすること。だから最後にやるのが、証拠隠しでも恫喝でもなく“言葉”になります。
まず箱山は、責任の線を綺麗にずらします。「下柳の担当は自分ではなく大瀬良だ」と名前を出し、矢が自分に届く前に一歩引く。形式上も、仕事上も、“自分は最前線にいなかった”と言える余地を残す。元国税局員らしい逃げ方です。
そして次に来るのが、分断工作。
「米田の真実の姿を知っても、その態度でいられるのかな」
「ついていく人間が彼女でいいのか」
――ここで箱山が殴りに行っているのは、正子の正義ではなく“周りの信頼”です。正子は強い。でも強い人ほど、過去を語らない。語らないほど、第三者は「何か隠しているのでは」と疑える。箱山は、その“疑いの入口”だけを置いていく。
さらに嫌なのが、箱山が正子の過去に触れられる立場であること。作中では、正子が鷹羽錦之助を追い詰めた“あと一歩”を箱山が止めた因縁まで語られています。つまり箱山は、ただの悪徳税理士ではなく、正子のキャリアと人生の分岐点に一度入り込んだ人間。だからこそ、言葉が効く。
この場面は、事件の“結末”というより「戦い方の宣言」でした。
箱山が仕掛けてくるのは、次からは税務調査の範囲を超えた戦争――世論、政治圧力、そしてザッコク内部の信頼関係。第5話は、下柳を落として終わりではなく、“箱山という宿敵が本格的に動き出した”ところで終わったと見るのが自然だと思います。
“隠し子疑惑”で炎上する宗一郎――名前「月詠(ライト)」と灰島の不穏なやり取り
下柳案件が動くほど、宗一郎の周辺もきな臭さを増していきます。宗一郎は父の死に絡む公的な場にも立ちながら、同時に女性スキャンダルの火種も抱えたまま、対応に追われていく。
終盤、下柳とカナちぇるの間に授かった子どもが「宗一郎の隠し子ではないか」という形で週刊誌に載り、世間が一気に騒ぎ出します。しかも子どもの名前が「月詠(ライト)」で、宗一郎の高校時代のバンド名に“ライト”が入っていたことまで重なり、劇中のネットでは疑惑が加速する。
宗一郎の自宅にマスコミが押し寄せ、本人が動揺する中、秘書の灰島だけが妙に落ち着いて「任せてください」と告げます。
ところが灰島が一人になると、スマホには「依頼完了」のメッセージ。灰島は「口座に振り込んだ」と返信し、不敵に笑う――。
“火消し”の顔をしたまま、誰かに金を流し、盤面を動かしている。第5話のラストは、国税の現場と政治の現場が、同じ「金の論理」でつながってしまう恐ろしさを残して終わりました。
そして視聴者として一番気になるのは、「灰島は宗一郎を守っているのか、それとも宗一郎を“使っている”のか」。守っている人は、笑わない。笑ってしまう人は、たぶん守っていない。そんな余韻が残るラストです。
最後に、第5話で起きたことを“事実だけ”でざっくり並べると、こんな回でした。
- 鷹羽錦之助の死去をきっかけに、正子は父・田次との再会で過去の匂いを嗅ぐ
- お別れの会で目に入ったカナちぇるを追うと、宗一郎の愛人疑惑と不審な金の流れが浮上
- 下柳→大瀬良→カナちぇるの社債ルートが見え、臨場で借用書3億5千万円を押さえる
- 箱山が立ちはだかるも、正子は行為計算否認でスキームの実態に踏み込み、下柳が崩れる
- しかし箱山は大瀬良へ責任を寄せ、最後に“正子の過去”を匂わせてザッコクを揺さぶる
- ラストは宗一郎が隠し子疑惑で炎上、灰島が「依頼完了」のメッセージで不気味に締める
一件は片づいたようで、むしろ「ここからが本番」と言わんばかりの引きでした。
ドラマ「おコメの女」5話の伏線

第5話は単発の脱税事件を片づけたように見えて、実際は「鷹羽家」「箱山」「灰島」という大きな軸が同時に動いた回でした。
ここでは、作中で“確定した情報”と、次回以降に効いてきそうな“未回収の論点”を分けて整理します。
伏線整理をするときは、事件の謎だけでなく「誰が得をし、誰が損をする構造か」まで押さえておくと、次回の動きが読みやすくなります。
田次の過去と鷹羽家の接点:偶然ではなく“呼ばれた”再会?
【確定(描写)】
・お別れの会に、正子の父・田次が現れた。
・田次は過去に逮捕歴を匂わせる描写があり、かつて議員秘書だったことも示されている。
・その田次のもとへ、宗一郎の秘書である灰島が訪ねてきている。
【推測(読み)】
田次が“ただの弔問”で東京に出てきたとは考えにくいんですよね。むしろ、鷹羽家(あるいは灰島)に「呼ばれた/動かされた」線が濃い。
正子がザッコクを立ち上げた裏に鷹羽家絡みの目的がある…と匂わせてきた以上、父の過去もまた「税務」だけでは片づかない政治案件の伏線として効いてきそうです。
箱山哲郎が握る“過去の一件”:正子の「あと一歩」を止めたのは何だったのか
【確定(描写)】
・箱山は元国税局員で、現在は税理士としてグレーなスキームを扱っている。
・正子にとって箱山は「宿敵」と明言され、因縁がある。
・過去に正子が錦之助を追い詰め、箱山がそれを止めた、という因縁が語られている。
【推測(読み)】
ここで気になるのは「止めた理由」です。
箱山は今や悪徳税理士ですが、当時は国税側の人間だった。つまり“正子を止めた=錦之助を守った”とは限らず、
・政治の圧力
・組織防衛(国税側の不祥事の隠蔽)
・田次の過去(逮捕案件)とバーター
みたいな、もっと大きい取引の結果だった可能性があります。箱山がチーム崩しの言葉を投げてきたのも、「正子の過去を握っている」自信の裏返しに見えました。
灰島の「依頼完了」メッセージ:火消しではなく“火種の管理”?
【確定(描写)】
・灰島は「依頼完了」というメッセージを受け取り、「口座に振り込んだ」と返信している。
・灰島は宗一郎のスキャンダルを揉み消す役として動いている。
【推測(読み)】
灰島の怖さって、火を消すというより「火が燃え広がらない形に整える」動きなんですよね。
今回も“隠し子疑惑”が宗一郎に飛ぶことで、逆に本当の金の出どころ(箱山ルート)から世間の目が逸れる可能性がある。
依頼先が記者なのか、ネット工作なのか、あるいは口止め(示談)なのかはまだ断定できませんが、「振り込む」という行為そのものが次回の鍵になりそうです。
「月詠(ライト)」はミスリードか核心か:隠し子疑惑の成立条件
【確定(描写)】
・カナちぇると下柳の間に子どもがいる。
・週刊誌で、その子が宗一郎の隠し子として掲載される。
・子どもの名前は「月詠(ライト)」で、宗一郎の過去(バンド名)と結びつけられ疑惑が加速した。
【推測(読み)】
ここは“成立条件”で考えるのが分かりやすいです。
- 宗一郎が父親なら:宗一郎側が認知/金銭支援を避ける動機がある(政治生命)。
- 下柳が父親なら:今回のスキーム(養育費を迂回)と整合する。
第5話時点では「下柳が父親」という線が実務的には一番筋が通っています。ただ、宗一郎側が“わざと疑惑を被る”メリットもある(本丸の不正から目を逸らす)ので、ミスリードとして機能している可能性も残ります。
大瀬良要の立ち位置:スケープゴートか、箱山の後継者か
【確定(描写)】
・大瀬良はギャラ飲みに同席し、カナちぇるの動画にも映っていた。
・笹野の調査で、下柳の会社と大瀬良側の会社の間に社債取引があることが示されている。
・大瀬良は過去に箱山の事務所にいた。
・臨場の場面で箱山は「担当は大瀬良」と責任を寄せた。
【推測(読み)】
ここ、かなり重要です。箱山が一歩引けるのは「逃げ道」を作っているからで、その“逃げ道役”が大瀬良にも見える。
ただ逆に、大瀬良が“箱山の後継者”として現場を回している可能性もある。箱山が表に立たず、若い税理士にスキームを運用させる。国税が潰しても、また次が出てくる――そういう増殖構造の伏線にもなります。
行為計算否認の余波:ザッコクは“嫌われ役”を引き受けた
【確定(描写)】
・正子は行為計算否認を行使し、スキームの実態に踏み込んだ。
・箱山は「正子の真実の姿」など、チームを揺らす言葉を残している。
【推測(読み)】
行為計算否認って、視聴者的には痛快な一撃に見える一方で、相手に「国税が横暴だ」と言わせる材料にもなります。
箱山はそこを突いてくるはずで、次回以降は「脱税者を追い詰める」だけでなく、「国税を悪者にする世論操作/政治圧力」が絡んでくる可能性が高い。正子が一人で背負ってきた過去が、ここで“公にされる”危険も出てきました。
未回収メモ(優先度つき)
- 【大】田次が逮捕された過去と、鷹羽家との取引の有無(誰が田次を握っている?)
- 【大】灰島の「依頼完了」=誰への依頼で、何を消した(or作った)のか
- 【中】箱山が正子を止めた“あの時”の真相(錦之助案件のあと一歩)
- 【中】大瀬良は切り捨てられる側か、切り捨てる側か
- 【小】「月詠(ライト)」が偶然なのか、意図的に付けられた名前なのか
ドラマ「おコメの女」5話の感想&考察

第5話を見終わって残ったのは、爽快感というより「ぬか床みたいな湿り気のある重さ」でした。
ザッコクは一応“勝った”。でも勝利の余韻が軽くならないのは、相手が金だけじゃなく、人間の弱さと組織の亀裂を正確に突いてきたからだと思います。
“脱税摘発回”というより、“グレーが支配する回”だった
今回の事件、表面だけなら「インフルエンサーの脱税疑惑」です。でも実態は、グレーな金の流れを“合法の顔”に整える側が強い、という現実の提示でした。
下柳もカナちぇるも、欲望が分かりやすい。だから裁ける。ところが箱山は違う。制度を理解したうえで、裁かれない形に寄せてくる。
つまり視聴者が見せられたのは「悪いやつを捕まえる快感」ではなく、「悪いやつが“悪く見えないようにする技術”の怖さ」でした。
しかも、それを支えるのが“会計”という一見中立な言語だから余計に怖い。数字は客観的に見える分、そこに嘘が混ざっても人は騙されやすいんですよね。だからこそ国税が必要になる――という、作品の背骨が第5話で強くなった気がします。
“ログ戦”を映像にするうまさ:笹野の調査が一番スリリング
個人的に、第5話で一番スリリングだったのは派手な対決より、笹野が黙々と辿った「社債ルート」のパートでした。
税務調査って、突き詰めれば資料・登記・取引の積み上げです。地味なはずなのに、この作品はそこを“追跡劇”として見せてくる。だから視聴者も、正子たちと一緒に「金がどこから出て、どこへ消えたか」を追えるんですよね。
しかも、ログがつながった瞬間に出てくるのが箱山という宿敵。
「数字が嘘をつけない」→「だから次に人間が嘘をつく」って流れが、ドラマとしてすごく綺麗でした。派手なアクションがなくても心拍数が上がる回、こういうのは好きです。
箱山の怖さ=動機/機会/後処理が全部そろっている
箱山は、悪徳税理士としての“技術”だけじゃなく、戦い方がいやらしい。
- 【動機】正子(とザッコク)を潰したい。過去の因縁を匂わせ、感情を揺さぶれる。
- 【機会】元国税局員として、臨場の手順も心理も知っている。委任状、時間制限、挑発…全部が手慣れている。
- 【後処理】行為計算否認で崩れるのを見越して、責任を大瀬良へ逃がすルートを用意している。
この「全部そろってる感」が、ただの悪役より何倍も厄介。しかも最後にやるのが“法律論争”ではなく“チーム分断”なのが最悪です。
正子個人への攻撃なら耐えられても、仲間の信頼が割れた瞬間に現場は壊れる。箱山はそこを狙っている。ここから先、敵は脱税スキームだけじゃなく「人の感情」そのものになっていきそうです。
正子が「行為計算否認」を選んだ意味:正しさのコストを払う覚悟
行為計算否認って、見ている側は「よく言った!」とスカッとしがちです。でも実際は、相手の人生をひっくり返す決断を国税が引き受ける行為でもある。
それを正子が躊躇なく切ったのは、下柳の件を超えて「鷹羽家(=宗一郎)という本丸」に向けて、後退できない覚悟を固めたからに見えます。正子がザッコクを立ち上げた理由自体が、鷹羽家絡みの“目的”に繋がっている匂わせもありました。
そして個人的に刺さったのが、正子がおにぎりを握って腹ごしらえしてから臨場に入る描写。あれって余裕じゃなくて、正しさを行使するために自分の身体を現実に繋ぎ止める儀式に見えました。
正義って、口で言うのは簡単だけど、実行する側はいつも胃が痛い。そこをちゃんと見せるから、このドラマは“痛快”で終わらない。
カナちぇると下柳:いちばん救われないのは「選べない子ども」
今回の案件で、いちばん嫌な気持ちになったのは、養育費の話が「税金がかかる/経費になる」みたいな会計処理に落ちていくところでした。
下柳は子どもを認知しない。カナちぇるはその関係すらコンテンツ化しかねない。大人が金と体裁と欲望で殴り合うほど、子どもは“事情”を背負わされるだけです。
子どもの名前が「月詠(ライト)」だと明かされた時点で、もう人生が“物語の道具”になりかけているのがしんどい。
ここは視聴者として、誰かが罰を受けてスカッとするより先に、「この子がどうやって生きるのか」に感情が持っていかれました。脱税ドラマなのに、倫理ドラマとして刺してくるのが上手い。
宗一郎の炎上と灰島:主戦場が「国税」から「政治と世論」へ移る
終盤の“隠し子疑惑”は、ストーリー上のフックであると同時に、今後の戦場変更の合図だと思いました。
税務調査って、基本は資料と数字の戦い。でも相手が政治家になると、そこに「世論」「メディア」「秘書の工作」が乗ってくる。灰島の“依頼完了→口座に振り込み”は、その宣言に見えます。
しかも灰島は、箱山から金を受け取って不倫相手へ渡し、宗一郎への接触を止める動きもしていました。ここがもう、国税の管轄からはみ出る“政治の闇”の匂い。
ここから先は、箱山のような“制度の継ぎ目”を知る人間と、灰島のような“世論の流れ”を作る人間が組めば最悪です。国税が正しいことをしても、「正しい側」が悪者にされる可能性がある。第5話は、その嫌な現実をかなり早い段階で提示してきました。
次回へ向けて:ザッコクは“ワンチーム”でいられるか
第5話で、ザッコクは確かに噛み合っていました。潜入、聞き込み、資料、臨場、最終判断。各自の得意技が全部つながった。
ただし箱山は、その“噛み合い”を内側から壊す言葉を落としていった。次回以降に怖いのは、脱税スキームの巧妙さではなく、正子が抱える過去が仲間の間で“共有”になるのか、“疑い”になるのか、です。
正子が強いほど、孤独も濃くなる。孤独が濃いほど、敵はそこを突ける。
第5話は「宿敵登場回」でありながら、同時に「チームの試験紙回」でもありました。ここからどう崩され、どう踏ん張るのか。後半戦の見どころが一気に揃った回だったと思います。
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