シーズン3第6話は、第5話で提示された「死は戻せるのか?」という問いに、容赦ない現実を突きつける解決編です。
魯人老人ホームで語られていた奇跡は、信じたい人々の欲望と金の論理によって作られたものだったのか。それとも、本当に誰かを救える力だったのか。
事件は解決しても、死は取り消せない。TRICKらしい苦さだけが、静かに残る一話です。
トリック(シーズン3)6話のあらすじ&ネタバレ

シーズン3第6話は、第5話から続く「絶対に死なない老人ホーム」編の“解決編”。
噂の施設「魯人老人ホーム」で起きた“蘇生”と“死”の矛盾が、一気に現実の顔をむき出しにしてきます。タイトルの通りオカルトっぽいのに、最後に残るのは人間の欲と弱さ――それが、この回のいちばん恐いところです。
前回(第5話)までの整理|「死なない」は奇跡か、商売か
依頼人は京國屋書店の社長夫人・京明日香。家族の資産を握る“老人”を「絶対に死なない」と噂される老人ホームへ入れたいが、真偽を確かめてほしい――という依頼で、成功報酬はまさかの「上田教授フェア」を大々的に開催してくれること。上田の心が一瞬で動くのも納得です。
現地で出迎えるのは、副理事長・千田、理事長・万田、そして“先生”と呼ばれる専任カウンセラー赤地洋司。
赤地は「戻れ、戻れ、元に戻れ」と唱えて、壊れた物や、時に死者さえも生き返らせる――と信じられている男。前回の終盤では、千田が猟銃を絡めた“蘇生実演”を強行し、騒動の末に千田が病院で死亡。ここから第6話は始まります。
千田の死で空気が変わる。「人殺し!」と詰め寄る老人たち
第6話冒頭、前回“狂言自殺”だと思われていた千田が、搬送先の病院で本当に死亡した事実が突きつけられます。赤地の蘇生を止めた(止めさせた)奈緒子と矢部に、老人たちは「人殺し!」と詰め寄る。
ここがまずイヤなんですよね。
奈緒子たちは「救急車を呼ぶ」「死体にむやみに触らせない」という、常識として当たり前の行動をしただけ。それなのに、周囲の“信仰の論理”によって加害者にされる。
TRICKの怖さは、怪奇現象そのものよりも、“信じてしまった集団”が生む暴力にあります。この老人ホームはその空気が濃い。なぜなら、ここで働いているのは看護でも介護でもなく、まず“奇跡の物語”を守る仕事だから。
奈緒子は反論します。「本当に蘇らせる力があるなら、今からでも千田を生き返らせられるはず」。正論が、まるで挑発のように響いてしまうのも、すでに空気が狂っている証拠です。
上田の調査で見えてくる矛盾|5年前の“転機”と、入居者の偏り
上田は上田で、いつも通り「学者」としての立ち回りを始めます。
調べていくと、5年前に倒産寸前だった「魯人」の経営に加わったのが赤地で、そこから“絶対死なない老人ホーム”の噂が立ち始めたという。さらに、巨額の入会金にもかかわらず希望者が殺到している。
ここで重要なのが、「なぜか元気な老人は断られ、明日も知れない老人ばかり入所している」という違和感です。
普通に考えて、永遠に生きたいなら、まだ元気なうちに入るはず。なのに、ここにいるのは“いまにも死にそうな人”ばかり。この矛盾は、後でとんでもない形で回収されます。
奈緒子の嗅覚が働く|千田は“殺された”のでは?
奈緒子は現場の空気を肌で感じるタイプなので、老人たちの反応や、施設側の口ぶりから「これは信仰ではなく、仕事として作られた匂いがする」と気づいていく。さらに千田には借金があったことも浮かび、奈緒子は「千田は自殺じゃない。利用されて、殺されたんじゃないか」と疑いを強めます。
ここでTRICKらしいのは、奈緒子の推理が“事件の心臓”に触れるほど、逆に彼女が孤立していくこと。
「奇跡があるはず」という空気の中では、疑う人間こそ邪魔。しかも奈緒子は、ただ疑うだけじゃなく、最後まで踏み込んで“壊しにいく”から、嫌われる。
赤地の宣言|「とっておきの力」を見せると言い出す
追及がしつこい奈緒子たちに対し、赤地は「とっておきの力を披露する」と宣言します。
彼の力は本物なのか?それともトリックなのか?――視聴者の期待を煽るように、舞台が整えられていきます。
この流れ、上田の立場としては“公開実験”の形になり、奈緒子の立場としては“現場検証”になる。二人が同じ場所に立っているのに、見ているものが違う。TRICKの基本フォーマットが、ここでも綺麗に動きます。
⑤ おてもやん像の破壊ショー|「納得いくまで壊せ」と煽られる
赤地が用意したのは、巨大なおてもやんの坐像(像)。
「納得いくまで壊せ」と奈緒子と上田にハンマーを渡し、徹底的に破壊させます。さらに赤地自身もハンマーを振るい、像は粉々に。ここまで念入りだと、「すり替え」や「隠し持ち」は難しそうに見える。
そして像を4枚のきらびやかな板で囲い、赤地は例の呪文を唱える――「戻〜れ!」。板が外されると、そこには元通りの像。
視聴者も「え、どうやった?」と一瞬思ってしまう、TRICKが得意な“本物っぽさ”のピークです。
ここでのミソは、
「箱に入れる」「板で囲う」など、“手品の型”の上に奇跡を乗せていること。
だから、上田的には「手品では?」という疑いが残るけど、老人たち的には「先生は本物!」へ一直線に転がる。信じたい側に転がる装置が、演出としてとても強い。
決定的な違和感|復元されたはずなのに「欠片」が残る
ところが、奈緒子が“上田のズボンについていた欠片”に気づく瞬間から、風向きが変わります。
復元されているのに欠片が残るのはおかしい。つまり、像は「元に戻った」のではなく「別の像に置き換わった」可能性が高い。
奈緒子はその欠片を口に入れて確かめる。すると――食べられる。
像そのものが“お菓子”でできていて、砕かれた欠片は食べて処理できる。赤地がハンマーでさらに砕いたのは、証拠隠滅が“食べやすくなる”からだった、というブラックな真相。
ここ、笑えるようで笑えないんですよ。
「食べられるおてもやん像」って発想はバカバカしいのに、やっていることは証拠隠滅。
TRICKは、こういうギャグで笑わせた直後に倫理の底を見せるやり方が本当に上手い。
面会時間が短すぎる理由|午後2時〜4時の“たった2時間”
奈緒子と上田は、面会時間が午後2時〜4時の“たった2時間”しかないことにも注目します。
老人ホームで面会が短いのは珍しくない、みたいな顔もできるけど、ここでは短すぎる。しかも、その短さが「都合がいい」。
この時点で、奈緒子の頭の中に一つの可能性が浮かぶ。
「面会時間だけ“老人が揃う”仕組みになっているのでは?」
つまり、ここにいる老人たちは、生活者ではなく“出演者”かもしれない。
伏線の核心|古川の「ふるさと」が“替え玉”を暴く
決定打は、古川という老人。
古川は童謡「ふるさと」が大好きで、施設内でもよく口ずさむ人物でした。ここが「大きな伏線」として回収されます。
上田は家族から古川の写真を入手するのですが、写真の背景にある額縁に書かれた歌詞が、なぜか「兎食いし 彼の山…」になっている。
一方で施設の古川は、普通に「兎追いし」と歌う。
つまり、“本物の古川”は間違った記憶で歌詞を覚えていて、施設にいる古川は“正しい歌詞を知っている別人”だった、というわけです。
この回の好きなところは、超能力とか猟銃とか大仕掛けより、最後に効いてくるのが「歌詞」なところ。
“生活のクセ”は演技で埋めにくい。
だからこそ、奈緒子の種明かしが気持ちいい――のに、気持ちよさの後で胸がざらつく。ここがTRICK。
種明かし|魯人老人ホームの正体は「相続税対策の舞台装置」
奈緒子と上田が辿り着く真相は、老人ホーム丸ごとが“作り物”だったというもの。
入居者の老人たちは面会時間にだけ集まるアルバイト(出演者)で、契約している家はみな資産家。家族の死を隠して相続税を逃れるために、「死なない老人ホーム」という物語が必要だった。
つまりここで売られていたのは、永遠の命じゃなくて、
「死を先延ばしに“見せる”サービス」。
この仕組みが分かると、全部の矛盾が繋がります。
- 元気な老人が断られる → “死にそうな老人”の方が、死を隠す必要が高く、ビジネスになりやすい
- 面会時間が短い → “出演者(替え玉老人)”を集める時間だけでいい
- 「死なない」噂が必要 → 死を隠しても不自然にならないように、先に物語で囲う
そして赤地の奇跡は、その舞台装置を成立させるための“看板”だった。
千田はなぜ死んだのか|猟銃のカラクリと、理事長の思惑
では、千田の死は何だったのか。ここにもTRICKらしい“現実の汚さ”が絡みます。
猟銃の実演では、最初に撃たれた古川は実は傷ついていなかった(空砲だった)。ところが二発目、千田が自分を撃った時は実弾が入っていて、千田だけが本当に死んでしまった。
つまり「蘇生が間に合わなかった」のではなく、最初から千田は“死ぬように仕組まれていた”可能性が濃い。
そして、その線で浮上するのが理事長・万田。
金に汚く、借金も抱え、口も軽い千田は“ビジネス”にとって危険な存在になりつつあった。
だったら「自殺に見せかけて消す」のがいちばん手っ取り早い。
TRICKはここで、オカルトの仮面を剥がして、資本と管理の論理に回収してくるから、後味が悪い。
解決後に残る地獄|赤地の父・茂蔵が求めた「本物」
事件としての“種明かし”が終わっても、地獄が残ります。
赤地の父・茂蔵は、息子の力を本気で信じていた。海難事故のとき、息子に助けられたと思っていた。だが実際は、死亡保険金を受け取った赤地が、父の記憶喪失を利用して“奇跡の物語”を作っただけ――父の信じた人生の核が、ここで崩れます。
茂蔵はその事実を受け入れられず、自ら猟銃で胸を撃ち抜きます。
「生き返らせてもらえば、息子の力は本物だ。息子が自分を殺そうとした過去も“なかったこと”にできる」
――そんな、痛すぎる願い。
しかし赤地は「無理ですよ。僕にはそんな力はない。インチキですから」と言い切ってしまう。
ここでの赤地の目が、温度を失っているのが恐い。
父の死を前にして、息子は泣かない。救わない。救えない。
TRICKが“オチ”として差し出すのは、事件解決の爽快感じゃなく、「奇跡がない世界で、それでも人は何を信じて生きるのか」という問いです。
トリック(シーズン3)6話の伏線

第6話は「種明かしの気持ちよさ」と「後味の悪さ」が強烈な回ですが、面白いのは“伏線の張り方”がかなり丁寧なことです。派手な超常現象に目を奪われているうちに、ちゃんと現実の入口(お金・運用・人員・時間)へ誘導されていました。
伏線1|冒頭から漂う「相続税対策」の気配
「絶対死なない老人ホーム」という噂自体が、どこか“個人の願い”というより“都合のいい商売”に見える。冒頭で相続税対策が暗示されているのも、この回の方向性を先に示す伏線になっています。
伏線2|入居一時金10億円=「奇跡の値札」
入居一時金が10億円という時点で、「命を買う」というより「何か別のもの(守りたい財産)を買う」匂いがする。
“信仰”ではなく“契約”の値段になっているのが、後で効いてきます。
伏線3|5年前の経営危機と、赤地の“加入”という転機
倒産寸前だった施設が、赤地が加わってから噂が立ち、希望者が殺到――この経緯は、超能力の誕生ではなく「ビジネスモデルが完成した」流れに見える。後編で“施設丸ごと作り物”が明かされるための下地です。
伏線4|「元気な老人は断られる」最大の矛盾
永遠の命を求めるなら元気なうちに入るはず。
なのに断られている。
ここは視聴者に「何か別の目的がある」と気づかせる、最重要の違和感でした。
伏線5|面会時間が午後2時〜4時の2時間しかない
この短さは、最初は「厳しい施設だな」くらいで流せる。でも後で「面会時間にだけ老人が集まる」=出演者が集合する時間だった、と回収される。時間の情報を、ちゃんと事件のカギにしているのが上手いです。
伏線6|おてもやん像の“復元”に残った欠片
復元されているのに欠片が残る。
この一点が「入れ替え」を強く示す伏線で、さらに欠片が“食べられる”ことで、証拠隠滅の方法まで一本で繋がります。ギャグの形をした推理の導線。
伏線7|古川の「ふるさと」=生活のクセは演技では埋めにくい
古川が「ふるさと好き」と強調されていたのは、単なるキャラ付けじゃない。
“間違った歌詞で覚えている”という生活のクセが、替え玉を暴く決定打になる。派手な超能力より、こういう小さなズレが一番強い。
伏線8|猟銃の2発=空砲と実弾
前編の時点では「蘇生が間に合わなかった」ように見える出来事が、後で「最初から弾が違った」と分かる。
“事件の説明”を超常現象に預けず、物理(弾)に回収するのがTRICKの作法です。
伏線9|赤地の過去(父との関係)が、最後の“地獄”に直結
赤地の奇跡がビジネスの看板だったとしても、父が信じた「息子の力」だけは、家族の中で本物になってしまっていた。この縦糸が、事件解決後の悲劇を呼ぶ伏線になっています。
トリック(シーズン3)6話の感想&考察

「解決編」なのに、見終わったあとに残るのはスカッとした爽快感じゃなく、胃の奥の重さ。
第6話はTRICKの中でも“人間の暗さ”が濃い回で、だからこそ記憶に残ります。ここからは、ネタバレ込みで刺さったポイントを掘ります。
「死なない」を売る残酷さ|奇跡じゃなく、死の先送りサービス
この回の発明は、「老人ホームが偽物」というトリックだけじゃない。もっと恐いのは、あの施設が売っていたものが“命”ではなく、「死をなかったことにする時間」だった点です。
人は、身内の死を受け入れるのに時間が要る。
でも、相続税や資産管理の現実は待ってくれない。
そこで「死なない物語」を買う。――この構造が、オカルトよりもよほど現実的で、背筋が冷えました。
奈緒子の役回りがつらい|正しさは人を救わないことがある
奈緒子は“嘘を暴く側”に立つ主人公です。
でもこの回では、嘘を暴くほどに「人殺し」と責められ、最後は父の死を止められない。
TRICKって、謎解きのヒーロー物語に見せながら、時々こうして主人公を“正しさの地獄”に落とす。
嘘を暴けば救われる――ではない。
むしろ、嘘の方が人を生かしていた、という場面すらある。そういう回でした。
上田の「学者」らしさが効く|現場が荒れても、因果で回収する
上田は上田で、金と名誉に弱いし、口も軽い。
だけど、この回で役に立つのは、やっぱり上田の「因果関係への執着」です。
- 5年前の経営危機→赤地加入→噂の発生
- 元気な老人が断られる矛盾
- 面会時間2時間の運用
こういう“運用の穴”を積み上げて、超常現象じゃなくシステムの犯罪として暴く。TRICKの「オカルト×科学」の骨格が、ここで気持ちよく見えました。
「食べられるおてもやん像」で笑わせてから刺す、演出のえげつなさ
正直、像の欠片を奈緒子が口に入れる瞬間は笑ってしまいました。
でも、笑った直後に「これ、証拠隠滅じゃん」と気づいて背中が冷える。
笑いを“緩衝材”にして、罪の感触をダイレクトに体へ入れてくる。TRICKの演出って、こういう残酷さがあるんですよね。
「ふるさと」の歌詞が決定打になる美しさ|人間の“癖”は偽装できない
巨大装置でもなく、科学トリックでもなく、最後に効いてくるのが童謡。
そして「兎追いし」か「兎食いし」か、という小さな違い。
この回の推理は、派手な奇跡を全部“人間の生活”へ引きずり下ろす。
どんなに替え玉を用意しても、暮らしが作った癖は残る。
だから、視聴者も納得できるし、後味も悪い。――だって、暴かれたのはトリックだけじゃなく「生活の重み」だから。
赤地父子のラストが地獄すぎる|「本物であってほしい」願いの暴走
この回がトラウマと呼ばれがちなのは、事件解決後に“本当の死”が来るからです。
父・茂蔵は、息子の力が本物だと信じることで自分の人生を保っていた。
それが崩れた瞬間に、自分を撃つ。
「生き返らせろ」と言う父の願いって、究極の愛にも見えるし、究極の自己否定にも見える。
そして息子は救わない。救えない。
ここがTRICKの容赦のなさで、同時に誠実さでもあると思いました。
“嘘を信じれば救われる”世界は描かない。
嘘を暴いた先の空白も、ちゃんと見せる。
第6話が残すテーマ|科学vsオカルトではなく「人間vs弱さ」
最終的に、この回が描いたのは「霊能力が本物か偽物か」より、“人は弱いとき、奇跡を必要としてしまう”という現実でした。
- 家族が死ぬのが怖い
- 財産を失うのが怖い
- 過去(息子が父を殺そうとした事実)を認めるのが怖い
だから“死なない物語”が成立する。
そして、その物語を維持するために、誰かが傷つく。
TRICKは、いつも最後に「タネは分かった。でも救われない」を置いて去っていく。第6話は、その代表格でした。
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