第3話「美人姉妹のアリバイ」は、犯人を追い詰める物語というより、“疑われた人を救うための推理”が描かれた回でした。
夢遊病の可能性、自白めいた発言、血のついたパジャマ――状況だけを見れば、妹が犯人に見えてしまう。それでも察時美幸は違和感を捨てきれず、時計店主・美谷時乃に“アリバイ探し”を依頼します。
時乃が手がかりにしたのは、夢の内容と身体感覚、そして時間のズレ。
曖昧な「夢」が、現実の出来事をなぞっていたと気づいた瞬間、事件は一気に裏返ります。
この第3話は、「アリバイを崩す」だけでなく、「時間を正しく戻す」ことで真実に辿り着く、シリーズ屈指のロジカル回でした。
※この記事は第3話「美人姉妹のアリバイ」の結末まで触れます。未視聴の方はご注意ください。
ドラマ「アリバイ崩し承ります」3話のあらすじ&ネタバレ

プロローグ:察時、家庭の火種と「アリバイの線引き」
第3話は事件より先に、察時美幸(安田顕)の“人間くささ”をしっかり見せてくる。妻からの電話に出られなかっただけで浮気を疑われ、本人は必死に疑惑を晴らそうとする。そこで彼がすがったのが、美谷時計店の店主・美谷時乃(浜辺美波)だった。
「寝ていた」ことを証明してほしい――察時の頼みは一見かわいらしいが、時乃はここで冷静に切り返す。「アリバイ探しは承っていない」。この線引きが、のちの“アリバイ探し”という展開の前振りになっているのが巧い。
事件発生:河谷敏子の遺体と、早すぎる「解決ムード」
そこへ捜査一課から連絡。被害者はピアノ講師・河谷敏子。自宅(ピアノ教室)で遺体となって発見され、第一発見者はレッスンで訪れた生徒だった――という、いかにも“日常の中で起きる殺人”の型だ。
現場の状況的にも「ここで殺された」と考えるのが自然で、捜査は関係者の洗い出しへ。ここまでのテンポが速いぶん、捜査本部側に“早く片付けたい空気”が漂い始めるのが不穏でもある。
芝田和之の証言:死亡推定時刻が「11時20分以降」に狭まる
事件の翌日、マッサージ店の店長・芝田和之(木村了)が捜査一課を訪ねてくる。芝田の証言は強烈だ。
事件当日の朝、敏子は自分の店でマッサージを受けていた――しかも時間帯が「10時〜11時」。さらに敏子がホステスの妹・河谷純子(橋本マナミ)と揉めていたことまで口にする。
敏子が自転車で来店していた、という話も加わり、敏子が店を出た後に自宅へ戻る移動時間まで含めて考えると、死亡推定時刻は「11時20分〜正午」あたりまで絞られていく。
ここで捜査が一気に“妹が怪しい”へ傾いていくのは、情報としては当然なんだけど、芝田の証言があまりに都合よく捜査を誘導している感じもある。
容疑者・河谷純子:生活リズム、20時間睡眠、そして衝撃告白
察時と渡海雄馬(成田凌)は純子のもとへ。純子は夜の仕事ゆえ生活が昼夜逆転。朝方に寝て昼頃起きる。
問題は“死亡推定時刻の11時台”に何をしていたかだが、純子は「寝ていた」と答える。しかもその日は、夜中0時から20時間近く眠っていたという。
ここで渡海が疑いの目を強め、純子を問い詰める流れが生まれる。そして純子は、夢遊病に悩まされていることを明かし、「姉を殺したのは自分かもしれない」と口にする。起きたらパジャマの袖に血がついていて怖くなり捨てた――この“自己申告”は、視聴者にとっても強烈な引きだ。
捜査会議:「自白」に飛びつく組織と、察時の違和感
捜査本部は「これは自供だ」と一気に純子犯人説へ寄る。事件ものあるあるだけど、組織は“分かりやすい結論”に吸い寄せられがちだ。
一方で察時だけは納得しない。理由は二つ。ひとつは純子の供述が“怖さ”としては成立しても、“具体的な犯行の筋”に落ちていないこと。
もうひとつは、単純に察時が純子に心奪われていること――艶っぽさに骨抜き、という公式の紹介通りのムーブで、ここは笑っていい場面でもある。
時乃への依頼:「アリバイ崩し」ではなく「アリバイ探し」
この回の核心はここ。察時が時乃に頼むのは、容疑者のアリバイを“崩す”ことではない。純子のアリバイを“探す”こと。つまり、犯人と決めつけられた人間の無実を「時間の証明」で支える作業だ。
時乃は最初、祖父から教わっていない領域だとして乗り気ではない。だが、はっきり否定できないがゆえに疑われ続ける純子の立場と、捜査方針に背いてまで粘る察時の姿を見て、腹を括る。
ここ、時乃の“探偵としての倫理”が一段上がる瞬間でもある。
つまずき:ワイン鑑定と、察時の“独走”
察時は独自に動き、純子が寝る前に飲んだワインを鑑定に回す。だが、睡眠薬は検出されない。しかも独走がバレて捜査から外される。
ここで面白いのは、「睡眠薬が出ない=睡眠薬ではない」と短絡しないこと。むしろ“なぜ20時間なのか”という疑問が残り続ける。その違和感が、時乃の論理に繋がっていく。
現場再検証:マッサージ店の「交代」と「眠りの深さ」
時乃と察時は芝田のマッサージ店を洗い直す。すると、芝田が最初から最後まで施術していたわけではなく、途中で新人が20分ほど交代していたことが分かる。
さらにその間、敏子(とされる客)は起きることなくぐっすり眠っていた。芝田自身は11時から別の客の対応に入っていた――つまり芝田には「11時以降」強固なアリバイがある構図になる。
時乃は自ら店に行き、施術を受けてまで“体験としての検証”をする。ここはドラマとしての説得力がある。推理の材料を机上で終わらせず、身体感覚に落としていくからだ。
夢の断片が「証拠の地図」になる
純子が語った夢――空を飛ぶ、体中を触られる、暗い洞窟に閉じ込められる。普通なら“夢遊病の怖さ”の演出で終わりそうなところを、時乃は逆に「夢の内容は現実の体験の変換では?」と読む。
ここが第3話の気持ちいいところで、夢という曖昧なものを、論理のレールに乗せていく。
純子が体験した“感覚”を時系列に並べ替えると、ある絵が浮かび上がる――「運ばれた」「化粧をされた」「マッサージをされた」「狭い場所に隠された」。
真相:二段構えの計画、替え玉トリック、そして芝田の狙い
結論から言うと、真犯人は芝田和之。狙いは二段構えだった。
第一段階は、純子を長時間眠らせることでアリバイを消し、疑いが向く土台を作る。第二段階は、眠っている純子を“敏子の替え玉”にして敏子が11時20分頃まで生きていたように見せ、11時以降に強いアリバイを持つ芝田を容疑者圏外へ追い出す。
芝田はまず合鍵を使って純子の家に侵入し、睡眠薬入りのワインにすり替える。純子はそれを飲んで深い眠りへ。芝田は眠ったままの純子を運び出し、敏子に似せるため化粧やカツラで“外見の偽装”を施す。
その上で芝田は敏子をピアノ教室で殺害し、現場で殺された印象が強く残るように状況を作る(頭部の損傷や首を絞める痕跡など、複数の痕跡を積むことで“ここで殺した”を補強するわけだ)。
そして芝田は、敏子に化けた純子を開店前の店に運び込み、マッサージをしていた“体”を作る。新人が来たら交代し、また戻ってきて見送った“体”を作り、最後は純子をマッサージベッドの下に隠す。芝田はその後、別の客を接客して“鉄のアリバイ”を完成させる。
極めつけに、血のついたパジャマを純子に着せて自宅へ戻し、純子自身に「自分がやったのかも」と思わせる心理誘導まで仕込む。夢の内容が現実の体験と一致するのも、すべてこの移送と隠匿の結果だ。
動機:痴情のもつれが、異様に「凝った工作」を生む
芝田と敏子は不倫関係にあり、敏子から「妻と別れて結婚して」と迫られていた――というのが芝田の動機として語られる。妻殺しの計画を匂わせて敏子を共犯に引き込みつつ、最終的には敏子を消すために利用した、という構造がえげつない。
そして序盤の「察時が妻と揉めている」描写が、痴情のもつれ=動機のモチーフを先に視聴者へ刷り込む形になっているのも、構成として上手い。
決め手:ベッド下の指紋で“アリバイ”が崩れる
推理だけなら「憶測」で逃げ切れる。だからこそ最後に必要なのは物証だ。
鑑識がマッサージベッドの下を調べ、そこで検出された指紋が純子のものだった――これが“替え玉が店にいた”証明になり、芝田の計画は崩壊する。
「アリバイ探し」から始まったはずが、最終的には真犯人の“アリバイ崩し”に着地する。タイトル回収の気持ちよさがここにある。
ドラマ「アリバイ崩し承ります」3話の伏線

第3話は、ミステリーとしての伏線がかなり“フェア”に配置されている回だと思う。重要なのは、伏線が「情報」として置かれているだけじゃなく、視聴者の思考をズラす“ミスリード”としても働いている点。
伏線1:察時の「妻に浮気を疑われた」導入
事件の前に家庭トラブルを入れることで、痴情のもつれ(不倫・結婚・嫉妬)が殺人の動機になり得る空気を先に作っている。第3話の動機が“関係の清算”である以上、この導入は実はかなり効いている。
伏線2:芝田の証言が“親切すぎる”
芝田は「敏子が朝に店へ来た」「妹と揉めていた」と捜査が欲しい情報を一気に渡す。これによって捜査は一瞬で妹へ向くが、逆に言えば“犯人が捜査を誘導している”可能性も同時に立ち上がる。
伏線3:死亡推定時刻が11時20分以降に絞られること
この絞り込みが強烈なミスリードになる。視聴者は「じゃあ10〜11時に店にいた敏子が、帰宅後に殺されたのか」と自然に思う。でも真相は、ここが“誤認させたい時刻”だった。つまり伏線というより、犯人が仕込んだ“捜査攪乱の装置”だ。
伏線4:純子の「20時間睡眠」という異常値
単にアリバイを消すだけなら、ここまで長時間にする必要は薄い。長すぎる睡眠は「替え玉にするために起きてほしくない」という第二目的を暗示している。
伏線5:純子の夢の内容(飛ぶ/触られる/洞窟)
夢遊病の怖さとして提示しつつ、実は“現実の出来事の暗号”。飛ぶ=運搬、触られる=化粧や施術、洞窟=ベッド下への隠匿。ここまで綺麗に対応する伏線は、ドラマとしても映える。
伏線6:マッサージ店での「新人への交代(20分)」
芝田がずっと施術していない、という事実が、「芝田が“見られていない時間”を作れる」伏線になる。犯人の計画に必要なのは、目撃の断絶だ。
伏線7:芝田が11時以降に別の客を担当している
芝田の鉄壁のアリバイは、視聴者に「じゃあ芝田は犯人じゃない」を思わせるための壁。でも最終的にはこのアリバイこそが“作られたもの”だと反転する。
伏線8:合鍵と姉妹の住まいの関係
純子は「合鍵を渡していない」と言うが、姉・敏子が出入りできるのは自然。犯人が純子宅に侵入できる導線は、姉妹関係の中に埋まっている。
伏線9:パジャマの血と「捨てた」という行動
視聴者の意識を“証拠隠滅=犯人っぽい”へ誘導する王道のミスリード。真相では、血の付着自体が犯人による演出で、捨てたのは恐怖ゆえ――という反転が効く。
伏線10:渡海(ジュニア)の「察時への疑念」
事件が“サクッと解決”していくことに周囲が違和感を持ち始める描写は、シリーズ的な火種としても面白い。察時の名推理の裏に時乃がいるのでは?という疑いは、今後の関係性を揺らす芽になる。
ドラマ「アリバイ崩し承ります」3話の感想&考察

第3話は、シリーズのフォーマットを一度ひっくり返した回だと思う。「アリバイ崩し」を売りにしてきた作品が、タイトルの逆方向――“アリバイ探し”――に踏み出す。これだけで脚本の勝ちだ。
「崩す」から「探す」へ:ミステリーの倫理が一段上がる
アリバイ崩しは、言ってしまえば“疑う”行為の技術だ。でもアリバイ探しは“信じるための証明”になる。第3話はここを真正面から描いた。
純子は自分でも犯人かもしれないと怯えている。社会的にも「自白した人間」になりかけている。こういう状況って、現実でも“空気で決まる”危うさがある。だから時乃が「祖父に教わってないけど、やる」と踏み出す場面が刺さる。探偵役が推理力だけでなく、倫理で物語を動かす回だった。
察時の“弱さ”が、結果的に正義になる皮肉
察時が純子を信じる理由、半分は「美人に弱い」なんだと思う。公式のニュースでも“骨抜き”状態が語られているし、作中でもそれがギャグとして描かれる。
ただ、ここが面白いところで――本来“バイアス”は捜査を歪める危険があるのに、第3話ではそのバイアスが「早期決着」という組織のバイアスに対抗して、無実を救う方向へ働く。つまり、察時は正しいから信じたんじゃなく、揺らいだから信じた。
ミステリーって、探偵が超然としているほどカッコいい。でもこの作品は、探偵役(というか管理官)が情けなく揺れて、それでも結果として正しい場所に着地する。その人間臭さが魅力だと改めて感じた。
トリックの“職業性”が光る:マッサージ店だから成立する
第3話のトリックは「眠っている人間を替え玉にする」という荒技。でも、それを成立させる舞台がマッサージ店というのが巧い。
施術=触れても不自然じゃない。眠っていても「気持ちよくて寝ちゃったのかな」で通る。さらにベッドという“隠す場所”がある。職業のディテールが、トリックの説得力を底上げしている。
それでも突っ込みたくなる「睡眠薬強すぎ問題」
一方で、視聴者が突っ込みたくなるポイントも分かる。
「睡眠薬を飲まされて、運ばれて、化粧されて、マッサージされても起きないの?」――これはSNS実況でもかなり話題になっていたタイプの疑問だし、実際そういう指摘が多かったことも語られている。
ただ僕は、この手の“本格ミステリーの約束事”って、ある程度は飲み込んだ方が楽しめると思ってる。現実の薬理で詰め始めると、成立しないトリックは一気に増える。でも視聴者が見たいのは、薬理の正確さじゃなくて「仕掛けの発想」と「騙され方」なんだよね。
第3話は、その発想(替え玉+死亡時刻の誤認+アリバイ完成)がきれいに連結しているから、僕は“ミステリーとしての快感”が勝った。
橋本マナミ回としての満足度:色気が「ミスリード」になっている
橋本マナミ演じる純子は、ストーリー上も“視線を奪う装置”になっている。察時が骨抜きになるのも分かるし、視聴者側も「あれ?もしかしてこの人、黒いのでは?」と疑いたくなる。
つまり色気が、単なるサービスではなく、ミスリードとして機能している。容疑者の魅力が強いほど、「自白」が真実に見えてしまう危うさも増す。第3話はその心理を上手く使った回だったと思う。
“アリバイ作り”は承らない:時乃の線引きが作品の芯
個人的に好きなのは、時乃が「アリバイ崩し」と「アリバイ探し」はやるけど、「アリバイ作り」はやらない、という姿勢がはっきり示されるところ。
探偵役が便利屋になりすぎると、作品は一気にご都合主義になる。でも時乃は“時計店の人間として時間に誠実”であろうとしている。だからこそ、事件の外側(察時の家庭問題)には簡単に介入しないし、事件の内側でも「犯罪の手助け」には踏み込まない。
この線引きがある限り、シリーズはどれだけトリックが奇抜になっても、世界観が崩れにくい。第3話はそれを再確認できた回だった。
次に効いてくる余韻:ジュニアの疑念と、察時の立場
事件解決後の余韻として残るのが、渡海(ジュニア)側の目線だ。察時が“出来すぎる”速度で事件を解決し続ければ、周囲が勘ぐり始めるのは自然。
ここがシリーズの面白さで、時乃と察時のコンビは「勝ち続けるほど危ない」。名探偵が名探偵であるほど、組織の中では異物になる。第3話は単発の事件の完成度だけじゃなく、その“勝ち続ける代償”を匂わせた点でも印象に残った。
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