トリックを暴くはずの人間が、“霊能力者として試される側”に立たされたら、何が起きるのか。
百発百中占い師・鈴木吉子の屋敷で、奈緒子は証拠も理屈も通じない場所へ追い込まれていく。
信者に囲まれ、言葉ひとつで生死が決まる空気。正しさではなく、“当たったかどうか”だけが支配する世界。
この第5話は、占いのトリックを暴く話ではない。信じた者が、自分で地獄を完成させてしまう話だ。
トリック(シーズン2)5話のあらすじ&ネタバレ

「百発百中占い師」編の最終話(解決編)は、奈緒子が“霊能力者として追い詰められる側”に回るのがいちばんの怖さです。
トリックを暴くはずの主人公が、証拠を掴めないまま信者に囲まれ、言葉ひとつで命運が決まる場所に立たされる。笑えるのに、背筋が冷える。そんなTRICKらしい地獄が、ここに詰まっています。
毒入りコップ対決の“結末”|奈緒子、完敗。…でも毒じゃない
前回のラスト、奈緒子は「3つのコップのうち1つに毒が入っている」というゲームに負け、最後に残ったコップを飲めと迫られます。
目の前には信者たち、背後には“百発百中”の占い師・鈴木吉子。飲めば死ぬかもしれない、飲まなければ“敗北”が確定してさらなる制裁が待つ。絶体絶命の空気の中で、奈緒子は逡巡します。
ここで吉子が見せるのが、いかにも教祖らしい勝ち方です。彼女は「毒など入っていない」と明かし、奈緒子が怯えたことそのものを“敗北の証拠”にしてしまう。
つまり、奈緒子は「本物なら迷わないはず」という土俵に乗せられた時点で負けていた。しかも“毒”が実は塩だったというオチは、笑いより先に屈辱が残るタイプのやり口で、信者の前で奈緒子の立場を完全に潰します。
そして吉子はさらに追い打ちをかけるように、「お前は最も大事なものを失う」と告げます。視聴者はここで思い出す。奈緒子が“石段を登るな”と言われたのに登ってしまった日、上田が消えたことを。吉子の予言は、すでに当たっているように見える。だから信者たちはいよいよ確信してしまうのです。“逆らえば不幸になる”と。
信者に囲まれる奈緒子|“外したらリンチ”の空気が完成する
吉子の取り巻き、特に信者代表の中野たちは、奈緒子を一気に追い詰めます。「偽物が教祖に楯突いた」「神を冒涜した」といった論理で、罰が正当化されていく。
TRICKが怖いのは、暴力の一歩手前がいつも“正しさ”の顔をしているところです。
奈緒子は「全部トリックだ」と食い下がりますが、証拠がない。言い切っても、信者たちは聞かない。吉子の“当たった実績”の前で、奈緒子の理屈は空回りしてしまう。
ここでの奈緒子はマジシャンというより、裁判で証拠を出せない弁護士のような立ち位置です。正しいのに勝てない。だから、最悪の選択肢に追い込まれる。
口から出まかせの予言|奈緒子が“教祖側”の武器を握ってしまう
ここが5話のいちばん痛いところです。奈緒子は生き延びるために、でまかせの予言を口にします。
- 明日の天気
- ご飯がお金に変わる
- 時計の針が逆回転する
- 炊いたご飯が生米に戻る
- 鎧武者が歩き出す
……完全に“それっぽいこと”の羅列。普段の奈緒子なら「こんなの信じる方がどうかしてる」と切り捨てる側なのに、今はそれを言う側に立っている。
しかも最悪なのは、これが当たってしまうこと。信者たちが一瞬で手のひらを返し、「奈緒子様…」の空気になっていく。TRICKが描く“信仰”はいつも短絡的です。昨日まで叩いていた相手を、今日から拝む。正しさではなく、強そうなものに付く。
鎧の中にいた男|上田が“予言を当てる”ことで奈緒子を救う
予言が当たった理由はシンプルで、上田の仕業でした。上田はこの屋敷の“インテリアとして置かれていた鎧”の中に身を潜め、タイミングを見計らって奈緒子の口から出た予言を現実にしていきます。鎧武者が歩き出したのも、結局は上田が中に入っていたから。これがTRICKらしい脱力ギャグでありながら、同時に奈緒子の命を救う“現実的な救助”でもある。
ただし、上田が最初から正義のヒーローだったわけではないのがまた上田です。彼が隠れていた理由として、「危なくなったら1人で逃げようと思っていた」的なダサい本音が匂う。上田は格好つけるけど、根は小心者。
なのに結局、奈緒子を見捨てきれずに戻ってくる。ここにこのコンビの“愛嬌”があるんですよね。
また、上田が奈緒子に宛てた“予言の手紙”も小細工でした。封筒の仕掛けで「あとから書いた内容を、最初から書いてあったように見せる」タイプの入れ替えが使われ、上田は“未来を当てる側”のふりまでやってのけます。皮肉ですが、上田も奈緒子も、この回では一時的に“詐欺師の手口”を使う。教祖の武器を、教祖と同じ形で返してしまう。
幹部・清水の“裏切り”|救いに見せかけた手が一番冷たい
信者のリンチが空気として完成しかけたところで、吉子の幹部・清水が前に出ます。「自分に任せろ」と奈緒子たちを引き取り、場を収める。ここだけ切り取ると、清水は“良心派”に見える。
でも、TRICKはそんなに甘くない。清水は清水で欲がある。特に、長部が肌身離さず抱えるあのカバン(本人は「芋が入っている」と言い張る)に対して、露骨に目の色が変わっていく。清水の救いは善意ではなく、計算でしかない。
そして逃走の最中、清水は吉子に見つかり、姿を消します。
さらに後で発見された彼の死体は“身体がねじれた状態”。まるで「時間の穴」に落ちたかのような、異様な死に方です。信者たちはここで確信する。「やっぱり時間の穴は本物だ」と。つまり清水の死は、吉子側の恐怖演出(あるいは殺害)として、信仰の補強に使われてしまう。
長部の正体|“芋カバン”の男は、信者ではなく復讐者だった
ここで奈緒子が核心に触れます。「あのカバンは何? あなたは何者?」と問いただすと、長部は自分の目的を明かす。
彼は救われたい信者ではなく、占い師によって婚約者を死に追いやられた男で、復讐のためにここに来たのだと。
さらにえげつないのが、カバンの中身です。“全財産”に見えたものは、後にニセ札だったと示されます。
最初から彼は、信者のふりをしながら盤面を作っていた。清水が欲に負けて飛びつくような餌をぶら下げ、吉子の周りの人間を勝手に崩壊させる。復讐者としての手口が、宗教詐欺と同じくらい汚い。
マツの告白|“止められるはずだった人”が、いちばん遅れて動く
屋敷の家政婦・マツが、ついに前に出ます。彼女はただの使用人ではなく、吉子の“育ての母”だった。ずっと近くにいたのに止められなかった人が、最後の最後で「もうやめろ」と言う。
マツが取った行動は、説得ではなく自己犠牲でした。吉子を反省させるために、毒を飲む。ここがTRICKらしい冷たさです。誰かの目を覚まさせるために、誰かが死ぬ。しかも、罪の中心にいる吉子本人ではなく、止めたかった側が先に倒れる。
ラストバトル|“本物の毒”と、手を汚さない復讐の完成
そして最後に、もう一度「毒入りコップ対決」が行われます。
今度は本当に毒が入っている。ここでTRICKが見せるのは、前半で笑いにした“毒=塩”の構造を、後半で“本物の死”に反転させる残酷さです。
上田のアドバイスもあり、奈緒子は“毒なし”を選び当てます。
次に長部もコップを飲む。ところが長部は苦しみ出し、倒れる。吉子は勝ち誇ります。「毒はもう飲まれた。残りは安全だ」と信じ込み、最後のコップを飲む。
でもそれは、長部の演技でした。彼は倒れたふりで吉子の判断を誘導し、吉子に毒を飲ませる。自分は手を汚していない。彼女が“自分の判断で”飲んだように見せる。復讐として、これほど陰湿で、これほどTRICK的な決着はありません。
占い師が死に、信仰は瓦解するはずなのに、視聴後に残るのは爽快感ではなく、胸の奥のザラつきです。インチキ教祖は倒れた。でも正義の勝利ではない。奈緒子も上田も、どこか後ろめたいままその場を離れる。TRICKの“後味”が、最終盤で一気に濃くなる回でした。
トリック(シーズン2)5話の伏線

5話は「回収編」なので派手な種明かしが並びますが、よく見ると“伏線”も丁寧です。
しかも、トリックを当てる伏線だけではなく、人物の心の落ち方(誰が裏切るか、誰が壊れるか)まで、ちゃんと前もって匂わせているのが上手い回だと思います。
伏線①:毒入りコップ=「塩」だったこと自体が、ラストの“本物の毒”へ繋がる
最初の対決が「毒ではなく塩」だったからこそ、視聴者は一瞬“安心”します。ところがラストで同じゲームがもう一度来て、今度は本当に毒が入っている。この反転は、単なる二段オチではなく「信じる/疑う」の感覚を揺らす装置になっています。
伏線②:鎧はただの置物じゃない(上田の隠れ場所=“救いの導線”)
屋敷の鎧が“いかにも怪しい装飾品”として置かれている時点で、TRICK慣れした視聴者は「誰か入るな」と思う。でも実際に上田がそこに入っていたことで、鎧が「笑い」と「救助」の両方を担う小道具になります。飾りが、命綱になるタイプの伏線回収です。
伏線③:長部のカバン(芋)=“信者”に見せかけた復讐者のサイン
長部がカバンを離さない、しかも中身を「芋」と言い張る。この時点で、彼が“まともな信者じゃない”匂いがします。信者なら吉子に捧げるはずのものを、ずっと抱え込んでいる=目的が違う。
さらに後で「中身がニセ札だった」という情報が出ることで、長部が最初から仕掛ける側だったと確定する。
伏線④:清水の“優しさ”が不自然(裏切りの下準備)
清水が奈緒子たちを助ける流れは、一見ヒーロー的。
でもTRICKの文法だと「いい人のまま終わるキャラ」はむしろ少数派です。欲(カバン)と保身が見えた瞬間に、善意が全部“取引”へ変わる。清水の豹変は唐突に見えて、実は「欲の匂い」を早めに置いている回でもあります。
伏線⑤:マツの立ち位置(ただの家政婦じゃない)
マツは屋敷の内側にいるのに、信者の熱量とは距離がある。
しかも、吉子に強く言えそうで言わない。その“言えなさ”が、後に「育ての母」という告白に繋がります。止められなかった理由が、立場の弱さではなく“情”だったと分かった瞬間、マツの沈黙が伏線だったと気づく。
伏線⑥:コップの傷・泡=“目に見える科学”が最後の勝ち筋になる
最後の毒入りコップは、精神論や霊能力対決ではなく、観察(泡)と目印(傷)でひっくり返ります。
TRICKは毎回そうですが、「派手な超常現象」ほど、最後に頼れるのは地味な物理。泡が立つ、傷がある、位置が変わる。ここが“オカルト×科学”の美味しいところです。
伏線⑦:「時間の穴」=“未来”よりも“情報格差”の話だった
この章で怖いのは、未来が見えることではなく、未来に見せられること。カミカクシ(神隠し)が起きていた土地の伝承、祈りの岩の存在、信者の集団心理。そういう土壌があるから、“誰かが細工しただけの現象”が、超常現象として定着していく。時間の穴は、物理現象ではなく物語の穴。そこに人が落ちる。
トリック(シーズン2)5話の感想&考察

この回は、トリックの“好きな部分”が全部出ているのに、見終わったあとに妙な疲れが残る回です。
笑ったはずなのに、心のどこかが冷える。救いがあったようで、救われない。だから印象に残るし、シリーズの中でも「後味の悪さが好き」という層に刺さる回だと思います。
いちばん怖いのは“教祖”じゃなく信者のほう(正義が暴力に変わる瞬間)
鈴木吉子のやり口は、もちろん詐欺であり支配です。でも、5話でゾッとするのは、信者たちが“自分の手を汚すこと”に躊躇しなくなる瞬間。奈緒子が外したらリンチ、外したら磔——そういう空気が、ほとんど議論なしで完成していく。
信仰って、本来は救いのはずなのに、集団になると罰が先に来る。TRICKはそこを美化しない。信者の顔を、ちゃんと怖く撮る。笑いの演出の中に、それを紛れ込ませてくるのが巧い。
奈緒子が“教祖側の武器”を一瞬だけ使う、という皮肉
奈緒子は普段、超常現象を疑う側です。なのにこの回では、命のために“予言”を吐く。しかも当たってしまう。ここがTRICKの意地悪なところで、奈緒子の正義が揺らぐ瞬間をあえて描くんですよね。
そして考えさせられるのが、「奈緒子が当てた」のではなく「当てさせた構造がある」こと。上田が仕掛ければ当たるし、吉子が仕掛ければ当たる。つまり“当たる”は能力の証明にならない。現象が当たっているだけで、倫理は担保されない。
上田はダサい。でも、戻ってくる(このバディの信頼が一段深くなる回)
上田が鎧の中に隠れていた理由が、100%善意ではないっぽいのが笑えます。危なくなったら逃げる気だった、と匂わせる。そういうダサさがあるから、上田は“ただの正義キャラ”にならない。
それでも結果的に、奈緒子を助けるために前に出る。予言を当て、信者の空気を変え、奈緒子の命を繋ぐ。この「理屈じゃない部分」こそ、上田と奈緒子の関係がシリーズで続いていく理由だと思います。口では罵り合っても、最終的に見捨てない。
長部の復讐が一番後味悪い(正しい怒りが、汚い勝ち方になる)
個人的に、この回の本当の怪物は吉子より長部だと思っています。
彼の怒りは理解できます。婚約者を死に追いやられたのなら憎い。だけど彼がやったのは「自分の手を汚さずに殺す」復讐です。清水も吉子も“自滅したように見える形”を作り、本人は正義の顔のまま立っている。しかもそれを、奈緒子は止めきれない。止めようとしても、構造としてすでに完成している。
TRICKが面白いのは、「インチキを暴いて終わり」にならないところです。勝った側も綺麗じゃない。復讐の正しさを肯定もしないし、否定もしない。結果だけが残る。
「時間の穴」は、未来の話じゃなく“噂の強度”の話だった
“時間の穴”というワードは派手ですが、実際に人を飲み込むのは未来ではなく噂です。
- ここで神隠しが起きてきた
- 戻ってきた子が「明日のこと」を言い当てた
- 教祖が「時間の穴」を語る
- それっぽい現象(消える・死体がねじれる)が起きる
この積み重ねで、嘘は“土地の伝説”になってしまう。TRICKはいつも、超常現象を否定しながら、人間が作る“物語”の強さを肯定してしまうところが怖いんです。
5話を見終わったあとに残るもの|救いより“学習”が残る回
この回、スカッとする勝利はありません。吉子が倒れても、清水が死んでも、長部の復讐が成就しても、気持ちは晴れない。でも、その不快感こそがTRICKの“視聴後の余韻”だと思います。
「信じたい」気持ちは、簡単に誰かの支配になる。
「当たる」ことは、善の証明にならない。
そして一番怖いのは、嘘が“空気”になった瞬間、誰も止められなくなること。
だからこそ、笑えるシーンが多いのに、見終わると妙に現実へ刺さる。5話はその代表格でした。
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