『あなたの番です』の中で、突然現れては強烈な爪痕を残した人物が内山達生です。
黒島沙和を執拗に追い続けるストーカーとして登場しながら、その正体と目的は物語が進むほどに不気味さを増していきました。
そして第16話、胸に矢を受けながら笑顔で叫んだ「ブルでーす!」──この不可解な一言は何を意味していたのか。
本記事では、内山の死因や仕掛け、黒島との歪んだ関係を整理しながら、このシーンの真意に迫ります。
内山達生とはどんな人物だったのか

まずは「内山って結局どういう立ち位置のキャラだったの?」というところから整理します。
公式サイトのキャラクター紹介では、内山は「黒島のストーカー」として位置づけられています。
理系の大学生で、黒島とは高校時代からの同級生。彼女のことを陰からじっと見続ける“不気味な存在”として、前半から少しずつ姿を見せていました。
黒島の“信者”であり、実行犯
Huluの「扉の向こう – 黒島沙和(過去編)」や最終回後のインタビュー系の情報を総合すると、内山はただのストーカーではなく、
- 高校時代にいじめられていた内山を黒島が助けた
- 黒島が首を絞めても「あなたのせいで死んでもいい」と受け入れる
- 黒島にとっては、自分の“異常性”を肯定してくれる唯一の他者
という、かなり歪んだ共依存関係にありました。
黒島は内山に対して「これから私がすることを楽しんで」と告げ、上京後も内山は黒島を追いかけてキウンクエ蔵前の近くに住むようになります。そこからは、
- 甲野貴文(こうのたかふみ)、神谷将人などを“裏側で手を下す実行犯”
- 赤池夫妻や児嶋佳世、浮田啓輔などの遺体処理・演出を担当
といった役目を負う、“表に出ない殺し屋”ポジションになっていきます。
「笑う遺体」を生み出したチームの片割れ
作中で印象的な「笑う遺体」(口角が上がった死体)の多くは、
- 手口の発想と「笑わせたい」という執着:黒島
- 現場の準備、遺体の運搬・解体・遺棄などの泥仕事:内山
というコンビプレーの結果として描かれます。
内山単体でもかなりヤバい存在ですが、“黒島の願いなら何でもやる”という歪んだ愛情があることで、犯行の残酷さが一気に増幅されている。この“コンビとしての危険さ”を理解しておくと、後で出てくる「死因」や「ブルでーす」の意味も見えやすくなります。
内山の死因は?第16話の「ブルでーす」シーンを整理

問題のシーンは、反撃編の第6話=通算16話。
翔太・二階堂・水城が、黒島のストーカーとして浮上した内山のアパートを訪ね、ドアを開いた瞬間――ドアに仕掛けられたダーツの矢が内山の胸を貫き、「ブッルでーす!」と叫んで絶命します。
公式あらすじでも、
水城がドアを開けた瞬間、仕掛けられていたダーツの矢が胸に突き刺さり、「ブッルでーす!」と叫んで絶命する。
と明言されており、表向きの死因は「自分で仕掛けたダーツの罠による死亡」です。
16話についてはこちら↓

仕掛けの構造と“笑気ガス”
16〜17話、さらにその後の捜査描写を整理すると、内山の死には次の要素が絡んでいます。
- ドアの開閉と連動し、ダーツの矢が発射されるトラップ
- 矢の先端には毒(塩化カリウムなどの致死性薬物)が塗られている
- 部屋には笑気ガスのボンベや器具があり、以前の“笑う遺体”と同じ技術が使える環境
- 死亡後すぐ動画がPCから自動再生されるようセットされている
つまり、「自分の死」と「告白動画の上映」まで含めた“自作の死の舞台”なんですね。
自殺か他殺か ― 「形式上は自殺、実質は黒島による殺人」
では、内山の死は自殺なのか? それとも他殺なのか?
まとめ記事や一部資料では「殺した人:自殺?」と疑問符付きで記されることが多いですが、黒島を犯人として整理した解説では、
- 矢じりに毒を仕込んだのは黒島
- 仕掛け自体も黒島の指示・設計が濃厚
- 内山は“黒島に言われた通りに、自分でスイッチを押しただけ”
とされ、「形式上は自殺だが、実質的には黒島による殺人」と位置づけられています。
ドラマ本編でも、黒島の自白で、
「あれは私がやりました。矢に毒を塗りました」
と語られており、最終的な公式解釈としても「黒島が仕組んだ“自殺風の他殺”」と見るのが妥当です。
なぜわざわざ黒島は内山に対して“自分にダーツを打たせた”のか

ここが最も気になるところでしょう。
黒島からすれば、内山なんて普通に毒殺してもいいはずなのに、なぜあのような派手で意味深な死に方をさせたのか?
① 証拠隠滅
- 動画で「全部自分がやりました」と自白させ
- その直後に“自殺”させることで
→ 一連の事件を「内山単独犯」に見せかける狙い。
② ゲーム性へのこだわり
黒島は、
- 「人が死ぬ瞬間を見るのが楽しい」
- 「笑わせたい」
という、ある種“演出家”のような快楽を持っています。
→ その延長で、内山の死も“ひとつの作品”として仕上げた。
③ 内山の願望との一致
内山自身も、
「全部、黒島さんへの愛なんです」
と動画の中で語り、死ぬことさえ“愛の証明”として受け入れている。
「黒島の計画の一部として完結したい」という歪んだ願望と合致していたと見られます。
内山の「ブルでーす!」の意味を解説

続いて、多くの視聴者をザワつかせた名(迷)セリフ「ブルでーす!」について。
第16話のラスト、胸にダーツが突き刺さった瞬間、内山は満面の笑みで「ブッルでーす!」と叫び、そのまま絶命します。
この一言があまりに強烈すぎて、放送当時はSNSでも
- 「意味が分からなすぎて逆に怖い」
- 「ただのギャグには見えない」
と大きな話題になりました。
ダーツ用語としての“ブル”
まず、表面的な意味から整理しておきましょう。
- ダーツの的のど真ん中 → BULL(ブル)
- そこに命中させること → 「ブルに入る」「ブルをとる」
内山の死に使われたのが“ダーツの矢”であることを踏まえると、「ブルでーす!」は 「ど真ん中に命中しました」 という意味になります。
そして、この“ブル”という言葉は 翔太の口癖 でもあります。
翔太は、推理が当たったときや何かが核心にヒットしたと感じた際、日常的に「ブルだ!」と口にしています。
つまり内山の「ブルでーす!」には、
- ダーツ的には「ど真ん中命中」
- 物語的には「翔太の口癖のパロディ」
という二重の意味が込められているわけです。
なぜストーカー男が翔太の口癖を?
ここが“気持ち悪さの核心”だと思っています。
16話の時点で分かっているように、内山は
- 黒島の部屋に盗聴器を仕込んでいた
- 黒島・翔太・二階堂の“推理会議”をずっと聞いていた可能性が高い
ともされていました。
つまり、翔太の口癖「ブル」を知らないはずがない。
そのうえで、自分の死の瞬間にあえてあの言葉を使う。
これは、
「どうです?僕の“推理(=計画)”…ど真ん中に命中してるでしょう?」
という、歪んだドヤ顔の“演出”なんですよね。
翔太の口癖を奪うことで、彼の世界に“汚染者として入り込んだ証明”にもなっている。
「ブルでーす」に込められた演出上の意図
個人的には、この一言には少なくとも3つのレイヤーがあると思っています。
① 物語上の意味:自作自演の“命中宣言”
自分が仕掛けた罠が成功し、「黒島のための完璧な死」を実現できたという合図。
胸に刺さった矢=「自分の心臓のど真ん中(BULL)」に命中。
内山にとっては、
「黒島の物語のど真ん中に自分が食い込んだ」
という快感だったはずです。
② キャラクター描写:翔太ワールドの“侵食”
ダーツは翔太の“明るい趣味”であり、夫婦の象徴的な思い出でした。
そこへ殺人者の内山が乱入し、翔太の口癖を借りる形で「ブルでーす!」と死ぬ。
これは、
「翔太の明るい世界に、殺人者の狂気が入り込んだ瞬間」
を象徴する演出。
“翔太の言葉”が“殺人者の言葉”に上書きされる、不快な侵食感があるんですよね。
③ メタ的意味:視聴者へのフック
制作側目線で見ると、第16話は
- ストーカー内山の正体が一気に暴かれ
- その直後に即死亡する
という構造で、視聴者の記憶に残すには強いセリフが必要でした。
その役割を果たしたのが
「ブッルでーす!」
という“忘れられないノリ”。
SNSでもその日一番の話題になり、インパクトは絶大でした。
あなたの番ですの中で内山はどこまで“犯人”だったのか

死因や「ブルでーす」を語るうえで避けて通れないのが、「内山は実際にどこまで殺していたのか?」という点です。
17話の告白動画では、内山は
- 赤池美里・吾朗
- 児嶋佳世
- 浮田啓輔
- 甲野貴文
- 手塚菜奈
- 神谷将人
- 黒島をホームから突き落とした件
まで、全部自分がやったと語っています。
しかし最終的な整理では、
- “笑う遺体”(赤池夫妻・佳世・浮田・菜奈)の殺害は黒島
- 内山は遺体の解体・運搬・遺棄の担当
- 神谷・こうのたかふみなど、“ゲームを進めるための殺し”は内山が直接実行
という立て付けに落ち着いています。
つまり内山の動画は、
- 黒島を守ろうとして全部ひとりで背負おうとする
- “黒島の作品”まで自分の手柄にしてあげたい
という、愛情と妄想が混ざった“過剰な自白”なんですね。
この“真実と嘘の境界の曖昧さ”が、視聴者に強い違和感を残し、翔太も「これで終わるわけがない」と直感する要因になっています。
黒島と内山 ―― “殺人鬼”と“信者”の歪んだ愛

内山の死因や「ブルでーす」を理解するには、黒島との関係性まで踏み込む必要があります。
黒島の「異常性」を肯定する唯一の存在
黒島は高校時代から、
- 人を傷つける妄想に悩まされ
- 実際に少女(南穂香)を殺害し、快楽を覚え
- 家庭教師・松井とも心中を図り、彼を死なせた
という深刻な問題を抱えていました。
そんな黒島にとって、内山は
「一番醜い部分を見せても、絶対に離れない相手」
でした。
内山にとって黒島は“神様”
内山からすると黒島は、
- いじめから救ってくれた恩人
- 自分を肯定してくれる唯一の存在
つまり“神様”のような相手。
「あなたのためなら誰でも殺す」「あなたのために死ねるなら本望」とまで言うのは、彼の極端な依存と孤独の果てでもあります。
だからこそ、
「黒島のために、黒島の作品として死ぬ」
という結末にも躊躇がなかった。
まとめ:内山の死は「ブル」ではなく、“外れ続けた人生”の象徴
『あなたの番です』は最終的に、黒島自身の口から
「人間、誰でも人を殺す可能性あるんだな」
というテーマを語らせました。
その中で内山は、
- 元は“普通の若者”で
- 誰か一人でも彼を救える大人がいれば違う未来もあったかもしれない
という、ギリギリで“外れてしまった人”の象徴でした。
内山の「ブルでーす!」は、
- 自分の仕掛けは命中しているという歪んだ達成感
- でも人生全体で見れば、完全に“外し続けた”選択
その痛々しいアンバランスさを凝縮した言葉に思えます。
翔太の明るい世界を象徴する「ブル」を、黒島と内山が“汚染”していく――。
その描写こそが、このドラマの残酷さであり、視聴者が今も忘れられない理由なのだと感じています。
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