市松(いちまつ)は、『ちょっとだけエスパー』の中でも“ただの大学生”に見えるポジションの人物。
文太たちを少し離れたところから観察しながら、どこか掴みどころのない空気をまとったキャラクターです。
ただ、序盤からイヤホンで誰かと話していたり、文太たちの行動を妙に正確に把握していたり……「本当に普通の大学生なのか?」という違和感が少しずつ積み重なっていきます。
やがて、市松の背後には“未来からの重要な意図”があることが示され、物語の深層に関わるキーパーソンへと一気に浮上。
この記事では、市松の正体、能力、イヤホンの“アイ”との関係などを、物語の流れに沿って整理していきます。
ちょっとだけエスパーの市松(いちまつ)の正体は?

まずは「この人、そもそも何者なの?」というところから整理します。
表の顔:たこ焼き研究会に所属する理系大学生
公式の人物紹介では、市松は「東京の理工系大学に通う、たこ焼き研究会所属の学生」として位置づけられています。文太たちと出会うきっかけも、たこ焼き屋から始まるゆるい縁で、一見するとどこにでもいそうなイマドキ大学生。
・理工系の大学に通う
・たこ焼き研究会という、ちょっとユニークなサークルに所属
・文太たちの“社宅ライフ”を面白がって覗き見している立場
この時点では、彼は「エスパーたちを外側から観察しているモブ寄りの大学生」に見えます。ただ、序盤から耳に謎のイヤホンを付けて誰かと会話している描写があったり、文太たちの動きを妙に正確に把握していたり、違和感だけはきっちり仕込まれている。
視聴者目線だと、「こいつ、ただの大学生じゃないな」という“匂わせキャラ”としての登場です。
裏の顔:ボス「アイ」に指示される“敵サイドの窓口”
物語が進むと、市松は「兆とは別のラインで動く勢力」に所属していることが明らかになります。彼はイヤホン越しに話していた“アイ”という人物からミッションを受け取り、桜介の息子・紫苑や久条と一緒に、文太たちエスパーと対立するポジションに立つようになります。
・市松サイドのボスは「アイ」と呼ばれる存在
・エスパーたちの行動を妨害したり、別ルートの“正義”を掲げたりする
・紫苑・久条と組んで、対立陣営を構成していく
ここで重要なのは、市松が「純粋な悪役」として描かれていない点です。
彼は自分の信じる“未来の正しさ”に従って動いているだけであり、その正しさの源泉が、後に明かされる“アイの正体”と深く結びついている。
もう一つの顔:「アイ=2055年の未来の市松」
第6話〜7話にかけて明かされる最大の爆弾が、「アイは2055年の《未来の市松》自身だった」という事実です。
この一文で、市松というキャラクターの構造はガラッと変わります。
・今ここにいる“大学生の市松”
・イヤホン越しに指示を飛ばしていた“アイ”
・その正体は、2055年に存在する“未来の市松”
つまり市松は、
「現在の自分」×「未来の自分」=二重構造の存在
として、物語の中に存在していたわけです。
兆が「2055年。ここから30年後。タイムマシンはないが、過去にデータを送る方法は発見された」と説明していたように、未来の人物たちは“実体として過去に来る”のではなく、“データとして過去の自分や他人に干渉する”手段を手に入れている。
兆は立体映像として現在に干渉し、未来の市松は“アイ”という声として現在の市松をコントロールする。このSF的な仕組みが、市松というキャラクターの“正体”の中核だと言えます。
市松(いちまつ)のエスパーの能力とは?

次に、市松自身の「エスパー能力」について掘り下げていきます。
能力の系統:水分を操る“涙のコントロール系エスパー”
市松の能力は、一言でまとめると「水分操作・涙の制御」。
実況やインタビュー情報を整理すると、代表的な発現例として、文太の涙を止まらなくさせるシーンが挙げられています。
・体内の水分、特に“涙”に強く作用
・意図的に涙腺を刺激し、相手の感情表現を狂わせる
・周囲の湿度や水を含む物質への干渉も、拡張すれば応用可能
「火」「電気」「念動」といった分かりやすいタイプではなく、“水分”という地味だけれど逃げ場のない要素を押さえているのが、市松らしいところです。
涙が止まらないというのは、肉体的にも精神的にもじわじわ追い込まれる“攻撃”。人の尊厳に静かに食い込んでくる、かなりイヤなタイプの能力になっています。
感情とリンクする、いやらしいチョイス
能力の対象が“涙”という設定は、単なるランダムではなく、市松の役割と深く噛み合っています。
・未来からの情報を握り、他者の「知らなさ」を突きつける立場
・そのうえで、相手の“感情の出口”である涙を支配できる
つまり市松は、「情報の非対称性」と「感情のコントロール」という二層構造で他人を支配できるキャラクターです。
自分は未来の情報を知り(アイ=未来の自分とリンクしている)、そのうえで相手の涙というもっともプリミティブな反応さえいじれる。これは“戦闘力”の話ではなく、“倫理”の領域に足を踏み入れる危険な能力。
エスパーの力そのものが「人の生死や運命をいじってしまう危うさ」を背負うドラマである以上、市松の水分操作は、そのテーマがキャラ一人分に凝縮された表現でもあると感じました。
能力の代償と“壊れゆく身体”
6話時点で描かれているのは、「エスパー能力には重い代償がある」という現実です。
桜介の花咲かせ能力が“成長を早める=寿命を縮める”方向へ暴走したのと同じく、市松の肉体にも重大なダメージが出ていることが示唆されます。
・半身の皮膚が変色し、息も絶え絶えの状態で発見される市松
・花を咲かせるだけの能力だった桜介でさえ、使い方次第で“命を脅かす何か”へ変質
視聴者の多くが「能力を使うほど死に近づくパターンでは?」とざわついていたように、エスパーであることは単純な恩恵ではありません。市松の能力もまた、その代償をどう支払うのか、まだ見えていない部分が多い。ここは今後の物語で重要な焦点になりそうです。
桜介についてはこちら↓

市松(いちまつ)が未来からきた理由は?

ここからは、少し踏み込んだ考察パートです
タイトルには“未来からきた”とありますが、正確には「未来の自分=アイが、データとして過去の自分を操っている」という構図。
では、その目的は何なのか。
2055年の世界と「データとしてのタイムトラベル」
兆の説明を整理すると、未来世界の状況は次のようになります。
・時代は2055年。現在から約30年後
・タイムマシンは発明されていない
・しかし“過去へデータを送る技術”だけは確立
・いわば“時間を超えたリモート通信”
兆はその技術で立体映像を現在に送り、未来の市松は“アイ”という音声インターフェースとして、過去の市松に干渉しています。
まとめると、
・兆=未来からの立体映像投影
・アイ=未来からの音声データ送信
という違いがあるだけで、どちらも「未来の誰かが現在をリモート操作している」状態。
この構造から、市松が未来からきた理由は大きく三つに整理できます。
仮説1:1000万人規模の“未来の犠牲”を回避(あるいは選別)するため
第6話のキーワードとして、「1000万人の命を救うのか、それとも奪うのか」という不穏なフレーズが提示されています。
・エスパーのミッションは「世界を救う」と説明されてきた
・しかし実際は、“1000万人の命を奪う計画”と紙一重
・自分たちが信じてきた正義そのものが、“巨大な淘汰計画”かもしれない
これを踏まえると、
「未来世界で取り返しのつかない事態が起き、その発端が“2025年のエスパー計画”だった。だから未来の市松は、過去のプレイヤーを動かして歴史を微調整しようとしている」
という筋がもっとも自然です。
エスパー薬の開発、能力暴走による寿命短縮、千田守の突然死など、“救ったはずの人が死ぬ”ケースが続いているのも、「未来でとんでもないことが起きている」裏付けのように見えます。
仮説2:兆の計画の“対抗勢力”としての市松ライン
もう一つ興味深いのは、兆と市松は同じ未来から来ていながら、同じ目的で動いているようには見えない点。
・兆は“世界を救うミッション”の設計者側
・市松(未来のアイ)は、紫苑や久条を通じて文太たちと対立
この構図を冷静に見ると、
・兆=「多くを救うために何かを切り捨てる計画」の推進派
・未来の市松=その計画の“致命的なバグ”に気づき、別ルートから是正しようとする存在
という対立軸が浮かびます。
市松が過去の自分を介してエスパーたちに干渉するのは、「兆の正義を鵜呑みにするな」という警告でもあるかもしれない。
仮説3:個人的な動機──“柳”の死と「兆し」
未来に市松を駆り立てた原点は、柳や九条との過去にある可能性も高いです。
・高校〜大学時代の友人関係(九条・柳)
・柳が“エスパー薬開発バイト”で命を落とした
・柳の遺品に残された、「雇い主は兆しを作っているだけ」という手紙
もし柳の死が、のちの“1000万人計画”の一部に組み込まれているとしたら。
未来の市松にとって、それは「友の死がシステムの都合で利用されている」という耐え難い現実です。
だからこそ彼は、未来から過去へ介入せざるを得なかった。
世界を救うためというよりも、
「柳の死を、都合よく利用されたままにしないため」
という極めて個人的な理由が根底にある可能性も十分あります。
ドラマの“個人の後悔や選択”を積み重ねるトーンと照らすと、この仮説はかなりしっくりきます。
市松(いちまつ)のキャストは北村匠海さん

市松を演じるのは北村匠海さん。
彼の演技の面白いところは、
・序盤の“ゆるい大学生”としての軽さ
・中盤の“未来と繋がる人物”としての不穏さ
・6話以降の“能力の代償で壊れかける青年”としての陰り
これらを繊細な温度差で演じ分けている点です。
文太たちが“等身大の庶民ヒーロー”なら、市松は“システムのバグに気づいてしまった青年”。
少し猫背気味な立ち姿や、静かに感情を切り離したようなセリフ回しが、市松というキャラクターと驚くほど合っています。
今後、未来の市松(アイ)の真意と、現在の市松の選択がどこで交差し、どこで決裂するのか。
彼が「未来の都合」を選ぶのか、「今ここにいる友人たち」を選ぶのか。
その分岐は、ドラマ全体のテーマに直結するはずです。
個人的には最後に一度でいいから、市松が“未来でも過去でもない、自分自身のための涙”を流せる瞬間が訪れてほしいと思っています。
市松についてのまとめ
・市松は「理工系大学生」という表の顔を持ちながら、物語の裏では未来と繋がるキーパーソン。
・イヤホンの“アイ”は2055年の未来の市松自身で、過去の自分をデータで操っている。
・能力は“涙を操る水分コントロール系エスパー”で、肉体に大きな負荷を与える危険な力。
・未来の市松が過去へ干渉する理由には、「1000万人規模の危機」や「兆の計画への対抗」など複数のラインが示唆されている。
・市松は“未来の都合”と“今の仲間”の間で揺れ動く存在であり、彼の選択は物語全体を大きく左右する。
市松は、ただの脇役でも、単純な悪役でもありません。
“未来を知りながら現在に立つ”という特殊な立場から、作品全体のテーマ──「選択」「後悔」「未来への責任」──を体現するキャラクターだといえます。
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