「ちょっとだけエスパー」の中盤から姿を見せる九条(くじょう)は、文太たちBit5の前にひっそりと現れ、時には敵のように立ちはだかる“謎の存在”です。
無表情で冷静、それでいてどこか傷を抱えた眼差し──彼女はいったい何者なのか?なぜエスパーたちの行動を妨害するのか?
実は九条は、物語の裏側で静かに進む“もう一つの真実”に最も早く気づいてしまった人物。彼女の過去、親友との思い出、そして“未来の危機”に触れた瞬間に、彼女の行動の全てが一本の線でつながり始めます。
この記事では、そんな九条の正体や能力、八柳との関係、そしてBit5と敵対する理由を、物語をより楽しむための視点から優しく紐解いていきます。
ちょっとだけエスパーの九条(くじょう)の正体は?

九条は、中盤から登場する「Young3(ヤングスリー)」の一員として、文太たち「Bit5(ビットファイブ)」の前に立ちはだかる謎めいた女性です。
表面的には、兆の計画に反発し、文太たちの“ミッション”を邪魔する敵ポジションに見えますが、その裏には、彼女自身の人生を根こそぎ変えてしまった親友・八柳(やなぎ)の死が横たわっています。
Young3としての立ち位置
作中では、九条は市松や紫苑と同世代の若者として描かれ、現在は大学周辺で行動している場面が多いキャラクターです。
Young3は兆の進める「ちょっとだけエスパー計画」に対抗する“もう一つの正義”のチームとして描かれ、物語が進むにつれて、九条は単なる敵ではなく「第三の視点」を担う存在になっていきます。
九条の人生を変えた八柳の存在
九条の過去で最も大きな意味を持つのが、高校時代の同級生である八柳です。高校時代の九条と八柳は同じシャンプーを共有するほど親密で、九条は八柳のシトラスの香りを深く覚えていました。
その八柳は、後に“変わったバイト”と呼ばれるミッション型アルバイトに参加。
薬学Aチームとして、雇い主から渡されるレシピに従って「エスパーになれる薬=Eカプセル」を製造していました。高度な合成方法が要求されることから、高校後も薬学系の道に進み、社会人として研究に携わっていたと考えるのが自然です。
八柳の死とケースの中身
ある日突然、研究職らしい白衣姿の九条のもとを訪れ、「全部終わったら取りに来る」とだけ言い、ケースを託して去っていく八柳。しかし数日後、九条に届いたのは「八柳の遺体が発見された」という警察からの連絡でした。遺体からはあの懐かしいシトラスの香りが立ち上っていた——この瞬間が、九条の人生を決定的に変える引き金になります。
八柳が残したケースには、大量のEカプセルと八柳宛ての手紙の束。「これは兆しを作っているだけだ」と記す雇い主の言葉も残されており、九条は“兆”の進めるプロジェクトと八柳の死が密接に結びついていることを悟り、独自に調査を開始します。
兆のビッグデータが示す「1,000万人の死」
さらに九条は、兆が扱うビッグデータとシミュレーションにアクセスし、「このまま計画が進めば1,000万人規模の死者が出る」という未来予測に辿り着きます。一方で、未来の市松博士は“100万人に減らす”と言っていた事実も掴むことに。
つまり九条は、
- 兆の“世界を救う計画”の裏に巨大な犠牲が存在すること
- 親友・八柳がその実験の一端で命を落とした可能性が高いこと
- 未来の市松でさえ「犠牲ゼロにはできない」と考えていること
を知ってしまった「告発者側の人間」。
彼女の正体は、ただBit5の前に立ちはだかる“謎の敵”ではなく、八柳の死の真相と「兆し」計画の本質を知った結果、Bit5と対立せざるを得なくなった“もう一人の主人公”と言えます。
九条(くじょう)のエスパーの能力とは?

九条もEカプセルによってエスパー能力を得ています。
彼女の能力は“音の操作系”で、とくにモスキート音と呼ばれる高周波を発生させ、周りの相手に強烈な不快感や痛みを与えられる能力として描かれています。
モスキート音は現実でも「若者にだけ聞こえる高周波」として知られていますが、ドラマではこれが九条の攻撃手段として誇張されています。若いほどダメージが大きく、年配の文太や円寂には効きづらい、という“世代差の反転”が能力特性として盛り込まれているのが興味深い点です。
この能力が象徴しているのは、「聞こえる人にしか届かない声」という隠喩です。
兆のプロジェクトの危険性も、八柳の死の意味も、普通の人からすれば“ノイズ”のように流れていくだけ。しかし九条やYoung3には、その悲鳴がはっきり聞こえてしまう。その“感受性の差”が、モスキート音エスパーという形で視覚化されているように感じられます。
さらに九条の能力は、攻撃だけでなく“攪乱”としても効果を発揮します。相手の注意を奪ったり、交渉の場を壊したり、兆によって仕組まれた状況を逆転させたりするなど、単なる善悪二元論では測れないグレーな性質を持つ能力として描かれています。
九条(くじょう)と柳(やなぎ)の関係とは

九条と八柳の関係は、このドラマ全体の「感情の心臓部」と言っていいほど重要です。
高校時代から続く“香り”の思い出
二人は高校時代の同級生で、同じシトラス系のシャンプーを使い、音楽やバンド活動なども共有していた仲。社会人になってからも、どこか互いを気にかけ続けていたことが、回想の細部からにじみます。
八柳が巻き込まれた危険なミッション
八柳は大学〜社会人のどこかで“変わったバイト”に参加。薬学Aチームとして、レシピ通りにEカプセルを合成する仕事を任されていました。さらにもう一つ薬学チームがあり、材料は別ミッションのバイトが命懸けで回収してくるという、かなり危険な構造です。
つまり八柳は、高校生ではなく“社会人として”未来技術の最前線に立たされていた人物だと分かります。
ケースを託した八柳と、シトラスの香り
白衣姿で働く九条の前に、八柳が突然ケースを抱え現れます。「全部終わったら取りに来る」と言い残し、去っていく八柳。
しかし数日後、「遺体で発見」の知らせと、現場に漂うシトラスの香り。
この香りが、九条の人生を根底から揺さぶります。
八柳は“兆し計画”の最初の犠牲者だった?
ケースの中には大量のEカプセルと手紙。雇い主の「これは兆しを作っているだけだ」という言葉。九条はここで初めて、八柳の死と“兆し計画”が繋がっていると確信します。
さらに未来予測では“1万人”“100万人”“1,000万人”という巨大な数字が並ぶ。
しかし九条の脳裏に焼き付いていたのは、数字ではなく、
- 八柳の死が“最初の1人”だったこと
- 八柳の香りが消えてしまった現実
この一点でした。
だからこそ九条は、兆の計画もBit5の行動も許せなくなっていくのです。
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九条(くじょう)のキャストは向里祐香さん
九条を演じるのは向里祐香さん。
ミステリアスでクール、しかしどこか傷を抱えた佇まいを持つ九条を、繊細な感情表現で掘り下げています。
Bit5と対峙するシーンでは、目線や声色だけで「信じたいけれど信じられない」揺れを演じ、八柳の回想を語る場面では、淡々とした口調の中に後悔がじんわり滲む。
この“強さと脆さの同居”が、九条というキャラクターの魅力をより強くしています。
モスキート音エスパーとしての戦闘シーンでは、抑えた日常の佇まいから一転、瞬間的に鋭さが走るのも印象的。
「感情を押し殺してでも未来を変えたい」という九条の必死さが、身体表現にダイレクトに現れており、視聴者としても彼女を単純に“敵”と捉えられなくなっていきます。
向里祐香さん演じる九条は、兆でもBit5でもない“第三の軸”。
「誰の犠牲で世界を救うのか?」というドラマの核心を、最も痛みを伴った目線で提示する存在です。
九条についてのまとめ
九条は、Bit5の前に立ちはだかる“敵役”のように見えながら、実際には最も深い痛みを抱え、最も先に“本当の未来”を見てしまった人物です。
- 高校時代の親友・八柳の死
- Eカプセルに隠された兆の計画
- ビッグデータが示す“1,000万人の犠牲”
- 未来の市松博士の“100万人で抑える”という現実
これらを知ってしまった九条は、もはや静観できない。
Bit5と敵対するのは、世界ではなく「人」を守るための決断でもあります。
彼女は“敵”でも“味方”でもなく、誰よりも等身大で揺れ続ける“第三の主人公”。
九条という存在を知ってから物語を見返すと、ドラマ全体の色が大きく変わって見えるはずです。
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