前話で“ロイヤルホープ”という希望の名が登場した『ザ・ロイヤルファミリー』。

第4話「メイクデビュー」では、馬と人、家族と血統という二つのレースが同時に走り出す。
日高の牧場では、荒れ馬を託すに値するジョッキー探しが始まり、栗須(妻夫木聡)は過去に問題を抱えた地方騎手・佐木(高杉真宙)を信じる決断を下す。
一方、東京では山王家の“秘密”がついに表出。耕造(佐藤浩市)の“隠し子”の存在が明らかとなり、ロイヤルという名の家に影が差す。
信頼とは何か、そして血統とは何を意味するのか第4話は、その二つを対にして描く“信頼の初戦”である。
ザ・ロイヤルファミリー4話のあらすじ&ネタバレ

第4話の副題は競馬用語の「メイクデビュー」。
一頭の“荒れ馬”にふさわしい騎手を見出すまでの過程と、山王家の最大級の秘密が表へ押し出されるまでの過程が、二重写しで進む回だ。
舞台は日高の育成牧場と東京——“馬を信じることは、人を信じることと同義か”という問いを、物語は真正面から立ててくる。
日高の育成牧場で立ち往生する「ロイヤルホープ」
税理士の栗須栄治(妻夫木聡)は、調教師・広中博(安藤政信)に呼ばれて日高の育成牧場へ向かう。
山王耕造(佐藤浩市)が“1億円で落札”した期待馬ロイヤルホープは、極端に警戒心が強く、ベテランのスタッフでも手に負えず、乗りこなせるジョッキーも見つからないという。
作品はまず「実力はあるが、今は誰も近づけない」という状況設定で、馬と人の距離の難しさを可視化する。
金髪の地方ジョッキー・佐木に賭ける
行き詰まりの中で、栗須と広中が“希望を託す”と決めたのが、岩手競馬所属の金髪のジョッキー・佐木(高杉真宙)だ。
ただし障壁は大きい。地方所属の佐木が中央の騎手ライセンスを得るのは容易ではなく、さらに“過去に起こした問題”というマイナス要素も抱えている。
それでも栗須は彼の腕を信じ、東日スポーツの記者・平良恒明(津田健次郎)の協力を取り付け、粘り強く口説きにかかる。
ここで描かれるのは、「馬を見抜く眼」と「人を信じる胆力」が同じラインに乗る瞬間だ。
ロイヤルヒューマン社に持ち上がるスキャンダル
同じ頃、耕造の会社・ロイヤルヒューマン社では“あるスキャンダル”が発覚し、息子の山王優太郎(小泉孝太郎)が火消しに奔走する。
企業ガバナンス上の動揺が走ることで、馬の現場とビジネスの現場が“同時に走らない”リアリティをもたらす構図となる。
シリーズの軸である“ロイヤル(王)”の家が、外見の気高さと内側の泥臭さを併せ持つことが、より鮮明になった。
病院の廊下で“謎の青年”とすれ違う──そして正体が判明
中盤、病院の廊下で栗須は“謎の青年”(目黒蓮)とすれ違う。
この青年は第1話からナレーションとして物語を見つめてきた存在だが、第4話のラストでついに正体が明かされる。
青年の名は中条耕一。山王耕造の“隠し子”であり、母は入院中の中条美紀子(中嶋朋子)であることが告げられる。
病院という“生と死、過去と現在が交わる場所”で秘密が表出する演出が、非常に効果的だった。
「メイクデビュー」の二重写し──馬と人、それぞれの“初戦”
副題どおり、ロイヤルホープの“メイクデビュー(初出走)”へ向けて歯車が回り始める一方で、山王家の“新しい家族”が光の下に出されるという、二つの“初戦”が描かれた。
前者は佐木という「過去ごと引き受けて起用する」賭け、後者は耕造の「過去の責任と向き合う」覚悟。
第4話の編集は、それらを対位法で重ねることで、家族と仕事、馬と人の“信頼の設計”を立体的に描き出した。
物語上の確認点(時系列と要点)
・栗須が広中の要請で日高へ。ロイヤルホープは極端に神経質で、乗り手不在。
・岩手の佐木に白羽の矢が立ち、中央ライセンスの壁と過去の問題を乗り越えようとする。平良記者が交渉を支援。
・ロイヤルヒューマン社でスキャンダルが発覚し、優太郎が対応に追われる。
・病院パートで“謎の青年”が栗須の視界に入り、終盤で耕造の隠し子・中条耕一と判明。母は中条美紀子。
背景情報(シリーズ文脈)
本作は早見和真の同名小説が原作で、人間と競走馬の“20年”を横断する大河的群像劇。
JRA全面協力のもと、実在の競馬場でロケを敢行しており、圧倒的なスケール感を備える。
第4話では「産地・日高」「競馬界の中央/地方」「山王家=ロイヤル」という三つの構造が、
“人選の賭け”と“家族の秘密”という二つの軸で結ばれ、物語の骨格がより明確になった。
ザ・ロイヤルファミリー4話の感想&考察

第4話は「信じる対象をどう選ぶか」を、馬と人の両輪で描いた。筆者の観点は三つ。
(1)地方から中央へ——“人を選ぶ”勇気の物語
(2)家族の“王家”に落ちる影——秘密の倫理
(3)副題“メイクデビュー”の二重性
順に見ていこう。
地方→中央という断層を越える「人選」
栗須が岩手の佐木に賭けたのは、“能力があるのに環境が許していない人間”をすくい上げる選択だった。
中央のライセンスという制度の壁、かつての不祥事という社会的レッテル—二重のハンディを抱える佐木に対し、平良記者まで巻き込んで交渉を続ける物語線は、「馬を見る目は、人を見る目に通じる」というこのドラマの信条を最もストレートに体現している。
つまり、馬の可能性を掘るために人の可能性を掘る——過去を抱えた人材に“次のチャンス”を与え、馬も人も初陣に立たせる設計。第4話は“人選=キャスティング”の論理が気持ちよく機能していた。
“ロイヤル”の家に漂う秘密の倫理
病院で露わになる“耕造の隠し子”の線は、単なるスキャンダルの投入ではない。
馬主として豪快な“王”に、家族の“影”を与えることで、「ロイヤル(高貴)」=「正しさ」ではないことを示す。
第4話の美点は、秘密の暴露を家族の崩壊劇ではなく、栗須と耕造の信頼を鍛え直す契機へと接続した点にある。耕造の信を失わせないために、まず栗須が向き合う姿勢が描かれる。
“王家の正しさ”は強さではなく、弱さの扱い方で測られる。最後に名前を与えられた青年・耕一の存在は、山王家の“家系”に更新=血のメイクデビューを呼び込んだ。
「メイクデビュー」は馬と人の二重奏
競馬用語としてのメイクデビュー(初出走)は、もちろんロイヤルホープに掛かる。
しかし第4話は、それを“人の初出走”にも重ねて描いた。
佐木が中央への挑戦に踏み出すこと、栗須が“人を見る責任”を背負って交渉の前面に立つこと、耕造が“父としての責任”と正面から向き合うこと——どれも「初戦」である。
日高の風景と病院の無機質な廊下を交互に見せる編集が、希望と不穏のコントラストを際立たせた。
サブテキストとして、山王家のビジネス上のスキャンダルが同時進行することで、“走り出したい現場”と“足を引く現実”が共存する世界の厚みも生まれた。
映像・ディテールの手触り
JRA協力による実景が生むリアリティが抜群だった。
ゲートやコースの空気感、日高の育成場の“音”が、人物の心情(近づきたい/近づけない)と精密にリンクしている。
後段の病院パートではそれが“静けさの圧”へと反転。
生の躍動=馬の現場、沈黙の圧=病院、そして両者の間で秘密が顕在化する——この温度差の編集が回の呼吸を支配していた。
シリーズ全体の“20年スパン”の中で、第4話は“呼吸の速い現場”と“呼吸の止まる秘密”を同フレームに収めた要所といえる。
キャラクター考察──栗須と耕造の“バディ”はどこへ向かうか
栗須は“馬を見る眼”を頼りに人も選ぶ。一方で、耕造の秘密を前にしては“人を見る痛み”から逃げない。
ここにバディドラマの醍醐味が立ち上がる。
栗須=合理と信義の調停者、耕造=情と責任の爆心という役割分担が、今回で明確になった。ふたりは対立しても崩れず、むしろ“恥の受け渡し”によって結束を強めていく。
だからこそ、ロイヤルヒューマン社のスキャンダルで優太郎がどう動くか(=どの“正しさ”を選ぶか)が、今後の家族内ダイナミクスの焦点となる。
総括──第4話が示した「信頼の構図」
乗り手不在の荒れ馬、地方騎手の起用という賭け、王家の秘密の露出。
これらが交錯し、馬を見る眼が人を見る眼へと拡張したことで、信頼の設計が改めて問われた。秘密は崩壊ではなく、関係の更新を促す要素として機能し、副題“メイクデビュー”が、馬と人の“初戦”として二重化した。
第5話以降は、ロイヤルホープのレースと山王家の“新しい家族”のダイナミクスが互いを照らし合う展開になるだろう。
期待と懸念(次話への視線)
次回予告では、耕造の“隠し子”と母・美紀子の素性がさらに掘り下げられ、ロイヤルホープはデビュー戦から弾みをつけて日本ダービーを目指すことが示唆される。
家族と馬という“二本のレース”が同時に加速する局面に突入。
視聴のポイントは二つ。
①佐木を“起用し続ける”覚悟の物語になるか(過去の問題を抱えた者と共に走るリアリズム)
②耕一が“血”だけでなく“仕事”のラインにどう接続されるか(山王家にとっての“継承”の定義が問われる)。
この二つが噛み合えば、タイトルの“ロイヤル”は“血統”の記号を超え、“信頼の技術”そのものを意味する言葉へと昇華されるはずだ。

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