『東京タラレバ娘2020』は、2017年に放送された大人気ドラマの続編として制作されたスペシャルドラマで、33歳を迎えた倫子・香・小雪の“その後”を描きます。
20代の頃は「いつか結婚できる」「仕事はそのうち評価される」と信じていた三人も、30代に差し掛かると現実の重みがのしかかり、恋愛・仕事・友情それぞれの選択に直面します。
過去への後悔や「もしも」に縛られながらも、自分の幸せをどう選び取るのか――本作は、アラサー女性のリアルな葛藤と成長を描いた必見の物語です。
ドラマ「東京タラレバ娘」とは?
連続ドラマ『東京タラレバ娘』(2017年放送)は、30歳目前の鎌田倫子(吉高由里子)が恋や仕事に「〜していれば」「〜だったら」と後悔のタラレバを繰り返す日常を描いた作品です。
倫子は売れない脚本家で、親友の香(榮倉奈々)と小雪(大島優子)とともに居酒屋で愚痴を言い合う日々を過ごしています。物語は、倫子が恋も仕事もうまくいかない日常から抜け出し、幸せを掴む決意をするところから始まります。
東京タラレバ娘2020の見どころ…3年後に訪れた新たな選択と揺れる心

2017年版ドラマの続編スペシャル『東京タラレバ娘2020』は、3年後の彼女たちの“今”を描きます。
33歳になった3人は、それぞれ新しい選択に直面。
香は小学校時代の同級生・ゆう(渡辺大知)と結婚、小雪は念願だったカフェ開店の準備に追われています。倫子は脚本家としては大きな成果を出せずにいるものの、図書館勤務の朝倉(松下洸平)と交際して1年を迎え、友人からは「そろそろプロポーズされるのでは?」とからかわれるほど。
デート中に思わず逆プロポーズした倫子に、朝倉は笑顔で応え、二人は本当に結婚することに。
東京タラレバ娘2020のあらすじ&ネタバレ

3年後に描かれる“タラレバ娘”たちの現在
3年ぶりに帰ってきた『東京タラレバ娘2020』は、33歳になった倫子・香・小雪の“今”を丁寧に描き、再び彼女たちに降りかかる恋と仕事の試練を通して、心の葛藤と成長を浮き彫りにしたスペシャルドラマです。
無名脚本家としてもがき続ける鎌田倫子(吉高由里子)は、図書館勤務の穏やかな男性・朝倉(松下洸平)と交際1周年を迎えています。かつて失恋に打ちひしがれた倫子を支えてくれたのが朝倉であり、彼と過ごす時間は素の自分をさらけ出せる安心感に満ちていました。
親友の香(榮倉奈々)は小学校時代の同級生・ゆう(渡辺大知)と結婚し、安定した家庭を築いています。小雪(大島優子)は父親が営む居酒屋「呑んべえ」の改装を進め、自分の店を持つ夢に向かって走り出していました。
幸せの絶頂から崩れ落ちる倫子
物語の序盤、倫子は香と小雪から「そろそろプロポーズされるんじゃない?」とからかわれます。その勢いのまま倫子は朝倉に「結婚しない?」と逆プロポーズ。
朝倉は笑顔で「俺もそう言おうと思っていた」と応え、倫子は幸せの絶頂に。しかし結婚準備が進む矢先、3年前にロサンゼルスへ旅立ったはずのKEY(坂口健太郎)が突然「呑んべえ」に姿を現します。
KEYは「あんたらまだタラレバやってんだ」と笑いながら、自分も海外で努力を積み重ねてきたことを語り「ようやくスタートラインに立てた」と口にします。倫子は再会に戸惑いながらも祝福しますが、彼が「結婚するんだろ?」と静かに告げた瞬間、胸の奥に複雑な感情が芽生えるのでした。
それぞれに訪れる揺らぎ
ここから三人の「幸せの揺らぎ」が始まります。倫子は脚本のコンペに挑みますが、新作ドラマの主演俳優が降板し企画が白紙に。香は義母との同居で息苦しさを覚え、夫に頼れず孤立。小雪はカフェ開業に奔走する中、かつて不倫関係にあった丸井(田中圭)から再び連絡を受け、未練と新しい恋の狭間で揺れます。
さらに衝撃が走ったのは倫子の結婚式当日。
式場に現れた朝倉の元恋人・ゆかが「彼の子を妊娠している」と告白。朝倉は動揺し、ゆかの手を取って式場を去ってしまいます。ウェディングドレス姿のまま取り残された倫子は、夢見た幸せが一瞬で崩れ去る現実に打ちのめされ、「呑んべえ」で涙を流しながら酒に溺れるのでした。
崩れた日常とKEYの言葉
結婚は白紙となり、倫子は朝倉と別れることに。香は倫子を励まそうと「マッチングアプリをやってみなよ」と提案し、小雪も「前に進まなきゃ」と背中を押します。しかし倫子は朝倉の元恋人のSNSを覗き、未練と自己嫌悪に苛まれるばかり。
そんな彼女の前に現れたのがKEYでした。倫子は怒りと悲しみをぶつけ「あなたと出会わなければ良かった」と泣き叫びます。KEYは「自分の幸せを他人のせいにするな」「タラレバばかり言ってるあんたが一番格好悪い」と真正面から批判。その言葉は倫子の心を深く突き刺し、彼女は初めて“過去の後悔に縛られ、誰かに寄りかかって生きていた自分”に気づき始めます。
香と小雪、それぞれの選択
一方、香は義母との確執が爆発し家を飛び出します。
だが帰宅すると、ゆうが手料理を用意して待っており「もう母さんには頼らない」と彼が自分の味方をしてくれたことに胸を打たれます。二人は話し合い、新婚生活をやり直すことに。やがて香は妊娠が判明し、未来への希望を抱きます。
小雪はマッチングアプリで男性と会うも心は満たされず、孤独感ばかりが募ります。そんな折、営業先で丸井と偶然再会。「カフェを開くんだって?おめでとう」と甘い言葉をかけられますが、「私は誰かの代わりじゃなく一番に愛されたい」と決意。丸井と二度と関わらないと心に誓いました。
脚本家としての覚醒
失恋を経て、倫子は脚本に改めて全力を注ぎます。
香田プロデューサーから深夜枠のドラマ企画を任され、彼女は自分の経験や友情を脚本に落とし込みます。主演俳優の降板というトラブルも乗り越え、ドラマは放送されると「リアルで泣ける」と話題に。自分の弱さや友人の支えを描いた作品が多くの人の心を動かし、倫子は「この物語を書いて良かった」と実感します。
KEYとの再会と別れ
クライマックスはKEYとの再会。彼が再びロサンゼルスへ戻る前、倫子は公園で彼に駆け寄り「酷いことを言ってごめん。あなたに出会えたから私は前に進めた」と涙ながらに告白。KEYも「俺が役者を続けられるのは、あなたが過去を吹っ切らせてくれたからだ」と感謝を伝えます。二人は抱き合いますが、KEYは「今はあなたを幸せにできる自信がない」と言い、再び旅立つことを選びます。
倫子も「待ってるとは言わない。私も自分の人生を生きる」と決意を口にしました。互いを想いながらも別々の道を歩む二人。ラストは香が妊娠を喜び、小雪がカフェオーナーとして新たな一歩を踏み出し、倫子は脚本家として次作に挑戦。女子会で「タラレバ言ってばかりじゃ前に進めない」と語り合う三人の姿に、彼女たちの物語は続いていくのだと示されました。
東京タラレバ娘2020の感想&考察

33歳という年齢が突きつける現実
『東京タラレバ娘2020』は、アラサー女性が直面する「選択」と「覚悟」をリアルに描き出した作品でした。
特に印象的だったのは、30代という年齢の重みです。20代の頃は「いつか結婚できる」「努力は必ず報われる」と未来を楽観できた。しかし30代に差し掛かると、現実はそう甘くないことを突きつけられる。
周囲は結婚や出産、キャリアアップを着実に叶えていく一方、自分だけ取り残されるのではないかという焦りや恐怖。倫子、香、小雪の三人はまさにその不安と向き合っていました。
ウェディングドレスが映し出す絶望
物語で最も心を揺さぶられたのは、倫子の結婚式が破談となるシーンです。逆プロポーズまでして掴んだはずの安定が、朝倉の元恋人の告白ひとつで崩れ去る…。ウェディングドレス姿で呆然と立ち尽くす倫子の姿は「こんなはずじゃなかった」という絶望の象徴でした。
その後、酒に溺れ「タラレバ」に逃げ込む倫子。しかしKEYから「自分の幸せを他人のせいにするな」と鋭く突きつけられ、彼女は初めて、自分が過去の選択に縛られ、他人に寄りかかって生きていたことに気づきます。苦しさと同時に、どこか吹っ切れたような彼女の表情が印象的でした。過去を悔やむこと自体は悪ではない。ただ、それを言い訳に立ち止まるのではなく、糧にして前進することの大切さをこのシーンから学べます。
香が直面する「普通の幸せ」の難しさ
香の物語も共感を呼びました。既婚者との不倫から抜け出し、「普通の幸せ」を求めて同級生のゆうと結婚した香。しかし実際には義母との同居や家事の押し付け、価値観のズレに悩み続けます。「愛されているはずなのに満たされない」という迷いは、多くの女性にとって現実的な悩みでしょう。
最終的に夫が義母に毅然と立ち向かい、二人は歩み寄りますが、「これで本当に幸せなのか?」という問いは完全には消えません。それでも妊娠が判明したことで、香は「彼と一緒に未来を築く」と覚悟を決めます。幸せの基準を他人ではなく自分で定めることの重要性を教えてくれるエピソードでした。
孤独と自立を選ぶ小雪の強さ
三人の中でもっとも孤独に向き合うのが小雪です。かつて不倫に溺れた過去を持ちながらも、父の店を継ぎカフェ開業という夢に挑む彼女。しかし周囲が家庭を築いていく中、自分だけが取り残されているような焦りに襲われます。「平凡な幸せですら遠い」と呟く姿には胸が締め付けられました。
それでも小雪は、再び甘い言葉をかけてきた丸井をきっぱり拒絶し、「私は一番に愛されたい」と自分の価値を貫きます。父の助言を受け止め、自立へと舵を切る小雪の姿は、依存からの脱却を象徴していました。
「タラレバ」という概念の変化
シリーズの冒頭、KEYが「タラレバばかり言ってる女はクソだ」と放った言葉は衝撃的でした。過去に縛られ後悔を繰り返す三人を鋭く突き刺したこの一言は、視聴者にも痛烈な印象を残しました。
しかし2020スペシャルでは「タラレバ」が単なる後悔ではなく、前進するための原動力として描かれています。倫子は朝倉との破局を「後悔だけど、そのおかげで進める」と語り、KEYも「後悔したから新しい恋ができた」と認める。三人が最後に「女子会やって、タラレバ言って、それでも前に進む」と笑い合うシーンは、後悔すら抱きしめながら生きていく強さを示していました。
KEYという存在の意味
KEYは、三人にとって時に厳しい言葉を放つ存在でありながら、その本質は彼女たちを目覚めさせる“鏡”でした。亡き妻への未練を抱え、「誰も愛せない」と苦悩しながらも倫子に向き合い、最後には「また戻ってくる」と約束する。彼が流した涙は、過去に囚われ続けた自分との決別を意味していたように思えます。
倫子とKEYは恋人関係にはならず、それぞれの人生を選びました。この結末は、大人の恋愛に潜む切なさと潔さを体現しており、「恋愛=結婚」が必ずしもゴールではないことを伝えてくれます。
脚本家としての倫子の覚醒
もう一つの見どころは倫子の仕事への向き合い方でした。かつて新人脚本家に仕事を奪われ、悔しさに打ちひしがれた彼女。しかし2020年版では、失恋を経て深夜枠のドラマを完成させ、「リアルで泣ける」と評判を得ます。
恋愛に逃げるのではなく、自分の言葉を武器に脚本と真正面から向き合う倫子の姿は眩しく、視聴者に「諦めずに挑戦し続けよう」と勇気を与えました。恋と仕事、夢と家庭。そのいずれもを大切にしながら、自分の納得できる答えを探していく姿勢が強く心に残ります。
三人の友情が示すもの
最終的に最も胸を打ったのは三人の友情でした。失恋に打ちひしがれる倫子を抱きしめる香と小雪。義母との関係に悩む香を励ます倫子と小雪。孤独に沈む小雪を笑わせようとする倫子と香。
喧嘩し、ぶつかり合いながらも、最後には「タラレバばかり言っていられないね」と笑い合える関係性は、年齢を重ねても変わらない女友達の絆の強さを物語っています。視聴者の多くが、自分自身の友人関係を重ね合わせ、胸が熱くなったのではないでしょうか。
まとめ ― “タラレバ”を抱えて生きる勇気
『東京タラレバ娘2020』は、過去や失敗を引きずりながらも前へ進む女性たちの姿を描いた物語でした。後悔や迷いを抱えても、自分で選んだ幸せを信じ、時に立ち止まりながら歩み続ける。
その姿は「完璧じゃなくてもいい」「タラレバを抱えたままでも生きていい」というメッセージとして響きます。未来は誰かが決めてくれるものではなく、自分自身の手で選び取るもの。このスペシャルドラマは、視聴者にそんな勇気を与えてくれる作品でした。
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