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ドラマ「臨場 続章」シーズン2の7話のネタバレ&考察。“声”に追い詰められた女記者の最期

ドラマ「臨場 続章」シーズン2の7話のネタバレ&考察。“声”に追い詰められた女記者の最期

第7話「声」は、犯人を追う物語であると同時に、「人はどんな声に殺されるのか」を問う回だ。ホテルで起きた主婦殺害事件を追っていた週刊誌記者・斎田梨緒は、脅迫を受け、襲撃され、警護まで付いた矢先に自宅で遺体となって見つかる。状況だけを並べれば、追っていた犯人に消されたと考えるのが自然に見える。

だが倉石義男が拾い上げるのは、その“分かりやすさ”に乗らない痕跡だ。割れた鏡、残されたナイフ、部屋に漂う生活の気配。それらは他殺にも自殺にも見え、見る側の先入観によって意味が変わってしまう。検視官心得となった小坂留美は、感情に引きずられながらも、死者の残した“声”を物証から聞き取ろうとする。

この回が突きつけるのは、暴力よりも言葉が人を傷つける瞬間だ。脅迫の声、世間の声、過去の声、そして自分自身の声。そのどれが致命傷になったのかを、倉石班は静かに掘り下げていく。

※この記事は、ドラマ「臨場 続章」第7話「声」の結末までのネタバレを含みます。未視聴の方はご注意ください。

目次

ドラマ「臨場 続章」7話のあらすじ&ネタバレ

ドラマ「臨場 続章」7話のあらすじ&ネタバレ

第7話のタイトルは「声」。ホテルで起きた“主婦殺し”を追っていた週刊誌の女性記者が、今度は自宅で遺体となって見つかる。しかも、警護を付けた矢先だ。状況だけ見れば「追っていた犯人に消された」と言いたくなるのに、現場に残った痕跡は、別の結論も示してしまう――検視官心得になった小坂留美にとって、仕事の芯を問われる回になっている。

この回を一言でまとめるなら、「聞こえているはずの声が、いちばん肝心なところで聞こえていない」。脅迫電話の声、加害者の声、周囲の声、そして本人の声。いくつもの声が飛び交う中で、倉石義男が求めるのは“死者の声を根こそぎ拾う”ことだった

取材の始まり――「女として働く」留美に近づく週刊誌記者

検視官心得となった留美の元に、週刊誌の女性記者・斎田梨緒が取材に訪れる。梨緒は、警察という過酷な男社会で働く女性の苦労を聞きたいと言う。いわゆる事件の“裏取り”ではなく、職場のリアルに切り込むタイプのインタビューだ。

留美が構えるのは当然だ。週刊誌は、被害者の人生も遺族の涙も、時に「売り物」にする。鑑識にいると、そういう場面を何度も見てきた。けれど梨緒の目は、軽い好奇心とは違う。どこか怒りを抱えたような、鋭く乾いた目をしている。男社会に適応しながらも、どこかで折り合いをつけられていない――そんな“同族”の匂いがする。

梨緒の質問も、きれいごとで終わらない。「女ってだけで舐められることは?」「現場で怖い思いは?」と、踏み込む。留美は答えを選びながらも、相手が本気で“女の現実”を聞きたがっていることは感じ取る。ただ、その本気がどこから来ているのかまでは、まだ掴めない。

インタビューを始めようとした矢先、永嶋から臨場要請の電話が入る。留美は梨緒を同行させ、現場へ向かう。取材対象の背中を追いかける梨緒と、死体を前に職務を果たす留美。この“同行”は、後に留美が梨緒の死を受け止め切れなくなる伏線でもある

ホテルの一室――「変死」では済まない痕跡と、倉石の即断

現場はホテルの一室。女性の変死体が発見されたという通報で、倉石、留美、永嶋が臨場する。そこには捜査一課へ異動した一ノ瀬和之の姿もある。スーツに身を包んでいても、どこか“現場の刑事”としては板についていない。逆に言えば、鑑識と捜査一課、チームが分かれても縁は切れていないことが、この回でも見える。

倉石はまず、遺体の状態を静かに拾っていく。死後硬直、皮膚の色、首周りの痕、室内の空気。やっていることは淡々としているのに、視線だけが鋭い。遺体には首を圧迫された痕があり、指の圧迫痕が残っている。倉石はそこを見て、迷いなく「殺しだ」と断定する。自殺なら、こんな痕は残らない。現場での“見立て”は、いつも通り早い。

遺体が搬送される瞬間、梨緒はその遺体を蔑むような目で見送る。ここが妙に引っかかる。普通の記者なら、ショックや同情、あるいは職業的な冷静さが表に出る。梨緒の視線は、それよりも冷たく、怒りに近い。倉石がその一瞬を見逃さないのが、このドラマらしい。彼は後に留美へ「ホントに憎いのは男なのか?」と問いを投げるが、その問いの種はこの場に落ちている。

被害者は主婦で、ホテルで亡くなっていた。表向きの印象は「不倫」「出会い系」「密会」――世間が勝手に想像しやすい条件が揃っている。だからこそ、遺体を“蔑む目”で見る人間がいても不思議ではない。だが倉石班は先に“死の事実”を拾う。誰と会うつもりで、どういう状況で、どんなふうに殺されたのか。ここから捜査一課が動き出す。

指名手配・安藤高一――「過去」が疑いを加速させる

ホテルの室内から採取された指紋などを照合すると、前科のある男・安藤高一が浮上し、指名手配される。彼は過去にも女性を絞め殺して実刑を受けたことがあり、出所してまだ日が浅い。こういう前歴は、捜査にとって“分かりやすい線”になる。だからこそ、世間もメディアも、一気に「安藤がやった」に傾く。

一ノ瀬たちは逃走ルートを洗い、関係先を当たる。安藤の“過去”を知っているからこそ、先回りして網を張るしかない。ここでの一ノ瀬は、鑑識課で倉石に振り回されていた頃とは違う。捜査一課として、結果を出さなければいけない立場になっている。

一方、梨緒は“安藤”という分かりやすい悪を、記事として燃やす。世間の怒りを言語化し、容疑者を断罪する。週刊誌の力学としても、ここは売れる。編集部の空気が、梨緒の背中を押す

主婦殺しの裏側――「蔑みの目」が生まれる場所

ここで改めて痛いのは、最初に亡くなった“主婦”の扱われ方だ。ホテルで死んだというだけで、世間は勝手に物語を作る。「不倫していた」「出会い系に手を出していた」「自業自得だ」――そういう言葉が、被害者を二度殺す。梨緒の蔑むような目は、その世間の視線と地続きにも見える。

だが倉石班が拾うのはラベルじゃない。首の痕、指の圧迫痕、現場の空気。被害者がどんな理由でホテルにいたのかは、捜査の先にある。現場で先にやるべきことは、「この死が他殺である」という事実を揺らがせないことだ。ここが鑑識と週刊誌の違いでもある。週刊誌は“理由”を先に欲しがる。鑑識は“結果”を先に拾う。

被害者の人生を“ホテルで死んだ主婦”に縮めた瞬間、被害者の声は消える。倉石の哲学は、その消えた声を拾うためにある。梨緒が記者として取材していたのも本来はそこだったはずだが、彼女は途中から自分の傷に引っ張られていく

記事が煽り、声が返ってくる――脅迫電話「死ね」「消えてなくなれ」

だが記事は火をつける。匿名の“声”が梨緒へ向かって飛んでくる。電話口で「死ね」「消えてなくなれ」と繰り返され、ファックスやメールでも同じ言葉が送られてくる。表面上は「安藤からの脅迫」だが、誰が送っているのかは分からない。声の正体が不明なまま、言葉だけが人を削っていく。

梨緒の周囲の人間は、この“声”への反応がバラバラだ。警察は危険と見て警護を考える。編集部は「面白くなってきた」と言外に感じさせる。競合誌は、梨緒の弱り目を狙って引き抜きをちらつかせる。声が届いているのに、誰も同じふうには聞いていない。

梨緒自身も、“声”を脅迫として受け止めながら、どこかでそれを「慣れた痛み」のように処理している節がある。だからこそ余計に危ない。外からの暴力に備える人ほど、内側の傷に無防備になる

襲撃――「脅迫電話」が現実の暴力に変わった夜

脅迫が続く中、梨緒は仕事帰りに襲われる。首を狙われ、命の危険に晒されるが、一命は取り留める。状況から襲撃者は安藤だと疑われ、捜査一課も本腰を入れる。

留美が駆けつけたときの梨緒は、強気な言葉とは裏腹に、身体が正直に怯えている。恐怖は理屈を超える。取材の場で見せていた“男嫌い”の表情も、ここでは少し違う。男への憎しみというより、もっと深いところが震えている。

この襲撃がさらに残酷なのは、梨緒の職場が彼女を守るどころか、襲撃を「ネタ」にしようとすることだ。編集部の男たちは「襲われたことを書け」「読者が食いつく」と迫り、身体的に近づくような形で圧をかける。彼女の危機が、彼女の尊厳ごと消費されていく。ここで梨緒は、仕事のためというより、意地で記事を書こうとする。負けたまま終わらせない。そうやって踏ん張る姿が、後の展開を余計に痛くする。

捜査一課は梨緒の身の安全を守るため、警護を付ける。自宅周辺への張り込み、警戒の徹底。ここまでやれば守れるはず――現場の誰もがそう思った

張り込みの矢先に――斎田梨緒、遺体で発見

だが翌日、梨緒は自宅で遺体となって発見される。警護を付けた矢先だ。捜査一課の立原真澄が怒りを爆発させるのは当然で、張り込みが機能していなかった事実は、現場全員の失点でもある。

部屋には、脅迫を示すファックスやメールが残っている。割れた鏡、額の傷、腹部に刺さったナイフ。状況だけを並べれば「脅迫していた犯人が乗り込んで殺した」に見える。安藤が逃走中ならなおさらだ。視聴者の頭の中にも、一度はその線が走る。

だが倉石は、現場の“それっぽさ”に乗らない。留美へ見立てを命じ、細部を拾わせる。ここからが鑑識パートの本領だ。留美は現場を前に、すぐに“他殺”と言い切れない。理由は単純で、他殺なら残るはずのものが無いからだ。

まず、防御創が目立たない。首を絞められた、あるいは揉み合ったなら、腕や手に抵抗の痕が残りやすい。次に、室内の荒れ方が中途半端だ。争った形跡を作ろうとしたようにも見えるのに、決定的な破壊は鏡だけ。そして、刺さったナイフの柄の高さと同じ位置に壁のへこみがある。第三者が刺したなら、壁にそんな痕が残る状況は限られる。

留美は「自他殺不明」と見立てる。現場は他殺のようでいて、自殺の構造も同居している。検視官心得になったばかりの留美にとって、この判断は重い。なぜなら“自殺”と言ってしまえば、捜査の空気が一気に変わる。だが、物証がそう言っている以上、逃げられない

安藤確保――それでも梨緒の死は埋まらない

捜査一課は安藤を確保する。ホテルで亡くなった主婦の件は、ここで一応の決着がつく。だが梨緒の死とは結びつかない。ここで話がひっくり返る。視聴者も現場も「じゃあ誰が?」になる。

“安藤が犯人”という分かりやすい物語は、梨緒の死の前では崩れる。逆に言えば、梨緒の死は「分かりやすい物語」を拒む。脅迫の声も、襲撃の暴力も、確かに存在した。それでも最後の死は、別の方向から起きている。

それでも“他殺”を疑いたい――留美が見た梨緒の顔

もし他殺なら、顔見知りの可能性が高い。梨緒は取材を通じて多くの人間と接しているし、職場には露骨に距離を詰めてくる男もいた。留美は、取材の場で感じていた違和感から、ある二人の男の名前を一ノ瀬に伝える。ひとりは梨緒の上司である編集長・井ノ上公平。もうひとりは、引き抜き話をちらつかせながら言い寄っていた別の週刊誌の編集長・大貫孝だ。

捜査一課が聞き込みを始めるが、二人はそろって「女からの電話で呼び出されていた」と主張する。アリバイがあいまいで逆に怪しいが、決定打にはならない。留美の推測は、捜査を動かすほど強くは結びつかない。

ここで留美は焦る。梨緒の死を“自殺”と片づけたくない。取材で会ったときの梨緒は、死ぬような人間には見えなかった。あの目の鋭さ、あの言葉の強さ。だからこそ留美は「犯人がいるはず」という感情に引っ張られてしまう。彼女にとって梨緒は、ただの死体ではなく、同じ“女の戦場”を歩く人間だったからだ。

倉石の叱責――「犯人ありき」で見立てるな

その留美を、倉石が止める。お前の仕事は何だ。死んだ彼女の声を根こそぎ拾うことじゃないのか。犯人ありきで見立ててどうする――倉石の言葉はきついが、鑑識という仕事の原理を突いている

倉石が言う「声」は、泣き声でも叫びでもない。遺体に残る痕跡、部屋に残る生活の匂い、身近な人の証言、過去の記録。そういうもの全部を拾い集めた先に、ようやく聞こえてくる“沈黙の声”だ。ここで留美は初めて、自分が見ようとしていたのは「犯人」ではなく「分かりやすい物語」だったと気づく。

倉石が留美を叱るのは、感情が悪いからじゃない。感情で目が曇ると、拾えるものを拾えなくなるからだ。梨緒が現場で遺体を蔑むように見送った目。それは「男が憎い」という直線の感情ではなく、もっと複雑なものを含んでいた。その複雑さを拾い切らずに、犯人探しに走ったら、結論は必ずズレる。

再臨場――写真のない部屋と、割れた鏡が示す心理

留美は永嶋とともに、梨緒の部屋を改めて見直す。そこで浮かぶのは、生活感の薄さだ。部屋が妙にシンプルで、写真がない。家族写真も友人の写真も、過去を残すものが見当たらない。普通なら当たり前にある“思い出”が、意識的に排除されているように見える。

割れた鏡も同じだ。鏡は、他人が壊したのか、自分で壊したのか。額の傷は、殴られた傷にも見えるし、鏡を叩き割った反動でできた傷にも見える。物証だけでは断定できない。だが「鏡を壊す」という行為そのものが、メッセージになる。自分の顔を、女としての自分を、見たくなかったのではないか――そういう方向へ、留美の見立てが動き始める。

そして壁のへこみ。ナイフの柄の高さと一致する痕は、刺した瞬間に柄が壁に当たった可能性を示す。自分で刺すなら、壁に体重を預けるような姿勢になることはあり得る。抵抗がないこと、防御創が薄いことも、それを補強する。現場は、じわじわと「自殺の構造」を見せ始める。

叔父・叔母の証言――“強い女”の仮面の下

留美たちは梨緒の身内にも当たる。梨緒の叔父・叔母(吉村夫妻)は、彼女が幼い頃に両親を亡くし、家庭が壊れたことを語る。あの強気な梨緒にも、帰る場所があった。だがその帰る場所ですら、彼女の傷を完全には癒せなかった。

身内の口から語られる梨緒は、仕事場で見せる梨緒とは少し違う。意地っ張りで、弱みを見せない。ときどき無理に明るく振る舞う。自分の過去に触れられることを嫌がる。写真を残さないのも、思い出が嫌いだったからじゃない。“思い出”が痛すぎたからだと、ここでようやく腑に落ちる

梨緒の過去――“男嫌い”の奥にあった傷

留美はさらに梨緒の過去を辿る。幼い頃、両親が心中で亡くなった。家庭が壊れた背景には借金問題もあったとされ、梨緒は親族に引き取られて育った。

だが、決定的だったのは再婚した父親から受けた性的虐待だ。梨緒が男を憎む言葉を吐き、男社会を冷めた目で語り、セクハラに敏感に反応するのは、単なる思想や性格ではなく、傷の裏返しだった。

さらに残酷なのは、梨緒が母親から「消えてなくなれ」「お前が悪い」と言われ続けたと思い込んでいたことだ。自分が汚されたせいで家族が壊れ、母が死んだ。そうやって罪悪感を背負い続けてきた。外から見れば理不尽でも、当事者の心はそう簡単に切り替わらない

ボイスレコーダー――“声”が残っていた場所

決定打になるのが、梨緒が日記代わりに使っていたボイスレコーダーだ。文字ではなく声で残す。そこには、強がりで固めた仮面を外した梨緒がいる。

録音された声は、男への憎しみを語っているようで、途中から矛先が変わっていく。憎いのは男なのか。いや、違う。憎いのは「女である自分」だ。自分が女でなければ、あんなことは起きなかった。自分が女である限り、また同じことが起きる。そういう歪んだ結論に、彼女の心が落ちていく過程が、声の温度で伝わってくる。

ここで、冒頭から梨緒に向けられていた「死ね」「消えてなくなれ」が別の意味を持つ。脅迫電話の声として聞こえた言葉は、梨緒が自分に向けて浴びせ続けてきた内なる声でもあった。声は外から届いたのではなく、彼女の中から湧き続けていた

梨緒が残した“疑い”――男たちへの、ささやかな復讐

梨緒は自殺した。だが同時に、他殺に見える状況を残している。そこには、彼女を追い詰めた男たちへの怒りも混ざっている。襲撃をネタにし、身体的に距離を詰め、弱っている彼女を利用しようとした男。引き抜き話の裏で、ホテルに誘うような男。梨緒は、そうした男たちに疑いが向くような“匂い”を残した。

完全に誰かをハメて逮捕させるほどの筋書きではない。けれど「疑われる側」に落とすことはできる。自分はずっと疑われ、見下され、利用されてきた。なら最後に、その視線を男たちへ返してやる――梨緒の残した舞台装置には、そういう感情が見える。留美が最初に“男の容疑者”へ引っ張られたのも、梨緒が残した匂いが強かったからだ。

最後の再現――「他殺に見せた自殺」という選択

現場の物証とボイスレコーダーの声が噛み合ったとき、留美の見立ては収束する。梨緒は、自殺した。そのうえで、他殺のように見える舞台装置を残した。

脅迫のファックスやメールは、第三者の犯行を匂わせるための“演出”にもなり得る。割れた鏡と額の傷も同じだ。鏡を割り、顔に傷を作れば、外部から殴られたように見える。腹部のナイフも、刺し方次第で他殺のように見せられる。そして壁のへこみは、その“刺し方”を裏づける痕跡だった。

留美が怖いのは、ここまで揃ってもなお「断言」ができないことだ。自殺は、本人しか最後まで分からない。だから鑑識は物証を積む。物証が積み上がった先に、ようやく“声”が立ち上がる。梨緒は、他殺に見せることで「誰かに殺された」ことにしたかったのかもしれない。だがその本音は、録音された声が語っている

“母の声”の正体――届かなかった保護と、残された誤解

さらに掘り下げると、梨緒が抱えていた最大の誤解が浮かぶ。彼女は母の声を「呪い」として抱えていたが、母は本当に娘を呪っていたのか。

両親の死は、単純な心中ではない可能性が示される。父親の腕に残った痕跡が、母が父を無理やり道連れにした形――つまり“無理心中”だったことを匂わせる。母は、娘を苦しめた男から娘を守るために、最後に自分の人生ごと断ち切ったのかもしれない。

だが、その真意は梨緒に届かなかった。届かなかったから、梨緒はずっと「自分が悪い」と思い続け、母の声を呪いとして聞き続けた。人を殺すのに刃物はいらない。声ひとつで、人は自分を殺してしまう。この回のタイトル「声」は、そこまで踏み込んでいる

事件の終わり――留美が持ち帰った“検視官心得”の重み

梨緒の死が自殺だと分かったとき、留美の中には苦さが残る。技術としては「自他殺不明」から始めた見立ては間違っていなかった。だが彼女は、感情で犯人探しに走り、肝心の“声”を拾い切れていなかった。倉石に叱られて初めて、物証と人生を同じ重さで積み上げることの難しさを知る。

ホテルで亡くなった主婦も、梨緒も、最後は“声”を残せなかった側の人間だ。どちらも、世間が勝手にラベルを貼りたがる。「不倫していた主婦」「男を憎む女記者」。でも倉石が拾おうとしたのは、ラベルの内側にある個人の人生だった。留美はそのやり方を、痛いほど学ぶ。事件は解決しても、学びは残る――第7話はそういう終わり方をする。

また、この回は“一ノ瀬の立ち位置”も地味に効いている。鑑識課にいた頃は、倉石に振り回されながらも「現場でホトケに向き合う」側にいた。一方で捜査一課に移った今、彼は「犯人を捕まえる側」になり、安藤確保という結果は出す。けれど梨緒の死には手が届かない。事件の中心が「外の敵」から「内の声」へ移った瞬間、刑事の武器は効かなくなる。だからこそ留美が“見立て”で踏ん張るしかなくなる。

そして最後に残るのは、梨緒が抱えていた誤解だ。母の声を呪いとして聞き続けた梨緒にとって、「母は守ろうとしていたのかもしれない」という事実は、あまりにも遅すぎる救いになる。父親の腕に残った痕跡が示した“無理心中”の可能性は、母の行動が「見捨て」ではなく「断ち切り」だったことを匂わせる。それでも梨緒は、その声を聞けないまま死んだ。ここが胸に刺さる。

事件後、梨緒の生活の痕跡は少しずつ片づけられていくが、倉石は“根こそぎ”の人間らしく、彼女が残したものをできる限り拾おうとする。その象徴のひとつとして、梨緒が飼っていた犬を引き取る形も描かれている。死者がいた場所に、もう一度「生」を置き直すような、倉石らしい後始末だ。

「声」というタイトルが巧いのは、梨緒が“言葉で戦う人間”だったこととも重なる点だ。彼女は記事で加害者を糾弾し、社会の怒りを代弁し、男たちの理不尽にも言葉で噛みつく。つまり武器は声だ。ところが彼女を最後に殺したのも、また声だった。脅迫の声に追い詰められ、過去の声に縛られ、自分の中の声に刺された。武器が、そのまま刃になって返ってくる構造が、この回の救いのなさを強くしている。

一方で、留美にとっては“声を拾う訓練”の回でもある。目の前の状況が「他殺っぽい」ほど、逆に冷静に積み上げる必要がある。疑うべきは犯人ではなく、先入観だ――倉石の叱責はそこに刺さっている。梨緒の死は自殺という結論に落ち着くが、それは「彼女が弱かったから」ではない。弱さと強さが同居したまま、声に追い詰められた結果だということを、留美は物証と記録から学んでいく。

ちなみにこの第7話は、ゲストとして前田愛が梨緒役で登場し、井ノ上公平(松澤一之)ら編集部サイドも物語の圧力として効いてくる回だ。物証で詰めていく捜査ドラマの顔と、傷を抱えた人間ドラマの顔が一番きれいに重なるのが「声」。だからこそ、見終わった後に残るのは“解決”よりも、“聞けなかった声”の残響だった。しばらく胸の奥で“声”が残り続ける

ドラマ「臨場 続章」7話の伏線

ドラマ「臨場 続章」7話の伏線

続章7話「声」は、序盤で“主婦殺し”を置きつつ、物語の中心を「週刊誌記者・斎田梨緒(前田愛)」の内側へじわじわ寄せていく回です。留美(松下由樹)が検視官心得として取材を受け、その矢先にホテルで女性の変死体が見つかる――ここまでは王道の事件もの。ところが、梨緒が自宅で遺体となって発見された瞬間から、視聴者の“犯人探し”は一気に加速します。

ただ、倉石(内野聖陽)は最初から「犯人」を追わせるより、「死者の声」を追わせる方向にレールを敷いている。7話の伏線は、いわゆる“トリックの種”だけじゃなく、梨緒の人生観・自己認識・言葉の癖まで含めて配置されていました。

伏線1:現場で梨緒が見せる“目”が、事件の主役を指し示している

最初の事件(ホテルの変死体)で、梨緒は遺体を運ぶ様子をどこか蔑むような視線で見送る。その“目”を倉石が見逃さず、引っかかりとして拾う流れが入ります。
この時点で、梨緒は「被害者に共感できない人」に見える。でも後から振り返ると、あれは冷酷さというより“自分の中の何か”を刺激された反応なんですよね。遺体を見ているようで、実は“自分の過去”に触れてしまっている。倉石が引っかかったのは、そこに「事件の答え」があると読めたからだと思います。

伏線2:「死ね」の脅迫は“外からの攻撃”に見せて、最後に意味が反転する

梨緒が安藤を糾弾する記事を書いたあと、脅迫電話(「死ね」)が来る。さらに自宅にはファックスやメールで「死ね」が大量に届いている。
普通なら“犯人(=安藤)からの報復”で一直線なんですが、この回はそこがミスリードの肝。言葉そのものが、外部の脅しであると同時に、梨緒の中で長年反復されてきた「内側の声」でもある――終盤でそれがひっくり返るように回収されます

伏線3:割れた鏡と額の傷――「他人にやられた」より「自分で壊した」匂い

梨緒が遺体で見つかった部屋には割れた鏡、そして彼女の額の傷。現場写真としては“争った痕跡”に見えるのに、肝心の防御創(抵抗した傷)が見つからない。
鏡って、物語ではほぼ確実に「自己像(自分自身の見え方)」と結びつく小道具です。鏡が割れている時点で、暴力の方向が“外”ではなく“内”に向いている暗示になってる。額の傷も、襲撃の証拠に見せつつ、実は「自分を壊す行為」と地続き。

伏線4:ナイフの柄の高さと壁のへこみ――物理が嘘をつかない

留美が「自他殺不明」と見立てる決定打のひとつが、壁のへこみの高さと腹部のナイフ(柄)の高さが一致する点、そして防御創がない点。
ここ、視聴者が“感情”で「他殺に違いない」と思っているところへ、物理が冷たく割って入ってくるんですよね。
「争ったから鏡が割れた」「だから他人がいる」ではなく、争いがあったなら必ず残るはずの痕跡が残っていない。倉石がいつもやる“死体が語る事実”が、ここでも先に出ている。だからこそ、後半の心理的真相につながる伏線として効いています。

伏線5:部屋がシンプルすぎる、写真がない――“過去を消したい”という意思

留美と永嶋が再検証する中で気づくのが、梨緒の部屋のシンプルさ、写真類が一切ないこと。
これ、事件の手がかりというより「生き方」の手がかりです。写真がない部屋は、思い出がない部屋じゃなく、思い出を置かないと決めた部屋。
後半で語られる梨緒の家庭環境(虐待の過去、母の死の受け止め方)に繋がって、「彼女が何から逃げ、何を捨てたかったのか」が見えてきます。

伏線6:ボイスレコーダー=タイトル「声」への直結(チェーホフの銃)

この回は“声”というタイトルの通り、最後は梨緒が残した音声が鍵になる。
文章(メール、ファックス)で「死ね」が積み上げられる一方で、本当に決定的なものは「声」として残る。
つまり、視覚情報で“他殺”を見せ、聴覚情報で“真相”を明かす構造になっていて、これが伏線としてかなり巧い。視聴者の認知の癖(見たものを信じる)を利用してるんですよね

伏線7:留美の“犯人ありき”を倉石が止める――テーマの伏線(=見立ての倫理)

留美は梨緒に寄り添うあまり、編集長たちを疑い、「犯人」に焦点を当ててしまう。そこに倉石が「ホトケの声を拾え」「犯人ありきで見立てるな」と釘を刺す。
この叱責は、単なる指導じゃなく、この回の結末そのものの伏線です。
7話は“他殺か自殺か”の謎で引っ張りつつ、最後に「本当に拾うべきは、死者が抱えていた声だった」と着地する。倉石の台詞が先に“答えの形”を提示しているんですよ


ドラマ「臨場 続章」7話を見た後の感想&考察

7話「声」は、続章の中でも特に胸に残るタイプの回でした。事件としては、ホテルでの主婦殺し→容疑者(安藤)の浮上→梨緒への脅迫と襲撃→警戒中にもかかわらず梨緒が自宅で死亡、という“サスペンスの王道”を踏んでいる。
でも本当に怖いのは、最後に分かる「犯人」ではなく、“彼女の中で鳴り続けた声”のほう。ここを真正面から描いてしまったのが、この回の強さだと思います。

「声」というタイトルが残酷:外の脅迫と内の呪いが同じ音になる

物語の前半にある「死ね」という脅迫は、視聴者にとって分かりやすい悪意です。電話、ファックス、メール――誰かが彼女を追い詰めている。
ところが終盤、「死ね」「消えてなくなれ」は“外”から届いた言葉ではなく、“内”で反響し続けていた言葉として立ち上がってくる。

ここがね、めちゃくちゃ残酷なんですよ。
外の脅しなら、逃げる手段がある。通報もできるし、距離も取れる。でも内側に住みついた声は、どこへ行っても一緒に来る。むしろ静かな部屋ほど大きく聞こえる。
梨緒の部屋が“シンプルすぎた”のは、生活感の問題じゃなくて、声が反響する箱を自分で作ってしまっていたようにも見えました

臨場らしいロジックが、感情の地雷原に踏み込むとき

このドラマって、基本は「身体=証拠」です。吉川線だの圧迫痕だの、物理的なサインから真実を積み上げていく。7話でも、壁のへこみとナイフの高さ、防御創の欠如といった“物理”が「自殺の可能性」を突きつける。
でも、そのロジックの到達点が、単なる「自殺でした」で終わらない。自殺の“理由”が、人間の尊厳の根っこに触れてくる。

ここで倉石の仕事観が効いてくるんですよね。
検視官の見立ては、犯人当てじゃない。死者の人生を、最後にもう一度“正確に”拾い直すこと。だからこの回は、ロジックでたどり着いた先に「生き方の検視」がある。
理屈で真実に届くほど、感情は追いつかなくなる。そのギャップが、見終わったあとにズシンと残る。

留美の成長回:共感が“見立て”を歪める瞬間がリアル

7話は留美が主役回でもあります。梨緒は取材対象であり、同じ“男社会”で働く女性でもある。だから留美は感情移入してしまうし、「彼女が自殺するわけがない」と思う。
それ自体は人として自然なんだけど、仕事としては危険。倉石が言う「犯人ありきで見立てるな」は、留美の共感を否定してるんじゃなく、共感が判断を歪める瞬間を止めてるんだと思います。

この回の上手さは、留美を“未熟者”として笑いものにしないところ。
むしろ、共感があるからこそ苦しくなる構造を、ちゃんと描いてる。共感できる人ほど、救えない現実に対して無力になる。留美が揺れるのは、彼女がちゃんと人間だからです

「男社会」の描き方が、単純な悪役化じゃなくて怖い

副編集長のセクハラまがいの態度や、編集長たちの“利用できるなら利用する”空気は、見ていて普通に腹が立つ。
ただ、ここで重要なのは、彼らが“モンスター”として描かれるわけじゃない点です。
言い方は悪いけど、「こういう奴、現実にいそう」が一番怖い。しかも本人たちは、悪いことをしている自覚が薄い。その鈍感さが、梨緒の過去の傷と結びついた時、致命的な引き金になる。

そして安藤。彼は明確に危険で、実際に梨緒を襲うし、最初の事件の容疑者として指名手配される。
でも、それでもなお「梨緒の死の核心」は安藤じゃない。ここがこの回のしんどさです。
“外の悪”を倒しても、“内の声”は残る。つまり、勧善懲悪じゃ救えない領域を描いてしまっている

「母の声」が届かなかった悲劇:本当は守られていたのに、本人には届かない

終盤で明かされる家庭の話は、直視しづらい。梨緒は義父からの性的虐待の過去を抱え、母の言葉(だと思い込んだ声)に縛られてきた。
一方で、母は娘を守ろうとしていた可能性が示される。母は夫と無理心中し、結果として虐待の連鎖を断とうとした――でも、その“意図”が梨緒には届かなかった。

この「届かなさ」が、この回の一番の地獄だと思いました。
守る行為って、本人がそれを“守り”として受け取れなければ、ただの出来事になる。
梨緒が最後まで「自分が悪い」という物語から出られなかったのは、誰かが悪かったというより、彼女の中で“説明が固定化”してしまったからなんですよね。いったん固定すると、どんな事実もそこにねじ曲げて当てはめてしまう

ボイスレコーダーという装置の功罪:便利すぎるけど、それでも“声”は残る

正直、物語の都合として「ICレコーダー(ボイスレコーダー)が強すぎる」問題はある。真相に近づくための装置として便利すぎる。
でも、この回に限っては、便利さが“テーマ”に直結しているから、許せてしまう部分がある。

文字(メール、ファックス)は“誰かが書いたもの”として疑える。なりすましもできる。
でも声は、もっと生々しい。抑揚、息遣い、間。そこには嘘をつく前の本人が混じる。
倉石が留美に渡す音声が、同僚と飲んでいる時の弾んだ声だった、という締めがまた刺さる。希望を語れる瞬間が確かにあったことが、逆に残酷なんです

まとめ:倉石の「根こそぎ拾う」は、事件解決のためじゃなく“取りこぼさない”ためにある

7話を見終えて残るのは、「誰が殺したか」より、「どうして彼女は自分を殺すしかなかったのか」という問いでした。
倉石の“根こそぎ拾う”は、犯人を裁くための標語じゃない。死者の人生を、雑に処理しないための倫理だと思うんですよ。

そして留美にとっては、あの回はきっと“誇り”にも“痛み”にもなったはず。
「検視官の仕事ってすごい」――永嶋がそう感じたのも分かる。検視は、死者の最期を拾う仕事であると同時に、生者の見たくない現実を可視化する仕事でもあるから。

重い回だけど、だからこそ、続章の中で異様に記憶に残る。
“声”って、誰かに聞かれた時点で、やっと現実になる。梨緒が遺した声は遅すぎたけど、それでも「何が起きていたのか」を残した。倉石はそれを拾った。――ここに救いがあるかどうかは人による。でも少なくとも、彼女の人生が“なかったこと”にされなかった、という一点だけは確かだと思います

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