終幕のロンド10話は、樹と真琴が一瞬だけ掴んだ「家族みたいな時間」が、御厨家と世間によって無残に引き裂かれる回でした。
前話で積み上げられた静かな幸福は、この10話で一気に崩壊へ向かい、過労、隠蔽、不倫という現実的な暴力が重なっていきます。
ここでは10話を見終えた視点から、物語の構造と感情の流れを整理し、最終回へ残された課題を考察します。
終幕のロンド10話のあらすじ&ネタバレ

第10話(2025年12月15日放送)は、樹と真琴がようやく掴んだ“家族みたいな時間”の直後に、御厨家と世間そのものが、その小さな幸せを容赦なく粉砕しにくる回でした。
ここから先は第10話のネタバレを含みます。未視聴の方はご注意ください。
「家族みたいな時間」に差し込む“利人の影”
前話で、樹は真琴への想いを隠せなくなり、利人が法的手段に出る可能性すら覚悟したうえで気持ちを伝え、ついに真琴と心を通わせました。
しかし、その“幸せな時間”は長くは続きません。
御厨ホールディングスでは、剛太郎が次期後継者として彩芽を指名。社長の座を約束されていたはずの利人は、妹にその立場を奪われる形となり、悔しさと焦りを隠せない様子を見せます。
そんな中、樹と陸は手作りのサンドイッチを持って公園へピクニックに出かけ、陸の希望で真琴も合流。三人はほんのひととき、“家族の形”を演じるような穏やかな時間を過ごします。
しかし、その様子を公園の外から静かに見つめていたのが、疲れ切った表情の利人でした。利人は神妙な面持ちで、何も知らない陸へと近づいていきます。
利人の弱音、そして「離婚はしない」の宣言
利人は樹に対し、これまで見せたことのないほど弱い顔をのぞかせます。
陸を見つめながら「息子がほしかった」とこぼし、御厨家を背負う重圧を誰よりも感じていたからこそ、子どもを持たなかった理由を振り返る場面も描かれました。「巻き込みたくなかったのかもしれない」という言葉には、後悔と自己弁護が入り混じっています。
それでも利人は引き下がりません。
「真琴と離婚する気はない」とはっきり言い切り、樹もまた、法的措置を含めた圧力に屈しない構えを見せます。
この場面は、表面的には恋敵同士の対決でありながら、二人とも語っているのは「大切な人を守りたい」という同じ想い。そのため、どちらが悪とも言い切れない苦さが残り、立場さえ違えば分かり合えたかもしれないという余韻を強く残します。
海斗の転職先が「御厨の子会社」だった…過労の連鎖が始まる
一方で、ゆずはは海斗の転職先が御厨ホールディングスの子会社だと知り、愕然とします。相談を受けた樹も、これまで見てきた過重労働の被害者たちと海斗の状況が重なり、言葉を失います。
しかし海斗は剛太郎に心酔しており、ゆずはの忠告にも耳を貸しません。
そこで樹が勧めたのは、感情論ではなく“数字で現実を掴む”方法でした。毎日の出勤・退勤連絡で勤怠を可視化する。海斗は面倒がりながらも、「新婚はこんなものか」と軽い気持ちで連絡を始めます。
ところが、御厨に買収された職場は現場のノウハウも乏しく、必要な機材すら整っていない。人が辞め、休み、その穴埋めが次第に海斗へ集中していきます。
遺品整理に必要なオゾン脱臭機を借りに『Heaven’s messenger』を訪れた際、樹は最新機種を貸しますが、その時点ですでに海斗はふらつくほど消耗していました。
やがて、ゆずはが海斗と連絡が取れなくなり、勤怠を確認すると過労死ラインを超える勤務状況が判明。樹たちが駆けつけた目の前で、海斗はついに倒れてしまいます。
彩芽の“火消し”と、集団訴訟が動き出す
倒れた海斗のもとに現れたのは、新社長となった彩芽でした。
彩芽は“存分すぎる金額”の示談金を差し出しますが、ゆずははそれを突き返します。樹もまた、労基法違反の可能性を指摘し、労基への通報や弁護士への相談を勧めます。
御厨グループでは、過去10年で14人もの犠牲者が出ているという事実も語られ、彩芽の“火消し”は逆に追い込まれる結果となります。
同時に、樹を中心とした集団訴訟チームも本格的に動き出します。
ここで重要になるのが、静音と波多野の存在です。静音は磯部夫妻と向き合い、亡くなった文哉が結婚準備を進めていた痕跡や、パソコンのデータが消されていた不自然さを共有します。以前から違和感を覚え、静音が保管していたパソコンが、証拠として重みを持ち始めます。
波多野もまた、過去に御厨の過重労働問題を記事にしようとして潰された経験を語り、「もっと早く社会問題化できていれば」と悔いを吐露。
訴訟にはタイムリミットがあり、今動かなければ真実が闇に葬られるという焦燥感が、チームを一つにまとめていきます。
さらに不穏なのが、訴訟チームに協力する学生として紹介された人物が、実は利人/彩芽の秘書・外山大河だったこと。情報が御厨側に筒抜けになっている可能性が浮上し、最終決戦を前に「内側から崩される」気配が色濃く漂います。
ラストシーンと次回への引き/彩芽の反撃で「不倫」が世間に放たれる
企業イメージ回復のため、彩芽は社長就任パーティーの開催を提案します。利人は時期の悪さを理由に反対しますが
剛太郎はそれを容認し、彩芽はアンバサダーでもある真琴にPR協力を依頼します。
しかし真琴は、その申し出を拒否します。
その瞬間、彩芽の感情は決壊します。
自分は真琴を守ってきたつもりだった。利人を紹介し、絵本作家としての道も支えてきた。それなのに、真琴は御厨を訴える側、つまり樹の側に立つ。その選択は、彩芽にとって明確な「裏切り」でした。
そして彩芽は、樹と真琴の関係を週刊誌にリーク。
夜、樹が陸を背負って帰る場面、靴を届けようと真琴が追いかけた先で、二人はマスコミに囲まれ、「不倫」について追及されます。
静かに育まれてきた二人の恋は、ついに世間の娯楽として暴かれてしまった――第10話は、この最悪の引きで幕を下ろしました。
終幕のロンド10話の感想&考察

第10話は、冷静に整理すると「縦軸(御厨の隠蔽)」と「横軸(恋と家族)」が同時に爆発した回でした。
ただ感情としては、もっと単純で、正直な感想に行き着きます。幸せを丁寧に描くほど、その壊し方があまりにも残酷なドラマだ、と。
樹と真琴が“家族みたいな時間”を掴んだ直後に、それを真正面から粉砕してくる構成は、この作品が一貫してやってきたことでもあります。でも10話は、その破壊の規模と質が一段階違いました。
この回のテーマ・メッセージ考察:SOSは「言えない」し「届かない」
第10話の海斗は、典型的な「助けて」が言えない人として描かれていました。
剛太郎に認められた喜び、期待に応えたい焦り、ゆずはを幸せにしたいという愛情。どれも善意なのに、その善意が少しずつ自分の首を絞めていく。その過程が、あまりにも現実的です。
この作品の強さは、そこを根性論で断罪しない点にあります。
樹が海斗に示したのは「頑張るな」ではなく、「勤怠を見ろ」という提案でした。
精神論ではなく、構造を可視化するやり方。遺品整理人として、これまで目に見えない“声なき声”を拾ってきた樹らしいアプローチだったと思います。
ここでタイトル『終幕のロンド』が効いてきます。
個人の人生の終幕だけでなく、会社の構造、つまり“終わらせるべき連鎖”の終幕も描こうとしている。個人(ミクロ)と社会(マクロ)が交差する感覚こそが、第10話の核でした。
樹・真琴・利人:三角関係というより「家族の奪い合い」になった
公園でのピクニックは、正直かなり苦しいシーンでした。
“家族みたい”に見える3人の背後に、利人が立っている。しかも利人は怒りを爆発させるのではなく、憔悴し、弱音を吐く。
利人の「息子がほしかった」という言葉は、単なる同情誘いではなく、御厨家というシステムが彼をどう形作ってきたのかを説明する台詞だったと思います。
「巻き込みたくなかった」という言葉の裏には、子どもを持つことすら経営判断になってしまう家の歪みがある。愛の有無以前に、人生そのものが企業構造に侵食されている。
だから樹と利人の対立は、不倫や倫理の問題に留まりません。
“陸のいる世界”を、誰の価値観で守るのか。そういう争いに変質した瞬間、この関係はもう後戻りできないところまで来たと感じました。
彩芽の“見せ方”が一段階変わった:愛の人から権力の人へ
彩芽はこれまで、「御厨家の中で真琴の味方に見える人」でした。
しかし第10話で新社長となり、過労問題の火消しや社長就任パーティーを背負う立場になったことで、彼女の人間性は一気に揺らぎます。
重要なのは、彩芽が単純な悪になったわけではない点です。彩芽は“報われなさ”をこじらせた。
自分は御厨の汚れ仕事を引き受けてきたつもりだった。それでも真琴からは拒絶される。家族からの評価も、愛情も、居場所も曖昧なまま。
その空洞が、リークという最悪の選択に繋がった。
僕にはここが、恋愛感情というより、支配欲と救済欲が混ざった執着に見えました。「あなたのため」は、一歩間違えると「あなたは私のもの」になる。その危うさを、彩芽は体現していて、だからこそ怖い存在です。
伏線と回収ポイント:証拠PC/スパイ疑惑/そして“タイムリミット”
第10話は、伏線の回収と追加が同時に行われた回でした。
回収として大きいのは、静音が保管していたパソコンが、文哉の死と御厨の隠蔽を繋ぐ物的証拠として前に出てきたこと。
また、波多野が「かつて記事にしようとして潰された」過去を語り、ジャーナリズム側の悔いが明確になった点も重要でした。
一方で不穏さが強化されたのが、訴訟チーム内部に内通者がいる可能性、そして「訴訟にはタイムリミットがある」という焦りです。
遺品整理が扱うのは、時間が止まった人の想い。
集団訴訟が扱うのは、時間が過ぎれば消えてしまう真実。この対比が、第10話ではっきり浮かび上がりました。
今後の展開予想:最終回は「裁判」より先に“日常”が壊される
ここからは予想になりますが、御厨側は裁判で正面衝突する前に、「世間」と「生活」を壊して戦意を削ぎに来るはずです。
狙われるのは樹本人よりも、陸、そしてHeaven’s messengerという日常の基盤。
同時に、証拠や証人が潰されるなら、内通者の線は一気に濃くなります。
最終回は、「正しいことをした人から先に傷つく」地獄になる可能性が高い。それでも、だからこそ樹が最後に何を“届ける”のか。遺品整理人としての矜持が、裁判という場にどう接続されるのか。そこに、この物語のすべてが懸かっていると感じています。
視聴者の受け止め方と、作品の着地点への期待
第10話は、彩芽という人物への視線が一段階変わった回でもありました。一方で、遺品整理という軸が弱まったと感じる声があるのも事実です。
ただ僕は、遺品整理が隅に追いやられたのではなく、声なき声を拾う仕事が、声を奪う構造そのものに踏み込んだ回だったと受け取りました。
ここまで広げたテーマを、最終回で「遺品整理人の物語」としてどう畳むのか。
難しい。けれど、畳み切れたら、間違いなく拍手したい。
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