「終幕のロンド」7話は、物語中盤の要とも言える濃密な1時間でした。
碧の闇バイト未遂から始まり、御厨ホームズの犠牲者・太陽の遺品整理、そしてこはるの誕生日会──それぞれの出来事が“家族のすれ違い”と“想いの重さ”を浮かび上がらせていきます。
物語は一気に終幕へ向けて動き始めます。
終幕のロンド7話のあらすじ&ネタバレ

7話は、「遺品整理」と「家族の別れ」が一気に加速する回でした。
碧の闇バイト未遂、御厨ホームズの新たな犠牲者、こはるの人生最後の誕生日会、そしてあまりにも突然の死と散骨へ──中盤の山場と言える密度の1時間です。
碧の闇バイト未遂と、磯部がようやく前を向くまで
物語は、高橋碧が走行中の車から飛び降り、病院へ搬送されるところから始まります。警察からの連絡で樹と磯部が駆けつけると、碧が闇バイトに巻き込まれかけていたことが判明。保護観察中の身でありながら犯罪スレスレの仕事に手を出そうとしていた事実に、碧自身も深いショックを受けます。
碧が闇バイトに手を伸ばした理由は、「磯部の裁判費用を自分が稼ぎたかったから」。磯部が御厨ホームズの集団訴訟に踏み切れずにいたこと、そして金銭面で苦しんでいるらしいことを知り、「今の自分ができるのは金を工面することだ」と思い詰めてしまった結果でした。
碧は「保護司や会社に迷惑をかけたくない」と、Heaven’s Messengerを辞めると言い出します。しかし磯部は珍しく声を荒げ、碧を叱咤。
「なぜそんなことをしようとしたのか」「誰のための金だったのか」と詰めていくうち、逆に自分自身が逃げていた現実と向き合わされる展開に。
警察官から「碧くんは“昔の仲間より今の仲間を大事にしたい”と言っていました」と告げられるくだりも重い。碧は不良仲間ではなく、磯部や樹を“今の仲間”と認識していた。それでも頼らず、自分だけで何とかしようとしてしまう。そこに“元非行少年”としてのしがらみと、優しさゆえの危うさが凝縮されていました。
この一件をきっかけに、磯部は「自分のためではなく、誰かのために戦う」覚悟を固めていく。のちの集団訴訟参加へつながる大きな転機です。
御厨ホームズ社員・小林太陽の遺品整理
Heaven’s Messengerに舞い込んだ新たな依頼。
故人は御厨ホームズ営業部の若きチームリーダー・小林太陽。10年前に亡くなった磯部の息子・文哉と同じく、「働きすぎて壊れてしまった若者」です。
現場にはルームメイトの藤崎壮太、そして弟の陽翔が立ち会います。しかし陽翔は兄の死を受け止められず、ほとんど口をきかない状態。代わりに藤崎が「陽翔は兄の物を残したくないと言っている」と説明します。
回想では、太陽が御厨社長との会食で「弟の学費も見ている」と語り、社長から「自分とそっくりだ」と励まされる姿が描かれます。その言葉を真に受けた太陽は、御厨ホームズという会社に強い忠誠を抱き、“夢”を都合よく利用されていく構図が浮かび上がっていく場面でした。
樹は、せめて形だけでも遺品を確認してほしいと陽翔に促します。並べられた遺品──腕時計、ボールペン、財布、亡き父のメガネ、そして陽翔名義の預金通帳とリボンのかかった小箱。樹が読み上げる途中、陽翔は「いらない、兄のものはいらない」と感情を爆発させます。
しかし通帳は自分宛てに残されたもの。樹は静かに「これはお兄さんがあなたに残したものです」と告げますが、陽翔は処分を希望。樹は急がず、「気持ちが落ち着くまで預からせてほしい」と提案し、その場はいったん収めます。
同時に樹は、遺品の中に太陽のスマホ・パソコンがないことに気づきます。藤崎に確かめても曖昧な返答。帰り際、マンションの窓から樹たちを見下ろす藤崎の視線が描かれ、
“太陽のデジタル遺品は誰かが消したのでは?”
という疑いがじわりと残されます。
のちに、太陽が御厨ホームズの「14人目の犠牲者」であること、家族のために働き続けていたこと、陽翔が兄の死を自分のせいだと責めていることが語られます。
10年前の文哉、そして今の太陽と陽翔。その姿に、磯部と碧の構図も重なり、“遺品整理”という仕事が残された人たちの凍った時間をゆっくり溶かしていく役割を担っていることが静かに示されていきます。
こはるの“人生最後の誕生日会”
一方、御厨家と真琴サイドの物語も大きく進行します。
こはるの誕生日が近づき、樹・真琴・陸の3人は誕生日会を企画。医師から余命3カ月と告げられているこはるにとっては、文字通り“人生最後の誕生日”。
陸は手作りのプレゼントを抱えてこはるの部屋へ。樹がドアを開けると、こはると陸が本当の家族のように笑い合っている。その様子を真琴と樹が隣で見つめ、自然と微笑み合う場面が印象的でした。
こはるは突然「来年は来ないもんね」と軽くつぶやきます。余命を受け入れ、残り時間を静かに数えている。その強がりを分かったうえで誰も大げさに反応しない“淡さ”が、このドラマらしい空気。
同じ頃、御厨家では火種がくすぶり始めています。富美子は家の跡取り問題を理由に彩芽へ見合い話を押し付けますが、彩芽は「自分が好きなのは真琴」と告白し場を壊してしまう。
利人と真琴の結婚が“家のための結婚”であったことも明かされ、御厨家の古い価値観があらわになります。
真琴は彩芽に対して「利人と離婚したい」と本心を伝えます。理由は単純で、「欲しいものが違うから」。御厨家の望むものと、真琴が望む静かな生活は根本からズレている。ここで真琴の“人生の舵取り”が明確になり始めます。
海への散骨と、波打ち際の“密会ショット”
こはるの死は、視聴者が思わず息を呑むほど唐突に訪れます。前回まで普通に歩き、誕生日会でも笑っていたこはるが、次のシーンではすでに“遺骨”。
死の突然さを強烈に刻みつける構成でした。
真琴から連絡を受けた樹は、彼女と共に小さな船に乗り散骨へ。こはるが望んだ最期の形。骨壺を傾けると、粉となったこはるが海へ溶けていきます。
浜辺に戻った二人は流木に腰かけ、真琴は、
「御厨はちゃんとした葬儀をしてくれるつもりだったけど、母の意思を通したら誰も来なくなった」
と静かに語ります。
「でも、これでよかった。今までいろいろ持ちすぎていたから、手放すことを母が教えてくれた気がする」
御厨家の枠から一歩外へ出るような、真琴の“解放”がにじむシーンでした。
そこで樹は、
「笑わなくていいです。もう頑張らなくていい。少なくとも僕の前では」
と告げます。
嫁として、娘として、母として、常に“いい顔”をしてきた真琴に向けた、大きな許しの言葉。
真琴は涙をこぼし、樹の肩にもたれ、樹はそっと抱き寄せる──二人の距離が決定的に近づく瞬間。
しかしこの場面は、何者かによって“密会写真”として盗撮されています。
望遠レンズで切り取られるシルエット。
誰が撮ったのかは明かされないままですが、
御厨側の人間
あるいは利人に近い誰か
が動いている気配が濃厚。
ここで“樹と真琴の関係がスキャンダルとして利用される”伏線が一気に立ち上がります。
終幕のロンド7話の感想&考察

7話を見終わってまず残ったのは、「愛の形はこんなにもすれ違うのか」というしんどさでした。
親子、夫婦、きょうだい、祖母と孫、そして新しく生まれつつある関係──いずれの愛も嘘ではないのに、向かう方向が少しずつズレていて、そのズレが誰かを追い詰めてしまう。7話は、その“ズレの痛み”を丁寧に描いた回だったと思います。
こはるの死に方が「雑」なのではなく、むしろリアルだった件
SNSでは「こはるの死があっさりしすぎ」といった声も多く見られましたが、個人的にはあの描写には強いリアリティを感じました。人が亡くなる瞬間って、ドラマのように“最期のセリフ”や“きちんとした別れ”があるとは限らない。むしろ、日常の延長線でふっといなくなるほうが圧倒的に多い。
こはるには「余命3カ月」という“死の予告”がありました。それでも誕生日会では笑い、「来年は来ない」と冗談めかして口にしていた人が、次の瞬間には遺骨になっている。その落差こそ、残された人が味わう現実の感覚に近い。
散骨のシーンも、過度に情緒的にせず、ただ青い海にこはるが溶けていく静かな演出。葬儀の儀式的な重さではなく、こはるの“生き方”に寄り添う送り方でした。
樹と真琴が涙をこぼしながらも、その選択を肯定しあう姿に、「遺品整理人の物語」と「真琴の家族の物語」がここで深く結びついた印象を受けました。
樹と真琴の距離感は「癒やし」か「不倫の前兆」か
波打ち際のシーンは、視聴者の心を大きく揺らす場面でした。
樹が「僕の前では頑張らなくていい」と言い、真琴が肩に寄りかかる。構図だけ見れば、完全に恋愛ドラマのクライマックス。
ただ、この関係をどう解釈するかは簡単ではありません。
・真琴は利人との結婚生活に疲弊
・利人は静音との関係を続けている
・樹と真琴は「こはるを見送った者どうし」という深い共有体験を持つ
これらが積み重なり、二人が惹かれ合うこと自体は自然に見えます。
しかし、真琴の両親・こはると真琴の父も“駆け落ち”という形で恋を貫いた過去があるため、ここで樹と真琴が本格的に恋愛に踏み込むと「親の物語の再演」になってしまう危うさもある。
そして何より、この“密会”がしっかり盗撮されている。
この写真が今後の物語で必ず使われる伏線であることは明らかです。
・御厨家が遺品整理会社への攻撃材料にする
・利人が離婚交渉で使う
・静音側がメディアにリークする
など、想像できる使われ方はいくらでもある。
個人的には、樹が恋愛の主人公へと移行する必要はなく、彼は“死者と生者をつなぐ存在”のままでいてほしいという思いがあります。
いまの「境界線ギリギリの距離感」を物語がどう扱っていくのか、今後の大きな見どころになりそうです。
御厨ホームズという“加害装置”と、磯部のスイッチが入る瞬間
太陽の遺品整理パートはいわゆる“サブストーリー”に見えますが、内容は本筋直結。
・若きリーダーが過労とプレッシャーで自死
・遺書もなく、スマホやPCなど“真相に関わるもの”が消えている
・弟の陽翔は兄を責め続け、心が壊れかけている
これは明らかに「御厨ホームズという構造が若者を壊している」という提示であり、10年前の文哉の死と強く重なる構図です。
磯部が太陽の通帳と兄弟の写真を見て、
「こんな真面目な青年がどうして死ななきゃいけないんだ」
と声を震わせる場面は、彼の止まっていた10年が動き始めた瞬間。
そしてここで彼は、ようやく「御厨ホームズと戦う」と腹を決める。
遺品整理の仕事は“物を片づける”のではなく、亡くなった人と残された人の“止まった時間”を少しだけ動かす行為なのだと改めて感じました。
家族のかたちの多様さ──彩芽、静音、ゆずは&海斗
7話は、“家族とは何か”を問い直すようなエピソードが多い回でもありました。
・彩芽は、真琴への恋心を「家族になりたい」とはっきり言葉にする
・真琴は利人に「欲しいものが違う」と離婚を宣告
・静音は利人を“本気で愛している”と言いながら、別の誰かを想う過去を語る
・ゆずはと海斗は、お互いを支えつつも未来が揺らぎ始める
特に彩芽の告白は、
“家族=血縁”ではなく、“共に生きたい相手”へと価値観が移り変わっている象徴でした。
一方で、ゆずはと海斗の関係は作品中で最も純度が高い“応援できる恋”。
ただ、海斗にヘッドハンティングの話が出ているなど、不穏な影も落とされており、
後半の伏線として静かに効いてくる予感があります。
静音と利人の関係は、
「不倫する人もまた、人を本気で愛してしまう」という非常にリアルな描かれ方。
同時に、誰かを愛した結果、誰かを確実に傷つけている現実も突きつけてくる。
7話は、終盤への“心の地ならし”回
総じて7話は、事件が大きく動くというより、
・磯部は御厨ホームズと戦う覚悟を固め
・真琴は御厨家から距離を取り始め
・樹は真琴の“心の避難場所”になり
・太陽の死で御厨の闇が立体化し
・こはるは自分の人生を自ら締めくくった
という “登場人物たちの心の再配置” が丁寧に行われた回。
この静かな地ならしがあるからこそ、この先の集団訴訟、御厨家との対立、そして樹と真琴のゆらぎがより深く、痛みを伴って響くようになるはずです。
“優しいドラマであろうとするけれど、決して甘くない”その絶妙なバランスが、この7話にすべて詰まっていました。
ここから、物語は一気に終幕へ向かっていきます。
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