第3話は、心が二重に削られる回です。
ひとつは、今の裏切り。
もうひとつは、かつて確かに存在した幸せ。
ドラマ「離婚しない男」第3話では、娘・心寧のケガをきっかけに、渉と綾香の価値観のズレがはっきりと露わになります。
同時に描かれるのは、綾香の過去――アイドル時代の挫折と、そこに絡む「承認欲求」の傷。そして、不倫相手・司馬マサトが見せ始める、恋ではなく支配の顔。
さらに物語は、渉が自宅のソファ下に潜り込み、妻の裏切りを“証拠として見届けなければならない”という、あまりにも残酷な局面へ踏み込みます。証拠を集めるために、感情を殺さなければならない。その代償が、はっきりと描かれる回でした。
この記事では、ドラマ「離婚しない男」第3話のあらすじとネタバレを中心に、綾香がなぜ今の選択に至ったのか、マサトの危うさ、そして渉が“夫として壊れ始めた瞬間”を丁寧に整理していきます。
この回を見終えると、「誰が悪いか」よりも先に、「どうして、こんな夫婦になってしまったのか」を考えずにはいられなくなるはずです。
ドラマ「離婚しない男」3話のあらすじ&ネタバレ

第3話のサブタイトルは「ソファ上の恋人たち、ソファ下のサレ夫」。
タイトルの時点で胸がざわつきますが、今回はそこに綾香の過去と渉との馴れ初めまで一気に重ねられ、見終わったあともしばらく心が落ち着かない回でした。
ここから先は、第3話のネタバレありでまとめていきます。
心寧のケガと、綾香の“責め”が刺さりすぎる
物語は、心寧(ここね)が公園でケガをしてしまう場面から始まります。
渉は一緒にいた自分を責め、家で丁寧に手当てもしますが、綾香は「芸能活動に支障が出たらどうするの?」と、ここぞとばかりに渉を追い込みます。
「娘を守りたい」という言葉自体は同じなのに、渉は心寧の“痛み”に寄り添い、綾香は心寧の“未来=商品価値”を守ろうとしているように見えてしまう。
この温度差が、見ていて本当に苦しい場面でした。
タトゥーの違和感――「W」と言い張る綾香
翌朝、渉がキッチンに立つ場面。生活を守ろうとする渉の姿が切ない中で、綾香の反応は相変わらず冷たい。
しかもここで、渉は綾香の腕に見覚えのない、真新しいタトゥーを見つけてしまいます。
綾香はそれを軽く「W」だと言い張り、渉もいったん飲み込みます。
けれど視聴者側には分かってしまう。
これは渉に向けた“W”ではない。
気づきたくないのに、気づいてしまう。夫婦の会話が、もう嘘の上に成り立っていることが、静かに突きつけられます。
マサトの「500円玉」――甘い言葉で思考を支配してくる怖さ
不安になった綾香は、不倫相手・司馬マサトに「渉にバレているかも」と相談します。
しかしマサトは心配を一蹴し、500円玉で綾香の右目を隠す“視力検査ごっこ”のようなことを始めます。
そこでマサトは、「離婚している未来が見えないのか」と迫り、「君には今の人生は地味すぎる」と優しく諭す。
言葉だけを見れば、背中を押してくれる人のようですが、実際は綾香の迷いを潰し、結論を誘導しているようにしか見えません。
しかもマサトは、心寧が通う芸能事務所のチーフマネジャー。家庭の外側からも内側からも、じわじわ囲ってくる感じが本当に嫌な怖さでした。
綾香の過去――アイドルデュオ《KOIRAM》と“コイ”の存在
第3話で明かされる最大のポイントが、綾香の過去です。
綾香はかつて、アイドルデュオ《KOIRAM》のメンバーでした。デビューシングルが初登場5位になるほど順風満帆だったにもかかわらず、ある出来事をきっかけに活動自粛へ追い込まれます。
その“ある出来事”に深く関わってくるのが、相方のコイ。作中では、コイが綾香とマネージャーの関係を写真に撮って告発する人物として描かれています。
綾香自身にも脆さがあり、家庭の事情に揺さぶられ、手を差し伸べてくる大人に頼ってしまう瞬間がある。そこを“恋”と“弱み”の両方で絡め取られてしまった流れが、かなり生々しく描かれていました。
この過去があるからこそ、綾香が今、心寧を「芸能界で咲かせたい」と必死になる理由が見えてくる。
それがまた、皮肉でつらいところです。
渉と綾香の馴れ初め――幸せだった記憶が、今いちばん残酷
一方で、探偵・三砂裕に促され、渉も綾香との出会いから今までを語ります。
綾香の母・美香が営むスナック「蝶」が登場し、そこでの出来事が二人の距離を縮めていく。この場の空気や、周辺人物の存在も含めて、第3話では丁寧に整理されていました。
渉の恋は派手ではありません。
不器用で、真面目で、必死。
初デートの浮かれ方も、プロポーズの必死さも、胸がぎゅっとなるほど“純”です。
だからこそ、今の綾香との落差が残酷すぎる。
幸せだった記憶が挟まれれば挟まれるほど、現在の渉の現実が、より地獄として際立っていきます。
財田トキ子の叱責――渉の「甘さ」が崩れ落ちる
渉と裕は再び、敏腕の離婚弁護士・財田トキ子のもとを訪れます。
そこで渉は、自分の「甘さ」を真正面から指摘され、思わず涙してしまいます。
親権を取るために必要なのは、“いい人”でいることではない。情に流されない覚悟と、勝つための準備。分かっているのに、渉はどうしても綾香を完全に憎み切れない。その弱さが、見ている側まで苦しくさせます。
ソファの下――証拠集めが、ついに“修羅場”へ
そして、タイトル回収の時間が訪れます。
渉は自宅マンションのソファの下に身を潜め、スマホで“不貞の証拠”を押さえようとします。
そこへ、何も知らない綾香とマサトが入ってくる。
“証拠を撮る”という目的のはずなのに、渉が味わうのは、ただの苦痛。目の前――正確には頭上で進んでいく裏切りに、呼吸まで奪われる感覚。
このシチュエーションには、視聴者からも「地獄」「渉が可哀想すぎる」といった声が多く上がるのも納得でした。
第3話は、綾香とマサトの関係がさらに過激さを増すことを見せつけながら、渉の心を限界まで追い詰めて終わります。
ドラマ「離婚しない男」3話の感想&考察

第3話は、ただ刺激が強い回ではありません。
「どうしてこんな夫婦になってしまったのか」という問いに、答えの材料を一気に差し出してくる回だったと思います。
しかもその材料が、優しい思い出と黒い過去の両方だから、感情がぐちゃぐちゃになります。
綾香は“悪嫁”で片づけられない――過去が見えた瞬間、憎み切れなくなる
ここまで綾香を「ひどい」と思いながら見てきた人も多いはずです。渉の優しさを踏みにじり、娘さえ道具のように扱い、自分は欲望に素直。
けれど、《KOIRAM》時代の綾香が映った瞬間、単純に嫌いだと言い切れなくなります。
夢が叶いかけて、壊れて、その壊れ方が“自分の弱さ”と“他人の悪意”が絡み合った形だったなら――その後の人生で「取り返したい」と思ってしまうのも、理解できてしまう。
綾香が心寧にのめり込むのは、母親としての愛情だけではありません。
「もう一度スポットライトの中心に戻りたい」
「奪われたものを、娘を通して取り返したい」
そんな執念が混ざっている。だからこそ危うく、だからこそリアルです。
マサトの怖さは“手口”にある――500円玉の視力検査は、支配の儀式
マサトは派手な暴力を振るうタイプではありません。だからこそ、余計に怖い。
500円玉で片目を隠し、「未来が見える?」と問いかける。
一見ロマンチックな遊びに見せかけて、実際には思考を誘導する儀式です。
綾香が迷った瞬間に「君には今の人生は地味すぎる」と言い、“正解”を与える。それは尊重ではなく、コントロール。
しかも相手が、娘の芸能事務所のマネジャーでもある。この支配は、家庭の外側まで侵食しています。
渉の「優しさ」は武器にも毒にもなる――トキ子の言葉が刺さった理由
財田トキ子が渉に突きつけた「甘さ」は、残酷ですが正しい。
渉は、いい夫でいようとして、いい父でいようとして、いい人でいようとしている。
けれど、離婚と親権の戦いは、“いい人”が勝つゲームではありません。
第3話で明確になったのは、渉がまだ綾香を完全に捨てられていないという事実。
馴れ初めが幸せだったからこそ、あの頃の綾香を信じたくなる。その優しさが、渉を人として魅力的にしている一方で、渉自身を壊していく。ここが、見ていていちばん泣けるポイントでした。
“コイ”の存在が残す火種――女の嫉妬は、人生を壊すほど鋭い
綾香の相方だったコイ。
彼女は、綾香とマネージャーの関係を写真で告発する存在として描かれています。
恋愛の裏切りより、仕事の裏切りより、
同じ舞台に立っていた女性からの裏切りは、一生残る。
もちろん綾香にも落ち度はあります。
それでも、いちばん弱っている瞬間を狙って壊しにくる構造には、救いのなさを感じました。
だから今の綾香は、ああした“敵”を二度と作らないために、娘を自分の分身のように守り、同時に支配してしまうのかもしれません。
次回への考察:ソファ下の渉は“情”を捨てられるのか
第3話のラストで、渉はついに修羅場の最前線へ踏み込みました。
ソファの下で息を殺し、証拠を押さえようとする姿は、まさに地獄。
けれど、次回の焦点は“証拠が撮れたか”以上に、渉が自分の心をどう扱うのかだと思っています。
渉は、勝つために“鬼”にならなければならない。
でも渉の良さは、鬼になりきれない優しさでもある。
このドラマは、過激な状況を描きながら、ずっと「愛って何?」を問い続けている。綾香の愛は欲望と執念に近く、渉の愛は祈りに近い。マサトの愛は、おそらく愛の形を借りた支配。
だからこそ、次回、渉が情を捨てて戦うのか、それとも情を抱えたまま別の道を選ぶのか。
壊れてほしくない。でも、壊れないと勝てない戦いでもある。この矛盾こそが、苦しいのに目が離せない理由だと感じています。
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