第4話は、「離婚しない男」というタイトルの意味が、静かに、でも確実に変わり始める回です。
派手な出来事が起きているようで、実は一番大きく揺れているのは、渉の“覚悟”そのもの。これまで渉は、娘を守るために感情を抑え、理性的に、正しい選択を積み重ねてきました。
しかし第4話では、そのやり方が本当に通用するのか、そして「離婚しない」という選択が、意志なのか制約なのかを突きつけられていきます。
笑える演出と、息が詰まるような空気が交互に押し寄せる中で、渉は初めて「この戦いは短期戦では終わらない」と思い知らされることになります。
この記事では、ドラマ「離婚しない男」第4話のあらすじとネタバレを通して、渉がどんな現実に直面し、どんな覚悟を抱え込むことになったのかを整理していきます。
この回を境に、物語は“感情の修羅場”から、人生を削り続ける長い戦いへと本格的に移っていきます。
ドラマ「離婚しない男」4話のあらすじ&ネタバレ

第4話のタイトルは「上からアヤカ…下からワタル…」。
この一文だけで胸がざわつきますが、実際の中身は視聴者の想像を軽く飛び越えてきます。
今回は、渉が「離婚に向かう男」ではなく、「離婚できない男」になっていく回。笑えるのに苦しくて、苦しいのに目が離せない、そんな30分でした。
自宅ソファで始まる、最悪の“現行犯”タイム
物語は、渉の自宅のソファで、綾香とマサトが関係を持つ場面から始まります。
綾香は、娘も夫も暮らす家での行為に一瞬ためらい、拒むそぶりさえ見せますが、マサトは独特のテンションと英語混じりの言葉責めで押し切っていく。首輪についた鈴を意味深に鳴らす演出も強烈で、視覚より先に「音」が不快さを連れてくる感覚がありました。
そして何より地獄なのは、渉がその真下にいること。
探偵・三砂裕の指示で、渉はソファの下に身を潜め、自撮り棒の先につけたカメラで不貞の証拠を撮ろうとします。しかし、これが想像以上に過酷です。体を固め、息を殺し、視界のない状態で角度を調整しながら、上の二人の声と動きに耐え続ける。
精神が削れない方がおかしい状況でした。
“愛してないから”――渉の心を折った決定打
綾香がマサトに、渉のことを「愛していない」と言い切ってしまう。
渉はソファの下で、声を殺して泣くしかありません。
不倫の現場そのものも十分に残酷ですが、この言葉は別の種類の刃でした。
渉はここまで、「父親として娘のそばにいたい」という気持ちを、ボロボロになりながら守ってきた人です。そこに「夫として愛していない」という宣告が落ちることで、“家族だった自分”そのものを否定されたように感じてしまう。
この瞬間の渉の涙は、嫉妬や怒りではなく、体温がすっと抜けていくような、底の深い悲しさでした。
2人が去ったあと、抱きしめられても救われない――「もう限界だよ」
綾香とマサトが家を出たあと、裕は渉を抱きしめ、「がんばったな」とねぎらいます。しかし渉は、そこで崩れるように「もう限界だよ」と口にし、走り去ってしまう。
“証拠を取れた”とか、“一歩進んだ”とか、そうした達成感よりも、人としての限界が先に来たのだと思います。
裕の抱擁は、単なる男同士の友情ではなく、渉が一人で背負いすぎていることを分かっている人の抱きしめ方でした。
それでも、抱きしめられても消えない痛みがある。
渉はそれを分かってしまっていて、だから逃げるしかなかったのだと思います。
財田トキ子が現れる。平手打ちと、人生の“現実”の提示
走り去った渉の前に現れたのが、離婚弁護士・財田トキ子。
彼女は、いきなり渉に豪快な平手打ちをかまします。
コメディとして見れば強烈な登場ですが、あの一発は、渉の“被害者モード”を強制終了させるスイッチにも見えました。泣いているだけでは娘は守れない。戦うなら、まず立て。そんな残酷な優しさです。
その後、渉が撮った不倫映像を確認したトキ子は、離婚の弁護を引き受け、娘・心寧の親権を取るために共闘すると約束します。
ただし、ここからが本当の地獄でした。
トキ子は、甘い希望ではなく、現実を突きつけます。
親権の壁は“証拠”だけじゃ越えられない――母性優先と養育実績
トキ子が語るのは、「不倫の証拠がある=親権が取れる」ではない、という現実です。
- 親権争いでは母親が圧倒的に有利になりやすい(いわゆる母性優先)
- 不貞の“継続性”を示す必要がある
- そして何より重要なのは「養育環境」と「養育実績」
渉はこれまでフルタイムで働いてきた分、日々の育児実績で不利になりやすい。
これからは、毎日の育児を積み重ね、記録として残していく必要がある。調停や審判を含めれば、簡単に終わる戦いではありません。
この説明が重いのは、渉が悪いわけではないからです。
家庭を支えるために働いてきた“普通の父親”が、その働き方ゆえに「親として不利」とされる。
頑張ってきた人生が、ここでマイナスに換算される理不尽。渉の顔が徐々に絶望へ変わっていくのも無理はありません。
綾香にバレたら終わる——「離婚できない男」になる覚悟
さらにトキ子は、「親権を狙っていることを綾香に知られないこと」が重要だと釘を刺します。もしバレれば、母性優先を盾に、DVやモラハラを“作られて”追い詰められる可能性すらある。
そして決定的なのがここです。
渉は“準備が整うまで”離婚に踏み切れない。少なくとも1年は、「離婚できない男」になる。タイトルが、ここで皮肉のように突き刺さります。
渉の育児実績づくりが始動。大根10本おろしの“笑い”が泣ける
第4話は重いだけでなく、変なところで笑わせてきます。象徴的なのが、渉が大根を10本もおろしているシーン。
笑えるのに、笑ったあとに切なくなる。
あれは、渉が“父親としての実績”を積むために、料理も家事も必死に「できる自分」へ変わろうとしている証に見えます。量が極端なのはブラックな誇張ですが、渉の焦りだけは誇張ではありません。
綾香が見たマサトの“異変”——そして「渉…」に滲む執着
一方で綾香は、マサトの“異変”を目の当たりにします。
回想で描かれるマサトの学生時代や、「渉…」と歯を食いしばるような場面が挿入されたことで、彼が単なる不倫相手ではない気配が一気に濃くなります。
愛や欲望といった言葉では片付けられない“何か”。
綾香は快楽の中で生きているつもりでも、マサトの闇の中に、いつのまにか足を踏み入れてしまっている。第4話は、その怖さを残して終わりました。
ドラマ「離婚しない男」4話の感想&考察

第4話を見終えたあと、しばらく“音”が耳から離れませんでした。
鈴の音、ソファのきしみ、呼吸を殺す渉の沈黙。
映像の刺激以上に、「家の中で起きている裏切り」の生活感がリアルすぎて、胸の奥がじわじわ痛む回でした。
「ソファの下」は、渉の立場そのものだった
渉は社会的には新聞社のエースで、家族を支える側だったはずなのに、家庭の中では完全に「下」に追いやられています。
ソファの上で交わされる会話も行為も、渉の人生を勝手に踏み荒らしていくのに、渉は「証拠のために」動けない。声も出せない。
こういう状況で、怒りより先に涙が出るのは、とても自然だと思います。
怒るためには、まだ自尊心が残っていなければならない。綾香の「愛してないから」を聞いた瞬間、渉の自尊心は芯から折られてしまった。
裕の抱擁が優しいのに、優しいだけじゃ救えない現実
裕が渉を抱きしめた場面は、確かに救いでした。それでも渉は「もう限界」と走り去る。
“支えてくれる人”がいても、壊れるときは壊れる。
励ましが届かない瞬間は、確かに存在します。
しかも渉は、ただの失恋ではなく、「娘を失うかもしれない」という恐怖の中にいる。恋愛の悲しみと、親としての恐怖は、同じ涙でも重さが違います。
トキ子の平手打ちは「正気に戻せ」の合図
トキ子の平手打ちは、一瞬笑いそうになるほど唐突なのに、次の瞬間、妙に納得してしまいます。
渉がこのまま“かわいそうな被害者”で立ち止まれば、綾香にもマサトにも飲み込まれて終わる。
トキ子は、渉の涙を否定しているのではなく、「泣き終わったら立て」と言っているのだと思います。
その直後に突きつけられる親権の現実が、またえげつない。
母性優先、養育実績、継続性の証明、そして“バレたらDVを捏造されるかもしれない”という恐怖。
このドラマは、エロと笑いで目を引きながら、突然、現実の底冷えする話を投げつけてきます。
「離婚しない」じゃなくて「離婚できない」…タイトルの皮肉が痛い
第4話で最も刺さったのは、渉はしばらく「離婚できない男」になるという構図でした。
離婚したいのに、娘のためには離婚できない。
「離婚しない男」というタイトルは、強い意志の話だと思っていたのに、実際は制度や状況に縛られた結果の“我慢”でもある。
そしてこの我慢は、報われる保証がありません。だからこそ、大根を10本おろす渉の姿が、笑えるのに泣けてしまうのです。
マサトの“異変”は「恋」じゃなく「執着」——渉への矢印が濃すぎる
第4話でマサトの回想や、「渉…」と歯を食いしばる場面が描かれたことで、彼がただの不倫相手ではないことは、ほぼ確定に近づきました。
怖いのは、綾香がまだそこに気づき切れていない点です。
綾香は自分が“選ぶ側”だと思っているけれど、マサトの熱量は、綾香に向いているようで、実は渉に向いているようにも見える。綾香は、その矢印の“道具”にされている可能性すらあります。
だからこそ、ラストで描かれたマサトの異変は、綾香にとっても“逃げ遅れ”のサインだったのかもしれません。
次回以降、渉が“戦う父親”へと変わっていくほど、マサトはさらに危険な顔を見せてくる気がします。
怖い。でも、見たい。悔しいけれど、見届けたい。
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