第7話で描かれた「理想が暴力に変わる若さ」に続き、第8話ではその延長線上にある“国家の運用”と“個人の救済”が真正面から衝突します。

特捜班に届いた一報――「教団内部のスパイから、文部科学大臣暗殺計画の情報」。
だがその裏には、公安が仕掛けた“モグラ狩り”の罠が潜んでいました。
情報をもたらしたのは、教団に潜入していた協力者・林智史(眞島秀和)。
彼は「任務を降り、妻のもとに帰りたい」と願うが、その願いが引き金となり、悲劇の歯車が回り出す。国家が切り捨てる“ひとりの命”を、田丸は救えるのか。
2017年5月30日(火)夜9時放送のドラマ「CRISIS〜公安機動捜査隊特捜班〜」8話のあらすじ(ネタバレ)と感想を紹介していきます。
※以後ネタバレ注意
CRISIS(クライシス)8話のあらすじ&ネタバレ

第8話「激闘 決死の救出!」は、シリーズ前半から伏線として漂っていた新興宗教“神の光教団”と潜入協力者の線を、一気に“救出劇”として回収するターニングポイント。
あらすじ自体はシンプルですが、「国家の運用」と「個人の倫理」が正面衝突する濃密な一時間でした。
以下、公式情報を基に時系列で精密にまとめます。
密会の要求――“情報”と引き換えに「協力を降りたい」
公安の協力者として“神の光教団”に潜入している林智史(眞島秀和)が、妻・千種(石田ゆり子)を介して田丸(三郎/西島秀俊)に接触。
「重大情報を得た。直接会いたい」という伝言に応じた田丸の前で、林は“情報と引き換えにスパイを辞め、千種の元に戻りたい”と申し出る。
“テロを阻止した後に夫婦を保護する”旨の覚書まで要求。
上司の青沼(飯田基祐)はこれを承諾するが、田丸と千種の関係性に強い不安を示す。決行は2日後、標的は文部科学大臣。情報はこうして確定する。
テロ当日――“未然阻止”の直後に気づく「罠」
大臣登壇イベントの会場警備を任された特捜班(稲見・田丸・吉永・樫井・大山)。
到着した大臣へ接近する元信者を稲見(小栗旬)と田丸が間一髪で制圧。
しかし、カバンの中身は空。田丸は、テロ情報が“モグラ狩り(内通者あぶり出し)”の罠だったと悟る。真の狙いは大臣ではなく、教団内部のスパイ=林。ここで現場は“誰を護るのか”という再定義を迫られる。
裏切りの告白――千種の「密告」と田丸の動揺
一方そのころ、教団内では林の盗聴器が発覚し、苛烈な尋問が開始。
田丸は千種をホテルへかくまい安全を確保するが、やがて千種自身が“林がスパイであることを教団へ密告した”と告白する。
「私は最初からこういう人間。理想の私を重ねないで」と田丸に迫るその言葉は、彼の“倫理”と“感情”を同時に切り裂く刃だった。
後に田丸は、借金のある在家信者だった林を自ら“口説き落として協力者にした”過去と、千種への複雑な感情を稲見に吐露する。
青沼の“現実”と田丸の決断――退職届→単独潜入へ
青沼は「ガセだった以上、取引を履行する必要はない」と静かに線を引く。
運用としての正しさは筋が通っているが、教団に捕らわれた林は今この瞬間も命の危機にある。田丸は退職届を置き、単独で教団本部へ潜入する決断を下す。
それは、“国家の都合”より“自分が引き込んだ一人”を救うという、田丸自身の倫理の選択だった。
特捜班、5人で150人の本部へ――“7分30秒”のノンストップ
田丸の単独行は、直ちに仲間5人の“非公式突入”に変わる。
樫井(野間口徹)が爆裂仕掛けでフロアを分断し、吉永(田中哲司)・大山(新木優子)が縦横に通路を確保。最上階で稲見と田丸を待ち受けていたのは屈強な2名。
このクライマックスでは、新日本プロレスの後藤洋央紀、ドラゴンゲートの土井成樹が屈強な信者としてゲスト出演。
7分30秒のノンストップ・バトルで、特捜班は瀕死の林を救出する。
青沼の突入――「お前らはここにいなかった」
出口を塞ぐ信者の人波。その刹那、青沼がSATを率いて突入。「今すぐそいつを連れて消えろ。——お前らはここにいなかった」。
公式には「教団が爆弾を製造していたため強制捜査に踏み切った」という物語に置き換えられ、特捜班の“非公式救出”は記録から外される。国家の運用は、ここでも“記録の整理”という名で正義を上書きする。
別れの場面――千種の退避、そして“教会の男”
事件後、青沼は林・千種を海外へ退避させる段取りを整える。鍛冶(長塚京三)は「田丸のアキレス腱を国内に戻すな」と冷たく釘を刺す。
出国前、千種は田丸に「あなたと暮らしてみたかった」と涙を見せ、田丸は何も奪わず、ただ見送る。
そしてエピローグ。いつもの教会に謎の男「佐藤」が現れ、田丸へ不穏な接触。シリーズ後半へのブリッジが静かに点灯して第8話は幕を閉じる。
CRISIS(クライシス)8話の感想&考察

第8話は、「国家の秩序を守る運用」と「一人を救うための倫理」が、田丸の身体を通してぶつかる回でした。
ここからは、三つの視点で掘り下げます。
運用の正しさ vs. 倫理の正しさ——“誰を守るのか”の再確認
青沼の判断は組織人として正しい。ガセ情報に基づく取引の破棄は理屈として筋が通る。
しかし田丸は「自分が引き込んだ一人」という関係の責任を選ぶ。秩序の“普遍”と、関係の“具体”の衝突。
結果としての正義(救った/救えなかった)だけでなく、過程としての正義(どう向き合ったか)を描くことで、クライシスは“現場倫理”の価値を再提示している。ここにシリーズの骨格がある。
千種という鏡——“理想の他者”を重ねる危うさ
千種の密告は裏切りであると同時に、田丸の理想への警鐘でもある。
「理想の私を重ねないで」という言葉には、田丸が職務に仮託した個人的感情が映し出される。正義の言葉は欲望の仮面にもなり得る――それを彼女は鏡のように突きつけた。
田丸が最後に「何も奪わない」選択をするのは、倫理を“奪わないこと”として体現した結果だ。
アクションの説得力——7分30秒が語るもの
終盤の7分30秒ノンストップ・バトルは、単なる見せ場ではなく倫理の物理的証明。
位置取り、分断、近接が連鎖する構成で、身体そのもので“救う”正義を描く。
後藤洋央紀と土井成樹の登場による“痛みの重量”が、言葉よりも説得力を持つ時間として機能していた。
“記録の外”に置かれるヒーロー——青沼の一言の重み
「お前らはここにいなかった」。その一言で、特捜班の行為は公的記録から消える。
制度の正義ではなく、秩序維持の運用。第4話で描かれた“国家は物語を編み直す”というテーマが、ここでは“功績の消去”として再演される。
正義と記録の乖離を描くこの構図こそ、シリーズの冷たくもリアルな核だ。
シリーズ構造における8話——“維新軍”外部の闇を整える
1話~7話で積み上げた維新軍(共鳴型テロ)の流れに対し、8話は宗教セクト×協力者という別軸の闇を救出劇で締めくくった回。
ラストの“教会の男=佐藤”の登場は、次回以降に控えるクライマックスへの導火線であり、田丸という人格の綻びをあぶり出す布石となった。
“国家と個人”“秩序と感情”の二重螺旋を、最も人間的な痛みで結んだ章だった。
そして、林は無事にテロを阻止し、警察に戻ってくることはできるのでしょうか?
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