第3話で“駆け落ちの真実”が明かされ、逃避行は新たな局面へ。

第4話では、逃げ続ける結以と大介が思いがけず“普通の時間”に出会います。
仮装、笑い声、そして湯気の立つ揚げ物——そのすべてが「生きている証」のように光る。けれどその温度の裏で、父・慶志の暴走と企業の影がじわりと迫る。
“逃げる”ことと“生きる”こと、その境界線を見つめる回。
ESCAPE4話のあらすじ&ネタバレ

第4話は、逃亡劇のテンポを一度だけ“ゆるめて”くる構成が印象的でした。
宇都宮を脱出した結以と大介が、元カノ・莉里の部屋に身を寄せる――安全地帯に見える部屋の中で、3人の温度が少しずつ交わり、やがて再び外の現実に追い立てられていく。
ハロウィンの雑踏や、初めての回転寿司・ゲームセンター・ファミレスといった“青春の記憶”が、物語に一瞬のやさしさをもたらしつつ、終盤には再び緊張が帰ってくる。ここでは、公式のストーリーと各メディアの報じたディテールを突き合わせながら、時系列で丁寧に振り返ります。
元カノ・莉里の部屋へ――“隠れ家”は、優しさでできている
裏社会に通じるガンの助力で宇都宮から東京へ戻った二人は、大介の元カノ・香坂莉里(影山優佳)のマンションに“転がり込む”。
結以は素性も誘拐事件も伏せ、「父から虐待を受けて逃げてきて、大介と駆け落ちした」と説明。大介の読みどおり、心根のやさしい莉里は結以の話を信じ、「狭いけど、うちでよかったら」と快く匿う。
ここでいったん、二人の逃避行に“家の温度”が灯ります。
八神家サイドの緊張:父・慶志の“暴走”と“さとり”という闇
一方、八神慶志は警察に無断で、大介の氏名や身体的特徴などの個人情報を捜索サイトに公開し、懸賞金レースを過熱させてしまう。
刑事部長・蛯原はいら立ちを隠せないが、少年課の小宮山だけは事件の本質を読み始める。
また、万代は記者・白木から八神製薬の“さとり”なる噂を仕入れ、慶志の秘書・藤に確認。「創業者・八神恭一が持っていたとされる特殊能力」で、社長の前ではタブー視されているという。企業神話めいた謎が、家族の物語に長い影を落とし始める。
はじめての青春――ハロウィンの仮装、回転寿司、ゲームセンター、ファミレス
莉里と打ち解けた結以は、「自由になったらやってみたかったこと」を次々に実行。
莉里の用意した仮装で3人はハロウィンの街へ。ガンが見張り役に回る間、結以は生まれて初めて回転寿司を体験し、ゲームセンターで遊び、ファミレスに入る。
ほんの束の間、二人は“逃げる人質と誘拐犯”ではなく“青春を取り戻す若者”に戻る——この浮力の描写が、のちの痛みをいっそう際立たせます。
莉里の“誰にも言えない秘密”——畑中との関係
結以が踏み込み過ぎるほどに心を開くと、莉里は交際相手の畑中一成(内博貴)について打ち明けはじめる。
職場で知り合い交際中だが、実は彼には“家庭”がある。つまり莉里は不倫関係のただなかにいるのだ。結以が勇気を出して助言するも、「そういうの、結以ちゃんにはわかんないよね」と返されてしまう。
3人の“隠れ家”で、現実の大きさが音もなく忍び寄る場面です。
ガンの策――“痛快”の一歩手前で、現実を見せる
莉里を案じた大介はガンに相談。
ガンは3人を連れ出し、キャンプ場で“真実”と対峙させる。そこには家族と過ごす畑中の姿——妻は妊娠中。都合のよい言葉を並べる一方で別れる気などない彼の“現実”を、莉里は目の当たりにする。
怒りのスイッチが入った大介たちは、食器を洗う畑中に“ホイップどっさりの甘いドリンク”を浴びせるささやかな制裁。ネックレスを投げ捨てた莉里の顔に、ようやく血の気が戻る。演出は軽やかだが、視線は徹底して冷静。痛快の直前で立ち止まり、観る者に“線の引き方”を考えさせる設計です。
SNSの“目撃情報”が炎上——しかし、それは…
同じころ、結以と大介の“精度の高い目撃情報”がSNSで一気に拡散し、警察や万代が急接近——逃亡劇の終焉がちらつく。
しかし、それはガンが仕掛けた偽の画像。撹乱に成功し、4人は無事帰還する。
炎上する群衆心理を逆手に取るこの一手で、シリーズが一貫して描く「世間の視線の暴力性」が浮かび上がるのも見どころでした。
揚げ物パーティーの夜、そして父・慶志の“予測不能”
莉里の部屋で“揚げ物パーティー”。とりわけ、フードデリバリーで届く揚げ物たちは、結以の「やってみたかったこと」リストの延長線——静かな温もりが画面に満ちる。
その一方で、記者会見場に座る慶志の姿が映し出され、次回へ強いフックを残して幕。20分間の青春のあとに戻ってくる、現実の硬さ。その落差が第4話の余韻でした。
ESCAPE4話の感想&考察

第4話を見終えて最初に浮かんだのは、「青春は、いつも一時停止の中にある」という感覚でした。
ハロウィンの仮装、回転寿司のレーン、ゲームセンターの点滅、ファミレスの赤いソファ。どれも“逃げる”二人には似つかわしくないはずなのに、だからこそ画がきらめいた。ここでは、6つの視点からこの回の手触りを読み解きます。
“初めて”の設計――回転寿司・ゲーセン・ファミレスが持つ救い
結以の「やってみたかったこと」は、すべて“誰でも行ける場所”である点が尊い。
特別ではなく、普通。だから救いになる。逃亡の最中に差し込まれる“普通”の経験は、彼女の人生に基準値を作る行為で、次に何かを選ぶときの身体の記憶になる。
ここで物語は、一気に“生存の話”から“生き方の話”へスライドしたように感じました。
莉里という“第三極”――優しさの鈍色と、線の引き方
莉里は、善悪の単純な座標系に収まらない人。
匿う優しさがある一方で、自己肯定のために“誰にも言えない関係”を支えにしてしまう弱さも併せ持つ。
その揺らぎを責めず、でも肯定しすぎない距離感で描いたバランスが、この回の成熟。
キャンプ場で現実を見せる演出は痛快に転びやすいが、あえて“甘いドリンクをかける”軽さに止めたことで、視線は常に人ではなく“行為”を責める方向へ誘導される。誰かを悪者にしないための温度調整が、とても丁寧でした。
父・慶志の“情報暴力”と“さとり”の神話
慶志が個人情報をさらし、群衆の“正義”を焚き付ける。これは暴力です。
しかも、八神家の“さとり”神話が企業と家族の境界を曖昧にし、私事への過干渉を正当化していく仕組みも透けて見える。
第4話は、親の名の下に子どもの自由を奪っていくミクロな家庭内支配と、企業ブランドの神話が人々を扇動するマクロな支配を、一本の線で結びました。次回以降、ここに“記者会見”という舞台装置がどう重なってくるかが肝。
ガンの倫理――違法の手つきと正義の温度
ガンは違法の手つきを持ちながら、いつも“誰を守るのか”を間違えない。
偽の目撃画像で世間を撹乱するやり方は、方法としてはグレーでも、狙いは「彼らの時間を守る」。
第4話は、正しさ=合法の単純式を外し、倫理=目的の方向で測り直す視座を提示しました。彼女が“見張り役”として距離を取る時間の長さが、彼らを守るための冷静さの証拠でもある。
SNSの炎上を“逆手”に――群衆の視線と自由のコスト
拡散される“精度の高い目撃情報”は、現代の魔女狩りの形。
そこにフェイクを投げ返すのは、単なるトリックではなく、視線の暴力性を自覚させるための手段でもある。シリーズ全体を貫く「見られることのコスト」を、最も軽やかに、しかし鋭く描いたエピソードでした。
タイトル“ESCAPE”の更新――誰が何から逃げるのか
この回で“逃げていた”のは、結以と大介だけではない。莉里は“自分の孤独”から、慶志は“過去の失敗”から、万代は“仕事の退屈”から、白木は“記者としての良心”から、それぞれ逃げようとする。
ESCAPE=逃げるは否定語ではなく、次に進むための動詞として描かれている。第4話が置いたのは、そんな拡張されたタイトル解釈でした。
次回への視線――“初めて”のあとに来るのは、“約束”の回収
ラストの会見カットは、「父との約束」という軸を強く呼び戻すサイン
。公式のNEXTでは、斎藤の死が明かされ、葬儀への潜入と“誰かが捕まる”展開が示唆されている。
第4話で得た普通の時間を持ったまま、二人はどう現実と交渉するのか。結以が“誰のために、何を手放すのか”、大介が“誰の前で、どんな声量で謝るのか”。そこに恋よりも長持ちする信頼が生まれるはずだと、私は思っています。
まとめ
揚げ物の紙袋が「じゅっ」と鳴って、湯気が上がる。あの一瞬だけで、二人の逃亡は“生活”に変わりました。
第4話は、逃げることのただ中に、ちゃんと生きる手触りを差し込む回。だから私は、結以がレーンを流れる皿をじっと見つめていた横顔を、しばらく忘れないと思う。
彼女は“選ばれてきた人生”から“自分で選ぶ人生”へ、たしかに歩き出した。次回、現実にぶつかるその足取りを、また見届けたいです。
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